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不動産業務支援システムとは?種類・機能の全体像と比較の判断軸、内製外注の見極め

不動産業務支援システムとは?種類・機能の全体像と比較の判断軸、内製外注の見極め

不動産業務支援システムを比較しようとすると、賃貸管理システム、不動産CRM、物件流通サイト、電子契約サービスが同じ土俵に並び、どれが自社に要る製品なのか判別できなくなります。原因は製品側の呼び方が統一されていないことにあり、機能一覧を横に並べても解決しません。この記事では、不動産業務支援システムが担う5つの業務領域を定義したうえで、賃貸仲介・売買仲介・賃貸管理という業態ごとに必要機能がどう変わるか、クラウド型とオンプレミス型で費用構造がどこで逆転するか、レインズ登録やポータル出稿・電子契約対応が選定条件にどう効くかを順に整理します。宅建業法と賃貸住宅管理業法が求める期限や記録をシステムでどう残すかについて、条文へのリンクと動かせるコード例を添えている点も本記事の特色です。最後に、既製システムで足りなくなる境界線と、追加開発や自社開発へ切り替えてよい条件を条件付きで示します。

まとめ:業態と業務範囲から逆算する不動産業務支援システムの選定判断

不動産業務支援システムは単一の製品カテゴリではなく、物件・顧客・契約・管理・会計という5領域のうち、どこをカバーするかで製品が分かれます。したがって比較の起点は「おすすめ製品ランキング」ではなく、自社の業態がどの領域で詰まっているかの特定になります。賃貸仲介なら反響対応と物件出稿、売買仲介なら長期追客と媒介契約の進行管理、賃貸管理なら家賃送金とオーナー報告が、それぞれ最初のボトルネックです。

選定の判断軸は4つに絞れます。業務フローへの適合、レインズやポータルなど外部連携の充実度、宅建業法上の電子交付要件への対応、そして現場が入力を続けられる運用設計です。機能数の多さは判断軸になりません。加えて、レインズへの登録期限や電子書面の承諾記録、管理受託でのオーナーへの定期報告のように法令が期限と記録を求める業務は、画面があるかではなく「期限を自動で計算し、証跡がデータとして残るか」で見極めてください。

既製システムで足りなくなるのは、店舗や管理戸数の増加で運用が複線化したとき、既存の会計・基幹システムとの連携が手作業になったとき、そして自社固有の商流が製品の前提と食い違うときの3つに限られます。この3条件のどれにも当てはまらない段階で自社開発に踏み込むのは、費用と保守負担の面で見合いません。逆に当てはまるなら、既製SaaSを残したまま連携部分から段階的に自社開発へ移す進め方が現実的です。

不動産業務支援システムとは?基幹システム・個別特化システムとの守備範囲の違い

まず言葉の整理から始めます。製品カタログ上の「不動産業務支援システム」は、守備範囲の広い総称として使われており、実態は下記5領域の組み合わせです。

物件・顧客・契約・管理・会計の5領域から見る業務支援システムの守備範囲

不動産業務支援システムが扱う業務は、次の5領域に分解できます。どの領域まで1製品でまかなうかが、製品ごとの性格を決めています。

  • 物件情報管理:売買・賃貸の物件データ登録、販売図面の作成、レインズやポータルサイトへの出稿
  • 顧客・反響管理:問い合わせの一元受信、追客履歴、マイソク送付、内見予約の進行管理
  • 契約管理:媒介契約・重要事項説明書・売買契約書や賃貸借契約書の作成、電子交付の記録保持
  • 管理業務:入居者対応、家賃入金の消込、修繕・原状回復の手配、オーナーへの送金と報告
  • 会計・経営管理:仕訳連携、部門別の売上集計、担当者別の成約分析

実務ではまず、自社の売上が止まる領域を1つだけ選んで手当てするのが順当な入り口です。5領域を同時に入れ替える提案が出てきたら、その時点で導入規模と失敗時の影響が跳ね上がると考えてください。フル装備型の一括導入は、管理戸数が数千戸を超えるか、複数店舗を横断した数値管理が経営課題になっている会社に限って検討対象になります。

