AutoCAD(オートキャド)はオートデスク社が1982年から提供しているCADソフトで、図面ファイルの標準形式であるDWGの本家です。この記事では、作業時間を削る便利機能を「選択」「受領図面の掃除」「文字と表」「数える・書き出す」の用途別に、AutoCAD LTで使えるかどうかを添えて整理します。続けてF1〜F12とCtrl系のショートカット、作図・修正・注釈・画層のコマンド一覧、「リボンが消えた」「複写が1回で終わる」といった困りごとの直し方、AutoLISPとスクリプトによる自動化、2026年3月25日リリースのAutoCAD 2027と7月の2027.1アップデートの変更点を、Autodesk公式ヘルプを根拠に扱います。
まとめ:AutoCADの便利機能・コマンド一覧と2027年版の要点
- 手数を一番減らすのは選択系の便利機能です。SELECTSIMILAR(類似オブジェクト選択)・QSELECT・ADDSELECTEDはAutoCAD LTでも使えます。
- 他社から受け取った図面は、OVERKILLで重複を消し、GEOMETRYCLEANUPOPENで隙間や行き過ぎを探し、PURGEで軽くする順で流すと漏れが減ります。
- ExcelはAutoCADの表として貼り付けられ、DATALINKでリンクも張れます。一方、アクションレコーダとDATAEXTRACTION(データ書き出し)はLTに無い機能です。
- ショートカットはF3(オブジェクトスナップ)とF8(直交)から覚えます。エイリアスは
acad.pgpの末尾に追記し、REINITで再起動せずに反映できます。 - リボンや画面の部品が消えたらCtrl+0、コマンドラインが消えたらCtrl+9を押します。複写が1回で終わるのは
COPYMODEが1になっているためです。 - AutoLISPはWindows版AutoCAD LT 2024以降でも動きますが、VBAと.NET API、画面なしの一括処理
accoreconsoleは通常版のみです。 - AutoCAD 2027はAutodesk AssistantのMCP対応(Tech Preview・Windows版のみ)とジオメトリのクリーンアップが目玉で、Web&Mobileからの読み込み・保存、PSOUT、MrSIDのアタッチは削除されました。日本ではLTの新規販売が2021年6月6日に終わっています。
AutoCADとは:オートデスクのCADソフトとDWG形式・業種別の用途
開発元と読み方、DWGが業界標準になった経緯
AutoCADは1982年にオートデスク(Autodesk, Inc.)が発表したCADソフトで、読み方は「オートキャド」です。当時のCADはミニコンやワークステーションで動く高額なシステムでしたが、AutoCADはPC上で動いたことで一気に広まりました。その結果、ネイティブ形式のDWGが事実上の業界標準になり、他社CADの多くがDWGの読み書きに対応しています。実務でAutoCADが選ばれる理由は機能の多さより、発注元や協力会社と同じ形式でファイルをやり取りできる点にあります。
CADデータ・CAD図面とは:DWGとDXFの違いと使い分け
CADデータとは、線・円・文字・寸法といった図形要素を座標と属性の集合として保存したファイルです。紙図面をスキャンした画像と違い、要素ごとに長さ・画層・線種を持つため、後から数値として編集・計測・集計できます。この編集できる図面データがCAD図面です。
| 形式 | 位置づけ | 主な用途 |
|---|---|---|
| DWG | AutoCADのネイティブ形式 | 通常の保存・編集 |
| DXF | 仕様が公開された交換用形式 | 他社CAD・自作プログラムとの受け渡し |
DWGは版ごとに内部形式が変わるため、古いCADに渡す図面は「名前を付けて保存」で保存形式の版を下げます。プログラムで図面を読ませるなら、仕様が公開されたDXFのほうが扱いやすくなります。図面が何百枚にも増えた段階の版管理や検索は図面管理システムとは?CAD図面の版管理・検索・配布と導入判断で扱っています。
業種別の用途:汎用CADにBIMや業種別ツールセットを重ねる
AutoCADは業種に特化しない汎用CADで、建築の平面図、土木の造成図、設備の配管・ダクト図、機械の部品図、電気の単線結線図まで2D図面なら業種を問いません。専用の部品ライブラリや属性管理は標準では持たないため、建築ならRevit、電気ならAutoCAD Electricalのように業種別ツールセットや専用ソフトを重ねるのが一般的です。2D図面とBIMの違いはBIMとは?CADとの違いからBIM図面審査・補助金まで、設計後工程の解析ソフトとの分担はCAEとは?解析種別の分類とCAD/CAMの役割分担にまとめています。
