HubSpot CMSは、HubSpotのCRMと同じ基盤の上でWebサイト・ブログ・ランディングページを作り、サーバーやSSL証明書の運用までHubSpot側が受け持つCMSです。現在の製品名はContent Hubで、提供されているエディションはStarter・Professional・Enterpriseの3つです。本記事では2026年10月時点の公式製品カタログをもとに、エディションごとに使える機能と上限値、WordPressやヘッドレスCMSとの選び分け、採用を見送るべきサイトの条件、移行前に決める設計の順序を整理します。CMSという仕組みの一般論は別記事に譲り、ここではHubSpot CMSという製品で何ができ、どこで詰まるかに絞ります。
まとめ:HubSpot CMSを選ぶ条件とWordPress・ヘッドレスとの分かれ目
HubSpot CMSが本領を出すのは、Webサイトの問い合わせから商談までを同じCRMで追いたいBtoBの企業サイトです。フォーム送信者の情報がそのままCRMに入り、閲覧ページに応じて表示を変えるスマートコンテンツもCRMのデータで動きます。サーバー保守とプラグイン更新を社内で抱えたくない組織にも向いています。
エディションの境目ははっきりしています。Starterはウェブサイトページ30件までの小規模サイト向けで、HubDBによる動的ページやA/BテストはProfessionalからです。一方、会員向けの業務機能や独自のサーバー処理を作り込むサイトには合いません。サーバー側で任意のコードを動かせるのはEnterpriseのサーバーレス関数だけで、それも用途は限られます。この種のサイトはWordPressかヘッドレス構成を選び、HubSpotはフォームとCRMの連携だけに使うほうが総額も工数も小さく収まります。
HubSpot CMSの正体:Content Hubの名称とCRM一体型ホスティング構造
HubSpot CMSを理解する前提は、これが単体のCMSソフトではなく、HubSpotの有料製品群のひとつだという点です。CMSそのものの仕組みや、WordPressなどのオープンソース型・SaaS型・ヘッドレス型の違いはCMSとは?仕組み・種類・WordPressとヘッドレスの違いと選び方で解説しています。
CMS HubからContent Hubへの改称後もCRMと顧客データを共有する構造
HubSpot CMSは以前「CMS Hub」の名称で提供されており、現在の製品名はContent Hubです。HubSpotの製品・サービスカタログでは、Content HubはStarter・Professional・Enterpriseの3エディションで提供され、一部の機能は無料ツールでも使えると書かれています。検索では今も「HubSpot CMS」「CMS Hub」の呼び方が多く、指している製品は同じです。
構造上の特徴は、ページを作る機能と顧客データベースが分かれていないことです。フォームから届いた問い合わせはCRMのコンタクトとして登録され、ページの表示内容を出し分ける条件にもCRMの項目を使えます。WordPressで同じことをするには、フォームプラグインとCRMの連携を別に組む必要があります。
テーマ・テンプレート・モジュールの階層とHubLで組むページの構造
ページの部品は3階層です。HubSpot CMSの開発者向け概要によると、テーマが最上位の入れ物、テンプレートは編集者がページを作るときの土台、モジュールはページ上の個々の要素です。開発者がテーマとモジュールを作り、編集者はドラッグアンドドロップのエディタで配置と文章を担当するという役割分担が前提になっています。
テンプレートの記述にはHubLという独自のテンプレート言語を使います。HubLの構文リファレンスでは、HubLはJinjaをもとにしたJinjavaを拡張した言語と説明され、次のように変数を定義してCSSに埋め込む例が載っています。
{% set primaryColor = '#F7761F' %}
a {
color: {{ primaryColor }};
}
HubLはサーバー側で実行され、変数・ループ・条件分岐までは書けますが、PHPのように任意のサーバー処理を書く言語ではありません。WordPressのテーマ開発に慣れたエンジニアでも、この制約を知らずに見積もると、後で作れない機能が見つかります。
SSL・CDN・WAF込みのホスティングとドメイン接続で決まる切り替えの所要時間
カタログ上、Content Hubには全エディションで「Premium hosting」が含まれ、標準のSSL証明書、CDN、WAF、24時間のセキュリティ監視までが料金に入っています。サーバーの契約やOSの更新、WordPress本体とプラグインの脆弱性対応といった作業は発生しません。ただし帯域を過剰に消費した場合は、HubSpot側が通信を絞る権利を持つ条項もあります。