賃貸管理システム・不動産CRM・ポータルサイトとの機能の重なりと切り分け

混乱の元になるのが、隣接カテゴリとの機能の重なりです。3つの近縁カテゴリとの切り分けを押さえると、比較表の読み方が変わります。

賃貸管理システムは上記5領域のうち「管理業務」と「会計」に軸足を置いた製品群で、家賃の入金消込とオーナー送金が中核機能です。機能と種類、既製品で足りない場合の判断については賃貸管理システムの機能・種類と自社開発が必要になる判断で個別に整理しています。一方の不動産CRMは「顧客・反響管理」に特化し、追客の抜け漏れを潰すことを目的とします。物件流通サイトは「物件情報管理」の出口にあたる媒体側の仕組みで、業務システムというより集客資産です。締結後の契約書と期日を担う契約書管理システムとの切り分けは、不動産の契約書管理システムで期日設計と保存義務を整理した解説で整理しています。

3カテゴリのどれも、単体では不動産会社の業務全体を覆いません。業務支援より上位の視点で、不動産テックの14領域から自社が投資する領域を決める手順を先に押さえると、比較の対象そのものを絞り込めます。さらに、資金調達の側から不動産事業を組み立てる場合は業務支援とは別系統の基盤が要るため、不動産クラウドファンディングシステムの機能と不特法対応を切り分けて検討してください。だから総称としての不動産業務支援システムという呼び方が生まれ、比較サイトでは性格の異なる製品が同じ一覧に並ぶことになります。

賃貸仲介・売買仲介・賃貸管理で変わる必要機能と業態別の導入優先順位

同じ不動産会社でも、業態が違えば詰まる工程が違います。ここを飛ばして製品比較に入ると、機能過多の製品を選んで使われないまま終わります。

賃貸仲介で効く反響自動追客と、売買仲介で効く長期追客の機能要件の差

賃貸仲介の勝負どころは反響への初動速度です。繁忙期には1店舗あたりの問い合わせが数百件規模になり、返信が遅れた分がそのまま失注に直結します。求める機能は、複数ポータルからの反響の自動集約、テンプレート返信、内見予約カレンダーの共有に集中します。追客期間は数日から数週間と短く、長期のナーチャリング機能はほぼ使いません。

売買仲介では状況が逆になります。検討期間が数か月から年単位に及ぶため、必要なのは長期の接触履歴と、条件変更に応じた物件の再提案です。加えて媒介契約の期限管理と、レインズへの登録義務(専属専任媒介は5日以内、専任媒介は7日以内)を取りこぼさない進行管理が有効な対策です。この差を理解せずに賃貸向け製品を売買部門に入れると、履歴が3か月で埋もれて使われなくなります。反響管理と追客に絞った製品選びは不動産CRMの機能と汎用型・特化型の選び分けで詳しく扱っています。

賃貸管理業務で追加される家賃送金・修繕対応・オーナー報告の3機能

管理受託を持つ会社では、仲介向けの機能に加えて管理業務側の要件が乗ります。ここが最も自動化の効果が出る領域です。

家賃入金の消込は、口座の入金明細と契約情報を突き合わせる作業で、管理戸数が500戸を超えると手作業では月末に破綻します。修繕対応は入居者からの一次受付、業者手配、費用のオーナー負担・自社負担の切り分けまでを追跡できるかが運用成否の分かれ目です。オーナーへの送金明細と収支報告は、月次で締切が固定されているため、帳票の自動生成があるかどうかで担当者の残業が変わります。管理業務側の要件を詳しく詰める段階では、賃貸管理システムの選び方を先に読むほうが早く決まります。

この3機能には法令上の裏付けもあります。賃貸住宅管理業法では、国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータル(登録の方法)が示すとおり、自己所有を除く管理戸数が200戸以上の事業者に登録が義務付けられ、登録の有効期間は5年です。登録業者の義務として同ポータルの「管理業者の業務」は、入居者から受け取る金銭と自己の財産の分別管理、営業所ごとの帳簿の備付け、そしてオーナーへ少なくとも年1回以上の定期報告を挙げています。家賃の消込とオーナー報告の帳票が弱い製品は、単に手間が増えるだけでなく、法定の報告と帳簿を人手で補う運用になる点を比較時に意識してください。

業態別の導入優先順位——最初に入れるべき領域と後回しでよい領域

4類型それぞれの導入順を整理すると次のようになります。

業態 最初に入れる領域 次に足す領域 後回しでよい領域
賃貸仲介 反響集約・物件出稿 契約書類の電子交付 会計連携
売買仲介 長期追客・媒介進行管理 レインズ連携 管理業務機能
賃貸管理 家賃消込・オーナー送金 修繕手配の追跡 反響自動追客
売買・開発 物件仕入れの案件管理 収支シミュレーション 入居者対応

