OFF-JTとは何か?企業における人材育成手法としてのOFF-JTの基本概念と重要性をわかりやすく解説
目次
- 1 OFF-JTとは何か?企業における人材育成手法としてのOFF-JTの基本概念と重要性をわかりやすく解説
- 2 OJTとの違い:現場研修(OJT)とOFF-JTの違いを明確化し、それぞれの役割を解説
- 3 OFF-JTのメリットとデメリット:期待できる成果と注意すべき課題を詳しく解説
- 3.1 OFF-JTのメリット:体系的な知識習得とスキル向上で社員の能力底上げに繋がり、組織全体の成長にも貢献
- 3.2 OFF-JTのメリット:部署を超えた社員交流や視野拡大の機会を提供
- 3.3 OFF-JTのメリット:外部知見の導入で社内に新たな刺激をもたらす
- 3.4 OFF-JTのデメリット:研修コストや時間負担が大きい(予算確保や業務調整の課題となり、企業にとっても負担)
- 3.5 OFF-JTのデメリット:業務中断による生産性への影響(研修参加による業務停止で生じる問題、現場への負担も発生)
- 3.6 OFF-JTのデメリット:研修効果の定着に工夫が必要(学んだ内容を実務に活かすために追加の工夫が求められる)
- 4 効果的なOFF-JT活用方法:研修効果を最大化するための具体的な実践ポイントを詳しく解説
- 5 代表的なOFF-JT研修事例:成功した人材育成プログラムから学ぶベストプラクティス
- 6 日本におけるOFF-JTの現状:普及状況と直面する課題、今後の展望を探る
- 7 OFF-JTで使える助成金・支援制度:人材育成を促進する公的補助や支援策の活用ガイド
- 8 OFF-JTの導入手順・ポイント:研修企画から実施までの具体的ステップと成功の秘訣
- 9 OFF-JTの効果を高める施策:研修前後のフォローや学習環境整備など継続的な学びを促進する方法
- 10 企業のOFF-JT実施事例:大企業から中小企業まで各社の人材育成取り組みに学ぶ
OFF-JTとは何か?企業における人材育成手法としてのOFF-JTの基本概念と重要性をわかりやすく解説
まず「OFF-JT(Off-JT)」とは、職場や業務から離れて行われる研修を指す言葉です。日常の仕事現場を離れ、集中して知識やスキルを学ぶ場として計画された研修全般を意味します。企業の人材育成においては、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング:実務を通じた研修)と対比される概念であり、OFF-JTは体系立てて知識を習得させる場として重要な役割を果たします。新人研修や管理職研修など、多くの企業で導入されている研修手法であり、現場では得られない理論知識や幅広いビジネススキルを身につける機会を提供します。
OFF-JTは人事部門や人材開発部門が中心となって企画・運営されることが多く、研修内容の設計から講師の手配、実施後のフォローまでを企業側で管理します。研修は社内で行う場合もあれば、外部の研修機関や講座を活用する場合もあります。いずれにせよ、従業員の能力開発を目的に計画的・体系的に実施される研修がOFF-JTです。
OFF-JT(職場外研修)の定義と概要:職場外で行う研修の意味や特徴、企業内での位置付けを基礎から詳しく解説
OFF-JTは「Off the Job Training」の略で、その名の通り職場外で行われる研修を意味します。具体的には、従業員が日常の業務を離れて受講する集合研修やセミナー、eラーニングなどが該当します。企業内では、OJTが仕事の現場で上司や先輩から学ぶ訓練であるのに対し、OFF-JTは一歩職場を離れた環境で計画的に学習機会を提供するものとして位置付けられています。人材育成体系の中で、OFF-JTは「知識・スキルのインプット」を体系的に行う場と位置づけられ、社員の基礎力養成や専門知識習得に用いられることが多いです。
例えば、社内研修センターで数日間集中的に実施される合宿形式の研修や、オンライン学習プラットフォームで提供されるコース受講などがOFF-JTに当たります。こうした研修は事前に学習目標やカリキュラムが設定されており、参加者は普段の仕事から離れて一定期間学習に集中します。企業によっては「企業内大学」と呼ばれる自社教育機関を設けてOFF-JTを体系化しているケースもあり、組織的な人材育成の要素として重要視されています。
OFF-JTの目的と役割:人材育成においてOFF-JTが果たす役割と期待される効果を解説
企業の人材育成において、OFF-JTには明確な目的と役割があります。まず目的の一つは、従業員に業務の基礎となる知識や共通スキルを身につけさせることです。OJTでは現場の実務遂行能力を磨くことが中心ですが、OFF-JTでは業務全般に役立つビジネス知識や普遍的なスキル(例:コミュニケーション、問題解決、マネジメントなど)を体系立てて教育できます。これにより、社員の底力を養い、組織全体の戦力底上げにつなげる効果が期待されます。
また、OFF-JTは企業の人材育成戦略において“計画された学習の場”としての役割を果たします。新入社員研修や昇進者研修など、節目ごとにOFF-JTを実施することで、社員に必要なマインドセットや専門知識を習得させ、次のステップに備えさせる狙いがあります。さらに、従業員自らの成長意欲を刺激し、キャリア形成を支援する目的もあります。計画的な研修を通じて従業員のスキルアップとモチベーション向上を図ることが、OFF-JTの大きな役割です。
このほか、業務上の課題を解決するために特定テーマの研修を行うケースもあります。例えば顧客対応力を強化する研修や、新しいITツールを習得する研修をOFF-JTで実施し、組織の課題解決や変革推進に寄与するような役割も果たしています。
OFF-JTの種類と形態:集合研修・オンライン研修・eラーニングなど主な実施形態を紹介
OFF-JTには様々な実施形態があります。代表的な種類として、以下のような研修形態が挙げられます:
- 集合研修:会議室や研修所に社員を集めて行う対面形式の研修。合宿研修やクラスルーム研修など。
- オンライン研修:Web会議ツール等を用いてリモート参加する研修。場所を問わず受講でき、近年増加。
- eラーニング:社内外のオンライン学習プラットフォームで各自が動画講座やオンライン教材を学習する形式。
この他にも、社外セミナーへの派遣(従業員を外部の公開講座や専門セミナーに参加させる)、大学院やビジネススクールへの派遣(社費留学)なども広義のOFF-JTに含まれます。研修の開催主体という観点では、社内講師による社内研修と、外部専門機関による社外研修に大別できます。社内研修は自社の状況に合わせたカスタマイズが可能で、企業文化に即した教育ができる点がメリットです。一方、外部研修は最新の専門知識や他社の事例を学べる利点があり、視野を広げるのに役立ちます。
いずれの形態においても、OFF-JTは事前にカリキュラムが設計され、一定の期間に集中して学ぶ点が共通しています。従業員は通常業務の手を止めて研修に参加するため、学習への集中度が高く、短期間で多くの知識を吸収できるのが特徴です。
OFF-JTが注目される背景:人材育成を取り巻く環境変化やスキル再教育の必要性から考察
近年、企業がOFF-JTに改めて注目している背景には、ビジネス環境の変化と人材育成ニーズの高まりがあります。一つは技術革新やビジネスモデルの変化スピードが速くなり、従業員に定期的なリスキリング(学び直し)が必要とされている点です。デジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれる中、新しいITスキルやデータ活用能力などを社員に習得させるため、体系的に学ぶ場としてOFF-JTが見直されています。
また、終身雇用や年功序列といった日本型雇用慣行が揺らぎ、企業・社員双方がキャリア自律を意識する時代になってきました。その中で、社員の市場価値を高めるために企業が計画的に教育投資を行う重要性が増しています。政府も「人への投資」を促進する政策を打ち出しており、企業が従業員の能力開発に取り組むことが社会的にも求められています。こうした環境下で、OFF-JTという仕組みが改めて注目され、単なる形式的な研修ではなく戦略的な人材開発策として位置付け直されているのです。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてオンライン研修の普及が進んだことも一因です。コロナ禍で一時は集合研修の実施が難しくなりましたが、その過程でオンライン形式の研修が発達し、地理的・時間的制約の小さいOFF-JTの形が拡充しました。ポストコロナにおいてもオンライン研修の利便性は評価されており、従来以上に柔軟なOFF-JTの実施が可能になっています。このように、時代の要請と技術環境の変化が相まって、OFF-JTは再評価・進化していると言えます。
企業におけるOFF-JTの重要性と効果:従業員育成戦略にもたらす価値と組織への影響を検証
OFF-JTは古くから日本企業で活用されてきた人材育成手法であり、その有用性は多くの調査結果からも裏付けられています。厚生労働省の調査によれば、「OFF-JTが役に立った」と回答する社員は95%にも上り、多くの従業員にとって有意義な学びの機会となっていることが分かります。つまり、企業が適切な研修を提供すれば、社員は着実にスキルを身につけ業務成果を高められる可能性が高いということです。組織にとっては、人材の底力を上げ競争力を強化する効果が期待できます。
