CADに載っているAIは、2026年10月時点でも「要件から完成図面を描く」機能ではありません。ブロック配置の提案、手書き赤入れの取り込み、3Dからの2D図面作成、図面への自然言語での問い合わせといった、作図まわりの手作業を削る機能です。この記事では、AutoCAD・Fusion・SOLIDWORKSなど主要CADに何が実装済みかを提供状況(一般提供・ベータ・発表のみ)で区別し、GeminiやChatGPTにDWG・DXFを渡したときに何が起きるかを実測値で示します。
まとめ:2026年10月時点で「AIができること/できないこと」
結論から書きます。CADのAIは図面作成の一部を自動化できても、要件から検証済みの完成図面までを一任できる段階にはありません。7月から変わったのは、AutodeskのAssistantがTech Previewを抜けて一般提供になり、Fusionでは操作の代行に月間トークン枠がかかるようになった点です。
| やりたいこと | 2026年10月時点 | 手段 |
|---|---|---|
| 繰り返しブロックの配置・置換 | 実装済み | AutoCAD 2024以降のSmart Blocks |
| 手書き赤入れの図面反映 | 実装済み(LT不可) | AutoCAD Markup Import/Markup Assist |
| 3Dから2D図面を自動作成 | 実装済み | Fusion・Solid Edge・SOLIDWORKS |
| 図面への問い合わせ・集計 | 一般提供 | Autodesk Assistant(AutoCAD 2027.1) |
| 自然言語でFusionを操作 | 一般提供(トークン枠あり) | FusionのAutodesk Assistant・Fusion MCP |
| 履歴の無い3Dモデルを編集可能に | 発表のみ | Fusion AutoTimeline(AU 2026) |
| テキストから3Dモデルを生成 | 可(要検証) | Zoo Design Studio・text-to-CAD API |
| DWGをそのままLLMに読ませる | 不可 | Gemini・ChatGPTの対応形式に無い |
| DXFを要約してLLMに渡す | 可(自作) | ezdxfで要素をJSON化 |
| 法規適合した完成図面の生成 | 不可 | 該当製品なし |
「AIで設計を自動化する」と社内で提案するなら、効果が読めるのは赤入れ取り込みと2D図面作成の短縮で、設計判断は人の側に残ります。以下、各行の根拠を製品別に見ていきます。
Autodesk製品に実装済みのAI機能
AutoCAD:Smart Blocks・Markup Assist・Autodesk Assistant
AutoCADのAIは版ごとに積み上がっているので、機能名と版の対応を取り違えると導入判断を誤ります。Smart Blocksは2024で登場し、既存ブロックの配置傾向から次の位置を推定するPlacementと、名称や形状の類似から置換候補を出すReplacementを持ちます。2025で繰り返し図形をブロック化するSearch and Convertが正式機能になり、2026でObject DetectionはDetect and Convert(コマンドBDETECT)に改称され、2026のUpdate 1.1でTech Previewを終了しました。
Markup Import/Markup Assistは、PDF・JPG・PNGで受け取った赤入れをTrace環境に重ね、文字・リビジョンクラウド・取り消し線を識別して図面に反映します。紙に手書きされた指示をスマートフォンで撮って取り込む運用が想定されています。処理はクラウドで行われるため、インターネットに出られない閉域網のCAD端末では使えません。
Autodesk Assistantは2027で社内標準ファイルとの照合、自然言語での要素選択、図面への問い合わせまで広がり、発表時はTech Previewでした。その後、AutodeskのAutodesk Assistant共通ヘルプは「Tech Preview for Autodesk Assistant has ended」と書き、拡張機能が一般提供になったと明記しています(機能は製品ごとに異なり、AutoCAD固有の移行日は書かれていません)。AutoCAD 2027.1の新機能では、図面を開くとAssistantが既定で開くようになり、オブジェクトの集計、選択範囲を文脈にした分析、図面の設定に合わせた単位表示が強化されました。同じヘルプは回答が不完全・不正確な場合があるとも書いているので、集計結果を検図の代わりに使うのはまだ早いです。AI以外を含む2027の変更点はAutoCADコマンド一覧|基本・便利コマンドとショートカット、AutoLISP自動化と2027の新機能で整理しています。
AutoCAD LTで使えるAI機能と使えない機能
