スコープノート(scope note、略号SN)とは、シソーラスや件名標目表で、ある用語をどの意味・どの範囲で使うかを書き添える注記です。米国の規格ANSI/NISO Z39.19-2005(2010年再確認)は、用語に続けて置き、その用語の対象範囲、特別な用法、付与のルールを説明する注記と定義しています。この記事では、Z39.19、W3CのSKOS、情報アーキテクチャの定番書の記述と、MeSH・米国議会図書館件名標目表(LCSH)・国立国会図書館件名標目表(NDLSH)の実際のレコードをもとに、スコープノートの役割と書き方を説明します。
まとめ:スコープノートの定義と書き方の要点
- 定義:用語の適用範囲を限定・拡張する、意味の重なる語を区別する、索引者と検索者に使い方を助言する、の3つの用途を持つ注記です(Z39.19 6.2.2)。
- 書く内容:採用した意味を書き、必要に応じて意図的に除外した意味と、その振り分け先の語を示します。
- 限定語との違い:「cranes (birds)」のような括弧の限定語は用語の一部で、原則として同形異義語に付けます。スコープノートは用語の一部ではなく、どの用語にも付けられます。
- 相互参照:スコープノートで他の語に触れたら、相手の語にもスコープノートか「X SN」の印を付け、片方を変えたときに他方を見直せるようにします。
- 範囲が変わったとき:スコープノートを書き換えるだけでなく、変更の経緯をヒストリーノート(HN)に残します。
- 機械可読にするなら:SKOSでは
skos:scopeNoteで書きます。推論なしのSPARQLではskos:noteで検索しても拾えない点に注意が要ります。
スコープノートの定義:シソーラスで語の適用範囲を限定する注記
シソーラスは、同じ概念を表す複数の言い方から索引に使う1語(優先語・ディスクリプタ)を決め、語と語の上下関係や関連関係を記号で示した統制語彙です。ただし語を1つに決めても、その語が何を含み何を含まないかは語の字面だけでは伝わりません。そこで用語レコードに添えるのがスコープノートです。
Z39.19の6.2.2節は、スコープノートの用途を次のように定めています。
- 用語の適用範囲を限定する、または拡張する
- 自然言語では意味が重なる用語どうしを区別する
- 索引者または検索者に、用語の使い方についてその他の助言をする
同節はさらに、スコープノートには選んだ意味を書き、自然言語で認められていても統制語彙から意図的に除外した意味も示してよいとしています。規格に載っている例は「illuminations(彩飾)」で、手描きであれば、写本の装飾と挿絵の両方を含み、一部の初期刊本も対象にすると書かれています。装飾だけか挿絵も含むか、写本だけか刊本も含むかという、字面では決まらない境界を1文で確定させているわけです。
ウェブの情報設計の定番書であるLouis Rosenfeld・Peter Morville・Jorge Arangoの『Information Architecture: For the Web and Beyond』第4版(2015年)も、第10章でスコープノートを扱っています。同書は、スコープノートを優先語の意味を意図的に限定して曖昧さを排除する特殊な定義と説明し、索引者が正しい優先語を選ぶ助けになり、検索や検索結果の表示で利用者に見せることもできると述べています(原書p.284、p.300)。シソーラスを含む情報アーキテクチャの全体像はインフォメーションアーキテクチャ(IA)とは?情報アーキテクチャの4要素と設計手順で整理しています。
Z39.19とISO 25964での位置づけ
シソーラスの作り方を定めた規格は、国際規格ISO 25964-1:2011(前身はISO 2788)と米国規格ANSI/NISO Z39.19-2005(2010年再確認)が代表的です。Z39.19はNISOのサイトで全文を無償で読めるため、この記事の規格上の記述はZ39.19から引いています。ISO 25964-1は改訂作業が進んでおり、ISOのプロジェクト86713は2026年10月3日付で段階コード60.00(発行準備中)に入りました。改訂版の副題は「Thesauri for information retrieval, management and use」で、2011年版の「Thesauri for information retrieval」から管理と利用が加わっています。発行後に規定の細部を引くときは、版を確かめてから参照してください。
限定語(括弧付きの修飾語)との違い
同じ綴りで意味の違う語は、括弧の限定語で区別します。Z39.19の例では「cranes (birds)」と「cranes (lifting equipment)」、「seals (animals)」と「seals (law)」です。限定語は用語の一部で、索引にも検索にもそのまま現れます。Z39.19は「限定語はスコープノートではない」と明記し、限定語が付いた語にさらにスコープノートを付けてもよいとしています。