この表の「後回しでよい領域」は、不要という意味ではなく、初回導入で費用を割く必要がないという意味です。営業支援と管理業務を1製品で揃えたくなりますが、片方の完成度が低い製品を掴むリスクのほうが実害は大きくなります。

クラウド型・オンプレミス型・特化型パッケージの3類型と費用構造の違い

製品の提供形態は3類型に分かれ、費用の出方と改修の自由度がそれぞれ違います。

クラウド型・オンプレミス型・特化型パッケージの費用構造と適合規模

クラウド型は初期費用を数万円から数十万円に抑え、月額をユーザー数や管理戸数で課金する形が主流です。サーバー保守が不要で、法改正への対応もベンダー側の更新で届きます。オンプレミス型は自社サーバーに導入する形態で、初期費用が数十万円から数百万円と重くなる代わりに、業務に合わせた改修の自由度が高くなります。特化型パッケージは賃貸管理や売買仲介など特定業態に絞った製品で、業界特有の帳票が最初から揃っている点が強みです。

類型 初期費用の目安 改修の自由度 適合する規模
クラウド型 数万〜数十万円 設定範囲内に限られる 1〜数店舗
オンプレミス型 数十万〜数百万円 高い(保守要員が必要) 複数店舗・大規模管理
特化型パッケージ 数十万円前後 中程度 業態が固まった会社

現在の新規導入はクラウド型が主流です。オンプレミス型を選ぶ理由が「情報を社外に出したくない」だけであれば、クラウド事業者のセキュリティ体制を確認したうえでクラウド型を選ぶほうが、総額でも運用負担でも有利になります。

初期費用と月額の相場レンジ、店舗数が増えたときに逆転する総額の分岐

クラウド型の月額はユーザー課金で1人あたり数千円から、管理戸数課金で1戸あたり数十円からという設定が多く見られます。ここが料金面の落とし穴です。ユーザー課金型は店舗数と人員が増えるほど月額が線形に伸び、5年総額でオンプレミス型の初期費用を上回る場面が出てきます。

目安として、常時利用者が20名を超え、5年以上の利用が確実な場合は、クラウド型の5年総額とオンプレミス型または自社開発の総額を必ず並べて比較してください。逆に利用者が10名以下、または業務フローが今後変わる見込みがあるなら、月額が積み上がってもクラウド型を選ぶほうが撤退可能性を残せます。契約前に確認すべき費目は、初期設定費、データ移行費、月額、追加ユーザー単価、そしてポータル連携やレインズ連携のオプション料金の5つです。

レインズ・ポータル連携と電子契約対応が選定を左右する外部連携の実務要件

不動産業務支援システムの比較記事で最も抜けやすいのが、この外部連携の実務です。機能一覧では「レインズ連携あり」の一行で済まされますが、現場の作業量を決めるのはこの部分です。レインズそのものの仕組みと、2025年1月に始まった取引状況の登録義務化はレインズとは?一般人が見る方法と仕組み、取引状況登録義務化と業務システム連携で整理しています。

レインズ登録とポータル出稿で発生する物件情報の二重入力と連携の制約

物件を1件預かると、登録先は最低でも3系統に分かれます。レインズ(国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営する不動産流通標準情報システム)への登録、SUUMOやアットホームなど各ポータルへの出稿、そして自社サイトへの掲載です。ここで多くの会社が同じ情報を3回入力しています。

この二重入力を解消する仕組みが物件情報コンバーターで、業務支援システムから各ポータルの形式へ変換して一括送信します。ただし連携経路は固定ではありません。アットホームの業者間サイトATBBからREINS_IPおよび不動産ジャパンへの物件登録連携は、各流通機構の会員向け告知のとおり2023年10月25日をもって終了し、レインズ側での登録・変更が必要な運用に戻りました。製品側の「レインズ連携」が具体的にどの経路を指すのか、出稿できるポータルの実名と、登録・変更・削除のどの操作まで自動化されるかを、契約前に文書で確認してください。連携先の対応表が出てこない製品は、その時点で候補から外して構いません。仲介会社が掲載する側として持つ物件台帳の状態設計と更新期限は、不動産の物件管理システムの解説で扱っています。