また、OFF-JTは社員のエンゲージメント(会社への貢献意欲)向上にも寄与します。計画的に研修機会を与えることは、社員に対する企業の投資であり「成長を支援してもらっている」という実感につながります。これがモチベーションアップや定着率向上といった面でもプラスに働くのです。さらに、組織横断で研修を行えば部門を超えた交流が生まれ、社内ネットワークの構築や風通しの向上といった副次的効果も得られます。研修で得た共通の知識や価値観は企業文化の醸成にも寄与し、中長期的に組織力を強化する基盤となるでしょう。
一方で、従来型のOFF-JTには「研修の効果が実務に活かされているか」という課題も指摘されてきました。しかし最近では研修後のフォローアップやOJTとの連携により、研修効果を定着させる工夫が進んでいます。このように、OFF-JTは適切に設計・運用すれば企業の人材育成戦略に大きな価値をもたらし、組織全体のパフォーマンス向上に繋がる重要な施策と言えます。
OJTとの違い:現場研修(OJT)とOFF-JTの違いを明確化し、それぞれの役割を解説
「OFF-JT」と対になる概念として「OJT(On the Job Training)」があります。OJTは職場内で日常業務を遂行しながら上司・先輩が指導する形の研修であり、現場での実地訓練といえます。一方、OFF-JTは前述の通り職場外で行う計画的な研修です。両者は人材育成において補完関係にあり、それぞれ異なる特徴とメリットを持ちます。ここでは、研修の実施環境や内容など様々な観点からOJTとOFF-JTの違いを整理し、適切な使い分けについて解説します。
研修の実施場所と方法の違い:職場内OJTと職場外OFF-JTの研修環境の違いを具体例を交えて比較解説
まず大きな違いは研修を行う場所と方法です。OJTは職場(オンサイト)で業務に従事しながら先輩社員から教わる形式です。例えば店舗スタッフが実際の接客業務を通じて先輩から指導を受けるのがOJTです。常に現場で起きた事象を教材に、即時に仕事をしながら学ぶ形になります。
これに対しOFF-JTは職場を離れた場所で、一定のカリキュラムに沿って研修を受けます。社内会議室で行う場合もあれば、社外の研修施設に出向くこともあります。例えば新入社員が研修センターに1週間泊まり込みで研修を受ける、といったケースは典型的なOFF-JTです。方法としても講義形式、グループワーク形式など様々ですが、いずれにせよ業務の手を止めて研修に集中する環境が用意されます。このように、OJTは「仕事の現場」、OFF-JTは「仕事場を離れた学習環境」で行われる点が根本的に異なります。
学習内容・対象スキルの違い:OFF-JTで学ぶビジネス基礎知識と OJTで習得する実践的スキルの違いを解説
OJTとOFF-JTでは扱われる学習内容や対象とするスキルにも違いがあります。OJTでは、目の前の業務に直結した専門的・実践的なスキルを習得することが中心です。例えば営業職の新人が先輩社員との同行訪問を通じて顧客対応スキルを学ぶ、製造現場で作業をしながら機械操作を覚える、といった具合に、各職種の実務に必要なノウハウを経験を通じて身につけます。
一方、OFF-JTで扱うのは業務の基礎となる知識や汎用的なビジネススキルであることが多いです。新入社員研修ではビジネスマナーや企業人としての心構え、コンプライアンス知識など、職種を問わず必要となる基礎知識を教えます。また、若手向けのOFF-JTでは論理的思考力やタイムマネジメントなどのスキル研修が行われます。このように、OJTが「個別具体の現場スキル」を狙いとするのに対し、OFF-JTは「体系だった基礎知識・汎用スキル」を習得させる場と位置付けられます。
もっとも、昨今ではOFF-JTでも専門スキル研修(プログラミング研修や語学研修など)が提供される場合がありますし、逆にOJTの中でも基礎的事項の指導は行われます。厳密に内容が完全分離されているわけではありませんが、一般的な傾向として、OFF-JTは基礎・理論、OJTは応用・実践と捉えると理解しやすいでしょう。
指導者(講師)・サポート体制の違い:OFF-JTでは外部講師、OJTでは社内先輩など指導者の違いや支援体制を比較
研修で教える指導者や支援体制にも両者で違いがあります。OJTの場合、教育担当となるのは基本的に社内の上司や先輩社員です。現場の熟練者がマンツーマン、もしくはOJT担当者として新人を指導します。そのため、指導の質は教える先輩のスキルや経験に左右されがちで、担当者ごとに育成効果にばらつきが出ることもあります。また、現場の上司は本来業務と新人教育を両立させねばならず、指導者本人への負担も大きくなりがちです。
これに対してOFF-JTでは、研修講師として社内の教育担当者が登壇する場合もありますが、専門の外部講師を招いたり、外部委託の研修サービスを利用したりするケースが多々あります。プロの講師や教育専門企業が提供する統一カリキュラムのもとで実施するため、教え方や内容に一定の標準化が図られます。企業側は研修運営スタッフを用意し、会場設営や受講管理などのサポート体制を敷きますが、実際の指導自体は専門家に委ねることで効率的・効果的な学習環境を整えることができます。
要するに、OJTは「社内の先輩が随時指導する」のに対し、OFF-JTは「計画された研修で専門講師が指導する」という違いがあります。社員の育成を社内リソースでまかなうか、外部のノウハウを活用するかという観点で両者は対照的です。
研修期間・時間の違い:OFF-JTは短期間の集中研修、OJTは日常業務で継続的に行う違いを比較解説します
研修の期間や時間の使い方も両者で大きく異なります。OFF-JTは多くの場合、数時間から数日間といった短期間に集中的に実施されます。カリキュラムに沿って連続した日程で研修が組まれ、参加者はその間本来業務から離れて研修に専念します。例えば「3日間の新人基礎研修」「2時間×5回シリーズのマーケティング研修」など、一定の区切られた期間に完結するのが特徴です。
これに対してOJTは特に明確な実施期間が定められず、日常業務の流れの中で継続的に行われます。新人に対しては入社後半年〜1年程度はOJT期間と位置付け、日々の業務を通じて育成するというように、長期にわたり断続的に指導が続きます。OJTは業務を行いながら随時教育の機会が発生するため、「ここからここまでが研修期間」という明確な区切りがありません。そのため研修時間も人や状況によって様々で、進捗に応じて柔軟に指導が行われます。
まとめると、OFF-JTはあらかじめ確保した時間枠内で短期集中的に実施し、OJTは日常的・断続的に長期スパンで実施する違いがあります。前者は一度に体系立った知識を習得させるのに適し、後者は日々の経験を積み上げながらスキルを磨くのに適していると言えます。
OFF-JTとOJTの効果的な組み合わせ・使い分け:研修効果を最大化するための両者の活用法と相乗効果を解説
OJTとOFF-JTはいずれが優れているというものではなく、互いの長所を活かして組み合わせて活用することが重要です。新人教育の一般的な流れとして、まず入社直後にOFF-JTで基礎知識やビジネスマナーを学ばせ、その後配属先でOJTを通じて実務スキルを身につけさせるという使い分けが有効です。OFF-JTで土台を固め、OJTで実践力を養うことで、相互補完的に新人の早期戦力化を図れます。
また、OJTで経験した中で生じた知識の穴や、更なるスキル習得ニーズに対して、改めてOFF-JTを活用するのも効果的です。例えば、OJTで現場経験を積んだ中堅社員に対し、戦略思考やマネジメントスキルを身につけさせるためにOFF-JT研修を行うといったケースです。これにより、実務経験に理論的裏付けを与え、一段上の能力開発につなげる相乗効果が生まれます。
要するに、「基礎はOFF-JT、応用はOJT」、「日常はOJT、節目にOFF-JT」といった形でバランス良く組み合わせることが理想です。両者を適材適所で使い分けることで研修効果を最大化でき、個人の成長および組織の人材育成成果を高めることが可能となります。
OFF-JTのメリットとデメリット:期待できる成果と注意すべき課題を詳しく解説
OFF-JTには企業が従業員を育成する上で多くのメリットがありますが、一方で導入・運用に際して留意すべきデメリットや課題も存在します。ここでは、OFF-JTの代表的なメリットとデメリットを整理して解説します。メリットを正しく活かし、デメリットに対策を講じることで、研修の効果を最大限に引き出すことができます。
OFF-JTのメリット:体系的な知識習得とスキル向上で社員の能力底上げに繋がり、組織全体の成長にも貢献
OFF-JT最大のメリットは、短期間で体系的な知識やスキルを習得できる点です。計画立てられたカリキュラムに沿って集中的に学ぶため、現場で断片的に学ぶより効率よく全体像を理解できます。例えば新人研修では、業務の基礎から応用まで一通り網羅した教育を数週間で行うことで、OJTだけでは偏りがちな知識を均一化し、新入社員全体の最低ラインを引き上げられます。
