Vercel(バーセル)の料金でつまずくのは、金額そのものではなく「どこまでが無料か」と「超えたときいくら請求されるか」の2点です。公式の価格表は米ドル建てのリソース単位で書かれており、単価は関数を動かすリージョンごとに変わります。さらに、無料のHobbyプランには金額とは別の制約、つまり商用利用の禁止があり、これを知らずに広告や受託案件のサイトを載せている例が少なくありません。この記事では、Vercel公式ドキュメントに記載された実数だけを使い、Hobbyの上限、Proの月額20ドルが実際に含むもの、東京リージョンでの超過単価、そして規約上の線引きを整理します。数値は2026年8月21日に公式ドキュメントを取り直して確認したものです。
まとめ:Vercel料金で先に押さえる4つの要点
- Hobbyは無料だが商用利用は禁止。広告掲載、決済、受託制作、寄付の募集はいずれも商用扱いで、Pro以上が必須です。
- Proの月額20ドルは「1人あたりの料金」ではありません。デプロイ可能な1シートと20ドル分の月次クレジットを含むプラットフォーム料金で、追加シートが1人20ドル、閲覧のみのViewerシートは無料・無制限です。
- Proに「関数実行時間◯時間まで無料」といった固定枠はありません。Pro固有の含まれる枠は、Fast Data Transfer 1TBとEdge Requests 1,000万リクエストの2つだけで、残りは20ドルのクレジットを消費したのち従量課金に切り替わります。
- 請求額を決めるのは計算処理ではなく転送量です。東京リージョンでは超過分の転送が1GBあたり0.16ドル、Edge Requestsが100万リクエストあたり2.60ドルで、後述の試算では請求の約77%を転送量が占めます。
プラン別の上限と、超過したときの実額を順に見ていきます。Vercelというサービス自体の仕組みや使いどころはVercel(ヴァーセル)とは?サーバー不要の仕組み・料金・できることを解説で扱っているため、ここでは費用に絞ります。実際にプロジェクトを載せる手順はReactアプリをVercelにデプロイする方法にまとめました。
HobbyとProとEnterpriseの料金と適用範囲の違い
Vercelのプランは、無料のHobby、月額20ドルからのPro、個別契約のEnterpriseの3つです。数値は2026年8月時点の公式ドキュメントにもとづき、料金は米ドル建て・月額です。
| 項目 | Hobby | Pro | Enterprise |
|---|---|---|---|
| 月額 | 0ドル | 20ドル(1シート+クレジット) | 個別見積もり |
| 追加シート | 不可 | 20ドル/人(Viewerは無料) | 個別 |
| 商用利用 | 不可 | 可 | 可 |
| プロジェクト数 | 200 | 無制限 | 個別 |
| 1プロジェクトのドメイン数 | 50 | 無制限 | 個別 |
| 1日のデプロイ数 | 100 | 6,000 | 個別 |
| 関数の最大実行時間 | 300秒 | 既定300秒・上限800秒 | 個別 |
| 関数を配置できるリージョン数 | 1つ | 5つ | すべて |
| ビルドマシン | 2 vCPU・メモリ8GB | 4 vCPU・メモリ8GBから拡張 | 個別 |
| ビルドのディスク容量 | 32GB | 32GB(最大64GB) | 個別 |
| ランタイムログ保持 | 1時間 | 1日 | 個別 |
| WAFのIPブロック/カスタムルール | 3/3 | 100/40 | 個別 |
| ログドレイン | なし | 設定可(トライアル除く) | あり |
| メールサポート | なし | あり | 専任 |
Proの関数実行時間は既定が300秒で、設定により800秒まで引き上げられ、1,800秒までの拡張はベータ扱いです。実務で効くのはビルドマシンの差より、商用利用の可否とシートの扱いになります。Enterpriseは公開価格が無く問い合わせ契約のため、価格比較の対象は実質HobbyとProの2つです。
Vercel Hobby(無料)に含まれる使用量と上限超過時の挙動
公式ドキュメントが項目別に明記するHobby無料枠の使用量内訳
Hobbyの「含まれる使用量」は、公式ドキュメントに項目別で示されています。転送量だけを見て判断すると、先に関数側の枠を使い切ることがあります。
| リソース | Hobbyに含まれる量 |
|---|---|
