WordPressがオワコンかどうかは、賛否の記事を読み比べても決着しません。片方は世界シェア40%台という数字を出し、もう片方はシェアが下がったという数字を出す。どちらも実測値ですが、見ている分母が違います。この記事では2026年9月1日時点で確認できる数値だけを並べ、シェアがどう動いたか、開発が続いているか、保守にいくらかかるかを順に整理しました。そのうえで、これから作るサイトにWordPressを選んでよいのか、既存サイトを5年動かし続けてよいのかを条件付きで切り分けます。
まとめ:オワコンと呼べない3つの実測値と、それでも選ぶべきでない2場面
結論から書きます。2026年9月時点のWordPressは、条件が合うサイトなら新規に選んで差し支えない状態にあります。根拠は3つです。第一に、全ウェブサイトの40.7%、CMSを使っているサイトに限れば58.9%で動いており、2位のShopify(5.3%・CMS内7.7%)とは桁が違います。第二に、7.0が2026年5月20日、7.1が8月19日と3か月間隔で公開され、開発が止まっていません。第三に、コア本体の脆弱性は2025年の1年間で6件にとどまり、それも低優先度でした。
ただし手放しで薦められるものでもありません。同じ2025年に、WordPressエコシステム全体では11,334件の新規脆弱性が報告され、前年から42%増えました。その91%はプラグイン起因です。つまり危険なのは本体ではなく、誰がどのプラグインを選び、誰が更新を当て続けるかという運用体制の側にあります。オワコン論の実質は技術の終焉ではなく、この負担を発注側が引き受けきれなくなった構図です。
選ぶべきでない場面もはっきりしています。更新担当を置かずに作りっぱなしにする前提のサイトと、会員・決済・在庫といった業務ロジックを本体に載せるサイトです。この2つに当たるなら、シェアがどれだけ大きくてもWordPressを選ぶ理由にはなりません。以下、それぞれの数値を確認していきます。
オワコン説の起点になったシェア下落と、2026年9月時点の実測値の読み方
まず数字の分母をそろえます。ここを混ぜたまま賛否を読むと、同じ調査を根拠にして正反対の結論が出ます。
全サイト40.7%とCMS内58.9%という2つの分母を混同すると議論がずれる
W3Techsが2026年9月1日時点で公表している数値は2種類あります。ひとつは「調査対象の全ウェブサイトのうちWordPressが40.7%」、もうひとつは「CMSの種類が判別できたサイトのうち58.9%」です。前者は自作HTMLやフレームワーク製のサイトも分母に含みます。「4割を切った」という記事は前者を、「6割近い」という記事は後者を指しています。数字が食い違って見える原因の大半はここです。
判断に使うなら後者を見てください。発注側が比べたいのは「CMSを入れるとして何を入れるか」であって、CMSを使わない選択肢と比べる場面は多くありません。
シェアを削ったのはShopifyとWixで、CMS未使用サイトが30.9%残る構図
同じ日のCMS別内訳は、WordPress 40.7%(CMS内58.9%)、Shopify 5.3%(同7.7%)、Wix 4.2%(同6.1%)、Squarespace 2.5%(同3.5%)、Joomla 1.1%(同1.7%)、Drupal 0.7%(同1.0%)です。伸びているのはShopifyとWix、つまりECと小規模サイト制作をSaaSで完結させる層でした。かつてWordPressが引き受けていた「とりあえずサイトを持ちたい」という需要が、そのままSaaSへ移った動きです。
一方で、全ウェブサイトの30.9%はCMSを使っていません。CMS市場そのものが縮んだのではなく、用途ごとに分岐したと見るのが実測に合います。
シェア低下を終焉と読むか用途分岐と読むかでサイト発注判断が変わる
WordPressのシェアが数ポイント下がった事実と、WordPressで作るべきサイトが減った事実は別物です。ページ数が10前後で更新もほとんど発生しない会社案内なら、Wixでも要件を満たします。そこがSaaSへ流れた結果としてシェアが動いただけで、記事を継続的に増やすオウンドメディアや、部門ごとに編集者が分かれる中規模サイトの選択肢が減ったわけではありません。
CMSの種類そのものを整理したい場合は、CMSとは?仕組み・種類・WordPressとヘッドレスの違いと選び方で製品非依存の分類から確認できます。本記事はその先の、WordPressを選ぶかどうかの判断に絞ります。
