ステップメールとは、資料請求や会員登録といった相手の行動を起点に、あらかじめ用意した複数のメールを決めた順番と間隔で自動配信する方式です。この記事では、メルマガとの違い、ゴールから逆算してシナリオを1枚の表にまとめる作り方、配信ツールの選び方を説明します。競合の解説記事が触れていない点として、ツールによって日数の数え方や、稼働前からリストにいる人へ届くかどうかが違うことも、HubSpotとBenchmark Emailの公式ヘルプで確かめた内容をもとに整理しました。最後に、ステップメールを作るべき会社と、まだ作らなくてよい会社の境目を示します。
まとめ:ステップメールは文面より起点・ゴール・ツール仕様の3点で成否が分かれる
ステップメールで成果が出ない会社の多くは、5通の文面を書いた時点で準備を終えています。実際に問題が起きるのは、起点となる日付の扱い、配信を終える条件、そしてツールごとの仕様の違いです。
手を付ける順番は次のとおりです。最初に、シナリオのゴールを「商談予約」「返信」のようにツールで判定できる行動で決めます。次に、通数・送る日・各通の役割を1枚の表にまとめます。設定の段階では、使うツールが何を起点に日数を数えるか、既にリストにいる人へ届くか、同じ人が2回登録したときにどう扱うかを確認してください。ここを確かめずに稼働すると、届くはずの人に届かない事故が起きます。
月20件以上の資料請求があり、商材の検討期間が1か月を超えるなら、ステップメールを作る価値があります。問い合わせが月に数件で、営業が全員に電話できる規模なら、先に個別のフォローを整えるほうが成果につながります。
ステップメールの定義と仕組み|行動を起点に決めた間隔で自動配信する方式
ステップメールは「いつ・誰に送るか」を、送る側の都合ではなく相手の行動で決める配信方式です。仕組みを理解するには、ほかの配信方式と並べて違いを見るのが早道です。
メルマガ・セグメント配信との違いは起点と宛先の決まり方の2点
メルマガは、送る側が決めた日に購読者全員へ同じ内容を送ります。セグメント配信は、担当者が属性で宛先を絞って送る方式です。これに対してステップメールは、相手が登録した日を「1日目」として、同じ順番の内容を一人ひとり別のタイミングで届けます。
| 配信方式 | 送る日の決まり方 | 宛先 | 向く内容 |
|---|---|---|---|
| メルマガ | 送る側が決めた日 | 購読者全員 | 新着情報・告知 |
| セグメント配信 | 送る側が決めた日 | 属性で絞った相手 | 業種別の案内 |
| ステップメール | 相手の登録日から数える | 起点を通った人 | 順番に読ませる解説 |
| トリガーメール | 相手の行動の直後 | 行動した人 | 閲覧・離脱への反応 |
実務では、ステップメールを骨格にして、料金ページの閲覧のような行動に反応するトリガーメールを途中に差し込む形がよく使われます。検討を進めること自体を目的にしたメール全般の組み方はナーチャリングメールのシナリオの組み方と配信を止める条件で扱っているので、本記事では配信方式としてのステップメールに絞ります。
資料請求後のBtoBと会員登録後のBtoCで変わる用途と1通目の役割
同じステップメールでも、BtoBとBtoCでは目的が違います。BtoBの資料請求後なら、ゴールは商談予約です。1通目では請求された資料の要点と、資料に載せきれなかった導入事例を送り、2通目以降で費用の考え方や社内稟議で聞かれやすい論点に答えていきます。
BtoCの会員登録後や初回購入後は、使い始めてもらうことと2回目の購入がゴールになります。1通目は登録の当日に、ログイン方法や商品の使い方を送ります。セミナーの申込者に開催日まで送るリマインドも、開催日を基準に前へ数える点を除けば同じ仕組みです。
どの用途でも、起点の行動から時間が空くほど開封されにくくなります。1通目は起点と同じ日に届く設定にしてください。
ステップメールのシナリオの作り方|ゴールから逆算して通数と配信日を1枚の表に
シナリオは、文面を書き始める前に表で設計します。表にしておくと、通数が多すぎないか、同じ話を2通で繰り返していないかを関係者で確かめられます。
ゴールは「商談予約」「返信」など配信ツールで判定できる行動に置く
ゴールを「興味を高める」「信頼を得る」のように書くと、シナリオが成功したかどうかを測れません。ゴールは、配信ツールやMAが記録できる行動にします。BtoBなら商談予約フォームの送信や営業担当への返信、BtoCなら2回目の購入です。
