r5rは、OpenStreetMapの道路データとGTFSの時刻表から交通ネットワークを組み立て、徒歩・自転車・自動車・公共交通の移動時間や到達圏をRで計算するパッケージです。計算の本体はConveyalのJava製経路探索エンジンR5で、r5rはそこへRのインターフェースを与えます。現行のCRAN版は2026年5月20日公開の2.4.0で、動作要件はJava JDK 21以上です(Java 21の要求は2.0の破壊的変更、ネットワーク構築関数のbuild_network()への交代は2.3.0で入りました)。2.4.0を前提に、導入から4つの分析関数の使い分け、旧コードの移行、公式が回答しているエラーの原因までを扱います。
まとめ:r5r 2.4.0を使うときの要点
- CRAN版は2.4.0(2026年5月20日公開)。動作要件は
SystemRequirements: Java JDK (>= 21.0)、RはR 3.6以上、ライセンスはMIT。 - ネットワーク構築は
build_network()。setup_r5()と引数r5r_coreはv2.3.0以降の非推奨です(まだ動きます)。移行では関数名・引数名に加えてJavaの版と自作コードの型判定も確認します。 - 入力は
.pbf(必須)、GTFS.zip(任意)、標高の.tif(任意)を同じフォルダへ置く形式です。 library(r5r)より前にJVMのメモリを増やす必要があります。Rの既定値は512MBしかありません。- 分析の入口は4つ。移動時間なら
travel_time_matrix()、経路の内訳ならdetailed_itineraries()、到達圏ならisochrone()、到達可能な機会の量ならaccessibility()です。 - ネットワークの範囲はR5側で判定され、道路データの外接矩形の面積が975,000平方キロメートルを超えると構築が止まります。
r5rとR5エンジンの関係
R5の正式名称と開発元
R5はConveyalの経路探索エンジンで、正式名称は「Rapid Realistic Routing on Real-world and Reimagined networks」です。公式READMEは冒頭で「R5 is the routing engine for Conveyal」と位置づけており、r5rのvignetteもR5を「a really fast and open source Java-based routing engine developed separately by Conveyal」と紹介しています。r5rとR5は別のチームの成果物で、r5rはブラジルのIpea(応用経済研究所)が中心に開発しています。
R5をOpenTripPlannerベースのエンジンと紹介した解説も見かけますが、両者の関係は逆向きです。OpenTripPlannerの公式ドキュメントはOTP1とOTP2の比較の中で、OTP2の公共交通ルーティングについて「Conveyal's R5 project, which informed and inspired the OTP2 transit routing system.」と述べています。R5がOTP2に影響を与えた側で、現在は別々に開発されているプロジェクトです。R5の設計目的は1対多・多対多の移動時間計算で、READMEは出発時刻を1点に固定せず時間帯の中で何度も探索する方式を「realistic」と呼ぶ理由に挙げています。これが後述するtime_window引数の存在理由です。
r5r 2.4.0が取得するR5のバージョン
r5rはインストール時にR5のJARを同梱せず、初回実行時にダウンロードしてキャッシュします。そのバージョンはパッケージ側にハードコードされていて、CRANの2.4.0のソースではR/onLoad.Rにr5r_env$r5_jar_version <- "7.5.1"と書かれています。CRANのr5rパッケージ情報に出るDESCRIPTIONの説明文には「This version of r5r depends on R5 v7.1.」という古い記述が残っているため、説明文と実際に落ちてくるJARが食い違います(2.4.0での更新はr5r公式変更履歴に「Using new version of R5 v7.5.1.」と記載されています)。使っているR5の版を確かめるなら、説明文ではなくインストール済みパッケージのonLoad.R、あるいはr5r_sitrep()の出力を見てください。
版を記録に残すのは、記載差が誤記にとどまらないからです。Conveyal側のREADMEは「R5 does not currently expose a stable programming interface」と述べ、「third-party wrappers or language bindings (e.g., for R or Python) may need to continue using an older release of R5」と明記しています。R5の更新はConveyalの都合で進み、r5rが追いつくとは限らないという前提が公式に書かれているわけです。「the Conveyal team does not provide technical support for third-party deployments」ともあるため、r5r経由の不具合をConveyalへ問い合わせる先もありません。再現性が要る分析では、r5rの版とR5のJARの版を両方記録に残してください。
