ライトニングフロー(Lightning Flow)は、パナソニックが無料で配布している建築向けのリアルタイム照明シミュレーションソフトです。Revitで作った建物に照明器具を置くと、器具の配光と壁や床の相互反射を計算した光の見え方がその場で表示されます。SalesforceのワークフローツールにもLightning Flowという名前の機能がありますが、この記事で扱うのはパナソニックの照明ソフトです。
パナソニックの公式サイト・Webマニュアル・FAQ・リリースノートをもとに、2026年10月時点の対応環境、Revit・Archicadとの連携範囲、照度計算書を作るときに使う別ツールとの分担、関係者への共有方法、公式FAQが認めている「できないこと」までを整理します。
まとめ:ライトニングフローの要点
- パナソニックの無料ソフト。2021年3月に試験公開し、同年6月21日のアップデートで照明設計の実務に使える版になった。公式サイトでは1,200社以上に導入と案内している
- リリースノート上の最新版は3.2.0(主に設備CADが出力するIFC4のパナソニック製照明器具情報に対応)。3.0でIES配光の読み込み、DMX・GDTFに対応した
- 対応環境はWindows 10/11。Revitアドインは最新のPanasonicBIMPlugins 3.1.2でRevit 2027に対応し、Revit 2020のサポートを終えた。Revitとはファイルを介さず双方向に連携するが、ArchicadからはFBXで形状を渡す(直接通信は未実装)。Revit LTは非対応
- ライトニングフロー本体は照度計算書や照度分布図を出力できない。照度の資料は無償のルミナスプランナー8.2か、同梱のRevitアドイン・Archicadアドオンで作る
- 照明器具のBIMデータは同梱アドインから45,000品番を検索でき、IES配光データは品番検索のダウンロードページ(LM-63形式)から取得できる
見え方をその場で確かめて関係者と合意する作業はライトニングフロー、照度の数値を資料にする作業はルミナスプランナーやアドイン、と役割を分けると迷いません。以下で根拠を順に説明します。
パナソニックのライトニングフローの位置づけと版の履歴
公式サイトの説明は「空間の3次元データと照明器具の配光、取り付け方向、各面の相互反射を考慮して光のイメージを表現する、建築 リアルタイム ビジュアライゼーションソフト」です。2021年5月31日のプレスリリースによると、2021年3月31日に同社サイトで試験公開され、同年6月21日のアップデートで本格展開に移りました。このとき約2万種の同社照明器具データと、照明設計ソフト「ルミナスプランナー」との相互連携が加わりました。
バージョンごとの主な変更点(1.1から3.2.0)
公式のお知らせ欄とWebマニュアルのリリースノートから、機能が大きく変わった版を抜き出しました。
| 版 | 公開日 | 主な変更 |
|---|---|---|
| 1.1.2 | 2021年8月4日 | 英語版、任意のオブジェクトを照明化 |
| 1.1.4 | 2021年10月21日 | 植栽(プリセット40種)、プレハブ、パッケージ |
| 2.0.0 | 2022年12月21日 | タイムライン、カラー演出、IFC読込、光源数の上限撤廃 |
| 2.1.0 | 2023年6月19日 | 描画の高速化、IFC読込性能の向上 |
| 3.0.0 | 2024年3月29日 | IES配光、DMX・GDTF、断面、自動車、UI刷新 |
| 3.1.0 | 2024年10月15日 | 昼光シミュレーションの精度向上 |
| 3.2.0 | お知らせ欄に記載なし | IFC4のパナソニック製照明器具情報に対応 |
3.2.0は公式リリースノートに載っていますが、公式サイトのお知らせ欄は2025年1月17日のFAQ公開が最新で、3.2.0の公開日は書かれていません。手元の版が古いかどうかは、後述のBIMToolsUpdateManagerが起動時に確認します。
公式が示す計算速度の比較(照明81台のフロア)
公式サイトには、同社の照明設計担当者が1フロアに81台を均一配置したプランで既存ソフトと比べた結果が載っています。照明計算は「ソフトウェアA」の45秒に対してライトニングフローは1秒、照明データをRevitへ反映する作業は、1器具8秒の手入力を想定したソフトウェアAの約10分に対して4秒の自動反映です。比較相手のソフト名は公表されていないので、この数字をそのまま自社の既存ツールに当てはめず、同じ規模のモデルで試して確かめてください。
照明計算と昼光シミュレーションで確認できる範囲
画面には通常の描画のほかに、照度・輝度をカラーで表示するモードがあります。
相互反射の計算精度とCIE 171:2006
