小1の壁とは?子どもの小学校入学で共働き家庭が直面する仕事と育児両立課題の実態と影響を徹底解説
目次
- 1 小1の壁とは?子どもの小学校入学で共働き家庭が直面する仕事と育児両立課題の実態と影響を徹底解説
- 2 小1の壁が起きる理由・原因:保育園と小学校の生活環境の違いがもたらす両立困難な現状を解説
- 3 小1の壁が与える影響:子どもの成長や家庭・職場への負担、親のキャリアに及ぶ影響を詳しく考察
- 4 共働き家庭が直面する課題:小1の壁で浮き彫りになる仕事と育児の両立の難しさと問題点を考察
- 5 学童保育や放課後の問題:小1の壁を深刻化させる放課後児童クラブ不足の現状と課題を詳しく解説
- 6 小学校入学前後のリアルな悩みと子ども・保護者の本音・体験談:親子が小1の壁で感じる不安と現実を紹介
- 7 小1の壁への具体的な対策と乗り越える方法:家庭で実践できる工夫や柔軟な働き方・支援サービスの活用などを徹底紹介
- 8 小1の壁に対する自治体・企業の取り組み:放課後子どもプランなど両立支援に向けた制度改革とサポート事例を詳しく紹介
小1の壁とは?子どもの小学校入学で共働き家庭が直面する仕事と育児両立課題の実態と影響を徹底解説
「小1の壁」とは、子どもが小学校に入学することを契機に、共働き家庭が仕事と子育ての両立の難しさに直面する状況を指します。保育園時代に比べ生活リズムや預け先が大きく変わり、これまで成り立っていたワークライフバランスが崩れてしまうことから、近年社会問題としても注目されています。実際、子どもの小学校入学を機に「仕事と家庭のバランスが一気に崩れた」と感じる保護者も多く、ある調査では4割近くの保護者がこの“小1の壁”を実感していると報告されています。小1の壁によって日々どんな課題が生じ、家庭や職場にどのような影響が及ぶのか、本記事ではその実態を専門的な視点で解説します。
小1の壁が起きる理由・原因:保育園と小学校の生活環境の違いがもたらす両立困難な現状を解説
子どもが保育園から小学校に上がると、生活環境や制度のギャップが一気に押し寄せ、共働き家庭にとって負担が増大します。小1の壁が生じる主な原因として、以下のような保育園と小学校の違いが挙げられます。
学童保育の不足と預かり時間のギャップ
小学校入学後は放課後に子どもを預かる学童保育(放課後児童クラブ)の定員不足が深刻で、希望しても入れないケースがあります。また、小学校は登校開始が遅めで下校時間も早く、学童の閉所時刻も保育園より早いため、保育園時代より預かり時間が短くなりがちです。その結果、仕事の時間とのミスマッチが生じ、両立が難しくなります。
時短勤務の利用制限
育児中の短時間勤務制度は法律上子どもが3歳になるまでしか企業に義務付けられておらず、その後は企業ごとの任意対応となります。多くの企業が時短制度の対象を「就学前まで」に限定しているため、小学校入学と同時に時短勤務が使えなくなる家庭も少なくありません。保育時間が短くなるうえ時短制度も終了することが、小1の壁を一層高いものにしています。
長期休暇への対応
小学校には春・夏・冬休みといった長期休暇があり、その間は学校も給食もお休みになります。学童保育が開所していても昼食の用意が必要ですし、学童自体が休みになる日もあります。共働き家庭にとっては、休暇中の子どもの過ごし方を確保するのが大きな課題で、「夏休みをどう乗り切るか」「これ以上仕事を休めない」といった悩みに直面しがちです。急な学級閉鎖や学校行事の振替休日で平日が休校になる場合もあり、その都度仕事を調整したり預け先を探したりする必要があります。
学校行事・PTA参加の増加
小学校に上がると平日の授業参観や保護者会、PTA活動など親の参加が求められる機会が増えます。PTA役員になれば平日昼間に休暇を取って活動することも必要になり、働く親にとって負担です。保育園時代に比べ親が関与すべき行事が増えることで、仕事との調整がさらに難しくなります。
低学年児童へのサポート増加
小学1年生・低学年のうちは、登校の身支度や宿題のチェックなど家庭でサポートが必要な場面が多々あります。例えば毎日の宿題の丸つけや音読の付き添い、学校の持ち物準備(名前付け等)など、子どもが自力では難しいことが多く、親の時間と手間がかかります。保育園では先生が面倒を見てくれていた部分も、小学校では家庭の負担となり、教育に費やす時間が増える傾向があります。
