オムニバス調査は、1本のアンケートに複数の企業が設問を持ち寄って相乗りする調査方式です。自社だけで調査票を作る場合に比べて費用を抑えられる代わりに、設問数や実施時期の自由が利きません。この記事では方式の仕組みと、他の調査手法との使い分けを整理します。
まとめ
先に要点を示します。
- オムニバス調査は複数のクライアントが1本の調査に相乗りする方式で、乗合調査・マルチクライアント調査とも呼ばれる
- 費用は設問単位で決まるため、少数の設問を安く聞きたい場合に向く
- 実施時期が調査会社の定例スケジュールに固定され、設問数や分岐にも制限がある
- 深掘りや自由な設計が要るなら、自社単独で行うアドホック調査を選ぶ
- 映画やドラマの「オムニバス形式」と語源は同じだが、指しているものは別
「オムニバス」という語が指すもの
調べ物の入口で混乱しやすいので、語義を先に分けます。デジタル大辞泉は「オムニバス」を《乗合自動車の意から》と説明したうえで、「映画・演劇・文学などで、いくつかの独立した短編を集め、全体として一つの作品となるように構成したもの」としています。実用日本語表現辞典では「多数の物語や記事、法案などを一つにまとめたもの」です。
共通しているのは、独立した複数のものを1つに乗せるという発想です。映画なら短編を1本にまとめ、調査なら複数社の設問を1本の調査票にまとめます。したがって「オムニバス形式」を探して来た場合と、市場調査の手法を探して来た場合とでは、必要な情報がまったく違います。以下で扱うのは後者、市場調査の方式としてのオムニバス調査です。
オムニバス調査の仕組み
調査会社があらかじめ調査の実施日と対象者条件を決めて枠を用意し、そこへ複数のクライアントが設問を出稿します。回答者は1つの調査票に答えるだけですが、その中には別々の会社の設問が並んでいます。集計後、各社には自社が出した設問の結果だけが納品されます。
費用が抑えられる理由は、回答者を集めるコストが相乗りした各社で割り勘になるためです。逆に言えば、回答者を集める条件は各社で共通なので、自社だけが特殊な対象者を指定することはできません。
通常のアンケート調査との違い
| 観点 | オムニバス調査 | 自社単独の調査 |
|---|---|---|
| 調査票 | 他社の設問と同居 | 全問を自社で設計 |
| 費用の決まり方 | 設問単位 | 調査一式 |
| 実施時期 | 調査会社の定例日程 | 自社の都合で設定 |
| 対象者条件 | 枠として固定 | 自由に設定 |
| 設問数 | 上限あり | 制約は予算次第 |
| 向く用途 | 単発の実態把握 | 仮説検証・深掘り |
単独で企画する調査はアドホック調査と呼ばれます。両者の費用感と使い分けはアドホック調査とは?パネル調査との違い・費用の目安と使い分けを解説で扱っています。
向いているケース・向かないケース
判断は設問数で決まります。聞きたいことが2問から3問で、対象者が一般消費者なら、オムニバス調査が最も安く済みます。認知率を定点で追う、価格帯の受容度を1問で確かめる、といった用途です。
向かないのは、条件分岐を含む設計が必要な場合です。前問の回答で以降の質問を切り替える構成は、枠に収まらないか、収まっても割高になります。特定の職業や利用者に絞りたい場合も同様で、対象者を絞り込む設問を自前で置く必要があり、その分だけ設問数が膨らみます。絞り込みが主目的ならスクリーニング調査とは?本調査との違い・設問例・必要サンプル数の計算まで実務解説で扱う手順を先に踏むほうが結果的に安くなります。
費用の安さだけで選ぶと、設問を詰め込めずに知りたいことの半分しか聞けないまま納品を受ける結果になりがちです。設問を削れないなら、最初から単独調査で見積もりを取ったほうが手戻りがありません。
セルフ型アンケートとの使い分け
近年は、自社で画面から設問を作って配信するセルフ型のサービスも選択肢に入ります。オムニバス調査より単価が下がる場合もあり、実施時期も自由です。
ただし調査票の設計品質は発注側の力量に依存します。選択肢の作り方や設問順序による偏りを自分で管理できるかが分かれ目で、社内に調査設計の経験がないなら、調査会社の枠に乗るオムニバス調査のほうが結果を使える確度は高くなります。ツール側の機能と料金の考え方はアンケートシステムとは?機能・料金相場と選び方、Excel集計から切り替える判断基準を解説にまとめています。
実施までの流れ
- 知りたいことを1文にし、必要な設問数を数える
- 調査会社の実施日程と対象者条件を確認する
- 設問と選択肢を作り、事前に文言チェックを受ける
- 締切までに入稿し、指定日に配信される
- 集計結果を受け取り、自社設問の結果のみを分析する
1番を飛ばして設問から作り始めると、枠に入らないと分かった時点で設計をやり直すことになります。対応している調査会社と費用の相場はオムニバス調査に対応している調査会社と費用|方式別の選び方で扱っています。
よくある質問
オムニバス調査の別名はありますか?
乗合調査、マルチクライアント調査と呼ばれることがあります。いずれも複数のクライアントが1本の調査に相乗りする方式を指します。
映画の「オムニバス形式」と同じ意味ですか?
語源は同じですが、指すものは違います。デジタル大辞泉は「オムニバス」を乗合自動車の意からとしたうえで、独立した短編を集めて一つの作品にしたものと説明しています。調査の場合は、独立した各社の設問を一つの調査票にまとめたものを指します。
設問は何問まで出せますか?
調査会社と枠によって異なります。少数の設問を前提とした方式のため、条件分岐を含む構成や多数の設問が必要なら単独調査を検討してください。
結果は他社に見られますか?
各社には自社が出稿した設問の結果が納品されます。同じ調査票に相乗りしていても、他社の設問結果が渡されるわけではありません。