使い分けの基準は、区別したいのが同形異義語かどうかです。綴りが同じで意味が別なら限定語、綴りは1つで意味の範囲に揺れがあるならスコープノート、という順で判断します。Z39.19も、限定語は原則として同形異義語にだけ付け、スコープノートはどの用語にも付けられると書き分けています。
定義・ヒストリーノート・編集注記との違い
用語レコードに付く注記はスコープノートだけではありません。W3CのSKOS Reference(2009年勧告)は、概念に付ける注記として7つのプロパティを定め、そのうち6つを skos:note の下位プロパティにしています。主なものの違いは次のとおりです。
| 注記 | 略号・SKOS | 書くこと |
|---|---|---|
| スコープノート | SN / skos:scopeNote | 索引で使う範囲・除外する意味 |
| 定義 | skos:definition | 意味の完全な説明 |
| ヒストリーノート | HN / skos:historyNote | 採用日・範囲や形の変更履歴 |
| 編集注記 | skos:editorialNote | 管理者向けの作業メモ |
| 用例 | skos:example | 概念の具体例 |
SKOS Primerは、skos:scopeNote を概念の意図した意味についての、部分的でもよい情報で、特に索引作業での使い方の制限を示すものと説明し、skos:definition を意味の完全な説明としています。スコープノートは辞書の語釈を書く場所ではなく、索引でどこまでをこの語に入れるかを決める場所です。
SN・BT・NT・RT・UF・USE:スコープノートと並ぶ関係記号
シソーラスの用語レコードでは、スコープノートが関係記号と一緒に並びます。Z39.19の4.2節が定める主な略号は次のとおりです。
| 略号 | 正式名 | 示す内容 |
|---|---|---|
| SN | Scope Note | 用語の適用範囲 |
| HN | History Note | 用語の変更履歴 |
| BT | Broader Term | 1段上の上位語 |
| NT | Narrower Term | 1段下の下位語 |
| RT | Related Term | 上下関係にない関連語 |
| TT | Top Term | 階層の最上位語 |
| USE | USE | 非優先語から優先語への参照 |
| UF | USED FOR | 優先語から非優先語への逆参照 |
| X SN | See Scope Note for… | 他語のSNから参照されている印 |
BTとNT、USEとUFは対になり、一方を書けば相手側に逆向きの参照を書きます。RTは両方向とも同じRTです。BTとNTにはBTG/NTG(総称関係)、BTP/NTP(部分関係)、BTI/NTI(事例関係)という細分もあります。
Z39.19の9.2.2.1節は、用語の詳細表示の並び順として、スコープノート、USE、UF、BT、NT、RTの順を推奨しています。この順に表示すれば、関係を読む前にその語の範囲を確認できます。範囲を知らないまま下位語の一覧を見ると、語の境界を下位語から推測することになります。
実在するシソーラス・件名標目表のスコープノート例
規格の説明だけでは書き方の幅が分からないので、公開されている3つの統制語彙から実際のレコードを引きます。いずれも2026年10月7日にAPIまたは公式ページで取得した内容です。
MeSH:Scope Noteと索引者向けAnnotationの分離
米国国立医学図書館(NLM)の医学件名標目表MeSHでは、「Female(D005260)」のScope Noteが、卵子をつくる生物学的な性を持つ生物という意味の説明になっています。一方で、索引の付け方の指示は別項目のAnnotationに分けて書かれています。Annotationには、女性の器官・疾患・生理過程・遺伝などにだけチェックタグとして使い、社会的・文化的・政治的・経済的な力としての「WOMEN」と混同しないこと、索引者はヒトと多細胞動物にだけ使うことが書かれています。
Z39.19のスコープノートは範囲の限定と索引者への助言の両方を担いますが、MeSHはこれを意味の説明と索引指示の2項目に分けています。自社で用語集を作るときも、利用者に見せる説明と、付与する人だけが読む指示を分けておくと、画面にどちらを出すかを後で選べます。
LCSH:MARC 21典拠データ680フィールドの書き方
