Rasa(ラサ)は、チャットボットや音声アシスタントをPythonで作るための会話AIフレームワークです。長く「オープンソースのチャットボット」として知られたRasa Open Sourceは保守モードに入り、開発はRasa Proへ移りました。Rasa Proには、LLMが発話を解釈しフロー(業務手順)が処理を決める「CALM」と、2026年10月20日の3.21.0でベータとして案内された新エンジン「Mantle」があります。無料のDeveloper Editionでも使えますが、ライセンスキーが必要です。この記事では、製品構成、CALMとMantleの違い、3.21.0を実際に入れて確かめた導入手順、既存ボットの移行、日本語とLINEの注意点、ほかのOSSチャットボットとの選び分けまでを扱います。なお、扱うのはソフトウェアのRasaで、同名のラサ工業やサンスクリット語の美学用語とは関係ありません。
まとめ:Rasaの現在地と選び方の要点
| 項目 | Rasa Open Source | Rasa Pro |
|---|---|---|
| PyPIパッケージ | rasa | rasa-pro |
| 最新版(2026-10-25) | 3.6.21(2025-01-14) | 3.21.0(2026-10-20) |
| 対応Python | 3.8〜3.10 | 3.11〜3.14 |
| ライセンス | Apache-2.0 | ライセンスキー必須 |
| 無料で使える範囲 | 制限なし | 1社1ボット・外部月1,000/社内月100会話 |
| 対話エンジン | NLU+ストーリー | CALM(既定)・Mantle(ベータ) |
| 開発状況 | 保守モード | ほぼ毎月マイナー版 |
- これから作るならRasa Pro。Rasa Open Sourceは3.6.21で止まっており、Python 3.11以降には入りません。
- Rasa Proは
rasa initからRASA_LICENSEを要求します。今回試したコマンドのうち、ライセンスなしで成功したのは--helpと--versionでした。 - 3.21.0は依存先のonnxruntimeがIntel Mac向けの配布物を持たず、Intel Macにはそのままでは入りません。Dockerなどの Linux 環境で動かします。
- 手順を確実に守らせたい業務はCALM、LLMに任せる範囲を広げたいならMantleを選びます。
- 組み込みのチャネルにLINEは無く、CALMの日本語による発話解釈は接続するLLMの性能に依存します。応答品質はフローや応答文の設計も含めて検証します。
- FAQに答えるだけならRAGチャットボットやDifyの方が早く作れます。
Rasaの製品構成:Open Source・Pro・Studio・Hello Rasa
Rasaは2016年に創業した企業で、本社は米国サンフランシスコ、開発拠点はドイツのベルリンにあります。同社は公式サイトで、Rasaを「オープンソースのチャットボットフレームワーク」や「NLUライブラリ」と呼ぶのは2016年当時の説明で、現在は自社環境で動かせる企業向けAIエージェントの開発基盤だと明言しています。古い記事に出てくる「無料のRasa Open Source」と「有償のRasa X/Enterprise」という区分は、今の構成とは違います。
Rasa Open Sourceは3.6系で保守モード
GitHubのRasaHQ/rasaのREADMEには「Rasa Open Source is currently in maintenance mode」と書かれ、今後はHello RasaとCALMで開発すると案内されています。PyPIの rasa は2025年1月14日の3.6.21が最後の版で、対応Pythonは3.8以上3.11未満です。ライセンスはApache-2.0のままなので、既存のボットを動かし続けることはできます。ただし、Rasaの製品保守ポリシーにある商用サブスクリプション向けの表では、Open Source 3.6系のソフトウェア保守は2024年7月3日、技術サポートは2025年1月3日に終わっています。新機能は入らず、依存ライブラリの脆弱性への対応も期待できません。
Rasa ProとDeveloper Editionのライセンス条件
現在の本体は rasa-pro パッケージで、2026年10月20日に3.21.0が出ました。同じ保守ポリシーでは、3.21系のソフトウェア保守は2027年7月20日まで、技術サポートは2028年1月20日までです。利用にはライセンスキーが必要で、無料のDeveloper Editionがあります。公式の料金ページは、Developer Editionをローカルでも本番でも使えるとし、1社につきボット1つ、外部ユーザーとの会話は月1,000件、社内の従業員との会話は月100件までと定めています。サポートはフォーラムでのコミュニティ対応です。上限を超える場合や、SSO・ロールベースのアクセス制御・Studioが必要な場合はEnterpriseの契約になり、価格は営業への問い合わせです。
Rasa StudioとHello Rasaの位置づけ