このようにOFF-JTは社員間の知識・スキルのばらつきを減らし、組織全体の底上げに寄与します。統一の研修を受けることで社員の知識水準が揃えば、業務遂行におけるムラが減りチーム全体のパフォーマンス向上につながります。また、研修で新たなスキルを習得した社員が増えることで組織の戦力が底上げされ、ひいては企業競争力の強化にも結びつきます。OFF-JTは一度に多数の社員を教育できるため、組織的な能力向上を図る手段として非常に有効です。
OFF-JTのメリット:部署を超えた社員交流や視野拡大の機会を提供
OFF-JT研修には、普段接点のない他部署の社員同士が顔を合わせて学ぶ機会になるというメリットもあります。集合研修では様々な部署や職種の参加者が一堂に会することが多く、グループ討議や演習を通じて互いの意見交換を行います。これにより、日常業務では得られない刺激を受けたり、社内人脈を広げたりする効果があります。
異なる部署の社員同士が交流することで、組織全体の一体感や社内コミュニケーション活性化にもつながります。また、他の参加者の経験や視点を知ることで自部門の業務を相対化して捉え直すきっかけにもなり、社員一人ひとりの視野が拡大する効果も期待できます。研修という非日常の場で得たネットワークや気付きは、その後の協働や新しい発想につながり、組織に新風を吹き込むこともあります。
OFF-JTのメリット:外部知見の導入で社内に新たな刺激をもたらす
特に外部講師によるOFF-JT研修では、社外の最新知見や専門的なノウハウを社内に取り入れることができます。例えば業界の専門家や大学教授を招いた講義、外部セミナーへの参加などを通じて、社員は自社内だけでは得られない知識やベストプラクティスを学べます。これにより社員の知識の幅が広がり、社内に新たな発想やスキルがもたらされます。
また、外部機関主催の研修では他社の受講者と交流する機会も得られ、刺激を受けたり客観的に自社を見つめ直す契機となります。こうした新しい知見や視点の注入は、社員の成長に加え組織のイノベーション促進にも役立ちます。閉鎖的になりがちな社内教育に外の風を入れる意味でも、OFF-JTを活用するメリットは大きいと言えます。
OFF-JTのデメリット:研修コストや時間負担が大きい(予算確保や業務調整の課題となり、企業にとっても負担)
一方、OFF-JTには企業側のコスト負担が大きいというデメリットがあります。外部講師への謝金、研修会場の費用、教材作成費など、研修実施にはまとまった予算が必要です。特に外部の研修機関に委託する場合は受講料も発生し、多数の社員を参加させると経済的負担は無視できません。加えて、社員が研修に参加している間は本来業務を離れるため、その人件費相当分の機会損失も生じます。
また、研修を計画する人事担当者にとっては、経営層への予算確保の説得や、参加者の勤務シフト調整などの課題もあります。繁忙期に業務を抜けられない現場も多く、全員が同時に受講できるようスケジュールを調整するのは容易ではありません。こうした金銭面・時間面の負担から、特に中小企業ではOFF-JTを実施したくてもリソース不足で難しいというケースも見られます。企業としては十分な予算の確保と業務への影響を抑える工夫が求められます。
OFF-JTのデメリット:業務中断による生産性への影響(研修参加による業務停止で生じる問題、現場への負担も発生)
OFF-JT実施中は、参加している社員はその間本来の業務をストップすることになります。この業務中断により、職場の生産性に影響が出る場合があります。例えば、少人数の部署で主要メンバーが研修に出てしまうと、残ったメンバーに業務のしわ寄せが来て負担が増大するかもしれません。研修参加者自身も、研修後に溜まった業務を処理しなければならず、研修による学びよりも業務負荷の方が印象に残ってしまうといった懸念もあります。
特に繁忙期にOFF-JTを実施すると、現場から「今この時期に研修に行かれては困る」と不満が出ることもあります。タイミングを誤れば社員にも現場にもストレスとなり、研修効果が半減しかねません。そのため、人事担当者は研修実施時期を慎重に選ぶ必要があります。また、研修中に業務が滞らないよう代替要員を手当てしたり、事前に業務を調整したりするなど周到な準備が求められます。
OFF-JTのデメリット:研修効果の定着に工夫が必要(学んだ内容を実務に活かすために追加の工夫が求められる)
OFF-JTでいくら良い研修を受けても、その内容を職場に戻った後に活かせなければ意味がありません。研修直後はモチベーションが高くても、日常業務に追われる中で学んだことを忘れてしまったり実践できなかったりするケースは少なくありません。つまり研修効果の職場定着が一つの課題となります。
このデメリットを克服するには、研修後のフォロー施策やOJTとの連携が不可欠です。例えば、研修で立てたアクションプランを上司と面談して業務目標に落とし込む、研修参加者同士で定期的に集まって振り返りを行う、学んだ知識を使った課題に取り組ませる、といった工夫が求められます。研修担当者側も、研修内容の要点をまとめた復習資料を配布したり、eラーニングで追加学習コンテンツを提供したりして、学びの定着を促すことが重要です。このように、OFF-JT単発で終わらせず継続的なサポートを講じないと、せっかくの研修効果が十分発揮されない恐れがあります。
効果的なOFF-JT活用方法:研修効果を最大化するための具体的な実践ポイントを詳しく解説
OFF-JTを実施するだけで満足せず、期待する効果を最大限に引き出すには、研修の企画・運用段階での工夫が欠かせません。研修を成功させるためのポイントとして、研修前の計画立案から研修後のフォローアップまで、いくつかの重要なステップがあります。以下では、効果的にOFF-JTを活用するための具体策を段階ごとに解説します。
研修ニーズの確認と目的設定:現状の課題を分析し、OFF-JT導入の目的を明確化する
まず最初に取り組むべきは、研修ニーズの把握と明確な目的設定です。現場や経営層と対話し、現状の人材育成上の課題やスキルギャップを洗い出します。「若手社員のマネジメント能力を高めたい」「新製品に対応できる技術者を育成したい」など、解決すべき課題を明確にしましょう。その上で、今回実施するOFF-JTで何を達成したいのか具体的な研修目標を設定します。
目的が曖昧なままだと研修内容も効果測定もぼんやりしたものになってしまいます。例えば「部下育成能力向上研修」であれば、「受講後に部下との1on1ミーティングを月1回実施できるようになる」といった具体的目標を掲げると良いでしょう。事前のニーズ調査としてアンケートやヒアリングを行い、社員自身が望んでいるスキルアップ分野を探るのも有効です。こうした準備を経て、研修のねらいとゴールを明文化することで、以降の研修設計全体にブレない軸が通ります。
研修内容・手法の適切な選択:従業員のレベルや目的に合った研修プログラムと実施方法を選定
目的が定まったら、それを達成するのに最適な研修プログラムと実施方法を選びます。研修内容は、対象従業員のレベルや業務領域に合致している必要があります。例えば新人向けなら基礎中心、中堅社員向けなら応用的なケーススタディを増やすなど、受講者の習熟度に合わせて設計します。また、自社で内製するか外部の研修サービスを利用するかも検討ポイントです。自社内に適任の講師や教材があれば社内講師による研修を企画し、無ければ外部専門機関の力を借りるのが現実的です。
研修の形式も慎重に検討しましょう。対面の集合研修が良いのか、オンライン研修で全国から参加できる形にするのか、あるいはeラーニング等の自己学習コンテンツを組み込むのか。それぞれメリット・デメリットがあります。例えば対面研修は臨場感があり双方向のやり取りが活発ですが、移動や会場手配のコストがかかります。オンライン研修はコストを抑え広範囲の社員に同時提供できますが、集中力の維持や実技指導には工夫が必要です。
研修テーマによっては講義、ディスカッション、実習など手法を組み合わせると効果的な場合もあります。以上を総合的に判断し、最も目的達成に適したプログラム・手法を選定します。この段階で社内関係者(受講者の上長など)に相談し、内容や日程について意見をもらうと現場ニーズと齟齬のない計画を立てやすくなります。
従業員の参加意欲を高める工夫:インセンティブ付与や研修内容の魅力向上で積極的な参加を促す
研修を成功させるには、受講者本人の参加意欲を高めることが欠かせません。嫌々受ける研修では効果も半減してしまいます。そこで、人事担当者は様々な工夫で社員のモチベーションを喚起する必要があります。
一つの方法はインセンティブ(報奨)を設けることです。例えば研修受講後に社内認定資格を付与する、成績優秀者を表彰する、研修中の食事手当を支給する等、社員にとってメリットを感じられる仕組みを用意します。また、研修修了を昇進・評価要件の一つに組み込むことも、真剣に取り組んでもらう動機付けになります。
同時に、研修そのものの魅力を高めることも重要です。カリキュラムに現場の課題解決につながるテーマを盛り込んだり、社長や役員が冒頭で研修の意義を語ったりして、受講する価値を伝えます。研修中にゲーム要素やディスカッションを取り入れて楽しく学べるようにするのも効果的です。要は社員が「参加したい」「ためになりそうだ」と思える仕掛けを事前にしておくことが大切です。高い参加意欲を持って研修に臨めば、吸収力も上がり学習効果が向上します。