米国議会図書館件名標目表(LCSH)では、スコープノートはMARC 21典拠フォーマットの680フィールド(Public General Note)に入ります。米国議会図書館のMARC 21典拠フォーマットの680フィールド解説には、件名「Firedamp(坑内ガス)」の例が載っています。680フィールドは「Here are entered works on methane as a combustible gas formed in coal mines.」で始まり、炭層中に存在するメタンを扱う著作は「Coalbed methane」へ入れると続けます。
「この件名に入れるもの」を先に書き、「入れないもの」とその行き先を後に書く2文構成です。範囲の限定と振り分け先の指示を1つの注記で済ませているので、索引者は迷った資料をどちらに置くかをその場で決められます。
NDLSH:「建築 (日本)」の使用範囲と振り分け先
国立国会図書館件名標目表(NDLSH)の「建築 (日本)」(ID 00565577)には、次の注記が付いています(Web NDL Authoritiesで取得)。
- 日本国内の地方名、都市名による地理区分(例:
建築 (日本) -- 東京都) - 伝統的な日本様式および和洋折衷の建築に使用
- 日本における、様式を問わない建築一般については「
建築 -- 日本」を使用
「建築 (日本)」は日本様式という建築の様式を表し、「建築 -- 日本」は日本で建てられた建築一般を表します。見た目の近い2つの件名の境界を、使用範囲と振り分け先の2文で示した例です。
この注記は、Web NDL AuthoritiesのRDFでは skos:scopeNote ではなく skos:note として出力されています。NDLSHのデータをSKOS対応のツールに取り込み、skos:scopeNote で絞り込むと、この注記は1件も出てきません。
スコープノートの書き方:手順と点検項目
Z39.19の規定と上の実例から、スコープノートを書く手順を4段に分けます。
手順1:スコープノートが必要な語の選定
すべての語に書く必要はありません。優先して書くのは次の語です。
- 自然言語で意味が重なる語どうし(Z39.19の例では、民家の建築様式「dogtrots」と、家と車庫をつなぐ屋根付き通路「breezeways」)
- 日常語より狭い、または広い範囲で使う語
- 上の「建築 (日本)」と「
建築 -- 日本」のように、表記の近い別の語がある語 - 索引者の付与がばらついている語(付与結果を語ごとに抜き出して比べると見つかります)
手順2:採用する意味・除外する意味・振り分け先の記述
本文は、採用する意味、除外する意味、除外した意味の振り分け先、の順に書くと、LCSHやNDLSHの書き方と揃います。日本語なら次の型に当てはめると書き始めやすくなります。
- 「〇〇(の範囲)に使用。」
- 「△△は含めない。」または「△△は対象外。」
- 「△△については「□□」を使用。」
評価語や由来の説明は入れません。スコープノートは索引でどちらの語を選ぶかを決めるための注記で、定義には概念の意味を、ヒストリーノートには統制語彙内での採用や意味・表記の変更履歴を記します。
手順3:相互スコープノートとX SNの付与
Z39.19の6.2.2.1節は、スコープノートで他の語に触れたら、触れた語の側にも原則として相互のスコープノートを付けるよう求めています。上の「dogtrots」には「breezewaysと区別する」と書き、「breezeways」には「dogtrotsとは別」と書く、という形です。
相手の語の範囲は明確で説明が要らない場合でも、相手のレコードに「X SN」の印を付けます。Z39.19の例では、「information science」に「X SN library science」と書き、library scienceのスコープノートから参照されていることを示します。片方の語を変えたり削除したりするときに、もう一方への影響を確認するための印です。
手順4:範囲の変更とヒストリーノート
Z39.19は、用語の範囲の変更をヒストリーノート(HN)に記録するよう定めています。スコープノートを書き換えると、変更前にその語で索引された資料と変更後の資料が同じ語の下に混ざります。いつから範囲が変わったかが残っていないと、検索者は古い資料が新しい範囲に合わない理由を確かめられません。スコープノートを直したら、同時に日付付きのヒストリーノートを足します。
SKOSでのスコープノートの記述とPythonによる相互参照の点検
スコープノートを機械可読にするなら、W3CのSKOSで書くのが標準的です。次のTurtleは、架空の小さな建築用語集で、「破風」のスコープノートが「切妻」に触れ、切妻側に相互参照の印を編集注記として残した例です。
@prefix skos: <http://www.w3.org/2004/02/skos/core#> .
