情報設計とは、情報の構造を設計し、利用者が必要な情報にたどり着ける状態をつくる仕事です。Web制作の現場では、英語のインフォメーションアーキテクチャ(IA・情報アーキテクチャ)の訳語として「情報設計」が使われています。分野の標準教科書とされる『Information Architecture: For the Web and Beyond』第4版は、IAを1つの文では定義せず、あえて4通りの定義を並べました。ここでは同書とW3Cの仕様、Nielsen Norman Groupの解説を一次情報として、情報設計の定義・4つの構成システム・LATCH法との関係・設計手順、そして外注するかどうかの判断までを整理します。
まとめ:情報設計(インフォメーションアーキテクチャ)の要点
- 情報設計(IA)には単一の定義がありません。標準教科書は「共有された情報環境の構造設計」「組織化・ラベリング・検索・ナビゲーションの各システムの統合」など4通りの定義を併記し、著者自身が単一の定義を出せない理由を説明しています。
- 日本語の「情報設計」は、IAの訳語のほかに、図解や表示を整える「情報デザイン」や、システム開発で画面項目・データを決める工程を指すこともあります。Web制作の文脈ならIAと読んで差し支えありません。
- 構成要素は組織化システム・ラベリングシステム・ナビゲーションシステム・検索システムの4つです。「サイトマップやワイヤーフレームを作ること」はIAの一部にすぎません。
- LATCH法はこの4システムとは別系統の枠組みです。LATCHは情報を並べる「軸」の分類、4システムは情報環境の「部品」の分類であり、同じ階層に並べると設計の議論が噛み合わなくなります。
- 分類設計の難所は、トピック別・利用者別のような「曖昧なスキーム」にあります。五十音順や日付順のような「厳密なスキーム」は作るのも使うのも容易ですが、利用者が名前を知っている場合にしか機能しません。
- IAとUIデザインの違いは、可視か不可視かにあります。ナビゲーションメニューは構造の表現であって構造そのものではないため、見た目を変えても構造の問題は解決しません。
- 複数の到達経路を用意することは、使いやすさの問題であると同時にアクセシビリティの適合要件です。WCAG 2.2は達成基準2.4.5でレベルAAとして明文化しています。
- 情報設計を独立した工程として発注すべきなのは、ページ数が多いサイトのリニューアルや、利用者の種類が複数ある場合です。10ページ前後で導線が1本のLPなら、独立工程にするのは過剰です。
以下、この8点の根拠を教科書と仕様の記述にさかのぼって確認します。
情報設計とインフォメーションアーキテクチャの定義と役割の範囲
標準教科書が示すインフォメーションアーキテクチャの4通りの定義
IAの分野で標準的な文献とされるのが、Louis Rosenfeld・Peter Morville・Jorge Arangoによる『Information Architecture: For the Web and Beyond』第4版(O’Reilly Media、2015年)です。表紙の絵柄から「ポーラーベア本」とも呼ばれます。同書の第2章は、IAを次の4通りに定義しています。
- 共有された情報環境の構造設計(The structural design of shared information environments)
- デジタル・物理・チャネル横断のエコシステムにおける、組織化・ラベリング・検索・ナビゲーションの各システムの統合(The synthesis of organization, labeling, search, and navigation systems)
- ユーザビリティ・ファインダビリティ・理解を支えるように情報の製品と体験を形づくる技術と科学
- デザインと建築の原理をデジタル領域に持ち込む、新興の専門分野と実践者コミュニティ
注目すべきは、著者らが「単一の定義を期待していましたか。短く気の利いた一言を。……それは夢物語です」と書き、単一の定義を出さない理由そのものを説明している点です。理由は言語と表現に内在する困難にあります。どんな文書も著者の意図を完全には表さず、どんなラベルも文書の意味を完全には捉えられません。定義によって概念を理解しやすくするのがIAでありながら、その定義自体が不完全だという逆説です。IAを「Webサイトの設計図を描くこと」と言い切る説明は、この逆説を落としています。