AutoCADの便利機能:手作業を一括処理に置き換えるコマンドとLTでの可否
基本の作図コマンドは覚えるしかありませんが、作業時間を目に見えて縮めるのは「1つずつ手で選ぶ・直す・数える」作業を置き換える機能です。用途別に並べ、LTで使えるかを先に示します(AutoCAD 2027/AutoCAD LT 2027の公式ヘルプで確認)。
| 用途 | コマンド | AutoCAD | LT |
|---|---|---|---|
| 同じ種類をまとめて選ぶ | SELECTSIMILAR / QSELECT | 可 | 可 |
| 同じ設定で新しく描く | ADDSELECTED | 可 | 可 |
| 重複線の削除 | OVERKILL | 可 | 可 |
| 隙間・行き過ぎの検出 | GEOMETRYCLEANUPOPEN | 2027以降 | 2027以降 |
| 文字の位置合わせ | TEXTALIGN | 可 | 可 |
| ブロックの個数を数える | COUNT | 2022以降 | 2022以降 |
| 属性・数量を表やCSVへ | DATAEXTRACTION | 可 | 不可 |
| 操作を記録して再生 | アクションレコーダ | 可 | 不可 |
選択を速くする:SELECTSIMILAR・QSELECT・ADDSELECTED
SELECTSIMILAR(類似オブジェクト選択)は、1つ選んだ図形とプロパティが一致する図形を図面全体から拾って選択セットに加えます。右クリックメニューの「類似オブジェクトを選択」でも同じ動作です。何を一致とみなすかは[設定(SE)]オプションで色・画層・ブロック名などから選べるため、「この画層の文字だけ」「このブロックだけ」を数クリックで掴めます。条件を細かく組み合わせたいときはQSELECT(クイック選択)でフィルタを書きます。
ADDSELECTED(選択オブジェクト追加)は逆方向の機能で、選んだ図形と同じ種類・同じ一般プロパティ(色・画層など)を持つ新しい図形を描き始めます。円を選べば、色と画層は引き継がれ、新しい円の中心と半径だけを指定します。画層を切り替えてから描く手順が丸ごと消えます。
受領図面を掃除する:OVERKILL・GEOMETRYCLEANUPOPEN・PURGE・RECOVER
他社から受け取った図面は、重なった線や微妙に届いていない線が混ざっています。OVERKILL(重複オブジェクト削除)で重なりを消し、AutoCAD 2027で加わったGEOMETRYCLEANUPOPEN(ジオメトリのクリーンアップ)で隙間・オーバーシュート・アンダーシュート・角度のずれを洗い出し、最後にPURGEで未使用の画層やブロック定義を削除します。役割が違うので、片方だけでは漏れが残ります。開けないDWGが届いたときは、まずRECOVERを試します。
文字と表を揃える:TEXTALIGN・Excel表の貼り付け・DATALINK
TEXTALIGN(文字列位置合わせ)は、複数の文字を基準の文字に合わせて縦・横・斜めに整列させます。注記を1つずつ移動して揃える作業がなくなります。
Excelの表は、セル範囲をコピーしてAutoCADの[形式を選択して貼り付け]で[AutoCAD 図形](英語版のAutoCAD Entities)を選ぶと、AutoCADの表オブジェクトとして貼り付けられます(Autodeskサポート記事)。Excel側の変更を図面へ反映し続けたいなら、DATALINK(データリンクマネージャ)でExcelデータリンクを作ってから表を挿入します。機器表や建具表のように、図面の外で更新される一覧はリンクにしておくと転記ミスが消えます。
数える・書き出す:COUNT・DATAEXTRACTION・PUBLISH
COUNT(カウント)はAutoCAD 2022とAutoCAD LT 2022で入った機能で、選んだブロックが図面内に何個あるかを数えてハイライトします。照明器具やコンセントの個数確認なら、これで足ります。2027.1アップデートでは、カウント範囲の端に置かれたブロックを数え漏らす不具合が修正されました(AutoCAD 2027.1の修正内容)。
ブロックの属性値や数量を表・CSVにまとめるDATAEXTRACTION(データ書き出し)は通常版のみで、AutoCAD LTでは「不明なコマンド」になるとAutodeskサポートが説明しています。LTで数量表を作るならCOUNTの結果を表に起こすか、通常版を1ライセンス置くかの判断になります。複数図面の印刷とPDF出力はPUBLISH(パブリッシュ)でまとめて流します。
