チャットボットを無料で使う方法は、SaaSのフリープラン、オープンソース(OSS)を自社サーバーで動かす方法、LINE公式アカウントの無料プランの3通りに分かれます。どれも期間の制限はほぼありませんが、会話件数やナレッジの容量に上限があり、たとえばBotpressの無料プランは月100会話、Tidioは課金対象の会話が月50件までです。この記事では、Dify・Tidio・Botpress・LINEの無料枠を公式料金表で突き合わせ、業務に入れる前に確かめる入力データとライセンスの条件、無料のまま続ける会社と有料プランや自社構築へ切り替える会社の判断基準、2週間で有料化の判断材料をそろえる検証手順までを、チャットボットの受託開発会社の視点で整理します。
まとめ:無料チャットボットは月50〜200件の上限内で効果を測るための入口
無料のチャットボットは「本番の窓口」ではなく「効果を測る道具」と位置づけると判断を誤りません。主要製品の無料枠は月50〜200件規模の会話またはクレジットで止まり、ナレッジに入れられる文書も50件・数十MBが上限です。月の問い合わせが数十件で、答える内容が営業時間や手続きの案内のように固定的な会社なら、無料のまま運用を続けられます。
切り替えを考えるのは、無料枠を毎月使い切るようになった時点、会員情報や在庫など社内システムのデータを参照して答える必要が出た時点、顧客の個人情報を扱う窓口に置きたくなった時点のいずれかです。前者は有料プランへの移行で解決し、後の2つはSaaSの設定範囲を超えるため自社構築を比べる段階に入ります。無料で始める前に、質問件数・自己解決率・有人への引き継ぎ件数の3つを測ると決めておくと、2週間後に数字で判断できます。
無料で使えるチャットボットの種類と仕組み:SaaS無料プラン・OSS・LINE公式の違い
「無料」と書かれていても、何が無料なのかは方式によって違います。費用がかからない範囲と、別の形で負担が残る部分を方式ごとに分けて見ます。
機能制限型のフリープラン:会話件数とボット数に上限を置くSaaSの典型
SaaS型チャットボットの無料プランは、利用期間ではなく利用量で線を引く「フリーミアム」が大半です。上限の置き方は製品で異なり、Botpressは月の会話数とAIエージェント数、Tidioは課金対象の会話数とAI応答の件数、Difyはメッセージクレジットとアプリ数で区切っています。サーバーの用意もプログラムも要らず、管理画面で回答を登録してWebサイトに埋め込みタグを貼れば動きます。
注意したいのは、上限に達したときの挙動です。Botpressの無料プランは、公式料金表で超過分の会話パックを買えないと明記されており、上限に達した月はそれ以上の会話を処理できません。問い合わせが集中する月に窓口が止まる可能性を、始める前に把握しておく必要があります。シナリオ型・AI型・生成AI型という方式の違いはチャットボット比較の記事でシナリオ型・AI型・生成AI型の違いとして整理しています。
OSSを自社サーバーで動かす無料:ライセンス費0円でもサーバー代と保守が残る
DifyやRasaのようにソースコードが公開されている製品は、自社のサーバーやクラウドに入れればライセンス費をかけずに動かせます。会話件数の上限も無く、SaaSの無料枠より自由度は高くなります。
ただし費用が消えるわけではありません。クラウドの仮想サーバー代、生成AI型ならLLMのAPI利用料、OSのセキュリティ更新とバージョンアップの作業が毎月発生します。Difyを自社環境で動かす場合も、Docker Composeでの起動、ナレッジの登録、社内公開の設定まで手を動かす担当者が必要です。具体的な作業はDifyでチャットボットを作る手順と社内公開・ナレッジ設定にまとめています。社内にLinuxサーバーを触れる人がいない会社では、SaaSの無料プランより総負担が重くなりがちです。
LINE公式アカウントの無料プラン:月200通の枠と応答が数えられない仕組み
LINE公式アカウントのコミュニケーションプランは月額0円で、無料メッセージ通数は月200通です。上位のライトプランは月額5,000円(税別)で5,000通、スタンダードプランは月額15,000円(税別)で30,000通と、LINEヤフー for Businessの料金プランページに記載されています(2026年11月時点)。
チャットボット用途で見落とされやすいのは、通数の数え方です。同じページでは、課金対象として数えるのは「メッセージ配信」とMessaging APIのPush・Multicast・Broadcast・Narrowcastで、応答メッセージ、LINEチャットの送受信、Messaging APIのReply APIは通数に含まれないと説明されています。利用者の問いかけに返信するだけのボットなら、200通の枠を消費せずに動かせる設計です。逆に、ボットから利用者へ能動的に通知を送ると枠を使います。予約のリマインドや配送通知まで載せるなら、無料プランの200通で足りるかを先に試算してください。
