アドバゲーム(advergame)は、企業が自社の商品やブランドを宣伝するために、自ら企画して配るゲームです。広告(advertising)とゲーム(game)を組み合わせた造語で、手法として呼ぶときは「アドバゲーミング」ともいいます。検索では「広告ゲーム」「広告ゲー」という言い方でも探されますが、この言葉は文脈によってまったく別のものを指します。この記事では、アドバゲームの意味、混同されやすいインゲーム広告との線引き、「広告ゲー」の3つの意味、実在する事例、Robloxで今ブランドが使える公式の仕組み、日本で出すときのステマ規制までを順に整理します。
まとめ:アドバゲームの要点
- 定義:広告主が広告のために起こしたゲームです。ゲームそのものが広告媒体になります。
- インゲーム広告との違い:他社の商業ゲームの中に商品や広告枠を差し込むのがインゲーム広告です。『メタルギアソリッド3』のカロリーメイトはこちらに入ります。
- 「広告ゲー」は3通り:広告収入で無料提供されるゲーム、広告と中身が違うゲーム、アドバゲームの3つがあり、検索結果でも混在しています。
- 事例:米陸軍のAmerica’s Army(2002年)、バーガーキングのXbox用3作(2006年・320万本超)、ナイキのNIKELAND(2021年)が、広告主の関与を公開資料で確かめられる代表例です。
- 制作先の選択肢:自前のアプリやブラウザゲームのほか、Robloxなど利用者が集まる基盤の上にブランドの体験を作る方法があります。Robloxは広告であることの明示と事前審査を求めています。
- 向かない場面:今週中に売上を取りたい販促です。遊ばれなければ開発費がそのまま残ります。
アドバゲームの意味と成り立ち
アドバゲームの中心にあるのは「見せる広告」ではなく「遊ばせる広告」という発想です。テレビCMや動画広告は視聴してもらう広告ですが、アドバゲームはプレイヤーが自分で操作し、遊んでいる間ずっとブランドに触れ続けます。広告主がお金を出してゲームを起こし、多くは無料で配ります。
advertisingとgameを合わせた造語の範囲
日本語では「アドバゲーム」がゲーム(成果物)、「アドバゲーミング」が手法を指すことが多いものの、実際にはほぼ同じ意味で使われています。2007年にはアドバゲームを集めたポータルサイトを開設した国内企業が、アドバゲームを「商品や企業の広告メッセージをWEBサイトにおいてゲームを媒介として伝える手法」と説明しています。当時はブラウザで遊ぶFlashゲームが主な形でした。
ブランドを遊びに組み込む3つの深さ
ブランドの入れ方には深さの段階があります。浅い順に、背景やUIにロゴを置く露出、商品を回復アイテムや乗り物などプレイに使う道具にする方法、ブランドのキャラクターや世界観そのものを主役にする方法です。ペプシのキャラクターを主人公にしたペプシマンは3段目の例です。どの深さを選ぶかは目的で決まり、ロゴの露出だけでよいなら既存ゲームへの出稿で足ります。自社でゲームを起こすなら、商品やキャラクターを遊びのルールに組み込める企画かどうかを最初に確かめます。
アドバゲームとインゲーム広告・プレイアブル広告の違い
「ゲームに関わる広告」をひとまとめにすると、事例の分類も費用の見積もりも狂います。誰がゲームを用意し、広告がどう入るかで3つに分けると整理できます。
| 手法 | ゲームを用意する側 | 広告の入り方 | 主な費用 |
|---|---|---|---|
| アドバゲーム | 広告主 | ゲーム全体がブランド体験 | 企画・開発・集客・運用 |
| インゲーム広告 | 他社の商業ゲーム | 看板・動画枠・商品の配置 | 出稿費・掲載料 |
| プレイアブル広告 | 広告ネットワーク上の広告 | 数十秒の試遊でアプリへ誘導 | 広告制作費・配信費 |
線を引く基準:広告のためにゲームを起こした主体
開発会社がどこかは基準になりません。America’s Armyは米陸軍が募集と広報のために公開したゲームで、広告主が目的を決めてゲームそのものを立ち上げています。基準は「広告のためにゲームを立ち上げたのが広告主かどうか」です。インゲーム広告はすでにプレイヤーがいる他社のゲームに乗るので、集客の手間を省けます。アドバゲームを外部に発注する場合は、著作権の帰属、公開終了後の扱い、更新を誰が担うかを契約で決めておかないと、ゲームを自社の資産として使い続けられません。プレイアブル広告は、アプリをインストールしてもらうための短い試遊で、ブランド体験より獲得の手段です。
「メタルギアソリッド3×カロリーメイト」がアドバゲームでない理由
