BIM(Building Information Modeling)は、建築物の三次元形状に材料や性能などの属性情報を持たせ、設計から施工、維持管理までを同じデータで扱う手法です。国内の導入は企業規模によって大きく差がありますが、2026年4月1日に建築確認のBIM図面審査が始まり、制度の側からBIMを前提とする実務が動き始めました。国土交通省が公開している一次資料をもとに、BIMの定義、CADとの実質的な違い、確認申請と補助金の現在地、そして国内導入率の実像を整理します。
まとめ:BIMについて先に押さえる5点
- BIMは形状と属性を併せ持つ建築情報モデルを作り、使う手法。国土交通省はBIMモデルを「主に三次元の形状情報に加え、室などの名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げなどの建築物の属性情報を併せ持つ建築物情報モデル」と定義しています。形状だけを持つ三次元モデルは含みません。
- 2026年4月1日にBIM図面審査が開始。BIMデータから書き出した図書で確認申請を行うと、設計者の誓約を根拠に図書間の整合性確認の一部が省略されます。
- BIMデータ審査は2029年春に導入予定。IFCデータそのものを審査対象にする基本構想が2026年9月に公開され、採光・換気や容積率など10条項が先行検討対象に挙がっています。
- 補助金は建築BIM加速化事業から建築GX・DX推進事業へ引き継がれた。掛かり増し費用の2分の1補助ですが、完了後3年間の活用状況報告が条件に入ります。
- 導入率には58.7%と49.7%の2系列がある。従業員51〜100人が44.9%、101〜300人が70.3%と、平均値より規模の断層のほうが実態を表します。
BIMの定義と、モデルが持つ形状情報・属性情報
Building Information Modelingの略称と、図面ではなくモデルを作る発想
BIMはBuilding Information Modelingの頭文字で、「ビルディング・インフォメーション・モデリング」と読みます。末尾がModel(モデル)ではなくModeling(モデリング)である点が要点で、成果物としての三次元モデルだけでなく、それを作り・使い・引き継ぐプロセスまでを指します。
実務上の区別は、国土交通省の「BIM図面審査 申請・審査マニュアル(初版 令和8年3月24日版)」が明確です。同マニュアルはBIMモデルを「コンピュータ上に作成した主に三次元の形状情報に加え、室などの名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げなどの建築物の属性情報を併せ持つ建築物情報モデル」、BIMデータを「BIMモデルに加え、BIMソフトウェア上でBIMモデルから作成した図書情報や2Dによる加筆(2次元加筆)も含めた全体の情報」と定義します。BIMデータには、モデルにひも付かない図面枠や2次元の書き込みも含まれるということです。
BIMデータ審査における形状情報と属性情報の作成方針
BIMモデルが持つ情報は2種類です。形状情報は寸法・位置・形状・面積・体積といった幾何学情報、属性情報は性能・仕様・材質などの特性を指します。「建築確認・検査におけるBIMデータ審査の導入に関する基本構想」(2026年9月)は、この2つに異なる方針を置きました。形状情報は「設計・審査の実態に合わせ、建築物の形状・構成が分かる程度の最低限必要な内容を定め、幅広い表現を許容」し、外壁を躯体・仕上材・下地ボード・断熱材まで分けた詳細モデルも、単一の外壁として扱う簡素なモデルも許容します。対して属性情報は「審査に幅広く活用するため、入力基準として審査に必要な事項及びその入力ルールを網羅的に規定」する方針です。形を作り込むことより、属性を決められたルールで入れることのほうが制度対応では重いと読めます。
BIMと2次元CADの作図・情報管理の違い
2次元CADでは、平面図・立面図・断面図をそれぞれ別の図面として作図します。同じ壁を3回描くため、1か所の設計変更が3か所の修正を要求し、直し漏れが図面間の不整合として残ります。BIMでは壁というオブジェクトを1つ置き、各図面をそこから書き出すので、マニュアルの表現では「一つのBIMモデルから書き出された平面図、立面図、断面図だと原則(出力後に手を加えることがなければ)図面間の不整合が生じることはない」状態になります。
