不動産の物件管理システムを探し始めると、家賃の入金管理やオーナー送金を扱う賃貸管理システムの比較記事が多く出てきます。ところが仲介会社が困っているのは、預かった物件を複数のポータルへ載せ、空室か成約かを確かめ、成約したら全媒体から下げるという物件データの出し入れであることが少なくありません。この記事では、物件管理システムという言葉が指す2つの意味を切り分けたうえで、仲介会社の物件台帳が持つべき状態と項目、ポータル一括出稿とレインズ登録の期限管理、おとり広告を防ぐ更新の仕組み、パッケージで足りる会社と個別開発に進む会社の分かれ目を順に整理します。
まとめ:仲介会社の物件管理システムは掲載情報の鮮度管理から逆算して選ぶ
仲介会社にとっての物件管理システムは、物件1件ごとに「募集中か、申込みが入ったか、成約したか」という状態を持ち、その状態をポータル・自社ホームページ・レインズへ漏れなく反映させる物件台帳です。入居者や家賃を管理する賃貸管理システムとは、使う部署も持つデータも違います。
選ぶときの基準は機能の数ではありません。成約した物件を何時間以内に全媒体から下げられるか、更新を最長2週間の間隔で回せるか、レインズの登録期限を落とさないかの3点を、自社の物件数と人数で確かめます。不動産公正取引協議会連合会は、成約済み物件の掲載放置をおとり広告として扱い、更新間隔を最長2週間とするよう求めています。
出稿先が大手ポータル中心で、物件数が担当者の手で回る規模ならパッケージで足ります。自社サイトや独自の物件項目、他社システムとの連携が増え、パッケージの項目に合わせるための手作業が毎日発生するようになったら、物件台帳を自社で持つ個別開発を検討する段階です。
不動産の物件管理システムが指す2つの意味と、仲介会社の物件台帳が担う範囲
同じ「物件管理」でも、物件を貸し続ける側と、物件を紹介して成約させる側では管理対象が異なります。最初にどちらを探しているのかを決めておくと、比較する製品群を半分に絞れます。
管理会社の賃貸管理システムと仲介会社の物件管理システムを分ける業務主体の違い
管理会社が使う物件管理システムは、契約後の入居者・家賃・修繕・オーナー報告を扱います。契約が続く限りデータを持ち続け、月次の入金消込や送金明細の作成が主な業務です。この領域の機能と選び方は賃貸管理システムの機能・種類と自社開発が必要になる判断で整理しています。
仲介会社が使う物件管理システムは、契約前の募集期間を扱います。物件を預かってから成約・募集終了までの数週間から数か月が主な対象で、関心は「いま紹介してよい物件か」に集中します。
| 観点 | 管理会社の物件管理(賃貸管理) | 仲介会社の物件管理(物件台帳) |
|---|---|---|
| 主な対象期間 | 契約後から解約まで | 募集開始から成約まで |
| 中心となるデータ | 入居者・賃料・入金・修繕履歴 | 物件の募集条件・写真・掲載状況 |
| 外部とのやり取り | オーナー送金・保証会社・会計 | ポータル各社・自社サイト・レインズ |
| 失敗したときの影響 | 送金誤り・滞納の見落とし | 成約済み物件の掲載放置による規約違反 |
賃貸の管理と仲介を両方手がける会社では、両方の機能を持つ製品を探しがちです。ただし物件台帳の更新速度に不満があるのか、入金管理に不満があるのかで選ぶ製品は変わります。不満の大きい側から決めます。
物件の預かりから掲載終了まで、物件台帳が1件ごとに持つ状態と記録項目
仲介の物件台帳は、物件の募集条件を記録するだけでは役に立ちません。物件ごとに今どの段階にいるかを示す状態と、いつ誰がそれを確かめたかを持つことで、初めて掲載判断に使えるデータになります。最低限、次の状態を区別できる設計にします。
- 預かり登録済み(媒介契約や元付業者からの物件確認が済み、掲載準備中)
- 募集中(ポータル・自社サイトへ掲載中)
- 申込みあり(書面の申込みを受け、他の客付けを止めるか判断中)
- 成約・募集終了(全媒体から削除すべき状態)
状態とあわせて「最終確認日時」「確認した担当者」「確認方法(管理会社への電話、元付業者のシステム、売主への確認)」を記録します。第3章で扱う更新期間の管理は、この最終確認日時がなければ実装できません。