| Active CPU(関数のCPU実働時間) | 4 CPU時間 |
| Provisioned Memory(確保メモリ) | 360 GB時間 |
| 関数の呼び出し回数 | 100万回 |
| Edge Requests | 100万リクエスト |
| 画像変換 | 5,000回 |
| 画像キャッシュ読み取り/書き込み | 30万回/10万回 |
| Web Analyticsイベント | 5万件(保持1か月) |
| Speed Insightsイベント | 1万件(1プロジェクト) |
| Workflowイベント/書き込みデータ | 5万件/1GB |
| Global Config 読み取り/書き込み | 10万回/100回 |
Active CPUは、コードが実際にCPUを使っている時間だけを計測します。外部APIを叩くだけの薄い処理なら4 CPU時間は長く持ちますが、画像処理や集計のようにCPUを使い切る処理では一気に減ります。
転送量100GBがHobbyのフェアユース目安にとどまる理由と注意点
よく引用される「Hobbyは月100GBまで」という数字は、上記の含まれる使用量の表には載っていません。これはフェアユースガイドラインの「典型的な月間使用量の目安」として示されているもので、Fast Data Transferが月100GBまで、オリジンとの通信であるFast Origin Transferが月10GBまでと書かれています。フェアユース側の表にはActive CPU 4 CPU時間なども同じ値で再掲されますが、転送量だけは目安の側にしか存在しません。
この違いは実務上の意味を持ちます。含まれる使用量は超過すれば機械的に停止しますが、フェアユースの目安は外れ値になったら連絡するという運用で、公式も可能な限り事前に連絡して是正を相談すると明記しています。とはいえ100GBを恒常的に超える見込みがあるなら、設計を変えるかProへ移るのが前提です。転送量がどこで発生するのかを押さえておくと見積もりの精度が上がるため、CDNの仕組みとキャッシュ制御もあわせて確認してください。
Hobbyで上限に達した後は原則30日の待機期間になる仕組み
Hobbyには請求サイクルがないため、上限に達しても課金で継続することはできません。多くの場合、その機能を再び使えるまで30日待つことになります。例外はWeb Analyticsで、猶予期間の後に収集が止まり、7日後に再開します。
「超過すると即座にサイトが停止する」と説明されがちですが、正確には超過したリソースの機能が止まり、回復に30日かかる挙動です。公開中のサービスにとっては停止と大差ないため、業務で使うなら回復待ちを許容できるかで判断してください。
Vercel Hobbyが商用利用不可とされる規約上の線引きと判断基準
フェアユースガイドラインが定義する商用利用の具体例と対象範囲
フェアユースガイドラインは「Hobbyチームは非商用の個人利用のみに制限される。プラットフォームのあらゆる商用利用にはProまたはEnterpriseプランが必要」と定めています。この記事の旧版は「規約上の制限はなく商用利用も可能」と書いていましたが、これは誤りでした。
商用利用の定義はかなり広く取られています。原文では「プロジェクトの制作のいずれかの部分に関わった誰かの金銭的利益を目的として使われるデプロイメント。コードを書いた有給の従業員や業務委託者を含む」とされ、具体例として次が挙げられています。
- 訪問者から支払いを求める、または処理するあらゆる方法
- 製品やサービスの販売を広告すること
- サイトの制作・更新・ホスティングの対価を受け取ること
- アフィリエイトリンクがサイトの主目的であること
- Google AdSenseをはじめとする広告の掲載
さらに注記で、寄付の募集も商用利用に含まれると明示されています。
受託案件と個人のポートフォリオサイトで扱いが分かれる判断条件
ここで注意すべきなのは、判定の基準がサイトの規模でも収益額でもなく、制作に関わった人が対価を得たかどうかである点です。クライアントから報酬を受け取って作ったサイトは、たとえ月間数百アクセスの静的ページであっても、その時点でHobbyの範囲外になります。フリーランスや受託開発の納品先としてHobbyを使う運用は成立しないと考えてください。