ここで効くのが属性情報です。CADの線には「壁」という意味がありませんが、BIMの壁オブジェクトは耐火性能や層構成を属性として持つため、面積表や建具表、数量をモデルから直接集計できます。既存2次元図面の版管理・検索・配布は別の論点で、図面管理システムとは?CAD図面の版管理・検索・配布と導入判断を解説およびAutoCADとは?機能・便利コマンド一覧とAutoCAD 2027の新機能を解説を参照してください。
BIMとBIM/CIMの使い分け
建築分野がBIM、土木・インフラ分野がCIM(Construction Information Modeling, Management)で、国土交通省は両者をまとめてBIM/CIMと呼びます。所管も進め方も別で、2023年度から原則適用が始まった直轄土木のBIM/CIMと、この記事が扱う建築分野のBIM図面審査は別系統の施策です。土木側の適用範囲はBIM/CIMとは?BIMとの違いと原則適用の対象範囲・社内データ基盤の整え方を解説で扱っています。
2026年4月開始のBIM図面審査と申請・審査の変更点
BIM図面審査で省略できる整合性確認の範囲
国土交通省は2026年4月1日に「BIM図面審査が開始されました」と公表しました。ガイドラインの定義は「BIM図面審査とは、BIMデータから書き出された図書を活用した建築確認における申請及び審査の方法をいう」です。制度の根拠として、2026年4月に建築基準法施行規則および建築確認等に関する指針(平成19年告示第835号)の改正が予定されていると、同年3月24日版のマニュアルに記載されています。
誤解されやすいのは省略の範囲です。省けるのは図書間の整合性確認の一部で、法適合性の審査そのものではありません。マニュアルは「入出力基準に従い作成されたBIM由来のPDF図書に関しては、設計者の誓約に基づき当該基準に応じて整合性確認の一部を省略することができる」とし、根拠を設計者が提出する誓約書に置いています。省略が成り立つのは設計者の誓約があるからで、整合を担保するのは設計者側の作業だと理解しておく必要があります。
申請に必要な4点セットとCDE
申請者が電子データで用意する提出物は次の4つです。
| 提出物 | 内容 |
|---|---|
| 施行規則の申請図書等 | 確認申請書様式、BIM由来のPDF図書、BIM由来でないPDF図書 |
| IFCデータ | BIM由来のPDF図書と同じBIMデータから同時に書き出したIFC形式データ |
| 入出力基準適合誓約書 | 入出力基準に従いデータを作成し図書が相互に整合する旨の設計者の誓約 |
| 各種計算書その他 | 確認申請で求められる計算書・上記以外の必要書類 |
審査環境はICBA電子申請受付システムとICBA確認申請用CDE(Common Data Environment)が標準で、各機関が独自の電子申請システムとCDEを連携して運用することも認められています。受付後のやり取りは窓口や電子メールではなくCDE上で行われ、指摘と補正の履歴がクラウドに残ります。IFCの書き出しには「PDFと同じBIMデータから同時に」という条件が付くため、PDFを出した後にモデルを直してIFCだけ出し直す運用はできません。
この段階でのIFCは審査の参考として三次元形状を見るためのもので、IFCにだけ含まれる情報を根拠に適否が判断されることはありません。審査対象にはBIM由来でないPDF図書や各種計算書も含まれます。IFC(Industry Foundation Classes)はbuildingSMARTが策定する共通フォーマットで、国際規格はISO 16739-1:2024(2024年3月発行の第2版)、対応スキーマはIFC 4.3 ADD2(バージョン4.3.2.0、2024年4月公開)が現行です。
BIM図面審査に向けた社内テンプレートの適合確認
BIM図面審査に乗せるには入出力基準に沿ってBIMデータを作る必要があり、入出力基準を満たす出力ができるBIMソフトウェアを使っていることが誓約の前提になります。基準線(通り芯および各階基準線)、符号、軒・ひさし等、防火区画等、非常用の進入口等といった用語が基準側で定義されており、既存の社内テンプレートをそのまま流用できるとは限りません。国土交通省は参考テンプレートを内包したサンプルモデルの所在を案内しているので、自社テンプレートとの差分確認から着手するのが現実的です。
