シェアド・リーダーシップ徹底解説:全員がリーダーとなる新しいリーダーシップとは

目次
- 1 シェアド・リーダーシップとは何か?全員がリーダーとなる新しいリーダーシップの在り方をわかりやすく徹底解説
- 2 シェアド・リーダーシップの特徴とは?共同リーダー制がもたらすチームの自律性と創造性を生むメカニズムを徹底解説
- 3 シェアド・リーダーシップのメリット・効果とは?チーム力向上やイノベーション促進など組織にもたらす利点を詳しく解説
- 4 シェアド・リーダーシップの導入事例・成功事例:大手企業に見る具体的な組織変革の複数の実践例を詳しく紹介
- 5 シェアド・リーダーシップが必要とされる背景とは?現代のビジネス環境と働き方の変化から必要性を探ります
- 6 シェアド・リーダーシップを実現するための方法・ポイント:信頼醸成やビジョン共有、権限委譲など成功の鍵を紹介
- 7 シェアド・リーダーシップの課題・注意点とは?責任範囲の明確化や意思決定停滞のリスクなど導入時に直面する課題を詳しく解説
- 8 シェアド・リーダーシップと従来型リーダーシップの比較:リーダーの役割や意思決定プロセス、人材育成への影響など、その違いを解説
- 9 チームでのシェアド・リーダーシップ実践例:プロジェクトチームにおける役割分担と自主的リーダーシップ発揮のストーリーを紹介
- 10 シェアド・リーダーシップがもたらす組織の変化:エンゲージメント向上や組織文化の革新などポジティブな影響を詳しく解説
シェアド・リーダーシップとは何か?全員がリーダーとなる新しいリーダーシップの在り方をわかりやすく徹底解説
シェアド・リーダーシップ(Shared Leadership)とは、文字通りリーダーシップをメンバー間で「共有」する手法です。一人のリーダーがチームを牽引するのではなく、チームに属する全てのメンバーがリーダーとして行動し、責任を共有する状態を指します。従来のリーダーシップが上下のヒエラルキーによる垂直型の構造であったのに対し、シェアド・リーダーシップはメンバー同士の水平のつながりを重視した水平型の関係性を持つのが特徴です。つまり組織内でリーダーシップが一極集中せず、メンバー全員がそれぞれの立場や専門性を活かしてリーダーシップを発揮する、新しいリーダーシップの在り方と言えます。
シェアド・リーダーシップの特徴とは?共同リーダー制がもたらすチームの自律性と創造性を生むメカニズムを徹底解説
シェアド・リーダーシップの最大の特徴は、リーダーシップが固定的な役職ではなく状況に応じて湧き上がる動的なプロセスであることです。特定のリーダーが常に指揮を執るのではなく、プロジェクトの状況や課題に応じて誰もがリーダーになり得るため、必要に応じてリーダー役が入れ替わります。メンバー各自が専門知識や強みを活かし合い、互いに影響を与え合いながらリーダーの役割を担い合うことで、チーム全体が自律的に動く一方で一体感も保たれるのです。また、従来のようにリーダーが一方的に指示を出すのではなく、メンバー全員が意見を出し協力し合う双方向の対話によって物事を進めていくため、多様な視点やアイデアが生まれやすいという特徴もあります。このような共同リーダー制により、チームには高い自主性が育まれると同時に創造性が引き出され、柔軟な問題解決が可能になります。
シェアド・リーダーシップのメリット・効果とは?チーム力向上やイノベーション促進など組織にもたらす利点を詳しく解説
シェアド・リーダーシップを導入すると、組織やチームにもたらされる主なメリットとして次のような点が挙げられます。
課題解決力の向上
メンバー全員がそれぞれの専門知識や経験を持ち寄り、多角的なアプローチで問題に取り組めるため、チーム全体の課題解決能力が高まります。一人のリーダーに頼るのではなく、チーム内の全員がリーダーシップを発揮して協力することで、複雑な課題にも効果的に対処できるようになります。
創造性・イノベーションの促進
異なるバックグラウンドを持つメンバー同士が主体的にアイデアを出し合う環境が生まれるため、新しい発想や斬新な戦略が生まれやすくなります。シェアド・リーダーシップにおける多様な視点の融合が、チーム内にイノベーションを起こす土壌を育みます。
エンゲージメントの向上
メンバー各自が役割と責任を担い合うことで当事者意識が芽生え、仕事への主体的な関与度(エンゲージメント)が高まります。自分の強みを最大限発揮してチームに貢献できるため、メンバー一人ひとりのモチベーションも向上し、結果的に組織全体の課題対応力が強化されます。