動作要件とインストール
r5r本体はCRANから1行で入ります。先に片付けるのはJDK 21の用意と、JVMへ渡すメモリの指定です。
Java JDK 21の用意
2.4.0のDESCRIPTIONはSystemRequirements: Java JDK (>= 21.0)です。ランタイム(JRE)ではなくJDKが必要で、公式vignetteはAdoptium(Eclipse Temurin)を推奨の選択肢、Amazon CorrettoとOracle OpenJDKを代替として挙げています。実装ごとに配布条件やサポート期間が違うので、社内標準を決めるときはJava仮想マシン(JVM)とは?仕組み・メモリ構成・JITを実機の出力で解説で仕組みを押さえたうえでライセンスを確認してください。
OSへJDKを入れずにRの中だけで完結させたい場合は、r5rがSuggestsに挙げているrJavaEnvが使えます。vignetteが示す手順は次のとおりです。
install.packages("rJavaEnv")
# 現在Rが見ているJavaの版を確認する
rJavaEnv::java_check_version_rjava()
# Java 21を導入し、もう一度確認する
rJavaEnv::java_quick_install(version = 21)
rJavaEnv::java_check_version_rjava()
CRAN版と開発版の選び方
安定版はCRANから、開発版はGitHubのサブディレクトリを指定して入れます。開発版はリポジトリ直下ではなくr-package配下にあるため、subdirの指定を落とすと失敗します。
# 安定版(2.4.0)
install.packages("r5r")
# 開発版(devtools が無い環境では先に入れる)
if (!requireNamespace("devtools", quietly = TRUE)) install.packages("devtools")
devtools::install_github("ipeaGIT/r5r", subdir = "r-package")
開発版を選ぶ理由は2つです。未リリースの関数を使いたい場合(2.4.0で追加されたget_gtfs_errors()やcheck_transit_availability()は、CRAN版が2.3.0だった時期には開発版にしかありませんでした)と、公式変更履歴のBug fixesに挙がっている修正を先に取り込みたい場合です。どちらにも当てはまらなければCRAN版で十分です。再現性は配布経路ではなく版の固定で決まるので、どちらを使う場合も版は記録します。
JVMのメモリとCPUコア数の指定
メモリ設定はlibrary(r5r)より前に書きます。公式vignetteは「by default, R allocates only 512MB of memory for Java processes」と説明し、この既定値は大きなクエリには足りないとしています。必要量は道路網の広さ、GTFSの本数、ODの組み合わせ数で変わるため、まず2GBで走らせて足りなければ増やすのが実際的です。rJavaはRのセッションごとにJVMを一度だけ起動するので、読み込み後にoptions()を書き換えても反映されません。
# ここは必ず library(r5r) より前に置く
options(java.parameters = "-Xmx2G")
# 既定では利用可能な全CPUコアを使う。4コアに制限する場合
options(java.parameters = c("-Xmx2G", "-XX:ActiveProcessorCount=4"))
library(r5r)
library(sf)
library(data.table)
設定を忘れて実行してしまったときは、Rのセッションを再起動してからoptions()とパッケージ読み込みをこの順で書き直します。分析が終わってメモリを解放したいときは、ネットワークを構築したあとの話になりますがstop_r5()とガベージコレクタを呼びます。
# 分析が終わったあと(r5r_network を構築済みの状態)で実行する
stop_r5(r5r_network)
rJava::.jgc(R.gc = TRUE)
入力データの要件と置き方
r5rは個別のファイルパスを受け取らず、データを置いたフォルダのパスを受け取ります。build_network()のドキュメントは、そのフォルダに道路網ファイル(.osm.pbf)を1つだけ置くこと、GTFSが複数あれば自動で統合されること、標高のラスタはWGS 84(EPSG:4326)であることを要件として挙げています。