タイミングも効いています。2025年4月1日施行の4号特例見直しで、木造の2階建て以上または延べ面積200平方メートル超は新2号建築物として全地域で建築確認・検査の対象となり、構造関係規定や省エネ関係の申請図書の提出が必要になりました。提出図書が増えた直後にBIM図面審査が始まった形で、整合性確認の省略が効く場面はむしろ広がっています。確認申請と検査の流れ全体は建築基準法とは?確認申請と検査の流れを設計・積算システムの要件に翻訳で整理しています。
2029年春のBIMデータ審査と、先行する10条項
BIM図面審査はゴールではなく中間段階です。2026年9月に公開された基本構想は、2029年春導入予定のBIMデータ審査を「2026年4月に開始したBIM図面審査とは異なる新たな仕組み」と明記し、その中身を「確認申請のデジタル化であり、審査の対象はIFCデータそのもの」と位置づけました。PDFの図書を読む審査から、IFCを審査事項に適した表示へ変換して見るビュー審査と、プログラムやAIが補助するデジタル審査へ移る構想です。2029年春の開始時点で優先的に検討される審査項目は次のとおりです。
| 条項 | 内容 |
|---|---|
| 28条 | 居室の採光・換気 |
| 35条 | 排煙設備(令第5章第3節)、非常用の照明装置(令第5章第4節) |
| 35条の2 | 内装制限 |
| 36条 | 防火区画(令第112条) |
| 52条 | 容積率(許可を除く) |
| 53条 | 建蔽率(許可を除く) |
| 53条の2 | 建築物の敷地面積(許可を除く) |
| 54条 | 第一種低層住居専用地域等内における外壁の後退距離 |
| 55条 | 第一種低層住居専用地域等内における建築物の高さの限度(許可を除く) |
| 56条 | 建築物の各部分の高さ(天空率を除く) |
基本構想は「審査TFのもとに設置されるWGでの検討の結果、今後、変更があり得る」と留保を付けており、構造・省エネの適合性判定や消防同意を制度開始時から実装するかは今後協議とされています。IFCデータによる審査対象項目以外は従前どおりPDF形式の図書で審査するとも明記されており、2029年春の導入時点でも確認申請からPDF形式の図書がなくなるわけではありません。斜線制限のように、規制内容そのものを表現した「法規モデル」を設計者が作ることも想定されています。数量・面積の扱いが標準化されれば積算の前提も変わるため、積算とは?見積との違いと工事価格の構成・数量拾いから単価積み上げまでの流れを解説と合わせて読むと影響範囲がつかめます。
建築GX・DX推進事業の補助要件と申請・予算執行状況
BIM導入費用を国が補助する事業は名称が変わっています。長く知られた建築BIM加速化事業は令和5・6年度の事業で令和6年度をもって終了しており、国土交通省のページも令和6年6月の更新で止まっています。後継が建築GX・DX推進事業で、建築物のライフサイクルCO2評価によるGXと、建築BIMの普及拡大によるDXを一体で支援する枠組みです。「BIM加速化事業」の名前で探すと古い年度の募集要領に当たるため、現行の名称で確認してください。
BIM活用型の補助は「設計調査費及び建設工事費に対し、BIM活用による掛かり増し費用の1/2を補助(延べ面積に応じて補助限度額を設定)」という組み立てです。補助対象経費にはBIMソフトウェア利用費のほか、CDE環境構築費・利用費、BIMコーディネーター・BIMマネジャー・BIMモデラーの人件費、BIM講習の実施費用が含まれます。ソフト代だけでなく人件費と教育費が対象に入っている点が実務では大きいところです。
ただし条件は軽くありません。耐火または準耐火建築物等であること、省エネ基準に適合すること、元請事業者等が下請事業者等の建築BIM導入を支援すること、維持管理の効率化に資するBIMデータ整備を行うこと、大規模な新築プロジェクトでは国土交通省が定めるBIMモデルの利用を行うこと、住宅では土砂災害特別警戒区域外等の立地要件を満たすこと、そして元請・下請の双方が「BIM活用事業者登録制度」に登録し、「BIM活用推進計画」を策定するとともに、補助事業完了後3年間BIM活用状況を報告することが求められます。単年度で終わる話ではないため、3年間の報告義務を負える体制かを先に確認すべきです。