物件登録からポータル一括出稿、レインズ登録までの流れと台帳側で持つ期限
物件台帳に登録した情報は、ポータル、自社ホームページ、売買ならレインズへと出ていきます。出口ごとに期限と項目のルールが異なるため、それを台帳の側で持つ必要があります。
1回の登録で複数ポータルへ送る物件コンバーターの仕組みと項目変換の制約
物件コンバーターは、台帳に1回登録した物件情報を、ポータルごとの入稿形式に変換して送る仕組みです。物件管理システムの多くがこの機能を備えており、手作業で各ポータルの管理画面に同じ物件を入力し直す作業をなくせます。
制約は項目の対応関係にあります。設備や周辺環境の選択肢はポータルごとに定義が違い、台帳側の項目がポータル側に存在しない場合は、送信対象から外れる仕組みです。写真の枚数上限、キャッチコピーの字数上限もポータルごとに異なります。導入前に、自社がよく使う出稿先それぞれについて「台帳で入れた値がそのまま載るか」をデモで確かめると、公開後の手直しを減らせます。
見落としやすいのが削除の連動です。新規の掲載は自動で送れても、成約時の掲載停止が手動のままの製品では、鮮度管理の負担は減りません。
専任媒介は7日・専属専任は5日、レインズ登録期限を台帳の期日として管理
売買の仲介では、専任媒介契約を結んだ物件を指定流通機構(レインズ)へ登録する義務があります。期限は宅地建物取引業法施行規則第15条の10で、専任媒介が契約締結の日から7日、専属専任媒介が5日と定められ、休業日は日数に数えません(2026年10月時点の現行条文)。
台帳では媒介契約の締結日と種類を入力した時点で、休業日を除いた登録期限日を自動で計算して表示させます。登録後は宅地建物取引業法第34条の2が求める登録証明書の引渡しと、成約時に遅滞なく行う指定流通機構への通知も、同じ物件の未完了タスクとして残す設計です。レインズの仕組みや一般の人が物件情報を見る方法はレインズの仕組みと業務システム連携の解説に譲ります。
2025年1月に義務化された取引状況の登録と、台帳ステータスとの対応づけ
国土交通省の2024年12月24日の発表資料によると、令和6年6月の施行規則改正により、2025年1月1日から宅建業者はレインズへ物件の取引状況を登録する義務を負っています。登録区分は「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3つです。
この区分は、第1章で挙げた台帳の状態とほぼ同じ区分です。台帳の「申込みあり」をレインズ側の「書面による購入申込みあり」に、台帳の「募集中」を「公開中」に対応させておけば、レインズの更新漏れを台帳の画面から見つけられます。売主は売主専用画面で取引状況を確認できるため、台帳とレインズで状態がずれていると、売主からの問い合わせという形ですぐに表に出ます。
空室確認と掲載更新を2週間以内に回し、おとり広告を出さない鮮度管理の要件
仲介会社の物件管理システムで最も差が出るのが、掲載中の物件が本当に紹介できる状態かを保つ仕組みです。ここは業界団体が具体的な期間を示しているため、要件をそのまま台帳に落とせます。
表示規約第21条のおとり広告3類型と、成約後の掲載放置が違反になる経緯
不動産公正取引協議会連合会のおとり広告ガイドライン(2019年11月1日)は、表示規約第21条が禁じる広告を、物件が存在しない場合、存在するが取引の対象となり得ない場合、存在するが取引する意思がない場合の3つに分けています。成約済みの物件は2つ目に当たります。
同ガイドラインが措置例の最初に挙げているのは、掲載した時点では取引できた物件が、契約済みになった後も削除されずに更新を繰り返されていたケースです。悪意がなくても、削除の作業が漏れただけで違反の扱いになります。システムで防ぐべき対象は、架空物件よりもこの「消し忘れ」です。
更新間隔は最長2週間、次回更新予定日の表示を台帳の必須項目に落とす方法
同ガイドラインは、情報の更新期間を最長でも2週間とし、その期間内でも契約済みと分かった物件はすみやかに削除するよう求めています。また表示規約は、インターネット広告に「情報登録日又は直前の更新日及び次回の更新予定日」の表示を義務付けており、ガイドラインはこれを広告の上部など見やすい位置に置くよう求めています。