| データ | 形式 | 必須 | 入手先の例 |
|---|---|---|---|
| 道路ネットワーク | .pbf |
必須 | Geofabrik・osmextract・BBBike |
| 公共交通の時刻表 | GTFS.zip |
任意 | Mobility Database・Transitland・tidytransit |
| 標高 | .tif |
任意 | elevatr・SRTMGL1 |
道路データはOpenStreetMap(OSM)とは?特徴・使い方・API・商用利用までわかりやすく解説で扱っているOSMの抽出データを使います。GTFSを置かなければ徒歩・自転車・自動車だけの分析になり、置けば公共交通のダイヤに沿った経路が計算できます。標高の.tifを入れると坂道を考慮した所要時間になりますが、2.4.0のリリースノートはLTS(自転車の走行快適性レベル)のシナリオでは標高が無視される既知の不具合が残ると記載しています。座標系や形式の基礎はGISデータとは?形式・座標系・取り込み設計を実装目線で解説【2026年8月時点】で確認できます。
初回のbuild_network()実行時に、このフォルダへnetwork.datが書き出されます。2回目以降は既存のnetwork.datを読み込むため、入力データを差し替えたときはoverwrite = TRUEで作り直してください。
ネットワーク構築と移動時間マトリクス
r5rにはPorto Alegre(ブラジル)のサンプルデータが同梱されており、system.file()でパスを取れます。以下は公式vignetteの手順に沿った最小の流れです。
options(java.parameters = "-Xmx2G")
library(r5r)
library(data.table)
# 同梱サンプルデータのパス
data_path <- system.file("extdata/poa", package = "r5r")
# 交通ネットワークを構築する(network.dat が作られる)
r5r_network <- build_network(data_path)
# 起点・終点(id, lon, lat の列を持つ data.frame)
points <- fread(file.path(data_path, "poa_points_of_interest.csv"))
departure_datetime <- as.POSIXct("13-05-2019 14:00:00",
format = "%d-%m-%Y %H:%M:%S")
ttm <- travel_time_matrix(
r5r_network,
origins = points,
destinations = points,
mode = c("WALK", "TRANSIT"),
departure_datetime = departure_datetime,
max_walk_time = 30,
max_trip_duration = 60,
time_window = 60,
percentiles = c(25, 50, 75)
)
起点・終点はid・lon・latの3列を持つデータフレームか、WGS 84のPOINT sfオブジェクトで渡します(投影座標系のsfは事前にsf::st_transform(4326)で変換します)。押さえる引数は3つです。time_windowは出発時刻を何分間の幅で探索するかの指定(既定10分)で、R5はその時間帯を毎分探索するため結果は単一値ではなく分布になります。そこから何パーセンタイルを取るかがpercentiles(既定50)で、ダイヤの間隔が長い路線では中央値と75パーセンタイルの差が待ち時間のばらつきを表します。max_trip_durationは既定120分で、これを超えるペアは結果から落ちます。速度の既定値は徒歩walk_speedが時速3.6キロ、自転車bike_speedが時速12キロ、公共交通の乗車回数上限max_ridesが3です(乗り換え回数ではなく乗車回数の上限で、3なら最大2回の乗り換えを含みます)。
処理速度の目安として、r5rの論文(2021年)はサンプル地域で1,227×1,227の所要時間行列を120分のtime_windowで計算した例を挙げ、1.9GHzのIntel i7・16GBのWindows機で「takes less than a minute」と報告しています(当時のr5r v0.3-2とR5 v6.0.1での測定です)。所要時間の内訳が必要ならexpanded_travel_time_matrix()をbreakdown = TRUEで呼びます。既定のFALSEでは時間帯の各分についての合計時間と利用路線だけが返り、アクセス・待ち・乗車・乗り換えの内訳は出ません。公式ドキュメントはTRUEにすると処理が大幅に遅くなると注記しています。到着時刻から逆算する場合はv2.3.0で追加されたarrival_travel_time_matrix()を使います。
詳細経路・到達圏・アクセシビリティの使い分け
