広告識別子(広告ID)は、スマートフォンやタブレットにOSが1つずつ割り当てる、広告用の識別子です。iPhoneではIDFA、AndroidではAAID(GAID・ADIDとも呼ばれる)と呼ばれ、ユーザーは設定画面から追跡を拒否したり、IDをリセット・削除したりできます。この記事では、検索でよく混ざる「ADID」という呼び名の意味を最初に整理し、IDFAとAAIDの違い、iPhone・Androidでの操作手順、Cookieや端末IDとの違い、2026年時点の規制の状況を、Apple・Google・Amazonの公式資料をもとに説明します。
まとめ:広告識別子の要点
- 広告識別子は端末単位の広告用ID。Appleの説明では、用途は広告の表示回数の制御・成果の計測(アトリビューション)・コンバージョン計測・ユニークユーザー数の推計・不正検知・デバッグに限られる。
- ADIDは「広告IDの総称」と「Androidの広告ID」の2つの意味で使われる。Androidの広告IDの別名はAAID・GAID。
- iPhone(iOS 14.5以降)は、ATTでユーザーの許可を得たアプリにしかIDFAを渡さない。許可がなければ全ゼロの値が返る。
- Androidは「リセット」で新しいIDに替わり、「削除」でアプリにはゼロの文字列が返るようになる。どちらを選んでも広告そのものは表示される。
- GoogleのPrivacy Sandboxは2025年10月17日に主要技術の廃止が発表され、Androidの広告IDは引き続き使われている。iOSは集計型の計測(SKAdNetwork・AdAttributionKit)が前提になっている。
広告識別子の定義と使われる場面
広告識別子は、OSがデバイスごとに発行する、ユーザーがリセットできる広告用のIDです。氏名や電話番号を含まない英数字の文字列で、形式は XXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX のようなUUID(36文字)です。
利用可能な用途は提供元のポリシーによって異なります。AppleはIDFAの説明で、使ってよい場面を表示回数の上限制御(フリークエンシーキャップ)、アトリビューション、コンバージョンイベントの計測、ユニークユーザー数の推計、広告不正の検知、デバッグと列挙しています(Apple Developer:advertisingIdentifier)。たとえば「広告をタップした端末で、7日以内にアプリがインストールされたか」を結び付けるときのキーが広告識別子です。
広告識別子が作られた理由は、端末の製造番号のように変えられないIDで広告を追う方法を置き換えることにあります。Androidの公式ガイドは、IMEIなどのハードウェアIDを使わず、ユーザーがリセットできる識別子を選ぶよう求めています(Android Developers:ユーザーデータ用の識別子に関するベストプラクティス)。
ADID・IDFA・AAID・GAIDの呼び名の整理
「ADIDとは」で検索されるのは、この呼び名が2通りに使われているためです。ADIDは「Advertising ID」の略で、広告IDの総称として使う人と、Androidの広告IDだけを指す人がいます。資料を読むときは、その資料での定義を確認してください。IDFAとADIDを対比している場合、ADIDはAndroidの広告IDを指すことがあります。
| 呼び名 | 指すもの | 対象OS |
|---|---|---|
| 広告識別子・広告ID | 総称 | iOS・Android・Fire OS |
| ADID | 総称、またはAndroidの広告ID | 文脈による |
| MAID | Mobile Advertising IDの略・総称 | iOS・Android |
| IDFA | Identifier for Advertisers | iOS・iPadOS・tvOS |
| AAID・GAID | Google Play開発者サービスの広告ID | Android |
| Fire OSの広告ID | Amazonが発行する広告ID | Fire OS |
英語の「advertising identifier」は、Appleの開発者向けAPIの名前(advertisingIdentifier)でもあります。Google側の正式な呼び方は「広告ID(Advertising ID)」で、AAIDやGAIDは業界の通称です。
IDFAとAAIDの違い(取得条件・拒否時の値・ユーザー操作)
IDFAとAAIDは役割が同じで、違いは「アプリがIDを受け取れる条件」と「ユーザーができる操作」にあります。
| 項目 | IDFA(iOS) | AAID(Android) |
|---|---|---|
| 発行元 | Apple(AdSupport) | Google Play開発者サービス |
| アプリが受け取る条件 | ATTでユーザーが許可 | Android 13以降対象のアプリはAD_ID権限を宣言 |
| 受け取れないときの値 | 全ゼロ | ゼロの文字列 |
