先入れ先出し(FIFO:First In, First Out)とは、先に入庫した在庫から順に出庫する在庫管理のルールです。本記事では、後入れ先出しやFEFO(期限の近い順)との違い、会計の先入先出法との区別から始め、食品流通の3分の1ルールと日付逆転が先入れ先出しを厳しくする理由を整理しました。後半では、倉庫で順番が崩れる場面と、WMS(倉庫管理システム)の引当ルールで先入れ先出しを強制する設計、表計算のまま続けるかシステム化するかの判断条件まで言い切ります。
まとめ:先入れ先出しは古さを測る日付を決め、置き方と引当の両方で守る
先入れ先出しで最初に決めるのは「何をもって古いとするか」です。入庫日で並べるのか、製造日やロット番号で並べるのか、賞味期限で並べるのか。この基準が品目ごとに曖昧なままだと、現場の努力では順番がそろいません。
基準が決まったら、物理面は「奥から補充し手前から出す」配置、システム面は「引当の並び順キー」で守ります。食品のように納品先が前回より古い期限を受け取らない取引では、納品先ごとの出荷履歴と照合する仕組みまで要ります。
出荷の大半が期限品で、ロケーションが複数に分かれ、日付逆転の返品が月に数件でも出ているなら、紙と表計算での運用はすでに限界です。逆に、期限のない資材を1か所で扱う倉庫なら、厳密な先入れ先出しのシステム化は過剰投資になります。
先入れ先出しの意味と、倉庫の出庫順・会計上の評価方法との違い
先入れ先出しという言葉は、倉庫の現品の動かし方と、会計上の在庫金額の計算方法の両方で使われます。発注やシステム要件の打ち合わせで混同すると話がかみ合わないため、最初に切り分けておきます。
先入れ先出し・後入れ先出し・FEFOの3つの出庫ルールの違い
現品の出庫順を決めるルールは、実務上は次の3つに分かれます。並び順の基準が違うだけで、どれも「どの在庫から出すか」を決める規則です。
| ルール | 出庫順の基準 | 向いている品目 | 管理に要るデータ |
|---|---|---|---|
| 先入れ先出し(FIFO) | 入庫日・製造日が古い順 | 食品・日用品・電子部品 | 入庫日またはロット番号 |
| FEFO(期限の近い順) | 賞味期限・使用期限が近い順 | 食品・医薬品・化学品 | 期限日とロット番号 |
| 後入れ先出し(LIFO) | 入庫日が新しい順 | 砂利・鋼材など劣化しない資材 | 原則不要 |
同じ商品なら製造日が古いほど期限も近いので、FIFOとFEFOは多くの場合同じ順番になります。ずれるのは、仕入先や製造工場によって賞味期間が違う商品や、返品で古い期限のロットが後から戻ってくる場合です。期限品はFEFOを基準にし、FIFOは期限のない品目の基準にするのが実務上の整理になります。期限とロットの管理を販売管理側で持つ場合の判断軸は販売管理システムのロット管理とFEFO引当の解説で扱っています。
会計の先入先出法は現品の出庫順と切り離して在庫額を計算する評価方法
「先入先出法」と送り仮名なしで書く場合は、多くが会計・税務の棚卸資産の評価方法を指します。法人税法施行令第28条1項1号ロは、先入先出法を「期末棚卸資産を、事業年度終了の時から最も近い時に取得したものから順次成るものとみなす」方法と定めています。
ここで注目したいのは「みなす」という書き方です。帳簿上の計算方法なので、倉庫で実際に古い順に出しているかどうかとは関係がありません。逆に、倉庫で厳密に先入れ先出しを守っていても、評価方法を届け出ていない法人は同施行令第31条により最終仕入原価法で評価することになります。
システム要件として整理するなら、出庫順の制御はWMSの機能、評価額の計算は会計・販売管理の機能です。商品有高帳での具体的な計算は商品有高帳の書き方と先入先出法・移動平均法の計算例を参照してください。
先入れ先出しを厳密に守るべき商品と、管理を緩めてよい商品の線引き
すべての商品に同じ厳しさで先入れ先出しを課すと、作業工数だけが増えます。品目ごとに「守らなかったときに何が起きるか」で厳しさを決めます。