UI・UXデザインと情報設計の役割の違い:可視の層と不可視の層
同書の第2章は冒頭で、「IAとはサイトマップやワイヤーフレーム、ナビゲーションメニューを作ることではないのか」という読者の想定に触れ、それらは重要な構成要素ではあるが話の一部にすぎないと答えています。Nielsen Norman GroupのJen Cardelloも、2014年6月22日の記事The Difference Between Information Architecture (IA) and Navigationで、IAをサイトの情報の背骨、ナビゲーションをその上に載る「氷山の一角」と表現しました。ナビゲーションは構造の表現であり、構造そのものではありません。
UXとの関係は、Peter Morvilleが2004年6月21日に自身のサイトで公開した「UXハニカム」が整理しています。ユーザー体験を有用性・使いやすさ・好ましさ・見つけやすさ・アクセシビリティ・信頼性・価値の7つの面で捉えるモデルで、IAが直接に担うのは、このうち「見つけやすさ(findable)」です。Morvilleはこの面について「利用者が必要なものを見つけられるよう、ナビゲート可能なサイトと所在の分かるオブジェクトを設計するよう努めなければならない」と書いています。UXが体験全体の設計であるのに対し、IAはその土台となる情報構造の設計、UIはその構造を画面上で操作可能にする層です。三者は代替関係ではありません。UX側の全体像はUX(ユーザーエクスペリエンス)とは?定義とUI・CXの違いで、画面側の数値基準はUI/UXとは?UIとUXの違いとUIデザインで使う数値基準で扱っています。
略語「IA」の多義性とサーバー・情報保証・AIとの文脈による読み分け
「IA」という略語は文脈によって指すものが変わるため、検索や社内資料で取り違えが起きます。設計・UXの文脈ではInformation Architecture(情報アーキテクチャ)ですが、サーバー調達の文脈では「IAサーバ」がIntel Architecture系サーバー(x86サーバー)を指します。情報セキュリティではInformation Assurance(情報保証)の略で、いずれも情報アーキテクチャとは関係がありません。制作現場では「IAをアサインする」のように、職種としてのインフォメーションアーキテクト(情報アーキテクト)を指すこともあります。さらにスペイン語・フランス語ではIAがinteligencia artificial/intelligence artificielleの略、つまり日本語のAIに相当します。「IAとAIの違い」という問いが生じるのはこのためで、英語圏や日本のIT文脈ではIAとAIは対義でも派生でもなく、単に別々の分野の略語です。
日本語の「情報設計」が指す3つの意味とWeb制作での読み分け
「情報設計とは」と検索して出てくる説明が噛み合わないのは、日本語の「情報設計」が少なくとも3つの別の仕事に使われているからです。発注書や提案書でこの語を見たら、どれを指しているのかを最初に確かめます。
| 呼び方の文脈 | 指している仕事 | 主な成果物 |
|---|---|---|
| Web制作・UX | IA(構造・分類・導線) | サイトマップ、ラベル一覧 |
| グラフィック・教育 | 情報デザイン(表し方) | 図解、インフォグラフィック |
| システム開発 | 画面項目・データの設計 | 画面項目定義、ER図 |
本記事が扱うのは1行目のIAです。2行目・3行目は隣接する仕事で、成果物も担当者も変わります。
Web制作の情報設計はインフォメーションアーキテクチャの訳語
Web制作会社の見積書に「情報設計」とあれば、ほぼ確実にIAを指します。サイト全体のページ構成と階層、カテゴリの分け方、メニューやページの名前、ページ間の導線を決める工程です。成果物はサイトマップ(ページ一覧と階層図)とラベル一覧、画面単位ではワイヤーフレームになります。見積上は「ディレクション」や「設計」に含めて計上されることもあり、項目名が無いからといって工程が無いとは限りません。どの成果物を受け取れるのかで確認するのが確実です。
