TRP(Target Rating Point)は、テレビCMが個人ベースでどれだけ届いたかを表す延べ視聴率です。計算式そのものは「ターゲット個人視聴率×放送本数」の一行で終わります。実務でつまずくのは式ではありません。用語集と広告主向け解説で定義の範囲が食い違っていること、そして提案書に書かれたTRPがどの区分・どの地区の数字なのかが読み取れないことです。この記事では、ビデオリサーチとインテージの定義を突き合わせたうえで、計算例、8つのターゲット区分の年齢、GRPとの違い、資料を受け取ったときに確認する項目までを整理します。
まとめ:TRPの要点
先に結論を並べます。
- TRPはターゲット個人視聴率(%)×放送本数で求める延べ値です。視聴率を足し上げた数字なので、100を超えます。
- TARPとTRPは同じ指標です。ビデオリサーチの用語集はTARPの項に「TRP(Target Rating Point)とも呼ぶ」と明記しています。
- ただし同用語集の定義は「個人を対象にした延べ視聴率」で、性年齢での絞り込みを条件にしていません。一方インテージなどの解説は「特定のターゲット層」に限定します。資料のTRPが個人全体か特定区分かは、語だけでは判別できません。
- ターゲット区分はC・Tと男女3段階の計8つ。F1は女性20〜34歳、M3は男性50歳以上です。
- GRPとの違いは「誰を数えるか」だけで、掛け算の形は同じです。
- 機械式個人視聴率(PM調査)は2020年3月30日に4地区から他23地区へ広がりました。それ以前の地区別データは同じ条件で並べられません。
以下、定義の食い違いから順に見ていきます。
TRPの定義が資料で食い違う理由|調査会社の用語集と広告主向け解説のズレ
TRPを調べると、説明の範囲が微妙に食い違うページに行き当たります。誤記ではなく、出どころが違うためです。
ビデオリサーチ用語集での位置づけ|TARPと同一表記で、ターゲット限定の条件なし
視聴率調査を実施しているビデオリサーチの用語集は、TARPを「Target Audience Rating Pointの略。個人を対象にした延べ視聴率。TRP(Target Rating Point)とも呼ぶ。」と定義しています(出典表記は日本インタラクティブ広告協会のインターネット広告基礎用語集 2022年度版)。TARPとTRPは別物ではありません。
注目したいのは、この定義に「特定の性年齢層に絞る」という条件が入っていない点です。同用語集のTRPの項も「個人視聴率の指標で、世帯視聴率のGRPに相当する。ある期間中に放送したテレビCMの各回個人視聴率の合計。」と書くだけで、区分の限定には触れません。用途についてはTARPの項に「主にTARPはマーケティングデータとして使われ、GRPは広告取引に使われる」という一文があります。
広告主向け解説での定義|「特定のターゲット層に届いた分」に絞る書き方
インテージの用語集は、TRPを「特定のターゲット層(年齢・性別など)にテレビCMがどれだけ届いたかを示す指標」と説明し、計算式を「TRP = ターゲット個人視聴率(%) × 放送本数」と明記しています。広告代理店やCM効果測定サービスの解説も、ほぼこの立場です。
どちらが正しいかを決める必要はありません。実務で必要なのは、目の前の数字がどちらの意味かを判別することです。資料に「TRP」とだけ書かれていたら、個人全体(ALL)なのか特定区分なのかは確定できません。この一点だけは、必ず出稿先か代理店に確認してください。区分を取り違えたまま前年実績と比べると、数字の増減がターゲット設定の違いなのか出稿量の違いなのか、切り分けられなくなります。
TRPの計算式と計算例|ターゲット個人視聴率×放送本数
式は掛け算と足し算だけ。1本ごとに「その時間帯のターゲット個人視聴率」を出し、期間内で合計します。
5日間・5本の出稿が38TRPになる計算例
月曜から金曜まで1日1本ずつ、計5本のCMを流したとします。各放送分のターゲット個人視聴率が5%、5%、10%、10%、8%だったとき、この期間のTRPは5+5+10+10+8で38となります。
秒数が混在する場合は15秒を1単位として換算するのが慣行です。テレビ朝日のコラムもGRPの説明で「30秒CMを流した場合は10GRP。15秒CMが1単位という概念から、15秒2本分の価値として算出します」と書いています。積み上げ方の詳細はGRP(延べ視聴率)とは?計算式・目安とCM費用の出し方で15秒・30秒が混ざるケースを扱っています。
「%TRP」という表記が生まれる理由|100を超える延べ値