OJTや自己学習との組み合わせ:OFF-JTを他の研修手法と連動させて相乗効果を狙う活用術を紹介します
OFF-JT単独でも効果はありますが、他の研修手法と組み合わせることで更なる相乗効果を発揮できます。例えば、OFF-JTの前後に関連するOJTを計画的に配置する方法があります。研修前に現場で課題を経験させておき、研修で理論を学んだ後、再度現場実践を通じて理解を深めるという流れです。これにより、研修内容が実務と結びつき、学んだ知識が腹落ちしやすくなります。
また、OFF-JTと自己学習(自己啓発)を連動させるのも効果的です。研修の前に事前課題や指定図書を出して自主学習させ、基礎知識を習得した状態で研修に臨んでもらうと理解度が高まります。研修後も、eラーニング教材を提供して継続学習を促したり、研修内容に関連する資格取得を支援したりすると、社員自ら学び続ける習慣づけにつながります。
さらに、OFF-JT終了後に上司がマンツーマンでフォロー(OJTコーチング)を行う仕組みを設けるのも有効です。研修で学んだ内容を実践してみて、困った点や疑問点をOJTで解消できれば、研修効果が確実に職場定着します。このようにOFF-JTを軸にしつつ、前後をOJTと自己学習で挟み込むような立体的な研修設計をすることで、学びの定着と効果の最大化を狙うことができます。
研修後のフォローアップと効果検証:学んだ内容の定着を促し、研修効果を測定して改善に活かすプロセス
OFF-JTを実施しっぱなしにせず、研修後のフォローアップを行うことが重要です。研修で学んだ内容を実務で実践するよう、上司や人事が働きかける仕組みを作ります。例えば、研修直後に受講者へ「研修で得た学びを業務でどう活かすか」のアクションプランを書かせ、一定期間後に進捗状況を報告してもらうといったフォローがあります。これにより、学びを実行に移す意識付けがされ、研修効果の定着が図れます。
並行して、研修効果の測定も欠かせません。研修前後で知識テストやスキル評価を行い成長度合いを定量化したり、研修後の業務成果(例えば営業研修なら売上数値の変化など)を追跡したりします。受講者アンケートも実施し、研修内容の理解度や満足度、今後の改善点についてフィードバックを集めます。
こうしたデータを分析し、必要に応じて研修プログラムを改善していくPDCAサイクルを回すことが大切です。例えば「研修時間が短く消化不良だった」という声があれば次回は日数を増やす、「実務に落とし込む時間が足りない」という声があれば演習を増やす、など改善に活かします。フォローアップと効果検証まで含めて初めて研修施策が完結します。ここまで丁寧に行うことで、研修投資に対する確かなリターンを得ることができるでしょう。
代表的なOFF-JT研修事例:成功した人材育成プログラムから学ぶベストプラクティス
実際に企業で行われているOFF-JT研修にはどのようなものがあるでしょうか。ここでは、代表的な研修プログラムの例をいくつか挙げ、それぞれの概要と特徴を紹介します。各企業が工夫を凝らした研修事例を知ることで、自社の人材育成施策の参考になるベストプラクティスが見えてきます。
新入社員向け集合研修:ビジネスマナーや基礎スキル習得のためのOFF-JT事例とその効果を解説
新入社員研修は、多くの企業で実施される典型的なOFF-JTの一つです。入社直後の新人を対象に、ビジネスマナー・仕事の基本・会社のルールなどを教え込む研修プログラムです。一般に入社後1週間〜1ヶ月程度の集合研修が行われ、社会人としての心構えから電話・メールのマナー、報連相(報告・連絡・相談)の重要性、チームワーク演習など幅広い内容が盛り込まれます。
例えばある企業では、入社後2週間の合宿研修を実施しています。新人たちが一緒に寝食を共にしながら研修に取り組み、同期の絆を深める狙いもあります。研修ではロールプレイ形式で名刺交換や電話応対を練習させ、フィードバックを行うことで即戦力としての基本動作を身につけさせます。また、グループワークで課題解決型の演習を行い、社会人基礎力を養成しています。
このような新入社員研修を経て現場配属された新人は、基本的なビジネスマナーが身についているためOJT担当者も指導がスムーズになります。研修を通じて会社の文化や価値観を共有することで、新人が組織の一員としての自覚を持ちやすくなる効果もあります。新入社員向けOFF-JTは、社会人としてのスタートを切る上で不可欠な土台作りとして機能しています。
若手社員研修:専門スキル向上やキャリア形成を支援するOFF-JT事例とその成果を解説
入社後数年を経た若手社員を対象にした研修も多くの企業で実施されています。例えば、入社3年目前後の社員に対する「フォロー研修」や、将来の中堅社員育成を見据えた専門スキル研修などです。内容としては、プレゼンテーションスキル研修、ロジカルシンキング研修、プロジェクトマネジメント研修など、職種を問わず必要となる汎用スキルの向上を狙ったものが一般的です。
あるIT企業では、入社3年目のエンジニア全員に対して「最新技術キャッチアップ研修」を実施しています。外部の専門講師を招き、AIやクラウドなど注目の技術トレンドについて集中的に学ばせるプログラムです。これにより若手エンジニアの専門知識がアップデートされ、自社サービスへの新技術応用のアイデア創出につながっています。
また別のメーカー企業では、若手社員に対しキャリアデザイン研修を行っています。自分の強み・弱みを分析し、中長期的なキャリア目標を考えさせる内容で、キャリアコンサルタントの指導のもと将来計画を策定します。この研修を通じて社員は自身のキャリアビジョンを明確化でき、モチベーション向上や離職防止に効果を上げています。若手社員研修はこうした専門スキル・キャリア形成支援を通じて、次世代の中核人材を育てるOFF-JT事例と言えるでしょう。
管理職研修:リーダーシップ開発やマネジメント能力向上など管理者向けOFF-JT事例とその成果を解説
係長・課長・部長級といった管理職層に対しては、リーダーとしての能力を高める研修が重要です。管理職研修は、階層別研修の中でも特に重視される傾向にあります。内容は階層に応じて様々ですが、一般的にはマネジメント手法、人材育成の仕方、目標管理や評価の手順、コンプライアンス・労務知識などが盛り込まれます。
例えば製造業のA社では、新任課長を対象に半年間の長期プログラムを実施しています。座学の研修(リーダーシップ論、部下指導法など)に加え、他社の工場見学やグループプロジェクトを組み合わせ、実践的に学ぶ機会を提供しています。研修の最後には「自部門の改善提案」をテーマにプレゼン発表を課し、経営層からフィードバックを受ける仕組みです。研修修了後、受講者は自部門で提案した改善策を実行に移し、具体的な成果を出しています。
また、小売業のB社では店舗店長向けにマネジメント研修を行っています。店舗運営のKPI管理やスタッフ育成のロールプレイなど実務直結の内容で、受講後に店舗業績が向上した事例も報告されています。管理職研修はこのように、組織の要となる管理者層の能力強化によって組織全体のパフォーマンスを押し上げる狙いがあり、企業の成長に直結する重要なOFF-JT事例です。
共通研修:コンプライアンスやハラスメント防止など全社員対象のOFF-JT事例とその効果を解説
役職や部署に関わらず全従業員が定期的に受講するタイプの研修も存在します。代表例がコンプライアンス研修やハラスメント防止研修、安全衛生研修などの「共通研修」です。法令順守や職場環境整備に関する知識を全社員で共有し、組織として健全な運営を図る目的で行われます。
例えば多くの企業で毎年行われる情報セキュリティ研修は全社員対象のOFF-JTです。eラーニング等を活用して、情報漏洩防止やサイバー攻撃対策について学習させます。またハラスメント防止研修では、ケーススタディを通じて何がハラスメントに該当するかを理解させ、相談窓口の案内などを行います。コンプライアンス研修では社内規程や関連法規を再確認し、職場での留意点を周知徹底します。
これら共通研修の効果は、社員一人ひとりの意識改革となって現れます。研修後に「ルール違反となる行為への抵抗感が高まった」「ハラスメントに関する相談件数が減った」といったデータが得られる企業もあります。全員が同じ研修を受けることで組織としての価値観を共有でき、企業リスクの低減や職場環境改善という大きな効果をもたらします。
自己啓発支援:資格取得や語学研修など社員の自主学習を促すOFF-JT事例とその効果を解説
社員の自主的な学習(自己啓発)を会社が支援する形の研修もあります。これは厳密には「研修」というより制度に近いですが、OFF-JTの一環として取り組む企業が増えています。例えば、業務に関連する資格取得を支援する制度や、語学学習支援制度などです。社員が自ら希望する外部講座や通信教育を受講し、修了した場合に受講料の補助を受けられるといった仕組みが一般的です。
ある企業では、「キャリアチャレンジ支援制度」と称して年間一定額まで社外セミナーや通信講座の受講費用を会社が負担しています。社員は自分の興味やキャリア目標に沿って講座を選び受講でき、終了後にレポートを提出すれば受講料が会社から支給されます。この制度導入後、社員の資格取得者数が増加し、業務に役立つスキル保有者が社内に着実に増えているとのことです。