以上のように、保育園と小学校の制度・生活リズムの違いが重なることで、働く親はスケジュール調整や追加の育児対応を迫られます。結果として「思っていたよりも両立が難しい」という壁にぶつかる家庭が続出しているのです。
小1の壁が与える影響:子どもの成長や家庭・職場への負担、親のキャリアに及ぶ影響を詳しく考察
小1の壁による影響は、子ども・家庭・親のキャリアと多方面に及びます。ここではそれぞれの観点からその影響を詳しく見てみましょう。
子どもの成長への影響
生活環境の変化は子どもの心身にも影響します。学校生活では子どもなりに緊張や無理をして頑張っていることが多く、家ではその反動で情緒不安定になったり、癇癪を起こしたりするケースも報告されています。実際、「学校では120%頑張って問題なく過ごす子が、家ではストレスの反動で荒れてしまった」という親の声もありました。また、学童保育が狭く混雑した環境だと子どもが落ち着けずストレスを感じる場合もあり、そうしたメンタルケアの難しさに直面する家庭もあります。小1の壁によって子どもが不安定になったり、十分にリラックスできる居場所を失ったりすると、子どもの成長や安心感にも影響が及ぶ可能性があります。
家庭への負担・親子関係への影響
小1の壁は家庭内の生活にも大きな負担をもたらします。親は仕事の合間に育児や家事の比重を増やす必要が生じ、毎日時間との戦いに追われがちです。例えば「夕食やお風呂で手一杯の中、宿題の丸つけや音読につき合うのが毎日本当に大変」という声もあり、時間的余裕のなさが親のストレスとなっています。こうした親の余裕のなさは家庭の雰囲気にも影響し、親子の衝突が増えたり、家庭内に緊張感が生まれてしまう危険性も指摘されています。さらに、小1の壁をきっかけに夫婦間で「どちらが迎えに行くか」「仕事を調整するか」など役割分担を巡る葛藤が生まれることもあり、家庭全体に負荷と調整ごとが増える傾向があります。親自身も心身に負担を抱えやすくなり、ワークライフバランスの悪化による疲労や罪悪感を感じるケースも少なくありません。
親のキャリア・職場への影響
小1の壁は親の働き方やキャリアにも直接的な影響を与えます。子どもの小学校進学によって、「これまでと同じ働き方を続けるのは難しい」と感じる親は多く、実際に勤務形態の変更や離職を選択する人も出ています。2023年のある調査では、子どもの入学を機に 50.7% の保護者が働き方の見直しを検討し、そのうち 12.4% は正社員から別の雇用形態へ変更、27.4% は職場はそのままに短時間勤務へ切り替えたことが分かりました。このように、約4割もの親がキャリア上の調整を余儀なくされているのが実態です。また、「学童の預かり時間では家庭と両立できず、正社員として働けなくなった」という話を聞いたという声もあり、実際にフルタイム勤務を諦めるケースも出ています。親がキャリアを中断・縮小せざるを得ない状況は、企業側にも人材流出という形で影響し得ます。とくに30代〜40代は職場で中核を担う年代ですが、小1の壁によってこの層の社員が退職・異動すれば企業にとって貴重なリソースの損失となりかねません。育児と仕事の両立支援のために企業が制度整備を進めるにもコストがかかるため、小1の壁は企業にとって経営課題ともなっているのです。このように、小1の壁は家庭だけでなく職場にも波及し、親個人のキャリア継続や企業の人材確保に影響を及ぼす重大な問題といえます。
共働き家庭が直面する課題:小1の壁で浮き彫りになる仕事と育児の両立の難しさと問題点を考察
共働き家庭にとって、小1の壁が浮き彫りにしたのは日本における仕事と育児の両立環境の脆さです。この課題は決して一部の家庭だけでなく、現在では非常に多くの家庭に当てはまります。共働き世帯の数は年々増加し、2022年には約1,262万世帯にも達しており、今や夫婦共働きが一般的な社会となっています。その一方で、子どもが小学校に上がるタイミングで親が直面する両立困難は依然大きく、「小1の壁」は現代の共働き世帯が避けて通れない壁となっています。