7.0と7.1で変わった編集環境と、稼働環境の4割が旧系という追随の実勢
次に開発が続いているかどうかを見ます。ここは公開日と稼働バージョンの2つで測れます。
7.0「Armstrong」が2026年5月20日公開、7日で46%が自動更新された
7.0は2026年5月20日に公開されました。AI機能を管理画面の1か所に集約するハブ、ダッシュボード全体の新しい管理画面テーマ、ブロックとデザインツールの追加が主な変更点です。公開から7日で全WordPressの46%が自動更新で7.0へ移っています。メジャー番号が6から7へ上がったにもかかわらず、1週間で半数近くが問題なく上がった点は、更新の負担を測るうえで見落とせない数字です。
7.1 Mary Louは2026年8月19日公開、メディア編集とレスポンシブ制御を刷新
7.1は2026年8月19日に公開されました。レスポンシブスタイリングの制御、メディアエディタの再設計、Notes機能のメンションとインラインフィードバック対応が入っています。この間、7.0.1から7.0.4までの保守リリースが7月9日・7月17日・8月6日・8月12日と続いており、機能追加と修正が並行して回っている状態です。
「開発が止まった」という主張は、この公開履歴と噛み合いません。
稼働中の内訳はv7が59.0%・v6が33.8%・v5以下が7.3%で追随の遅れが残る
ただし実際に動いている環境は別の話です。2026年9月1日時点のバージョン内訳は、7系が59.0%、6系が33.8%、5系が5.0%、4系が2.1%でした。4割が旧系のまま動いています。5系や4系は数年前の環境で、ブロックエディタ周辺の使い勝手も当時のままです。
「WordPressは重い」「編集画面が古い」という評価の一部は、この止まった環境の記憶から来ています。評価を下す前に、手元の管理画面が何系かを確認してください。7系と5系では別物と言ってよい差があります。
プラグイン起因に偏る脆弱性の内訳と、保守を外注する場合の負担配分
採用可否を分ける最大の論点はここです。数字の出どころを固定して見ます。
2025年の新規脆弱性11,334件のうちコアは6件、91%はプラグイン起因
Patchstackが2026年2月25日更新版で公表した集計では、2025年にWordPressエコシステムで報告された新規脆弱性は11,334件、前年比42%増でした。内訳はプラグインが91%、テーマが9%、WordPressコア本体は6件のみで、いずれも低優先度と分類されています。高深刻度に該当したのは1,966件(17%)です。
この内訳が示すのは、リスクの所在がコアではなくプラグイン選定にあるという事実です。入れたプラグインの数だけ攻撃面が増えます。
公開から悪用までの加重中央値は5時間、約半数は24時間以内に攻撃される
同じ集計では、影響の大きい脆弱性の公開から初回悪用までの加重中央値が5時間、約半数が24時間以内に悪用されていました。公開時点でパッチが用意されていなかったものも46%あります。月1回の定期更新では間に合わない速度です。
実務では、自動更新を有効にしたうえで、更新に失敗した場合の検知と復旧手順を決めておく体制が必要になります。「更新は気づいたときに手動で当てる」運用は、この5時間という数字の前では機能しません。
2026年7月の未認証RCE事案が示した、緊急対応にかかる実際の工数
2026年7月には未認証で任意コード実行に至る深刻な脆弱性(通称wp2shell)が公表され、公開直後から大規模な攻撃が観測されました。仕組みと影響バージョン、確認手順はwp2shellとは?WordPress未認証RCEの仕組みと影響バージョン・確認手順にまとめています。
発注側が見積もるべきは、こうした事案が年に数回起きる前提での対応工数です。影響有無の調査、パッチ適用、改ざんの有無の確認、必要なら復旧まで含めて、1件あたり数時間から半日規模で動く体制を誰が持つのか。この負担配分と月額の目安はWordPress保守運用とは?作業範囲・費用相場と内製か外注かの判断基準で整理しています。
ヘッドレスCMS・SaaS型サイトビルダーとの住み分けを規模と更新頻度で線引き
WordPressを選ばない場合の受け皿は3方向あります。どれが向くかは、ページ数と編集者数と独自機能の有無でほぼ決まります。
4方式の比較で見る、初期費用と運用負担と拡張余地のトレードオフ
| 方式 | 向くサイト規模 | 更新の担い手 | 運用負担 | 拡張余地 |
|---|---|---|---|---|