自社サイト側の掲載を強化する方針であれば、業務支援システムからの物件データ連携を前提にした設計が要ります。媒体としての作り方は不動産ポータルサイトの必須機能と構築費用で整理しています。

専任媒介のレインズ登録期限を休業日除外で計算するPythonの実装例

レインズ連携の有無より先に確かめたいのが、登録期限をシステムが正しく数えられるかです。宅地建物取引業法34条の2第5項は、専任媒介契約を結んだ宅建業者に指定流通機構への物件登録を義務付けています。その期間は宅地建物取引業法施行規則15条の10が定めており、専任媒介契約の締結の日から7日(専属専任媒介契約は5日)、しかも期間の計算に休業日数は算入しないと規定しています(2026年9月時点のe-Gov法令検索で条文を確認)。

つまり期限日は暦の日数では決まらず、店舗ごとの定休日と年末年始などの休業日によって動きます。期限を一律「締結日+7日」で表示する製品は、定休日が挟まるたびに実際より早い日を示し、逆に休業日を持たない前提で組まれた自社Excelは、店舗間で数え方がずれる原因です。考え方を確かめるための最小のコードが次の例です。標準ライブラリだけで動くので、手元のPythonでそのまま実行できます。

from datetime import date, timedelta

# 宅建業法施行規則15条の10:専任媒介は7日、専属専任媒介は5日。休業日数は算入しない
REGISTER_DAYS = {"専任": 7, "専属専任": 5}

def reins_deadline(signed_on, contract_type, closed_weekdays, holidays):
    """媒介契約の締結日から、指定流通機構への登録期限日を返す"""
    limit = REGISTER_DAYS[contract_type]
    day = signed_on
    counted = 0
    while counted < limit:
        day += timedelta(days=1)  # 締結日当日は数えない
        if day.weekday() in closed_weekdays or day in holidays:
            continue  # 自社の休業日は日数に入れない
        counted += 1
    return day

# 例:水曜定休(weekday=2)の店舗が2026年10月1日(木)に締結した場合
print(reins_deadline(date(2026, 10, 1), "専属専任", {2}, set()))  # 2026-10-06
print(reins_deadline(date(2026, 10, 1), "専任", {2}, set()))      # 2026-10-09

この例では締結日当日を数えず翌日から数える実装にしており、水曜定休の店舗なら専任媒介の期限は暦の7日後(10月8日)ではなく10月9日になります。初日の扱いや休業日の範囲(会社全体の休業日か、担当店舗の定休日か)は社内で解釈を統一し、所属する流通機構の規程でも確認してから実装に入れてください。製品を比較するときは、デモで「定休日を挟む締結日」を入力して期限日がどう表示されるかを見るだけで、期限管理の作り込みの深さが判別できます。登録後に流通機構が発行する登録証明書を依頼者へ引き渡したかどうかも、同じ案件画面で記録できる製品が扱いやすくなります。

IT重説と電子契約に対応するための宅建業法上の要件と承諾取得の手順

非対面での契約対応は、製品選定の必須条件になりつつあります。制度上の前提を押さえておきます。

デジタル社会形成整備法による宅地建物取引業法の改正が2022年5月18日に施行され、35条書面(重要事項説明書)と37条書面(契約書面)を電磁的方法で提供できるようになりました。宅地建物取引士の押印義務も見直されています。ただし無条件ではなく、相手方から電磁的方法による提供について事前の承諾を得ることが要件です。承諾は書面または電磁的方法で取得し、その記録を残す必要があります。実務の手順は国土交通省のIT重説及び書面の電子化のページに実施マニュアルとFAQがまとまっており、2026年9月時点では令和6年12月版が最新です。同時期に公開された書面電子化・IT重説マニュアル ハンディガイド(令和6年12月)は、承諾取得から交付までの流れを短くたどれるので、ベンダーへの要件確認の台本に使えます。承諾で示すべき事項と交付の技術要件、賃貸・売買それぞれの実務フローは不動産の電子契約の要件と実務フローの記事で整理しています。

説明そのものをオンラインで行うIT重説は、賃貸取引で2017年10月から、売買取引で2021年3月30日から本格運用が始まっています(国土交通省「IT重説本格運用」)。システム選定で確認すべきは、電子交付した書面の保存期間と改ざん検知の仕組み、承諾取得の記録がシステム内に残るか、そして電子契約サービスとの連携方式です。この3点が満たされない製品は、契約業務の電子化を進めた段階で必ず作業が分断されます。IT重説そのものの実施要件と対応システムに実装すべき機能は、IT重説とは?実施要件と対応システムの要件で扱っています。