LTでも使えるAI機能はありますが、AutoCADと同じ機能がすべて使えるわけではありません。
| 機能 | AutoCAD | AutoCAD LT |
|---|---|---|
| Smart Blocks: Placement | 可 | 可 |
| Smart Blocks: Search and Convert | 可 | 可 |
| Smart Blocks: Replacement | 可 | 不可 |
| Detect and Convert | 可 | 不可 |
| Autodesk Assistant | 可 | 可(LT 2027) |
| Markup Import/Markup Assist | 可 | 不可 |
| Activity Insights | 可 | Version activityのみ |
繰り返し図形のブロック化まではLTでも届きますが、赤入れ取り込みやブロック置換が目的ならLTでは要件を満たしません。
Fusion:Assistantの一般提供・3つのMCPサーバー・トークン枠
Fusionは月次更新でAI機能が動く製品で、7月以降の変化がいちばん大きい製品です。AutodeskのFusionブログ(2026年10月1日)によると、AU 2026でFusionのAutodesk Assistantは全ユーザー向けの一般提供になりました。2026年10月6日からは、設計データに触れる操作や作業の代行が月間Flexトークン(ベータ)を消費します。
| Fusionの契約 | 月間Flexトークン(ベータ) |
|---|---|
| Commercial | 毎月20 |
| Personal | 毎月10 |
| Students/Educators | 毎月10 |
| Trial | 30日間で10(更新なし) |
ヘルプや製品情報を尋ねるだけならトークンは減りません。未使用分は翌月に繰り越されず、1回の依頼で何トークン減るかは処理量で変わるとされています。注意したいのはPersonalで、追加のトークンを買うと商用版のFusionへ移される、と同じブログに書かれています。
外部のAIエージェントから操作する経路も整いました。Fusionには、手元のFusionと並んで動きモデリングやコマンド実行を担うFusion MCP、Fusionを開かずにクラウド上のデータを照会・管理するFusion Data MCP、クラウドでFusionのセッションを動かすFusion Compute MCPの3つがあります。ローカルのFusion MCPを有効にしてClaudeなどから接続する手順はFusion 360 MCPの使い方|公式MCPサーバーとfusion360-mcp-bridge等OSSの接続手順にまとめています。
ジェネレーティブデザインは別の課金です。無償のFusion Personalでは使えず、商用・教育・スタートアップ・体験版のいずれかが必要です。従量で使う場合はアウトカム生成に11トークンを消費しますが、条件は契約で変わるため、Autodeskのクラウドクレジットのヘルプで確認してください。無償で試したい場合、Personalは対象外で、使えるのは対象者向けの教育ライセンスです。
AU 2026で発表された機能(AutoTimeline・AutoAssemble)の提供時期
2026年9月のAU 2026では、Fusion向けにAutoTimelineとAutoAssembleが発表されました。AutoTimelineは、他CADから取り込んだ履歴の無いソリッドからフィーチャー履歴を組み直し、編集できる形に戻す機能です。AutoAssembleは部品を認識して配置と拘束を推定します。ブログの題名どおり「coming(今後提供)」の扱いで、提供日は書かれていません。製品の垣根を越えて動く単体版のAutodesk Assistantも披露されましたが、Autodeskの投資家向け発表は、提供時期・契約条件・地域を2027年に発表するとしています。
テキストやスケッチから3D形状を生成するProject Berniniは、Autodesk Researchが今も「研究であり商用提供の技術ではない」と書いています。2025年に掲げたneural CADという括りについては、Engineering.comがAutodeskからの訂正として、AutoConstrainやBuilding Layout Explorerなどすでに製品に入っている機能もその一部だとAU 2026の記事に追記しています。Autodesk製品で「テキストから図面を生成」を前提に計画を立てる段階ではありません。
Forma・Revit:機械学習の高速解析と最適化探索の違い