| WordPress | 数十〜数千ページ | 非エンジニアの編集者 | プラグイン更新と版上げが恒常的に発生 | プラグインと独自実装で広い |
| ヘッドレスCMS | 複数チャネル配信 | 編集者+フロント開発者 | CMS側は軽いがフロント実装を保守 | 配信先を選ばない |
| SaaS型ビルダー | 10〜50ページ前後 | 担当者1名 | 更新作業はほぼ不要 | 用意された機能の範囲内 |
| EC特化SaaS | 商品を売るサイト | 店舗運営担当 | 決済とセキュリティは提供元が担う | アプリ連携の範囲内 |
WordPressの位置づけは、運用負担を払う代わりに拡張余地を得る方式です。負担を払える体制がないなら、右側の2方式のほうが結果は良くなります。
ヘッドレス構成へ移す判断基準は配信チャネル数と表示速度の要件
ヘッドレス化を検討する価値があるのは、同じコンテンツをWebとアプリとデジタルサイネージなど複数の出口へ配信する場合か、表示速度が売上に直結する場合です。この2つに当たらないサイトでヘッドレス化すると、フロントエンドの実装と保守という新しい負担だけが増えます。構成の違いと主要サービスの比較はヘッドレスCMSとは?従来型CMSとの違い・主要サービス比較と選び方で確認できます。
編集者が管理画面でプレビューを見ながら記事を書く運用が中心なら、従来型のまま置くほうが総コストは下がります。
SaaS型で足りるのはページ数50前後・独自機能ゼロ・編集者1名の条件
WixやSTUDIOのようなSaaS型で完結するのは、ページ数が50前後まで、フォーム以外に独自機能を持たず、更新する人が1名という条件がそろう場合です。この条件下では、WordPressを選ぶと保守費用のぶんだけ損をします。
逆に条件を1つでも外れると窮屈になります。会員限定ページ、部門別の権限分け、外部システムとのデータ連携が必要になった時点で、SaaS型では実現手段が尽きます。
WordPressを選んでよい3条件と、選ぶと失敗する2場面の判定基準
ここまでの数値を、発注前のチェックに落とします。玉虫色にせず言い切ります。
選んでよい条件は記事量産・非エンジニア編集・年次の更新枠という3点
次の3つがそろうならWordPressを選んで問題ありません。第一に、記事や実績など同じ型のコンテンツを継続的に増やす予定があること。第二に、更新する人がコードを書かない担当者であること。第三に、プラグイン更新と年1回程度の版上げに使う予算枠を毎年確保できること。
3つ目が判断の要です。前の2つを満たすサイトは多くありますが、3つ目を年間予算に組めるかどうかで、2年後の状態が分かれます。
失敗する場面1は更新担当が決まらないまま公開に踏み切るケース
公開後に誰が更新を当てるか決まっていないサイトは、WordPressで作るべきではありません。プラグイン起因の脆弱性が年1万件規模で出て、その半数が24時間以内に悪用される環境で、放置された環境は改ざんの対象になります。改ざん後の復旧費用は、作り直しに近い金額になることもあります。
この場合はSaaS型を選ぶか、保守契約をセットで結ぶかの二択です。「予算がないので保守なしで」という選択は、費用を先送りしているだけになります。
失敗する場面2は会員・決済・在庫の業務ロジックを本体に載せるケース
会員管理、決済処理、在庫連動といった業務ロジックをWordPress本体にプラグインで積み上げる構成も避けてください。プラグインが増えるほど攻撃面と更新時の衝突リスクが上がり、あるプラグインが版上げに追随しなくなった時点で全体が止まります。WooCommerceがWordPress全体の19.8%で使われている実績はありますが、これは商品を並べて売る用途での話で、独自の業務フローを載せる話とは別です。
業務システムはWordPressの外に置き、サイト側からAPIで参照する構成にしてください。判断が付かない場合、要件を1枚に書き出して「これはコンテンツか業務処理か」で仕分けると線が引けます。
5年運用を前提にした費用の内訳と、発注前に制作会社へ確認する4項目
採用可否の最後は金額です。初期費用だけで比べると判断を誤ります。
5年で見る費用は初期・月額保守・版上げ・有料ライセンスの4本立て
WordPressサイトの費用は4つに分かれます。制作の初期費用、月額の保守費用、メジャー版上げやテーマ改修などの臨時費用、そして有料プラグインやテーマの年間ライセンス費用です。初期費用しか見ない見積比較では、月額と臨時分が抜け落ちます。