ChatGPTなど汎用AIの無料版と自社サイトに置くチャットボットの違い
「無料のチャットボット」で検索すると、ChatGPTやGeminiのような汎用AIの無料版も候補に挙がります。これらは個人が質問して答えを得るためのサービスで、自社のWebサイトに設置して顧客の問い合わせに答えさせる用途とは別物です。
汎用AIの無料版には、自社の料金表や手続きの案内を正しく答えさせる仕組みも、問い合わせの履歴を担当者が確認する管理画面もありません。自社の情報で答えるチャットボットにするには、社内文書を検索して回答に使う構成(RAG)が要ります。生成AI型と従来型の仕組みの差はAIチャットボットとは何かと生成AI型・従来型の違いで解説しています。
主要な無料プランの上限を公式料金表で比較:Dify・Tidio・Botpress・LINE
比較サイトの一覧は更新時期がまちまちで、上限値が古いまま残っていることがあります。ここでは2026年11月2日に各社の公式料金表で確認した値だけを並べます。
4製品の無料枠の比較表:会話件数・ボット数・ナレッジ容量の上限値
無料枠の単位は製品ごとに「会話」「クレジット」「通数」と異なるため、単純な件数の大小では比べられません。何が上限になるかを並べると、次のとおりです。
| 製品 | 無料枠の単位と上限 | ボット・アプリ数 | ナレッジ容量 | 次の有料プラン |
|---|---|---|---|---|
| Dify(Sandbox) | 200メッセージクレジット | 5アプリ | 50文書・50MB | Professional 年590ドル |
| Tidio(Free) | 課金対象の会話 月50件 | 記載なし | FAQ登録に対応 | Starter |
| Botpress(Free) | 月100会話 | 3エージェント | ベクター100MB | Plus 月150ドル |
| LINE公式(コミュニケーション) | 配信 月200通 | 1アカウント | 応答メッセージを個別登録 | ライト 月5,000円 |
数値の出典はDifyの公式料金表、Tidioの公式料金表、Botpressの公式料金表とLINEの料金プランページです。Botpress Plusの月150ドルは年払い時の表示価格です。ドル建ての製品は為替で円換算の負担が動くため、有料化を比べるときは請求通貨も確かめてください。
生成AI型の無料枠はクレジット制:使い切った後は自社APIキーへ切り替え
生成AIで回答を作るチャットボットは、LLMの呼び出しごとに原価がかかるため、無料枠もクレジットや件数で厳しく区切られます。Difyの公式料金表では、Sandboxが「200 message credits」、有料のProfessionalが「5,000 message credits / month」と書かれています。Sandboxには有料プランのような月単位の表記がありません。
同じ料金表には、クレジットを使い切った後は自前のAPIキーに切り替えられるとの注記もあります。OpenAIなどのAPIキーを登録すれば会話は続けられますが、その時点からLLMの従量課金が自社の請求に乗る仕組みです。Tidioも、AI応答のLyroは最初の50会話までが無料で、毎月の付与ではなく初回限りと料金表に明記されています。生成AI型を「無料で使い続ける」ことは、どの製品でも難しいと考えたほうが現実的です。
無料チャットボットを業務に入れる前に確認する入力データとライセンスの条件
無料プランでも、顧客の問い合わせ内容は外部のサービスに送られます。料金とは別に、データの扱いと利用条件を確かめる工程を飛ばさないでください。
入力データの扱い:利用規約・保存期間・学習利用の設定を先に読む項目
確かめる項目は4つあります。会話ログの保存先と保存期間、入力内容がサービス改善やAIの学習に使われるか、退会時にデータを消せるか、管理画面にログインできる人数です。Difyの無料プランは公式料金表でログ保持期間が30日、チームメンバーが1人と示されており、問い合わせの傾向を3か月単位で振り返る運用には向きません。
顧客の氏名・電話番号・注文番号を入力させる窓口に置くなら、無料プランの規約で個人データの取り扱いが自社のプライバシーポリシーと矛盾しないかを、法務か情報システムの担当者と確認してから公開します。確認が取れない場合は、個人情報を尋ねない範囲に回答を絞るのが安全です。