一方、報酬を受け取らずに作った自分の作品置き場としてのポートフォリオや、学習用のアプリは非商用の扱いです。ただし判断に迷う構成なら、公式ドキュメントもVercelのサポートへ問い合わせるよう案内しています。なお、小規模でも対価が発生する案件を無料に近い費用で置きたいなら、Cloudflare Pagesの公開手順と独自ドメイン設定やFirebase Hostingの静的・SPA配信の仕組みが候補になります。こちらは無料枠の範囲で商用利用そのものを禁じてはいません。
Vercel Proの月額20ドルに実際に含まれる料金内訳と使用量
Proのプラットフォーム料金に含まれる1シートとクレジットの内訳
Proの20ドルは、利用者1人あたりの単価ではありません。公式ドキュメントはこれをプラットフォーム料金と呼び、内訳を「デプロイ可能なチームシート1つ」と「20ドル分の使用量クレジット」としています。つまり月20ドルを払うと、その20ドルは使用量の支払いにそのまま充当されます。
クレジットは月末に失効し、翌月頭にリセットされます。使用量が毎月20ドルに満たないチームでは20ドルが実質的な上限として働き、超えたチームでは最初の20ドル分が差し引かれる形です。使用量がクレジットの75%に達すると通知が届きます。
Pro固有の枠は転送1TBとEdge Requests 1,000万
Proで「クレジットを消費せずに使える枠」は2つだけです。Fast Data Transferの1TBと、Edge Requestsの1,000万リクエスト。この2つを超えた分と、それ以外のすべてのリソース(Active CPU、Provisioned Memory、関数呼び出し、画像変換など)は、まず20ドルのクレジットから引かれ、クレジットを使い切ると従量課金に切り替わります。
旧版が書いていた「Proは関数実行時間が月16時間まで」といった固定枠は、現在のドキュメントには存在しません。公式の料金表でProのActive CPU・Provisioned Memory・関数呼び出しの欄はいずれも「N/A(従量)」と記載されています。Hobbyの4 CPU時間のような明確な線を期待していると、見積もりを外します。
追加シートの単価と無料で増やせるViewerシートの権限範囲
チームに人を増やす場合、デプロイや設定変更ができるOwnerロールとMemberロールのシートが1人あたり月20ドルです。これに対し、ダッシュボードの閲覧、アナリティクスの確認、プレビューへのコメントだけを行うViewerシートは無料で人数無制限です。
「開発者3人だから月60ドル」という見積もりをよく見かけますが、実際にデプロイするのが1人で、残りがレビューとコメントだけなら20ドルのままで済みます。ディレクターやデザイナーをViewerで招く運用は、そのままコスト差になります。請求の閲覧と支払い手続きだけを担うBillingロールも別に用意されているため、経理担当に有料シートを割り当てる必要もありません。
有料Proチームに付く初年度無料ドメインの対象条件と利用時の注意点
2026年7月更新の公式ドキュメントでは、有料のProチームに対象TLDのドメイン1件が初年度無料で付きます。対象は.online、.site、.space、.store、.tech、.websiteの6種類で、1チームにつき1件です。新規契約ならアップグレードの決済画面で、既存のProチームならダッシュボードのドメイン検索から受け取ります。
この特典は2年目以降の更新には効かず、通常の登録料に戻ります。トライアル中のチーム、すでに受け取り済みのチーム、1件を超える追加ドメインは対象外です。既存ドメインを持ち込む場合は関係しないため、新規サービスの立ち上げで検証用ドメインが要る場面に限って効きます。
別料金で追加するProのアドオン機能と月額料金ごとの対象一覧
エンタープライズ向けと思われがちな機能の一部は、Proにアドオンとして用意されています。SAMLシングルサインオンがEnterprise専用という説明は現在では誤りです。
| アドオン | 料金 |
|---|---|
| SAML シングルサインオン | 300ドル/月 |
| HIPAA BAA | 350ドル/月 |
| Flags Explorer | 250ドル/月 |
| 高度なデプロイメント保護 | 150ドル/月 |
| 固定IP(Static IPs) | 100ドル/月・プロジェクト |
| プレビューデプロイのサフィックス | 100ドル/月 |
| Web Analytics Plus | 10ドル/月 |
| Speed Insights | 10ドル/月・プロジェクト |
| Observability Plus | 100万イベントあたり1.20ドル |