| ユーザーの操作 | トラッキングの許可・拒否 | リセット・削除 |
IDFA(iOS)はATTの許可が前提
iOS 14.5・iPadOS 14.5以降では、アプリはIDFAを取得する前にATT(App Tracking Transparency)でトラッキングの許可を求める必要があります。Appleのドキュメントによると、IDFAが全ゼロ(00000000-0000-0000-0000-000000000000)で返るのは、許可を求めていない場合、ユーザーが拒否した場合、構成プロファイルで制限されている場合、シミュレータ・macOS・visionOS上で動く場合です。Appleは「IDFAの値を保存せず、毎回取得する」ことも推奨しています(Apple Developer:advertisingIdentifier)。ATTの実装と個人情報との関係はIDFAとは?個人情報との関係とATTの同意・確認方法で扱っています。
AAID(Android)の削除時の値と取得権限
Androidの広告IDは、Google Play開発者サービスが提供する、ユーザーがリセット・削除できるIDです。2021年後半の更新で削除機能が加わり、削除済みのIDにアプリがアクセスすると、IDの代わりにゼロの文字列が返ります。展開はAndroid 12から始まり、2022年4月1日からGoogle Play対応の全デバイスに広がりました。また、Android 13以降をターゲットにするアプリは、マニフェストに com.google.android.gms.permission.AD_ID 権限を宣言する必要があり、宣言しないとユーザーが何も操作していなくても広告IDがゼロの文字列に置き換わります(Play Console ヘルプ:広告 ID)。Androidの広告IDの詳しい仕組みはAAIDとは?Androidの広告ID(ADID)の確認・リセット方法とIDFAとの違いにまとめています。
Fire OSはAmazon独自の広告ID
Fire OSを搭載するFireタブレットやFire TVでは、広告IDはGoogleのAAIDではなく、Amazonが発行する独自のIDです。Amazonの開発者ポリシーによると、広告IDとオプトアウトを使えるのはFire OS 5.1以降のタブレットとFire OS 5.2.1.1以降のTVで、アプリはGoogle Play開発者サービスではなく、システム設定の advertising_id と limit_ad_tracking の値を読みます(Amazon Developer:広告ID)。Fire端末向けにアプリを配信する場合は、Android用の取得処理をそのまま使えない点に注意が必要です。
広告識別子の確認・リセット・削除の手順
iPhoneでトラッキングを止める手順
現行のiOSの設定画面には、IDFAの値を表示する項目やリセットするボタンはありません。ユーザーが操作するのは、アプリにトラッキングを許すかどうかです。
- 「設定」>「プライバシーとセキュリティ」>「トラッキング」を開く。
- アプリごとのスイッチをオフにすると、そのアプリにはIDFAが全ゼロで渡る。
- 上部の「アプリからのトラッキング要求を許可」をオフにすると、アプリから許可を求める表示が出なくなる。
3の全体スイッチだけでは、すでに許可したアプリは止まりません。Appleのドキュメントは、許可した後に全体スイッチをオフにしても、そのアプリの個別スイッチがオンのまま残っていればIDFAが返ると説明しています。全体スイッチをオフにしたら、アプリごとのスイッチもオフになっているか確かめてください。
Appleのサポート記事は、トラッキングしないよう求めたアプリについて、IDFAにアクセスできないだけでなく、メールアドレスなど他の情報を使った追跡も認められないと説明しています(Apple サポート:アプリのトラッキングの透明性について)。
Androidで広告IDをリセット・削除する手順
- 「設定」>「プライバシー」>「広告」を開く(機種によっては「Google」>「広告」)。
- 新しいIDに替えるなら「広告 ID をリセットする」、使えなくするなら「広告 ID を削除する」をタップして確定する。
- リセット・削除の項目がなく、旧形式の設定が表示される場合は、「プライバシー」>「詳細設定」>「広告」の「広告のカスタマイズをオプトアウトする」をオンにする。
手順はPlay Console ヘルプの記載に沿っています(Play Console ヘルプ:広告 ID)。広告画面にリセットや削除のボタンが見当たらない場合は、すでに削除済みの可能性があります。
リセット・削除・トラッキング拒否で変わること
「リセットするとどうなるか」「削除にデメリットはあるか」は、アプリ側から見える値で考えると整理できます。
| 操作 | アプリが受け取る値 | 同じ広告IDによる継続的な照合 | 広告の表示 |
|---|---|---|---|
| Androidのリセット | 新しいID | できない | 続く |
| Androidの削除 | ゼロの文字列 | できない | 続く |