AutoCADのショートカットキー:F1〜F12とCtrl系、acad.pgpの書き換え
ファンクションキーF1〜F12の割り当て一覧と覚える順番
| キー | 動作 |
|---|---|
| F1 | ヘルプ |
| F2 | コマンド履歴(テキストウィンドウ)の表示 |
| F3 | オブジェクトスナップ |
| F4 | 3Dオブジェクトスナップ(LTはTABMODE) |
| F5 | 等角図平面の切り替え |
| F6 | ダイナミックUCS(AutoCADのみ) |
| F7 | グリッド表示 |
| F8 | 直交モード |
| F9 | スナップモード |
| F10 | 極トラッキング |
| F11 | オブジェクトスナップトラッキング |
| F12 | ダイナミック入力 |
覚える順番はF3とF8が先です。スナップと直交の切り替えは作図中に何度も触るため、ここがマウス操作のままだと他を覚えても速くなりません。次にF10とF12を覚えます。F4・F6は3D作業をしないなら触らなくて構いません。
Ctrl系ショートカットと画面操作
| キー | 動作 |
|---|---|
| Ctrl+1 | プロパティパレット |
| Ctrl+3 | ツールパレット |
| Ctrl+9 | コマンドウィンドウの表示切替 |
| Ctrl+0 | フルスクリーン表示の切替 |
| Ctrl+Shift+C | 基点を指定してコピー |
| Ctrl+Shift+V | ブロックとして貼り付け |
| Shift+右クリック | オブジェクトスナップの一時メニュー |
| Z → E | 図面全体を表示(ホイールのダブルクリックでも可) |
Ctrl+Shift+Cは、別の図面へ貼ったときの位置を基点で合わせられるので、通常のCtrl+Cより手直しが減ります。Ctrl+9とCtrl+0は、誤って押して画面が変わったときの戻し方として覚えておきます(次の章で扱います)。
acad.pgpでエイリアスを自分用に追加しREINITで反映する手順
コマンドエイリアスはプログラムパラメータ(PGP)ファイルで定義されています。AutoCADでは acad.pgp、AutoCAD LTでは acadlt.pgp です。Autodesk公式ヘルプ「コマンドのエイリアスを管理するには」によると、Windows版では「管理」タブ→「カスタマイズ」パネル→「エイリアスを編集」で開けます。ファイルはAppData配下の Roaming\Autodesk\<製品名>\<リリース>\<言語>\Support にあります。
同ヘルプは、既存の行を書き換えず、ファイル末尾の「User Defined Command Aliases」セクションに追記する方法を勧めています。後に書かれた定義が優先して読み込まれるため、既定の行を残したまま上書きできるからです。
; -- User Defined Command Aliases --
; 書式は「エイリアス, *コマンド名」。先頭のセミコロンはコメント行
SS, *SELECTSIMILAR
OK, *OVERKILL
QS, *QSELECT
LI, *LAYISO
LU, *LAYUNISO
GC, *GEOMETRYCLEANUPOPEN
保存したらコマンドラインで REINIT を実行し、「再初期化」ダイアログで「PGPファイル」にチェックを入れてOKを押します。再起動は不要です。上の例はLIを既定のLIST(情報表示)からLAYISOへ付け替えているので、LISTを使うときは LIST とフルネームで打ちます。GCのGEOMETRYCLEANUPOPENは2027で追加されたコマンドなので、2026以前では動きません。反映されないときは、編集したファイルが実際に読み込まれている acad.pgp と同じかを、オプションの「サポートファイルの検索パス」で確かめてください。
AutoCADのコマンド一覧:作図・修正・注釈・画層の早見表
コマンドはコマンドラインに名前か、既定の acad.pgp に定義された1〜3文字のエイリアスを打って実行します。日本語版でも英語のコマンド名とエイリアスがそのまま通ります。
作図コマンド一覧:線分・ポリライン・円・ハッチング
| エイリアス | コマンド | 動作 |
|---|---|---|
| L | LINE | 線分 |