コンプライアンス要件でSSOや固定IPが必須の案件では、これらがベース料金に上乗せされます。固定IPには月額とは別にPrivate Data Transferの従量課金がかかり、東京リージョンでは1GBあたり0.207ドルです。SSOの300ドルはシート数に関係なく定額のため、少人数のチームほど負担率が高くなります。
東京リージョン(hnd1)の超過単価とPro利用時の請求試算
新規プロジェクトの既定リージョンはワシントンD.C.のiad1
Vercel Functionsの既定リージョンは、新規プロジェクトではすべてワシントンD.C.(iad1)です。日本の利用者であっても、何も設定しなければ関数はiad1で動き、iad1の単価で課金されます。東京の単価が適用されるのは、明示的にリージョンを指定した場合だけです。
リージョンはプロジェクト設定の画面か、vercel.jsonのregionsキーで指定します。
{
"$schema": "https://openapi.vercel.sh/vercel.json",
"regions": ["hnd1"]
}
配置できるリージョン数はプランで決まり、Hobbyは1つ、Proは5つ、Enterpriseは全リージョンです。プランの上限を超えるリージョンを指定するとビルド工程に入る前にデプロイが失敗します。なお静的コンテンツは設定にかかわらずCDNで各地に配信されるため、リージョン指定が効くのは関数の実行場所です。公式によると、配信の入口となるPoPは126拠点、コンピュートを置けるリージョンは20か所です。
東京リージョン(hnd1)に適用される主な超過単価と対象項目
東京リージョン(hnd1)を指定した場合に適用される単価は次のとおりです。このリージョン別価格が適用されるのはProプランで、Enterpriseは個別条件になります。
| リソース | 東京(hnd1)の単価 |
|---|---|
| Fast Data Transfer | 1TB込み・以降1GB 0.16ドル |
| Edge Requests | 1,000万込み・以降100万 2.60ドル |
| Fast Origin Transfer | 1GBあたり0.27ドル |
| Active CPU | 1時間あたり0.202ドル |
| Provisioned Memory | 1 GB時間あたり0.0167ドル |
| ISR 書き込み/読み取り | 100万あたり5.20/0.52ドル |
| 画像変換 | 1,000回あたり0.0661ドル |
| Blobストレージ | 1GBあたり0.025ドル |
| Private Data Transfer | 1GBあたり0.207ドル |
| 関数呼び出し(リージョン非依存) | 100万回あたり0.60ドル |
単価の水準はリージョンによって上下します。Active CPUは全リージョンで1時間あたり0.128ドルから0.221ドルの幅があり、東京の0.202ドルは高い側です。米国のワシントンD.C.(iad1)やポートランド(pdx1)は0.128ドルなので、同じ処理でも東京に置くとCPU課金は約1.58倍になります。逆に転送量は全体レンジが1GBあたり0.15ドルから0.35ドルのところ東京は0.16ドルで、安い側に位置します。関数呼び出しの単価だけはリージョンによらず一律です。
東京と大阪・ソウル・米国で異なるリージョン単価の比較と選定基準
関数を置く場所を1つ変えるだけで、計算処理の単価は次のように動きます。転送やEdge Requestsの単価は東京と大阪で同額のため、ここではリージョンごとに差が出る2項目を並べます。
| リージョン | Active CPU/時 | 確保メモリ/GB時 |
|---|---|---|
| 東京(hnd1) | 0.202ドル | 0.0167ドル |
| 大阪(kix1) | 0.202ドル | 0.0167ドル |
| ソウル(icn1) | 0.169ドル | 0.0140ドル |
| シンガポール(sin1) | 0.160ドル | 0.0133ドル |
| ワシントンD.C.(iad1) | 0.128ドル | 0.0106ドル |
| サンパウロ(gru1) | 0.221ドル | 0.0183ドル |
