入退室管理システムを比較しようとして比較サイトを開くと、10〜15製品ほどのおすすめ一覧と、初期費用・月額・認証方式・勤怠連携の有無を丸印で並べた表が出てきます。ところが、その表を眺めても自社にどれが合うかは決まりません。製品の違いを生んでいるのは、扉にどう取り付けるか、どのシステムと履歴をやり取りするか、何拠点・何扉で運用するかという、表の列に出てこない条件だからです。
この記事では、入退室管理システムの比較を「錠の取り付け方式」「API連携の中身」「企業規模と現場の性質」の順で絞り込む手順を整理します。ランキングの読み方から始め、中小企業・大企業・工場で比較の重みがどう変わるか、パッケージで足りる条件と連携開発が必要になる条件までが解説の対象です。入退室管理システムそのものの仕組みや認証方式の種類は、入退室管理システムとは?認証方式の種類と選び方・システム連携の判断【情シス向け】で先に確認できます。
まとめ:入退室管理システムの比較は錠の方式と連携先で候補を絞る
- 比較サイトのランキングは閲覧数や資料請求数の順位で、導入実績やシェアの順位ではありません。候補の洗い出しには使えますが、順位で選ぶ根拠にはなりません。
- 最初に絞り込む軸は認証方式ではなく錠の取り付け方式です。既存の錠に後付けするのか、電気錠や自動ドアを制御するのか、ゲートや複数区画まで含めて設備ごと入れるのかで、候補の製品群がほぼ入れ替わります。
- 勤怠連携の丸印は「何らかの連携手段がある」以上の意味を持ちません。APIが公開されているか、申込制か、履歴を何年分・どの単位で取れるかまで確認して初めて比較になります。
- 中小企業は扉数と月額、大企業は人事マスタとの同期と権限の自動剥奪、工場は手がふさがった状態での認証と区画ごとの入場資格が比較の中心になります。
- 顔認証を含む製品は、顔の特徴データが個人情報保護法上の個人識別符号に当たる前提で、従業員への説明と削除手順まで準備できるかを先に判断します。
- 扉が十数枚までで、連携先が製品側で用意された勤怠サービスに収まるならパッケージで完結させます。自社の人事・基幹システムと双方向でつなぐ必要が出たら、連携部分だけを開発する構成を検討します。
入退室管理システムの比較サイトのランキングをそのまま使えない理由と読み方
「入退室管理システム おすすめ」「入退室管理システム ランキング」で上位に並ぶのは、BOXIL、ITトレンド、起業LOG、imitsu、イプロスといった比較メディアです。どれも製品の網羅には役立ちますが、並び順と表の作り方には共通の癖があります。
資料請求数や閲覧数で並ぶランキングが市場シェアを示さないという前提
比較メディアのランキングの多くは、集計期間中のページ閲覧数や資料請求数をもとに算出したものだと各ページに注記されています。順位が高い製品は「よく調べられている製品」であって、「多く導入されている製品」や「自社の要件に合う製品」とは限りません。掲載自体が出稿を前提にしている媒体もあり、警備会社やビル設備メーカーの大規模向け製品が一覧に出てこないこともあります。
そのため、ランキングは候補の名前を拾う段階でだけ使い、拾った製品を次章の4分類に振り分けるところから自分の比較を始めます。メーカー名で探したい場合も同じで、「入退室管理システム メーカー 一覧」で出てくる顔ぶれは媒体ごとに偏っています。
比較表の「勤怠連携あり」の丸印が示す範囲と示さない範囲の見分け方
比較表の丸印は、連携の有無を1ビットで表しているにすぎません。実際の連携の形は、特定の勤怠サービスとあらかじめ接続済みのもの、CSVを書き出して手で取り込むもの、APIを公開していて自社で接続を作れるもの、の少なくとも3段階に分かれます。表ではどれも同じ丸印になります。
自社で使っている勤怠・人事システムが製品側の接続先リストに入っていれば、丸印はそのまま信用できます。入っていない場合は、CSV連携なのかAPIなのかは、問い合わせ段階での確認が必須です。ここを曖昧にしたまま契約すると、毎月CSVを手で加工する作業が残り、導入前の「打刻と入室の二重管理」が形を変えて続くことになります。
入退室管理システムを錠の取り付け方式と製品タイプの4分類で比較する方法
入退室管理システムの製品は、扉への取り付け方でおおむね4つのタイプに分かれます。認証方式やクラウドかオンプレミスかは、このタイプの中でさらに選ぶ2段目の条件です。
| タイプ | 扉への取り付け | 向く規模 | 主な比較項目 |