独自ドメインでの公開は、DNSレコードの書き換えで行います。ドメイン接続のナレッジベースによると、www付きなどのサブドメインはCNAMEレコード、ルートドメインはAレコードを更新します。DNSの反映は15〜80分、最大で24時間、SSLの有効化は通常数分で最大4時間です。作業にはスーパー管理者かドメイン設定の権限が要り、DNSを変える前にHubSpot側のページを公開し、既存サイトをバックアップしておく手順が示されています。
Content Hubのエディション別に使える機能とページ数・ドメインの上限値
ここからはエディション別の機能と上限を比較します。数値は2026年10月4日に取得した製品カタログのContent Hub表の記載で、HubSpotは上限を随時見直すため、契約前に最新版で確認してください。
Starterはページ30件・ブログ1つ・ルートドメイン1つの小規模サイト向け
Starterで作れるウェブサイトページは合計30件、ランディングページも30件までです。ブログはウェブサイトと同じサブドメイン上に1つで、著者は20人まで登録できます。接続できるのは1つのルートドメイン上のサブドメイン1つと国別ドメイン1つで、多言語版は50言語まで作れます。
30件という上限は、会社概要・サービス紹介・採用・問い合わせ程度のコーポレートサイトなら足ります。製品ごとにページを持つメーカーや、事例ページを積み上げる受託企業ではすぐに届きます。動的ページやA/Bテストも使えないため、Starterは「HubSpotのフォームとCRMを使う小さなサイト」と割り切って選ぶ版です。
ProfessionalでHubDB・動的ページ・スマートコンテンツ・A/Bテストが解禁
Webサイトの作り方そのものが変わるのはProfessionalからです。主な違いを表にまとめました。
| 機能 | Starter | Professional | Enterprise |
|---|---|---|---|
| ウェブサイトページ | 30件 | 1万件 | 1万件 |
| ブログ | 1つ | 100個 | 100個 |
| HubDB・動的ページ | なし | あり | あり |
| スマートコンテンツ・A/Bテスト | なし | あり | あり |
| メンバーシップのアクセスグループ | なし | 2つ | 100 |
| 接続できるルートドメイン | 1つ | 1つ | 10個 |
| サーバーレス関数 | なし | なし | あり |
重みがもっとも大きいのはHubDBと動的ページです。HubDBは表形式のデータを保存する仕組みで、拠点一覧や製品カタログのように同じ型のページが大量に並ぶ場合、1つのテンプレートから表の行の数だけページを自動で生成できます。カタログの記載では、動的ページはページ数の上限を数える際に集計対象に含めない扱いです。次がスマートコンテンツで、CRMの項目や広告の流入元によって表示内容を出し分けます。本番に影響を与えずにサイトを作り直せるコンテンツステージングと、パスワード保護ページもProfessional以上の機能です。
Enterpriseだけのサーバーレス関数・マルチサイト・承認フローと起点価格
Enterpriseに上げる理由は、サイトの数と統制にかかわる機能です。コアドメインに加えて9つまでルートドメインを追加できるマルチサイト、ページ公開前のコンテンツ承認、変更履歴を追えるアクティビティログ、チームごとに編集できるページを絞るアクセス制限、表示速度を落とすコードを検出するコードアラートが載っています。メンバーシップのアクセスグループも100まで増えます。
サーバーレス関数もEnterpriseだけです。HubSpot上に関数のコードを置き、計算ツールやイベント受付のような小さなWebアプリを動かせます。価格はカタログのドル建て表示で、Starterが1シートあたり月20ドルから、Professionalがコアシート3件込みで月500ドルから、Enterpriseがコアシート5件込みで月1,500ドルからの年払いです。各Hubの料金体系とシート課金の考え方はHubSpotの料金|7つのHubの構造とシート・コンタクト二層課金の決まり方で解説しています。
WordPress・ヘッドレスCMSとの比較で見るHubSpot CMSの得手不得手と三択
HubSpot CMSを検討する企業の多くは、すでにWordPressでサイトを運用しています。選択肢は「HubSpot CMSへ移す」「WordPressのままHubSpotとつなぐ」「ヘッドレス構成にする」の3つです。
保守とプラグイン更新を手放せる代わりにサーバー処理を自由に書けない
開発者向け概要には、HubSpotがページのホスティングと保守を担うため、プラグインの管理、更新、スケーリング、セキュリティを利用者が気にする必要はないと書かれています。WordPressで毎月発生する本体とプラグインの更新、脆弱性が公表されたときの緊急対応が、契約の範囲に吸収されるのがHubSpot CMSの最大の利点です。