建築側で実際に効いているのはFormaのrapid analysisです。風や騒音の予測を機械学習モデルで返すため、シミュレーションを待たずに配置検討ができ、精度が要る段階で時間のかかるdetailed analysisへ切り替えます。一方、Revitの「Generative Design in Revit」は生成AIではなく、Dynamoグラフに目標と制約を与えて多数の解を反復生成し、Explore Outcomesで比べる最適化探索です。BIMとCADの役割の違いはBIMとは?CADとの違いから2026年4月開始のBIM図面審査・補助金までを実務目線で解説を参照してください。
Autodesk以外の主要CADのAI機能
「AI搭載のCADはどれか」を比べるときに見るべきは、その機能が一般提供なのかベータなのか、追加費用がかかるのかの2点です。呼び方はベンダーごとに違うため、下表では各社の公式表記を一般提供・ベータ・発表のみに揃えました。
| 製品 | 主なAI機能 | 提供状況 |
|---|---|---|
| SOLIDWORKS Design | AURA・LEO(Virtual Companions) | 提供中(Cloud Services・トークン消費) |
| SOLIDWORKS Design | SmartMates with AI Fastener Recognition | 一般提供(2025 SP3初出) |
| Designcenter(旧NX) | Copilot | Designcenter X(旧Designcenter X NX)で提供 |
| Designcenter Solid Edge 2026 | Copilot・2D図面の自動作成 | 提供中(Copilotはクラウド版の全ティア) |
| Creo 13.4 | Creo AI Assistant(Advise) | 一般提供 |
| Creo 13.4.1.0 | 同(Assist) | ベータ |
| Onshape | AI Advisor | Government以外の全プラン |
| ARES Commander 2027 | ARES AI Assist(A3)・AI-Assisted Block Generation | 提供中(一部機能はTrinity契約) |
| BricsCAD V26 | BLOCKIFY・AI Predict・BIMIFY | 一般提供(BIMIFYはBIM/Ultimate) |
SOLIDWORKSは7月から扱いが変わりました。SOLIDWORKSのAI製品ページは、商用のSOLIDWORKS Design OfferとDesign with Cloud Servicesの契約者が追加ライセンスなしでAURAとLEOを使えるとし、AIの利用量はトークンで計測すると書いています。LEOは「利用可能、2026年以降も能力を拡張」という表記で、図面レイアウト・ビュー・寸法を自動生成するGenerative Drawingsもこのページに並びます。SOLIDWORKS 2027は10月15日に公式の新機能紹介があり、10月18日時点で取得できたリリースノートは「Prerelease」と表記されていました。
Siemensは2026年6月版(Designcenter 2606)でNXの呼称をやめ、CAD側をDesigncenter、クラウド版をDesigncenter Xと呼ぶようになりました。Copilotの対象はクラウド版のDesigncenter X(旧Designcenter X NX)です。Solid Edge 2026のAI機能紹介では、CopilotはDesigncenter X Solid EdgeのStandard・Advanced・Premiumで使え、部品ファイルからの2D図面自動作成も入っています。Solid Edge 2027は10月28日に正式紹介の予定です。
PTCのCreo AI AssistantのFAQは、ドキュメントに基づいて答えるAdviseがCreo 13.4から一般提供、モデルを読むAssistは13.4.1.0で出荷され、一般提供はCreo+ 2027.1とCreo 2027.2の予定、ジオメトリを作るAutomateはベータ品質で出して2027年にかけて実装を進める、と書いています。Creo 12.4以前へのバックポートはありません。モデルに直接触れる機能ほど成熟が遅いのは、各社に共通する構図です。
2D汎用CADでは、GraebertのARES Commander 2027がA3で1つのプロンプトから要素の選択と変更までを行えるようにし、次に使いそうなコマンドを6件出すCommand Recommenderと、文章からシンボルを作るAI-Assisted Block Generationを載せています。BricsCAD V26のBLOCKIFYは同一の図形の集まりをブロック参照に変え、BIMIFYは分野の判定にAIを使うとBricsysのヘルプに書かれています。
ジェネレーティブデザインと生成AIの実装の違い