移動時間マトリクス以外の3関数は返ってくるものが違います。目的から選びます。引数の一覧はr5r公式リファレンスにあります。
detailed_itineraries():経路の内訳と線形の取得
1組または複数組のODについて、実際にたどる経路の区間、利用路線、区間ごとの所要時間、そして経路の線形(sfのLINESTRING)を返します。shortest_path = FALSEとsuboptimal_minutesを組み合わせると、最短経路より少し遅い代替経路も列挙できます。
det <- detailed_itineraries(
r5r_network,
origins = points[10, ],
destinations = points[12, ],
mode = c("WALK", "TRANSIT"),
departure_datetime = departure_datetime,
max_walk_time = 60,
suboptimal_minutes = 8,
shortest_path = FALSE
)
公式が避けるよう助言している使い方があります。travel_time_matrix()とdetailed_itineraries()は内部で別のルーティングアルゴリズムを使うため、FAQは「we advise not to use or combine the output of these functions」と述べています。実行は止められませんが、マトリクスで所要時間を出して代表例だけ詳細経路で可視化するという資料の作り方をするなら、両者の数値が一致しない前提で扱う必要があります。
isochrone():到達圏ポリゴンの生成
cutoffsで指定した分数ごとに、その時間内に到達できる範囲のポリゴンを返します。2.4.0でこの関数は内部実装が入れ替わり、ネットワーク全体に敷いたWeb Mercatorピクセルの規則格子から移動時間サーフェスを作り、marching squaresアルゴリズムでポリゴンを描く方式になりました。以前の版で到達圏の形が粗いと感じていた場合は、2.4.0以上に上げるだけで結果が変わります。
iso <- isochrone(
r5r_network,
origins = points[1, ],
mode = c("WALK", "TRANSIT"),
cutoffs = seq(0, 60, 10),
departure_datetime = departure_datetime,
max_walk_time = 30,
max_trip_duration = 90,
time_window = 60,
zoom = 10,
polygon_output = TRUE
)
zoomはピクセル格子の細かさで、polygon_output = FALSEにすると等時線を線として受け取れます。
accessibility():到達可能な機会数の計算
到達圏が「どこまで行けるか」を示すのに対し、accessibility()は「その範囲に何があるか」を数えます。施設数などの列はdestinationsに渡すデータへ持たせ、その列名をopportunities_colnamesで指定します。decay_functionは既定がstep(指定分数以内を等重みで合算する累積機会指標)で、距離減衰を効かせたい場合に他の関数形を選べます。
# 機会数(schools・healthcare)の列を持つ同梱データを読み込む
hexgrid <- fread(file.path(data_path, "poa_hexgrid.csv"))
access <- accessibility(
r5r_network,
origins = hexgrid,
destinations = hexgrid,
opportunities_colnames = c("schools", "healthcare"),
mode = c("WALK", "TRANSIT"),
decay_function = "step",
cutoffs = 20,
departure_datetime = departure_datetime,
max_walk_time = 30,
time_window = 60
)
運賃を条件に入れたい場合は、setup_fare_structure()で運賃体系を組み立ててfare_structureとmax_fareへ渡します。所要時間と運賃のトレードオフを列挙するならpareto_frontier()が専用の関数です。
2.x での破壊的変更と旧コードの移行
v2.2.0以前を前提に書かれたコードは、2.4.0では非推奨の警告つきで動くか、Javaの版で止まります。確認するのは関数名・引数名・Javaの版・自作コードの型判定の4点です。
| 項目 | 旧 | 新 | 変更が入った版 |
|---|---|---|---|
| ネットワーク構築 | setup_r5() |
build_network() |
v2.3.0(旧関数は非推奨・将来削除) |
| 第1引数 | r5r_core |
r5r_network |
v2.3.0(旧引数は非推奨) |