期限・ロット・製造年月で出庫の順番を管理すべき食品・医薬品・部品
厳密な管理が要るのは、期限切れで販売できなくなる商品と、製造時期の違いが品質や取引条件に響く商品です。食品・飲料・サプリメント・化粧品・医薬品・試薬は期限切れがそのまま廃棄になります。電子部品は製造年月を示すデートコードの古さで受け入れを断る取引先があり、接着剤や塗料は開封前でも経時変化します。
農林水産省が2026年6月に公表した推計では、2024年度の事業系食品ロスは237万トンで、そのうち食品卸売業が9万トン、食品小売業が48万トンでした。倉庫と店舗の出庫順の乱れは、この数字の一部を直接つくっています。
一方、ネジ・梱包資材・期限のない雑貨のように、古さが品質にも取引条件にも響かない商品は、厳密な順番管理の対象から外してかまいません。棚の奥に古い在庫が残り続けないよう、棚卸しのたびに滞留を確認する程度で足ります。
3分の1ルールと日付逆転で納品を断られる食品流通の取引条件と事情
食品の倉庫で先入れ先出しが特に厳しく求められるのは、小売側の受け入れ条件があるからです。農林水産省の商慣習見直しのページは、賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する慣例を「3分の1ルール」と説明しています。賞味期間が6か月の商品なら、製造から約2か月を過ぎると納品できなくなる計算です。
同じページは、小売の在庫商品より賞味期限が前であることを理由に納品できない商品があることにも触れています。物流の現場で「日付逆転」や「日付後退」と呼ばれる問題です。ある店舗へ前回5月20日期限のロットを出したなら、次に5月15日期限のロットは出せません。
納品期限を緩和(予定を含む)した食品小売事業者は、令和8年10月時点で393事業者と公表されています。前年の377事業者から増えてはいますが、取引先ごとに条件が違う状態は続きます。倉庫側は「全体で古い順」だけでなく「納品先ごとに前回より新しい順」も守る必要があり、手作業で追える範囲を超えやすい部分です。
倉庫で先入れ先出しを守る置き方の手順と、現場で順番が崩れる場面
システムを入れる前でも、配置と表示の工夫で守れる範囲はかなり広がります。まず物理的に「古い順にしか取れない」状態を作り、そのうえで崩れる場面を潰します。
入庫ラベルと奥からの補充で古い順にしか取れない倉庫の棚を作る手順
手作業で先入れ先出しを回す場合の基本手順は次のとおりです。
- 入庫時に、入庫日・ロット番号・賞味期限を外箱に表示する(印字がない商品はラベルを貼る)
- 同じ品目・同じ期限の在庫を1か所にまとめ、複数の棚に分散させない
- 補充は棚の奥または上段から入れ、出庫は手前または下段から取る
- 期限ごとに色の違うシールを貼り、遠目でも古いロットが分かるようにする
- 週次など決まった周期で、手前に新しいロットが来ていないかを責任者が確認する
手順3を設備で強制するのが、奥から入れると手前に流れる傾斜付きの流動ラックです。作業者が意識しなくても順番が保たれるため、出荷頻度の高い期限品から優先して入れると効果が出やすくなります。
繁忙期・返品・ロケーション分散で古いロットが棚の奥に残る失敗例
手作業の先入れ先出しが崩れる場面は、ほぼ決まっています。最も多いのは繁忙期で、入庫を急ぐあまり手前の空きに新しいロットを置いてしまうケースです。次に多いのが返品で、戻ってきた古い期限の商品を新しいロットの前に戻すと、その店舗向けの次の出荷で日付逆転が起きます。
見落とされやすいのはロケーションの分散です。同じ品目が保管棚と出荷用の棚の2か所に置かれていると、作業者は近いほうから取ります。保管場所を固定するかフリーにするかで先入れ先出しの守りやすさは変わり、設計の考え方はロケーション管理の固定・フリーの使い分けとコード設計で詳しく扱っています。
この3つは、作業者の注意だけでは防ぎきれません。月に数件でも日付逆転の返品やクレームが出ているなら、仕組みでの対策に進む段階です。
WMSと在庫管理システムで先入れ先出しを強制する引当ルールの設計