| XL | XLINE | 構築線(補助線) |
| PL | PLINE | ポリライン |
| POL | POLYGON | 正多角形 |
| REC | RECTANG | 長方形 |
| A | ARC | 円弧 |
| C | CIRCLE | 円 |
| EL | ELLIPSE | 楕円 |
| SPL | SPLINE | スプライン曲線 |
| H | HATCH | ハッチング |
| B | BLOCK | ブロック定義 |
| I | INSERT | ブロック挿入 |
| DIV | DIVIDE | 等分割の点を配置 |
| ME | MEASURE | 指定間隔で点を配置 |
最初はL・PL・C・REC・Hの5つで足ります。XLは通り芯や基準線に、DIVとMEは照明器具や杭を等間隔に並べる下準備に使います。
修正コマンド一覧:複写・オフセット・トリム・フィレット
| エイリアス | コマンド | 動作 |
|---|---|---|
| E | ERASE | 削除 |
| M | MOVE | 移動 |
| CO / CP | COPY | 複写 |
| MI | MIRROR | 鏡像 |
| O | OFFSET | 平行複写 |
| AR | ARRAY | 配列複写 |
| RO | ROTATE | 回転 |
| SC | SCALE | 尺度変更 |
| S | STRETCH | ストレッチ |
| TR | TRIM | トリム |
| EX | EXTEND | 延長 |
| BR | BREAK | 部分削除 |
| J | JOIN | 結合 |
| F | FILLET | フィレット(角の丸め・接続) |
| CHA | CHAMFER | 面取り |
| X | EXPLODE | 分解 |
| PE | PEDIT | ポリライン編集 |
| LEN | LENGTHEN | 長さ変更 |
| AL | ALIGN | 位置合わせ |
FILLETを半径0で実行すると、2本の線を角でぴったり接続できます。トリムと延長を往復するより手数が減ります。EXPLODEはブロックや寸法を線に戻してしまうため、受領図面の整理以外では使わないほうが後の修正が楽です。
注釈コマンド一覧:文字・寸法・引出線・表
| エイリアス | コマンド | 動作 |
|---|---|---|
| T / MT | MTEXT | マルチテキスト |
| DT | TEXT | 1行文字 |
| ED | TEXTEDIT | 文字の編集 |
| ST | STYLE | 文字スタイル管理 |
| (なし) | DIM | 寸法の種類を自動判別して記入 |
| DLI | DIMLINEAR | 長さ寸法 |
| DAL | DIMALIGNED | 平行寸法 |
| DAN | DIMANGULAR | 角度寸法 |
| DRA | DIMRADIUS | 半径寸法 |
| D | DIMSTYLE | 寸法スタイル管理 |
| MLD | MLEADER | マルチ引出線 |
| TB | TABLE | 表の挿入 |
寸法はDIMLINEARなどを使い分けるより、DIMコマンド1つで対象にカーソルを合わせて種類を選ばせるほうが手数が減ります。文字と寸法の見た目はSTとDのスタイルで決まるため、個々の文字を直す前にスタイルを揃えます。
画層・プロパティ・表示・照会のコマンド一覧
| エイリアス | コマンド | 動作 |
|---|---|---|
| LA | LAYER | 画層管理 |
| MA | MATCHPROP | プロパティのコピー |
| PR / CH | PROPERTIES | プロパティパレット |
| LT | LINETYPE | 線種管理 |
| LTS | LTSCALE | 線種尺度 |
| Z | ZOOM | 拡大縮小 |
| P | PAN | 画面移動 |
| RE | REGEN | 再作図 |
| DI | DIST | 2点間距離 |
| MEA | MEASUREGEOM | 距離・半径・角度・面積の計測 |
| AA | AREA | 面積 |
| LI | LIST | 図形の情報表示 |
| XR | XREF | 外部参照パレット |
| PU | PURGE | 未使用要素の削除 |
| OP | OPTIONS | オプション |
受領図面の線種が実線に見えるときはLTSで線種尺度を、面積の拾い出しにはAAかMEAを使います。図面上の数量の集計をどこまで自動化できるかは積算AIとは?図面の数量拾いを自動化できる範囲と精度限界で検討しています。
