IT重説とは?宅建業法の実施要件と賃貸・売買の違い、対応システムの要件まで解説
IT重説は、不動産取引の重要事項説明をオンラインの通話で行う方法を指します。賃貸は2017年、売買は2021年に本格運用が始まり、条件を満たせば対面と同じ扱いになります。この記事では、宅建業法が求める4つの実施要件、事前承諾の取り方、賃貸と売買の運用差、現場で起きるデメリットと失敗パターンを整理しました。あわせて、対応システムに実装すべき機能と録画データの保存設計、賃貸管理・顧客管理との連携範囲、既製ツールと自社開発の判断条件まで踏み込みます。
まとめ:IT重説の実施要件と賃貸・売買の可否差、システム側の必須機能
IT重説は、宅地建物取引業法35条にもとづく重要事項説明を、映像と音声の双方向通信で遠隔から行う方法です。賃貸取引は2017年10月1日、売買取引は2021年3月30日に本格運用が始まりました。対面と同じ扱いを受けるのは、国土交通省が示す遵守事項を満たした場合に限られます。
実務で押さえる要件は4つ。相手方の事前承諾、宅建士の記名がある重要事項説明書と添付書類の事前送付、図面が読める映像品質と双方向の音声、宅建士証を画面上で提示して視認を確認すること。この4点のどれか1つでも欠ければ、その説明は宅建業法上の重要事項説明として成立しません。
システムを用意する側の論点は別にあります。ビデオ通話ツールを入れれば済む話ではなく、承諾の取得記録・事前送付の到達記録・宅建士証の提示ログ・説明の録画を、1件の取引に紐づけて残せるかどうかが分かれ目になります。賃貸管理システムや顧客管理と契約データがつながっていない状態でIT重説だけを足すと、担当者が同じ物件情報を三度入力する運用になりがちです。
判断の目安はこうなります。月の重説件数が数十件までで、既存の管理ソフトに録画保存の仕組みがある会社は、既製のIT重説ツールで足ります。自社の管理システムに契約フローを持ち、そこへ承諾・送付・録画の証跡を統合したい会社は、連携部分を作り込む前提で設計したほうが運用の手間は減るでしょう。
IT重説の定義と、対面の重要事項説明と同等に扱われる法的な根拠
IT重説という言葉は法律の条文には出てきません。宅建業法35条が定める重要事項説明を、テレビ会議などの通信手段で行う形態を指す通称です。国土交通省は「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に、一定の条件を満たすIT重説を対面と同様に取り扱う旨を追加しました。条文が変わったのではなく、解釈の運用として位置づけられている点が出発点になります。
IT重説と対面の重説を分ける4つの遵守事項と、抜けやすい確認工程
国土交通省が示す遵守事項は、映像と音声の双方向環境、説明書類の事前送付、相手方が書類を確認できる状態と映像音声の事前確認、宅建士証の提示と視認確認の4点です。これらは「守れば望ましい」水準ではありません。満たさずに行った説明は対面の重要事項説明と同様に取り扱われず、宅建業法上の説明義務を果たしていない状態になります。
実務でよく抜けるのは3点目です。通話を始めた直後に「画面は見えていますか」「音声は途切れていませんか」と確認し、その応答を記録として残す。この一手間を運用フローに組み込んでいない会社が多く見られます。
2022年5月18日施行の書面電子化とIT重説の制度上の役割分担
IT重説と混同されやすいのが、書面そのものの電子化です。2022年5月18日に施行された宅建業法の改正により、35条書面と37条書面を電磁的方法で提供できるようになりました。これは「紙を渡す代わりにデータで渡してよい」という話であり、「説明をオンラインで行ってよい」というIT重説とは別の制度です。
両方を組み合わせると、書類の交付から説明まで一度も来店せずに完結します。ただし電磁的提供にも相手方の承諾が必要で、承諾はIT重説の承諾とは別に取得します。書面電子化の側の要件は不動産の電子契約とは?宅建業法35条・37条書面の電子交付要件と実務フローで条文単位に整理しているので、交付側の設計はそちらを参照してください。
IT重説の対象外となる取引と、対面へ戻す判断が必要になる場面の条件
