AutoCADとは?機能・便利コマンド一覧とAutoCAD 2027の新機能を解説

AutoCADはオートデスク社が1982年から提供しているCADソフトで、日本語では「オートキャド」と読みます。図面ファイルの標準形式であるDWGの本家であり、建築・土木・設備・機械・電気と業種を問わず作図の土台として使われています。この記事では、AutoCADの機能と基本操作を押さえたうえで、よく使うコマンドと作業時間を削る便利コマンド、AutoLISPによる自動化、2026年3月25日にリリースされたAutoCAD 2027の新機能と廃止機能、そして日本でAutoCAD LTの新規販売が終了した後の購入時の選択肢までを整理します。

まとめ

  • AutoCADはオートデスク社のCADソフト。DWG形式の図面を2D中心に作成・編集でき、Windows版・Mac版とWebブラウザ版がある。
  • 作業時間に直結するのはコマンドの数ではなく、画層・テンプレート・ブロック・外部参照という下地と、OVERKILLやQSELECTのような一括処理系のコマンド。
  • ショートカットは acad.pgp のエイリアス定義で自分用に付け替えられる。編集後は REINIT で再読み込みすれば再起動は不要。
  • 定型作業の自動化はAutoLISP(判断を伴う処理)とスクリプト .scr(決まった手順の連続実行)で役割が分かれる。AutoLISPはAutoCAD LT 2024以降でも動くが、VBAと.NET APIは通常版のみ。
  • AutoCAD 2027(2026年3月25日リリース)ではAutodesk AssistantがModel Context Protocol(MCP)に対応。ただしTech Preview 扱いで、MCPが使えるのはWindows版のみ。Geometry Cleanupは実務で効く一方、Web&Mobileへの保存やPSOUT(PostScript出力)は廃止された。
  • AutoCAD LTは日本では2021年6月6日に新規販売が終了している。これから買うなら通常のAutoCAD(または業種別ツールセットを含むエディション)が選択肢になる。既存のLT契約は更新して使い続けられる。

AutoCADの位置づけ:開発元・DWG・使われている業界

開発元と読み方、AutoCADが標準になった理由

AutoCADは1982年にオートデスク(Autodesk, Inc.)が発表したCADソフトです。読み方は「オートキャド」。当時のCADはミニコンやワークステーション上で動く高額なシステムでしたが、AutoCADはPC上で動いたことで一気に普及しました。

普及の結果として重要なのが、AutoCADのネイティブ形式であるDWGが事実上の業界標準になったことです。他社CADの多くがDWGの読み書きに対応しており、発注元から受け取る図面も、協力会社に渡す図面もDWGであることが多い。AutoCADを選ぶ理由は「機能が最も多いから」ではなく、「相手とファイルをやり取りできるから」という点が実務では大きく効きます。

CADデータ・CAD図面とは:DWGとDXFの違い

CADデータとは、線・円・文字・寸法といった図形要素を座標と属性の集合として保存したファイルを指します。紙の図面をスキャンした画像(ラスタ)と違い、要素ごとに長さ・画層・線種を持つため、後から数値として編集・計測・集計ができます。この編集可能な図面データがCAD図面です。

AutoCADで扱う主なファイル形式は次の2つです。

形式 位置づけ 主な用途
DWG AutoCADのネイティブ形式 通常の保存・編集
DXF 仕様が公開された交換用形式 他社CAD・自作プログラムとの受け渡し

DWGはバージョンごとに内部形式が変わるため、古いCADに渡す図面は「名前を付けて保存」でDWGのバージョンを下げて出力します。ダイナミックブロックのようなAutoCAD独自の情報はDWGでしか保持されません。プログラムから図面を読ませたい場合は、仕様が公開されているDXFのほうが扱いやすい。

業種別の用途:汎用CADゆえに専用ソフトと重ねて使う

AutoCADは特定業種に特化していない汎用CADです。建築の平面図・立面図、土木の造成図、設備の配管・ダクト図、機械の部品図、電気の単線結線図や制御盤図まで、2D図面であれば業種を問わず使えます。逆に言えば、専用の部品ライブラリや属性管理は標準では持ちません。建築のBIMならRevit、電気設計ならAutoCAD Electrical のように、業種別ツールセットや専用ソフトを重ねて使うのが一般的です。