Rasa Studioは、フローや応答を画面上で作ってテストするノーコードのツールで、開発者のコードとは rasa studio pull/push で同期します。Hello Rasaはブラウザで試せるプロトタイプ環境で、テンプレートからエージェントを組み、Rasa Platformへ書き出せます。会話ログを見てボットを改善するツールだったRasa Xは、無料のCommunity Editionについて2022年6月8日に保守とサポートの終了が告知されました。会話ログの確認やチームでの編集は、今はStudioが受け持ちます。
CALMの仕組み:LLMによる発話解釈とフローによる業務制御
CALM(Conversational AI with Language Models)は、Rasa Proの既定の対話エンジンです。LLMの役割を「ユーザーが何をしたいかの解釈」に限り、何をどの順で実行するかは開発者が書いたフローに従わせます。
CALMのコマンド生成・フロー実行・応答処理
発話が届くと、LLMが会話の文脈を踏まえて「フローを開始する」「スロットに値を入れる」といった内部コマンドを出します。対話マネージャーはそのコマンドに従い、フローの開始・中断・再開、カスタムアクションの実行、RAGによるナレッジ検索の回答を行います。話題の切り替えや言い直し、聞き返しは「会話パターン」として組み込み済みで、開発者が分岐を一つずつ書く必要はありません。応答は既定ではテンプレート文で、必要な箇所だけLLMで言い換えるリフレーザーを有効にできます。
インテント型のNLUボットとの違い
Rasa Open Sourceのボットは、発話を「インテント」に分類し、ストーリーやルールで次の応答を決めていました。CALMとの違いは、発話の解釈そのものに会話の文脈を使う点です。CALMの公式ドキュメントは、LLMが手順まで判断するReAct型エージェントも含め、次のように整理しています。
| 観点 | ReAct型エージェント | CALM | NLUボット |
|---|---|---|---|
| 発話の理解 | LLMが理解と判断を同時に行う | LLMが会話の文脈で解釈 | 直前の発話を分類 |
| 次の手順 | プロンプト内でLLMが決める | フローに定義 | 対話ツリーに定義 |
| 障害の調べ方 | 長い出力を読む | 出たコマンドで追える | 容易だが直しにくい |
| 本番のコスト | LLMを何度も直列に呼ぶ | 小型の調整済みモデルで抑える | 低い |
チュートリアルで使うLLMは、RasaがLlama 3.1 8Bを調整したコマンド生成用モデル(rasa/command-generator-llama-3.1-8b-instruct)です。GPT系の大型モデルでも動きますが、小型モデルを自社で動かせばトークン課金を固定のホスティング費に置き換えられる、というのがRasaの主張です。
Mantle:3.21.0でベータになったLLMネイティブのエンジン
Mantleは、インテントやフローを書かずに、自然文の指示とPythonのツールでエージェントを組むエンジンです。3.21.0のリリースノートでベータとして案内され、rasa init --engine mantle で雛形を作ります。ドキュメントはCALMとは別のmantle.rasa.comにあり、「指示文から始めて、必要になった箇所にだけフレームワークの保証を足していく」設計だと説明しています。
Mantleのプロジェクト構成:agent.ymlとskillsフォルダ
3.21.0に同梱されているMantleの雛形は、CALMの domain.yml・config.yml・data/ を持ちません。中身は次のとおりです。
| ファイル | 役割 |
|---|---|
| agent.yml | 言語・ペルソナ・全体ルール・使うモデル群 |
| integrations.yml | モデルの接続先・チャネル・MCPサーバー |
| skills/名前/skill.md | スキル1つ分の説明と手順(必須) |
| skills/名前/tools.py | スキルが呼ぶPython関数 |
| skills/名前/memory.yml | スキルが会話中に保持する値 |
| AGENTS.md | コーディングエージェント向けの説明 |
雛形の integrations.yml はOpenAIのgpt-5.2に接続する設定で、OPENAI_API_KEY が必要です。AGENTS.md には、雛形作成時にClaude CodeとCursor向けのスキルと、シミュレーションと評価を行う rasa-tools MCPサーバーの設定が置かれると書かれています。コーディングエージェントにスキルを書かせる前提の構成です。
Mantleのtool_constraintsによるツール実行条件の制御
LLMに任せる範囲が広いぶん、Mantleは「この条件を満たすまでツールを見せない」という制約をskill.mdの先頭に書けます。雛形の取引履歴スキルは次のとおりで、口座が選ばれるまで履歴取得ツールはLLMに渡されません。
---
name: View Transactions
description: >
Show recent transactions for one of the customer's accounts (checking or
savings). Activate only when the customer clearly asks about spending
history, recent charges, transactions, or statement activity.