制度上、IT重説は賃貸と売買の双方で実施できます。実際に対面へ戻すのは、相手方が承諾しない場合と、本人確認に不安が残る場合です。宅建士証を画面越しに提示しても、相手方が高齢で画面の文字を読み取れない、通信環境が不安定で映像が止まるといった状況では、視認の確認そのものが成立しません。
もう1つ、代理人や法人の担当者が説明を受けるケースでは、代理権の確認を画面越しで完結させにくい場面があります。この場合は説明だけをオンラインにして、書類の授受と本人確認を別の手段で行う分割運用が現実的な落としどころになります。
賃貸取引と売買取引で異なるIT重説の本格運用開始時期と対象範囲
賃貸と売買では、制度として認められた時期が3年半ほど離れています。取引金額と説明項目の複雑さに対する慎重さの差が、この期間に表れました。
賃貸取引で2017年10月1日から本格運用が始まった経緯と背景事情
国土交通省は2015年8月から賃貸取引を対象にした社会実験を行い、その結果をふまえて2017年10月1日に本格運用を開始しました。賃貸は説明項目が定型化しやすく、遠隔地からの入居申込が多いことが後押しになっています。学生の入居や転勤に伴う契約では、内見から契約までの移動費と日程調整の負担が大きいためです。
この時点で対象は賃貸に限られ、売買で同じことをすれば宅建業法違反となる状態が2021年まで続きました。
売買取引が2021年3月30日開始となった理由と実務上の制約
売買取引のIT重説は、国土交通省の報道発表にもとづき2021年3月30日から本格運用が始まりました。売買は権利関係・法令上の制限・敷地と道路の関係など説明項目が多く、図面を見ながらの説明が前提になります。そのため、映像品質の要件が実務上ここで効いてきます。
公図や測量図を画面共有で見せる場合、通話アプリの画質圧縮で線が潰れると「十分に理解できる程度に映像を視認できる」状態を満たしません。事前送付した図面のページ番号を読み上げ、相手方の手元の資料で追ってもらう進め方が確実です。
| 比較軸 | 賃貸取引 | 売買取引 |
|---|---|---|
| 本格運用の開始 | 2017年10月1日 | 2021年3月30日 |
| 説明項目の量 | 定型的で少なめ | 権利・法令で多い |
| 図面の比重 | 間取図が中心 | 公図や測量図が必須 |
| 説明の所要時間 | 30分から1時間程度 | 1時間から2時間程度 |
| 録画の実務上の要否 | 任意だが推奨 | 紛争予防で強く推奨 |
個人間売買や区分所有物件で運用が慎重になる書類量と日程の判断ライン
区分所有物件では、管理規約・使用細則・修繕積立金の状況といった説明項目が加わります。原本の分量が数十ページに及ぶこともあり、事前送付のデータ容量とダウンロード環境が現実的な制約になります。メール添付では送れず、ファイル共有のリンクを送ったものの相手方が開けない、という中断が起きやすい場面です。
判断ラインを1つ引くなら、事前送付する書類の合計が20ページを超える取引では、送付から説明日まで最低3営業日を空け、開封の確認を取ってから日程を確定する。この運用にしておくと、当日の「資料が見当たらない」による延期がほぼ消えます。
宅建業法が求めるIT重説の実施要件と、事前承諾を取得する手順
現場でつまずくのは要件の中身より「それを満たしたことをどう残すか」です。国土交通省の実施マニュアルは2022年4月に初版、2024年12月23日に令和6年12月版が公表され、承諾取得例やFAQ補足資料も整備されました。
映像と音声の双方向要件を満たす通信環境と、説明開始前の確認手順
求められているのは、図面等の書類と説明内容を十分に理解できる程度に映像を視認でき、双方の音声を十分に聞き取れ、なおかつ双方向でやりとりできる環境です。片方向の配信や、音声のみの電話は要件を満たしません。
確認は説明の前に行います。相手方の画面に説明者の顔が映っているか、共有資料の文字が読めるか、こちらの声が途切れずに届いているかを1つずつ声に出して尋ね、応答を得てから本題へ入る。スマートフォンでの受講が増えているため、画面サイズによる可読性の差も確認項目に入れておくと安全です。