|---|---|---|---|
| 後付けスマートロック型 | 既存のサムターンに貼り付け | 扉1〜数枚 | 電池寿命、月額、合鍵の発行方法 |
| 電気錠・自動ドア制御型(クラウド) | 既設の電気錠や自動ドアの制御盤に接続 | 扉数枚〜数十枚、多拠点 | 対応する錠と盤、API、拠点管理 |
| 設備一体型(オンプレミス中心) | ゲート・電気錠・制御装置を新設 | ビル、研究所、データセンター | 区画制御、警備・防災との連動、保守体制 |
| 顔認証端末型 | 端末を扉横に設置し電気錠と連動 | 手がふさがる現場、なりすまし対策 | 認証速度、照合人数、データの保管場所 |
同じ製品名でも、プランによって複数のタイプにまたがる場合がある点には注意が必要です。たとえば構造計画研究所が提供するRemoteLOCKは、暗証番号・ICカード・QRコード・システム解錠の4方式を挙げ、開き戸や引き戸に加えて自動ドア、エレベータ、ゲートにも対応すると公式サイトで案内しています。製品名ではなく、自社の扉で使うプランがどのタイプに当たるかで比較表を作り直すと、候補の数が実務的な範囲に収まります。
賃貸オフィスの原状回復と工事の可否が候補を半分に絞る確認条件
テナントとして入居している賃貸オフィスでは、扉に穴を開ける工事や電気錠への交換にビルオーナーの承諾が要る場合がほとんどです。承諾が得られない、あるいは退去時の原状回復費用を見込みたくないなら、選択肢は後付けスマートロック型にほぼ限られます。逆に自社ビルや、すでに電気錠と自動ドアが入っている区画なら、制御盤に接続する型のほうが電池交換の手間がなく、扉数が増えても運用が崩れません。
比較に入る前に、総務と施設管理の担当者で「扉の一覧」を作っておくと判断が速くなります。扉ごとに、錠の種類、自動ドアかどうか、工事の可否、通る人数のピークを書き出すだけで、どのタイプが要るかをほぼ判断できる一覧です。認証方式ごとの強度や共連れ対策の仕組みは入退室管理システムの定義と認証方式の解説で整理しています。
勤怠・人事システムとのAPI連携で入退室管理システムを比較する具体的な観点
入退室の履歴を勤怠の実績や在館者の把握に使いたい場合、比較の中心は認証端末ではなくデータの出口に移ります。公開されているAPI仕様を例に、確認すべき項目を具体的に見ていきます。
API公開の有無と申込条件、認証方式と取得できるデータ範囲の確認
Photosynth が提供する Akerun は、開発者向けサイトのAkerun Developersで API v3 の仕様を公開しています。入退室履歴の取得のほか、ユーザーや合鍵、ICカードの管理、遠隔からの施錠・解錠を扱え、認証は OAuth 2.0 に準拠し、アクセストークンの有効期間は発行から90日と記載されています(2026年10月時点の公開仕様)。一方で、利用には営業担当への問い合わせが必要とされており、仕様が公開されていることと、契約すれば誰でもすぐ使えることは別です。
比較の段階では、各製品について「仕様書が公開されているか」「利用は申込制か、追加料金があるか」「認可に必要な管理者権限は何か」の3点を表に足します。仕様書が非公開で、問い合わせても連携の可否しか答えが返ってこない製品は、自社システムとつなぐ前提なら候補から外すのが安全です。
履歴の保存期間と取得上限、取りこぼしを防ぐ同期設計の確認項目
連携を作る段階で効いてくるのが、履歴をどこまで遡れて、どの速さで取れるかです。Akerun API v3 の履歴一覧は、取得できるのが直近2年間、1回の取得件数は最大1,000件、リクエスト制限は1分あたり50回と公開仕様に明記されています。履歴を漏れなく取得したい場合は、日時ではなくサーバーへのアップロード順を表すIDでソートする方法が推奨されています。
GET https://api.akerun.com/v3/organizations/{ORGANIZATION_ID}/accesses?sort_by=id&sort_order=asc&id_after={前回取得した最後のID}&limit=1000
Authorization: Bearer {ACCESS_TOKEN}