| Javaの要件 | JDK 11以上 | JDK 21以上 | v2.0(破壊的変更) |
# 旧コード
r5r_core <- setup_r5(data_path = "my_data")
ttm <- travel_time_matrix(r5r_core = r5r_core, origins = o, destinations = d)
# 2.4.0での書き方
r5r_network <- build_network(data_path = "my_data")
ttm <- travel_time_matrix(r5r_network, origins = o, destinations = d)
旧名も当面は動きますが、setup_r5()のドキュメントには「setup_r5() is being deprecated after r5r v2.3.0 and will be removed in a future release」とあり、実行すると非推奨の警告が出ます。r5r_core引数も「The r5r_core argument is deprecated as of r5r v2.3.0」の警告つきで受け付けられるだけです。v2.3.0からネットワークオブジェクトはr5r_networkクラスを持つので、自作関数で型を見ている箇所も直してください。
見落としがちなのがJavaです。1.1.0のDESCRIPTIONはJava JDK (>= 11.0)でしたが、2.0の変更履歴に「r5r uses now JDK 21 or higher (Breaking changes).」とあり、以降はJDK 21以上が必要です(同じ変更でApple Silicon機との非互換も解消されています)。Rのパッケージだけ更新してJavaを据え置くと、ネットワーク構築の時点で版チェックに止められます。R言語とは?統計解析特化の言語仕様・環境構築から採用判断まで実装視点で解説のとおりRのパッケージ更新自体は軽い作業ですが、r5rはJVM側の要件が同時に動く前提で計画してください。
つまずきやすいエラーと公式の回答
次の3つは公式FAQに回答が載っています。入力データを直すもの、日付の指定を直すもの、座標を見直すものが混ざっているので、原因の切り分けから入ります。
Geographic extent of street layer exceeds limit:原因は入力範囲の広さ
「Geographic extent of street layer (5315196 km2) exceeds limit of 975000 km2」というエラーは、投入した.pbfの範囲が広すぎることを示します。この975,000平方キロメートルという上限はR5側にハードコードされているため、FAQも「this is a limit hardcoded upstream in R5 so we cannot change it in r5r」としてr5rでは変更できないと明言しています。判定されるのは陸地の面積ではなく道路網データの外接矩形の面積で、R5のソースでは定数の注記が「large enough for California」となっています。つまり離れた離島を含む抽出データは、実際に使う範囲が狭くても矩形が広がって引っかかります。対処は分析対象に合わせて.pbfを切り詰めることで、FAQはOsmosisを使った矩形での切り出し手順を例示しています。
公共交通と徒歩が同じ結果になる原因
modeにTRANSITを含めたのに結果が徒歩と変わらない原因は2つあります。FAQが挙げる1つ目は、departure_datetimeがGTFSの運行日の範囲外で、R5が公共交通を利用できないと判断しているケースです。GTFSの運行日はcalendar.txtの基本パターンとcalendar_dates.txtの例外指定で決まり、calendar.txtを持たずcalendar_dates.txtだけで運行日を列挙するフィードもあるため、両方を見て有効日を判断します。サンプルデータの例が2019年5月13日という過去日付になっているのはこのためで、自分のデータでもSys.time()ではなくフィードの有効期間内の日付を渡す必要があります。2.4.0で追加されたcheck_transit_availability()は指定日についてtotal_services・active_services・pct_activeを返すので(個々の便数ではなく運行サービスの数です)、日付が原因かどうかをここで切り分けられます。2つ目は、そのODでは公共交通を使っても徒歩より速くならないケースで、FAQも代替の説明として挙げています。この場合は日付を直しても結果は変わりません。
同一地点間で所要時間が出る原因:道路網へのスナップ