機能一覧表では判別できない比較軸と、導入後に定着しない製品の見分け方

ここまでの整理を、実際の比較検討で使える形に落とし込みます。

機能数ではなく業務フロー適合で測る、比較検討で外せない4つの判断軸

比較の判断軸は次の4つで足ります。

  1. 業務フロー適合:自社の代表的な業務を1本選び、受付から完了までデモ環境で通しで再現してもらう。回避策の説明が3回以上出たら適合していない
  2. 外部連携の具体性:レインズ・ポータル・会計ソフトについて、連携先の実名と自動化される操作範囲を文書で確認する
  3. 法令対応の追随:電子交付の要件変更や制度改正に、追加費用なしで更新が届く契約になっているか
  4. 撤退可能性:解約時に自社データをどの形式で全件出力できるか。CSVで物件・顧客・契約履歴が出せない製品は乗り換え不能になる

4番目を確認する会社はほとんどありません。しかし導入から3年後に効いてくるのはここです。データが出せない製品は、機能に不満が出ても値上げがあっても動けなくなります。

法定の期限と証跡をシステムに残すための確認項目とデータ項目の一覧

3番目の「法令対応の追随」を具体的に確かめるには、法令が求める期限と記録を、製品のどのデータ項目で持つかを聞くのが早道です。画面に入力欄があっても、履歴として検索・出力できなければ証跡になりません。確認すべき項目を業務ごとに整理します。

業務 根拠 システムで持つべき項目
レインズ登録 宅建業法34条の2 締結日・契約種別・期限日・登録日
登録証明の引渡し 宅建業法34条の2 証明書の受領日・依頼者への引渡日
書面の電子交付 宅建業法35条・37条 承諾の取得日・方法・対象書面
家賃等の分別管理 賃貸住宅管理業法 預り金口座・オーナー別の残高
オーナーへの定期報告 賃貸住宅管理業法 報告日・報告内容・次回予定日

この表をそのままベンダーに渡し、各項目が標準機能か、オプションか、自由項目での代用かを回答してもらってください。自由項目での代用と答えた項目は、期限の自動計算やアラートが効かないため、実質的には人の記憶に頼る運用になります。管理戸数が200戸を超えて登録業者になった時点で、この差は監督対応の負担として表に出ます。

導入後に使われなくなる製品の共通点と、定着率を左右する運用設計

使われなくなる製品には共通点があります。入力項目が多すぎること、営業担当が外出先から入力できないこと、そして入力しても本人に返りがないことの3つです。3つ目が最も見落とされます。日報や物件情報を入力しても、それが自分の成約や引き合いに返ってこなければ、現場の入力は2か月で止まります。

対策は製品側ではなく運用設計で打ちます。入力必須項目を最初は5つ以下に絞る、朝礼で見る数値をシステムの画面に一本化する、紙とExcelの並行運用を終了する日を先に決める。この3点を導入計画に入れていない場合、どの製品を選んでも結果は変わりません。前の表の法定項目だけは例外として必須にし、それ以外の項目を後から段階的に増やすと、定着と法令対応を両立しやすくなります。

既製システムで足りなくなる境界線と内製・外注開発へ切り替える判断条件

最後に、この記事で最も判断が要る部分に踏み込みます。結論から言えば、既製システムを見限ってよい条件は3つに限られ、それ以外の理由での自社開発は見送るべきです。

既製システムを見限ってよい3条件と、追加開発を見送るべき失敗パターン

既製品から離れてよいのは次の3条件のいずれかに当てはまるときです。

第一に、既存の会計システムや基幹システムとの連携が手作業のCSV受け渡しになっており、その転記に月20時間以上を費やしている場合。第二に、管理戸数や店舗数の増加でユーザー課金の月額が積み上がり、5年総額が開発費を上回る見込みが立った場合。第三に、自社固有の商流(特定の再販スキーム、独自の分譲区画管理、系列会社をまたぐ物件融通など)が既製品の前提と構造的に食い違い、回避策の運用が現場の負担になっている場合です。