公式サイトは、照明計算精度がCIE(国際照明委員会)の「CIE 171:2006」に準拠していると説明しています。CIE 171:2006は、照明計算ソフトの精度を評価するためのテストケースをまとめた文書で、マニュアルの「計算精度」ページにそのテストケースの結果が掲載されています。
マテリアルの反射率はRevitの「外観」タブにある色とテクスチャから算出されます。公式FAQによると、テクスチャ画像のRGB平均に、人の目の感度を考慮した係数(R 0.2126、G 0.7152、B 0.0722)を掛けて反射率にしています。Revit側で色を実際の仕上げに合わせておかないと、照度の数字も実物からずれます。
昼光モードの天気7パターンと照度の前提値
起動直後の照度計算は照明器具の光だけを対象にしています。昼光モードでは、日時とロケーションから求めた太陽高度をもとに、直射法線照度と天空照度を加えて照度を計算します。日時・ロケーション・天気は画面左の「設定」で指定し(Revitでロケーションを設定していれば引き継がれます)、照度を読むときは編集モードで「照度/輝度」を選び、カラーバーウインドウの「昼光」にチェックを入れて右側のリストで「照度」を選びます。天気ごとの前提値はマニュアルに次のとおり記載されています。
| 天気 | 直射法線照度(lx) | 天空照度(lx) |
|---|---|---|
| 快晴 | 100,000 | 10,000 |
| 晴れ | 65,000 | 15,000 |
| 薄曇り | 15,000 | 30,000 |
| 曇り | 2,000 | 50,000 |
| 雨 | 1 | 5,000 |
| 雪・雷 | 1 | 2,000 |
この値は時刻によらず固定で、変わるのは太陽高度に応じた受光面の角度成分だけです。天気は全7パターンですが、マニュアルの表には「雪・雷」が1行にまとめられているため6行になっています。季節や地域の実測日射データを読み込む機能ではないので、年間の昼光利用率を評価する用途には向きません。
IES配光とDMX・GDTF(3.0で追加)
3.0から、IESファイルを読み込んで照明の配光として設定できるようになりました。配光タイプには球、半球、スポットも選べ、スポットではフィールド角とビーム角を指定できます。IESデータを公開しているメーカーの器具なら、パナソニック製以外でも配光を再現できます。
演出照明向けには、DMXの受信(Art-NetとUSB-DMX)とGDTFファイルの読み込みに対応しました。リリースノートでは、ENTTEC社のDMX USB PROと、FTDI社のUSBチップを載せたDMX USBケーブルが対応機器として挙がっています(全製品の動作保証ではないと注記あり)。DMXコントローラで作った演出データを、施工前に3D空間で確認できます。
Revit・Archicad・ルミナスプランナーとのBIMデータ連携
ライトニングフローは単体でも起動できますが、実務ではBIMソフトから建物データを受け取って使うのが基本です。連携の深さはソフトによって違います。
Revitアドインの対応版(2027対応・2020終了・LT非対応)
製品ページの対応環境欄はRevit 2020〜2026のままですが、最新のPanasonicBIMPlugins 3.1.2のリリースノートには「Revit2027に対応」「Revit2020のサポートを終了いたしました」とあります。Revit 2020のまま使っている場合は、アドインを更新する前に版を確認してください。Revitアドインのリリースノートが最新の対応版の根拠になります。
Revitのリボンに追加される「Panasonic」タブからライトニングフローを起動すると、3Dビューの形状と質感が送られます。照明器具の情報はファイルを介さない双方向通信で、ライトニングフロー上で変更した照明器具情報をRevitへ書き戻せますが、公式の「既知の問題」によると、位置座標は反映できても器具の回転は反映できません。3.0からは、Revitの照明ファミリをすべて読み込み、球・半球・スポットを含む全光源タイプを表現できるようになりました。
Revit LTはアドインを使えないため連携できず、対応外のRevitバージョンでは「Panasonic」タブ自体が表示されません。
Archicadアドオン(28・29)とFBX経由の受け渡し
Archicadの扱いはRevitと違います。パナソニックのBIMページには「Archicadからライトニングフローへの直接通信は未実装です」と明記されており、建築形状はArchicadからFBXで書き出し、照明情報はルミナスプランナーや設備CADから書き出して渡します。
