情報セキュリティ10大脅威2026とは?組織編の順位変動とIPAの読み方・企業の対策優先度を解説
情報セキュリティ10大脅威は、IPA(情報処理推進機構)が前年に社会的な影響が大きかった脅威を選び、毎年1月下旬に公表するランキングです。2026年版は2026年1月29日に公表され、組織編では「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて3位に入りました。この記事では、組織編の全順位と2025年版からの入れ替わり、順位を対策の優先度とそのまま読んではいけない理由、そして自社のセキュリティ対策に落とし込む優先順位の付け方までを、IPAの一次情報に基づいて解説します。
目次
まとめ|10大脅威2026の要点と対策への落とし込み方
2026年版の組織編は、1位ランサム攻撃・2位サプライチェーン攻撃が2023年以降4年連続で不動、そこに「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初選出で3位に食い込んだ構図です。前年10位の「不注意による情報漏えい」がトップ10から外れ、地政学的リスクが7位から6位へ上がりました。顔ぶれの大枠は変わらず、AIという新しい軸が加わった年と読めます。
実務で押さえるべきは、順位をそのまま対策の優先度にしないことです。IPAの順位は社会全体で影響が大きかった順であり、自社にとってのリスクの高さとは一致しません。まず全脅威に共通して効く土台(多要素認証・EDR・脆弱性管理)を固め、次に自社の業態で現実味の高い脅威に重点を置きます。個人編が2025年版から順位を廃止し五十音順にしたのも、下位の軽視を防ぐ狙いでした。毎年の順位を眺めるだけで手が動かない状態を避け、自社で持つ範囲と外部に切り出す範囲を先に線引きしておくのが、このランキングの正しい使い方です。
情報セキュリティ10大脅威2026の定義とIPAが毎年公表する仕組み
順位を読む前に、この一覧が何を測ったものかを押さえます。前提を取り違えると、後の対策の優先順位まで狂うためです。
前年の重大事案から選定委員会が選ぶ「影響が大きかった脅威」という性格
情報セキュリティ10大脅威は、前年に発生した社会的に影響の大きいセキュリティ事案の中から、IPAが約200名規模の選考会(研究者・企業の実務担当者など)の投票で10件を選び、順位付けして公表するものです。2026年版は2026年1月29日、2025年版は2025年1月30日に公表されました。毎年1月末に前年分がまとまるサイクルなので、公表時点では「昨年何が起きたか」の総括にあたります。将来の脅威を予測したランキングではない、という点を最初に取り違えないでください。脅威の言葉の定義やセキュリティの3要素といった前提は、情報セキュリティとは何かと外注時の要件を整理した解説で全体像を確認できます。
組織編は順位あり・個人編は2025年版から順位を廃止した構成の違い
10大脅威は「組織」向けと「個人」向けの2本立てです。組織編は1位から10位まで順位を付けて公表します。一方の個人編は、2025年版から順位付けをやめ、10項目を五十音順で並べる形に変わりました。理由は、順位が高い脅威にばかり目が向き、下位の脅威への対策が手薄になるのを防ぐためです。この「順位は優先度ではない」という考え方は個人編を起点に示されましたが、組織編を読むときにも同じ姿勢が要ります。順位は関心を集める入口であって、対策の設計図ではありません。
情報セキュリティ10大脅威2026 組織編の全順位と前年からの変動
まず10位までの顔ぶれと、2025年版からどう動いたかを一覧で確認します。動いた項目にこそ、その年の傾向が表れます。
組織編1位から10位までの全順位と2025年版からの順位変動一覧
2026年版の組織編と、前年2025年版の順位を並べると次のとおりです。
| 2026年版の順位 | 脅威 | 2025年版の順位 | 動き |
|---|---|---|---|
| 1 | ランサム攻撃による被害 | 1 | 継続 |
| 2 | サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 | 2 | 継続 |
| 3 | AIの利用をめぐるサイバーリスク | 圏外 | 初選出 |
| 4 | システムの脆弱性を悪用した攻撃 | 3 | 1つ下降 |