また、グローバル展開している企業ではオンライン英会話や海外語学研修への参加を支援する事例もあります。社員が自主的に学習する風土を醸成することで、学び続ける組織文化が形成されます。自己啓発支援型のOFF-JTは、社員に主体的な成長機会を提供する点で大きな効果があり、結果的に高スキル人材の社内確保やエンゲージメント向上につながっています。
日本におけるOFF-JTの現状:普及状況と直面する課題、今後の展望を探る
ここまでOFF-JTの意義や方法について述べてきましたが、日本企業全体で見た場合、OFF-JTはどの程度普及しているのでしょうか。また、現在どんな課題に直面し、今後どのような方向に進化していくと考えられるでしょうか。公的な調査データなどをもとに、日本におけるOFF-JTの現状と展望について整理します。
OFF-JT普及率と実施状況:日本企業でのOFF-JT導入割合や研修実施状況の現状をデータで解説します
厚生労働省の調査によれば、OFF-JTに費用を支出している企業は全体の約46.3%にとどまっています。約半数の企業は何らかのOFF-JTを実施していますが、裏を返せば半数以上はOFF-JTに予算を割いていない現状があります。特に令和2年度(2020年度)はコロナ禍の影響で集合研修を控えた企業が多く、前年度に比べOFF-JT実施企業割合が大きく減少したことが報告されています。
一方、OFF-JTを受講した労働者全体の割合は33.3%というデータもあります。正社員に限れば42.3%が何らかのOFF-JT研修を受けていますが、逆に言えば正社員の約6割は年間を通じてOFF-JTの機会がなかったことになります。非正規社員に至っては17.1%に過ぎず、多くのパートや契約社員にはOFF-JTが提供されていない実態が見て取れます。このように、OFF-JTは有益であるにも関わらず必ずしも全員が享受できているわけではないのが現状です。
なお、OFF-JTの内容としては「新入社員など初任層対象の研修」を実施した企業が75.1%と最も多く、「中堅社員対象研修」47.8%、「ビジネスマナー等の基礎知識研修」44.8%と続いています。これは新人研修を行う企業は多いものの、それ以外の階層ではOFF-JT機会が減る傾向を示唆しています。つまり、新人研修はほとんどの企業で行う一方、中堅以上になるとOFF-JTは限定的になりがちということです。
企業規模別のOFF-JT導入傾向:大企業と中小企業での研修実施内容や取り組み姿勢の違いを分析
OFF-JTの実施状況は企業規模によって差が見られます。一般的に、大企業ほど体系だった研修制度を整備しており、新入社員研修から管理職研修まで階層別・職種別に豊富なOFF-JTプログラムを持っている傾向があります。予算や人材に余裕があるため、社内研修センターを運営したり外部研修会社と提携したりして、計画的な人材育成を行っています。
これに対し中小企業では、日々の業務で手一杯で研修まで手が回らない、予算が取れない、といった理由でOFF-JT実施が限定的なケースが多いです。新入社員研修すらOJTで済ませてしまう企業も少なくありません。ただ近年は中小企業向けの補助金制度(※後述)もあり、外部研修に社員を参加させる動きも増えています。
また、同じOFF-JTでも大企業と中小企業では内容に違いが出ることがあります。大企業では最新のトレンドを踏まえた高度な研修(DX研修やグローバル人材研修など)が行われる一方、中小企業では実務直結の実用的な研修(営業スキル研修や生産性向上研修など)が求められる傾向があります。このように、企業規模に応じて研修の取り組み姿勢やニーズには違いがあり、それがOFF-JT実施状況の差となって表れています。
OFF-JTを取り巻く最近のトレンド:DX推進やオンライン化など研修手法の変化と新たなニーズ
時代の変化に伴い、OFF-JTのあり方も変わりつつあります。まず顕著なのは研修のオンライン化です。新型コロナを契機に、多くの企業が集合研修をオンライン研修に切り替えました。これにより地理的制約が減り、全国の拠点から同時参加できる研修や、自宅から受講可能なeラーニングなどが普及しました。オンライン研修は今後も一部は定着し、ハイブリッド型(対面+オンライン併用)のOFF-JTが増えていくと考えられます。
次に、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に伴う新たな研修ニーズです。AI・データ分析・クラウド技術等を扱える人材育成が急務となり、ITリテラシー向上研修やデータサイエンス研修などが注目されています。国も企業のリスキリング(学び直し)を支援する方針を打ち出しており、今後これら分野のOFF-JTが増えていくでしょう。
また、働き方改革の流れで、社員のキャリア自律支援がテーマに上がっています。従来の会社主導型研修だけでなく、副業促進や社外留学制度、学び直しのための休職制度(リフレッシュ教育休暇)など、社員自らキャリアを切り拓くための学習支援もトレンドです。これはOFF-JTの枠を広げる動きと言えます。
総じて、研修の手法はテクノロジー活用により多様化し、研修テーマも時代の要請に応じて変化しています。企業はこうしたトレンドを踏まえ、従来型研修の見直しや新たなプログラム開発に取り組んでいます。
OFF-JTに対する企業の課題意識:研修効果の測定や社員の定着率など導入時に懸念される点
企業がOFF-JTに取り組む際に抱える課題意識として、いくつか共通するものがあります。まず一つは研修効果の測定・評価が難しいという点です。研修を実施しても、それが業績向上や生産性アップにどれだけ貢献したか定量的に示すのは容易ではありません。「研修しても現場で活かされていないのでは」という経営層の懸念があると、研修予算の確保が難しくなる場合もあります。したがって、人事側は研修前後の変化を見える化する指標作りに頭を悩ませています。
次に、人材流出への不安もあります。苦労して社員を育てても、スキルを身につけた社員が他社に転職してしまっては投資が無駄になります。特に若手の流動化が進む中、「研修で市場価値を高めすぎると流出するのでは」というジレンマを感じる経営者もいるようです。ただ、これは「出て行かないよう魅力ある会社にする」ことが本質的解決策であり、過度に恐れて研修をしないのは本末転倒といえます。
その他、前述したコストや業務への影響も課題意識として挙げられます。中小企業ほど「人を研修に出す余裕がない」という声が強いです。このような課題をクリアするため、最近では同業他社と合同で研修を開催しコストを分担するケースや、公的助成金を活用して資金面のハードルを下げる取り組みも見られます。企業は様々な懸念に向き合いながら、それでも必要な研修は何かを取捨選択して導入しているのが現状です。
今後の展望とOFF-JTの進化:人材育成の将来像におけるOFF-JTの役割と求められる変化を考察
最後に、今後の人材育成においてOFF-JTがどのような役割を果たし、どう進化していくかを展望します。一つ言えるのは、従来以上に柔軟で個別最適化されたOFF-JTが求められるということです。社員一律に同じ研修を受けさせる画一的な手法から、各自の役割・キャリアに合わせて学ぶ内容や方法を選べるパーソナライズ研修へとシフトしていくでしょう。オンライン研修やオンデマンド教材の充実により、社員自ら必要な講座を選んで学べる社内研修プラットフォームを構築する企業も増えてきました。
また、終身雇用からジョブ型雇用への流れの中で、企業内での長期育成のみならず、中途採用者や副業人材の受け入れなど多様な人材活用が進むと予想されます。それに伴い、社員の入社時期やキャリアがバラバラになるため、随時必要なタイミングで実施するOFF-JTのニーズが高まります。いつ入社しても一定水準のスキルを身につけられるよう、eラーニングとOJTを組み合わせたオンボーディング研修の整備などが重要になるでしょう。
さらに、予測困難なVUCA時代と言われる中、社員に常に新しい能力を習得させ続ける仕組みとして、OFF-JTは今後も不可欠です。企業にとって人材育成は「経費」ではなく将来への「投資」であるとの認識が一般化しつつあり、そこに公的支援も手厚くなっています。今後はデジタル技術を駆使して研修効果を可視化し、より戦略的に研修計画を策定する動きが広がるでしょう。OFF-JTは日本企業の人材力を支える基本施策として、時代のニーズに合わせた進化を遂げていくはずです。
OFF-JTで使える助成金・支援制度:人材育成を促進する公的補助や支援策の活用ガイド
人材育成のためのOFF-JTを実施したいが、コスト面が心配――そんな企業にとって頼りになるのが国や自治体の助成金・補助金制度です。一定の条件を満たせば、研修にかかった費用や研修中の賃金の一部が公的に支援される制度がいくつか存在します。ここでは、代表的な助成金制度と、その活用時の注意点や申請方法について解説します。助成制度を上手に活用すれば、人材育成の負担軽減につながり、より充実したOFF-JTプログラムを実施できるでしょう。
人材開発支援助成金:企業の人材育成を幅広く支援する厚生労働省の代表的助成制度で、研修費用や賃金の一部を補助
人材開発支援助成金(旧称:キャリア形成促進助成金)は、厚生労働省管轄の企業向け助成制度で、OFF-JTを含む人材育成全般を支援する代表的なものです。企業が従業員に職業訓練(OFF-JTやOJT、一部自己啓発も対象)を実施した際に、かかった費用や研修期間中の賃金の一部を国が助成してくれます。