代償は自由度です。WordPressなら数万件あるプラグインやPHPで足せる機能も、HubSpot CMSではHubLの範囲、Marketplaceのテーマとアプリ、Enterpriseのサーバーレス関数でしか実現できません。WordPressを使い続ける場合の保守コストの考え方はWordPressはオワコンか?シェアと保守コストで採用可否を判断するで整理しています。
WordPressのままHubSpotとつなぐ公式プラグインという第三の選択肢
サイトはWordPressに残し、フォームとCRMだけHubSpotを使う構成もあります。HubSpot公式のWordPressプラグインは2026年9月16日更新の11.3系で、有効インストール数は20万以上です。フォーム、ポップアップ、ライブチャット、CRMへの登録、アクセス解析をWordPress上から使え、利用にはHubSpotアカウントが必要です。
この構成なら、CMSを移すことなく、問い合わせ以降をHubSpotのCRMで追えます。さらにContent Hub Professional以上には、HubSpotで作ったモジュールをHubSpot以外のサイトへ1ページ3ブロックまで埋め込める「コンテンツ埋め込み」があり、スマートコンテンツによる出し分けもWordPress側で使えます。ページ数が多く、WordPressのテーマ資産を捨てたくない企業は、まずこの形から検討するのが筋です。
ヘッドレス構成を選ぶべき場面とHubSpot CMSが受け持つ範囲の境界
表示側をNext.jsなどで自前に作り、コンテンツ管理だけをCMSに任せるのがヘッドレス構成です。Webサイトとアプリに同じコンテンツを配信したい、表示速度や画面の作りに強い要求がある、といった場合はこちらが向いています。主要なヘッドレスCMSの比較はヘッドレスCMSとは?従来型CMSとの違い・主要サービス比較と選び方にまとめています。
HubSpot CMSはページの表示までHubSpot上で完結させる設計で、テンプレートもHubLで書きます。表示層を自前にするなら、ホスティング込みの料金を払う理由が薄れます。HubDBにはAPIがあり外部から表のデータを読めますが、それだけを理由にContent Hubを選ぶのは割高です。
受託開発の視点で見るHubSpot CMSを採用する条件と見送るべきサイト
ここからは、CMSの構築とHubSpotの連携開発を受ける立場から見た判断です。機能表では見えない、契約後に効いてくる条件を言い切ります。
採用すべきはMarketing Hubと同じCRMで問い合わせ後まで追うBtoBサイト
HubSpot CMSを採用してよいのは、次の条件がそろう組織です。
- Marketing HubかSales Hubをすでに使っている、または導入を決めている
- サイトの目的が資料請求・問い合わせの獲得で、ページは数十〜数百件規模
- サーバーとプラグインの保守を担当する社内エンジニアがいない
- マーケティング担当者が自分でページを更新し、A/Bテストを回したい
採用の判断にもっとも大きく影響するのは、1番目に挙げた条件です。Marketing Hubのワークフローで送るメールと、サイトのスマートコンテンツが同じコンタクト情報で動くため、資料請求した人がサイトに戻ったときに別の案内を出す、といった連携を追加開発なしで組めます。MA機能の範囲はHubSpot Marketing Hubとは?エディション別のMA機能とマーケティングコンタクト課金の仕組みで解説しています。
見送るべきは会員機能や業務処理を作り込むサイトとStarterでの大規模運用
次のどれかに当てはまるなら、HubSpot CMSは選びません。
1つ目は、会員登録後のマイページや予約・決済など、サイト上で業務処理を動かすサイトです。メンバーシップ機能でできるのはページの閲覧制限までで、Professionalのアクセスグループは2つしかありません。業務ロジックはEnterpriseのサーバーレス関数でも小規模なものに限られ、本格的な処理は外部のシステムで作ることになります。それならサイト全体をWordPressかヘッドレス構成で作るほうが素直です。
2つ目は、ページ数が増える見込みのサイトをStarterで始める計画です。30件の上限に届いた時点でProfessionalへの切り替えが必要になり、月額は1シート20ドルの水準から500ドルの水準へ跳ね上がります。製品ページや事例ページを積み上げるサイトなら、最初からProfessionalで予算を組むか、WordPressのまま公式プラグインでつなぐ構成を選んでください。
HubSpot CMSへ移行する前に決めるドメイン・URL・テーマ設計の手順