ここは誤解が集中します。ジェネレーティブデザインやトポロジー最適化は、自然言語からCADを生成する機能とは区別が必要です。内部のアルゴリズムは製品ごとに異なります。SOLIDWORKSのTopology StudyはSIMP法による有限要素ベースの数理最適化です。PTCは自社のジェネレーティブデザインを「AIと機械学習」で紹介していますが、中身として説明されているのはトポロジー最適化とシミュレーションの組み合わせです。LLMや機械学習を使う機能の例には、対話アシスタント(AURA/LEO、Copilot、Creo AI Assistant、A3)と、コマンド予測や分類・検出(BLOCKIFY、BIMIFY)があります。ソルバーが解くのは形状の最適化であって、設計要件の解釈ではありません。
生成AIによる3D形状の生成:text-to-CADの実力と限界
テキストから3D形状を出す試みは、使える段階に入っています。Zoo(旧KittyCAD)は人間が読めるCAD言語KCLと独自の3Dカーネルを組み合わせ、フィーチャーツリーを持つパラメトリックなモデルを作ります。text-to-CAD APIの出力形式にはSTEP・STL・OBJ・GLB・glTF・FBX・PLYが定義されており、Design Studio内の対話エージェントZookeeperはKCLのプロジェクトを生成・編集します。
限界はZoo自身が書いています。ZooのFAQは、Zookeeperが意図を取り違えたり、誤ったジオメトリや製造できない・安全でない設計を出したりすることがあると認め、物理試験や構造安全の保証、詳細な解析はできないと明記しています。アセンブリの合致、製造に使える2D図面、STEPからKCLへの変換はロードマップ上の項目です。料金はAPIが秒単位の従量課金で失敗した呼び出しは課金されず、Design Studioは無料プランにZookeeperの推論時間枠が付きます。金額と枠は料金ページで変わるので、使う前に確認してください。
GeminiやChatGPTでCADデータを扱う方法
手元の図面を生成AIに読ませて要約する場合、DWG・DXF・STEPを対応形式として挙げている汎用LLMはありません。そのうえで、実務で成り立つ経路は2つあります。図面をPDFや画像にして「絵」として読ませるか、DXFから必要な要素だけを抜き出して「データ」として渡すかです。
DWG・DXF・STEPのネイティブ対応とテキスト処理の違い
Gemini APIのドキュメント理解の説明は、TXT・Markdown・HTML・XMLなども渡せるが、document visionが意味のある形で理解するのはPDFだけで、他の形式は純粋なテキストとして扱われ、図や書式は失われると書いています。ChatGPTのアップロード対応形式も、文書はDOCX・PDF・TXT、表計算はXLSX・XLS・CSV・TSV、プレゼンテーションはPPTXが中心で、CAD形式は挙がっていません。DWGはバイナリなので、テキストとして渡しても中身は読めません。
DXF全文のトークン量と要約による削減の実測
ASCII形式のDXFはテキストとして扱えますが、DXFにはバイナリ形式もあります。以下ではASCII形式を測定します。どれだけの量になるかを、Python 3.12のezdxf 1.4.5で図面を作り、OpenAIのトークナイザーo200k_base(tiktoken 0.14.0)で数えました。Geminiのトークナイザーとは数え方が違うので、桁を見る目安です。
| DXF(R2018形式) | サイズ | トークン数 |
|---|---|---|
| 図形ゼロの空ファイル | – | 10,001 |
| 空ファイル(標準の線種・文字スタイル込み) | – | 35,541 |
| 板図面(外形・穴4・寸法2・文字1) | 58,881バイト | 38,345 |
| 同じ図面をezdxfで要約したJSON | 475バイト | 210 |
| 線と円 計2,000要素 | 222,759バイト | 150,614 |
| 線と円 計10,000要素 | 1,072,716バイト | 729,638 |
今回の検証用の板図面はモデル空間に8要素を持ち、標準の線種・文字スタイルと寸法表示用のブロックも含みます。38,345トークンのうち35,541トークンは図形ゼロの空ファイルでも出る分で、量の大半はヘッダーと定義表です。要素が増えると1要素あたり約70トークンずつ積み上がり、1万要素の図面は約73万トークンになりました。このDXFの約73万トークンはo200k_baseでの計数であり、GeminiのPDF処理とは計数方式が異なるため、PDFのページ数には換算できません。DXFを丸ごと貼る使い方は、量の面で破綻します。
ezdxfで要約してから渡す手順
現実的なのは、LLMに渡す前に図形・寸法・文字だけをJSONに抜き出すことです。次のコードをdxf_summary.pyとして保存し、対象DXFのパスを指定して実行します。検証用の板図面では210トークンになりました。LINEやARCの座標、単位、寸法の表示上書きは抽出せず、座標も小数第2位に丸めるため、汎用の図面再現や検図には使えません。