tool_constraints:
- get_recent_transactions:
requires: session.view_transactions.selected_account_id
---
Help the customer view recent transactions on one account. Do not invent
merchants, amounts, dates, account ids, or transaction ids.
ツール本体は tools.py に @tool デコレーターで書きます。3.21.0の環境で雛形の tools.py を読み込むと、fetch_accounts と get_recent_transactions の2関数が公開されていました。Tool Constraintsのドキュメントによれば、取り消せない処理には requires_confirmation を付けると実行前に利用者の承認を取ります。またResponsesのドキュメントでは、録音の告知や免責文のように文言を固定したいものは responses.yml に定義し、スキルの起動時や条件成立時に呼び出す設定を書くと、LLMは書き換えずにそのまま届けると説明しています。
CALMとMantleの選び分け
Mantleはベータで、既定のエンジンはCALMのままです。本人確認や必須項目の収集のように手順の抜けが許されない業務を本番に出すなら、今はCALMを選びます。手順を事前に書き切れない相談や案内で、LLMに会話の運びを任せつつ、危ない操作だけを制約で止めたい場合はMantleを試す価値があります。両者はプロジェクトの構成ファイルが異なるため、乗り換え時には対話ロジックと設定の移植が必要です。既存のPython処理を再利用できる範囲は個別に確認します。
Rasa Proのインストールと最初のエージェント(3.21.0で確認)
ここからの手順は、2026年10月24〜25日に rasa-pro 3.21.0で確かめたものです。ライセンスキーは使っていないため、学習と対話の実行は確認していません。
Python 3.11〜3.14とuvでの導入
公式ドキュメントはパッケージ管理にuvを推奨しています。対応はPython 3.11〜3.14ですが、Pythonの対応表が「Full support」とするのは3.11だけで、3.12以降はTensorFlowを使う部品(DIETClassifierやTEDPolicyなど)が使えない限定的なサポートです。
mkdir my-rasa-assistant
cd my-rasa-assistant
uv venv --python 3.11
source .venv/bin/activate
uv pip install rasa-pro==3.21.0
export RASA_LICENSE=YOUR_LICENSE_KEY
rasa --version
今回のDocker上のLinux x86_64環境(python:3.12-slim)では、約30秒で222個のパッケージが入り、仮想環境は936MBになりました。所要時間と容量は、この環境での参考値です。インテント分類などのNLU部品が必要なら rasa-pro[nlu]、Slackなどのチャネル接続が必要なら rasa-pro[channels] を追加で入れます。
Intel MacでのRasa Pro導入とDockerによるLinux実行環境
Intel Mac(macOS 26.6.2)で上の手順を実行すると、3.21.0は依存関係の解決で止まりました。PyPIのメタデータを見ると、3.20.0では追加機能(full・pii)だけが使っていたonnxruntime 1.24.2以上が、3.21.0では必須の依存になっています。onnxruntimeの新しい版はmacOS向けにApple Silicon用のwheelしか配布していないため、Intel Macには入りません。同じMacで3.20.0は入りました。Intel Macでは、docker run --rm -it python:3.12-slim bash でLinuxコンテナを起動し、まず python -m pip install uv を実行します。その後、上記の導入手順を実行します。Python 3.12で試す場合は、仮想環境作成時の指定も --python 3.12 に変更します。リリースノートによれば公式のDockerイメージ rasa/rasa-pro もあります。
RASA_LICENSE未設定時のrasa initのエラー
公式ドキュメントはライセンスが必要なコマンドとして rasa train、rasa run、rasa inspect などを挙げ、rasa init を含めていません。ところが3.21.0で RASA_LICENSE を設定せずに rasa init --template tutorial --no-prompt を実行すると、次のエラーで終了しました。rasa data validate、rasa skills list、rasa license も同じです。
[error ] license.not_found.error
A Rasa license is required. Please set the environment variable `RASA_LICENSE` to a valid license string.