AutoCADの主要機能:3D性能より画層・ブロック・外部参照で差がつく

機能を一覧で並べると膨大になりますが、日常業務で触るのは次の範囲にほぼ収まります。

  • 2D作図・編集:線分・円・ポリライン・スプラインの作図と、移動・複写・トリム・オフセット・フィレットなどの編集。AutoCADの中心。
  • 画層(レイヤ):要素を用途別に分類し、表示・印刷・線の太さをまとめて制御する。図面の管理単位。
  • ブロック:繰り返し使う部品を登録して挿入する。定義を更新すれば挿入済みのすべてに反映される。
  • 外部参照(Xref):他のDWGを参照として重ねる。共通の通り芯や下図を1ファイルで一元管理できる。
  • レイアウトとビューポート:モデル空間に実寸で描き、レイアウト(ペーパー空間)でビューポートの尺度と図面枠を決めて印刷する。
  • 3Dモデリング:ソリッド・サーフェス・メッシュを扱える。ただし本格的な3D設計はInventorやFusion、Revitの領域で、AutoCADの3Dは補助的な位置づけ。

製品選定の観点で注目すべきは3D性能ではなく、画層・ブロック・外部参照といった図面を大量に回すための管理機能です。作図速度の差はここで開きます。

注釈:文字スタイル・寸法スタイルと注釈尺度

文字・寸法・引出線をまとめて注釈と呼びます。実務でつまずきやすいのが尺度の扱いです。モデル空間には実寸で描くため、1/50の図面と1/100の図面で同じ高さの文字を配置すると、印刷時の文字サイズが2倍違ってしまいます。

これを避けるのが注釈尺度です。文字スタイル・寸法スタイル・マルチ引出線スタイルを「注釈方向に従う(注釈オブジェクト)」として定義し、印刷時の紙面上の高さ(たとえば2.5mm)を指定しておけば、ビューポートの尺度に応じてAutoCADが表示サイズを自動調整します。1つの注釈に複数の尺度を持たせられるので、同じ寸法を1/50と1/100の両方の図面に出すこともできます。文字スタイルと寸法スタイルはテンプレート(後述)に登録して標準化し、図面ごとに作り直さないのが前提です。

AutoCADのコマンド一覧:よく使う基本コマンドと便利コマンド

よく使う基本コマンドとエイリアス

AutoCADのコマンドはコマンドラインに名前を打ち込んで実行します。既定で1〜2文字の短縮名(コマンドエイリアス)が割り当てられており、日常の作図はこの短縮名だけでほぼ回せます。

エイリアス コマンド 動作
L LINE 線分
PL PLINE ポリライン
C CIRCLE
REC RECTANG 長方形
O OFFSET 平行複写
TR TRIM トリム
EX EXTEND 延長
M MOVE 移動
CO COPY 複写
MI MIRROR 鏡像
RO ROTATE 回転
SC SCALE 尺度変更
F FILLET フィレット
X EXPLODE 分解
H HATCH ハッチング
E ERASE 削除
LA LAYER 画層管理
B / I BLOCK / INSERT ブロック定義・挿入
DI DIST 2点間距離
Z ZOOM 画面表示の拡大縮小

作業時間を削る便利コマンド

基本コマンドは覚えるしかありませんが、作業時間を目に見えて縮めるのは、手作業を一括処理に置き換える次のコマンドです。既定のエイリアスがないものは、フルネームで打つか自分で割り当てます。

コマンド エイリアス 何を短縮するか
OVERKILL 重複線・重なり要素の一括削除
QSELECT 画層・色・種別による一括選択
MATCHPROP MA プロパティのコピー
LAYISO / LAYOFF 画層のアイソレート/非表示
PURGE PU 未使用要素の削除・ファイル軽量化
AUDIT / RECOVER 破損図面の検査・修復
DATALINK Excel表と図面表のリンク
PUBLISH 複数図面の一括印刷・PDF出力

OVERKILLは他社から受領した図面の掃除に、QSELECTは「特定画層の文字だけ全部選ぶ」といった手拾い作業の置き換えに効きます。開けないDWGが来たらまずRECOVERを試す、というのも覚えておくと復旧が早い。

ダイナミックブロックも便利機能として挙げられますが、パラメータの設計に手間がかかります。ブロックの種類が数個で済むなら通常ブロックを複数用意したほうが早い。属性やストレッチの組み合わせが多く、同じ部品を寸法違いで何十回も置くケースで初めて元が取れます。

ショートカットキーとエイリアスのカスタマイズ

キー 動作
F3 オブジェクトスナップの切替
F8 直交モードの切替
F12 ダイナミック入力の切替
Ctrl+1 プロパティパレット
Ctrl+3 ツールパレット
Ctrl+9 コマンドウィンドウの表示切替
Ctrl+Shift+C 基点を指定してコピー
Ctrl+Shift+V ブロックとして貼り付け
Shift+右クリック オブジェクトスナップの一時メニュー
Z → E 図面全体を表示(ホイールのダブルクリックでも可)