pip install ezdxf==1.4.5
python dxf_summary.py plate.dxf > summary.json
import json, sys
import ezdxf
def summarize(path):
doc = ezdxf.readfile(path) # DXFのみ。DWGは読めない
rows = []
for e in doc.modelspace():
t, layer = e.dxftype(), e.dxf.layer
if t == "LWPOLYLINE":
pts = [[round(x, 2), round(y, 2)] for x, y in e.get_points("xy")]
rows.append({"t": t, "layer": layer, "closed": e.closed, "pts": pts})
elif t == "CIRCLE":
c = e.dxf.center
rows.append({"t": t, "layer": layer, "c": [round(c.x, 2), round(c.y, 2)], "r": e.dxf.radius})
elif t == "DIMENSION":
m = e.get_measurement() # 座標寸法はVec3を返す
value = [round(v, 2) for v in m] if hasattr(m, "x") else round(m, 2)
rows.append({"t": t, "layer": layer, "value": value})
elif t in ("TEXT", "MTEXT"):
rows.append({"t": t, "layer": layer, "text": e.dxf.text if t == "TEXT" else e.text})
else:
rows.append({"t": t, "layer": layer})
return rows
print(json.dumps(summarize(sys.argv[1]), ensure_ascii=False, separators=(",", ":")))
出力は次のとおりです(円の3件目以降は省略)。寸法の値と表題の文字列が残るので、「穴の数と径を数えて」「材質は何か」といった問いには、この210トークンで答えられます。
[{"t":"LWPOLYLINE","layer":"OUTLINE","closed":true,"pts":[[0.0,0.0],[200.0,0.0],[200.0,100.0],[0.0,100.0]]},{"t":"CIRCLE","layer":"HOLE","c":[20.0,20.0],"r":5.0},...,{"t":"DIMENSION","layer":"DIM","value":200.0},{"t":"DIMENSION","layer":"DIM","value":100.0},{"t":"TEXT","layer":"TEXT","text":"PLATE-001 SS400 t=6"}]
DWGを渡すとezdxfは「is not a DXF file」で止まります。DWGはAutoCADでDXFに書き出すか、ezdxfのodafcアドオンから外部のODA File Converterを呼んで変換してから通してください。ブロック参照の中身や外部参照はこのスクリプトでは展開しないので、図面の作り方に合わせて分岐を足す必要があります。逆に、LLMにはezdxfやAutoCAD・FusionのAPIを使うスクリプトを書かせる方が向いており、実行と検証はこちらで行う、という分担が安全です。Geminiの基本操作はGeminiの使い方|バックグラウンド処理の停止・キャッシュクリア・マイク設定・呼び出し方【2026年10月】にまとめています。
図面をPDF・画像で読ませるときの解像度の上限
図面の「絵」を読ませる場合、Gemini APIはPDFを最大50MB・1,000ページまで受け付けますが、大きいページは縦横比を保ったまま最大3,072×3,072ピクセルに縮小されます。A1の大判図面を1ページのまま渡すと、細線や小さな寸法文字はこの解像度に押し込まれるので、寸法値の読み取りを信用してはいけません。表題欄・部品表・対象の投影図といった単位で領域を切り出し、抜き出したい項目(部品番号・材質・数量など)を指定して1領域ずつ渡し、元の図面と突き合わせるのが最低限の手順です。
Microsoft 365 CopilotとCAD内蔵アシスタントの対応範囲