集計ツールや提案書では「%TRP」「%TRP」と表記されることがあります。視聴率(%)を足し上げた値なので、パーセント記号が付くのは自然です。ただ、延べ値である以上、TRPは簡単に100を超えます。上の例を4週続ければ152に達しますが、これは「ターゲットの152%が見た」という意味ではありません。TRPは到達率ではなく、到達した回数を含んだ積み上げです。何%の人に届いたかを知りたいときはリーチを見ます。リーチとフリークエンシーの関係はフリークエンシーとは?広告配信における基本概念の解説で整理しています。
ターゲット区分の年齢定義|C・T・F1〜F3・M1〜M3の8区分
TRPを出すには、先に「誰を数えるか」を決めます。日本のテレビ広告では、ビデオリサーチの集計区分がそのまま共通言語です。年齢の境目は用語集に明記されています。
| 区分 | 対象 | 年齢 |
|---|---|---|
| C(Child) | 男女 | 4〜12歳 |
| T(Teen) | 男女 | 13〜19歳 |
| M1 | 男性 | 20〜34歳 |
| M2 | 男性 | 35〜49歳 |
| M3 | 男性 | 50歳以上 |
| F1 | 女性 | 20〜34歳 |
| F2 | 女性 | 35〜49歳 |
| F3 | 女性 | 50歳以上 |
個人視聴率の調査対象は4歳以上で、3歳以下はどの区分にも入りません。性別・年齢で分けずに全員をまとめる場合は「個人全体」と呼び、これを分母にした延べ視聴率がPRPです。文化放送メディアナビは、GRPが世帯、PRPが「世帯のうち4歳以上の視聴者を対象に」した指標だと説明しています。なお同メディアはPRPを「2種類に分けられる」として区分ごとの個人視聴率とコア視聴率を挙げており、F1などの区分別をPRPの内数として扱う資料もあります。
各局が独自に設定する「コア視聴率」は、この8区分とは別物です。年齢の切り方が局ごとに違い、改編期に変更されることもあります。日本テレビ・テレビ朝日・TBSなど局別の実例は5103側にまとめてあります。
TRPとGRPの違い|同じ掛け算・異なる分母
違いは一点に集約されます。視聴率の分母が世帯か個人かです。
| 指標 | ベースにする視聴率 | 数える対象 |
|---|---|---|
| GRP | 世帯視聴率 | テレビが点いていた世帯 |
| PRP | 個人全体視聴率 | 4歳以上の全個人 |
| TRP/TARP | 個人視聴率(区分を指定する場合あり) | 個人全体、またはF1やM3など指定した区分 |
ビデオリサーチは世帯視聴率を「テレビを所有している世帯のうちどのくらいの世帯でテレビが見られていたかを表す割合」、個人視聴率を「世帯内の4才以上の家族全員の中で誰にどのくらいテレビが見られていたかを示す割合」と定義しています。テレビが1台点いていれば1世帯と数えるのが前者。人単位で数えるのが後者です。同じCMでも数字は一致しません。
取引の基準も動きました。テレビ朝日のセールスサイトは「2018年4月より、スポットCMの買い付けがGRP単位でなくTRP単位に変更された」と説明しています。ただし置き換わったベースは特定の性年齢区分とは限りません。ビデオリサーチはスポットCMの取引指標であるP+C7について「算出基準は個人全体」と明記しています。買い付け単位が「TRPになった」と書かれていても、中身は個人全体(ALL)を指している場合がある、ということです。ここでも指標名だけでは判別できません。GRP側の計算式・目安・パーコスト・PRPとの詳しい比較はGRP(延べ視聴率)とは?計算式・目安とCM費用の出し方に寄せてあります。
ターゲット別の個人視聴率が4地区から広がった2020年3月30日の調査リニューアル
TRPの解説記事の多くが触れていない前提があります。ターゲット別の個人視聴率は、少し前まで全国どこでも取れる数字ではありませんでした。
ビデオリサーチは2020年2月6日のプレスリリースで、同年3月30日からの調査リニューアルを発表しました。それまで「関東/関西/名古屋/北部九州の4地区で実施している機械式個人視聴率調査(PM調査)」を、他23地区でも提供開始するという内容です。調査世帯数も拡大し、関東は900世帯から2,700世帯へ、関西は600世帯から1,200世帯へ、札幌は200世帯から400世帯へ増えました。発表時点で機械式調査を実施していなかった5地区については、各地区50〜100世帯を設定して全国データの算出に使う一方、地区別の視聴率は提供しないとされています。「全国32地区」という表記はこの設計に由来し、現在の調査規模は全国32地区・10,800世帯です。