コマンドエイリアスは acad.pgp というテキストファイルで定義されています。「L, *LINE」のように短縮名とコマンド名を並べた形式で、自分がよく使うコマンドに1〜2文字を割り当てられます。編集後に REINIT コマンドを実行して「PGPファイル」を選べば、AutoCADを再起動せずに反映されます。既定のエイリアスを覚え直すより、使用頻度の高いコマンドを左手だけで打てる文字に寄せるほうが速くなります。

コマンドより先に整えるべき下地

ショートカットの練習より効果が大きいのは、テンプレート(.dwt)の整備です。画層・文字スタイル・寸法スタイル・図面枠・印刷スタイルを標準化したテンプレートを1つ作れば、新規図面のたびに発生する設定作業が消え、担当者が変わっても図面が揃います。頻用ブロックとコマンドをツールパレットに登録しておけば、コマンド名を覚えていないメンバーでも同じ手順で作図できます。属人的な速さより、テンプレートによる標準化のほうが組織単位では効きます。

繰り返し作業の自動化:AutoLISPとスクリプト

AutoLISPとスクリプトの使い分け

AutoLISPはAutoCADに標準搭載されたLisp系のプログラミング言語で、.lsp ファイルに記述してAPPLOADコマンドで読み込みます。図面から要素を検索して条件で処理を分けるような、判断を伴う処理に向きます。

; DIM画層の要素をすべて選択し、色をByLayerに戻す
(defun c:FIXCOLOR ( / ss )
  (setq ss (ssget "X" '((8 . "DIM"))))
  (if ss
    (command "_.CHPROP" ss "" "_C" "_ByLayer" "")
    (princ "\nDIM画層の要素がありません")
  )
  (princ)
)

ssget "X" は図面全体から条件に合う要素を拾うため、対象画層がロックまたはフリーズされているとCHPROPが失敗します。処理の前に画層のロックを解除するか、選択セットの作成条件を見直してください。

一方、スクリプト(.scr)は、コマンドラインに打つ内容を1行ずつ並べただけのテキストファイルです。分岐は書けませんが、「複数の図面を開いてPURGEして保存する」といった単純な一括処理はスクリプトのほうが短く済みます。判断が要るならAutoLISP、決まった手順の連続実行ならスクリプト、と分けて考えます。

AutoCAD LTでのAutoLISPと、VBA・.NETの選択

AutoLISPは長らく通常版だけの機能でしたが、AutoCAD LT 2024でLTにも搭載されました。既存の .lsp をLTで読み込んで実行できます。ただしVisual LISPの開発環境(VLIDE)はLTに含まれず、コードはテキストエディタで書くことになります。3Dや拘束など、そもそもLTに無い機能を呼び出すコードは当然動きません。

VBAと.NET APIはLTでは利用できず、通常版のみの機能です。VBAで「できること」は要素の作成・編集、属性やブロックの読み書き、Excel連携などAutoLISPと重なりますが、VBAモジュールは既定ではインストールされず別途導入が必要で、オートデスクも新規開発では.NETを推奨しています。これから自動化ツールを作るなら、AutoLISP(配布が簡単・図面担当者でも読める・LTでも動く)か.NET(大規模・外部システム連携向き)を選びます。PythonからはCOM経由で操作するか、AutoCADを起動せずDXFを直接読み書きするライブラリを使う方法があります。

AutoCAD 2027の新機能と廃止された機能

AutoCAD 2027は2026年3月25日にリリースされました。前バージョンからの変更で実務に影響が大きいものを挙げます。

Autodesk AssistantとMCP対応:任せてよい範囲

AutoCAD 2027では、Autodesk AssistantがModel Context Protocol(MCP)を利用するようになりました。MCPはAnthropicが2024年11月に公開した、AIと外部ツール・データをつなぐための標準プロトコルです(MCPの基本概念と仕組みを理解するための完全ガイドで詳しく解説しています)。Assistant側が「いま何の図面で何をしているか」を把握したうえで応答できるようになり、参照ファイルをアップロードして自社のCAD標準と図面を突き合わせ、規格違反を会話形式で洗い出すといった使い方が示されています。