@prefix ex: <https://example.com/thesaurus/> .
ex:hafu a skos:Concept ;
skos:prefLabel "破風"@ja ;
skos:broader ex:yane ;
skos:scopeNote "屋根の妻側にできる三角形の部分と、その板飾りに使用。「切妻」の屋根形式そのものには使わない。"@ja ;
skos:historyNote "2026-10-07 適用範囲に板飾りを追加。"@ja .
ex:kirizuma a skos:Concept ;
skos:prefLabel "切妻"@ja ;
skos:broader ex:yane ;
skos:scopeNote "棟から両側へ流れる屋根形式に使用。"@ja ;
skos:editorialNote "X SN 破風"@ja .
ex:yane a skos:Concept ;
skos:prefLabel "屋根"@ja ;
skos:narrower ex:hafu , ex:kirizuma .
このデータをPythonのRDFライブラリrdflib 7.6.0で読み込み、SPARQLで注記を検索しました。再現するには、python -m pip install rdflib==7.6.0 で導入し、上のTurtleをUTF-8の sn.ttl として作業ディレクトリに保存してから実行します。
import rdflib
g = rdflib.Graph().parse("sn.ttl", format="turtle")
PREFIX = "PREFIX skos: <http://www.w3.org/2004/02/skos/core#>\n"
q_note = PREFIX + "SELECT ?c ?n WHERE { ?c skos:note ?n }"
q_path = PREFIX + "SELECT ?c ?n WHERE { ?c skos:note|skos:scopeNote|skos:historyNote|skos:editorialNote ?n }"
print("skos:note だけで検索:", len(list(g.query(q_note))))
print("下位プロパティも列挙:", len(list(g.query(q_path))))
実行結果は次のとおりです。
skos:note だけで検索: 0
下位プロパティも列挙: 4
SKOSの仕様上、skos:scopeNote は skos:note の下位プロパティですが、推論を有効にしていないトリプルストアやrdflibでは、skos:note を検索しても下位プロパティの値は返りません。この例の注記は上の列挙で取得できます。SKOSの標準注記をすべて対象にする場合は、列挙に skos:definition、skos:example、skos:changeNote も加えるか、SKOSの下位プロパティ定義を読み込んでRDFS推論を有効にします。オントロジーをRDFとOWLで書く手順はオントロジーとは?RDFとOWLで意味を定義する実装手順【2026年版】で扱っています。
手順3の相互参照は、参照先や変更箇所が増えるほど確認項目も増えるため、機械的な点検を併用します。次のPythonは、スコープノート中で「」に入れて挙げた語について、相手側に相互のスコープノートかX SNの印があるか、BT・NT・RTが対になっているかを点検します。
import re
# 用語レコード: SN(スコープノート)・BT・NT・RT・XSN(他語のSNから参照されている印)
thesaurus = {
"破風": {"SN": "屋根の妻側にできる三角形の部分と、その板飾りに使用。「切妻」の屋根形式そのものには使わない。",
"BT": ["屋根"], "XSN": []},
"切妻": {"SN": "棟から両側へ流れる屋根形式に使用。",
"BT": ["屋根"], "XSN": []},
"屋根": {"SN": "", "NT": ["破風", "切妻"], "XSN": []},
}
INV = {"BT": "NT", "NT": "BT", "RT": "RT"}
def check(th):
problems = []
for term, rec in th.items():
# 1) SN中で「」で挙げた語は、相手側にもSNかX SNの印が要る
for ref in re.findall(r"「(.+?)」", rec.get("SN", "")):
if ref not in th:
problems.append(f"{term}: SNが未登録の語「{ref}」を参照")
elif term not in re.findall(r"「(.+?)」", th[ref].get("SN", "")) and term not in th[ref].get("XSN", []):
problems.append(f"{ref}: 「{term}」のSNから参照されているが、相互SNもX SNも無い")
# 2) BT/NT/RTの逆参照
for rel, inv in INV.items():
for other in rec.get(rel, []):
if term not in th.get(other, {}).get(inv, []):
problems.append(f"{other}: {inv} {term} が無い({term} の {rel} と非対称)")
return problems