この日付が実務に効くのは、比較の可否を決めるからです。2020年3月より前、機械式のターゲット別個人視聴率が取れたのは関東・関西・名古屋・北部九州の4地区だけでした。残る23地区の過去実績を同じ条件で並べることはできません。過去5年の推移をTRPで示した資料を受け取ったら、地区と取得方法を先に確認してください。
細かい区分で買うときの限界も押さえておきます。地区によって調査世帯数の桁が違い、拡大後の札幌でも400世帯、地区別提供のない5地区は各50〜100世帯です。この規模でF1やM1のような細分区分に絞ると、1世帯の在不在が数値を大きく動かします。調査世帯数の小さい地区で細分区分のTRPを買い付け条件に据えるのは避けてください。その地区は個人全体(ALL)で押さえ、ターゲット精度は関東・関西など世帯数の大きい地区で取りにいくほうが、結果の説明がつきます。
TRPを買い付けに使うときの確認事項|ベース表記の揺れと獲得実績のズレ
資料に書かれた指標名を額面どおりに読むと事故ります。テレビ朝日のコラムは、GRPについて「GRPは個人全体視聴率(+タイムシフト視聴率)が使われていて」と書きながら、費用を出すパーコストは「世帯視聴率1%の値段」と説明しています。放送局が出している解説ページでも、ベース表記の揺れはこの程度。用語の呼び方で判断せず、数字ごとにベースを聞くのが確実です。
聞くべきことは決まっています。その数字はどの地区のものか。分母は世帯か、個人全体か、特定区分か。タイムシフト視聴を含むのか。この3点が空欄のままのTRPは、他案件とも前年実績とも突き合わせられません。
買い付け時のTRPと、放送後に実際に積み上がったTRPが一致しない点も前提に置いてください。この差分を扱う言い方が広告実務の「アクチュアル」で、会計での用法とは意味が違います。用語の使い分けはアクチュアルとは?ビジネスでの意味と会計・広告での使い分けで扱いました。枠の買い方そのものを設計段階から見直すならメディアバイイングとは?広告枠の購入とその重要性を解説、視聴率以外の指標も含めて全体像を押さえたい場合はメディアデータとは?定義と種類・視聴率やリーチなどの広告指標をわかりやすく解説が対応します。
よくある質問
TRPは何の略ですか?
Target Rating Point(ターゲット・レイティング・ポイント)の略です。日本語では「延べターゲット視聴率」と訳されます。なお、TRPという3文字は東京レインボープライドや自転車ブレーキのブランド名、生体膜のイオンチャネル(TRPチャネル)にも使われるため、検索結果には広告と無関係なページが混在します。
TRPの計算式は?
ターゲット個人視聴率(%)×放送本数です。複数本を流した場合は、1本ごとの視聴率を期間内で合計します。視聴率5%の枠に3本、10%の枠に2本を流したなら、5×3+10×2で35TRPです。秒数が混ざるときは15秒を1単位として換算し、30秒CMは2本分として数えます。
TARPとTRPは違う指標ですか?
同じ指標の別表記です。ビデオリサーチの用語集はTARPの項に「Target Audience Rating Pointの略。個人を対象にした延べ視聴率。TRP(Target Rating Point)とも呼ぶ。」と明記しています。ただし同項の定義には性年齢で絞る条件が入っていません。資料をまたいで数字を突き合わせるときは、表記の違いより「どの区分の個人視聴率か」が書かれているかを確認してください。
「%TRP」と書かれることがあるのはなぜですか?
視聴率(%)を足し上げた値なので、パーセント記号を付けて書かれる場面があります。ただしTRPは延べ値で、100を超えます。「ターゲットの何%に届いたか」を示す到達率ではありません。到達率を知りたい場合はリーチ、1人あたり何回届いたかはフリークエンシーを確認します。
TRPとGRPのどちらで買い付けますか?
地区と局によります。テレビ朝日は「2018年4月より、スポットCMの買い付けがGRP単位でなくTRP単位に変更された」と説明していますが、ビデオリサーチはスポットCMの取引指標P+C7の「算出基準は個人全体」としています。指標名が「TRP」でも中身が個人全体(ALL)のことがあるため、提案書を受け取ったら取引単位と分母の両方を確認してください。ターゲットを性年齢で明確に絞れる商材なら区分別のTRP、購入世帯単位で捉える商材ならGRPのほうが説明しやすくなります。