情報設計と情報デザインの違い:構造を決める役割と表し方を決める役割
「情報デザイン(information design)」は、決まった情報を図や表、配色、文字組みでどう分かりやすく表すかを扱います。駅の案内表示、グラフ、取扱説明書の図解が典型です。高等学校では2022年度入学生から必履修となった「情報Ⅰ」に「コミュニケーションと情報デザイン」の単元があり、文部科学省の高等学校学習指導要領解説で内容が示されています。学校教育で「情報設計」と言うときはこちらに近い意味です。IAが「どこに何を置き、どう名づけ、どうたどらせるか」という構造を決めるのに対し、情報デザインは1つの画面や紙面の中の表現を決めます。IAが崩れたサイトは、図解を磨いても目的のページに着けません。
システム開発における情報設計の対象:画面項目とデータ構造の設計
業務システムの開発では、基本設計の中で画面に出す項目、帳票、データベースのテーブル構成を決める作業を「情報設計」と呼ぶ現場があります。対象は「利用者がどの情報を入力し、どの情報を見るか」で、成果物は画面項目定義書やER図です。IAの組織化システムとは考え方が重なりますが、相手がWebサイトの閲覧者ではなく業務の担当者で、要件定義書と突き合わせて決める点が違います。工程ごとの成果物の分担は要件定義と設計で作る7つの図|画面遷移図・ER図とデザイナーの担当範囲で整理しています。
情報アーキテクチャを構成する組織化・ラベリング・ナビゲーション・検索
『Information Architecture: For the Web and Beyond』第4版の第5章は、IAの構成要素を次の4つのシステムに分けます。第6章から第9章がそれぞれに1章ずつ充てられており、この4分類が同書の骨格です。
| システム | 担当する問い | 同書の例 | 対応章 |
|---|---|---|---|
| 組織化システム | どう分類するか | 主題別、年代順 | 第6章 |
| ラベリングシステム | どう名づけるか | 「Acer」か「maple」か | 第7章 |
| ナビゲーションシステム | どう移動するか | 階層をクリックしてたどる | 第8章 |
| 検索システム | どう検索するか | 索引にクエリを実行する | 第9章 |
以下、4つのシステムが実務で何を決める部分なのかを順に見ます。
組織化システムはタクソノミーとしてグループ分けの単位を決める
情報をグループにまとめる仕組みで、タクソノミーや階層とも呼ばれます。同書は組織化とラベリングの区別が難しい点を認めたうえで、「まずコンテンツをグループに組織化し、次にそのグループにラベルを付ける。同じグループでも異なるラベルの付け方があり得る」と切り分けの目安を示しています。カテゴリ構造の作り方そのものについてはオープン・クローズド・ハイブリッドのカードソートの種類と違いが実務的な手法を扱っています。
ラベリングシステムは「お問い合わせ」のようにグループを名づける
ラベルは表現の一形式です。同書は「お問い合わせ」というラベルを例に挙げ、担当者名・住所・電話番号・ファクス番号・メールアドレスを含む情報のかたまりを、ページの物理的な場所も利用者の認知の余地も奪わずに指し示す近道だと説明します。ラベルの目的は情報を効率的に伝えることです。
ナビゲーションシステムの設計で考える埋め込み型と補助型の2系統
利用者が情報環境の中を移動する手段です。同書は、グローバルナビゲーションのように環境に埋め込まれたものと、サイトマップや索引のように補助的に置かれるものを分けて論じます。前者だけを整えても、階層の深い場所にある情報には届きません。埋め込み型の設計はグローバルナビゲーションとは?ヘッダーとの違い・デザインの型と作り方とローカルナビゲーションとは?5種類の使い分けと設計・実装の判断基準、階層の現在地を示す補助はパンくずリストとは?SEO効果と構造化データの実装・階層設計の判断で個別に扱っています。なお階層の深さについては「3クリック以内に収めるべき」という通説がありますが、その妥当性はSEO対策における3クリックルールの影響と意識すべき注意点で検証しています。