ゴールが決まると、配信を終える条件も同じ行動で書けます。商談を予約した人に「まだご検討中ですか」と届き続けるのは、ステップメールでよく起きる失敗です。終了条件と営業への引き渡し方は前述のナーチャリングメールの記事で、HubSpotの設定例とあわせて説明しています。
資料請求後に送る5通のシナリオ表:配信日・役割・読ませたい先の設計例
次の表は、BtoBの業務システムを扱う会社が、資料請求の後に送るシナリオの設例です。通数と配信日は初期値で、配信停止率とクリック率を見て調整します。
| 通 | 配信日 | 役割 | 読ませたい先 |
|---|---|---|---|
| 1通目 | 当日 | 資料の要点と補足 | 資料の再ダウンロード |
| 2通目 | 3日後 | 同業種の導入事例 | 事例ページ |
| 3通目 | 7日後 | 費用の内訳と相場 | 料金ページ |
| 4通目 | 14日後 | 稟議で聞かれる論点 | よくある質問 |
| 5通目 | 21日後 | 個別相談の案内 | 商談予約フォーム |
表の「読ませたい先」は、1通につき1つに絞るのが原則です。リンクを3つも4つも並べると、どの内容が反応を生んだのかが分からなくなります。商談予約へ誘うのは最後の1通だけにせず、どの通からでも予約できる導線をメールの末尾に置いておくと取りこぼしが減ります。
1通1テーマに絞り、件名だけで中身が分かる資料請求後の本文の書き方
ステップメールは相手が自分で申し込んだ直後に届きますが、受信箱では他のメールと並びます。件名を見ただけで何が書いてあるかが分かる必要があります。「【事例】製造業A社が受注入力を3人から1人にした手順」のように、テーマと具体を件名に入れてください。
本文の冒頭で触れるのは、相手が資料請求などで取った行動です。「先日ダウンロードいただいた○○の資料について」と書くだけで、一斉配信のメルマガとの違いが伝わります。差し込みに使う資料名やセミナー名は、フォームの送信内容から自動で入る項目にしておき、手で書き換える運用は避けます。配信時間帯や件名の一般的な考え方はメルマガ配信のやり方と配信時間・効果測定の実務と共通です。
配信ツールで違うステップメールの仕様|日数の起点・既存リスト・編集の反映
シナリオ表が同じでも、ツールによって実際に届く日や、届く相手が変わります。ここでは国内で使われているメール配信システムのBenchmark Emailと、MAのHubSpotを例に、公式ヘルプに書かれた仕様を比べます。稼働前に確認したい項目は4つです。
Benchmark Emailはリスト追加日が起点で稼働前からいる連絡先には届かない
Benchmark Emailのヘルプ「ステップメールを稼動する方法と稼働したのにメールが届かない場合の原因」(2023年10月更新)によると、ステップメールの配信基準日は、連絡先がリストに新たに追加された日です。そのため、ステップメールを作る前からリストにいた連絡先には配信されません。
既存の名簿にもシナリオを送りたい場合、ヘルプでは空のリストを作ってステップメールを稼働し、その後で既存の名簿を取り込む手順が案内されています。順番を逆にすると、取り込んだ人には届きません。展示会で集めた名刺を後からまとめて登録する会社では、この挙動を知らないと「数百件を登録したのに1通も出ていない」状態になります。
配信日の判定は世界標準時の日付で、朝9時の前後で配信日が1日ずれる
同じヘルプには、配信日の判定がグリニッジ標準時で日付が変わったかどうかで行われると書かれています。日本時間の午前9時より前に登録した人は翌日に、9時以降に登録した人は翌々日に届く、という説明です。「1日後」と設定しても、登録の時刻によって実際の間隔は1日から2日の幅で変わります。
土曜と日曜を配信対象から外した場合、その日に当たるメールは翌週の月曜日にまとめて配信されます。同じ日に複数通を送る設定も推奨されていません。2通目と3通目の間隔を短く設計していると、週末をまたいだ人には2通が同じ日に届くことがあるので、間隔は3日以上空けておくと安全です。
HubSpotのワークフローは遅延6種と営業日指定で送る曜日と時刻を決められる
HubSpotでステップメールを組むときは、ワークフローの中にメール送信と「遅延」を交互に並べます。HubSpotのナレッジベースにあるワークフローでの遅延の使い方の解説(2026年9月16日更新)によると、遅延は次の6種類です。対象はMarketing HubなどのProfessionalとEnterpriseです。
- 設定された時間:日・時間・分で指定し、「営業日のみ(月曜日から金曜日)」を選ぶと週末を飛ばして数える(この場合は日単位のみ)