ライセンスなしで動いたのは rasa --help と rasa --version で、--version は「License Expires: not set」と表示します。対話的な端末でキーが無いと、メールアドレスを入力してDeveloper Editionを申請する画面になります。申請には開発者規約とマーケティング連絡への同意が伴うため、社用のアドレスで申請するかを先に決めておきます。CIでは --no-prompt を付けると、プロンプトを出さずにエラーで止まります。
rasa initのテンプレートの選び方
CLIリファレンスには「--template calm でCALMの雛形を作る」とありますが、3.21.0の実装ではテンプレートは default・tutorial・basic・finance・telco の5種類で、calmとmantleは --engine の値です。引数なしで作られる default は連絡先の追加・一覧・削除をフローで扱うCALMの雛形で、LLMはOpenAIのgpt-5.1に接続します。
| 指定 | 中身 | LLMの鍵 |
|---|---|---|
| –template tutorial | 送金フロー1本だけ | 不要(Rasaが用意したモデル) |
| –template default | 連絡先管理のフロー3本とE2Eテスト | OpenAIのAPIキー |
| basic・finance・telco | 業種別の雛形 | 設定による |
| –engine mantle | 取引履歴スキル1本 | OpenAIのAPIキー |
最初の1本は tutorial を選びます。LLMの接続先がRasaのホスティングする調整済みモデルに向いているため、自分のAPIキーを用意しなくても学習と対話を試せます。
flows.ymlとdomain.ymlの書き方
tutorial テンプレートの data/flows.yml は、送金の手順を次の8行で定義しています。description はLLMがどのフローを開始するかを判断する材料で、steps が実行する手順です。
flows:
transfer_money:
description: Help users send money to friends and family.
steps:
- collect: recipient
- collect: amount
description: the number of US dollars to send
- action: utter_transfer_complete
collect は値をスロットに集めるステップです。Rasaは utter_ask_recipient という名前の応答で質問し、答えをスロット recipient に入れます。スロットと応答は domain.yml に書きます。以下はrecipient関連だけの抜粋です。from_llm は、値をLLMが発話から取り出すという指定です。
slots:
recipient:
type: text
mappings:
- type: from_llm
responses:
utter_ask_recipient:
- text: "Who would you like to send money to?"
「100ドルをJoeに送りたい」と一度に言われれば、2つの collect は質問せずに埋まります。インテントの学習データを書かずにこの挙動が得られる点が、NLUボットとの最大の違いです。
カスタムアクションとrasa inspectでの確認
外部APIやデータベースを参照する処理はPythonのカスタムアクションに書きます。tutorial テンプレートに入っている残高確認の例は次のとおりで、残高は1,000に固定したデモです。amountが検証済みの正の数値であることを前提としており、未入力・文字列・負数への対応は含みません。初期フローからは呼ばれないため、使うにはdomainへのアクションと結果スロットの登録、フローへの呼び出しと分岐の追加が必要です。アクションの読み込み先は、テンプレートの endpoints.yml で action_endpoint の actions_module: "actions" として設定済みです。
from typing import Any, Dict, List, Text
from rasa_sdk import Action, Tracker
from rasa_sdk.events import SlotSet
from rasa_sdk.executor import CollectingDispatcher
class ActionCheckSufficientFunds(Action):
def name(self) -> Text:
return "action_check_sufficient_funds"
def run(
self,
dispatcher: CollectingDispatcher,
tracker: Tracker,
domain: Dict[Text, Any],
) -> List[Dict[Text, Any]]:
balance = 1000
transfer_amount = tracker.get_slot("amount")
has_sufficient_funds = transfer_amount <= balance