これを台帳の要件にすると、次の形になります。
- 物件ごとに最終確認日を持ち、最終確認日から14日を超えた物件は掲載停止の候補として一覧に赤字で出す
- 次回更新予定日を最終確認日から自動で計算し、自社サイトの物件ページ上部に表示する
- 状態を「成約・募集終了」に変えた操作で、全出稿先への削除指示が同時に送られる
- 14日を超えても確認できない物件は、担当者が操作しなくても自社サイトから自動で非公開にする
実務では最後の自動非公開から入れると効果が大きく出ます。担当者の記憶に頼る部分がなくなり、確認作業が遅れても違反状態が長く続かないためです。
管理能力を超えた掲載数と更新の任せきり、ガイドラインが挙げる発生原因
同ガイドラインは、おとり広告になった事案の発生原因として、少人数で管理能力を超えた多数の物件を広告していたこと、管理をアルバイト等に任せきりにして責任者のチェックを怠っていたことを挙げています。システムを入れても、この構造が残れば消し忘れは起きます。
台帳側でできる対策は2つです。1つは担当者別の掲載中物件数と、確認期限切れの件数を毎朝の画面に出すこと。もう1つは、状態変更の履歴に操作者を残し、責任者が週に1回、期限切れと成約後の削除状況を確認する画面を用意することです。掲載数を増やす前に、確認期限切れがゼロで回っているかを見る運用にすると、広告の量と管理能力の釣り合いを数字で判断できます。
物件データの重複登録を防ぐ識別キーと、顧客管理・自社サイトとの受け渡し
物件台帳が乱れる原因の多くは、同じ物件が別のレコードとして二重に存在することです。重複があると、片方だけを成約にしてもう片方が掲載され続けるという、第3章の消し忘れと同じ事故が起きます。
同じ物件を二重に登録させない名寄せの考え方と、不動産ID17桁の位置づけ
賃貸仲介では、同じ部屋を複数の元付業者から預かることがあります。住所の表記ゆれ(丁目の算用数字と漢数字、建物名の略称)があると、文字列の比較だけでは同一物件と判定できません。登録時に、所在地を正規化した値と建物名・部屋番号の組み合わせで既存レコードを検索し、候補を表示してから新規登録させる流れにします。
国土交通省は2022年3月31日に不動産IDルールガイドラインを公表し、不動産登記簿の不動産番号13桁に特定コード4桁を加えた17桁の番号で、不動産を一意に特定する方式を示しました。ただし仲介の現場で受け取る物件情報に不動産IDが付いていることはまだ少ないため、台帳には不動産IDを入れる項目を用意しつつ、当面は所在地と部屋番号による照合を主に使う設計が現実的です。他ツールとの突き合わせで起きるずれは不動産DXツールの組み合わせと連携の確認項目で扱っています。
反響・顧客管理と物件台帳を別製品にする場合に決めておく正本の置き場所
ポータルからの反響は、どの物件への問い合わせかという物件番号付きで届きます。物件台帳と顧客管理が別の製品だと、反響に付いた物件番号が台帳側の番号と一致しない問題が起きます。
先に決めるのは、物件情報の正本をどちらに置くかです。仲介会社では物件台帳を正本とし、顧客管理側は物件番号と表示用の最小限の項目だけを受け取る構成が扱いやすくなります。正本が2つあると、募集条件の変更がどちらか一方にしか反映されません。顧客管理側の機能と選び方は不動産の顧客管理システム(CRM)の機能と選び方を参照してください。
パッケージで足りる仲介会社と、物件台帳を個別開発すべき会社の判断条件
物件管理システムは仲介向けのクラウドパッケージが数多く出ており、多くの会社はパッケージで足ります。個別開発が合うのは条件のそろった一部の会社です。
Excel管理から物件管理システムへ移る目安と、パッケージで十分な会社の条件
Excelや紙の台帳で回している会社が物件管理システムへ移る目安は、出稿先が2つ以上あり、成約時の削除作業を担当者が媒体ごとに手で行っている状態です。削除漏れの危険が人数ではなく出稿先の数に比例して増えるためです。