成果・パフォーマンスの向上
リーダーシップが一人に集中しないことで組織内の知識共有が進み、メンバー全員の主体的かつ責任ある行動によって持続的に成果が向上する傾向があります。シェアド・リーダーシップはメンバーのモチベーションを高めつつ自律的な行動を促すため、変化の激しい環境下でも組織の業績向上に寄与するとされています。
人材育成とリーダーの増加
メンバー全員にリーダーシップ発揮の機会があるため、次世代リーダーの育成にもつながります。チーム内で様々な人がリーダー役を経験することで、メンバー各自の成長が促進され、組織全体のリーダー層が厚くなる効果も期待できます。
シェアド・リーダーシップの導入事例・成功事例:大手企業に見る具体的な組織変革の複数の実践例を詳しく紹介
実際にシェアド・リーダーシップを導入して成果を上げている企業の例をいくつか紹介します。
キヤノンマーケティングジャパン株式会社
グループ初の取り組みとなる新規案件に対応するために、営業、企画、ITスペシャリスト、市場品質など各分野の専門スキルを持つメンバー10名でプロジェクトチームを結成し、シェアド・リーダーシップを活用しました。メンバー全員が互いのスキルや立場を考慮しつつ主体的に役割を果たし、必要に応じて周囲を巻き込みながら進めた結果、全員が同じ方向を向いて協働し、顧客の課題解決に成功しています。
株式会社JR東日本テクノハートTESSEI
新幹線車両清掃を担う同社では、「おもてなし経営」の一環として仕事の再定義を行う中でシェアド・リーダーシップを導入しました。現場のメンバーそれぞれが顧客のために主体的に動き、清掃業務の改善提案を行うようになり、社員の主体性が大きく向上しています。また自主的な活動を促進するために表彰制度の導入や「エンジェルレポート」の活用など工夫し、社員一人ひとりのリーダーシップ発揮を後押ししています。
カルビー株式会社
社員一人ひとりの持ち味や個性を尊重し、全員が活躍できる組織づくりに注力しています。シェアド・リーダーシップを根付かせるため、まず人事制度を見直し、従来の年功序列型の給与体系から、企業の価値観に沿ったバリュー評価制度へと刷新しました。500件の社員提案を基に策定した「Calbee 5 Values」に沿って上司と部下が行動目標を設定し、達成度を評価する仕組みに変えることで、年次に関係なく主体的に行動できる風土を醸成しています。さらに2020年7月には「Calbee New Workstyle」を導入し、「圧倒的当事者意識」をキーワードに働き方改革を推進しました。モバイルワークの標準化やフルフレックスタイム制の導入など多様な働き方を可能にするとともに、社員が自ら手を挙げて部署異動を希望できる制度や社内副業の解禁など、社員全員が主体的にキャリアを切り拓ける企業文化を築いています。
シェアド・リーダーシップが必要とされる背景とは?現代のビジネス環境と働き方の変化から必要性を探ります
なぜ今、シェアド・リーダーシップが求められるのでしょうか。その背景には、現代のビジネス環境と働き方の大きな変化があります。
まず、現在はVUCA(ブーカ)の時代と呼ばれるように、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性が高まった環境下にあります。変化の激しい状況では一人のリーダーだけで組織を導くことに限界があり、一人に頼らずチームの全員が自分の得意分野を活かしてリードする体制が求められています。事実、VUCA時代を生き残るためには従来型のリーダーシップでは対応が難しいとの声が高まっており、チームに属する全員がリーダーシップを発揮することで柔軟かつ迅速に対応する必要性が指摘されています。このため、組織全体の俊敏性と適応力を高める手段としてシェアド・リーダーシップが注目されているのです。
さらに、ビジネス環境の多様化や働き方の変化も背景にあります。グローバル化やテクノロジーの進展により企業を取り巻く状況は高度化・複雑化し、リモートワークの普及やフラットな組織志向の高まりなどで従来の上下関係に依存したリーダーシップでは十分に機能しない場面が増えてきました。また若手社員をはじめとする従業員の意識も変化し、トップダウンよりも自分も意思決定に関わりたい、自律的に働きたいという傾向が強まっています。こうした中で、メンバー一人ひとりの主体性と創造性を活かせるシェアド・リーダーシップの必要性が高まっているのです。つまり現代の組織にとって、シェアド・リーダーシップは時代の要請に応える「必然の道」と言えるでしょう。