大阪は東京と同額で、両者の違いは画像変換だけです。東京が1,000回あたり0.0661ドル、大阪が0.0718ドルなので、画像変換を多く回すなら東京のほうが安く付きます。単価だけで米国へ寄せる案は、データベースが国内にあるなら往復の遅延が増えるうえ、Fast Origin Transferも増えるため差し引きで得にならない場合があります。関数はデータの置き場所に近づけるのが公式の推奨です。
可用性の観点も添えておきます。既定のiad1が落ちたときの切り替え順は公表されており、東京はP12、大阪はP13、ソウルはP14です。リージョンをまたぐ自動フェイルオーバーそのものはEnterpriseの機能である点は押さえておいてください。
月2TB転送のProチームを例にした月額請求の試算内訳と計算手順
東京リージョンで、1シートのProチームが1か月に次の使用量に達した場合を計算します。Fast Data Transfer 2TB、Edge Requests 2,000万、Active CPU 10時間、Provisioned Memory 1,000 GB時間、関数呼び出し300万回という想定です。ここでは1TBを1,000GBとして換算しています。
| 項目 | 課金対象量 | 金額 |
|---|---|---|
| Fast Data Transfer | 1,000GB | 160.00ドル |
| Edge Requests | 1,000万 | 26.00ドル |
| Provisioned Memory | 1,000 GB時間 | 16.70ドル |
| Active CPU | 10時間 | 2.02ドル |
| 関数呼び出し | 300万回 | 1.80ドル |
| 使用量合計 | – | 206.52ドル |
| 月次クレジット | – | -20.00ドル |
| プラットフォーム料金 | – | 20.00ドル |
| 請求合計 | – | 206.52ドル |
転送量とEdge Requestsは含まれる枠を超えた分だけが課金対象で、Active CPU・Provisioned Memory・関数呼び出しはProに枠がないため全量が対象です。実際の請求はダッシュボードの使用量表示で確認してください。
内訳は大きく偏ります。転送量だけで160.00ドル、請求全体の約77%を占めます。関数の計算処理にあたるActive CPUと呼び出し回数の合計は3.82ドルで、全体の2%に届きません。Vercelの請求が想定外に膨らむとき、原因は重い処理ではなく配信したバイト数であるケースが大半です。画像や動画をVercel経由で配信しているなら、そこが最大の削減余地になります。同じ2TBでも、エグレス無料をうたうCloudflare R2のようなS3互換オブジェクトストレージへ大容量ファイルを移すと、この160ドルの大半が消えます。
Active CPUと確保メモリで異なる課金条件の非対称性と確認方法
関数まわりの2つの単価は、課金される条件が異なります。Active CPUはコードが実際に走っている間だけ計測され、外部への問い合わせを待つI/O待機中は停止します。一方Provisioned Memoryは、インスタンスが生きている間ずっと課金され、I/O待機中も止まりません。
この非対称性が意味するのは、遅い外部APIやデータベースを待つ処理ほどメモリ側のコストが積み上がるということです。上の試算でもActive CPUの2.02ドルに対しProvisioned Memoryは16.70ドルと8倍以上でした。関数のタイムアウトを長く設定している場合や、レスポンスの遅い外部サービスに依存している場合は、割り当てメモリを下げるか、待ち時間そのものを短くする改修のほうが効きます。
公式は4GBメモリの関数を例に、CPU実働4秒・インスタンス生存10秒なら1回の呼び出しでCPU分とメモリ分がほぼ同額になると示しています。同時実行数を上げて1インスタンスで複数リクエストをさばけば、メモリの単価は処理した件数で割り算されるため1件あたりでは下がります。
Vercelの請求書で後から気づく課金対象リソースの確認一覧
キャッシュ・キュー・ファイアウォールで発生する従量課金の対象と単価
転送とコンピュート以外にも、東京リージョンには単価が設定された項目が並びます。単体では小さくても、リクエスト数が伸びるとまとまった金額になります。
| リソース | 東京(hnd1)の単価 |
|---|---|
| Runtime Cache 書き込み | 100万あたり5.20ドル |
| Runtime Cache 読み取り | 100万あたり0.52ドル |
| Queue API 操作 | 100万あたり0.8544ドル |