- 曜日まで:指定した曜日まで待つ
- 時刻まで:指定した時刻まで待つ
- カレンダー日付まで:指定した日付と時刻まで待つ
- 日付または日時プロパティーまで:セミナー開催日などの日付を基準に、当日・前・後で送る
- イベントが発生するまで:フォーム送信などが起きるまで待つ
時刻の基準として選べるのは、アカウントのタイムゾーンか、コンタクトのタイムゾーンです。コンタクト側はIPアドレスから推定したタイムゾーンを使い、未設定ならアカウントの設定に従います。BtoBで「平日の朝10時に届ける」設計にしたいなら、「設定された時間」の営業日指定と「時刻まで」を組み合わせると、登録時刻による1日のずれを避けられます。
再登録は既定で無効:2回資料請求した人に最初から送り直すかの判断
HubSpotのナレッジベース「ワークフローの登録トリガーを設定する」(2026年9月12日更新)によると、レコードがワークフローに登録されるのは、既定では登録条件を初めて満たしたときか、手動で登録したときだけです。半年前に資料請求した人が別の資料を請求しても、何も設定しなければシナリオは最初から始まりません。
再登録を有効にするかどうかの判断基準は、2回目の請求が持つ意味です。別の製品の資料なら、その製品用の別シナリオに登録するほうが筋が通ります。同じ資料の再請求なら、検討が再開した合図なので、シナリオを繰り返すより営業から直接連絡したほうが早く進みます。いずれの場合も、同じ人に同じ5通を2回送る設計は避けてください。
稼働中のシナリオを直したとき、待機中の人に変更が効くかはツールで違う
運用を始めると、配信間隔を直したくなる場面が必ず来ます。このとき、既にシナリオの途中にいる人への影響がツールで逆になります。
HubSpotでは、「設定された時間」の遅延を編集すると、経過した時間を考慮して待機中のレコードが再スケジュールされます。短くした結果、既に経過した時間のほうが長ければ、その場で次のメールへ進む仕組みです。遅延そのものを削除すると、待機中のレコードは直ちに次のアクションへ進みます。間隔を縮める編集をすると、待機中の全員にメールが一斉に出る可能性がある、ということです。
Benchmark Emailでは、一度稼働したステップメールの配信設定日は変更できず、コピーを作って編集する案内になっています。366日後以降の配信も設定できません。稼働後に間隔を変えるなら、新しいシナリオに切り替える前提で計画を立ててください。
ステップメール配信ツールの選び方|メール配信システムとMAを分ける条件
ステップメールは、メール配信システムとMAのどちらでも配信できる仕組みです。どちらを選ぶかは、シナリオの起点と終了条件に何を使いたいかで決まります。機能一覧の多さで比べると、使わない機能に費用を払うことになります。
起点がリスト登録だけで終了条件が配信停止ならメール配信システムで足りる
起点が「フォームからリストに登録された」だけで、全員に同じ5通を送り切ればよいなら、メール配信システムのステップメール機能で十分です。月額費用もMAより低く抑えられます。メール配信システムの種類と、メルマガ配信ツールとの違いはメール配信システムの仕組みと導入判断で整理しています。
リストへの登録は、相手の同意を得た連絡先に限ります。特定電子メール法では、広告や宣伝を含むメールは原則として事前に同意した相手にしか送れません。同意の取り方と記録の残し方はオプトイン方式の仕組みと特定電子メール法の同意要件を確認してください。
Web閲覧や商談状況で分岐・停止させるならCRMとつながるMAが要る
料金ページを見た人だけに別のメールを送る、商談が始まった人には配信を止める、といった条件を入れたいなら、Webの閲覧履歴とCRMの商談情報を参照できるMAが必要です。メール配信システム単体では、営業が商談を始めたことを知る手段がありません。
MAを選ぶ場合は、どのデータをMA側とSFA・CRM側のどちらで持つかを先に決めておくと、配信の停止条件が組みやすくなります。設計の考え方はMA・SFA・CRM連携のデータ所有と導入順序で解説しています。開封やクリックを点数にして営業へ渡す基準を作るなら、MQLの判定基準と配点・閾値の決め方もあわせて検討してください。
ステップメールを作るべき会社と見送る会社|リード件数と検討期間で決める基準
ステップメールは、作れば成果が出る施策ではありません。シナリオと文面の準備に工数がかかるうえ、運用を始めた後も数字を見て直す手間が続きます。以下は、これまでの論点を踏まえた当社の判断基準です。
資料請求が月20件以上で検討期間が1か月を超える商材なら作る価値がある