アドオンは自動では有効化されないため、「オプション」の「アドオンマネージャー」から C:\Users\{ユーザー名}\AppData\Local\Programs\Panasonic\Archicad にあるapxファイルを追加します。Archicad 28は PanasonicBIMForArchicad.apx、29は PanasonicBIMForArchicad29.apx です。製品ページとArchicad用BIMページの対応環境欄はArchicad 28のままですが、アドオンのマニュアルには「本アドオンはArchicad28,29で動作します」と書かれています。
ルミナスプランナーからライトニングフローを開く手順
ルミナスプランナーはVer7.5から、作成したプランをライトニングフローで開けるようになりました。ルミナスプランナーのマニュアル7.8によると、ツリーから部屋を選んで「Lightning Flow表示」ボタンを押すと起動し、器具の変更や角度調整、マテリアル設定をしながら空間を歩いて確認できます。什器を置く場合は、別途FBX形式の3Dファイルが必要です。
Revitとルミナスプランナーの間は、同梱のRevitアドインのLP入力・LP出力でつながります。Revitの部屋情報を書き出してルミナスプランナーで器具を配置し、その配置をRevitに照明ファミリとして読み戻す流れで、3.1.1ではルミナスプランナー側で加えた差分だけを反映する機能が加わりました。
FBX・IFCの読み込みと「GO」アイコンが出ないときの対処
Revit以外のソフトからは、FBXまたはIFCで形状と質感を読み込みます。マニュアルにはRhinocerosのFBX保存設定とRebroのIFC保存設定のページがあり、3.2.0では、主に設備CADが出力するIFC4のパナソニック製照明器具情報に対応しました。FBXは読み込んだフォルダにマテリアルとテクスチャが展開されるため、FBXごとにフォルダを分けます。Revitから書き出したFBXにはテクスチャが付かないので、Revitのデータはアドイン経由で送ります。
読み込んだあとにウォークスルーができない場合は、床の設定を疑います。床にマウスカーソルを置くと出るはずの「GO」アイコンは床オブジェクトにだけ表示され、IFCやFBXの床は床として認識されないことがあります。マニュアルの「GOアイコンが表示されない場合」のとおり、その床を選んでプロパティの「レイヤー」を「フロア」に変えると表示されます。
パナソニックの照明設計ツールの使い分け(照度計算・BIMデータ・IES配光)
照度計算書の作成、照明器具のBIMデータ取得、IES配光データの取得では、それぞれ利用するツールや窓口が異なります。目的ごとの入手先を表にしました。
| 目的 | 使うもの | 入手条件 |
|---|---|---|
| 光の見え方を確認・合意 | ライトニングフロー | 無料会員登録・Windows 10/11 |
| 照度分布図・計算書 | ルミナスプランナー8.2 | 無料会員登録・Windows 11 |
| Revit上で照度分布図 | 同梱Revitアドイン | ライトニングフローと同時に導入 |
| 照明器具のBIMデータ | 同梱アドインの器具検索 | 45,000品番 |
| rfa・IFCの単体入手 | 商品検索ページ | 対応品番に限りあり |
| IES配光データ | IESNA配光データダウンロード | 品番3文字以上で検索 |
| DIALuxで計算 | DIALuxプラグインカタログ | DIALux側に登録 |
照度分布図・照度計算書を作るツール(ルミナスプランナー8.2とアドイン)
ルミナスプランナーの現行版は8.2で、公開履歴の最新は2026年4月20日のV8.2.17です。部屋単位とフロア全体の照度分布図を出力でき、CG画像や文字を入れた提案書、DXF出力にも対応しています。公式ページは旧有償機能を含めて「これらの機能はすべて無償でご利用いただけます」としており、利用条件は無料の「住宅・建築設備Webビジネス会員」登録です。動作環境はWindows 11と.NET Framework 4.8で、Windows 10は記載されていません。Windows 10でも動くライトニングフローとは条件が違います。
Revitで設計している場合は、同梱のRevitアドインでも照度分布図と計算結果表を作れます。必要な平均照度から台数を割り出す自動配置や、非常灯の2lx範囲チェックも同じアドインの機能です。Archicadアドオンにもゾーン単位の照度分布図と計算結果表の作成機能があります。
照明器具のBIMデータ(Revitファミリ・IFC)の入手先
パナソニックのBIMデータのページは、入手方法を2通りと案内しています。1つ目はRevit・Archicad・設備CADの中から照明器具を検索する方法で、Revitアドイン・Archicadアドオンからは同社照明器具45,000品番を検索してダウンロードできます。設備CADはRebroだけが最初から内蔵しており、ほかはルミナスプランナーを入れて連携設定をします。