| Edge Requests 追加CPU時間 | 1時間あたり0.39ドル |
| WAF レート制限(許可分) | 100万あたり0.65ドル |
| OWASP 検査リクエスト | 100万あたり1.04ドル |
| OWASP 検査ペイロード | 1GBあたり0.26ドル |
| Blob 単純操作/高度な操作 | 100万あたり0.37/4.70ドル |
| Blob データ転送 | 1GBあたり0.053ドル |
| Service Requests | 100万あたり0.65ドル |
| Drains 送出量 | 0.50ドル |
| Global Config 読み/書き | 3.00ドル/5.00ドル |
気をつけたいのはRuntime CacheとISRの書き込みです。読み取りの10倍の単価が設定されているため、再検証の間隔を短くしすぎた構成では書き込み側が跳ねます。WAFのマネージドルールセットを有効にしている場合も、検査したリクエスト数とペイロード量の両方で課金される点を見落としがちです。
アナリティクス系の機能はProに含まれる無料枠を持たない理由と課金条件
Web AnalyticsはHobbyに月5万イベントが含まれますが、Proの「含まれるイベント」は公式表でNoneと記載されています。Proでは1,000イベントあたり0.03ドルの従量課金になり、レポートで遡れる期間は12か月です。月10ドルのWeb Analytics Plusを付けると保持が24か月に伸び、UTMパラメータの取得とカスタムイベントのプロパティ8個までが使えるようになります。
Speed InsightsはHobbyが1プロジェクト・1万イベントまで無料で、超過分は1万イベントあたり0.65ドルです。Proでは1プロジェクトにつき月10ドルのアドオンとして扱われるため、対象プロジェクトが増えるほど固定費が積み上がります。計測を全プロジェクトに入れる前に、対象を絞る判断をしておくと後の請求が読めます。
マイクロフロントエンドと一括リダイレクトに設定された利用枠と超過条件
Microfrontendsのルーティングは、Hobbyが月5万リクエスト・2プロジェクトまで、Proは含まれる枠なしで100万リクエストあたり2ドルです。2プロジェクトを超える分は1プロジェクトあたり月250ドルが加算されます。分割の単位を細かく切りすぎると、この固定費が効いてきます。
一括リダイレクトはProに1,000件が含まれ、追加は25,000件ごとに月0.002ドルです。旧サイトからの移行で数万件のリダイレクトを持ち込むケースでも金額は小さく、ここが請求を押し上げる要因になることはまずありません。こうした細目まで含めてクラウド費用を継続的に見るなら、FinOpsによるクラウドコスト管理の枠組みが土台になります。
高額請求を止める予算設計とVercel Proへ上げる判断基準
Spend Managementによる上限設定と通知の初期値
Proではspend management(支出管理)で、請求サイクル内の支出がしきい値に達したときの通知と自動アクションを設定できます。新規顧客に対しては、1請求サイクルあたり200ドルの時点で通知が飛ぶ設定が既定で有効になっています。
Vercelの料金への不満は、金額より「気づいたときには膨らんでいた」という点に集まります。クレジットの75%到達通知と支出管理のしきい値は、本番公開の前に設定しておく項目です。既定の200ドルが許容範囲より高いなら下げてください。クレジットを超えたあとは日次と週次の使用量サマリーがメールで届くため、そちらも受信先を確認しておきます。
ビルドの課金条件とElasticビルドマシンに適用される既定
ビルド時間はCPU分あたり0.0035ドルです。公式の例では2分34秒のビルドをEnhancedマシン(8 CPU)で実行すると、3分に切り上げて8 CPUを掛けた0.084ドルになります。標準ビルドマシンは、オンデマンド同時実行を有効にしているかElasticビルドマシンを選んだ場合にのみ課金対象です。
2026年8月時点の公式ドキュメントでは、新規チームは既定でElasticビルドマシンを使い、プロジェクトのビルド負荷に応じてマシンが自動で選ばれます。つまり新規チームは既定で課金対象に入ります。とはいえ単価が小さいため、この項目がビルド頻度で請求全体を押し上げることはまずありません。同時実行にはチームあたり500ビルドというフェアユース上限があり、超えた分はキューで待ちます。