重要事項説明書の事前送付と到達確認で押さえるべき3つの記録項目
宅建士の記名がある重要事項説明書と添付書類は、説明を受ける側へあらかじめ送付しておく必要があります。ここで残すべき記録は3つです。
- 送付した日時と、送付した書類の一覧(差替えがあった場合は版の別)
- 相手方が受領した事実(開封通知、返信メール、ダウンロード履歴のいずれか)
- 説明当日、相手方の手元に書類がある状態を確認した応答
3つ目を省く会社が多いのですが、後日「送られていない」と主張された際に、送付記録だけでは手元にあったことの証明になりません。当日の確認応答まで録画に含めておくと、この論点は一度に片づきます。
宅建士証を画面上で提示して視認を確認する手順と読み上げ項目の要点
宅建士は自身のカメラに宅建士証をかざし、相手方の画面に映し出された状態で視認できたことを確認します。顔写真と本人が同一であること、氏名、登録番号を読み上げ、相手方から「確認しました」という応答を得るところまでが一連の手続きです。
カメラの自動フォーカスで文字が滲む端末があるため、宅建士証を静止させる時間を5秒以上取る運用にしておくと差し戻しが減ります。画面共有で宅建士証の画像ファイルを見せる方法は、原本の提示にあたらないため避けてください。
相手方から事前承諾を得る書式の作り方と、承諾記録を残す保存方法
IT重説を行うこと自体に、相手方の承諾が要ります。国土交通省が承諾取得例を示しているため、書式はそれを土台にすると審査で揉めません。手順は次の流れになります。
- IT重説の方法・使用するツール・必要な通信環境を書面またはメールで示す
- 対面での説明も選べることを併記し、相手方に選択させる
- 承諾の意思表示を書面かメール本文で受け取る(口頭のみにしない)
- 承諾日時・承諾者名・承諾方法を取引ファイルに紐づけて保存する
書面を電磁的方法で提供する場合の承諾は、IT重説の承諾とは別に取得します。1枚の同意書にまとめて署名させる運用は、後から「どちらに承諾したのか」が争点になるため分けておくのが無難です。電子署名の法的効力や仕組みの基礎は電子契約とは?仕組み・電子署名法による法的効力・書面契約との違いで扱っています。
IT重説で削減できる工数と、現場で起きる中断・トラブルの実態
導入効果は移動時間の削減として語られがちですが、実際に効くのは日程調整の自由度です。来店を前提にすると土日と平日夜に予約が集中し、宅建士の稼働がそこに張り付きます。オンラインなら平日日中の空き時間に30分単位で差し込めます。
繁忙期の移動時間と日程調整の削減効果を件数ベースで見積もる方法
効果を見積もるときは、1件あたりの削減時間ではなく「来店日程が合わずに契約が翌週へずれた件数」を数えてください。賃貸の繁忙期では、この日程ずれが申込のキャンセルに直結します。月間の重説件数が100件、うち日程調整で1週間以上ずれるものが15件あるなら、削減対象はその15件です。
移動時間の削減は宅建士1人あたり1件30分から60分程度ですが、これは繁忙期以外では余剰時間として吸収されてしまい、金額換算しても説得力を持ちにくい数字になります。
通信断で説明を中断したときの再開手順と、要件不備を避ける打ち切り基準
説明の途中で映像や音声が途切れた場合、その間の説明は「十分に聞き取れる環境」で行われていません。中断が起きたら、復旧後に中断前の項目まで戻って説明し直すのが原則です。どこまで説明したかを追えるよう、説明項目のチェックリストを画面に出しながら進める運用にしておくと、戻る地点で迷いません。
3回以上の中断が発生した回は、その日の説明を打ち切って再設定する。この基準を社内で決めておかないと、担当者が「あと少しだから」と続けてしまい、要件を満たさない説明が記録として残ります。
理解度が把握しにくい問題に対する質問設計と、確認を挟む位置の決め方
画面越しでは、相手方が理解していないときの表情や手元の動きが読み取れません。対策は単純で、章ごとに閉じた質問を1つ挟むことです。「ここまでで分からない点はありますか」という開いた質問には、多くの人が「大丈夫です」と答えてしまいます。