アドバゲームの例としてよく挙がる、コナミ『メタルギアソリッド3』(2004年)の回復アイテム「カロリーメイト」(大塚製薬)は、アドバゲームではありません。コナミが自社の商業作品として出資したゲームの中に、商品を配置したものだからです。映画やドラマの中に商品を映すプロダクトプレイスメントと同じ仕組みで、分類はインゲーム広告に入ります。ここを混同すると、「人気ゲームに商品を出せば効果が出る」という話と「自社でゲームを作るべきか」という話が同じ費用感で語られてしまいます。
「広告ゲー」「広告ゲーム」と呼ばれる3つの意味
「広告ゲームとは」「広告ゲーとは」で検索すると、上位にはアドバゲームの解説と、スマホゲームの広告の話が混ざって表示されます。この言葉は次の3つのどれかを指していて、どれのことかで答えが変わります。
広告収益型の無料ゲーム:リワード広告で稼ぐ仕組み
1つ目は、課金ではなく広告の表示で稼ぐ無料ゲームです。ステージの合間に全画面広告が入ったり、動画広告を最後まで見るとアイテムがもらえたりします。後者は「リワード広告」と呼ばれ、プレイヤーが自分で見るかどうかを選びます。Robloxのリワード動画広告の公式ドキュメントでは、報酬はRobux(Robloxの仮想通貨)ではなくゲーム内アイテムにすること、広告の再生中にキャラクターが不利にならないようにすることを求めています。報酬の額については、3〜10Robux相当を目安として推奨しています。このゲームの広告主は通常、ゲーム会社とは無関係の第三者です。
広告と中身が違うゲーム:英ASAの裁定とJAROの苦情統計
2つ目は、SNSや動画広告で見たゲームと、インストールして遊んだゲームがまるで違うものを指す、皮肉を込めた呼び方です。英国の広告審査機関ASAは2020年9月30日、Playrixの『Homescapes』『Gardenscapes』のFacebook広告について、ゲームを代表していない広告で誤認を招くと裁定しました。Playrixは広告のパズルもミニゲームとしてゲーム内にあると反論しました。しかしASAは、ゲームの大部分は家の改装の物語と3つそろえるパズルで、広告のゲームにたどり着くには別の種類の内容をかなり遊ぶ必要があると認定しました。「すべての画像が実際のゲームプレイではありません」という注記があっても、結論は変わりませんでした。日本でも、日本広告審査機構(JARO)の2025年度の苦情受付状況でオンラインゲームの広告への苦情は718件(前年度468件)と業種別3位で、そのうち554件・77.2%は、性的・グロテスクで不快といった広告表現への苦情でした。広告と中身の違いだけを数えた件数ではありませんが、ゲーム広告への不満が多い業種であることは数字に出ています。実物と違う内容で優良に見せる広告は、景品表示法の優良誤認の論点にもなります。
アドバゲーム:広告主が企画し宣伝に使うゲーム
3つ目が、この記事の主題であるアドバゲームです。1つ目のゲームでは広告主とゲーム会社が別ですが、アドバゲームでは広告主がゲームの持ち主です。効果は広告の表示回数ではなく、目的に合わせて測ります。米陸軍のAmerica’s Armyのように採用が目的なら応募や問い合わせ、ブランドの認知が目的ならプレイ時間や想起率が指標になります。マーケティングの文脈で「広告ゲーム」と書かれていれば、多くはこの意味です。
アドバゲームの代表的な事例
広告主がゲームの公開や販売に関わったことを公開資料で確かめられる事例を並べます。
| 広告主 | タイトル | 年・媒体 | 目的・特徴 |
|---|---|---|---|
| 米陸軍 | America’s Army | 2002年・PC | 募集と広報・無料配布 |
| バーガーキング | Sneak Kingなど3作 | 2006年・Xbox・Xbox 360 | 3作で320万本超 |
| ナイキ | NIKELAND | 2021年・Roblox | 本社を模した空間 |
米陸軍は2002年7月4日、America’s Armyを募集と広報のための無料のマルチプレイヤーFPSとして公開しました。娯楽以外の目的でもアドバゲームが成り立つことを示した例で、後継作『America’s Army: Proving Grounds』の公式サーバーは2022年5月5日に終了しています。売れたアドバゲームの代表はバーガーキングで、2006年の年末商戦に出したキャラクター「キング」のXbox用ゲーム3作は、同社の米SECへの提出書類で320万本超と記載されています。ナイキは2021年11月18日(米国時間)、Roblox内にオレゴン州の本社を模したNIKELANDを開設し、トランポリンでの鬼ごっこなどのミニゲームと、ショールームで製品を試せる場を用意しました。バーガーキングは販売するゲームソフト、ナイキは利用者が集まる基盤の中の無料の空間という形で、同じアドバゲームでも届け方が異なります。