OSS版Difyの改変Apacheライセンス:マルチテナント運用とロゴ削除の制限
OSSなら何をしても自由、とは限りません。DifyはGitHubで公開されているLICENSEで、Apache License 2.0に追加条件を付けた改変ライセンスを採用しています。
追加条件は2つです。1つは、提供元の書面による許可なくDifyのソースコードでマルチテナント環境を運用できないこと(1テナントは1ワークスペースと定義)。もう1つは、フロントエンドを使う場合にコンソールやアプリ内のロゴ・著作権表示を削除・変更できないことです。自社の社内ボットとして使う範囲なら影響は小さいものの、取引先ごとにワークスペースを分けて提供するサービスを作る場合や、画面を自社ブランドに作り替えたい場合は商用ライセンスの取得が前提になります。
RasaのOSS版は保守モード:無料のOSSでも開発の継続性を確かめる
OSSを選ぶときは、ライセンスと並んで「今後も更新されるか」も確認の対象です。対話型ボットのOSSとして知られるRasaは、OSS版が保守モードに入り、新機能の開発は有償のRasa Pro側に移っています。経緯と後継製品の整理はRasaの保守モードのOSS版とRasa Proの使い方で解説しています。
保守モードのOSSは、すぐに使えなくなるわけではありません。ただ、依存ライブラリの脆弱性対応が遅れると、自社サーバーに置いたボットがそのまま攻撃の入口になります。GitHubで直近のリリース日とセキュリティ修正の頻度を確かめ、半年以上更新が止まっている製品は業務用の候補から外す判断が無難です。
無料のまま続ける会社と有料プラン・自社構築へ切り替える会社の判断基準
無料か有料かは、製品の良し悪しではなく、問い合わせの量と答える内容の種類で決まります。ここでは条件を示したうえで、どちらを選ぶかを言い切ります。
無料で足りる条件:月の問い合わせが数十件で回答が固定的な案内中心の会社
無料のまま続けてよいのは、次の条件がそろう会社です。月の問い合わせが無料枠(50〜100会話程度)に収まること、答える内容が営業時間・アクセス・申込手順・よくある料金質問のように誰が聞いても同じ答えになること、ログを1か月以上さかのぼって分析しなくても運用が回ることです。
このタイプは、生成AI型ではなく選択肢を順にたどるシナリオ型で十分に機能し、無料枠の消費も抑えられます。有料プランの月額や、受託で作った場合の初期費用と3年総額の比較はAIチャットボットの費用相場と内訳、月額料金の比較で扱っています。問い合わせが月100件に満たない段階で高額な構築に進むのは過剰です。
有料プランへ上げる目安:無料枠を2か月続けて使い切った時点で比べる
無料枠を1か月だけ使い切ったのは、キャンペーンや繁忙期の影響かもしれません。2か月続けて上限に達したら、問い合わせ量が恒常的に枠を超えていると判断し、有料プランへの移行を比べる段階です。
比べるときに確かめる対象は、月額だけでなく、上位プランで外れる制限です。Botpressは有料のPlusで会話250件・AIエージェント無制限・ベクター1GBになり、ウェブチャットのロゴ表示を外せます。Difyは有料のProfessionalでクレジットが月5,000件に増えます。無料版で作った回答データやシナリオがそのまま上位プランに引き継がれるかも、移行前に問い合わせて確認してください。
自社構築を選ぶ場面:基幹システム連携や会員情報を参照する回答が要る場合
SaaSの有料プランでも解決しないのは、回答に社内システムのデータが必要な場合です。「注文した商品はいつ届くか」「契約の更新日はいつか」「この部品の在庫はあるか」に答えるには、ボットが受注・会員・在庫のデータベースを照会し、本人確認をしてから回答を返す仕組みが要ります。SaaSのチャットボットはFAQや文書を検索して答えることは得意ですが、自社の基幹システムへの安全な接続と権限制御は設定画面だけでは組めません。
この段階では、無料枠で集めた質問ログを要件の材料にして、自社構築を検討します。方式の比べ方と実装の流れはAIチャットボットの作り方と方式選定・実装手順で確認できる内容です。社内システムとつなぐ回答範囲の設計から運用まで外部に任せたい場合は、一創のAIチャットボット開発サービスで、無料ツールでの検証結果を踏まえた構成をご提案します。
無料チャットボットを入れないほうがよい場面:個人情報や契約内容に答える窓口
無料プランを使わないと判断すべき場面もあります。医療・保険・金融のように回答の誤りが顧客の損害や法令違反につながる窓口、契約内容や請求額のように本人の個人情報を前提に答える窓口です。