Microsoft 365 CopilotがDWG・DXFを解釈する仕様は公開されていません。「copilot cad」で語られる実体の多くは、Designcenter XやSolid EdgeのCopilot、SOLIDWORKSのAURA/LEOのように、CADベンダーが自社製品に組み込んだアシスタントです。汎用のCopilotに図面ファイルを渡して編集させる使い方は成り立ちません。
紙図面のCAD化における文字認識・ベクタ化・3D化の対応範囲
図面OCRとラスタ→ベクタ変換
紙図面のデータ化は、手入力時間と変換後の修正時間を比較することで、導入効果を測定できます。Scan2CADは画像・PDFからDXF・DWG・G-codeへのベクタ変換を提供し、公式の料金表ではProが月払いで月89ドル、Businessが年1,599ドルです。バッチ変換とPython APIはBusinessだけに付きます。国内では手書きを含む文字のデータ化と類似図面検索を売りにするCADDi Drawerが代表格ですが、料金は非公開で問い合わせが前提です。
かすれ・線の重なり・手書き寸法に対する精度を数値で保証した公式資料は、確認できた範囲ではありません。PoCには自社で最も状態の悪い図面を必ず混ぜてください。きれいなサンプルだけで判断すると、本番で修正工数が跳ね上がります。文字認識の仕組みはAI-OCRとは?従来OCRとの違い・精度の実測と教育・自治体の導入事例、OSSで試すならTesseract OCRの使い方|インストール・日本語設定・コマンドとPython/C#連携【5.5.3対応】やdots.mocrとは?dots.ocrとの違いと日本語精度・vLLM導入手順【2026年10月】が参考になります。
2D図面から3Dモデルを起こすAIの現状
「2D図面を3D化するAI」を選ぶ際は、2D図面から立体を生成する機能と、既存の3Dモデルに編集履歴を付ける機能を区別する必要があります。Fusion AutoTimelineは3Dソリッドに履歴を付け直す機能で、2D図面からは作りません。SOLIDWORKSはLEOの説明に「旧データや取り込みデータを設計意図付きのパラメトリックモデルへ変換」と書いていますが、どのスキルがどの契約で使えるかまでは公式ページに書かれていません。三面図から立体を起こす用途は、まだ変換サービスや人手のモデリングが主力です。図面の状態(紙・スキャンPDF・ベクタPDF・DXF)と、3Dデータの行き先(見積・干渉確認・製造)を先に決めてから、ツールを当てるかどうかを判断してください。図面が無く、現物を3Dスキャンした点群からCADを起こす場合の工程は点群データのCAD化:メッシュ化・面フィッティングの処理フローとOpen3DでDXFを書き出す実装で解説しています。
機密図面をクラウドのAIに上げる前の確認点
図面は取引先の機密を含むことが多く、ここを確かめずにPoCを始めると後で止まります。Gemini APIの利用規約は、AI Studioや無料枠で送った内容と回答をGoogleが製品の改善に使い、人間のレビュアーが確認する場合があるとして、「本無料サービスには、プライベート情報、機密情報、または個人情報を送信しないでください」と書いています。Cloudの請求先アカウントを有効にすると、無料の範囲の利用も含めて有料サービスの扱いになり、プロンプトとファイルは改善に使われません。CAD側でも、AutoCADのMarkup Assistはクラウドで処理され、FusionのAssistantやSOLIDWORKSのAURA/LEOもクラウド接続が前提です。社外秘の図面で試すなら、契約区分ごとのデータの扱いを情報システム部門と先に確認してください。
無料枠でできるAI×CADの範囲
- Fusion Personal:年間売上1,000米ドル未満の個人による非商用利用に限り無償。Assistantの操作代行は月10トークンまでで、ジェネレーティブデザインは対象外です。
- Zoo Design Studio:無料で使え、無料プランにZookeeperの推論時間枠が付きます。text-to-CADの当たり外れを掴むには足ります。
- Onshape:AI AdvisorはGovernment以外の全プランで使えます。
- Jw_cad:最新版は2026年10月15日公開のVersion 10.03.7で、配布ページにAI機能の記載はありません。「Jw_cad×AI」の実体は、AIに書かせたDXFを開く、外部変形のスクリプトをAIに書かせる、といった間接的な組み合わせです。
無料枠でも、対象図面を絞れば出力の正誤や修正時間を記録できます。継続運用の判断には、利用上限と契約条件の確認も必要です。社内の図面規格や部品ライブラリに沿った出力が要る場合は、商用利用の可否、参照データの接続方法、処理量に応じて必要な契約を確認します。
CADオペレーターの業務とAI代替の実際