小1の壁によって明らかになったのは、保育園から小学校への移行期における社会支援の手薄さです。保育園期には長時間の保育や延長保育で親をサポートできていたものが、小学校期には不十分で、制度の谷間が生じています。この谷間を埋める負担が各家庭にのしかかり、結果的に女性を中心としたキャリアの中断や、家庭内での過重な負担増につながっているのです。とりわけ日本では、育児や家事の負担が女性に偏りがちな傾向があり、小1の壁は働く母親のキャリア形成に大きな影を落とす要因の一つと指摘されています。「女性が安心して活躍し続けられる社会」を実現する上でも、小1の壁の解消は避けて通れない課題となっています。
また、小1の壁は家計の問題とも直結しています。現在の物価高や生活コストの中で、子育て世代の多くは「家族の生活を支えるため」に共働きを続けざるを得ません。ある調査では育児中の保護者の87.8%が「家計を支えるため」に働いていると回答しており、小1の壁によって両立に悩んでも経済的必要性から仕事を辞められない実態が浮き彫りになっています。つまり、小1の壁は個人の努力や根性で乗り越えるには限界がある構造的な問題であり、経済状況や労働環境の制約とも深く関わっているのです。
このように、小1の壁が示すのは、共働き家庭にとって日本社会で仕事と育児を両立することの依然として大きな困難です。それは保育・教育制度と労働環境のミスマッチによるものであり、各家庭だけでなく社会全体で解決すべき課題といえます。親の努力だけでなく、公的支援や企業の理解、周囲の協力といった多方面からの支えが必要であることを小1の壁は突き付けているのです。
学童保育や放課後の問題:小1の壁を深刻化させる放課後児童クラブ不足の現状と課題を詳しく解説
小1の壁の象徴的な要因の一つが、学童保育(放課後児童クラブ)の不足です。共働き家庭にとって、小学校入学後の放課後の居場所確保は死活的に重要ですが、現状では需要に供給が追いついていません。
放課後児童クラブの定員不足と待機児童
文部科学省とこども家庭庁の調査によれば、2023年度時点で全国の学童保育登録児童数は約151.9万人と過去最高に達していますが、それでもなお約1.8万人の待機児童(利用希望しても入れない児童)が存在し、前年より増加している状況です。学童の受け皿拡大が進んでいるものの需要の伸びに追いつかず、都市部を中心に「学童待機」が大きな問題となっています。特に1年生は優先的に入所できるよう自治体も配慮していますが、それでも「全員が入れる保証はないのでは」と不安になり、万一に備え別の手立てを探す保護者もいるほどです。学童に入れない場合、親が仕事を早退・時短するか、祖父母や民間サービスに頼るしかなく、家庭に大きな負担となります。
学童の利用時間とサービス内容の課題
運良く学童保育に入所できても、その利用時間の制約が壁となるケースも多いです。公設の学童クラブは一般的に夕方18〜19時頃に閉所するところが多く、保育園の延長保育(20時前後まで)に比べ短時間です。とりわけ長期休暇中は朝の開所時間が遅く(8時〜8時半以降)設定される学童もあり、「朝早く仕事に行かなければならない家庭には対応しきれない」という声もあります。ある保護者は「小学校の長期休暇中、学童が朝8時半以降しか預かってくれないため、職場の理解がなければ正社員を続けるのは難しいと痛感した」と述べており、職場の協力なしには学童の時間に親の勤務時間を合わせるのが困難な実情が伺えます。
学童の質と環境の問題
学童保育の質的な課題も指摘されています。施設やスタッフの不足から、一部の学童では子どもが「ぎゅうぎゅう詰め」状態で過ごしているとの声もあります。狭い空間に多数の児童がいる環境では、子どもが落ち着いて過ごせず疲れてしまったり、十分なケアを受けられなかったりする恐れがあります。また、学童の指導員不足も深刻で、待遇面や人員配置の課題から必要な数の支援員が確保できていない自治体もあります。受け皿を拡大しても指導員がいなければ運営に支障が出るため、人材確保も重要な課題です。