資料請求や会員登録が月に20件を超えると、営業やカスタマーサポートが全員に個別でフォローし続けるのは難しくなります。商材の検討期間が1か月を超える場合は、請求から商談までの間に何も届かない期間が生まれ、その間に競合へ流れる状況になるのです。この2つがそろった会社では、ステップメールで間を埋める効果が、準備の工数を上回ります。
BtoCで2回目の購入率に課題がある通販や、無料トライアルから有料契約への移行率を上げたいSaaSも、作る側に入ります。どちらも起点の行動がはっきりしていて、ゴールの行動をツールで測れるからです。
問い合わせが月数件で営業が全員に電話できるなら個別フォローを先に
問い合わせが月に数件で、営業担当が全員に電話かメールで個別に連絡できているなら、ステップメールは過剰です。自動配信の5通より、担当者が相手の状況を聞いて書く1通のほうが商談につながります。
商談の受け皿が整っていない段階で作るのも見送ってください。商談予約フォームがない、返信に誰が対応するか決まっていない、という状態でステップメールを流すと、反応した人を取りこぼします。先に問い合わせから商談までの流れを決め、件数が増えてから自動化に移る順番が安全です。
ツール設定と他システム連携は外部に任せ、文面とゴールの定義は社内で持つ
外部の支援を使う場合、切り出しやすいのは、ワークフローや遅延の設定、フォームとの連携、CRMの商談情報を使った配信停止の仕組みづくりです。どの行動をゴールにするか、メールで何を伝えるかは、顧客と話している社内の担当者が決めるべき部分で、外部に任せると自社の言葉で書かれていないメールになります。
HubSpotを新しく入れる場合の移行と立ち上げの段取りはHubSpot導入の進め方(既存CRM・名刺データの移行設計とオンボーディング)にまとめています。ステップメールのシナリオ設計からワークフローの設定、SFAや基幹システムとの連携までをまとめて相談したい場合は、一創のHubSpot導入支援サービスで対応しています。
よくある質問
ステップメールの作り方や配信の設定について、検討段階でよく出る質問に答えます。
ステップメールとメルマガの違いは何ですか?
メルマガは、送る側が決めた日に購読者全員へ同じ内容を送る方式です。ステップメールは、資料請求や会員登録をした日を起点に、一人ひとり別のタイミングで決めた順番のメールを送ります。メルマガは新着情報や告知に、ステップメールは順番に読んでもらいたい解説や、登録直後の案内に向いています。両方を同じ相手に送る場合は、同じ日に重ならないよう配信日を調整してください。
ステップメールは何通くらい送ればよいですか?
最初は3〜5通で始めるのが一般的です。通数を増やすほど作る手間が増え、後半の通は配信停止が増えやすくなります。まず5通で運用し、各通のクリック率と配信停止率を見て、反応の低い通を差し替えるか削ります。通数を増やすのは、最後の通まで読まれていて、伝えきれていない内容がはっきりしたときだけで十分です。
ステップメールの配信間隔はどう決めればよいですか?
配信間隔を扱いやすくする初期値は、1通目が起点と同じ日、2通目以降が3日から7日おきという設定です。ツールによっては登録時刻で配信日が1日ずれたり、週末を外した分が月曜日にまとめて届いたりするため、間隔を2日以下にすると複数通が同じ日に届くことがあります。検討期間の長いBtoB商材では、後半の通ほど間隔を広げる設計が向いています。
すでにリストにいる人にもステップメールを送れますか?
ツールによって異なります。Benchmark Emailでは、配信基準日がリストへの追加日なので、ステップメールを作る前からリストにいた人には届きません。空のリストで稼働してから既存の名簿を取り込む手順が案内されています。HubSpotのワークフローでは、登録条件を満たした人が登録されるので、既存の人を入れるには登録トリガーの設定を確認してください。いずれも、相手が配信に同意していることが前提です。
ステップメールは無料のツールでも始められますか?
無料プランでステップメール機能を使えるメール配信システムもありますが、配信数や登録できる連絡先の数に上限があるのが一般的です。HubSpotでは、ワークフローの遅延はProfessionalとEnterpriseのプランが対象です。最初は無料の範囲でシナリオ表を検証し、配信数が増えたり、商談情報で配信を止めたくなったりした段階で有料プランやMAへ移る進め方が、無駄な費用を抑えられます。
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