システムで先入れ先出しを守る仕組みの中心は「引当」、つまり出荷指示に対してどの在庫を割り当てるかの規則です。作業者が選ぶのではなく、システムが古いロットを指定するように変えます。
引当の並び順キーを入庫日・製造日・賞味期限のどれにするかの決め方
引当ルールは、在庫を並べるキーの組み合わせで設計します。品目マスタに「引当区分」を持たせ、品目ごとに次のどれを使うかを切り替えるのが一般的な作りです。
| 引当区分 | 第1キー | 第2キー | 使う品目の例 |
|---|---|---|---|
| FIFO | 入庫日 | ロケーション順 | 期限のない日用品・部品 |
| FEFO | 賞味・使用期限 | 入庫日 | 食品・医薬品・化学品 |
| 製造ロット順 | 製造日(ロット番号) | 入庫日 | デートコードを見る電子部品 |
| 指定ロット | 受注で指定されたロット | なし | 回収対応・検査済みロット限定の出荷 |
第2キーを決めておかないと、同じ期限のロットが複数の棚にあるときに引当結果が毎回変わります。第2キーの選び方は、ピッキング動線を短くしたいならロケーション順、端数を早く片付けたいなら数量の少ない順です。受注引当と出荷引当のどちらの時点で割り当てるか、引当解除をどう扱うかといった実装面は在庫引当の受注引当・出荷引当と有効在庫の計算が参考になります。
納品先ごとの前回出荷期限を記録し日付逆転を止める出荷許容日チェック
3分の1ルールと日付逆転への対応は、並び順キーだけでは実現できません。必要なのは次の2つの判定です。
1つ目は出荷許容日です。品目ごとに賞味期間と納品期限の割合(3分の1、2分の1など)を持たせ、納品期限日を「期限日−賞味期間×(1−割合)」で求めます。納品予定日がこの日を過ぎるロットは、引当対象から除外する扱いです。割合は取引先ごとに違うため、品目マスタではなく取引先×品目の単位で持つ設計にします。
2つ目は日付逆転の判定です。納品先ごと・品目ごとに「前回出荷した最も新しい期限日」を記録し、それより古い期限のロットを引き当てないようにします。古い期限のロットは別の納品先へ回すか、期限の条件が緩い販路に振り替えます。
FIFOの順番を厳守すると日付逆転が起き、日付逆転を避けるとFIFOが崩れる。食品卸のWMSでは、この2つを両立させる引当ロジックが要件の中心になります。
ハンディ端末のスキャン照合で指示と違うロットの出庫を止める仕組み
引当で正しいロットを指示しても、作業者が手前の別ロットを取れば意味がありません。最後の砦はピッキング時のバーコード照合です。ハンディ端末で棚とケースをスキャンし、指示と違うロット番号や期限ならその場でエラーを出して先へ進めないようにします。
この照合には、商品の外箱にロット番号と期限がバーコードで入っている必要があります。仕入先の印字がない場合は、入庫時に自社でラベルを発行して貼る工程を足すことになり、その分の作業時間と端末台数を導入費用に見込んでおきます。
先入れ先出しをシステム化する条件と、表計算で回せる規模の判断基準
ここまでの仕組みを全部入れる必要がある倉庫は限られます。規模と取引条件から、どこまで作るかを判断します。
紙の票と表計算で先入れ先出しを回せる規模と、WMSへ移る境目
次の条件にすべて当てはまるなら、紙の在庫票と表計算、流動ラックの組み合わせで十分です。
- 期限品のSKUが概ね100以下で、1品目の保管場所が1か所に収まる
- 出荷先に日付逆転を問う取引先がない、またはごく少数で担当者が覚えられる
- 日付逆転や期限切れによる返品・廃棄が、年に数件程度に収まっている
反対に、期限品のSKUが数百を超える、同じ品目が複数ロケーションに分かれる、納品先ごとに納品期限の割合が違う、のいずれかに当たるなら、引当をシステムに任せる段階です。在庫管理システムの機能の全体像は在庫管理システムの入出庫管理と引当の仕組み、表計算やkintoneで自作する場合の限界は在庫管理システムを自作するときのExcel・kintone・SQLの境界で整理しています。
