入退室管理システムの費用は、錠や認証リーダーの本体代、取付工事費、扉ごとにかかる月額料金の3つを足して決まります。比較サイトの「初期費用0円〜・月額数千円〜」という表示だけでは、扉を5枚、10枚と増やしたときの総額が見えません。この記事では、価格を公開している製品の公式料金をもとに1扉・5扉・20扉の5年総額を試算し、無料や買い切りをうたう製品で後から費用が発生する箇所、40万円未満の少額減価償却資産特例、工事と連携開発で見積が膨らむ条件までを整理します。仕組みや認証方式の基本は入退室管理システムとは?認証方式の種類と選び方・システム連携の判断【情シス向け】で解説しています。
まとめ:入退室管理システムの費用は扉数と5年総額、所有形態で比べる
見積を比べるときは、初期費用と月額をそれぞれ見るのではなく、扉数とリーダー台数を掛けた5年間の総額で並べてください。公開価格で試算すると、工事を伴うスマートロック型は1扉あたり5年で約21万円、5扉で約105万円になります。
「無料」は多くの場合、初期費用が0円という意味です。機器がレンタルで、解約時に返却が必要な契約もあります。本体を買い切っても、クラウドで管理する限り月額は残ります。勤怠や人事システムとつなぐ開発が必要かどうかで総額は大きく変わるため、製品の見積を取る前に連携範囲を決めておくのが近道です。
入退室管理システムの費用を構成する導入時の初期費用と月額料金の内訳
費用の内訳は製品のタイプで大きく変わりません。どの見積でも、次の項目がどこに含まれているかを確かめると比較がそろいます。
錠本体・認証リーダー・取付工事という初期費用の中身と設置条件別の価格帯
初期費用は、錠や制御装置の本体代、ICカードやテンキーの認証リーダー代、取付工事費で構成されます。価格を公開しているRemoteLOCKの公式料金ページ(2026年10月時点)では、本体が「500i」で税込66,000円、「9j」で税込140,800円、標準的な取付工事が1台あたり4.5万円と示されています。
同じページでは9jの工事費として、扉の加工をしない取り付けなら1.5〜2.5万円、電池を使わず外部電源で設置するなら5〜10万円と、同じ機種でも工事費が設置条件で数倍に開くことも明記されています。初期費用を比べるときは、本体代より工事の条件を先にそろえるほうが差をつかみやすくなります。
月額料金が扉数・リーダー台数・利用者数のどれで積み上がるかの確認
月額料金は、扉数、リーダー台数、利用者数、拠点数のいずれかに比例して増えます。RemoteLOCKはデバイス1台あたりの課金で、ビジネス スターターが税込1,650円、ビジネス スタンダードが税込2,200円、スタンダードプラスが税込2,750円です(2026年10月時点の公式料金)。
課金単位が違う製品同士は、月額の数字を横に並べても比較になりません。自社の扉数と従業員数を両方書いた条件で見積を依頼すると、課金単位の違いが総額に反映されます。管理者アカウントの追加が有料になる製品もあり、RemoteLOCKのビジネス スターターでは、2人目以降の子管理者が1人あたり330円の追加料金になります。
公式に価格を公開する製品と見積制の製品で費用の比べ方を変える理由
法人向けの入退室管理システムは、価格を公開せず見積制にしている製品が少なくありません。導入社数の多いAkerunも公式サイトに料金表はなく、公式FAQでは設置箇所や台数、期間、用途で料金が変わると案内しています。
見積制の製品を比べるときは、公開価格の製品で作った総額表を物差しにします。同じ扉数・同じ年数で見積を取り、公開価格の製品との差額が何に対する費用なのか(工事の範囲、保守、サポート体制)を説明してもらうと、値引き交渉の材料にもなります。
扉数別に試算する入退室管理システムの5年総額と1扉あたりの費用
ここからは、公開価格だけを使って総額を積み上げます。見積の妥当性を測る目安として使ってください。
公開価格で試算した1扉・5扉・20扉の初期費用と5年間の総額
RemoteLOCK 500i(税込66,000円)に標準取付工事4.5万円、月額は税込1,650円のビジネス スターターという条件で、60か月分を足しました。工事費は公式ページで税込か税抜かの記載がないため、表示額のまま計算しています。
| 扉数 | 初期費用(本体+工事) | 月額 | 5年間の月額合計 | 5年総額 |