| iPhoneの拒否 | 全ゼロ | そのアプリではできない | 続く |
リセット後に古いIDと新しいIDをユーザーの明示的な同意なくつなぐことは、Googleのポリシーで禁止されています。Androidの公式ガイドは、Google Playのポリシーとして「ユーザーの明示的な同意なしに、リセットの際に新しい広告 ID を以前の広告 ID や以前の広告 ID からのデータにリンクしてはなりません」と引用しています(Android Developers)。
デメリットとして起こりうるのは、興味関心に合わせた広告が減り、表示される広告と自分の関心が合わなくなることです。広告が表示されなくなるわけではありません。Amazonのポリシーも、ページの内容に合わせて出すコンテキスト広告は広告IDに依存せず、オプトアウトの対象外だと明記しています。広告の関連性と引き換えに広告IDによる追跡を止められる、という関係なので、追跡が気になる場合は削除または拒否を選ぶとよいでしょう。
Cookie・端末IDとの違い
広告識別子と混同されやすい識別子を、「誰がリセットできるか」と「どの範囲で共通か」で比べます。
| 識別子 | 単位 | ユーザーがリセット | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 広告ID(IDFA・AAID) | 端末 | AAIDは可能・現行iOSのIDFAは設定ボタンなし | アプリ広告 |
| Cookie | ブラウザ×サイト | できる(削除) | Web広告・ログイン |
| IDFV(iOS) | 端末×開発元 | 開発元のアプリを全削除で変わる | 分析・不正防止 |
| アプリセットID(Android) | 端末×開発者アカウント、または端末×アプリ | 条件付きで変わる | 分析・不正防止 |
| IMEI・シリアル番号 | 端末 | できない | 通常のアプリは取得不可 |
Cookieはブラウザに保存され、アプリをまたいで共有されません。広告IDはアプリをまたぐ識別に使えますが、IDFAはアプリごとのATT許可、AAIDは削除状態や必要な権限宣言などによって取得できる値が変わります。Web側のCookieの仕組みはサードパーティCookieとは?仕組みとブラウザ別の扱いを解説【2026年最新】で解説しています。
IDFVは同じ開発元のアプリの間でだけ共通になるIDで、その開発元のアプリをすべて削除して入れ直すと変わります。Androidのアプリセット ID は、Google Play経由でインストールされ、開発者アカウントを特定できる場合は同じ開発者のアプリ間で共通になり、それ以外はアプリ単位になることがあります。開発者単位のIDは、13か月以上どのアプリからも使われない、最後のアプリがアンインストールされる、端末が初期化される、のいずれかでリセットされます(Android Developers:アプリセット ID)。IMEIとシリアル番号は、Android 10以降では取得が制限され、特権権限を持つアプリのほか、所定の端末管理アプリやキャリア権限を持つアプリなどに取得が認められます。
Google Playのポリシーは、広告目的で広告IDをSSAID・MACアドレス・IMEIなどの永続的なデバイス識別子と結び付けることを禁じ、個人を特定できる情報と結び付けるのはユーザーの明示的な同意がある場合に限っています(Play Console ヘルプ:ユーザーデータ)。分析や不正防止のように広告以外の目的なら、広告IDではなくアプリセット IDを使うのがGoogleの案内です。
2026年の規制と広告識別子の現状
iOSのATTによる取得制限と集計型の広告計測
ATTはiOS 14.5(2021年)で始まり、2026年も変わらずiOSの前提です。ATTで許可されないアプリはIDFAを取得できないため、IDFAだけでは許可のない利用者の広告成果を計測できません。代わりにAppleは、個人を特定しない集計結果を返すSKAdNetworkと、iOS 17.4で追加したAdAttributionKitを提供しています(Apple Developer:AdAttributionKit)。
Privacy Sandboxの廃止とAndroidの広告ID
Googleは2025年10月17日、Chrome版とAndroid版のTopics・Protected Audience・Attribution Reporting API、SDK Runtime、Protected App Signalsなどを廃止すると発表しました。理由は普及の低さとエコシステムからの評価で、CHIPS・FedCM・Private State Tokensは継続します(Privacy Sandbox:Update on Plans for Privacy Sandbox Technologies)。この発表はAndroidの広告IDの廃止時期を示していません。広告IDの利用可否は、Google Play開発者サービスの仕様とポリシーで確認してください。ChromeのサードパーティCookieの扱いはサードパーティCookie廃止の現在地と企業がとるべき対策【2026年最新】で追っています。