上は、前回の取り込みで最後に受け取ったIDより後の履歴を古い順に取る形の例です。端末がオフラインの間に記録された履歴は後からまとめて届くため、時刻で区切って取ると遅れて届いた分を取りこぼします。製品比較の場面でも、この「遅延して届く履歴をどう拾うか」に答えられるかは、APIの成熟度を測るよい質問になります。保存期間が2年なら、監査や労務の証跡として3年以上残したい企業は、自社側に履歴を複製する仕組みが別途必要です。
公開サービス連携の数より自社の勤怠・会員システムとの接続実績を見る理由
連携先の数を前面に出す製品の例がRemoteLOCKです。公式サイトには60以上の公開サービスと連動すると記載があり、連携先として予約決済サービス、宿泊管理システム、受付システムなどが挙げられています。レンタルスペースや宿泊施設のように、予約と暗証番号の発行を結び付けたい業態にはこの広さがそのまま効きます。
オフィスや工場の比較で見るべきなのは、数ではなく自社が使っている勤怠・人事・会員管理システムが連携先に含まれているかどうかです。含まれていなければ、連携先が60でも0でも自社にとっての条件は変わりません。その場合はAPIの仕様で比べることになり、前の2つの項目に戻ります。
中小企業・大企業・工場で入退室管理システムの比較で重く見る点の違い
同じ製品群を比べていても、組織の規模と現場の性質によって、どの列を重く見るかが変わります。束ねて検索されることの多い3つの立場ごとに整理します。
中小企業は扉数と月額、管理者1人で回る運用かで決める判断基準
従業員が数十人で扉が1〜3枚程度の中小企業では、後付けスマートロック型か小規模向けのクラウド型が候補の中心になります。比較の重みは、扉1枚あたりの月額、管理画面で合鍵の発行と停止を総務の担当者1人が迷わずできるか、電池切れや通信断のときに物理鍵で開けられるか、の順です。勤怠連携は、使っている勤怠サービスが接続先リストにあれば加点、なければCSVで足りるかを確認する程度で十分です。
大企業は人事マスタとの同期と退職者の権限剥奪の速さで比べる観点
拠点が複数あり、毎月数十人単位で入退社や異動が起きる大企業では、比較の重みが一変します。見るべきなのは、人事システムの組織・社員マスタから入退室の権限を自動で付与し、退職や異動の当日に失効させられるかです。手作業での権限変更が残ると、退職者のICカードが数週間有効なまま残る状態が起き、監査で指摘されます。拠点ごとに別の管理者が権限を持てるか、操作ログを誰がいつ変更したか残せるかも比較表に加えます。
工場は手袋・ヘルメット着用時の認証と区画ごとの入場資格で選ぶ条件
工場では、手袋をしたままカードを取り出せない、ヘルメットや防塵マスクで顔の一部が隠れる、といった現場の条件が認証方式の選択を左右します。ハンズフリーのICタグや、マスク着用時の照合に対応した顔認証端末が候補に入るのはこのためです。もう一つの特徴は、クリーンルームや危険物の保管区画など、教育の受講や資格の保有を入場の条件にしたい区画があることです。教育記録や資格の台帳と入退室の権限を連動させる要件は、パッケージの設定だけでは収まらないことが多く、次の章の判断に直結します。中央監視や警備との連動まで視野に入る場合はビル管理システム(BAS)の対象範囲とパッケージ・受託開発の判断もあわせて確認しておくと設備側の境界が整理できます。
顔認証を含む製品を比較候補に入れる前に確認する個人情報の取り扱い
顔認証は、カードの貸し借りや紛失が起きない点で比較表上は有利に見えます。ただし導入の可否を決めるのは認証精度より、データの扱いを社内で合意できるかどうかです。
個人情報保護委員会の個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)は、顔の骨格や目・鼻・口の位置と形状から抽出した特徴情報を、本人を認証することを目的とした装置やソフトウェアで本人を認証できるようにしたものを個人識別符号として示しています(令和8年6月一部改正時点の掲載内容)。入退室管理の顔認証端末が登録する顔データは、この定義に当たると考えて準備するのが妥当です。
比較の段階で確認するのは、顔の特徴データを端末内に保持するのかクラウドに保持するのか、退職時に削除する手順が管理画面から実行できるか、利用目的を従業員にどう通知するか、の3点です。説明と削除の運用まで描けない場合は、顔認証を見送り、ICカードやスマートフォンによる認証で比較を進めるほうが導入後の手戻りが小さく済みます。
パッケージで足りる条件と個別の連携開発が必要になる条件の判断基準
比較を重ねても候補が1つに定まらないときは、パッケージの設定で完結させるか、連携部分を作るかを先に決めると選び方が変わります。判断はかなりの部分、扉の数と接続先の数で決まります。