|---|---|---|---|---|
| 1扉 | 111,000円 | 1,650円 | 99,000円 | 約21万円 |
| 5扉 | 555,000円 | 8,250円 | 495,000円 | 約105万円 |
| 20扉 | 2,220,000円 | 33,000円 | 1,980,000円 | 約420万円 |
5年総額のうち初期費用が占める割合は約53%で、月額の合計もほぼ同じ規模になります。初期費用0円の製品でも、月額が高ければ5年で逆転します。20扉でビジネス スタンダード(2,200円)を選ぶと月額合計は264万円に増え、総額は約486万円です。
入室と退室の両方を認証するとリーダー台数分の月額が倍になる落とし穴
見落としやすいのが、退室時の認証です。RemoteLOCKの料金ページには、認証リーダー1台は入室時のみの認証で、入退室の両方で認証するには1扉に2台を設置し、料金もリーダー台数に比例するという注記があります。
在室管理や共連れ防止のために退室時もカードをかざす運用にすると、リーダー代と月額がその扉だけ倍になります。全扉を両方向にする必要はありません。サーバー室や執務エリアの入口など、在室者を正確に把握したい扉に絞るのが現実的な設計です。
無料・買い切りをうたう入退室管理システムの費用面の落とし穴と確認点
「無料」「買い切り」「安価」で探している場合、広告の言葉と契約の中身がずれやすい箇所が2つあります。所有権と月額の残り方です。
初期費用0円の製品はレンタル契約で解約時に機器返却が前提になる点
初期費用0円をうたう製品の多くは、機器を貸し出すレンタル型です。Akerunの公式FAQでは、Akerun ProとAkerunコントローラーは原則レンタルで、契約終了時には製品の返却が必要とされ、買い取りは営業担当への相談になっています。
レンタル型は、機器代が月額に含まれていると考えてください。解約すれば錠ごと手元からなくなるため、乗り換え時には次の製品の初期費用が改めてかかります。一方で、電池切れの前に交換用電池が自動で届き、その電池代がサービスに含まれるなど、運用の手間を月額で肩代わりしてくれる面もあります。
本体を買い切っても残るクラウド利用料と、無料ツールが錠を制御しない点
本体を購入する製品でも、スマートフォンや管理画面で解錠権限を配るなら、クラウドの利用料は毎月かかります。RemoteLOCKも本体は購入ですが、クラウド管理は月額プランの契約が前提で、アカウント作成とデバイス登録後に課金が始まります。
月額が本当に発生しないのは、管理ソフトを自社サーバーに入れるオンプレミス型で保守契約を結ばない場合くらいです。ただし保守がなければ、故障時の交換や権限設定の不具合に自社で対応することになります。無料で配布されているQRコードの入退室記録アプリは、出入りの時刻を記録するだけで錠を開け閉めしません。鍵の管理まで求めるなら、無料アプリでは代わりになりません。市販品を買わずに自作する場合に作れる範囲と、電気工事が絡んで外注に切り替える条件は、入退室管理システムの自作:記録・錠制御・電気錠の3段階で見る作れる範囲と外注の判断で整理しています。
買い切りの機器を40万円未満の少額減価償却資産特例で処理できる条件
買い切りの場合は、会計上の処理も費用の見え方を変えます。国税庁のタックスアンサーNo.5408(令和8年4月1日現在法令等)によると、青色申告の中小企業者等は、令和8年4月1日以後に取得した40万円未満の減価償却資産を、年合計300万円までその年度の損金にできます。改正前は30万円未満でした。
常時使用する従業員数が400人以下であることなどの条件があり、令和11年3月31日までに取得して事業に使ったものが対象です。錠1台ごとに判定できるか、工事費を含めて1つの資産とみるかで結論が変わるため、発注前に顧問税理士へ見積書を見せて確認してください。レンタル型の月額は、この特例とは関係なく毎月の費用として処理されます。
見積で費用が膨らむ工事・連携の条件と安価に導入するための判断基準
試算表から大きく外れる見積が出たときは、工事と連携のどちらかに原因があることがほとんどです。
電気錠の配線工事や賃貸オフィスの原状回復で初期費用が増える条件