人材開発支援助成金には細かくいくつかのコースがあります。例えば「人への投資促進コース(デジタル人材訓練/定額制訓練)」では、デジタル技術分野の人材育成訓練やサブスクリプション型の継続研修を行った場合に助成が受けられます。また「事業展開等リスキリング支援コース」では、企業の新事業展開に必要なスキルを習得させる訓練に対する助成などがあります。各コースで対象となる訓練や助成率・上限額が異なりますが、共通して研修費用や受講者の賃金補填が受けられるため、企業にとっては大きな支えとなります。
この助成金を受給するには所定の計画届を事前提出するなど手続きが必要ですが、要件に合致すれば中小企業であれば費用の3/4、大企業でも1/2程度が補助されるケースもあります。最新の公募要領を確認し、自社の研修が対象となるコースがないかチェックすると良いでしょう。
キャリアアップ助成金:非正規社員のキャリア形成や人材育成を促進し、正社員化等を支援する助成制度
キャリアアップ助成金は、契約社員・パート・派遣社員など非正規労働者の処遇改善やキャリアアップを図る企業に支給される助成金です。全部で8つのコースがありますが、その中の「人材育成コース」がOFF-JTに該当します。このコースでは、有期契約社員などにOFF-JTやOJTを計画的に実施した場合に助成金を受け取ることができます。
例えば、ある企業で契約社員を正社員登用する前段階として3ヶ月間の研修プログラムを実施した場合、その研修に対して助成金が支給されます。さらにキャリアアップ助成金全体として、非正規社員を正社員に転換した際にも一人当たり最大57万円(※正社員化コースの場合)の助成が出るなど、雇用形態のステップアップも支援されます。研修とセットで正社員化を進める企業にとって、有効に活用できる制度です。
この助成金を使うポイントは、対象が非正規社員の育成に限られることです。正社員のみの研修は該当しません。また、正社員化等の他コースと組み合わせて申請することで総合的な支援を受けることも可能なので、自社の人材戦略に応じて検討すると良いでしょう。
自治体の研修助成制度:東京都のオンラインスキルアップ支援事業など地域独自の助成金制度を紹介
国の制度以外にも、都道府県や市区町村が独自に企業研修を支援する助成制度を設けている場合があります。例えば東京都は「オンラインスキルアップ支援事業」という助成制度を実施しており、中小企業がオンライン研修やeラーニングで社員教育を行う際の費用を助成しています。また、地域によっては産業振興目的で特定分野の研修費用を補助する制度(例:IT研修費用補助、伝統産業の技術研修補助など)もあります。
自治体の助成制度は、対象地域の企業に限定されますが、国の助成金と併用できるケースもあります。中小企業で地元に密着した事業を展開している場合、自社所在地の自治体HPを確認し、使える研修補助がないか探してみましょう。地域独自の制度は国よりも予算規模が小さいことが多いので、公募期間や条件を見逃さないよう注意が必要です。
助成金活用の条件と注意点:支給対象となる要件や申請時に押さえておくべきポイントを解説
助成金を活用する際は、受給の条件をしっかり満たすことが大前提です。主な注意点として、以下のような要件があります:
- 雇用保険の加入状況:助成金の多くは雇用保険財源で運用されるため、研修を受ける従業員が雇用保険被保険者であることが条件です。また、会社が労働保険料を適切に納付していない場合も支給対象外となるので注意します。
- 研修計画の事前届出:人材開発支援助成金などでは、研修開始の一定期間前までに訓練計画を労働局に届出る必要があります。事前手続きなく研修を始めると助成金対象にならないため、スケジュールには余裕を持ちましょう。
- 研修内容・時間の要件:助成金ごとに「OFF-JT○時間以上」や「講義と実習を含むこと」など細かな条件があります。例えば人材開発支援助成金では一般的に1人あたり20時間以上のOFF-JTが必要です。条件を満たさない研修は助成対象外になります。
- 申請期限の厳守:研修終了後、所定の期間内に実績報告や支給申請を行わないと助成金は受け取れません。締切が短めに設定されていることも多いので、申請期限をカレンダーに記載するなどして見逃さないようにしましょう。
以上のように、助成金申請には事前準備と遵守事項が多数あります。申請書類も複数あり煩雑なので、必要に応じ社労士や支援機関のアドバイスを受けるとスムーズです。要件を満たしていれば公的支援を受けられるわけですから、面倒でもきちんと手続きを踏むことが大切です。
助成金申請の流れ:申請準備から受給までのプロセスと効果的な活用のコツ
最後に、一般的な助成金申請の流れを押さえておきましょう。以下は人材開発支援助成金を例にした大まかな手順です。
- 計画届の提出:研修開始の1か月前(助成金によって異なる)までに、研修内容や実施期間、対象者などを記載した計画届を管轄の労働局に提出します。
- 研修の実施:計画通りにOFF-JTを実施します。研修の出席記録やカリキュラム資料、講師への謝金領収書など、後で証拠となる書類はきちんと保存しておきます。
- 研修終了後の申請書提出:研修が終わったら、速やかに支給申請書を作成し提出します。研修実績やかかった費用、賃金支払状況などを報告し、必要書類を添付します。
- 審査・支給決定:労働局で内容が審査され、問題なければ支給決定となります。後日、指定口座に助成金が振り込まれます。
このように、事前届出と事後の実績報告という二段階の手続きが必要なのが一般的です。スケジュール管理と書類整備がカギとなります。効果的な活用のコツとしては、対象となる研修はなるべくまとめて計画し、一度に申請してしまうことです。小分けに何度も申請するより手間が省けます。また、公募情報を定期的にチェックし、新設の助成金や要件緩和など最新情報にアンテナを張ることも大事です。
助成金を上手に活用すれば、人材育成にかけるコストを大幅に軽減できます。結果的に研修機会を増やせるメリットもありますので、企業の人事担当者はこれら制度を積極的に研究し、使えるものはどんどん使っていきましょう。
OFF-JTの導入手順・ポイント:研修企画から実施までの具体的ステップと成功の秘訣
ここでは、実際に自社でOFF-JT研修を導入・実施する際の手順と、各ステップでのポイントを解説します。研修企画から運営、事後フォローまで一連の流れを把握し、抜け漏れのない準備をすることで、研修を成功に導くことができます。
ニーズの確認と研修計画の立案:人材育成の課題分析から研修目標設定まで最初のステップ
まずは社内の人材育成ニーズを洗い出すことから始めます。現状の業務上の課題や、人材に足りないスキルは何か、経営戦略上どんな人材が必要か、といった点を整理します。経営層や各部門長へのヒアリング、従業員アンケートなどを実施し、生の声を集めると効果的です。
ニーズが明確になったら、それに基づき研修の狙いと全体計画を立案します。対象者(新人・中堅・管理職など)、研修テーマ、実施時期、期間、場所、おおまかな予算などを決めていきます。この際、同時に研修のゴール設定も行います。「○○のスキルを習得させる」「研修後に△△ができるようにする」など、具体的な成果イメージを描きます。
この計画立案段階で経営層の承認を得ておくことも重要です。目的・内容・コストを明示し、研修の必要性を説明して理解を得ます。上層部のコミットメントは研修推進の大きな後押しになります。また、ここまで決めた計画を各関係部署(現場管理職や総務など)にも共有し、スケジュール調整の下準備を始めます。最初の段階で丁寧に計画を練ることがOFF-JT成功の土台となります。
研修内容・方法の選定:自社内講師か外部委託、集合研修かオンラインなど最適な手法を決定
次に、研修の具体的な中身と実施方法を決定します。まず研修内容ですが、前段で設定した研修目的に沿ってカリキュラムを組み立てます。社内の専門知識が必要な場合は社内講師を選定し、独自の教材を作成するか、外部の研修プログラムを購入するか検討します。例えば専門性の高いIT研修なら外部の研修会社のコースを利用した方が効率的かもしれません。
研修講師は社内から選ぶか、社外から招くかを決めます。社内講師は自社事情に即した話ができるメリットがありますが、教えるスキルにばらつきが出る可能性があります。外部講師は研修慣れしており安心感がありますが、自社の業務への理解に時間を要するかもしれません。それぞれのメリットを考慮しつつ、テーマに合った最適な講師陣を揃えます。
さらに、研修方法も決めます。集合研修とするか、オンライン研修にするか、または両方組み合わせるハイブリッド形式にするか検討します。コロナ禍以降はオンライン形式も一般化しましたが、テーマによっては対面でディスカッションした方が良い場合もあります。受講対象者が全国に散らばっているならオンラインを主体にするなど、状況に応じて判断します。
研修時間や日程もここで詳細に詰めます。1日研修なのか、短時間のコースを複数回に分けるのか、受講者が業務と両立しやすい形に配慮します。すべて決まったら研修カリキュラム表や進行台本を作成し、関係者に共有します。
スケジュール調整と事前準備:業務負荷を考慮した研修日程の調整と教材・会場の準備