そうではなく「契約解除できる期限は何日と説明しましたか」のように、答えが1つに定まる質問に置き換える。回答が返らない箇所が、そのまま説明し直すべき項目になります。この質問設計をシステム側の説明台本に組み込んでおくと、担当者による品質差が縮まります。
IT重説に対応するシステムへ実装する機能要件と録画データの保存設計
既存のビデオ会議ツールでIT重説そのものは実施できます。それでも自社システム側に機能を持たせるのは、要件を満たした証跡が取引単位でまとまらず、後日の照会に数時間かかるからです。
ビデオ通話と書類の同時表示に求める機能要件と、自社開発の切り分け
通話部分は自前で作らず、既存のWebRTC基盤やビデオ通話APIを組み込むのが妥当です。自社で作り込む価値があるのは、通話の周辺にあります。
- 説明対象の物件・契約と通話セッションを紐づける識別子の発行
- 事前送付した書類の版を、通話画面の脇に固定表示する仕組み
- 説明項目のチェックリストと、チェック時刻の自動記録
- 相手方の受講端末種別(PCかスマートフォンか)の記録
スマートフォンでの受講は賃貸で特に多く、画面が小さいぶん資料の可読性が落ちます。端末種別を記録しておくと、後から「読めなかった」と言われた際に、当日どの表示条件だったかを再現できます。
録画データの保存期間・保存先・アクセス権限を決めるときの設計方針
録画は法令上の義務ではありません。ただし紛争予防の観点から、相手方の同意を得たうえで記録し保管する運用が広く採られています。同意なしの録画は避けてください。
保存期間は社内規程で定めます。宅建業法上の帳簿の保存期間が5年(自ら売主となる新築住宅は10年)である点を目安に、契約関係書類とそろえる設計にしておくと管理が単純になります。保存先は、通話ツールのクラウドに置きっぱなしにせず、自社の取引ファイルへ紐づく形で退避させる。アクセス権限は取引担当者と管理者に限定し、閲覧ログを残しておくと個人情報の取扱い上も説明がつきます。
本人確認と宅建士証の提示を記録に残すタイムスタンプ設計と実装方針
宅建士証の提示は、録画のどこに映っているかを後から探せる状態にしておく必要があります。録画ファイル全体から該当箇所を探すのは非効率なので、提示のタイミングで担当者がボタンを押し、そのタイムスタンプを記録する仕組みを入れます。
同じ考え方を、本人確認書類の確認、事前送付書類の到達確認、章ごとの理解度確認にも適用する。記録するのは時刻と操作者だけで足り、映像の切り出しまでは不要です。タイムスタンプが残っていれば、録画の再生位置へ直接飛べます。
事前承諾の取得から説明完了までを1本の証跡にまとめる状態管理の設計
IT重説の1件は「承諾取得済み」「書類送付済み」「到達確認済み」「説明実施済み」「録画保存済み」という状態を順に進みます。この状態を取引レコードの属性として持ち、前の状態を満たさないと次へ進めない制御を入れると、要件漏れが構造的に起きなくなります。
実装上は、状態遷移のたびに履歴テーブルへ追記する形が扱いやすい設計です。現在値だけを上書きすると、後から「いつ承諾を得たか」を復元できません。監査で問われるのは経過のほうになります。
賃貸管理・顧客管理との連携範囲と、既製ツールと自社開発の分岐点
IT重説を単体の機能として入れると、たいていは既存業務との接続で行き詰まります。物件情報は管理システム、顧客情報は顧客管理、契約書は電子契約サービス、通話は別ツール。この四分割のまま運用を始めると、1件の重説のために担当者が4つの画面を行き来します。
賃貸管理システムの契約データとIT重説予約を紐づける連携範囲の設計
連携の起点は、重説の予約を「どのデータに紐づけるか」の設計です。物件に紐づけると同一物件の複数申込で取り違えが起き、顧客に紐づけると同一顧客の複数物件検討で混乱します。申込レコードに紐づけるのが実務上もっとも破綻しません。
連携範囲は、申込情報・物件概要・重要事項説明書の版・担当宅建士の4項目に絞れば足ります。管理システム側の機能や種類を整理する段階であれば、賃貸管理システムとは?機能・種類と選び方、自社開発が必要になる判断で判断軸をまとめています。
顧客管理と電子契約をつなぐときに発生する二重入力と承諾漏れの解消