for p in check(thesaurus):
print(p)
Python 3で実行すると、切妻側に印が無いことを検出します。
切妻: 「破風」のSNから参照されているが、相互SNもX SNも無い
切妻のレコードに "XSN": ["破風"] を足すと出力は空になり、屋根のNTから切妻を外すとBTとNTの非対称も検出します。どちらも実行して確認しました。「」で語を挙げる書式を用語集の中で統一しておけば、この程度のコードで点検を回せます。
スコープノートを書かない方がよい場面と失敗パターン
スコープノートは、使い方を間違えると索引のばらつきを減らすどころか増やします。避けたいのは次の4つです。
- 同形異義語をスコープノートだけで区別する:「セル」がExcelのセルか生物の細胞かは、限定語を付けて「セル (表計算)」「セル (生物学)」と別の語にします。語が1つのままだと、検索結果には両方の意味の資料が混ざります。
- 辞書の定義を貼り付ける:定義は意味を広く説明するので、どこまでをこの語で索引するかが決まりません。『Information Architecture』第4版も、定義は複数の意味を示しがちで、スコープノートは1つの概念に意味を絞るものだと区別しています(原書p.300)。
- 片方の語にだけ書く:「AはBと区別する」とA側にだけ書くと、B側から来た索引者は区別に気づきません。手順3の相互参照を省くと、片方の範囲を変えたときにもう一方の見直しが漏れます。
- 範囲を黙って書き換える:手順4のとおり、変更前後の資料が混ざります。範囲を大きく変えるなら、新語の設置と併せて、旧語で索引した資料の再索引や、旧語を検索用に残す対応を検討します。USE参照だけでは、既存資料と新しい適用範囲の不一致は解消しません。Z39.19の11.3.2.1節も、用語を変更・削除するときは既存の索引済みレコードの検索への影響を考慮するよう求めています。
社内タグでは、全語への注記を運用上必須としていなければ、意味が重なる語や、日常語と異なる範囲で使う語を優先してスコープノートを用意します。付与結果がばらついた語から順に足していく進め方で足ります。社内文書の分類軸やフォルダ階層の決め方は文書管理の分類方法|分類軸の選び方とフォルダ階層・命名規則の設計手順で解説しています。
アーカイブ記述の「Scope and content」との違い
英語の「scope note」は、文書館(アーカイブズ)の目録で使う「scope and content」と混同されることがあります。国際文書館評議会(ICA)の記述標準ISAD(G)第2版の3.3.1「Scope and content(範囲と内容)」は、記述対象の記録群について、対象期間や地域などの範囲と、文書の形態や主題などの内容を要約する要素です。目的は、利用者がその記録群が自分の調べものに関係しそうかを判断できるようにすることとされています。ISAD(G)の付録の例は、カナダの鉄道運河省の記録群について、通信文・契約書・技術者の図面・写真などを含むと要約したものです。
シソーラスのスコープノートは1つの用語に付き、その語で索引する範囲を決めます。アーカイブの「scope and content」は、記録群・シリーズ・ファイル・個別資料などの記述単位に付き、その範囲と内容を説明します。米国アーキビスト協会(SAA)の用語辞典も、scope noteをシソーラス・典拠ファイル・分類表の標目の正しい使い方を示す記述と定義しています。目録の記述要素を調べているなら、ISAD(G)やEADの <scopecontent> 要素の資料に当たってください。
また、プロジェクト管理の「スコープ記述書(scope statement)」も別の文書です。こちらは成果物と作業範囲を定めるもので、用語の範囲とは関係しません。
よくある質問
スコープノートとは何ですか?
シソーラスや件名標目表で、用語をどの意味・どの範囲で使うかを書き添える注記です。ANSI/NISO Z39.19は、用語に続けて置き、その用語の対象範囲、特別な用法、付与のルールを説明する注記と定義しています。
シソーラスのSNとは何の略ですか?
Scope Note(スコープノート)の略です。同じ用語レコードには、上位語のBT(Broader Term)、下位語のNT(Narrower Term)、関連語のRT(Related Term)、非優先語の逆参照UF(USED FOR)なども並びます。
スコープノートと定義(definition)の違いは何ですか?
定義は語の意味を説明し、スコープノートはその語で索引する範囲を決めます。SKOS Primerは、skos:definition を意味の完全な説明、skos:scopeNote を特に索引での使い方の制限を示す部分的な情報と区別しています。
日本の件名標目表にもスコープノートはありますか?
あります。国立国会図書館件名標目表(NDLSH)の「建築 (日本)」には、「伝統的な日本様式および和洋折衷の建築に使用」と使用範囲を示し、様式を問わない建築一般は別の件名を使うよう振り分ける注記が付いています。Web NDL Authoritiesで確認できます。
スコープノートはSKOSでどう書きますか?
skos:scopeNote プロパティに、言語タグ付きの文字列で書きます。変更履歴は skos:historyNote、管理者向けのメモは skos:editorialNote に分けます。推論なしで skos:note を検索しても下位プロパティは拾えないため、取り出すときは下位プロパティを列挙します。