Proへ上げるべき利用条件と、上げても費用を解決しない条件と判断軸
判断は単純です。金銭が1円でも絡むならProに上げてください。広告、決済、アフィリエイト中心のサイト、受託制作、寄付の募集はいずれも規約上Hobbyでは運用できません。この場合、転送量が月1GBでもProが必要です。転送量が月100GBに近づいている、あるいは複数人でデプロイするという条件も、そのままProへの移行理由になります。
逆に、Proへ上げても解決しない状況もはっきりしています。請求の大半が転送量で占められ、月200ドルを超えているケースです。プランを上げても転送の単価は変わらないため、画像や大容量アセットを別のオブジェクトストレージへ逃がす、キャッシュのヒット率を上げる、といった構成側の対処が必要になります。そもそもサーバーサイド処理が無く静的ファイルの配信だけなら、GitHub Pagesとは?できること・使い方・料金をわかりやすく解説で扱っている無料ホスティングでも要件を満たせます。
フルスタックの機能を保ったまま乗り換え先を比べるなら、料金体系の考え方が近いAWS Amplify Hostingの料金と構成の違いが比較対象になります。動的処理を含めて自前で運用するなら、コンテナ化が次の選択肢です。Next.jsをコンテナで動かす構成はDockerでNext.jsアプリケーションを動かす手順で扱っています。自社の配信構成をどこに置き直すと転送費が下がるのか判断がつかない場合は、インフラ構築(AWS・Google Cloud・Azure)で現行構成の棚卸しから設計まで相談できます。
よくある質問
Vercelの無料プランはどこまで使えますか?
Active CPU 4時間、確保メモリ360 GB時間、関数呼び出し100万回、Edge Requests 100万、画像変換5,000回が含まれる使用量です。データ転送はフェアユースの目安として月100GBまでという基準です。上限に達すると該当機能が止まり、多くの場合は再び使えるまで30日待つことになります。また、Hobbyでは関数を配置できるリージョンが1つに限られ、ルーティングミドルウェアの配信リージョンもProより少ない設定です。
個人ブログに広告やアフィリエイトを貼る場合もProは必要ですか?
必要です。Google AdSenseなどの広告掲載、アフィリエイトを主目的とするサイト、寄付の募集はいずれもフェアユースガイドライン上の商用利用にあたり、HobbyではなくProまたはEnterpriseが求められます。収益額の多寡は判定に関係しません。なお、いきなり課金する前にPro機能を試せるトライアルが用意されています。トライアル中はログドレインなど一部機能に制限があり、初年度無料ドメインの特典も対象外です。
独自ドメインを使うのに追加料金はかかりますか?
すでに持っているドメインをVercelのプロジェクトに接続する分には、HobbyでもProでも追加料金はかかりません。SSL証明書もLet’s Encryptで自動発行され、Vercel以外で登録したドメインでも無料です。独自の証明書を持ち込めるのはEnterpriseのみとなります。ドメイン数の上限はHobbyが1プロジェクトあたり50、Proは無制限です。Vercel上で新規に登録する場合はTLDごとの登録料が発生しますが、有料Proチームは対象TLD6種から1件を初年度無料で受け取れます。
Proは1人あたり20ドルですか、チームだと人数分かかりますか?
20ドルはプラットフォーム料金で、デプロイ可能な1シートと20ドル分のクレジットを含みます。デプロイや設定変更を行うOwner・Memberのシートを追加する場合のみ1人20ドルが加算され、閲覧とコメントだけのViewerシートは無料・無制限です。Viewerは設定変更もデプロイもできません。請求まわりだけを担当するBillingロールも用意されているため、全員に有料シートを割り当てる必要はありません。
Enterpriseプランの料金はいくらですか?
公開価格はなく、個別契約です。独自のSSL証明書の持ち込み、障害時のフェイルオーバー先リージョンの指定、専任サポート、カスタム上限といった条件が対象になります。ただしSAMLシングルサインオン(月300ドル)やHIPAA BAA(月350ドル)はProのアドオンとして購入できるため、これらが目的ならEnterpriseへ移らずに済む場合があります。
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