逆に、見送るべき失敗パターンは明確です。「帳票のレイアウトが自社の様式と違う」「画面の項目名を変えたい」といった表層の不一致を理由に自社開発へ進むのは、投資に見合いません。この程度の差は業務側の様式を製品に寄せるほうが安く済みます。もう1つの失敗パターンが、現行の業務フローをそのまま再現する要件定義です。既製品が合わない業務フローは、多くの場合フロー自体が過去の紙運用を引きずっています。作り直す前に、その工程が本当に必要かを潰してください。ここを飛ばした開発は、使われない機能を高い費用で作ることになります。

既製SaaS併用から基幹連携を自社開発へ移す段階的な移行の進め方

3条件に当てはまった場合でも、いきなり全体を自社開発に置き換える必要はありません。費用と失敗リスクを抑える順序があります。

  1. 既製SaaSは残したまま、連携部分(会計システムへの仕訳連携、物件データの中継)だけを自社開発する
  2. 連携基盤の上で、自社固有の商流を扱う業務だけを個別に開発して載せる
  3. 既製SaaS側の利用範囲が縮小し、月額が開発保守費を下回った時点で移行を判断する

この順序であれば、最初の投資が数百万円規模に収まり、途中で判断を止めることもできます。第1段階の連携開発では、先に示した登録期限の計算や承諾記録のように、既製品が汎用的にしか持たない法定期限の管理を自社側の中継処理で補う形も取れます。全面刷新を1回で決める案件は、要件が固まらないまま費用だけが膨らむ典型です。自社の商流に合わせた業務システムを設計から相談したい場合は、不動産システム開発のように業界の業務要件を前提に開発を請け負う会社へ、現行製品の制約と月間の手作業時間を持ち込むところから始めると話が早く進みます。

よくある質問

不動産業務支援システムの検討でよく寄せられる質問をまとめます。

不動産業務支援システムと不動産管理システムは何が違うのですか?

不動産業務支援システムは物件・顧客・契約・管理・会計の5領域を横断する総称で、製品によってカバー範囲が異なります。一方の不動産管理システム(賃貸管理システム)は、このうち管理業務と会計に絞った製品カテゴリを指し、家賃入金の消込とオーナーへの送金・報告が中核機能です。仲介の反響対応まで含めたいなら業務支援システム側、管理受託の事務負担を減らしたいなら管理システム側から検討すると迷いません。管理戸数が200戸以上で賃貸住宅管理業の登録業者にあたる会社は、分別管理と定期報告の機能を必須条件に入れてください。

不動産業務支援システムの費用相場はどれくらいですか?

クラウド型は初期費用が数万円から数十万円、月額はユーザー1人あたり数千円または管理戸数1戸あたり数十円という設定が多く見られます。オンプレミス型は初期費用が数十万円から数百万円です。ただし比較すべきは月額単価ではなく5年総額で、初期設定費・データ移行費・追加ユーザー単価・レインズやポータル連携のオプション料金を含めた合計で並べてください。

小規模な不動産会社でも導入する意味はありますか?

1〜2店舗の会社であれば、5領域すべてを揃える必要はありません。反響の取りこぼしが起きているなら顧客管理から、物件出稿に時間を取られているなら物件情報管理から、1領域だけクラウド型で入れるのが費用対効果の高い入り口です。管理戸数が500戸を下回る段階で会計連携まで含むフル装備型を導入すると、使わない機能に月額を払い続けることになります。専任媒介を扱うなら、休業日を除いた登録期限を自動で出せるかだけは小規模でも確認しておくと安心です。

電子契約に対応していないシステムでも問題ないですか?

2022年5月18日施行の改正宅建業法で35条書面・37条書面の電磁的方法による提供が可能になり、非対面での契約を求める顧客は増えています。現時点で紙運用を続けること自体は違法ではありませんが、システムを新規に選ぶなら、電子交付の記録保持と相手方の承諾取得をシステム内で完結できるかを条件に入れてください。後から別サービスを継ぎ足すと、契約履歴が2か所に分かれて管理が煩雑になります。

既存システムからのデータ移行はどこまでできますか?

移行できる範囲は製品ごとに大きく異なります。物件情報と顧客の基本情報はCSVで取り込める製品が多い一方、追客履歴や添付ファイル、過去の契約書類は対象外となる場合があります。契約前に「移行対象の項目一覧」と「移行費用」を書面で確認し、移行できない履歴データは旧システムを参照専用で一定期間残すか、PDFで書き出して保管する方針を決めておくと安全です。電子交付の承諾記録やオーナーへの報告履歴のような法定の証跡は、移行対象から漏れやすいので項目一覧で個別に確認してください。

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