困ったときに効く設定:リボン消失・連続複写・OVERKILLで消えない線・自動調整寸法
検索で多いのは、新しいコマンドより「いつもと動きが違う」ときの戻し方です。どれもシステム変数か1つのキー操作で直ります。
リボン・コマンドライン・メニューバーが消えたときの戻し方
リボンとパレットがまとめて消えた場合は、たいていCtrl+0でフルスクリーン表示に入っています。公式ヘルプのフルスクリーン表示の説明のとおり、この状態ではリボン・ツールバー・パレットが隠れ、コマンドウィンドウとステータスバーは残ります。もう一度Ctrl+0を押すか、CLEANSCREENOFF で元に戻ります。リボンだけが無いなら RIBBON、コマンドラインが無いならCtrl+9、旧来のプルダウンメニューを出したいならシステム変数 MENUBAR を1にします。
複写が1回で終わる・終わらない:COPYMODEの切り替え
COPYで1つ置くたびにコマンドが終わってしまう場合は、システム変数 COPYMODE を確認します。公式ヘルプのCOPYMODEでは、0が連続複写(初期値)、1が1回だけの複写です。値はレジストリに保存されるため、一度変えると別の図面にも効きます。他人のPCや古い設定を引き継いだ環境で挙動が違うのはこのためです。
OVERKILLで重複線が消えないときに見る設定
OVERKILLは既定で、プロパティが異なる図形を重複とみなしません。画層や色、線の太さが違うだけで重なった線は残ります。[重複オブジェクトを削除]ダイアログの[次のオブジェクトプロパティを無視]で画層や色にチェックを入れると消えるようになります。座標がわずかにずれている線は、ずれが[許容値]を超えると重複とみなされません(0にすると完全一致だけが対象)。許容値を大きくしすぎると別の線までまとめて消えるため、受領図面では小さい値から少しずつ上げ、結果をLISTで確かめます。
寸法の自動調整を解除する:DIMASSOCとDIMDISASSOCIATE
図形を動かすと寸法が勝手に追従する、あるいは追従しない、という違いは「自動調整寸法」かどうかで決まります。システム変数DIMASSOCは、0が分解された寸法、1が非自動調整寸法、2(初期値)が自動調整寸法です。これから記入する寸法を追従させたくないなら1にします。記入済みの寸法は DIMDISASSOCIATE で選んで解除し、逆に関連付け直すときは「寸法自動調整再割り当て」(DIMREASSOCIATE)を使います。
AutoCADの主要機能:画層・ブロック・外部参照と注釈尺度・テンプレート
機能を一覧にすると膨大ですが、日常業務で触るのは次の範囲にほぼ収まります。
- 2D作図・編集:線分・円・ポリラインの作図と、移動・複写・トリム・オフセットなどの編集です。
- 画層(レイヤ):要素を用途別に分け、表示・印刷・線の太さをまとめて制御する図面の管理単位です。
- ブロック:繰り返し使う部品を登録して挿入する仕組みです。定義を直せば挿入済みのすべてに反映されます。
- 外部参照(Xref):他のDWGを参照として重ね、通り芯や下図を1ファイルで一元管理します。
- レイアウトとビューポート:モデル空間に実寸で描き、レイアウトでビューポートの尺度と図面枠を決めて印刷します。
- 3Dモデリング:ソリッド・サーフェス・メッシュを扱えますが、本格的な3D設計はInventorやRevitの領域です。
製品を比べるときに見るべきは3D性能より、画層・ブロック・外部参照といった図面を大量に回すための管理機能です。作図速度の差はここで開きます。
注釈尺度の設定:1/50と1/100で文字と寸法を共用する方法
モデル空間には実寸で描くため、1/50と1/100の図面に同じ高さの文字を置くと、印刷時の文字サイズが2倍違ってしまいます。これを避けるのが注釈尺度です。文字スタイル・寸法スタイル・マルチ引出線スタイルを「異尺度対応」にし、紙面上の高さ(たとえば2.5mm)を指定しておけば、ビューポートの尺度に応じて表示サイズが自動で変わります。1つの注釈に複数の尺度を持たせられるので、同じ寸法を1/50と1/100の両方の図面に出せます。
テンプレート.dwtとツールパレットで作図を標準化する
ショートカットの練習より効くのがテンプレート(.dwt)の整備です。画層・文字スタイル・寸法スタイル・図面枠・印刷スタイルを1つのテンプレートに固めれば、新規図面のたびの設定作業が消え、担当者が変わっても図面が揃います。頻用ブロックとコマンドをツールパレット(Ctrl+3)に登録すれば、コマンド名を知らないメンバーも同じ手順で描けます。個人の速さより、組織で効くのはこちらです。