パッケージで十分なのは、出稿先が大手ポータルと自社ホームページに限られ、物件項目もポータルの標準項目で足りる会社です。この場合、自社の業務をパッケージの画面に合わせたほうが、開発費をかけるより早く安く整います。比較の観点や費用の目安は不動産業務支援システムの種類と比較の判断軸にまとめています。
物件台帳の個別開発に投資してよい2つの条件と、開発を見送るべき失敗パターン
個別開発に投資してよいのは、次の2つのどちらかに当てはまる会社です。1つ目は、自社で物件検索サイトや地域特化のポータルを運営しており、パッケージの物件項目では自社サイトの検索条件を表現できない場合が当てはまります。2つ目は、管理会社の基幹システムや自社の会計など、パッケージが連携先として用意していないシステムとの間で、毎日CSVを手で加工して受け渡している場合です。どちらも、手作業がなくならない限り第3章の更新期間を守り続けるのが難しくなります。
開発を見送るべきなのは、出稿先が大手ポータルだけで、不満の中身が「画面が使いにくい」にとどまる場合です。ポータル各社の入稿仕様に自前で追随する費用は、パッケージの月額をすぐ上回ります。台帳だけを自社で持ち、ポータルへの出稿はパッケージのコンバーターに任せる構成が、投資を必要な部分に絞る現実的な選択です。一創では、物件台帳と自社サイト・ポータル出稿の連携を含めた不動産ポータルサイトシステム開発を受託しており、パッケージとの併用を前提にした範囲の切り分けから相談を受けています。
よくある質問
不動産の物件管理システムを検討している仲介会社から寄せられやすい質問に答えます。
不動産の物件管理システムと賃貸管理システムは同じものですか?
呼び方が重なっているため同じ意味で使われることがありますが、管理する期間は別です。賃貸管理システムは契約後の入居者・家賃・修繕・オーナー送金を扱い、仲介会社が使う物件管理システムは契約前の募集期間に、物件の募集条件と掲載状況を扱います。製品によっては両方の機能を備えるものもあるため、どちらの業務の不満を解消したいのかを決めてから比較すると、候補を絞り込めます。
物件管理システムの費用はどのくらいかかりますか?
クラウドパッケージは月額課金が中心で、金額は登録物件数、利用者数、連携するポータルの数によって変わり、料金を公開していない製品も少なくありません。見積りを取るときは、月額だけでなく、初期設定費、既存データの移行費、ポータルごとの連携費を分けて出してもらうと比較できます。個別開発の場合は、自社サイトの検索機能や外部システム連携の範囲によって費用が大きく変わるため、要件を固めてから見積りを取ります。
小規模な仲介会社でもポータル一括出稿の機能は必要ですか?
出稿先が1つだけなら、各ポータルの管理画面で直接登録しても大きな負担にはなりません。出稿先が2つ以上になると、成約時に媒体ごとに削除する作業が発生し、消し忘れの危険が増えます。担当者が少ない会社ほど1人の作業漏れがそのまま掲載放置につながるため、出稿先が2つを超えた時点で一括出稿と一括削除のできる製品を検討する価値があります。
成約済みの物件の掲載を消し忘れるとどうなりますか?
不動産公正取引協議会連合会のおとり広告ガイドラインでは、成約済みの物件の広告は、実際には取引の対象となり得ない物件の表示として、表示規約第21条が禁じるおとり広告に当たると整理されています。消し忘れであっても、会員協議会による措置の対象になり得ます。更新期間を最長2週間とし、期間内でも成約が分かった時点ですみやかに削除する運用を、台帳の期限管理と自動非公開で支えるのが確実です。
自社ホームページの物件検索と物件管理システムはつなげられますか?
多くの物件管理システムは、自社ホームページへの物件掲載機能や、物件データを外部へ渡す機能を備えています。製品が用意するホームページのひな形を使う方法と、自社で構築したサイトへデータを渡して表示する方法があり、後者の可否を決めるのは、製品がデータの出力方式を公開しているかどうかです。自社サイトの検索条件を独自に設計したい場合は、出力できる項目と更新の頻度を導入前に確かめておく必要があります。
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