既存のサムターン(内側のつまみ)に後付けするスマートロック型は、工事費がほぼかかりません。AkerunのFAQでも、Akerun Proは原則工事費がかからない一方、電気錠や自動ドアにつなぐAkerunコントローラーは配線工事が必要で、初期工事費がかかる場合があるとしています。
自動ドアやエントランスの電気錠、ビル全体の警備システムと連動させる場合は、ビル側の設備業者が工事に加わり、見積は扉ごとの単価では収まらなくなります。賃貸オフィスでは、退去時に扉を元に戻す原状回復費も見込んでください。ビル設備との境界はビル管理システム(BAS)とは?中央監視の対象範囲とパッケージ/受託開発の判断で整理しています。
勤怠・人事システムと連携開発を行う場合に費用が発生する範囲と線引き
入退室の記録を勤怠の打刻に使う場合、製品が対応している勤怠サービスとの連携なら設定だけで済み、開発費はかかりません。費用が発生するのは、自社独自の勤怠・人事・基幹システムに入退室の履歴を取り込む場合や、人事マスタの入退社に合わせて解錠権限を自動で付け外しする場合です。
この開発費は扉数ではなく、つなぐシステムの数と同期の頻度で決まります。扉が3枚の会社でも、人事マスタとの双方向同期を求めれば開発の規模は扉50枚の会社と変わりません。製品のAPIで取れるデータの範囲は入退室管理システムの比較:おすすめ製品の選び方を錠の方式・API連携・規模で整理で確認項目をまとめています。社内システムとの接続を含めて費用を見積もりたい場合は、基幹システム開発の相談で、製品選定と連携範囲の仕分けから進められます。
安価なスマートロック型で十分な場面と、費用をかけても見送るべき場面
出入口が1〜5扉で、全員が同じ扉を使え、勤怠連携は製品の対応サービスで足りる。この条件なら、工事不要のスマートロック型で十分です。電気錠や連携開発に予算を割く必要はありません。
逆に、費用をかけても導入を見送るべき場面もあります。扉が1枚で利用者が数人なら、5年で約21万円を払っても物理鍵の管理と大差ない効果しか得られません。退職者の鍵回収に問題が出ていないなら、まず暗証番号を変えられる錠への交換から始めるほうが費用対効果は上です。逆に、監査証跡が取引先から求められている、サーバー室への入室を記録する必要があるといった要件があれば、扉の数が少なくても導入する理由になります。
よくある質問
入退室管理システムの費用について、見積前によく出る質問に答えます。
入退室管理システムの費用相場はどのくらいですか?
工事を伴うスマートロック型なら、公開価格での試算は1扉あたり初期費用約11万円、月額1,650円前後です。5年間の総額にすると1扉で約21万円、5扉で約105万円になります。電気錠やビル設備との連動が必要な扉は、設備業者の工事が入るため個別見積になります。金額は2026年10月時点の公式料金によるものです。
無料で使える入退室管理システムはありますか?
錠を制御する入退室管理システムで、月額も機器代もかからない製品はほぼありません。「無料」の多くは初期費用0円の意味で、機器代は月額に含まれ、解約時に機器を返却するレンタル契約です。出入りの時刻を記録するだけの無料アプリはありますが、扉の施錠や解錠はできません。
買い切りとサブスクリプションはどちらが安くなりますか?
クラウドで管理するなら、本体を買い切っても月額は残るため、差が出るのは機器代の部分だけです。5年以上使い続ける前提なら買い切り、扉数の増減や乗り換えの可能性があるならレンタル型が向きます。中小企業者等が40万円未満の機器を買う場合は、少額減価償却資産の特例で一括して損金にできるかも比較に入れてください。
入退室管理システムを安価に導入する方法はありますか?
認証する扉を絞るのが最も効く方法です。全扉ではなく、出入口とサーバー室など記録が必要な扉に限り、退室時の認証も必要な扉だけにします。工事不要の後付け型を選べば工事費と原状回復費を抑えることが可能です。勤怠連携は製品の対応サービスで済ませ、独自開発は必要な範囲に限ります。
見積を依頼するときに伝えるべき情報は何ですか?
扉の数と種類(開き戸か引き戸か、電気錠や自動ドアの有無)、入室だけか退室も認証するか、利用者数と拠点数、連携したい勤怠・人事システムの名称を伝えてください。賃貸か自社所有かで工事の可否が変わるため、物件の条件も添えます。条件をそろえて複数社に依頼すると、5年総額で比べられます。
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