以上のように、放課後の預け先不足と学童の利用環境は小1の壁を大きくする主要因です。政府も待機児童解消に向け学童施設の拡充を進めていますが、それでもなお需要に追いつかない現状が続いています。共働き家庭にとって放課後を安心して託せる場所を確保することは切実なニーズであり、学童問題の解決なしに小1の壁問題の根本解決は難しいと言えるでしょう。
小学校入学前後のリアルな悩みと子ども・保護者の本音・体験談:親子が小1の壁で感じる不安と現実を紹介
小1の壁に直面した保護者からは、生々しい悩みや戸惑いの声が数多く聞かれます。ここでは実際の体験談や本音をいくつか紹介し、親子が感じる不安と現実を浮き彫りにします。
準備の大変さに戸惑う声
「入学前の説明会で必要な物品の細かな指定を知らされたが、白無地の下敷きひとつとっても細かい指定が多く、1ヶ月半で全部揃えるのは正直厳しいです」という声がありました。保育園とは異なる小学校の持ち物準備の多さに圧倒され、「こんなにあるなんて聞いてない」という悲鳴も上がっています。また、「学童の入会申込から決定まで時間がかかり、とてもヤキモキした。仕事をしていれば1年生は全員入れると言われていたが、万が一を考え神経をすり減らした」と、不確実な状況に不安を募らせた保護者もいました。さらに、「学級閉鎖時の預け先がないことに驚愕した」という声もあり、急な休校措置への備えがない現実に戸惑うケースもあります。
日々の時間との戦い
共働きの保護者からは、「宿題のチェックや丸付けなどに思いのほか時間がかかる。帰宅後は夕食やお風呂で手一杯なのに、丸付けや音読の付き添いなど低学年のうちは子どもが一人でこなせない宿題も多く、毎日が本当に大変です」という切実な声が聞かれました。また別の保護者は、「保育園では延長保育を利用したが、小学校の学童は18時半までのため仕事の時間調整がとても大変だった。さらに小学校の長期休暇中は学童が朝8時半以降からしか預からないため、職場の理解がなければ正社員として働き続けることは難しいと実感した。周囲からは『正社員として働けなくなった』という話も聞く中、自分は恵まれていると感じる場面も多く、その分仕事で精一杯貢献したいと思うようになった」と語っています。日々の時間調整や職場との協力なくしては乗り切れない現実が伝わってきます。
子どもの不安と親の葛藤
「入学後の子どものケアに苦労した。小学校の先生と合わず、学童も狭い建屋で子ども達がギュウギュウ詰めの状態で、子どもは気が休まらなかったようです。仕事を続けながら子どものケアは難しく、やむなく退職しました」と明かす保護者もいます。子どもの環境適応が上手くいかず、親が仕事との両立を断念せざるを得なかったケースです。また別の家庭では、「学校では『できる子』として振る舞って問題を起こさない娘が、家ではその反動で癇癪を起こすようになった。『やりたいこと』と『やらなければならないこと』の狭間で優先順位をつけるのが難しく、親子で衝突することもあった。時間と心の余裕が必要でした」という声も寄せられています。子どもなりに学校生活で頑張っている反面、家庭では甘えやストレスが噴出し、親もどう対応すべきか悩む現実が浮かび上がります。
これらのリアルな声から見えてくるのは、小1の壁が単なる制度上の不備だけではなく、各家庭の日常に潜む大小さまざまな困難の積み重ねであるという点です。入学準備、放課後の居場所、家庭学習のサポート、保護者参加行事への対応――一つひとつは些細なことに見えても、それらが同時並行で重なり合うことで家庭への負担は極めて大きくなります。そしてその負担の現れ方も、家庭の状況や子どもの個性によって様々です。「備えだけでは越えられない壁」とも言われるゆえんは、まさにこうした千差万別の課題があるからでしょう。
しかし同時に、これらの声は解決へのヒントも示しています。多くの保護者が挙げているように、小1の壁を乗り越える鍵は「家庭内の協力」と「職場の理解・柔軟性」にあると言われます。次の章では、こうした鍵を具体的な対策としてどのように実践できるか、詳しく紹介していきます。
小1の壁への具体的な対策と乗り越える方法:家庭で実践できる工夫や柔軟な働き方・支援サービスの活用などを徹底紹介
小1の壁を乗り越えるためには、家庭・職場・地域それぞれのレベルで工夫と対策を講じることが重要です。ここでは、共働き家庭が実践できる具体的な対策を紹介します。