繰り返し作業の自動化:アクションレコーダ・AutoLISP・スクリプト・VBA
アクションレコーダで操作を記録して再生する(通常版のみ)
アクションレコーダは、コマンド操作を記録してアクションマクロ(.actm)として保存し、ボタン1つで再生する機能です。プログラムを書かずに定型作業をまとめられますが、AutoCAD LTにはありません(オプションの[ファイル]タブでも「アクションレコーダの設定」は「AutoCAD LTでは使用できません」と明記)。記録した操作をそのまま繰り返すだけで分岐は持てないため、条件で処理を変えたくなった時点でAutoLISPへ移ります。
AutoLISPで指定画層の色をByLayerに戻す独自コマンドを作る
AutoLISPはAutoCADに標準搭載されたLisp系の言語で、.lsp ファイルに書いてAPPLOADコマンドで読み込みます。図面から要素を探して条件で処理を分けるような、判断を伴う処理に向いています。次のコードを読み込むと FIXCOLOR というコマンドが使えるようになります。
; DIM画層の要素をすべて選択し、色をByLayerに戻す
(defun c:FIXCOLOR ( / ss )
(setq ss (ssget "X" '((8 . "DIM"))))
(if ss
(command "_.CHPROP" ss "" "_C" "BYLAYER" "")
(princ "\nDIM画層の要素がありません")
)
(princ)
)
ssget "X" は図面全体から条件に合う要素を拾うため、対象画層がロックされていると、その画層の図形の色は変わりません。先にロックを解除してください。コマンド名の _. は、日本語版でも英語のコマンド名として解釈させ、再定義されたコマンドを避けるための接頭辞です。
スクリプト.scrとaccoreconsoleで複数図面を一括処理する
スクリプト(.scr)は、コマンドラインに打つ内容を1行ずつ並べただけのテキストファイルです。分岐は書けませんが、「開いてPURGEして保存する」程度の一括処理ならAutoLISPより短く済みます。判断が要るならAutoLISP、決まった手順の連続ならスクリプト、と分けます。PURGEは入れ子の未使用要素を残すことがあるため2回流しています。
_.-PURGE _A * _N
_.-PURGE _A * _N
_.AUDIT _Y
_.ZOOM _E
_.QSAVE
開いている図面にはSCRIPTコマンドで流せます。フォルダ内の全図面に流すなら、通常版AutoCADに含まれる画面なしの実行環境 accoreconsole.exe をPowerShellから呼びます。
# フォルダ内の全DWGに cleanup.scr を順に適用する(通常版AutoCADのみ。LTには含まれない)
$core = "C:\Program Files\Autodesk\AutoCAD 2027\accoreconsole.exe"
Get-ChildItem "D:\drawings\*.dwg" | ForEach-Object {
& $core /i $_.FullName /s "D:\scripts\cleanup.scr"
}
上書き保存を含むので、本番の図面フォルダに流す前に必ずコピーで試してください。インストール先は版とエディションで変わるため、手元で accoreconsole.exe の場所を確かめてから書き換えます。
AutoCAD LTのAutoLISP対応と、VBAでできること・選定基準
AutoLISPは長く通常版だけの機能でしたが、AutoCAD LT 2024でLTにも搭載されました。Autodesk公式ヘルプ「AutoLISPの新機能または変更点」には、Windows版AutoCAD LTでAutoLISPとDCLがサポートされたこと、Visual LISPの統合開発環境(VLIDE)はLTで使えないことが書かれています。vlax-create-object のように外部のオートメーションライブラリを呼ぶ関数や、3DソリッドなどLTに無いオブジェクトを扱う関数も動きません。同じ .lsp を両方に配るなら、システム変数 PROGRAM が "acadlt" を返すかで分岐させます。