| 5 | 機密情報を狙った標的型攻撃 | 5 | 継続 |
| 6 | 地政学的リスクに起因するサイバー攻撃 | 7 | 1つ上昇 |
| 7 | 内部不正による情報漏えい等 | 4 | 3つ下降 |
| 8 | リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃 | 6 | 2つ下降 |
| 9 | DDoS攻撃 | 8 | 1つ下降 |
| 10 | ビジネスメール詐欺 | 9 | 1つ下降 |
2025年版で10位だった「不注意による情報漏えい等」は、2026年版の組織編トップ10から外れました。新規に入ったのは3位のAI利用リスク1件で、残り9件は前年からの継続組です。上位2つが動かないまま、AIが割り込んだ形になります。
AIの利用をめぐるサイバーリスクが初選出で3位に入ったことの意味
2026年版で最も大きい変化は、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」がいきなり3位で初登場したことです。これは生成AIを狙う攻撃だけでなく、自社で生成AIを業務に取り込む過程で生じるリスク(社外秘データの入力による漏えい、AIの出力を検証せず使うことによる誤り、プロンプトインジェクションなど)を広く含みます。攻撃される側だけでなく、AIを使う側の運用の穴が脅威として認定された点が新しさです。AIを開発や社内業務に組み込む企業ほど、導入の便益と同時にこの入力・出力の管理を設計に織り込む必要があります。順位が示すのは「AI導入が進んだ結果、事故も現実に増えた」という事実です。
不注意による情報漏えいの圏外化と地政学的リスク上昇という入れ替わり
継続組の中でも上下は起きています。内部不正は4位から7位へ、リモートワークを狙う攻撃は6位から8位へ下がりました。逆に地政学的リスクは7位から6位へ上がっています。そして前年10位だった不注意による情報漏えいが圏外に落ちました。ここで下降・圏外を「もう対策しなくてよい」と読むのは誤りです。順位が下がった脅威は消えたのではなく、相対的に他の脅威の影響が目立った結果に過ぎません。不注意による漏えいは依然どの組織でも起こり得ます。この読み違いを防ぐ考え方を次章で整理します。
情報セキュリティ10大脅威の順位を対策の優先順位と混同しないための読み方
ランキングは扱い方を誤ると、かえって対策をゆがめます。順位に引きずられて自社に無関係な脅威へ資源を割く事故を避けるための読み方を示します。
順位は社会全体の影響度であって自社リスクの高さではないという前提
IPAの順位は、社会全体で影響が大きかった順に並んでいます。自社での発生確率や損害の大きさを測ったものではありません。たとえばDDoS攻撃は9位ですが、オンラインで直接収益を上げる事業者にとっては1位級の脅威になり得ます。外部との取引が少ない組織なら、逆にサプライチェーン攻撃の現実味は薄まります。同じ順位表でも、重みは自社の業態・扱う情報・システム構成しだいで組み替わるのが実情です。順位はあくまで「世の中で何が起きたか」の地図であり、自社の対策計画はその上に自分で線を引くものです。
個人編が順位を廃止した理由を組織編の読み方にも当てはめる考え方
個人編が2025年版から順位を廃した狙いは、上位偏重で下位を軽視する事態を防ぐことでした。この発想は組織編にもそのまま効きます。組織編には順位が付いていますが、対策を1位から順に潰していく進め方は現実的ではありません。10大脅威の多くは、多要素認証・EDR・脆弱性管理・従業員教育といった共通の土台で同時に軽減できるためです。順位ごとに個別の対策製品をそろえる発想は、コストがかさむ割に穴が残ります。順位は関心の入口として使い、実装は共通の土台から積むのが筋の良い順序です。
情報セキュリティ10大脅威2026を自社の対策に落とし込む優先順位の付け方
ここからは玉虫色にせず、企業が実際にどの順で手を動かすべきかを言い切ります。ランキングを眺めて終わらせないための実務の設計です。
全脅威に共通して効く土台から固める多要素認証・EDR・脆弱性管理