研修計画が固まったら、実際のスケジュール調整に入ります。受講対象者とその上司に研修日程の候補を提示し、業務に支障が出ない日程を確定します。繁忙期を避けるのはもちろん、参加者全員が出席できる日を見つけるのは簡単ではありませんが、部署横断の調整力が試される場面です。場合によっては複数回に分けて開催し、参加者をグループ分けすることも検討します。
次に、研修当日に向けた様々な事前準備を行います。集合研修であれば会場の手配や座席配置、機材準備(プロジェクターやホワイトボード等)、オンライン研修なら会議システムのテストや招待URLの発行などを行います。研修資料(テキスト・スライド・配布物)の印刷やデータ配布準備も重要です。演習やグループワークがある場合は、その道具や付箋紙、模造紙なども忘れずに用意します。
講師との打ち合わせも事前に行います。社内講師であればリハーサルを兼ねて内容をすり合わせ、外部講師であれば自社の業務理解や当日の流れ、注意してほしい点などを共有します。場合によっては外部講師との契約手続きや機密保持契約書の締結なども必要です。受講者には研修案内メールを送り、日時・場所・持参物・事前課題の有無などを伝えておきます。
こうした準備を抜かりなく行うことで、当日の研修をスムーズに進行させる土台ができます。細部まで気を配った準備が研修成功の裏の鍵と言えるでしょう。
研修実施時の運営ポイント:円滑な研修進行のためのファシリテーションやタイム管理の工夫
いよいよ研修当日です。ここでのポイントは、計画通りに円滑に進行させ、参加者の学習効果を高めることです。研修担当者(ファシリテーター)は、タイムテーブルに沿って各セッションを進めつつ、臨機応変な対応が求められます。
開始前に、参加者がリラックスして学べる雰囲気作りをしましょう。ウォーミングアップとしてアイスブレイクの自己紹介や簡単なゲームを取り入れると効果的です。講師の話の際には、参加者の表情や理解度を観察し、必要に応じて休憩を入れたり説明補足を促したりします。
時間管理も重要な役割です。各プログラムが予定時間内に収まるよう注意しつつ、議論が盛り上がっている場合などは若干延長させ柔軟に対応します。ただし大幅な遅れは他の内容に支障するため、進行役が適宜まとめに入るなどコントロールします。
参加者の発言や質問をうまく引き出すファシリテーションスキルも求められます。特にグループ討議では、一部の人ばかり話すことがないよう発言を促し、議論が脱線しそうなら軌道修正します。発表や演習結果に対して講師やファシリテーターが適切なフィードバックを与え、学びを深める支援をします。
全体を通して、受講者が積極的に参加できる雰囲気を作ることが大切です。質問や意見を言いやすい空気を醸成し、良い発言には肯定的に反応します。最後にアンケート記入などの時間を確保し、終了後のフォローに備えます。これら運営上の細かな配慮が研修の満足度・効果を左右します。
効果測定とフィードバック:研修後のアンケートやスキル評価結果を分析し次回研修に活かす
研修が終わった後も、やるべきことがあります。まず、受講者アンケートを回収して分析します。研修内容の理解度や満足度、役に立った点・物足りなかった点などの項目を集計し、講師や主催者で共有します。講師の評価や進行面のフィードバックも得て、次回開催への改善材料とします。
可能であれば、研修前後で行ったテストや演習結果など定量的なスキル評価も分析します。知識テストの点数がどのくらい向上したか、ロールプレイでの対応がどう変化したか、といったデータから研修効果を判断します。もちろん、研修直後だけでなく、一定期間(数ヶ月)経った後に上司から受講者の仕事ぶり変化をヒアリングするなど、長期的なフォローも効果測定の一環となります。
こうして得られた情報を踏まえ、研修担当者は総括レポートを作成すると良いでしょう。研修の成果(定性・定量)、受講者の声、改善すべき点、次回に向けた提言などをまとめ、経営層や関係部署にフィードバックします。これにより、会社として研修の価値を共有し、次年度の研修計画策定にも活かせます。
また、受講者一人ひとりにも適宜フィードバックを行います。必要に応じて上司との面談機会を設け、研修での学びと今後の期待を伝えることで、受講者の成長意欲を刺激します。研修はやりっぱなしにせず、その後の成長につなげてこそ成功と言えます。効果測定とフィードバックまで丁寧に実施し、次回以降の研修改善サイクルを回すことが、研修を継続的に向上させる秘訣です。
OFF-JTの効果を高める施策:研修前後のフォローや学習環境整備など継続的な学びを促進する方法
OFF-JT研修そのものの質を高めることに加え、研修の前後や周辺で様々な施策を講じることで、学習効果をさらに向上させることができます。ここでは、研修前後のフォローや学習文化の醸成など、OFF-JTの効果を最大化するために企業が取り組める施策を紹介します。
研修前後の課題・実践機会の提供:事前課題の設定や研修後のアウトプットの場を設け学習効果を向上
研修の効果を高めるには、研修の前と後に適切なワークを配置するのが有効です。まず研修前に事前課題を出す方法があります。研修内容に関連する簡単な課題や事前調査を指示し、受講者に準備してきてもらうのです。例えば「自部署の課題点を3つ書き出してくる」「指定図書の該当章を読んで感想を書く」などです。これにより、参加者の意識が研修モードに切り替わり、当日のインプットへの意欲が高まります。
研修後には、アウトプットの場を用意しましょう。学んだことを実践・共有する機会を与えることで理解が深まります。具体的には、研修終了後に受講者全員で集まる報告会を開催し、「研修で学んだこと」「現場で試してみたこと」「成果と課題」を発表し合う場を設けます。また、研修後一定期間が過ぎた頃にフォローアップ研修を行い、再度知識を復習したり質疑応答したりするのも効果的です。
このように、研修前後に課題と実践の機会を組み合わせることで、研修内容が一過性で終わらず身につきやすくなります。事前課題で準備→研修で学習→事後アウトプットで定着、というサイクルを意識して設計することがポイントです。
自律的な学習習慣の促進:自己啓発の奨励や学習目標管理で受講者の主体性を高める施策
企業によるOFF-JT提供だけでなく、社員一人ひとりが自主的に学び続ける文化を醸成することも重要です。研修を受け身で受けるのではなく、自律的に学ぶ姿勢を持ってもらうための施策を紹介します。
まず、社員の自己啓発を会社として奨励・支援する制度を整えます。資格取得支援や通信教育補助といった制度を設け、社員が自主的にスキルアップする意欲を後押しします。前述の助成制度の活用や表彰制度(資格合格者を表彰等)も効果的です。
次に、上司との面談や人事評価の中で学習目標の設定を組み込みます。各社員に年間の学習計画を立てさせ、例えば「今年は英語のスキルをTOEIC○点まで高める」「マーケティング研修を受講する」といった目標を立てます。それを上司が定期的にフォローし、達成を支援します。これにより社員は日常業務の中でも学習を意識するようになります。
さらに、社員が自主学習の成果を共有できる場を設けるのも有効です。社内ブログや朝会で「昨日こんなセミナーに参加して○○を学んだ」と共有する習慣をつくると、周囲への刺激となり学習ムードが高まります。会社として学び続ける社員を評価・称賛する風土を作ることで、従業員の主体的な成長を促すことができます。
参加者同士のコミュニケーション活性化:グループ討議やロールプレイを通じ相互刺激を促す学習環境作り
OFF-JT研修の効果は、参加者同士の交流によっても高まります。ただ講義を聴くだけでなく、双方向のコミュニケーションが活発に行われる研修は、理解度と満足度が向上する傾向があります。そのため、研修設計の段階でグループディスカッションやロールプレイ、ペアワークなどを積極的に取り入れることが推奨されます。
例えば、研修の各セッションの後に「今日学んだことを踏まえ、自部署でできる改善策を3人グループで話し合ってください」といった時間を設けると、参加者同士で意見を交換し合う中で理解が深まります。ロールプレイでは、お互いにフィードバックし合うことで気づきを得られます。こうした相互刺激により、単なる一方向の講義よりも格段に能動的な学習環境になります。
また、OFF-JT受講者のコミュニティ化を図ることもできます。研修参加者のグループチャットを作り情報共有の場にしたり、研修終了後も勉強会を継続開催したりすると、ネットワークが維持されお互いに励まし合って成長できます。受講者同士の縦横のつながりが強まれば、組織全体としての一体感も醸成されます。
このように、参加者間コミュニケーションを活性化する研修運営は、研修効果を高めるだけでなく社内の人間関係構築にもプラスに働きます。
他の研修手法との併用:OJTやeラーニングと組み合わせてOFF-JT単独では得られない相乗効果を創出
既に触れた部分もありますが、OFF-JTはそれ単独で完結させるよりも、他の研修形態と組み合わせることで相乗効果を高められます。例えば、OFF-JT前後に計画的なOJTを配置する手法は極めて効果的です。座学で学んだ直後に現場で練習する、現場で課題を感じた後に研修で答えを学ぶ、といったサイクルを回すことで理解が深まり、定着率が上がります。