パッケージWMSで足りない引当条件と個別開発に進む判断の目安
FIFOとFEFOの切り替え、ロット・期限の登録、ハンディ照合は、多くのパッケージWMSに標準で備わっています。期限のない品目が中心なら、パッケージの標準機能で足ります。ここで個別開発を選ぶのは過剰です。
個別開発や追加開発を検討すべきなのは、次のような条件が重なる場合です。納品先×品目単位の納品期限割合、納品先ごとの前回出荷期限による日付逆転の判定、指定ロット出荷と回収対応の追跡、販売管理・基幹システムの受注データとの連携。特に日付逆転の判定は、パッケージによっては品目単位の設定しか持たず、取引先別の条件に合わせられないことがあります。
パッケージ選定の前に、自社の取引先ごとの受け入れ条件を一覧にし、標準機能で表現できない条件が何件あるかを数えるのが近道です。標準で表現できない条件が業務の中心にあるなら、在庫管理システム開発として引当ロジックから設計する選択肢を比べてみてください。
よくある質問
先入れ先出しについて、検索でよく調べられている疑問に答えます。
先入れ先出しは英語で何と言いますか?
英語ではFirst In, First Out(ファーストイン・ファーストアウト)と言い、頭文字を取ってFIFOと略します。反対の後入れ先出しはLast In, First Out(LIFO)、期限の近い順に出すルールはFirst Expired, First Out(FEFO)です。FIFOという言葉は在庫管理のほか、情報処理でデータを入れた順に取り出すキューの方式や、FXの決済順のルールを指す場合もあります。文脈によって意味が違うため、システム要件の打ち合わせでは「出庫の引当ルールとしてのFIFO」のように対象を添えて話すと誤解を防げます。
先入れ先出しのメリットとデメリットは何ですか?
最大のメリットは、期限切れや経時劣化による廃棄と、古い商品が顧客に届くクレームを減らせることです。在庫が回転するため、棚の奥に長期滞留品がたまりにくくもなります。デメリットは、入庫日・ロット・期限を記録する手間と、補充時に古い在庫を手前へ移す作業が増えることです。期限のない商品にまで厳密に適用すると、廃棄削減の効果がないまま工数だけが増えます。品目ごとに厳しさを分けるのが現実的な運用です。
先入れ先出しと先入先出法は同じ意味ですか?
言葉の由来は同じですが、使われる場面が違います。先入れ先出しは倉庫で現品を古い順に出す作業ルールです。先入先出法は、法人税法施行令第28条に定められた棚卸資産の評価方法の1つで、期末の在庫を最も新しく取得したものから成るとみなして金額を計算します。帳簿上の計算方法なので、倉庫で実際にどの順に出したかとは関係ありません。税務署に評価方法を届け出ていない法人は、最終仕入原価法で評価します。
FIFOとFEFOはどちらを使えばよいですか?
賞味期限や使用期限がある品目はFEFO、期限のない品目はFIFOを基準にするのが基本です。同じ商品なら製造日が古いほど期限も近いので、多くの場合は同じ順番になります。差が出るのは、製造工場によって賞味期間が違う商品や、返品で古い期限のロットが後から戻ってきた場合です。システム化するときは品目マスタに引当区分を持たせ、品目ごとにFIFOとFEFOを切り替えられる作りにしておくと、取扱品目が変わっても設定変更で対応できます。
システムを使わずに先入れ先出しを徹底する方法はありますか?
あります。入庫時に入庫日と期限を外箱に表示し、補充は奥から・出庫は手前からと決めて掲示するのが基本です。期限ごとに色の違うシールを貼る方法は、遠目でも古いロットを見分けるための工夫です。奥から入れると手前に流れる流動ラックを使えば、作業者の注意に頼らず順番が保たれます。ただし繁忙期の仮置き、返品の戻し、同じ品目の複数ロケーション保管が増えると手作業では崩れやすく、その段階で在庫管理システムによる引当を検討します。
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