最初に着手すべきは、順位に関係なく大半の脅威に効く土台です。具体的には、全アカウントへの多要素認証、端末の不審な挙動を検知・遮断するEDRの導入、既知の脆弱性を放置しないパッチ運用の3つになります。ランサム攻撃も標的型攻撃もサプライチェーン攻撃も、多くは認証の突破と既知の脆弱性の悪用から始まります。土台を固めれば、上位から下位まで複数の脅威をまとめて軽減できるのが利点です。4位のシステムの脆弱性を悪用した攻撃について、自社にどの穴が残っているかを客観的に把握したい場合は、脆弱性診断の種類と費用相場・進め方をまとめた解説が具体的な判断材料になります。
上位3脅威(ランサム・サプライチェーン・AI)で自社が取るべき具体
土台の次は、影響の大きい上位3脅威への上乗せです。1位のランサム攻撃で効くのは、侵入を完全には防げない前提に立ち、入られても内部を自由に動かせない設計です。この考え方はゼロトラストの仕組みと導入判断の解説で詳しく確認できます。2位のサプライチェーン攻撃は自社単体では閉じないため、委託先とOSSの管理が軸になります。起点別の手口と対策の順序はサプライチェーン攻撃の3類型と対策の優先順位を整理した解説が詳しい。3位のAI利用リスクへの備えは、生成AIへ社外秘を入力しない運用ルールと、出力を検証する工程を業務フローに組み込むところから始めます。上位だからと構えず、既存の運用に上乗せする形で無理なく進められる打ち手を先に選ぶのが要点になります。
毎年順位を追うだけで対策が進まない失敗パターンと外注の線引き
最も避けたいのは、毎年の順位表を回覧して満足し、実装が1つも動かないパターンです。順位の増減は話題になりやすい一方、自社の設定変更や運用の見直しに落ちなければ、リスクは1ミリも下がりません。ここで自前主義に固執するのも失敗の元になります。脆弱性診断やSBOM整備、常時監視といった専門性の高い工程は、専任の運用者がいなければ形骸化します。中小企業が高度な統合監視基盤を先に買っても、使いこなせず費用だけが残るのが典型例です。自社で持つのは土台の運用まで、専門工程は外部に切り出す、という線引きを先に決めておくと投資の無駄が出ません。当社でも、Webシステム開発と併せてこうしたセキュリティ設計や外注範囲の相談を承っています。
よくある質問
情報セキュリティ10大脅威について、検索でよく調べられる疑問に簡潔に答えます。
情報セキュリティ10大脅威2026の1位は何ですか?
組織編の1位は「ランサム攻撃による被害」です。データを暗号化して復旧と引き換えに金銭を要求し、加えて盗んだ情報の公開をちらつかせる二重の脅迫が主流になっています。1位は2023年版以降4年連続で変わっておらず、企業にとって最も影響の大きい脅威という位置づけが続いています。個人編は2025年版から順位を廃止したため、1位という表現は使われていません。
情報セキュリティ10大脅威はいつ公表されますか?
IPAが毎年1月下旬に、前年に影響の大きかった脅威をまとめて公表します。2026年版は2026年1月29日、2025年版は2025年1月30日の公表でした。公表されるのは前年に起きた事案の総括であり、その年これから起きる脅威の予測ではない点に注意してください。年明けの発表後、解説資料や対策のしおりが順次追加で公開されます。
情報セキュリティ10大脅威2026で新しく入った脅威は何ですか?
組織編に初選出で入ったのは「AIの利用をめぐるサイバーリスク」で、いきなり3位でした。生成AIを狙う攻撃だけでなく、自社でAIを業務に使う際の情報漏えいや出力の誤りといった、使う側のリスクも含みます。入れ替わりで、2025年版で10位だった「不注意による情報漏えい等」が組織編のトップ10から外れました。
組織向けと個人向けの10大脅威は何が違うのですか?
対象読者と提示の仕方が違います。組織向けは企業・団体が直面する脅威を1位から10位まで順位付けして示します。個人向けはネット利用者が遭う脅威を扱い、2025年版からは順位を付けず五十音順で10項目を並べる形に変わりました。順位の高さに引きずられて下位の対策が疎かになるのを防ぐ、という配慮が背景にあります。
10大脅威の順位はそのまま対策の優先順位にしてよいですか?
そのまま使うのは適切ではありません。IPAの順位は社会全体での影響が大きかった順であり、自社での発生確率や損害額とは一致しないためです。DDoS攻撃のように全体では9位でも、事業内容によっては最優先になる脅威もあります。まず全脅威に共通して効く多要素認証やEDR、脆弱性管理の土台を固め、その上で自社の業態に照らして重点を決めるのが現実的です。
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