家庭内で協力体制を築く
まず何よりも、夫婦や家族間で育児・家事の協力体制を強化することが不可欠です。小1の壁を感じた保護者が挙げた最も重要な要素も「配偶者の理解や協力」でした。送り迎えや宿題を見る担当を夫婦で分担したり、スケジュールを共有して交互に休みを取るなど、一人に負担を集中させない工夫をしましょう。家族内で事前によく話し合い、「困ったときはお互い様」で助け合える環境を整えることが、壁を乗り越える第一歩です。
職場に相談し柔軟な働き方を活用する
子どもの状況に合わせて働き方を見直すことも有効な対策です。可能であれば上司や職場に早めに相談し、勤務時間や働き方の調整を検討しましょう。具体的には、フレックスタイムの活用やテレワーク(在宅勤務)、時差出勤などの制度が利用できないか探ります。勤務先によっては時短勤務の期間延長を相談できる場合もあります。実際に小1の壁に直面した多くの親が、勤務時間の短縮や部署異動、場合によっては転職まで含め検討しています。まずは現職で利用できる制度を上司に確認し、働き方の選択肢を洗い出すことが大切です。職場には生活スタイルの変化(送迎時間など)を具体的に伝え、理解と配慮を得られるよう努めましょう。職場側の柔軟性が得られれば、フルタイム勤務を続けながらでも壁を乗り越えやすくなります。
学童保育や放課後預かり施設を最大限活用する
公的な放課後預かり施設を積極的に利用することも基本となる対策です。自治体の学童保育(放課後児童クラブ)のほか、全児童を対象とした放課後子ども教室(文科省管轄)や、NPO等が運営する民間学童など様々なタイプの施設があります。地域によって申込時期が異なるため、入学前から情報収集し早めに申し込むことが肝心です。万一公立学童に入れなかった場合に備えて、近隣の民間学童や習い事付きの預かりサービスなどもリサーチしておきましょう。民間学童は費用がかかりますが、プログラムが充実していたり延長対応がある場合もあります。自治体によっては一部費用補助制度があることも確認してください。いずれにせよ、放課後の居場所確保は最優先課題なので、利用可能な施設は遠慮なく頼りましょう。
地域の相互支援サービスを活用する
公的制度として各市町村に設置されているファミリー・サポート・センターを活用するのも有効です。ファミリー・サポート・センターは、子どもの送迎や一時預かりの支援を受けたい人(依頼会員)と支援できる人(提供会員)をマッチングする地域の相互援助サービスで、全国約1000か所で展開されています。例えば「下校後に学童まで送り届けてほしい」「夕方少しだけ子どもをみてほしい」といったニーズに、近隣の提供会員さんが応じてくれる仕組みです。利用料は自治体により異なりますが1時間あたり500~800円程度が多く、一般的なベビーシッターより安価なのが特徴です。緊急時にも柔軟に対応してもらえる心強いサービスなので、自治体の窓口で登録しておくと安心でしょう。
民間サービスや代替手段を検討する
公的資源だけで手が足りない場合、民間の育児サービスの利用も選択肢に入れましょう。例えば、習い事教室が放課後に子どもを預かってくれるサービス(学童代わりに習い事スクールに通わせる)、有資格のキッズシッターに自宅で子どもを見てもらう、タクシー会社等の子ども送迎サービスを利用して習い事や自宅まで送り届けてもらう、といった方法があります。民間のベビーシッターや送迎サービスは料金が高めですが、政府の「ベビーシッター利用支援事業」による補助制度が拡充され、条件を満たせば費用の一部補助を受けられる場合もあります。ただし、現状では家事代行やキッズシッターの利用は費用面・心理的ハードルから現実的な選択肢と感じていない家庭が多いのも事実です。利用に当たっては家計や子どもの性格も考慮しつつ、信頼できるサービスを見極めることが大切です。
時間管理と生活リズムの工夫