無料プランは、ログ保持期間・管理者の人数・サポートの範囲が限られます。誤答が起きたときに「誰が・いつ・どの回答を見たか」をさかのぼれないため、事故の調査ができません。この種の窓口は、最初から有料プランか自社構築で、ログの保存と権限管理を設計してから公開します。費用を抑えたいだけなら、ボットはよくある質問の案内に留め、個人に関わる質問は有人窓口へ回す線引きのほうが安全です。
無料プランで試すときの進め方:2週間の検証で有料化の判断材料をそろえる手順
無料で始める最大の利点は、費用をかけずに「自社の問い合わせにボットが効くか」を数字で確かめられる点です。目的を決めずに設置すると、使われないまま放置されます。
検証前に決める3つの指標:質問件数・自己解決率・有人への引き継ぎ件数
設置前に測る指標を決め、検証期間を2週間と区切ります。見る数字は、ボットに来た質問件数、ボットの回答で解決した割合(自己解決率)、有人窓口へ引き継いだ件数の3つです。メールや電話の問い合わせ件数も同じ期間で記録しておくと、ボットがどれだけ有人対応を減らしたかを比べられます。
2週間後、自己解決率が低いなら回答データの不足、質問件数が少ないなら設置場所の問題と切り分けられます。引き継ぎ件数が多い質問は、ボットで答える範囲から外すか、回答を作り直す候補です。有人への引き継ぎの設計はチャットボットでヘルプデスクを一次受けする設計と有人引き継ぎで詳しく扱っています。
FAQ30件から始めるナレッジ準備と無料枠に収める回答範囲の絞り方
無料枠のナレッジ容量は限られるため、最初から全部の資料を入れようとしないことです。過去3か月のメールと電話の問い合わせを数え、件数の多い順に30件程度のFAQを作って登録します。これだけで問い合わせの大半を占める定型質問をカバーできることが多く、Difyの無料枠(50文書・50MB)にも十分収まります。
回答は1問1答で短く書き、手続きの詳細は自社サイトの該当ページへのリンクで渡します。ボットに長文を答えさせるより、正しいページへ案内するほうが誤答を減らしやすい方法です。FAQページそのものを整えるか、チャットボットに載せるかの選び分けはFAQシステムとチャットボットの違いとSaaS・自社開発の選び方が参考になります。
よくある質問
無料のチャットボットを検討する担当者から寄せられることの多い質問に答えます。
ずっと無料で使えるチャットボットはありますか?
あります。Botpress・Tidio・LINE公式アカウントの無料プランは、利用期間の制限なく使えます。ただし月の会話件数や配信通数に上限があり、Botpressは月100会話、Tidioは課金対象の会話が月50件、LINE公式アカウントは配信が月200通までです(2026年11月時点の各社公式料金表)。上限の範囲で問い合わせが収まる会社なら、ずっと無料で運用できます。
無料のAIチャットボットで生成AIの回答は使えますか?
試す範囲なら使えます。Difyの無料プランは200メッセージクレジット、TidioのAI応答は初回50会話まで無料です。ただし生成AIはLLMの呼び出しごとに原価がかかるため、無料枠は小さく、使い切った後は自社のAPIキーを登録して従量課金で続けるか、有料プランへ移る必要があります。本番運用を無料のまま続けるのは現実的ではありません。
中小企業が無料チャットボットを選ぶときは何を基準にすればよいですか?
月の問い合わせ件数と、回答の種類で選びます。問い合わせが月50件以下で答えが固定的なら、シナリオ型の無料プランで足ります。LINEで顧客とやり取りしている会社は、応答メッセージが配信通数に含まれないLINE公式アカウントの無料プランが候補です。社内にサーバーを運用できる人がいない会社は、OSSよりSaaSの無料プランを選んだほうが負担が軽くなります。
オープンソースのチャットボットなら費用はかかりませんか?
ライセンス費はかかりませんが、クラウドのサーバー代、生成AI型ならLLMのAPI利用料、セキュリティ更新の作業が毎月発生します。Difyのように改変ライセンスを採用している製品もあり、マルチテナント運用やロゴの削除には商用ライセンスが必要です。OSS版が保守モードに入ったRasaのような例もあるため、更新頻度とライセンス条件を確かめてから選んでください。
無料プランから有料プランへ切り替えるタイミングはいつですか?
無料枠を2か月続けて使い切った時点が1つの目安です。一時的な繁忙期ではなく、問い合わせ量が恒常的に枠を超えていると判断できるためです。会員情報や在庫など社内システムのデータを参照して答える必要が出た場合は、有料プランでも解決しないことが多く、自社構築を比べる段階に入ります。切り替え前に、回答データやシナリオが引き継げるかを提供元へ確認してください。
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