日本の法規制での広告IDの扱い
広告IDは、それ単体では氏名を含みませんが、個人情報に当たらないとは言い切れません。個人情報保護法では、他の情報と容易に照合して特定の個人を識別できれば個人情報になります。生存する個人に関する情報で、個人情報・仮名加工情報・匿名加工情報のいずれにも当たらないものは「個人関連情報」に該当します。個人関連情報を受け取った先で個人データになると想定される場合、提供元は本人の同意が得られていることを確認する義務があります(第31条)。業界団体JIAAの定義との違いはインフォマティブデータとは?JIAAの定義と個人情報・個人関連情報との違いを参照してください。
電気通信事業法の外部送信規律(2023年6月施行)では、送信される利用者情報の例に「広告ID等の識別符号」が挙げられています(個人情報保護委員会・総務省:電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドラインの解説)。ただし対象になるのは電気通信事業者と、省令で定める役務をブラウザやアプリで提供する事業者に限られ、自社の情報発信や自社商品のネット販売だけなら対象外です。自社が対象かどうかの判定は電気通信事業法とは?外部送信規律の対象判定とタグ管理・同意取得の実装要件を解説で整理しています。
事業者が広告識別子を扱うときの判断基準
アプリで広告を出す・広告から集客する事業者は、広告IDを取得できない端末があることを前提に、OS別の取得条件と自社の取得状況に応じて計測を設計します。判断の目安は次のとおりです。
- iOSの成果計測:IDFAが取れる一部の端末だけで判断しない。SKAdNetwork・AdAttributionKitの集計値を主にし、IDFAは許可が出た端末の補助として使う。
- Androidの成果計測:広告IDは使えるが、削除済みの端末はゼロの文字列になる。ゼロを1人のユーザーとして集計しないよう、計測側で除外する。
- 子ども向けアプリ:Google Playのファミリーポリシーでは、子どもだけを対象とするアプリはAAIDを送信できない。子どもと大人の両方が対象なら、成人と分かっている利用者に限られる(Play Console ヘルプ:ファミリー ポリシー)。
- 広告以外の分析・不正防止:iOS・Androidでは、用途に応じてIDFVやアプリセット ID、Firebase インストール IDなどを選ぶ。広告不正の検知など、広告IDの利用が認められる用途とは区別する。
避けるべきなのは、広告IDを会員IDの代わりにしてデータベースへ保存することです。Appleは値を保存しないよう推奨し、Googleはリセット前後のIDを同意なく結び付けることや、IMEIなどの永続的なIDとの関連付けを禁じています。ユーザーがリセットや削除をした瞬間に会員データとの対応が崩れるうえ、ポリシー違反でストアから警告を受ける原因になります。広告IDの扱いを含めてアプリの計測を設計し直す場合は、Androidアプリ開発の段階から計測の要件を決めておくと手戻りが減ります。アプリ広告を含む施策全体の組み立てはモバイルマーケティングとは?手法5分類とプラットフォーム選定の実務で解説しています。
よくある質問
Androidの広告IDとは何ですか?
Google Play開発者サービスが提供する、ユーザーがリセット・削除できる広告用のIDです。AAID・GAID・ADIDとも呼ばれます。Fire OSの端末はAmazonが発行する別の広告IDを使います。
ADIDの確認方法は?
Androidは「設定」>「プライバシー」>「広告」が広告IDの管理画面です(機種により「Google」>「広告」)。iPhoneの設定画面にはIDFAの値を表示する項目がなく、「設定」>「プライバシーとセキュリティ」>「トラッキング」で許可の状態だけを確認できます。
広告識別子をオフにするには?
iPhoneは「トラッキング」画面で各アプリの許可をオフにし、新たな許可要求も止める場合は「アプリからのトラッキング要求を許可」もオフにします。Androidは広告画面で「広告 ID を削除する」を選ぶと、アプリにはゼロの文字列が返るようになります。
広告IDを削除しても大丈夫?
Androidの広告IDを削除すると、アプリは広告IDの代わりにゼロの文字列を受け取るため、そのIDを使った広告配信や効果測定が制限されます。広告は引き続き表示され、関心に合わせた広告が減ります。アプリによっては独自の広告設定を持っており、表示される広告の種類にも影響が出ることがあるとGoogleは案内しています。
広告IDをリセットするとどうなりますか?
新しいIDに置き換わり、以前と同じ広告IDによる照合はできなくなりますが、保存済みの履歴が削除されるわけではありません。IDは有効なままなので、新しいIDで再びデータがたまり始めます。広告IDを使わせたくない場合は、Androidの削除かiPhoneのトラッキング拒否を選びます。ただし、サービス内の利用履歴収集などがすべて停止する操作ではありません。