予算の消化速度も計画に影響します。令和8年度の受付期間は、代表事業者および事業者の登録が2026年4月7日から12月31日、交付申請が2026年7月1日から9月30日です。実施支援室が公表している執行状況は次のとおりです。
| 年度 | 予算額 | 交付申請額 | 申請割合 | 時点 |
|---|---|---|---|---|
| 令和8年度 | 7,300百万円 | 5,784百万円 | 79.2% | 2026年9月18日 |
| 令和7年度 | 6,500百万円 | 5,850百万円(389プロジェクト) | 予算上限に到達 | 2025年9月30日 |
令和7年度は予算上限に達して新規申請が仮受付扱いとなり、執行状況の精査を経て順次本受付へ移行する運用になりました。令和8年度も代表事業者登録時の応募見込総額が8,399百万円で、予算額7,300百万円を上回っています。補助率・補助限度額は年度ごとに見直されるので、金額は必ず当該年度の募集要領で確認してください。
導入率の実像:58.7%と49.7%、そして100人の壁
BIM導入率58.7%と49.7%の調査対象の違い
国土交通省が建築BIM推進会議参加13団体の会員に実施した「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査」(令和7年1月)には、導入率の数字が2つあります。
- 調査A(n=433)で58.7%。過年度調査と同じ配布先に聞いた系列で、令和4年度の48.4%(n=696)と比較するためのものです。
- 調査A+Bの拡大版(n=1,738)で49.7%。調査Bは新たに協力を得た会員1,305件で、国土交通省は「一部の設問について、過年度調査から対象を広げた調査を実施することにより、より実態に即したBIMの導入状況等を把握・整理する」ためと目的を書いています。
「BIM導入率が約6割に達した」という引用を見かけたら、それは前年比較用の狭い系列のほうです。国土交通省自身が実態に近い把握を目的として置いた拡大版では、導入しているが49.7%、導入していないが50.1%でほぼ半々です。
BIM導入率の企業規模別・所在地別の差
| 区分 | 導入している | 回答数 |
|---|---|---|
| 全体 | 49.7% | 1,738 |
| 従業員31〜50人 | 31.9% | 166 |
| 従業員51〜100人 | 44.9% | 187 |
| 従業員101〜300人 | 70.3% | 175 |
| 従業員301〜500人 | 85.0% | 60 |
| 東京・愛知・大阪 | 69.7% | 390 |
| その他の地域 | 44.1% | 1,304 |
| 総合設計事務所 | 63.6% | 319 |
| 専門設計事務所 | 52.0% | 421 |
| 総合建設業 | 43.4% | 776 |
| ハウスメーカー | 16.7% | 24 |
従業員100人を境に44.9%から70.3%へ25.4ポイント跳ね上がります。地域差も25.6ポイントあり、回答者の所属部署の所在地は東京・愛知・大阪が22.4%、その他の地域が75.0%という分布なので、母数の多い地方側の44.1%が全体を押し下げています。「BIMは普及した」は、100人以上の企業と三大都市圏に限って正しい表現です。なお同調査は13団体の会員を対象としたアンケート(調査Aの回収率17.5%)で、建築業界全体を母集団とした代表性を持つ統計ではありません。ハウスメーカーの16.7%はn=24と少ないため傾向の参考にとどめてください。
導入しない理由と、入れても効果が出ない条件
BIM未導入の主な理由と現行業務・取引先からの需要
調査Aで未導入と回答した179件に理由を聞いた結果(複数回答)の上位は、「CAD等で現状問題なく業務を行うことができているため」73.7%、「発注者からBIM活用を求められていないため」68.7%、「業務をBIMに切り替えた場合、習熟するまで業務負担が大きいため」56.4%、「協力会社等、業務上の関係者からBIM活用を求められていないため」53.1%でした。ソフトの購入・維持費を挙げたのは29.6%にとどまります。1位・2位・4位はいずれも「困っていない」「求められていない」という需要側の話です。社内でBIM導入を通すには、ソフト価格の安さより発注者や協力会社からBIMが要求される状況を示すほうが効きます。2026年4月のBIM図面審査開始は、BIMを使う場合に選択できる申請・審査方法が整備されたもので導入の義務化ではありませんが、取引先にBIMを求める理由を与える制度変更ではあります。