二重入力が起きる典型は、電子契約サービスへ署名者情報を手で打ち直す工程です。顧客管理側にある氏名・メールアドレス・電話番号を、契約作成時にAPI経由で渡すだけで、この工程は消えます。
見落とされやすいのが承諾の取得状況です。IT重説の承諾と電磁的提供の承諾を管理していないと、契約作成の直前に「そういえば承諾を取っていない」と気づく事故が起きます。承諾フラグは顧客ではなく取引に持たせてください。取引ごとに取り直すためです。業務システム全体の構成を俯瞰したい場合は不動産業務支援システムとは?種類・機能の全体像と比較の判断軸が参考になります。
既製ツールで足りる会社と、自社開発へ寄せるべき会社を分ける判断条件
結論から書きます。次の3つがすべて当てはまる会社は、既製のIT重説ツールで足ります。月間の重説件数がおおむね50件以下、管理システムが市販パッケージで改修の自由度が低い、社内に開発を発注した経験がない。この条件下で自社開発に踏み込むと、投資回収の前に業務が回らなくなります。
逆に自社開発へ寄せるべきなのは、自社の管理システムや不動産ポータルを既に持っており、そこに申込から契約までの導線が載っている会社です。この場合、IT重説を外部ツールに切り出すと証跡が二重管理になり、監査対応の工数が毎年積み上がります。物件検索や内見予約を含む自社システムへ重説の導線ごと組み込む設計は、不動産ポータルサイトシステム開発で扱っている領域です。
判断を迷う中間層には、既製ツールをAPI連携で使う折衷案を勧めます。通話と録画は外部、証跡の集約と状態管理は自社という分担であれば、初期費用を抑えつつ監査対応の一本化ができます。
よくある質問
IT重説の実務で問い合わせが多い論点を5つ挙げます。
IT重説はスマホでも受けられますか?
受けられます。相手方の端末がスマートフォンであっても、映像を視認でき双方の音声を聞き取れて双方向でやりとりできれば要件は満たされます。ただし画面が小さく、公図や測量図のような細かい図面は画面共有だけでは読み取りにくい点に注意してください。事前送付した書類を手元で開いてもらい、ページ番号と項目名を読み上げながら進める運用が確実です。通話中の着信で切断されることもあるため、通知をオフにしてもらう案内を事前に入れておくと中断が減ります。
IT重説のデメリットは何ですか?
大きく3つあります。1つ目は通信環境に依存すること。映像や音声が途切れた区間の説明は要件を満たさないため、中断前の項目まで戻ってやり直す必要があります。2つ目は相手方の理解度が読み取りにくいこと。表情や手元の動きが見えないぶん、章ごとに答えが1つに定まる質問を挟む工夫が要ります。3つ目は事前準備の工数が対面より増えること。書類の事前送付、到達確認、承諾取得という前工程が必ず発生します。
IT重説に相手方の承諾は必ず必要ですか?
必要です。IT重説の方法・使用するツール・必要な通信環境を示したうえで、対面も選べることを併記して相手方に選んでもらい、書面またはメールで承諾を受け取ります。口頭のみの承諾は記録として弱いため避けてください。なお、35条書面や37条書面を電磁的方法で提供する場合の承諾は、IT重説の承諾とは別に取得します。1枚の同意書にまとめると、どちらへの承諾だったかが後で争点になります。
IT重説の録画は義務ですか?保存期間はどれくらいですか?
録画そのものは法令上の義務ではありません。相手方の同意を得たうえで記録し、紛争予防のために保管する運用が一般的で、同意のない録画は行わないでください。保存期間は社内規程で定めますが、宅建業法上の帳簿の保存期間が5年、自ら売主となる新築住宅では10年である点を目安に、契約関係書類とそろえると管理が単純になります。
売買でもIT重説はできますか?賃貸との違いは何ですか?
売買でも実施できます。賃貸は2017年10月1日、売買は2021年3月30日から本格運用が始まりました。違いは説明項目の量と図面の比重です。売買では権利関係・法令上の制限・敷地と道路の関係などを図面と照らしながら説明するため、所要時間は1時間から2時間程度に伸び、映像の可読性がより厳しく問われます。
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