入退室管理のパッケージを採用して設定だけで完結させるべき3つの条件
扉が十数枚以内、拠点が数か所まで、連携したい勤怠サービスが製品側の接続先リストに入っている。この3つがそろうなら、迷わずパッケージで完結させます。月額で費用が読め、導入まで数週間で済み、製品のアップデートも自動で受けられます。この条件で個別開発を検討するのは過剰です。入退室の履歴を見られれば十分で、他のシステムに渡す予定がない場合も同じ結論になります。
連携開発が必要になる条件と、すべて作り直して失敗する典型パターン
自社の人事・基幹システムと権限を双方向で同期したい、工場の教育記録と区画の入場資格を連動させたい、APIの保存期間を超えて履歴を自社で長期保管したい。こうした条件が1つでも入ると、パッケージの設定変更では収まりません。このとき失敗しやすいのが、入退室管理システムそのものを自社開発で作り直す選択です。錠や制御盤の機器保守まで自社で背負うことになり、扉の故障時に誰が対応するかが曖昧になります。自作を記録・錠制御・電気錠の3段階に分けたとき、どこまでなら自社で作れるかは入退室管理システムの自作:記録・錠制御・電気錠の3段階で見る作れる範囲と外注の判断で解説しています。
現実的なのは、認証と施解錠はAPIを公開しているパッケージに任せ、人事マスタとの同期や履歴の取り込みといった連携部分だけを作る構成です。比較の最終段階では、候補製品のAPI仕様書を連携の作り手に見せ、前述の保存期間・取得上限・取りこぼし対策まで含めて実装できるかを確認すると判断を誤りません。人事・勤怠・基幹システムとの接続をどこまで作るかの切り分けは、API開発・システム連携の相談として、扉の一覧と連携先の一覧を持ち寄るところから始められます。
よくある質問
入退室管理システムの比較・おすすめを調べる段階でよく出る質問に答えます。
入退室管理システムのおすすめはどれですか?
全社に共通するおすすめはありません。賃貸オフィスで扉が数枚なら後付けスマートロック型、自社ビルや多拠点なら電気錠を制御するクラウド型、研究所やデータセンターのように区画制御と警備連動が要るなら設備一体型、と錠の取り付け方式で先に絞り込み、その中で勤怠・人事システムとの連携方法と月額を比べると、候補は2〜3製品に収まります。
無料で使える入退室管理システムはありますか?
初期費用を0円とする製品や無料トライアルを設ける製品はありますが、扉ごとの月額や機器の費用は発生するのが一般的です。無料の範囲がどこまでかは製品ごとに異なるため、扉数が増えたときの総額で比べる必要があります。料金体系の考え方は入退室管理システムとはの費用の章で整理しています。無料・買い切りをうたう製品で後から費用が膨らむ落とし穴は、入退室管理システムの費用相場:初期費用・月額の内訳と扉数別の5年総額【2026年】で内訳ごとに解説しています。
工事なしで導入できる入退室管理システムはありますか?
既存のサムターンに貼り付ける後付けスマートロック型なら、工事なしで導入できます。賃貸オフィスで原状回復が必要な場合に向く方式です。ただし電池式のため定期的な電池交換が必要で、自動ドアやゲートには対応しない製品が多い点を比較時に確認します。自動ドアや電気錠を制御したい場合は、制御盤への接続工事が前提になります。
クラウド型とオンプレミス型はどちらを選ぶべきですか?
拠点が複数あり、管理画面を外出先からも使いたいならクラウド型が候補です。インターネットに接続できない区画がある、入退室データを社外のサーバーに置けない社内規程がある、といった条件ではオンプレミス型が残ります。比較の際は、通信が途切れたときに扉が開けられるか、履歴が端末側に保持されて後から送られるかもあわせて確認します。通信断時の動作やオンプレミスを残す条件は、入退室管理システムのクラウド型:オンプレミスとの違いと通信断・ログ分析で選ぶ基準で詳しく解説しています。
入退室管理システムと勤怠管理システムは連携できますか?
多くの製品が連携をうたっていますが、製品ごとに連携方法は異なるため確認が必要です。特定の勤怠サービスと接続済みのもの、CSVで受け渡すもの、APIを公開しているものがあり、自社の勤怠システムが接続先に無い場合はAPIの有無と仕様で比べます。入退室の時刻を打刻の代わりにする場合は、共連れや打刻漏れの扱いを就業規則側で決めておく必要があります。