検索システムの索引とクエリによる、閲覧と併存する情報への到達経路
索引に対してクエリを実行し、結果を返す仕組みです。分類をたどる行動と検索する行動は代替関係ではなく併存します。
同書はこの4分類に加えて、利用者から見た別の切り口も提示します。閲覧の補助(browsing aids)、検索の補助(search aids)、コンテンツとタスク、そして利用者からは見えない「不可視の」構成要素の4つです。統制語彙やシソーラスのように画面には現れないが検索結果の質を決める仕組みが後者にあたります。
分類設計の難所となる曖昧なスキームと、LATCH法との対応関係
厳密なスキームと曖昧なスキームの分類基準の違いと既知アイテム探索
第6章は組織化のスキームを2種類に分けます。厳密(exact)なスキームは、情報を明確に定義された相互排他的な区画に分けるもので、アルファベット順・年代順・地理別の3つが代表例です。同書は「国名は通常アルファベット順に並ぶ。探している国の名前を知っていれば、たどるのは簡単だ」と述べ、これを既知アイテム探索と呼びます。作るのも保守するのも容易で、項目をどのカテゴリに入れるかの知的作業がほとんど発生しません。
問題は、利用者が名前を知っている場合にしか機能しない点です。同書は「ガイアナと仏領ギアナに接している国の名前は何だったか」という例で、名前が出てこない利用者を厳密なスキームが助けられないことを示します。
図書館の件名目録が示す、曖昧なスキームが厳密なスキームより多く使われる理由
曖昧(ambiguous)なスキームは、厳密に定義できないカテゴリに情報を分けるものです。トピック別・タスク別・利用者別・メタファー・ハイブリッドの5種類が挙げられます。同書はトマトを果物・ベリー・野菜のどれに分類するかという例で、言語と人間の主観に起因する曖昧さを説明し、これらは「設計も保守も難しく、使うのも難しいことがある」と認めます。
それでも同書は「しかしこれらのスキームは、厳密なスキームよりも重要で有用であることが多い」と述べます。根拠として挙げるのが図書館の目録です。著者名・書名・件名の3つの主要スキームのうち、著者名と書名は厳密で扱いやすいにもかかわらず、広範な調査によれば利用者はデューイ十進分類法や米国議会図書館分類法のような件名ベースの曖昧なスキームをはるかに頻繁に使います。人は自分が何を探しているのかを常に分かっているわけではないからです。設計の労力は、容易な厳密スキームではなくこの曖昧スキームに配分する必要があります。
LATCH法の5軸とIAの4システムの対応関係と混同を避ける整理
日本語の解説ではLATCH法がIAの基本要素として紹介されることがありますが、出典系統が異なります。LATCHはRichard Saul Wurmanによる情報整理の枠組みで、Location(位置)・Alphabet(五十音やアルファベット順)・Time(時系列)・Category(カテゴリ)・Hierarchy(大小や良否など程度による序列)の5軸を指します。Wurmanは前掲書が「information architectという用語の創始者」と明記する人物で、その著書『Information Anxiety』(Bantam、1989年)は同分野の古典です。
両者は階層が違います。LATCHは情報を並べる「軸」の分類、4システムは情報環境を構成する「部品」の分類であり、並列に列挙すると議論が噛み合わなくなります。LATCHの5軸は組織化システムの中に位置づけられ、L・A・Tが厳密なスキーム(地理別・アルファベット順・年代順)、CとHが曖昧なスキームにおおむね対応する関係です。なおこの対応づけは本記事による整理で、同書がLATCHに言及しているわけではありません。Hは並べる基準が価格や規模のように客観的なら厳密側、良否のように主観を含むなら曖昧側へ振れます。設計上の難所はCの側に集中するため、「LATCHの5軸を検討した」だけでは設計を終えたことになりません。
利用者の情報探索行動を前提にしたWebの情報設計と4つの情報ニーズ