家庭用ゲーム機の時代の例として、マクドナルドのキャラクターが登場するドナルドランド(ファミコン)や、ペプシのキャラクターを主人公にしたペプシマン(PlayStation)もよく挙げられます。ただし、広告主がどこまで企画や費用を負担したかを示す公式資料は確認できなかったため、この記事では参考例にとどめます。
アドバゲームのメリットと向いているケース
最大の利点は接触の長さです。スキップできる動画広告は数秒で閉じられることがありますが、遊んでいる間プレイヤーはずっとブランドの中にいます。ゲーム本体が広告なので、バナー枠のように広告枠ごと遮断される形にはなりにくい点も違います。ただしブラウザで動くゲームの中に外部配信の広告を入れる場合は、その部分が広告ブロッカーで遮断されることがあります。おもしろければプレイ動画やSNSで広がり、出稿費をかけない露出が生まれます。
向いているのは、商品の機能より世界観やキャラクターで覚えてもらいたい商材、テレビや検索広告が届きにくい10代・20代への接点、採用や広報のように売上以外の目的です。America’s Armyの採用広報は、売上以外の目的に使った例です。
アドバゲームのデメリットと避けるべき場面
遊ばれなければ何も起きません。ここが表示されれば最低限のリーチが立つ純広告との決定的な違いです。企画・開発の初期投資が重く、公開後も更新と告知の運用が続きます。
避けるべきなのは次のような場面です。
- 今週中の売上やセールの集客が目的のとき。効果が出るまでに時間がかかります。
- 「話題になりそうだから」だけで、遊ぶ理由とブランドのつながりが設計されていないとき。
- 認知が目的なのに、遊びとブランドが結びついていないとき。事前に決めた想起率などの指標が動かなければ、ゲームの評判が良くても目的は果たせていません。
- 公開後の集客予算を取っていないとき。作っただけでは誰にも届きません。
Robloxでブランド体験を作るときの公式ルール
自前のアプリに加えて、Robloxのような基盤の上に作る方法もあります。基盤にすでにいる利用者に届けられる点が利点です。ただしRobloxには、ブランドが関わる体験と広告について細かいルールがあります。
自社の体験の制作:ブランド協業に強い開発者の探し方
Robloxのクリエイター向けプログラム一覧には、ブランドとの協業実績がある開発者を紹介する「Brand Developer Directory and Roblox Partner Program」が掲載されており、2026年10月30日時点で募集中(Status: Open)です。NIKELANDのような自社の体験を作るとき、開発の依頼先を探す入口になる制度です。Fortniteで同じことをする場合は、クリエイティブ2.0(UEFN)で島を作って公開します。
他社の体験への出稿:Ads Managerとイマーシブ広告
自社で体験を持たずに出稿する方法もあります。RobloxのAds Managerは、広告キャンペーン、レポート、請求を一か所で管理する画面です。イマーシブ広告では、開発者が自分の体験の中に置いた広告枠へ、Robloxが広告主の広告を自動で配信します。看板に流れる最長30秒の動画広告などの形式があり、同じ枠でも見る人によって別の広告が表示されます。仕組みとしてはインゲーム広告にあたり、自社のアドバゲームへ人を連れてくる集客の手段として組み合わせられます。
ブランド組み込みの条件:事前審査と広告の明示
開発者が自分の体験にブランドとの協業コンテンツやブランドの素材を組み込む場合、Robloxはそれを広告として扱います。ブランドから見れば他社の体験への出稿にあたる形で、Robloxの組み込み広告のルールは、関連する素材をすべて公開前にRobloxへ提出して承認を受けること、広告であることを平易な言葉ではっきり目立つように示すこと、無料Robuxをうたうような誤解を招く内容で参加を促さないこと、リワード動画広告は13歳以上の利用者にだけ表示することを求めています。違反すると、アカウント停止やコンテンツの削除の対象になります。利用者の年齢層が低い基盤なので、広告だと気づかせない設計はそもそも認められていません。
日本でアドバゲームを出すときのステマ規制