シェアド・リーダーシップを実現するための方法・ポイント:信頼醸成やビジョン共有、権限委譲など成功の鍵を紹介
シェアド・リーダーシップを組織で上手く機能させるには、いくつか重要なポイントがあります。それぞれのポイントとその具体的な内容を解説します。
共通のビジョンを共有する
チーム全員が同じ目標やビジョンを理解し共有していることが前提となります。ゴールや方向性が不明確だとメンバーの行動がばらばらになりかねません。シンプルで分かりやすいビジョンを示し、「何のために協力するのか」を腹落ちさせることで、チームとしてまとまり主体的に動ける土台ができます。
信頼関係を醸成する
メンバー間の十分な信頼とオープンなコミュニケーションはシェアド・リーダーシップの生命線です。立場に関係なく自由に意見を交わせる空気を作り、日常的に対話する文化を根付かせましょう。メンバー同士が深く信頼し合えば、たとえ意見の対立や誤解が生じても建設的に議論でき、組織全体で一丸となって課題に向き合えるようになります。心理的安全性の高い環境を整えることで、誰もが安心してリーダーシップを発揮・フォローできる雰囲気を作ることが重要です。
権限委譲(エンパワーメント)を行う
ビジョンの下でメンバーが自主的に意思決定し行動できるよう、リーダーはメンバーに権限を思い切って委譲する必要があります。トップが全て決めるのではなく、適切な範囲で決定権を現場に委ねることで、各人が自分事としてリーダーシップを発揮しやすくなります。ただし経験の浅いメンバーにいきなり大きな権限を与えると戸惑う場合もあるため、定期的な面談フォローや段階的な権限移譲など、状況に応じたサポートも行いましょう。
フォロワーシップを育む
シェアド・リーダーシップでは全員がリーダーになり得る一方で、他のメンバーを支えるフォロワーシップも同様に重要です。リーダーシップとフォロワーシップは車の両輪であり、互いに補完し合って初めて組織がうまく機能します。状況に応じて自分が前に立つだけでなく、他のメンバーがリードしている時には積極的に協力・支援する姿勢が求められます。必要に応じてリーダーに建設的な意見具申や提言を行う力も含め、「良きリーダーであると同時に良きフォロワーでもある」という意識をチーム全員が持つことがポイントです。
教育・研修でスキルを底上げする
シェアド・リーダーシップを定着させるには、メンバー全員が必要な知識やスキルを身につけていることも大切です。社内外の研修やトレーニングを活用してリーダーシップ能力や対話力を育成することも有効でしょう。例えばリーダーシップ研修やチームビルディング研修などを通じて、シェアド・リーダーシップの理念と具体的な実践方法を学ぶ機会を設けます。全社員が体系的に学び共通言語を持つことで、現場で正しい理論に基づいたリーダーシップ共有が行いやすくなります。
シェアド・リーダーシップの課題・注意点とは?責任範囲の明確化や意思決定停滞のリスクなど導入時に直面する課題を詳しく解説
メリットが多いシェアド・リーダーシップですが、導入・実践にあたって注意すべき課題も存在します。主な課題を以下に挙げ、その内容を解説します。
責任の所在が不明確になりやすい
リーダーが一人ではなくチーム全員となる分、トラブル発生時に「誰が最終責任を負うのか」が曖昧になりやすいという指摘があります。責任分担が不明確なままだと対応の遅れや混乱を招く恐れがあるほか、組織内外から見た信頼性にも影響しかねません。そのためシェアド・リーダーシップを導入する際には、プロジェクトごとに責任範囲を明確化するルール作りや、万一の場合に迅速に対応できる体制整備が重要となります。
意思決定に時間がかかるリスク
複数のメンバーが意思決定に関与するため、合意形成に時間を要し意思決定スピードが低下する可能性があります。メンバー各自が意見を持ち寄るのはメリットですが、その反面、意見の衝突や調整に時間を取られてしまうことも少なくありません。特に目標や方針の共有が不十分な場合、チームの方向性がばらばらになり意思決定が停滞する恐れがあります。この課題に対しては、あらかじめチーム内の意思決定プロセスや役割分担のルールを決めておくなどの対策が有効です。