導入済み企業の最大の不満は二重作業
調査AでBIM導入済みの254件にメリットが得られていないと感じる場面を聞くと、最多は「現在のCAD等の業務に加えてBIMを活用しており、結果として二重作業になるなど、作業にかかる時間・手間が増加している」55.1%でした。次いで「協力会社でBIMが導入されておらず、分野をまたいだ連携ができていない」45.7%、「人材育成の費用・時間等が負担となっている」44.1%です。「確認申請のために紙やPDFへの出力が必要となり、結果として二重作業になる」も26.4%が挙げています。
最後の項目は、BIM図面審査とBIMデータ審査が解こうとしている課題そのものです。逆に言えば、上位のCADとの併用と協力会社の未導入は、制度が変わっても自動的には解消しません。
BIMの効果実感と可視化・図面整合・工数削減の差
メリットを実感できる場面(複数回答)は「3Dでの可視化によるコミュニケーションや理解度の改善」82.7%が突出し、「顧客に対して良い印象を与えられた」63.8%、「設計図書間での整合が図りやすくなった」42.9%と続きます。一方、「手戻りや調整の減少によりプロジェクトが円滑に進むようになった」は26.4%、「設計変更に伴う手間やコストが減少した」は14.2%にとどまります。
ここははっきり書きます。この調査の数字を根拠にBIMをコスト削減ツールとして社内稟議に載せるのは無理があります。効果の実感が集まっているのは合意形成とプレゼンテーションの領域で、そもそもこの設問は効果の実感を尋ねたものであり削減額の実測ではありません。コスト削減を稟議の根拠にするなら、自社案件の工数・費用の試算と試行結果を自前で示す必要があります。
導入を急ぐべきでない場合
次の3条件が重なるなら、全社導入より先に別の手を打つほうが合理的です。第一に、主力案件が戸建住宅である場合。BIMが活用される用途は事務所67.7%に対し戸建住宅は9.1%、構造種別もS造76.8%・RC造74.0%に対し木造は21.7%で、この調査だけでは住宅向けツールやノウハウの充実度までは判断できません。第二に、協力会社や発注者がBIMデータを受け取れない場合。社外連携の相手は設計者・施工者間の69.2%が最多で、受け手がいなければモデルは社内の可視化資料で終わります。第三に、既存CADの業務を止められない場合。並走期間をいつ終わらせるかの計画がないまま始めると、二重作業が長期化するおそれがあります。
なお未導入企業の理由で令和4年度より5ポイント以上増えた唯一の項目は「既にBIMを活用しない仕組みで高効率な業務体制等を構築できているため」でした。入れないという判断が積極的な選択として増えていることを示します。着手順と投資判断の線引きは建設DXとは?進まない構造要因と着手順・投資判断の線引きを解説で扱っています。
主要BIMソフトと選定の判断軸
RevitとArchicadの位置づけ
国内の建築BIMで中心となるのはオートデスクのRevitとグラフィソフトのArchicadです。Revitは2026年4月にRevit 2027が発表され、オートデスクの新機能一覧ではRevitがForma Connected Clientになる最初のデスクトップアプリケーションだと説明されています。ただしForma Connected Clientも内包炭素の対象拡張も、一覧では「Tech Preview」と表記されています。正式機能として選定条件に数えるのは早い段階です。Archicadは日本語版が2025年10月9日に発表されたArchicad 29が現行版で、公式の国内価格は1年契約・年払いでArchicad Studioが年額357,000円(税別)、Archicad Collaborateが年額420,000円(税別)です。バージョンも価格も年次で動くため、導入直前に公式サイトで再確認してください。
選定で先に決めるべきはソフト名ではなく社内の主対象です。構造・設備の専門設計事務所なら、意匠系の操作性より分野間参照とIFC書き出しの精度が効きます。BIM図面審査に乗せる予定があるなら、入出力基準を満たす出力ができる製品かどうかが誓約の前提になるため、この適合性が事実上の一次フィルタです。