また、OFF-JTとeラーニングを併用するケースも増えています。研修前にeラーニングで基礎知識を学んでから集合研修で応用演習に集中するとか、研修後にeラーニング教材で復習できるようにするなどです。いつでも学べるeラーニングを組み合わせれば、研修で消化しきれなかった部分も各自で補完できます。
最近では「ブレンデッドラーニング」と言って、対面研修とオンライン学習、OJTやコーチングなど複数の手法を組み合わせた包括的な学習プログラム設計が注目されています。例えば半年間の育成プログラムの中で、月1回のOFF-JT講義+週次のオンライン課題+随時のOJT指導+終了時のプレゼン発表、といった形で多面的に学習機会を提供する方法です。これなら一つの手法の欠点を他で補い、高い学習効果を生み出すことができます。
このように、OFF-JTを他手法と上手に組み合わせることで「知る」「試す」「振り返る」の学習プロセスを完結させ、研修投資対効果を最大化することが可能になります。
研修後のフォローアップと継続学習支援:復習教材の提供や追加研修の実施で学んだ知識の定着を図る
研修が終わった後も、学びを途切れさせない工夫が必要です。そこで重要なのが研修後のフォローアップ施策です。例えば、研修内容をまとめた復習用資料や動画を後日配布し、いつでも見返せるようにします。最近では社内ポータルや動画共有システムに研修録画や補足コンテンツをアップロードし、受講者が自主的に復習できる環境を整える企業もあります。
また、一定期間後(例えば3ヶ月後)にフォローアップ研修や座談会を実施することも効果的です。研修後、実際に現場で試してみたこと・成果・課題などを持ち寄ってディスカッションさせることで、学びの定着度をチェックできます。他の参加者の経験談から新たな学びも得られますし、講師から追加アドバイスをもらうことで理解が深まります。
さらに、必要に応じて追加研修の実施も検討します。一度の研修で網羅できなかった内容や、さらに高度な続編コースを用意して段階的に習得させる方法です。例えば入門編研修の3ヶ月後に応用編研修を行うなど、学習を継続させます。これにより忘れかけていた知識を思い出し、新たな知識も積み増しできます。
継続的な学習支援の一環として、社内で勉強会コミュニティを作るのも良いでしょう。自主的な学習サークルを立ち上げ、会社が場所や費用をサポートする形です。そうすれば社員主導で学び続ける環境ができます。
研修は終わってからが本番とも言われます。アフターフォローを充実させ、継続的な学習を支援することで、研修効果が確実に業務成果として結実するよう導くことが重要です。
企業のOFF-JT実施事例:大企業から中小企業まで各社の人材育成取り組みに学ぶ
最後に、実際の企業がどのようにOFF-JTを活用しているか、具体的な事例を見てみましょう。大企業と中小企業、それぞれの特徴ある取り組みや、実際に効果を上げている企業事例を紹介します。他社の成功例から学ぶことで、自社の研修プログラム構築のヒントが得られるでしょう。
大企業の社内大学によるOFF-JT:旭化成など自社教育機関を設け体系的な社員研修を行う事例
多くの大企業では、全社的な人材育成機関として「社内大学(コーポレートユニバーシティ)」を設置しています。例えば旭化成株式会社は社内に旭化成アカデミーという教育組織を持ち、新入社員から管理職、さらにはグローバル人材育成まで体系的な研修カリキュラムを展開しています。社員はキャリアに応じて必須研修や選択研修を受講し、段階的にスキルアップできる仕組みです。
社内大学では、自社の経営理念や戦略に沿った独自カリキュラムが組まれるのが特徴です。旭化成の例では、若手社員向けに問題解決研修や技術研修、中堅にはリーダーシップ研修、管理職には経営塾など、各層ごとにきめ細かなOFF-JTが提供されています。自社のベテラン社員や外部専門家が講師を務め、ケーススタディなど実践型のプログラムも多く取り入れています。
このような社内大学制度を持つ企業は、長期的視点で社員を育成でき、人材ポートフォリオ全体の底上げが図れます。社員側も、学ぶ機会が豊富に用意されていることで成長意欲が刺激され、会社へのロイヤリティ向上につながるという効果があります。
中小企業における外部研修活用:業界団体のセミナー参加や公的機関の研修を利用して人材育成を図る事例
中小企業では大企業のように自前の研修機関を持てない場合が多いですが、その代わりに外部の研修リソースを積極的に活用することで人材育成を行っている例があります。例えば、ある製造業の中小企業では業界団体が開催する技術セミナーに定期的に社員を派遣しています。溶接技術や品質管理など専門領域のセミナーに参加させることで、社内では教えられない知識・技術を習得させています。
また、公的機関が提供する研修も有用です。各地の商工会議所や中小企業大学校などでは、中小企業向けの安価な研修コースを数多く用意しています。経営基礎、営業力強化、ITリテラシー向上などテーマも多岐にわたります。中小企業のC社では、毎年数名の社員を中小企業大学校の研修に参加させ、新たな視点を社内に持ち帰ってもらっています。
さらに、同じ課題を持つ中小企業同士が合同で研修を開催するケースもあります。地域の企業が集まり講師を招いて合同研修会を開き、コストをシェアしつつネットワークも広げるというものです。こうした外部資源の活用によって、中小企業でも低コストで効果的なOFF-JTを実現している事例と言えます。
コニカミノルタジャパンの事例:事前学習と自主学習を組み合わせ研修効果の定着を図った取り組み
コニカミノルタジャパン株式会社では、従来の研修を見直し、事前学習+研修+自主学習を組み合わせたハイブリッドな研修モデルを導入しています。同社は社内ヒアリングの結果、「研修を受けても実践に結びつかない」「業務に必要なスキルを学ぶ機会が少ない」という課題を認識しました。そこで、オンライン学習プラットフォームを導入し、研修の前後に社員が自主的に学べる仕組みを構築したのです。
具体的には、OFF-JTの集合研修に参加する前に関連するオンライン講座を視聴して基礎知識を身につけてもらい、本番の研修ではディスカッションや応用演習に時間を充てています。さらに研修後、各自の課題や興味に応じて追加でオンライン講座を選択受講できるようにし、学習を習慣化させました。
この取り組みにより、研修の理解度が向上し、社員が自発的にスキルアップを続ける文化が醸成されました。実際に研修での学びを職場で実践する割合も高まり、行動変容につながっているとのことです。コニカミノルタジャパンの事例は、テクノロジーを活用してOFF-JTと自己啓発を融合し、研修効果を飛躍的に高めた成功例と言えるでしょう。
USEN-NEXT HOLDINGSの事例:オンライン学習で自律的な学びの習慣を醸成し若手社員の成長を支援
USEN-NEXT HOLDINGSでは、「オンライン×自律的×多様な成長機会」をテーマに若手社員の育成プログラムを刷新しました。同社は事業領域が多岐にわたるため、一律の研修ではなく各人が必要なスキルを主体的に学ぶ仕組みが求められていました。そこでオンライン学習サービスを導入し、1年目は必修研修+自由選択研修を組み合わせ、2年目以降は受講者が自ら学習計画を立てるというカリキュラムを設定しました。
具体的には、新入社員の1年間は月次で決められたテーマ(ビジネス基礎や専門知識)のオンライン講座を受講させる一方、各人の興味に応じた講座も月に数本選んで受けるよう促しました。2年目以降は必修を減らし、自律性を重視してそれぞれが必要と思う講座を受講するスタイルに移行します。学んだ内容は社内SNSで共有し、上司もフィードバックすることで、学びを仕事に活かすフォロー体制も整えました。
この結果、若手社員が自ら進んで勉強する風土が根付き、業務に役立つ資格を取得する社員も増加したそうです。「やらされる研修」ではなく「自分で選ぶ学び」の要素を取り入れたことで、社員の成長意欲を引き出すことに成功した事例と言えます。
SOMPOコミュニケーションズの事例:グループワーク型研修で新人同士の連携を強化し組織風土づくりに貢献
SOMPOコミュニケーションズ株式会社では、新入社員研修にグループワークやチーム発表を積極的に取り入れ、同期社員同士の横のつながりを強める工夫を行いました。同社はコンタクトセンター運営を担う企業で、新人は配属後それぞれの拠点で勤務します。そこで、入社初期研修の段階で同期の結束を固め、配属後も互いに支え合える関係を構築する狙いがありました。
研修では、座学に加えて複数のグループワーク課題を設定しました。例えば「理想の職場をテーマにしたディスカッション」や「顧客対応ロールプレイのチーム発表」などです。受講者はチームで話し合い、意見をまとめて発表するプロセスを経験します。研修担当者は、単に知識を教えるよりもチームで協力する体験に重きを置きました。
その結果、新人同士が互いに打ち解け、研修後も連絡を取り合うネットワークができました。ある新人は「研修で知り合った仲間に悩みを相談できて心強かった」と語っています。職場が異なっても同期の横のつながりが組織全体の風通しを良くし、離職防止や企業文化の醸成に貢献しています。
この事例は、OFF-JT研修を単なるスキル習得の場にとどめず、人間関係構築や組織開発の場として活用した好例と言えるでしょう。同じ研修を受けたという共通体験が同期の団結心を生み、組織全体の一体感強化につながった成功ケースです。