日々の暮らしの中で小さな工夫を重ねることも壁突破につながります。例えば、前日の夜に持ち物チェックや宿題の確認を親子で済ませておくことで朝のドタバタを減らす、長期休暇中の学童が休みの日は職場の有休取得計画を夫婦で調整しておく、学校行事の予定は家族カレンダーに共有し早めに仕事の調整を依頼する、といったスケジュール管理術は効果的です。さらに、子どもが徐々に自分のことを自分でできるよう自立心を育てることも、親の負担軽減につながります。ランドセルの準備や連絡帳の確認などを少しずつ子ども自身の習慣にしていくことで、親の手を貸す場面を減らしていけるでしょう。完璧を求めすぎず、おおらかに見守りつつ自立を促すことが大切です。
子どもの安全見守り対策
放課後や登下校時、子どもが一人になる時間帯の安全対策ツールも取り入れましょう。最近はGPS機能付きの見守り端末や、子ども用携帯電話、留守番中の室内を見守るカメラなど手軽に利用できる機器が増えています。例えばランドセルにGPSタグを入れておけば登下校の位置を把握できますし、子どもが自宅で留守番する場合はインターネット経由で室内の様子を確認できるカメラを設置しておくと安心です。テクノロジーの力も借りて安全ネットを張りつつ、子どもには緊急時の連絡方法やルールを教えておくことで、親が側にいない時間の不安を少しでも和らげることができます。
以上のように、家庭でできる工夫から職場・地域のサービスまであらゆる支援策を組み合わせることで、小1の壁は乗り越えやすくなります。特に「家庭内のチームワーク」と「職場・周囲のサポート」を柱に、利用できる制度やサービスは遠慮なく活用していく姿勢が重要です。一つひとつの対策が小さくても、組み合わせていくことで負担を大幅に軽減できるでしょう。
小1の壁に対する自治体・企業の取り組み:放課後子どもプランなど両立支援に向けた制度改革とサポート事例を詳しく紹介
小1の壁問題を解決するために、自治体や企業もさまざまな取り組みを進めています。社会全体で両立を支える仕組み作りが求められている中、その代表的な制度改革やサポート事例を紹介します。
国の制度改革・施策
国は小1の壁を少子化対策・女性活躍の観点からも重要な課題と位置づけ、関連施策を講じてきました。まず2014年度には厚生労働省と文部科学省の連携による「放課後子ども総合プラン」が策定され、2019年度末までに約30万人分の学童保育受け皿を新設する目標のもと学童拡充が進められました。その後、共働き家庭のさらなる増加を見込み、2018年にはより高い目標を掲げた「新・放課後子ども総合プラン」がスタートし、2021年度末までに追加で約25万人分、2023年度末までに計30万人分の受け皿整備を目指す計画が進められています。これらのプランによって学童の定員拡大が図られ、実際に待機児童数は一時減少傾向を見せました。さらに直近では、政府が「放課後児童対策パッケージ2025」を取りまとめ、令和5~6年度(2023~2024年)に集中して学童の待機児童解消と居場所拡充に取り組む方針を打ち出しています。このパッケージはこども家庭庁と文科省が共同で策定したもので、共働き家庭が直面する小1の壁を打破すべく、学童の増設や運営改善に予算・運用両面からテコ入れするものです。
また、労働政策面では2019年施行の働き方改革関連法により長時間労働是正や有給休暇取得の義務化がなされ、テレワーク推進など柔軟な働き方の普及も図られてきました。これらは直接「小1の壁」を名目とした施策ではありませんが、社員が仕事と家庭を両立しやすい職場環境づくりを進めることで、結果的に小1の壁の圧力を和らげる効果が期待されています。さらに、2015年に始まった子ども・子育て支援新制度では、自治体への交付金を通じ放課後児童クラブの整備や運営支援も進められました。このように国の制度改革は多方面から少しずつではありますが、小1の壁の背景にある問題(保育の受け皿不足や働き方の硬直性など)にアプローチしています。
自治体の取り組み
各自治体でも、地域の実情に応じて独自の支援策を講じています。代表的なものの一つが放課後子ども教室と学童保育の一体的実施です。例えば文科省の推進する放課後子ども教室(全児童対象の居場所)と厚労省所管の学童クラブを小学校内で一緒に運営する自治体が増えており、放課後に全ての児童が安全に過ごせる環境づくりが進められています。これにより学童に入れなかった子も学校内の教室でボランティアらの見守りの下で過ごせるよう配慮されています。また、自治体によっては朝の校庭開放など独自の取り組みもあります。例えば一部地域では学校が登校前に校庭や体育館を開放し、早い時間から子どもを受け入れる仕組みを設けています。親が出勤する時間帯に子どもを学校で預かってもらえるため助かるとの声もあります。ただ実施は自治体ごとに異なり、人手の確保も課題となるため、普及はこれからです。