2つ目は商品検索ページからRevit用のrfa形式とIFC形式を取る方法です。ただし対応品番に限りがあり、このIFCは形状しか含まないため、配光を使うならアドイン経由で取得します。
IES配光データの入手とDIALuxでの利用
IESNA配光データダウンロードでは、器具品番を半角英数字3文字以上(LE1などの起動方式を除く)で検索し、器具とランプを選んでファイルを取得します。形式はIESNA LM-63の2002年版と1995年版から選べ、ページは2002年版を推奨しています。ライトニングフロー3.0以降のIES読み込みや他社のレンダラーで使えますが、ページには配光データの正確性を保証しないという免責事項があるので、最終的な照度は品番の仕様と照らして確認します。
DIALuxで照度計算をしている場合は、同社の照明設計ツール一覧にある「DIALuxプラグインカタログ」から、品番で検索した製品データをDIALuxのプロジェクトやデータバンクに直接登録できます。
関係者への共有と書き出しの方法
ウォークスルーのほか静止画・動画・パノラマ動画を書き出せます。タイムラインではカメラの動き、時刻の経過、照明のカラー演出、音声の再生を組み合わせられ、植栽(プリセット40種)・人物・自動車を置いて空間のスケール感を伝えられます。複数案の明るさ感を同じ条件で比べるときは、自動露出による見え方の変化を避けるため露出を固定します。
プロジェクトデータ・動画・パノラマ動画の渡し方
- プロジェクトデータ:「プロジェクトのロード」画面に出る保存先フォルダをzipに圧縮して渡す。受け取る側はライトニングフローのインストールが必要だが、BIMソフトは要らない(マニュアルの「プロジェクトデータの共有」)
- 動画:作ったアニメーションを編集モードの「エクスポート」→「メディア」→「動画」でmp4に書き出す
- パノラマ動画:「メディア」→「パノラマ」でアニメーションを選んで書き出す。マニュアルはWindows 10標準アプリ「映画&テレビ」で360度モードで見られると案内している
プロジェクトフォルダは公式FAQのとおりローカル保存が前提で、OneDriveなどのクラウド上に置いたまま開く使い方は想定されていません。送るときだけzipにします。
パノラマ画像をブラウザで見せるときのfile://の制約
ライトニングフローを入れていない相手に、正距円筒形式(縦横比1:2)のパノラマ画像をブラウザで見回してもらうなら、WebVRライブラリのA-Frameが手軽です。ただし、HTMLと同じフォルダに置いたJPEGを <img src> で指定し、HTMLをダブルクリック(file://)で開くと画面は真っ黒のままです。2026年10月にChrome 155とA-Frame 1.8.0で検証したところ、コンソールには SecurityError: Failed to execute 'texSubImage2D' on 'WebGL2RenderingContext': The image element contains cross-origin data が出て、A-Frame自身もfile://ではテクスチャが動かないと警告しました。画像をbase64でHTMLに埋め込むと同じ環境で表示できました。
埋め込み用のHTMLは、Windows標準のPowerShellで作れます。次のスクリプトを make-pano.ps1 として保存し、powershell -ExecutionPolicy Bypass -File make-pano.ps1 lobby.jpg のように画像を渡すと、同じ名前の.htmlができます(生成・表示の確認環境はmacOS Intel、PowerShell 7.6.7、Chrome 155。Windows標準のWindows PowerShellでの実行確認は含みません)。
# 使い方: powershell -ExecutionPolicy Bypass -File make-pano.ps1 lobby.jpg
param([Parameter(Mandatory=$true)][string]$Image)
$path = (Resolve-Path $Image).Path
$b64 = [Convert]::ToBase64String([IO.File]::ReadAllBytes($path))
$out = [IO.Path]::ChangeExtension($path, '.html')
$html = @"
<!doctype html>
<html><head><meta charset="UTF-8">
<script src="https://aframe.io/releases/1.8.0/aframe.min.js"></script>