質問して答えを受け取るだけの「too-simple」モデルの限界
第3章は、多くの設計が前提にしている情報探索モデルを「too-simple(単純すぎる)」と呼んで批判します。そのアルゴリズムは、利用者が質問する、何かが起きる(検索または閲覧)、利用者が答えを受け取る、終わり、という4段階です。同書はこれを「非常に機械的で、最終的には人間性を奪うモデル」と評します。利用者もシステムと同じく、振る舞いが予測可能で動機が合理的な存在として扱われてしまうためです。
現実には、人は自分が何を求めているかを正確には知りません。同書は「皮膚がんなのか、メラノーマなのか」という例で、言い表す語彙を持たない状態を指摘し、情報探索はしばしば部分的な満足か率直な不満のうちに終わると述べます。既知アイテム探索だけを想定した構造は、この大部分を取りこぼします。
釣りのメタファーで示される4つの情報ニーズと情報設計への効き方
同書は釣りのメタファーで4種類の情報ニーズを説明します。設計するときは、対象となる情報ニーズがどれなのかを先に決める必要があります。
| 情報ニーズ | 同書のメタファー | 利用者の状態 |
|---|---|---|
| 既知アイテム探索 | 完璧な釣果 | 対象も呼び名も在りかも既知 |
| 探索的な探索 | ロブスターの罠 | 探しながら学ぶ |
| 網羅的な調査 | 無差別な流し網 | 漏れなく集めたい |
| 再発見 | また会ったな、モビー・ディック | 一度見つけた物を再訪 |
同書は、社員名簿で同僚の電話番号を調べる行動を既知アイテム探索、人事サイトで退職年金制度について学ぼうとする行動を探索的な探索の例に挙げています。前者に効くのは正確なラベルと検索、後者に効くのは関連情報への回遊と分類の手がかりです。同じサイトでも両方が起きるため、一方だけに合わせて作った構造は片方の利用者を取りこぼします。
トップダウン型とボトムアップ型、2つの情報アーキテクチャの使い分け
第5章は、IAには方向の異なる2つのモードがあると整理します。トップダウン型のIAでは、設計者が利用者の問いに答える構造をあらかじめ想定し、コンテンツやページレイアウトがその構造を支えるように作られます。同書によれば、これが初版執筆時における主要なやり方でした。当時の読者の多くがサイトをゼロから設計していたためです。
ボトムアップ型のIAは、コンテンツ自体に埋め込まれた構造を活かします。同書はレシピを例に、タイトル・材料リスト・調理手順・供し方という明確な構造を持つコンテンツが、それ自体で検索や閲覧を支えうることを示します。「レシピタイトル」というかたまりに対して検索できる、といった具合です。同書は、情報環境が動的になり検索エンジンが強力かつ普及したことで、ボトムアップ型の重要性が増したと述べています。それぞれの詳細はトップダウン型情報アーキテクチャの基本概要と特徴を詳しく解説とボトムアップ型情報アーキテクチャとは何か?基本概念と特長を解説で扱っています。
情報設計の進め方:既存サイトの棚卸しからツリーテストまでの手順と成果物
コンテンツの棚卸しと監査による既存ページの量と価値の把握と残す判断
リニューアルの情報設計は、いま何があるかを数えるところから始まります。前掲のNielsen Norman Groupの記事は、IAを定める作業としてコンテンツの棚卸し(content inventory)、コンテンツ監査(content audit)、情報のグループ化、タクソノミーの策定を挙げています。棚卸しは全ページをURL・タイトル・種別・更新日で一覧にする作業、監査はそれぞれが役に立っているか、残すか統合するか捨てるかを判定する作業です。この段階を飛ばして新しいサイトマップを描くと、移行時に行き場のないページが大量に見つかり、結局「その他」カテゴリが膨らみます。
調査フェーズのカードソートとツリーテストによる利用者視点での分類検証
Nielsen Norman Groupは、IAに固有の調査手法としてカードソートとツリーテストを挙げています。カードソートは利用者が対象を自然にどう分類するかを把握する手法で、分類体系を作る前に使うものです。ツリーテストは、作った構造の案に対して利用者が目的の項目にたどり着けるかを検証する手法です。画面デザインを作らずに構造だけを評価できる点に価値があります。手法の評価軸はユーザビリティエンジニアリングとは何か?その定義と目的を詳しく解説にまとめています。