HubSpot CMSを採用すると決めたら、ページを作り始める前に決めておくことがあります。順序を誤ると、公開直前に検索順位を落とすURL変更やテンプレートの作り直しが発生します。
既存サイトからの移行で先に棚卸しするURL対応表とリダイレクト
最初に決めるのはURLです。HubSpotにはURLマッピングの機能があり、旧URLから新URLへのリダイレクトを設定できます。移行の手順は次の順で進めます。
- 既存サイトの全URLを書き出し、アクセスと被リンクのあるページに印を付ける
- HubSpot側で同じURLを再現するか、新URLへのリダイレクトを張るかを1件ずつ決める
- HubSpot側でページを公開し、既存サイトのバックアップを取る
- DNSを切り替え、SSLの有効化とリダイレクトの動作を確かめる
ブログを抱えるサイトでは、記事URLの形式がWordPressと変わることが多く、2番目の判断件数が最大になります。DNSの反映は最大24時間かかるため、切り替えは問い合わせの少ない曜日に置いてください。
テーマを買うか作るかでテンプレート開発の工数と保守の分担が決まる
次がテーマです。HubSpot Marketplaceのテーマを購入して色とロゴを合わせるだけなら、公開までの期間は短く済みます。ただし既製テーマのモジュールの範囲でしかページを組めず、デザインの自由度は下がります。独自テーマを開発する場合はHubLとモジュールの設計が必要で、編集者がどの項目を触れるかをフィールドとして定義する作業が工数の中心です。
どちらを選んでも、テーマの改修を社内と外部のどちらが担うかを契約前に決めておきます。サーバー保守がなくなっても、テンプレートの改修は残るからです。テーマの開発、既存サイトからの移行、Marketing HubやSales Hubとの連携設計までを一括で相談したい場合は、HubSpot導入支援サービスで要件整理から対応しています。
よくある質問
HubSpot CMS(Content Hub)の検討段階でよく寄せられる質問に、2026年10月時点の公式カタログの内容をもとに回答します。
HubSpot CMSとContent HubとCMS Hubは何が違いますか?
同じ製品を指しています。以前はCMS Hubの名称で提供されており、現在の製品名はContent Hubです。HubSpot CMSは機能の呼び方として使われることが多く、開発者向けドキュメントでもCMSという表記が残っています。Content Hubには、ページやブログを作るCMSの機能に加え、AIによるコンテンツ生成、動画、ポッドキャストなどの機能も含まれます。見積もりや比較記事で名称が混ざっていても、製品は1つです。
HubSpot CMSは無料で使えますか?
カタログでは、Content Hubの一部の機能が無料ツールでも使えると書かれています。ただし本格的にWebサイトを運用するには有料のエディションが前提です。有料版の起点はStarterで、1シートあたり月20ドルからです。Starterでもウェブサイトページは30件、ランディングページは30件までで、HubDBによる動的ページやA/BテストはProfessional以上の機能になります。
WordPressからHubSpot CMSへ移行すべきですか?
Marketing HubかSales Hubを使っていて、サーバーとプラグインの保守を手放したいなら移行する価値があります。ページ数が多くWordPressのテーマやプラグインに依存した機能が多い場合は、移行せずに公式プラグインでHubSpotのフォームとCRMをつなぐ構成のほうが工数を抑えられます。移行する場合は、URLの対応表とリダイレクトの設計を最初に済ませてください。
HubSpot CMSでヘッドレス構成は組めますか?
HubSpot CMSは、テンプレートの描画とホスティングまでHubSpot上で完結させる設計です。HubDBにはAPIがあり、表のデータを外部から読み出せますが、表示層を自前で作るなら、ホスティング込みの料金を払う意味が薄れます。Webサイトとアプリに同じコンテンツを配信したい場合は、ヘッドレス専用のCMSを選び、HubSpotはフォームとCRMの連携に使う構成を検討してください。
HubSpot CMSで複数のサイトやドメインを運用できますか?
StarterとProfessionalで接続できるルートドメインは1つです。Professionalなら同じルートドメインの下にサブドメインと国別ドメインを無制限に置けるため、言語別サイトはこの範囲で作れます。別ブランドのように異なるルートドメインのサイトを持つ場合は、コアドメインに加えて9つまで追加できるEnterpriseのマルチサイトが必要です。さらに増やす場合は、1ドメインあたり月100ドルの追加が用意されています。
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