ただし、MCPに対応したAutodesk AssistantはTech Preview 扱いで、MCPサーバーを利用できるのはWindows版のみです。Mac版はAssistant自体は使えるものの、MCP連携は対象外です。図面の正誤判断をAssistantに委ねるのは早い。使うなら、CAD標準のチェックのように人が最終確認する前提の一次スクリーニングに限定するのが妥当で、出力をそのまま成果物にする運用は避けるべきです。同じオートデスク製品でのMCP活用はFusion360 MCPサーバー完全ガイドが実装例として参考になり、設計領域のAI全般は建築・製造業界で注目されるAI搭載CAD・設計支援ツールにまとめています。

Geometry CleanupとFormaのCheckout

Geometry Cleanupは、線分の隙間・行き過ぎ(オーバーシュート)・届いていない線(アンダーシュート)・わずかな角度ズレといった不整合を検出し、修正候補を提示する機能です。GEOMETRYCLEANUPOPEN コマンド、またはリボンの「管理」タブから開けます。他社から受領した図面や、紙図面をトレースして起こした図面の品質チェックに効きます。

加えて、Forma Data Management Essentials がAutoCADのサブスクリプションに含まれるようになりました。目玉はCheckoutで、図面内の特定のオブジェクトを予約して編集し、変更を提案として反映できます。従来は1つのDWGを同時に触れないため外部参照で分割していた作業が、図面を割らずに並行できる可能性があります。

AutoCAD 2027で廃止された機能:PSOUT・MrSID・Web&Mobile保存

2027では削除された機能もあります。Web&Mobileへのファイル保存・読み込みの連携、MrSID画像の参照、PSOUT によるPostScriptファイル出力が使えなくなりました。PostScript出力を印刷フローに組み込んでいる場合や、MrSIDの航空写真を下図に使っている場合は、バージョンアップ前に代替手段を決めておく必要があります。廃止機能はバージョンごとに発生するため、更新前に公式のリリースノートを確認してください。

AutoCAD LTとの違いと、これから購入する場合の選択肢

AutoCAD LTは廉価版として長く使われてきましたが、日本ではオートデスクが2021年6月6日にLTの新規販売を終了しています(海外では販売が続いており、LT 2027も提供されています)。すでにLTを契約しているユーザーは更新を続けて使い続けられ、バージョンアップも提供されますが、日本でこれから新規に導入する場合にLTを選ぶことはできません。自動的にAutoCADへ移行するわけでもないため、乗り換えるなら既存契約を更新せずAutoCADを新規購入する形になります。

LTと通常版の主な機能差は次のとおりです。AutoLISPが使えるようになった一方、VBA・.NETや3Dの差は残っています。

機能 AutoCAD AutoCAD LT
2D作図・注釈・レイアウト
3Dモデリング・レンダリング 不可
AutoLISP 2024以降は可(VLIDE非搭載)
VBA / .NET API 不可
ダイナミックブロックの作成 挿入・利用のみ
ネットワークライセンス 不可
業種別ツールセット 上位エディションで可 不可

他CADとの比較では、DWGの互換性を最優先するならAutoCAD、建築の3D・属性情報まで扱うならRevit(BIM)、コストを抑えて2Dだけ描くならDWG互換の他社CADという整理になります。BIMデータを前提とした周辺ツールも増えており、たとえばライトニングフロー(Lightning Flow)はRevitのBIMモデルを取り込んで照明シミュレーションを行います。DWGを描くこと自体が目的なのか、その先のデータ活用が目的なのかで選ぶ製品は変わります。

よくある質問

AutoCADの読み方は?

「オートキャド」と読みます。CADはComputer Aided Design(コンピュータ支援設計)の略で、「キャド」と読みます。

AutoCADは無料で使えますか?

商用利用に無料版はありません。オートデスクは30日間の無償体験版を提供しており、学生・教職員は教育機関向けプランで教育目的に限り無償で利用できます。継続して業務で使う場合は年間または月間のサブスクリプション契約が必要です。

AutoCAD LTは今でも買えますか?

日本では2021年6月6日に新規販売が終了しており、新規契約はできません。すでに契約しているユーザーは更新して継続利用できます。新規に導入する場合は通常のAutoCAD、または業種別ツールセットを含むエディションを選びます。

AutoLISPやVBAはAutoCAD LTでも使えますか?

AutoLISPはAutoCAD LT 2024以降で使えます。ただし開発環境のVLIDEは搭載されず、3DなどそもそもLTに無い機能を呼ぶコードは動きません。VBAと.NET APIはLTでは使えず、通常版のみの機能です。

図面全体を画面に表示するショートカットは?

Z でZOOMコマンドを起動し、続けて E(図面範囲)を実行すると図面全体が表示されます。マウスホイールのダブルクリックでも同じ動作になります。

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