</head><body>
<a-scene>
<a-assets><img id="sky" src="data:image/jpeg;base64,$b64"></a-assets>
<a-sky src="#sky"></a-sky>
</a-scene>
</body></html>
"@
[IO.File]::WriteAllText($out, $html, (New-Object Text.UTF8Encoding $false))
Write-Output "$out ($((Get-Item $out).Length) bytes)"
4096×2048ピクセル・152,678バイトのJPEGで、HTMLは203,840バイト(約1.33倍)になりました。開く側はA-Frame本体をCDNから読むため、ネット接続が必要です。
パナソニックの照明設計事例に見るライトニングフローの使いどころ
公式に公開されている使用事例は、パナソニック自身の照明設計担当者が手がけた案件です。同社の照明設計事例集「LIGHTING STYLE」と社員インタビューで、ライトニングフローを使ったと明記されているものを用途別に並べました。
演出照明の現場調整と合意形成(横浜BUNTAI・大阪・関西万博)
横浜BUNTAIでは、ファサードのライトアップ演出をライトニングフローで設計し、現場でLIVE再生しながら光色やタイミングを最終調整しました。事例ページには、後日(数日〜数週間)になるのが常だった修正調整が「当日数十分で完了」と書かれています。大阪・関西万博のパナソニックグループパビリオン「ノモの国」でも、外観ライトアップの約15種の照明パターンをライトニングフローで確認しながら合意形成を進めたと、担当デザイナーが社員インタビューで語っています。タイムラインとカラー演出、DMX連携がそのまま効く用途です。
グレア・映り込み・昼光の事前確認(ホテル・球場・Panasonic XC KADOMA)
三井ガーデンホテル京都三条プレミアでは、ロビーラウンジの間接照明がガラス面に映り込む問題を、ライトニングフローのシミュレーションで確かめながらグレアレスダウンライトを選んでいます。ウインク球場(姫路市立姫路球場)では、全灯時のグレアカット効果と球場外への光漏れをCG画像で示して提案し、カットオフ性能を高めると空間の光散乱が減ってボールのコントラストが大きくなると事例ページは報告しています。自然光を大きく取り入れるPanasonic XC KADOMAでは、エントランスの照明手法を昼光効果を確認しながら決めました。
どの事例も、ライトニングフローの役割は「見え方を関係者と共有して決める」ことで、照度の報告書づくりではありません。
公式FAQが認めるライトニングフローの制約
パナソニックのライトニングフロー公式FAQとマニュアルの「既知の問題」には、導入前に知っておくべき制約がはっきり書かれています。
ライトニングフロー本体の照度計算書・照度分布図の出力制限
公式FAQは「照度計算書や照度分布図などのドキュメントの出力はできません」と明言しています。照度は画面上のカラー表示で見るか、測定したい点にマウスカーソルを当てて数値を読む方式です。施主や行政に照度の根拠資料を出す案件で、ライトニングフローの画面キャプチャを資料代わりにするのは避けてください。資料は前述のルミナスプランナーやアドインで作ります。
視点からの距離による計算精度の低下(半径12.5m以遠)
計算は視点から半径12.5mの範囲が最も細かく、12.5m、25m、50mと遠ざかるほど精度が下がる仕様です。離れた場所の照度が明るすぎたり暗すぎたりしたら、視点を測定点に近づけてから読み直します。計算範囲の外にある可能性もあるため、FAQは「照明計算範囲」を720mに広げて試す方法も案内しています。広いアトリウムや屋外空間では、確認したい場所ごとに視点を移して読む前提で使ってください。
透過率・影・狭い隙間の計算制約
- 透過率を設定した材質は、直接光・間接光とも100%透過として計算される。透過率10%でも90%でも明るさは変わらない(直射光だけは設定「透過率適用」で反映できる)
- 影は発光面の大きさに関係なく点光源として計算される。大きな光源の近くに障害物があると影がずれる(「光源分割」の調整で改善できる)
- ルーバーなど隙間から入る光は、隙間が20cmを下回ると計算に影響が出て、精度が粗くなる可能性がある
ガラスのファサードや縦ルーバーが主役の建物では、見た目の確認には使えても、照度の数字をそのまま設計判断に使うのは危険です。
Enscape・Twinmotion・DIALuxと比べるときの判断軸