VBAでできることは、図形の作成・編集、ブロックや属性の読み書き、Excelとの連携などで、AutoLISPと大きく重なります。ただしVBAと.NET APIは通常版のみで、VBAモジュールは既定でインストールされず別途の導入が必要です。これから作るなら、配布が簡単でLTでも動くAutoLISPか、外部システムとつなぐ大規模な処理向きの.NETを選びます。PythonからはCOM経由で操作するか、AutoCADを起動せずDXFを直接読み書きするライブラリを使う方法があります。
AutoCAD 2027の新機能と廃止機能:2027.1アップデートと移行時の確認事項
AutoCAD 2027は2026年3月25日にリリースされ、7月27日に2027.1アップデートが出ています。実務に影響が大きい変更を挙げます。
Autodesk AssistantのMCP対応と任せる範囲
AutoCAD 2027では、Autodesk AssistantがModel Context Protocol(MCP)を使うようになりました(Autodesk開発者ブログ)。インストール時に製品組み込みのローカルMCPサーバーが入り、Assistantはそれを通じて操作を実行します。MCPはAnthropicが2024年11月に公開した、AIと外部ツール・データをつなぐ標準プロトコルです(仕組みはMCPとは?AIと外部連携する標準規格の仕組み・APIとの違いで解説)。Assistantが開いている図面の文脈を踏まえて応答でき、社内のCAD標準と図面を突き合わせて違反を洗い出す使い方が示されています。2027.1ではオブジェクトの数え上げ、選択内容を踏まえた分析、文脈に応じた単位の報告が強化されました(AutoCAD 2027の新機能と変更点)。
ただし、MCPに対応したAssistantはTech Preview扱いで、MCPを使えるのはWindows版のみです。図面の正誤判断を委ねるのはまだ早く、使うならCAD標準のチェックのような人が最終確認する前提の一次スクリーニングに限るべきです。オートデスク製品のMCP連携はFusion 360 MCPの使い方と公式MCPサーバーの接続手順が実装例になり、設計領域のAI全般はCADのAIで何ができるか|搭載機能と生成AIの限界にまとめています。
ジオメトリのクリーンアップとチェックアウトによる共同編集
ジオメトリのクリーンアップ(GEOMETRYCLEANUPOPEN)は、線の隙間・オーバーシュート・アンダーシュート・角度のずれを検出して修正候補を出す機能で、AutoCADとLTの両方にあります。OVERKILLが「重なった線を消す」のに対し、こちらは「つながっていない線を見つける」役割です。
チェックアウトは、他のメンバーが図面を開いている間に、特定のオブジェクトを予約して編集し、変更を送って取り込みを判断してもらう機能です。同梱されたForma Data Management Essentialsの上で動き、2027の新コマンド一覧ではAutoCADのみの対応です(LTには無い)。2027.1では読み取り専用の図面もチェックアウトで開けるようになり、シートセットマネージャで複数シートのプロパティをまとめて編集する機能、ポリラインの始点・終点グリップの[長さ変更]も加わりました。
AutoCAD 2027の廃止機能と代替手段
同じ新機能ページに、削除された機能も載っています。「Webおよびモバイルから開く/保存」と共有ビューは削除され、代わりにForma Data Managementを使います。MrSID形式の画像はアタッチできなくなり、別形式で保存し直す必要があります。PSOUT(PS書き出し)も削除され、PostScriptが要る場合はPC3ファイルで出力を設定します。MrSIDについては、形式の提供元のLizardTechがAutoCAD 2027向けMrSIDプラグインのベータ版を公開しています(2026年10月時点)。航空写真を下図に使っている、印刷フローにPostScriptを組み込んでいる、という場合は更新前に代替手段を決めておきます。
AutoCAD LTとの違いと、日本でこれから購入する場合の選び方
AutoCAD LTは廉価版として長く使われてきましたが、日本ではオートデスクが2021年6月6日にLTの新規販売を終了しています(海外では販売が続き、LT 2027も提供されています)。日本向けには、従来のLTに近い価格帯で通常版の機能を持つ「AutoCAD」と、業種別ツールセットを含む「AutoCAD Plus」の構成に改められました。既存のLT契約は更新して使い続けられますが、自動でAutoCADに切り替わるわけではありません。
| 機能 | AutoCAD | AutoCAD LT |
|---|---|---|