リーダーシップを望まないメンバーの存在
全員がリーダーを担う前提とはいえ、中にはリーダーシップ発揮に消極的なメンバーもいます。リーダーの役割を共有することでモチベーションが上がる人ばかりではなく、責任負担を負いたくない、指示された方が楽だと感じる人も一定数いるでしょう。このようなメンバーに無理にリーダー役を求めると不満や抵抗感を生み、チームワークに支障をきたす可能性があります。導入時には各人の意向や得手不得手をヒアリングし、一律にリーダー役を強制しない配慮も必要です。
リーダー未経験者へのフォローが必要
リーダー経験の浅いメンバーがリーダーシップを担う場合、チームをまとめきれずメリットを十分活かせないケースもあります。リーダーシップを発揮するといっても簡単ではなく、最初は戸惑う人も少なくありません。そのため周囲のサポート体制が不可欠です。具体的には、経験豊富なリーダーがメンターとなって助言したり、複数人体制でフォローしたりといった仕組みを用意するとよいでしょう。リーダー未経験者が安心して一歩踏み出せる環境を整えることで、徐々に全員リーダーの風土を醸成できます。
信頼・コミュニケーション不足による失敗
シェアド・リーダーシップは前述の通り信頼関係と対話が土台です。そのため、メンバー間の信頼や十分なコミュニケーションが構築できない場合、リーダーシップの共有がうまく機能しない恐れがあります。互いに疑心暗鬼の状態ではリーダーを任せ合うことは難しく、結局物事が進まなくなってしまいます。導入にあたっては、日頃から対話の機会を増やしチームビルディングを図るなど、信頼醸成に時間を割くことが重要です。
定着・浸透に時間がかかる
シェアド・リーダーシップという考え方自体、従来の上下関係に慣れた組織にとっては馴染みが薄い場合があります。組織内にこの新しいリーダーシップが浸透し環境が整うまでに時間がかかる点も課題の一つです。十分な理解がないまま形だけ導入してしまうと、「結局リーダー不在のまま誰も決められない」という事態に陥り、業務が非効率になるリスクもあります。したがって導入の際は、段階的にトライアルを行って徐々に範囲を広げたり、トップ自ら趣旨を説明して上層部から下位層まで腹落ちさせるといった丁寧なプロセスが必要です。
シェアド・リーダーシップと従来型リーダーシップの比較:リーダーの役割や意思決定プロセス、人材育成への影響など、その違いを解説
両者の具体的な違いをいくつかの観点から整理すると次の通りです。
リーダーの役割と権限
従来型ではリーダーが明確に一人定められ、その人物が組織の方向性を決定しメンバーに指示を下すという形を取ります。リーダーには公式な権限が集中し、メンバーは基本的に指示に従うフォロワーです。一方シェアド・リーダーシップでは、リーダーの役割は固定されずチーム内で分散・共有されます。役職上のリーダーが存在しても、その人だけが常に指揮を執るのではなく、必要に応じてメンバー誰もがリーダーシップを発揮する点が大きな違いです。つまり「一人のリーダーが皆を引っ張る」のではなく「皆で支え合いながら組織を導く」のがシェアド・リーダーシップなのです。公式のリーダーがいる場合でも、役割はコーディネーターやファシリテーター的な立ち位置になり、決定や運営自体はチーム全員で担います。
意思決定プロセス
従来型リーダーシップでは、重要な意思決定はリーダー一人に委ねられることが多く、その分意思決定は迅速ですがメンバーの意見が十分反映されない場合もあります。シェアド・リーダーシップでは、チーム内での対話と合意によって意思決定が行われる点で異なります。メンバー全員が議論に参加し、多様な知見を持ち寄って結論を導くため、意思決定の質は高まりますが合意形成に時間を要することもあります。またシェアド・リーダーシップでは「一つの声(トップの指示)ではなく、対話から生まれる共鳴によって組織を動かす」という考え方が重視されるため、トップダウン型に比べ意思決定プロセス自体が双方向的で民主的です。その結果、決定事項に対するメンバーの納得感・コミットメントは高くなりますが、緊急時の即断即決には工夫が必要になるでしょう。
メンバーの成長とモチベーションへの影響