さらに、自治体はファミリー・サポート・センター事業の拡充や、一時預かり施設の整備、病児保育施設の提供など、ピンポイントのニーズに応じたサービスも提供しています。学童待機児童が多い自治体では、民間学童への補助金交付や、小学校区ごとに児童館・学童を新設する計画を立てているケースもあります。千葉市などでは「放課後子どもプラン」を掲げ、行政と地域が連携して全児童の放課後の居場所づくりを推進するモデル事業も報告されています。このように自治体レベルでは創意工夫を凝らした支援策が広がりつつあり、徐々にではありますが地域差の是正にも寄与していくことが期待されます。
企業の取り組み
民間企業側でも、社員の小1の壁支援に乗り出す例が増えています。優秀な人材の離職を防ぐため、柔軟な勤務制度や独自のサポートを整備する企業が出てきました。具体的には、フレックスタイム制や在宅勤務制度を導入して子どもの送り迎え時間に対応しやすくしたり、子どもの長期休暇中に使える特別休暇制度を設けたりする企業があります。また、大手企業の中には事業所内に託児・学童施設を併設するところも出てきました。例えば社員のお子さん向けの「学童ルーム」をオフィスに用意し、放課後に専任スタッフが宿題を見たり遊び相手になったりするサービスを提供する企業も一部あります(※具体的企業名は非公表)。その他、子育て社員向けの福利厚生としてベビーシッター利用補助券を支給したり、学童保育料を一部負担するといった経済的支援を行う企業もあります。
さらに近年注目されるのは、職場風土の改革です。小1の壁を乗り越えるには上司や同僚の理解が欠かせないことから、社員研修で育児中社員への配慮を呼びかけたり、管理職に対して部下の両立支援の必要性を啓発する企業も増えています。育児中の男性社員にも積極的に育休や時短を取得させる取り組み(男性育休の促進)は、女性だけに負荷が偏らないようにする上で重要です。例えば「子どもが小学1年生になる社員には男女問わず一定期間のテレワーク勤務を認める」といった制度を設けた企業もあります。こうした企業努力にはコストも伴いますが、中長期的に優秀な人材をつなぎとめるためには必要な投資との認識が広がりつつあります。実際、子育て支援制度が充実した企業ほど社員の定着率が高まったり、採用面でも魅力になるといったメリットも報告されています。
社会全体で支える体制づくり
小1の壁への取り組みで鍵となるのは、家庭・企業・行政が一体となって支援の輪を作ることです。家庭内の努力だけでも、企業の制度だけでも不十分で、双方をつなぐ地域や行政のサポートも含めたチームアプローチが求められます。国も企業も、「誰もが安心して子育てと仕事を両立できる社会」を目標に掲げ、経済的支援策やサービス拡充、人々の意識改革に取り組み始めています。公明党などは学童の待機児童解消に向けた受け皿拡大や人材確保を国会で推進してきた経緯があり、同党の後押しで放課後子ども総合プランの達成時期が1年前倒しになったとも報じられています。こうした政治の動きも含め、少しずつではありますが前進は続いています。
とはいえ、小1の壁は長年根強く存在してきた問題であり、まだまだ改善の余地が大きいのも事実です。しかし、課題が明らかになった今だからこそ解決に向けた動きも加速していると言えるでしょう。家庭と企業と行政が垣根を越えて協力し合い、知恵とリソースを出し合うことで、「小1の壁」という高い障害もきっと乗り越えられるはずです。誰もが安心して仕事と子育てを両立できる社会の実現に向け、今後もさらなる制度改革とサポート充実が望まれます。そして何より、実際に奮闘する親たちの声を拾い上げ、そのニーズに沿ったきめ細かな支援策を講じていくことが、小1の壁解消への近道となるでしょう。社会全体で子育て世代を支える温かな環境づくりに向けて、引き続き前向きな取り組みが求められています。