先に断っておくと、CADオペレーターという職種に絞ってAIによる代替を論じた日本の公的統計は確認できませんでした。CADベンダーの見解としては、SOLIDWORKSのAI製品ページが「AIは設計者やエンジニアを置き換えるか」という問いに「No」と答え、設計意図・検証・意思決定の責任はエンジニアに残るとしています。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」の「CADオペレーター」にも、AI代替の記述はありません。「AIに何割の仕事が奪われる」といった数字を見かけたら、出典を確かめてください。
確かなのは、機能単位で何が自動化されたかです。Smart Blocksは同じブロックを何十回も置く作業を、Markup Assistは赤入れを目で追って打ち直す作業を、各社の図面自動作成は3Dから2D図面を起こすレイアウト作業を削ります。どれも判断を伴わない反復作業に当たっています。設計意図の最終決定、法規適合の承認、製造現場との調整は人が担います。社内標準との照合などを支援する機能はあるため、支援機能の有無と最終判断の責任は分けて考える必要があります。Zooが製造できない設計を出しうると認めているとおり、出力を検証する役割はむしろ重くなります。
CADへのAI導入における作業時間・契約条件・検証データの判断基準
- ① 反復作業の時間を測る:赤入れ取り込み、ブロック配置、2D図面起こしに月何時間使っているかを先に測ります。削減対象が測れていない導入は、効果の検証もできません。
- ② ライセンスと接続要件を確かめる:Markup AssistはLT不可でクラウド必須、FusionのAssistantは月間トークン枠、ジェネレーティブデザインは有償でトークン課金、SOLIDWORKSのAURA/LEOはCloud Services付きの契約でトークン消費です。
- ③ 自社の最悪のデータで検証する:図面OCRもtext-to-CADも、きれいな入力での成功例は判断材料になりません。劣化した紙図面や曖昧な指示文で試し、修正工数まで含めて損益を出します。
要件から完成図面を生成させる、生成AIの出力を検図なしで下流に流す、DWGを直接LLMに読ませる前提でワークフローを組む。この3つは、2026年10月時点の製品仕様では裏付けが取れません。社内の図面データをezdxfやCADのAPIで要約し、LLMと組み合わせた仕組みを自社で組む場合は、生成AI開発・AI受託開発のように要件定義から検証まで外部と進める方法もあります。
よくある質問
AutoCADのAI機能はLTでも使えますか?
機能によって分かれます。Smart BlocksのPlacementとSearch and Convert、Autodesk Assistant(LT 2027)はLTでも使えますが、Smart BlocksのReplacement、Detect and Convert、Markup Import/Markup AssistはLTでは使えません。Activity InsightsはLTではVersion activityだけが表示されます。
CADのAI自動化を無料で試せますか?
範囲は限られます。Fusion Personalは年間売上1,000米ドル未満の個人の非商用利用に限られ、Assistantの操作代行は月10トークンまで、ジェネレーティブデザインは含まれません。Zoo Design Studioは無料プランにZookeeperの推論時間枠が付き、OnshapeのAI AdvisorはGovernment以外の全プランで使えます。
GeminiにCADデータ(DWG)を読み込ませることはできますか?
DWGはできません。Gemini APIのdocument visionが図表を含めて理解する文書形式はPDFです。テキスト文書も処理できますが、DWG・DXF・STEPのCAD形状をネイティブに解釈する対応は、この公式資料には記載されていません。ASCII形式のDXFはテキストとして渡せますが、今回の検証用図面(モデル空間に8要素)で約3.8万トークン、1万要素で約73万トークン(o200k_baseでの実測)になったため、ezdxfなどで寸法・文字・図形だけをJSONに要約してから渡すのが現実的です。
手書き図面をCAD化するAIはありますか?
あります。Scan2CADは画像・PDFからDXF・DWGへのベクタ変換とOCRを提供し、Proは月払いで月89ドル、バッチ変換とPython APIはBusiness(年1,599ドル)に付きます。ただし、かすれや手書き寸法への精度を数値で保証した公式資料は無いので、自社の状態の悪い図面で試してから判断してください。
CADオペレーターの仕事はAIに取られますか?
職種単位で代替を示した公的統計は確認できません。現在のAI機能が削るのは、ブロック配置、赤入れの打ち直し、3Dからの2D図面レイアウトといった判断を伴わない反復作業です。設計意図の決定、法規・社内規格との照合、出力の検証は人の作業として残り、検証の比重はむしろ増えます。