従来型では一人のカリスマ的リーダーがチームを牽引し、他のメンバーは指示に従う立場になりがちです。そのためメンバーは「言われたことをこなす」意識に留まり、自分で考える機会を失って不満を感じる場合もあります。実際、トップダウン型ではメンバーの主体性を維持するのが難しく、受動的になりがちです。これに対しシェアド・リーダーシップ下では、メンバー全員が意思決定やリーダー役割に関与する機会を得るため、当事者意識が芽生えモチベーションが向上します。自分の意見やアイデアをチームに反映できることで、「自分も組織に貢献している」という実感が得られ、組織に対するエンゲージメントも高まります。また、多くのメンバーがリーダーシップを経験することで人材育成の面でも効果的であり、組織全体として将来的なリーダー候補が増えるという利点もあります。
創造性と適応力の違い
環境変化への適応やイノベーション創出の面でも両者には差があります。従来型では一人のリーダーの判断や発想に組織全体が依存するため、リーダーの視野や経験の範囲を超えた革新的なアイデアが生まれにくかったり、新たな課題に対して対応が後手に回ったりする恐れがあります。一方シェアド・リーダーシップでは、各メンバーが自分の視点や強みを活かして自律的に動くことで組織の創造性が高まると報告されています。複数人で知恵を出し合う分ユニークな発想が出やすく、チーム全体で環境変化に対応する柔軟性や回復力(レジリエンス)が向上することも明らかになっています。要するに、シェアド・リーダーシップは多様な頭脳と創造力を結集して革新を生み、変化に強い組織を築くアプローチだと言えるでしょう。
チームでのシェアド・リーダーシップ実践例:プロジェクトチームにおける役割分担と自主的リーダーシップ発揮のストーリーを紹介
シェアド・リーダーシップが実際にチームでどのように機能するのか、その一例をストーリー形式で紹介します。
ある大手企業のプロジェクトチームのケース
新規プロジェクトに臨むこのチームでは、リーダーを一人決めるのではなく各分野の専門スキルを持つ10名のメンバー全員が自分の役割領域でリーダーシップを発揮する方式を取りました。営業担当、企画担当、IT担当などそれぞれが主体性を持って意思決定し、必要に応じて他のメンバーを巻き込みながら進行管理や課題解決に当たります。チーム内では、「今は彼がリーダー、次は別の彼女がリーダー」という具合に、状況に応じてリーダー役が柔軟に入れ替わりました。他のメンバーはその都度フォロワーに回りつつ、自分の専門領域ではリーダーとして牽引します。例えば進行が遅れている部分に気づいたメンバーが自発的にタスクフォースを立ち上げて対応策を提案し、他のメンバーがそれに協力するといった場面もありました。このようにチーム全員が同じ方向を向きながら各自リーダーシップを発揮した結果、プロジェクトは円滑に進み、最終的に顧客の課題を見事に解決することができました。この事例は、メンバー全員が主体的に役割を担い合うシェアド・リーダーシップによってチームの力が最大化された好例と言えます。
シェアド・リーダーシップがもたらす組織の変化:エンゲージメント向上や組織文化の革新などポジティブな影響を詳しく解説
従業員エンゲージメントの向上
シェアド・リーダーシップ導入後は、社員一人ひとりが自分の役割で組織に貢献しているという実感を持ちやすくなるため、社員のエンゲージメント(愛着心・主体性)が向上するとされています。実際に、全員がリーダーシップを発揮できる環境では個人の意見や提案が尊重されるため、「自分の働きが組織にとって重要だ」という認識が生まれ、ひいては社員の自発的な参加意識や行動意欲が高まるのです。その結果、組織全体の活力が増し、生産性や業績の向上にもつながっていきます。
組織文化の革新
シェアド・リーダーシップは組織文化にも大きな変化をもたらします。上下の命令系統に頼る風土から、対話と協働を重視する風土へと革新が起こるのです。メンバーが立場に関係なく自由に発言し合えるようになることで組織内にオープンなコミュニケーション文化が育ち、日常的に信頼に基づく対話が行われるようになります。その積み重ねにより、メンバー同士の相互理解が深まり、協働と成長が自然に生まれる風土が形成されていきます。固定的な「指示待ち文化」が払拭され、誰もが主体的に動ける環境が組織の隅々にまで行き渡ることで、社員のエンゲージメントや働きがいが高まると同時に、新しいアイデアや変革が生まれやすい企業文化へと進化していくのです。このようなポジティブな文化醸成は、最終的には組織の強靭性(レジリエンス)を高め、変化の時代を生き残る力となるでしょう。