5年で総額を出し、SaaS型の月額×60か月と並べてください。ページ数が少ないサイトほどSaaS型が有利になり、ページ数と編集者が増えるほどWordPressが有利に振れます。
発注前に確認する4項目は更新責任・プラグイン方針・復旧目標・データ所有
制作会社に見積を依頼する段階で、次の4点を書面で確認してください。プラグインとコアの更新を誰がいつ当てるのか。プラグインの選定基準(更新頻度と有効インストール数の下限)はあるか。改ざんや障害が起きた場合の復旧目標時間はどれくらいか。契約終了時にデータとテーマ一式を引き渡してもらえるか。
この4点に即答できない相手は、公開後の運用まで引き受ける前提で見積もっていません。一創のWordPressサイト制作・CMS構築では、構築だけでなく更新体制と復旧手順まで含めて設計しています。要件が固まっていない段階の相談にも対応しています。
移行を検討する場合は現行サイトの棚卸しから始めると移行判断がぶれない
既存サイトを別方式へ移す判断をする場合、先に棚卸しをしてください。総ページ数、直近1年の更新回数、使用中プラグインの一覧と最終更新日、独自実装の箇所。この4点を並べると、移行すべきか、現行のまま保守を立て直すべきかが分かれます。
更新回数が年数回でプラグインも標準的なら、移行費用を払うより保守契約を結び直すほうが安く済みます。
よくある質問
WordPressの採用可否を検討する際に、繰り返し寄せられる質問を5つ挙げます。回答はすべて2026年9月1日時点の実測値に基づきます。
WordPressのシェアは本当に下がっているのですか?
全ウェブサイトに占める割合では下がっています。2026年9月1日時点で40.7%です。ただしCMSを使っているサイトに限れば58.9%で、2位のShopify(7.7%)とは大きな差があります。シェアを取っているのはShopifyとWixで、いずれもSaaS型です。小規模サイトとECの需要がSaaSへ移った結果であり、記事型サイトや中規模サイトの領域が奪われたわけではありません。数字を見るときは、どちらの分母の話かを先に確認してください。
WordPressは重くて時代遅れと言われますが本当ですか?
動いている環境次第です。2026年9月時点で稼働中のWordPressのうち、7系は59.0%にとどまり、6系が33.8%、5系以下が7.3%残っています。5系の管理画面と7系の管理画面では、編集体験に数年ぶんの差があります。7.0で管理画面テーマが刷新され、7.1でメディアエディタが再設計されました。評価を下す前に、比べている環境がどのバージョンかを確認してください。表示速度はテーマとプラグインの構成に左右される部分が大きく、本体の版だけで決まるものではありません。
個人ブログを始めるならWordPress以外のほうがよいですか?
収益化やSEOを前提にせず、記事を書いて公開できれば十分なら、SaaS型のほうが手間は少なくなります。更新作業もバックアップも提供元が担うためです。一方、独自ドメインで長期に記事を積み上げ、広告やアフィリエイトの設置、テーマの改変まで視野に入れるならWordPressが向きます。判断の分かれ目は、月1回の更新作業を自分で続けられるかどうかです。続けられないなら、シェアの大きさは選ぶ理由になりません。
WordPressのセキュリティは危険なのですか?
本体は危険ではありません。2025年に報告された11,334件の脆弱性のうち、WordPressコア本体は6件で、いずれも低優先度でした。危険なのは構成です。91%はプラグイン、9%はテーマで見つかっています。したがって対策は、入れるプラグインを絞り、更新が続いているものを選び、自動更新を有効にして、失敗を検知する仕組みを持つことに集約されます。プラグインを20個以上入れて更新を止めている環境は、CMSの種類にかかわらず危険な状態です。
既存のWordPressサイトをヘッドレス化すべきですか?
複数チャネルへの配信要件があるか、表示速度が売上に直結する場合に限って検討する価値があります。それ以外の場合、ヘッドレス化はフロントエンドの実装と保守という新しい負担が増える構成です。編集者が管理画面でプレビューを確認しながら公開する運用が中心なら、従来型のまま置いて保守体制を整えるほうが5年総額は下がります。速度が課題なら、先にテーマとプラグインの整理、画像配信の見直しから着手してください。
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