return [SlotSet("has_sufficient_funds", has_sufficient_funds)]
アクションは結果をスロットに返すだけにし、「残高が足りなければ別の手順へ」という分岐はフロー側に書くのが公式の推奨です。分岐がYAMLに残るので、レビューで挙動を追えます。学習は rasa train、動作の確認は rasa inspect で行い、inspectはどのコマンドが出てどのフローが動いたかをブラウザに表示します。
既存ボットの移行と3.21.0への更新
Rasa Open Sourceで作ったボットは、インテントとストーリーをすべてフローに書き直さなくてもRasa Proへ移せます。すでにRasa Proを使っている場合は、3.21.0で入った破壊的変更を先に確認します。
CoexistenceによるNLUボットの段階移行
Rasa Pro 3.8から入ったCoexistenceは、1つのアシスタントの中でNLUボットとCALMを並走させる仕組みです。ルーターが発話ごとにどちらで処理するかを決め、一度決めたらその機能が終わるまで同じ側で処理します(sticky)。次は IntentBasedRouter 部分だけの抜粋で、既存の pipeline 内でNLUコンポーネントの後、コマンド生成器の前に置きます。
pipeline:
- name: IntentBasedRouter
nlu_entry:
sticky:
- transfer_money
- check_balance
non_sticky:
- chitchat
calm_entry:
sticky:
- book_hotel
- cancel_hotel
NLU側に振られた会話ではLLMのコマンド生成が呼ばれないため、移行していない機能にLLMの費用はかかりません。インテントの代わりにLLMで振り分ける LLMBasedRouter もあります。NLUとCALMをまたぐ割り込みはできないので、送金と残高確認のように途中で呼び合う機能はまとめて移します。作業環境は、TensorFlow依存のDIETClassifierやTEDPolicyが動くPython 3.11に揃えます。Rasa Open Source 3.6はPython 3.10までなので、移行のタイミングでPythonも上がります。
3.19以前のRasa Proから上げるときの確認点
Rasa Proの変更履歴から、更新前に見ておく項目を拾うと次のとおりです。
- セキュリティ:3.20.3で、保守されていない
sanic-corsの使用をやめました(CVE-2026-37737)。リリースノートは、Sanic本体のHTTPリクエストスマグリング(CVE-2026-85078)を3.19以前で解消するには3.20以降への更新が必要だとしています。 - A2A:3.21.0で、外部エージェントとの通信がa2a-sdk 1.0に移りました。A2Aプロトコルで他のエージェントと連携している場合は、タスク状態の名前やエージェントカードの形式の変更を確認します。
- Copilot:v1が削除され、
POST /api/copilotなどのエンドポイントは使えません。 - 音声:Deepgram Fluxを使う設定は
name: deepgram_fluxに書き換えます。name: deepgramはNovaを指すようになりました。
日本語対応とチャネル接続の注意点
CALMの日本語設定とコマンド生成モデルの選定
CALMでは発話をLLMが解釈するため、日本語を理解できるかどうかはコマンド生成に使うモデルの日本語性能で決まります。config.yml の language に ja を書き、ほかの言語は additional_languages に並べます。Mantleでは agent.yml の language が同じ役割です。旧来のNLUボットで日本語を扱うには、spaCyの日本語モデル(GiNZAなど)で分かち書きする部品をパイプラインに組み、日本語の学習データを用意する必要がありました。CALMではその部分をLLMが受け持つため、学習データは要りません。応答文は自分で日本語に書きます。tutorial テンプレートの調整済みモデルは英語の例で作られているため、日本語で試すなら日本語に強いLLMへ接続先を替えて確認します。
LINE接続に必要なカスタムコネクタ
公式ドキュメントに載っている組み込みのテキストチャネルは、自社Webサイト、Facebook Messenger、Slack、Telegram、Twilio、Microsoft Bot Framework、Cisco Webex Teams、RocketChat、Mattermost、Google Hangouts Chatで、3.21.0のパッケージ内のチャネル実装もこの範囲でした。LINEは含まれないため、LINE公式アカウントにつなぐにはMessaging APIのWebhookを受けるカスタムコネクタをPythonで書きます。署名検証や応答トークンの扱いはMessaging APIへの置き換え手順と同じ考え方です。多くのチャネルは追加の依存が必要なので、rasa-pro[channels] を入れておきます。
オープンソースでチャットボットを作るほかの選択肢
「無償のOSSで日本語チャットボットを作りたい」という目的でRasaを調べている場合、2026年10月時点で候補の状況は大きく変わっています。主なものを並べます。
| 候補 | ライセンス | 2026年10月の状況 |