起点と終点が同じIDなのに所要時間が出る場合、その地点が道路網から離れていることを疑います。R5は入力点を最も近い通行可能な道路区間へスナップし、入力点からスナップ先までを直線距離の徒歩として計上します。FAQはこの挙動を「it will consider that the person would walk in Euclidean distance from the input point to the snapped location」と説明しています。スナップ先を確認したいときはfind_snap()を使い、大きくずれている点は座標を見直してください。
r5rを選ぶ場面と選ばない場面
r5rが向くのは、時刻表を持つ公共交通を含めて多数のODを一括処理する分析です。多対多の移動時間計算と時間帯を通した探索はR5の設計目的そのもので、都市圏の到達圏やアクセシビリティ指標を作る用途では強いです。運賃を制約に入れられる点や、new_carspeeds・carspeed_scale・new_ltsで渋滞や自転車インフラ整備のシナリオを組める点も、汎用の経路APIでは代替しにくい機能です。
逆に、次の条件なら別の道具を検討してください。GTFSを使わず道路だけの最短経路を出すのであればR5とJavaを抱える必要はなく、OSRMやGraphHopperのような道路向けのエンジンも候補になります(どちらが軽いかは既存のR環境やサーバー構成で変わるので、実際の運用形態で比べてください)。対象範囲の外接矩形が上限を超えるなら、そもそもネットワークを構築できません。そしてサービスの一部として常時稼働させる用途には勧めません。Conveyalが「R5 does not currently expose a stable programming interface」と述べ、サードパーティのラッパーは古いリリースに留まる必要があるかもしれないと明記している以上、長期運用するアプリケーションの依存先には向きません。r5rは分析パイプラインの中で版を固定して使い、結果を成果物として切り出すのが実態に合った使い方です。
Pythonが主のチームには、同じR5をラップしたr5pyがあります。PyPIの最新版は1.1.7(2026年6月29日公開・Python 3.10以上)で、R5の版が別管理という性質はr5rと同じです。結果をWebで配信する段階まで設計するなら、Web GISとは?タイル配信とベクタタイル・ライブラリ選定を実装目線で解説【2026年8月時点】の配信構成とあわせて検討してください。研究成果でr5rを使う場合の引用先はPereiraらの2021年のFindings論文(DOI: 10.32866/001c.21262)で、citation("r5r")で書式が取れます。
よくある質問
r5rを動かすのに必要なJavaのバージョンはどれですか?
CRANの2.4.0はSystemRequirements: Java JDK (>= 21.0)です。JREではなくJDKが必要で、公式vignetteはEclipse Temurinを推奨に挙げています。OSへ入れたくない場合はrJavaEnv::java_quick_install(version = 21)でR内から導入できます。1.x系はJava 11で動いていたので、古い環境から上げるときはJavaの入れ替えも同時に必要です。
setup_r5()はまだ使えますか?
2.4.0でも動きますが非推奨です。ドキュメントに「setup_r5() is being deprecated after r5r v2.3.0 and will be removed in a future release」と明記されており、実行すると移行を促す警告が出ます。各関数のr5r_core引数も同時に非推奨なので、build_network()とr5r_networkへまとめて置き換えてください。
CRAN版と開発版のどちらを入れるべきですか?
結果を再現可能な形で残すならCRAN版です。開発版が要るのは未リリースの関数を使うときに限られます。開発版はリポジトリのr-package配下にあるためdevtools::install_github("ipeaGIT/r5r", subdir = "r-package")と指定します。どちらでもR5のJARの版はパッケージ側で固定されるので、記録には両方の版を残してください。
計算結果をそのまま地図にできますか?
detailed_itineraries()とisochrone()はsfオブジェクトを返すので、地図パッケージへ直接渡せます。背景に道路網や路線を重ねたい場合は、構築済みネットワークからstreet_network_to_sf()で道路、transit_network_to_sf()で公共交通の線形を取り出せます。travel_time_matrix()やaccessibility()は座標を持たない表を返すため、起点データの側に幾何情報を持たせて結合してください。
日本の公共交通データでも使えますか?
GTFS形式のフィードなら読み込めます。r5rが要求するのは.pbfの道路データとGTFS.zipで、地域固有の要件はありません。注意点は2つで、日本全国のOSM抽出データは離島を含む外接矩形が上限を超えるため都市圏や都道府県の単位へ切り出すこと、分析対象日に有効な運行サービスがあるかをcheck_transit_availability()で確かめることです。