| 2D作図・注釈・レイアウト | 可 | 可 |
| 3Dモデリング・レンダリング | 可 | 不可 |
| AutoLISP | 可 | 2024以降は可(VLIDEなし) |
| VBA / .NET API | 可 | 不可 |
| accoreconsoleによる一括処理 | 可 | 不可 |
| アクションレコーダ | 可 | 不可 |
| データ書き出し(DATAEXTRACTION) | 可 | 不可 |
| ダイナミックブロックの拘束の定義 | 可 | 不可(パラメータ・アクションは可) |
| 業種別ツールセット | AutoCAD Plusで可 | 不可 |
ライセンス形態にも注意が要ります。複数人で1本を融通し合うマルチユーザー(ネットワーク)のサブスクリプションは、Autodeskの廃止製品一覧で2020年8月7日に新規販売終了、2023年2月6日に廃止とされています。現在の契約は利用者を指名するシングルユーザーが基本なので、「台数より利用者数」で本数を数えます。
他CADとの比較では、DWGの互換性を最優先するならAutoCAD、建築の3Dと属性情報まで扱うならRevit(BIM)、2Dだけを安く描くならDWG互換の他社CAD、という整理になります。BIMモデルを前提とした周辺ツールも増えており、ライトニングフロー(Lightning Flow)はRevitのBIMモデルを取り込んで照明シミュレーションを行います。
コマンド習得と自動化への投資判断:覚える範囲と外部開発を検討する条件
コマンド一覧を全部覚える必要はありません。判断の目安は次の3段階です。
- 覚えるだけで済む範囲:作図・修正の表のエイリアス、F3・F8・Ctrl+1、それにSELECTSIMILAR。1日に数枚描く担当者なら、ここで作図速度はほぼ頭打ちになります。
- 自分たちで自動化すべき範囲:同じ手順を週に何十回も繰り返す作業。acad.pgpの追記、テンプレート、スクリプト、数十行のAutoLISPで足ります。社内に1人でもLISPを読める人がいれば、外に頼む理由はありません。
- 外部開発を検討する範囲:図面から拾った数量を見積・発注・工事台帳へ流す、図面の版と案件情報を紐づけて管理する、といったAutoCADの外にあるシステムとつなぐ処理。AutoLISPの守備範囲を超え、.NETやDXFの解析、業務システム側のデータ設計が要ります。
逆に、コマンドの手数を減らす目的だけで.NETのアドインを外注するのは過剰です。スクリプトとLISPで済む作業にアドインを作ると、AutoCADの版が上がるたびに再ビルドと動作確認の費用がかかります。投資してよいのは、図面データを業務の別の工程で再利用する設計が先にある場合だけです。図面と工事台帳・実行予算・協力会社管理をつなぐ仕組みを検討しているなら、建設業向けシステム開発で既存のCAD運用を前提にした連携範囲から相談できます。
よくある質問
AutoCADで一番効く便利機能はどれですか?
手数の削減幅が大きいのはSELECTSIMILAR(類似オブジェクト選択)です。1つ選ぶだけで、同じ画層や同じブロックの図形を図面全体からまとめて選べます。AutoCADとAutoCAD LTのどちらでも使えます。
AutoCADのリボンが消えたときはどうすればいいですか?
リボンとパレットが一緒に消えたならCtrl+0でフルスクリーン表示に入っているので、もう一度Ctrl+0を押します。リボンだけが無い場合はコマンドラインに RIBBON と打ちます。コマンドラインが消えた場合はCtrl+9です。
AutoCADは無料で使えますか?
業務で使える無料版はありません。オートデスクは15日間の無償体験版(日本の公式サイトの表記)を提供しており、学生・教職員は教育機関向けプランで教育目的に限り無償で使えます。業務で使い続けるには年間または月間のサブスクリプション契約が必要です。
AutoLISPやVBAはAutoCAD LTでも使えますか?
AutoLISPはWindows版AutoCAD LT 2024以降で使えます。ただし開発環境のVLIDEは無く、3DなどLTに無い機能を呼ぶコードや外部のオートメーションライブラリを呼ぶ関数は動きません。VBAと.NET APIは通常版のみです。
AutoCADのネットワークライセンス(フローティングライセンス)は廃止されたのですか?
サブスクリプションのマルチユーザー(ネットワーク)契約は、2020年8月7日に新規販売を終了し、2023年2月6日に廃止されています。現在の新規契約は利用者を指名するシングルユーザーが基本です。