|---|---|---|
| Rasa Open Source | Apache-2.0 | 保守モード(3.6.21) |
| Botpress v12 | AGPL-3.0 | 新規の配布・導入は終了 |
| Dify | Apache-2.0+追加条件 | 1.18.0(2026-10-23) |
| Flowise | Apache-2.0(一部商用) | 2026-08-13にアーカイブ |
| Langflow | MIT | 1.13.0(2026-10-22) |
| Bot Framework SDK | MIT | 2026-01-05にアーカイブ |
BotpressはOSS時代のv12について、公式ドキュメントで、v12とすべてのセルフホスト版の購入・ダウンロード・新規導入を終了したと告知しています。Flowiseは開発元が運営の終了を発表し、2026年7月29日にコードを凍結、8月13日にリポジトリをアーカイブ、8月31日でサポートを終えました。MicrosoftのBot Framework SDKは2025年12月31日でサポートを終えてリポジトリがアーカイブされ、後継はMicrosoft 365 Agents SDKです。
今から自社環境で無償のチャットボットを作るなら、社内文書に答えるRAG型はDify、LLMの処理をノードでつなぐならLangflowが現実的です。Difyのライセンスは追加条件で1ワークスペースを1テナントと定義しており、書面承認のないマルチテナント環境の運営や、フロントエンドのロゴ・著作権表示の削除・変更には制限があります。これらの条件に該当する場合は提供元から商用ライセンスを取得する必要があります(Dify 1.18.0のLICENSE)。手順の確実さと会話の監査性が要るならRasa Proですが、無償で使えるのはDeveloper Editionの上限までです。Difyでの作り方はDifyでチャットボットを作る手順、LangflowはLangflowの使い方で扱っています。
Rasaを選ぶべき場面・選ぶべきでない場面
Rasaが強いのは、会話の途中で手順を省いたり順番を変えたりしてはいけない業務です。送金、契約変更、予約のように、本人確認や必須項目の収集をLLMの判断に任せられない処理では、フローで手順を固定しつつLLMで言い回しの揺れを吸収するCALMの設計が効きます。自社のインフラと自社でホストするモデルで完結させたい金融・通信・公共分野も、Rasaが想定する利用者です。要件の整理から実装までを外部に任せる場合は、AIチャットボット開発の支援も比較対象にしてください。
次の条件に当てはまるなら、Rasaは選びません。
- 社内文書やFAQに答えるだけのボット。手順の制御が要らないので、生成AIとRAGで組むチャットボットの方が早く、フローを書く手間が無駄になります。定型の質問と回答を並べるだけならFAQシステムの自作でも足ります。
- 調査や要約のように手順を事前に決められない作業。LangGraphなどのAIエージェントフレームワークの領域です。
- 外部ユーザーとの会話が月1,000件を超える、または社内で複数のボットを動かす見込みで、Enterpriseの費用を見積もれない案件。上限を超えた時点で契約が必要になり、価格は個別見積もりです。
- 無償のOSSであることが採用条件の案件。Rasa Open Sourceは保守モードで、Python 3.10までしか動きません。
- 開発者の端末がIntel Macで、DockerなどのLinux実行環境も使えない案件。本記事で確認した3.21.0は、Intel Macへの通常のインストールで依存関係の解決に失敗しました。
Rasaに関するよくある質問
Rasaは無料で使えますか?
Rasa Proは、1社1ボットで外部ユーザーとの会話が月1,000件(社内向けは月100件)までならDeveloper Editionで無料です。本番利用も認められていますが、ライセンスキーの申請が必要です。Rasa Open Sourceは今も無料でApache-2.0ですが、保守モードで新機能は入りません。
Rasaは日本語に対応していますか?
対応できます。CALMとMantleは発話の解釈をLLMが行うので、日本語に強いLLMを接続すれば日本語で会話できます。設定ファイルの language を ja にし、応答文を日本語で書きます。インテント分類の学習データを日本語で用意する必要はありません。
Rasa Xはまだ使えますか?
既存環境で使い続けられる場合はありますが、新規採用は勧めません。無料のRasa X Community Editionは2022年6月8日に保守とサポートの終了が告知されました。会話の確認とチームでの編集はRasa Studio、開発中の対話の確認は rasa inspect で行います。
Rasa Open Sourceはもう使えませんか?
インストールして動かすことはできます。ただし最後の版は2025年1月の3.6.21で、対応はPython 3.10まで、リポジトリは保守モードです。新規開発ならRasa Pro、既存ボットの延命ならPython 3.10の環境に固定したうえで移行計画を立てます。
Rasaの読み方と、LLMとの関係は?
日本語では「ラサ」と読みます。RasaはLLMそのものではなく、LLMを使って会話を組み立てるフレームワークです。OpenAIのGPT系や、Rasaが公開しているLlama 3.1 8Bベースの調整済みモデルなどを接続して使います。