Autodesk Formaへの統合とBIM 360の提供状況
オートデスクは2026年3月25日(日本時間)よりAutodesk Construction CloudをAutodesk Formaに統合すると発表しました。既存ユーザーの利用環境に変更や中断はなく、データ移行も不要で、ワークフロー・API・ライセンス形態・ログイン環境は維持されるとされていますが、製品画面とウェブサイト上の名称は順次変わります。
旧世代のBIM 360については、プラットフォーム自体の提供終了予定は示されていない一方、新機能の追加は停止され、新規プロジェクトはAutodesk Formaで開始することが推奨されています。BIM 360 Glueは2026年7月31日に提供終了しました。数年前の記事や比較表がBIM 360を現行の推奨として挙げている場合、その情報は更新されていないと考えるのが安全です。
維持管理段階のBIMデータ連携と更新担当の決定
BIMの投資回収を維持管理段階に置く構想はよく語られますが、調査Aで「発注者が竣工後も自己保有・維持管理する建築物」を活用対象に挙げた割合は26.8%、社外とのデータ連携がある133件のうち、設計者・維持管理者間の連携を挙げた回答は12.0%でした。竣工後に誰がモデルを更新し続けるかを決めずに作ると、引き渡し時点で止まった三次元モデルが残るだけです。既存建物の改修では、3Dスキャンした点群から現況のモデルを起こす工程が入口になります。その処理フローは点群データのCAD化:メッシュ化・面フィッティングの処理フローとOpen3DでDXFを書き出す実装で解説しています。運用段階でのモデル活用の考え方はデジタルツインとは?意味・仕組み・事例と導入の判断基準を実装目線で解説で整理しています。
よくある質問
BIMは何の略ですか?
Building Information Modelingの略です。建築物の三次元形状に属性情報を併せ持つモデルを作り、活用する手法とプロセス全体を指します。土木・インフラ分野のCIM(Construction Information Modeling, Management)と合わせてBIM/CIMと呼ばれることもありますが、所管する制度は別系統です。
BIMとCADの違いは何ですか?
2次元CADは図面ごとに線を描くため同じ部位を複数回作図しますが、BIMは部材をオブジェクトとして1つ置き、各図面をそこから書き出します。BIMのオブジェクトは寸法などの形状情報に加えて材料・性能といった属性情報を持つため、面積表や数量をモデルから直接集計できます。3D CADとの違いも属性情報の有無で、形状だけを持つ三次元モデルはBIMには当たりません。
BIM図面審査は必ず使わなければいけませんか?
BIM図面審査は、BIMデータから書き出した図書を活用する申請・審査の「方法」として2026年4月1日に始まったもので、従来どおりの申請方法がなくなったわけではありません。利用する場合は、入出力基準に従って作成したBIMデータからPDF図書とIFCデータを同時に書き出し、入出力基準適合誓約書を添えて提出します。審査環境はICBA電子申請受付システムとICBA確認申請用CDEが標準です。
BIMの導入に補助金はありますか?
建築GX・DX推進事業が該当します。令和5・6年度の建築BIM加速化事業の後継で、BIM活用による掛かり増し費用の2分の1を補助し、BIMソフトウェア利用費やCDE環境構築費、BIMモデラー等の人件費が対象になります。令和8年度は代表事業者等の登録が2026年4月7日から12月31日、交付申請が2026年7月1日から9月30日で、2026年9月18日時点の交付申請割合は79.2%です。補助事業完了後3年間の活用状況報告が条件に入る点に注意してください。
BIMが普及しない理由は何ですか?
令和6年度調査で未導入企業が挙げた理由の上位は、「CAD等で現状問題なく業務を行うことができている」73.7%、「発注者からBIM活用を求められていない」68.7%、「習熟するまで業務負担が大きい」56.4%でした。導入済み企業でも、CADとの併用による二重作業を55.1%が課題に挙げています。費用そのものより、現行業務で足りていることと取引先から求められていないことが上位に来る構図です。