構造設計フェーズでのサイトマップとワイヤーフレームへの具体化と合意
調査で得た分類をサイトマップとして構造化し、画面単位の情報配置をワイヤーフレームに落とします。ここで押さえるべきは、前掲書が指摘するとおり、これらが成果物であってIAそのものではないという点です。ワイヤーフレームは構造を関係者と合意するための表現手段であり、合意が取れていない構造をきれいに描いても問題は残ります。作成手順と確認の観点はワイヤーフレームとは?作り方とデザインカンプとの違い・発注側の確認範囲を解説で解説しています。なお、ここで言うサイトマップは設計用のページ構成図で、検索エンジンへ送るXMLサイトマップや利用者向けのHTMLサイトマップとは別物です。後者の作り方はサイトマップとは?XMLとHTMLの違い・作り方とGoogleへの送信手順で扱っています。
公開後の検証と改善に向けたゼロ件検索と想定外の導線の把握と見直し
IAは一度作って終わる成果物ではありません。コンテンツが増えれば分類は破綻に向かうため、追加のたびに「どのカテゴリに入るか」を判断できる基準が要ります。曖昧なスキームでは判断が分かれるので、基準を文書に残さないと担当者が変わった時点で分類が崩れます。サイト内検索でゼロ件になった語や、想定と異なる導線でたどり着かれているページが見直しの材料です。
アクセシビリティ要件としての情報設計とWCAG 2.2の達成基準
複数の到達経路を用意することは、使いやすさの改善であると同時に適合要件でもあります。W3Cのウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン「WCAG 2.2」(2024年12月12日付W3C勧告)は、達成基準2.4.5「複数の経路(Multiple Ways)」をレベルAAとして次のように定めています。「ウェブページ一式の中で、あるウェブページを見つける複数の経路が利用可能である。ただし、そのウェブページがプロセスの結果、又はプロセス中の1ステップである場合を除く」(ウェブアクセシビリティ基盤委員会による日本語訳)。ナビゲーションだけでなく、サイトマップや検索といった別経路を併置することが求められる根拠がここにあります。具体的にどの組み合わせで満たせるかは、W3Cの解説書(Understanding SC 2.4.5)と、その日本語訳であるWAICの解説書 達成基準 2.4.5に例示があります。
ラベリングについても、達成基準2.4.6「Headings and Labels」がレベルAAで「見出し及びラベルは、主題又は目的を説明している」と定めています。見出しやラベルが内容を表していないサイトは、使いにくいだけでなく達成基準を満たしていない状態です。IAの品質は主観の問題にとどまらず、検証可能な要件として扱えます。民間企業に対する法的な位置づけはWebアクセシビリティは義務化されたのか?2024年改正法の線引きと企業がやるべきことで整理しています。
情報設計を外注すべき条件と、独立工程にしなくてよい場面の判断
情報設計を独立した工程として発注すべきサイトの規模や運用に関する3つの条件
次のどれかに当てはまるなら、情報設計をデザインと切り離した工程として見積もり、成果物を受け取るべきです。
- 既存ページが数百本あるサイトのリニューアルで、棚卸しと統合の判断が要る
- 顧客・取引先・求職者・株主のように利用者の種類が複数あり、利用者別とトピック別の分類が衝突する
- 公開後も記事や製品ページが増え続け、社内の複数部署が更新する
いずれも曖昧なスキームの判断が避けられない状況です。この場合、デザインカンプの段階で初めて構造を議論すると、見た目の好みと構造の問題が混ざって合意が進みません。ナビゲーションの文言1つで部署間の調整が止まる、という事態も起きます。この場合に守るべき順番は、サイトマップとラベル一覧を先に確定させ、ツリーテストで検証してから画面に進むことです。一創ではUI/UXデザインの工程として、構造の設計から画面設計までを一続きで引き受けています。既存サイトを作り直す場合はWebサイトリニューアルの相談の中で、棚卸しと移行の範囲から見積もります。