EnscapeやTwinmotionのような汎用のリアルタイムレンダラーと迷う場合は、見た目の美しさではなく、照度の数値を読めるか、メーカーの器具データをそのまま使えるか、結果をRevitの照明ファミリへ書き戻せるか、の3点で比べてください。ライトニングフローはこの3点に無料で対応し(Revitへ戻るのは位置だけで回転は戻りません)、計算精度もCIE 171:2006に準拠していると公表しています。歩行者・車両の経路、密度、速度まで指定する動画が必要なら、これらを設定できるTwinmotionのPaths機能が候補になります。
DIALuxは照度計算書を作るソフトなので、比べる相手はライトニングフローではなくルミナスプランナーです。パナソニック製器具を中心に計算するならルミナスプランナー、複数メーカーの器具を1つの計算書にまとめるならDIALuxとプラグインカタログ、と分けると選びやすくなります。ルミナスプランナーには他社製器具やIESデータを取り込んで計算する機能がないためです。
ダウンロードからインストールまでの手順
ライトニングフローの入手には、パナソニックの「住宅・建築設備Webビジネス会員」への登録(無料)が必要です。入口はパナソニック公式のライトニングフロー製品ページにある「ライトニングフロー無料ダウンロード」です。
会員登録とPanasonicBIMToolsUpdateManagerの実行
- ダウンロードサイトのダウンロードボタンを押し、必要事項を入力する
- メールで届くダウンロード用URLから
PanasonicBIMToolsUpdateManager.msiを取得する - ネットワークに接続した状態でmsiを実行する(Windowsの警告が出たら「詳細情報」から「実行」)
- ソフトウェアアップデート画面で「アップデートする」を押す
このインストーラが入れるのは、PCに常駐してバージョンを確認するBIMToolsUpdateManager、RevitアドインとArchicadアドオン(Panasonic BIM Plugins)、ライトニングフロー本体です。インストールは作業したWindowsアカウントにだけ行われるので、1台のPCを複数人で使う場合はそれぞれインストールが必要です。照明器具データのダウンロードで同社サーバーにアクセスするため、社内のプロキシやファイアウォールでは https://www2.panasonic.biz/jp/ への通信を許可しておきます。
動作が重いときの設定(内部解像度と照明計算品質)
公式サイトは推奨スペックの数値を公表していません。マニュアルは「動作速度はお使いのPCの性能に依存します」としたうえで、重いときの設定変更を案内しています。内部解像度は標準の720pから480pへ、照明計算品質は標準の「中品質」から「低品質」へ下げると軽くなります。ただし照度表示モードでは品質が強制的に「高品質」になるため、照度を読むときの重さはこの設定では下がりません。LEDビジョンや光る看板のように周囲への光の影響を見なくてよい器具は、計算モードを「発光面のみ」に切り替えると計算時間を減らせます。
よくある質問
ライトニングフローは無料で使えますか?
無料です。パナソニックは2021年3月から同社サイトで無料ダウンロードを提供しており、2021年のプレスリリースでもフリーソフトウェアと説明しています。ダウンロードに必要な「住宅・建築設備Webビジネス会員」の登録も無料です。
ライトニングフローはMacで使えますか?
公式サイトの対応環境はWindows 10と11だけで、Mac版は案内されていません。インストーラもWindows用のmsi形式です。MacでArchicadを使っている場合は、FBXで書き出した形状をWindows機のライトニングフローで読み込む運用になります。
ライトニングフローで照度分布図や照度計算書は出せますか?
ライトニングフロー本体からは出せません。公式FAQは、照度の確認はカラー表示のみで、照度計算書や照度分布図などのドキュメントは出力できないと回答しています。同じインストーラで入るRevitアドインとArchicadアドオン、または無償のルミナスプランナー8.2なら照度分布図を作れます。
ルミナスプランナーで他社の照明器具は使えますか?ライトニングフローではどうですか?
ルミナスプランナーは使えません。公式FAQ(LPFAQ QA4)は「他社製品の器具データ取り込み機能およびIESデータ等を取り込み、計算する機能はございません」と回答しています。ライトニングフローでは、他社の照明器具もRevit上に配光データがあれば反映されると公式サイトに書かれており、3.0以降はIESファイルを直接読み込めます。
Revit LTでもライトニングフローと連携できますか?
連携できません。公式FAQによると、Revit LTはアドインを使えないため直接連携はできません。FBXで書き出して読み込むことはできますが、RevitのFBXにはテクスチャが付かず、照明器具の情報をRevitへ書き戻す双方向の連携も使えません。