日本では2023年10月1日から、景品表示法にもとづく告示(令和5年内閣府告示第19号)により、広告であることを一般消費者が見分けにくい表示が不当表示になりました。規制されるのは表示の内容の決定に関わった広告主です。
告示はゲームという形式を対象から外してはいません。判断の基準は、表示の内容全体から一般消費者が事業者の表示だと見分けられるかどうかです。消費者庁の運用基準は、事業者の表示であることが一般消費者にとって明瞭、または社会通念上明らかなものは告示の対象にならないとしています。アドバゲームでは、ブランド名を出すだけでなく、提供元の企業名や公式であることを起動画面や配信ページで示しておくと、この条件を満たしやすくなります。問題になりやすいのは周辺の施策です。広告主が依頼したプレイ動画を、依頼したことを伏せて実況者に投稿させる場合や、他社のゲーム内に商品を配置したのに広告である旨を示さない場合は、ステルスマーケティングにあたる可能性があります。ゲームの中の表示に限った行政解釈は示されていないため、「広告」「PR」の表示を入れる前提で設計しておくのが安全です。
アドバゲームの効果測定:2層のKPI
ブランド目的だからと「話題になった」で終わらせないために、指標は2層で持ちます。
- 行動指標:プレイ数、ユニーク利用者数、平均プレイ時間、再訪率、完了率、SNSでの共有数。Robloxなら体験の訪問数と滞在時間が取れます。
- ブランド指標:ブランドの想起率・好意度・購入意向の調査。遊んだ人と遊んでいない人を単純に比べると、もともとブランドが好きな人ほど遊ぶ差が混ざるため、年齢や過去の購入歴などの条件をそろえて比べます。広告で集客する場合は、広告を見せる群と見せない群を無作為に分ける方法も使えます。
売上につなげたい場合は、ゲーム内で配るクーポンの利用数や、ECサイトへの送客後の購入を紐づけ、ROI(投資利益率)で評価します。認知や好意が目的の企画を売上だけで評価すると、目的とずれた判定になります。企画の段階で、どの指標をいつ測るかを決めておきます。
アドバゲームの導入手順と費用を分ける要素
進め方は、目的と評価指標を決める、遊ぶ理由とブランドの結びつきを設計する、開発する、公開して集客する、効果を測る、の順です。最初に「認知」「採用」「送客」のうち最も優先する目的と、その評価指標を決めます。複数の目的を持たせる場合も、優先順位を決めておかないとゲームの設計が定まりません。
費用は、次の3つでほぼ決まります。
- どこで動かすか:ブラウザのミニゲーム、Robloxなどの基盤上の体験、ストアに出すアプリで、使う技術と審査の手続きが変わります。同じ遊びの内容で比べると見積もりの差がわかります。
- どれだけ作り込むか:ステージ数、3Dかどうか、複数人で遊べるか、ランキングやクーポン発行などのサーバー機能の有無。
- どれだけの期間運用するか:公開後の更新、イベント、告知の出稿費。開発費とは別に、公開後の運用と集客の予算を見積もりに入れます。
見積もりは、上の3点の条件をそろえてから複数社に依頼すると、金額の差がどこから来るのかを比べられます。自社のブランドに合わせたゲームの企画から開発まで外部に任せる場合は、ゲームアプリ開発の支援を使う方法もあります。
よくある質問
アドバゲームとは何ですか?
企業が自社の商品やブランドを宣伝するために、自ら企画して配るゲームです。advertisingとgameの造語で、手法として呼ぶときはアドバゲーミングともいいます。
「広告ゲー」とはどういう意味ですか?
文脈で3通りあります。広告の表示で稼ぐ無料ゲーム、SNS広告と実際の中身が違うゲーム、企業が広告のために作るアドバゲームです。スマホゲームの話題で使われるときは、前の2つを指すことがほとんどです。
アドバゲームとゲーム内広告の違いは何ですか?
ゲームを広告主が自ら起こすのがアドバゲーム、他社の商業ゲームの中に看板や商品を入れるのがゲーム内広告(インゲーム広告)です。メタルギアソリッド3のカロリーメイトはゲーム内広告にあたります。
アドバゲームの有名な事例は何ですか?
米陸軍が募集と広報のために公開したAmerica’s Army(2002年)、バーガーキングのXbox用3作(2006年・320万本超)、ナイキがRoblox内に作ったNIKELAND(2021年)が代表です。ドナルドランドやペプシマンもよく挙げられます。
アドバゲームはステマになりますか?
表示の内容全体から、企業の広告だと一般消費者が見分けられるかで判断されます。提供元の企業名や公式であることが伝わるゲームは告示の対象になりにくく、依頼したことを伏せたプレイ動画や、広告であることを示さない他社ゲーム内の商品配置はステマにあたる可能性があります。