10ページ前後のLPや導線1本のサイトで情報設計が過剰になる場面
反対に、10ページ前後で導線が「読む→問い合わせる」の1本しかないLPや小規模なキャンペーンサイトでは、カードソートやツリーテストまで行うのは過剰です。ページ一覧と各ページの役割を1枚の表にまとめ、ワイヤーフレームの中で構造も一緒に確認すれば足ります。調査に数週間かけても、決めるべき分類がそもそも少ないからです。
ただし省略してよいのは調査であって、ラベルの判断ではありません。「サービス」「ソリューション」「事業内容」のように意味の重なるメニュー名を並べると、小さなサイトでも利用者は迷います。どの成果物をいつ受け取るかは、発注前にWeb制作の要件定義とは?決める項目・進め方と発注者の作業範囲を解説の要領で書き出しておくと、見積の比較もしやすくなります。
よくある質問
情報設計・インフォメーションアーキテクチャについて、検索でよく尋ねられる疑問に答えます。
情報設計とインフォメーションアーキテクチャ、情報アーキテクチャは違うものですか?
Web制作の文脈では同じものです。英語のinformation architectureをカタカナで表記したものが「インフォメーションアーキテクチャ」、訳語が「情報アーキテクチャ」や「情報設計」で、指す対象に違いはありません。「IA」はその略称です。文献では「インフォメーション・アーキテクチャ」と中黒を入れる表記も使われます。ただし学校教育やグラフィックの分野で「情報設計」と言う場合は、図解や表現を扱う情報デザインを指すことがあるので、文脈で読み分けてください。
IAとAIは関係がありますか?
直接の関係はありません。IAはInformation Architecture、AIはArtificial Intelligenceの略で、別々の分野の用語です。混同が起きる理由の1つは、スペイン語やフランス語ではAIにあたる語の略称がIA(inteligencia artificial/intelligence artificielle)になることにあります。日本語や英語の資料でIAと書かれていれば、文脈がデザインやUXなら情報アーキテクチャ、サーバー調達ならIntel Architecture系サーバーを指すのが通例です。
IAの構成要素は4つですか、5つですか?
標準教科書『Information Architecture: For the Web and Beyond』第4版に沿えば4つです。組織化システム・ラベリングシステム・ナビゲーションシステム・検索システムを指し、同書の第6章から第9章がそれぞれに対応します。5つと説明されている場合は、LATCH法の5軸(Location・Alphabet・Time・Category・Hierarchy)と混同している可能性があります。LATCHはWurman由来の別系統の枠組みで、4システムのうち組織化システムの中に位置づけられる分類軸です。
情報設計(IA設計)はどの工程で行うのですか?
画面デザインより前です。既存サイトがあればコンテンツの棚卸しと監査から入り、カードソートで利用者の分類感覚を把握し、その結果をサイトマップとして構造化し、構造が固まってからワイヤーフレームに落とします。ツリーテストは画面デザインを作らずに構造だけを検証できるため、デザインに着手する前の手戻りを防ぐ目的で使われます。ただしボトムアップ型のIAのように、コンテンツの構造から立ち上げる進め方もあるため、一方向の工程に固定されるわけではありません。
小規模なサイトでも情報設計は必要ですか?
ページ数が少なくても分類とラベルの判断は発生します。むしろ小規模なうちに基準を決めておくほうが、コンテンツが増えたときの破綻を防げます。厳密なスキームは作りやすい代わりに利用者が名前を知っている場合にしか機能しないため、規模にかかわらずトピック別・タスク別の設計は避けて通れません。ページが数十本に増えてから分類を作り直すほうが、はるかに高くつきます。一方で10ページ前後のLPなら、カードソートなどの調査は省いてかまいません。