Amazon Q Businessとは?新規受付終了後の代替と料金・移行の判断
Amazon Q Businessは、社内のファイルや業務システムに散らばった情報へ、自然な言葉で問い合わせられるようにするAWSの企業向けAIアシスタントです。ただし2026年8月時点で、このサービスは新規のお客様に対して提供を終了しています。これから社内問い合わせの仕組みを作ろうとしている企業にとって、検討の中身は「Q Businessを入れるかどうか」ではなく「Q Businessが担っていた役割を何で埋めるか」に移りました。この記事では、まずQ Businessが何をするサービスだったのかと料金の積み上がり方を押さえ、そのうえで提供変更の事実関係、英語前提という言語の制約、そしてAmazon Quickへ移すか自前で作るかSaaSに寄せるかという3つの選択肢を、発注する側の判断材料として整理します。
まとめ|新規契約はできず、判断は移行先の選定に移っている
AWSの公式ドキュメントは、全ページの上部で「Amazon Q Business is no longer open to new customers」と掲示しています。既存のお客様に対してはバグ修正と安全性の更新が続きますが、新しい機能の要望は受け付けなくなりました。提供終了の予定日は公表されていないため、既存利用者がすぐ止まるわけではないものの、機能面では今の姿が上限になります。
これから導入する側の選択肢は3つです。AWSが後継と位置づけるAmazon Quickへ寄せるか、Amazon Bedrockと検索基盤で自前のRAGを組むか、日本語対応済みのSaaSで社内AIチャットを立ち上げるか。費用の形が三者三様なので、人数規模と、権限制御をどこまで厳密にやるかで答えが変わります。
もう一点、日本語で社内文書を扱う企業には見落とせない制約があります。公式ドキュメントはQ Businessについて英語での応答に合わせて調整されており、取り込むのは英語の文書だけだと明記していました。日本語の議事録や規程を主な対象にする用途では、この前提が判断を左右します。移行先を選ぶ際も、同じ観点で日本語の扱いを先に確認してください。
Amazon Q Businessとは何か|社内データに答える企業向けAIアシスタント
Q Businessは、社内データに基づいて質問に答え、要約を作り、定型の作業を代行するフルマネージドのAIアシスタントです。IT部門やHRのヘルプデスク、福利厚生の問い合わせ窓口といった、社内の「これどうなってましたっけ」を引き受ける用途が想定されていました。回答には出典が添えられ、利用者が閲覧を許されている情報の範囲内で答えが組み立てられます。
Amazon QのうちQ BusinessとQ Developerが担っていた役割
Amazon Qというブランドは、業務向けのQ Businessと、開発者向けのQ Developerに分かれていました。前者は社内文書に答える窓口、後者はコード生成や既存システムの読み解きを助ける相棒という住み分けです。なお開発者向けの側も提供形態が変わっており、終了日程と後継への移行はAmazon Q Developerとは?終了日程・料金とKiro移行で扱っています。同じブランド名で語られていた2つが、それぞれ別の後継へ流れた形になります。
Amazon Bedrock上で動くマネージドRAGとしての実体と守備範囲
技術的な中身は、Amazon Bedrock上で動くマネージドなRAGです。社内文書を索引化し、質問に近い文書を検索してから、その内容だけを根拠に文章を組み立てます。モデルの学習やインフラの面倒を見る必要がなく、コネクタをつないで権限を設定すれば動くという点が、自前でRAGを組む場合との差でした。逆に言えば、検索の作り込みで精度を伸ばす余地は運営側の設計に委ねられており、細かく手を入れたい要件には向きません。
主な機能|コネクタでの社内データ連携と権限を踏まえた回答、Q Apps
機能を3つに分けて見ると、何を失うことになるのかがはっきりします。
Amazon S3、Microsoft SharePoint、Salesforceといった業務システムに対して、既製のコネクタが用意されていました。全文検索サービスのAmazon Kendraを検索エンジンとして流用する構成も選べます。加えてプラグインで外部アプリケーションを呼び出したり、SlackやMicrosoft Teams、Microsoft Officeの中から呼び出したりもできました。窓口をどこに置くかを選べる点が、社内展開のしやすさにつながっていた部分です。
閲覧権限を踏まえて回答を出し分ける仕掛けと引用元表示が持つ意味
社内向けのAIで最初に問題になるのは、人事情報や役員資料が全員に見えてしまう事故です。Q Businessは、AWS IAM Identity CenterまたはIAMで利用者を識別し、その人が読める文書だけを根拠に答えを返す作りになっていました。回答には引用元が添えられるので、出てきた文章が社内のどの規程に基づくのかを利用者が自分で確かめられます。この2つが揃って初めて、社内展開に耐える形になります。
Q Appsで定型業務をアプリ化できた範囲と移行時に消える機能
Q Appsは、よく使うプロンプトと処理の流れを小さなアプリとして保存し、部署内で配れる機能でした。休暇申請の下書きや、問い合わせ内容の分類といった定型処理をアプリ化しておく使い方です。後述する移行では、このQ Appsが索引の引き継ぎ対象から外れているため、作り直しが要ります。ガードレールの設定と外部アプリケーションを操作するActionsも同様に引き継がれません。
料金体系|LiteとProの月額に加えてインデックス課金が積み上がる
料金は「利用者の人数」と「索引の容量」の2階建てでした。稟議の数字を作るときに漏れやすいのは後者です。
Liteが月額3ドル、Proが月額20ドルというユーザー課金の形
公式料金ページに掲載されていた単価は、Liteが1ユーザーあたり月額3USD、Proが同20USDです。Liteは質問と回答が中心の軽い使い方、ProはQ Appsやプラグインまで含めた本格利用という区分でした。全社に配るならLiteを広く、業務で作り込む部署だけProにするという配り分けが基本形になります。
インデックス課金は時間単位で、使わなくても止まらない費用になる
索引側はユニット単位の時間課金です。Starter Indexが1ユニットあたり0.140USD/時間で最大5ユニットまで、Enterprise Indexが同0.264USD/時間。1ユニットで文書20,000件または抽出テキスト200MBまでを収容します。1か月を730時間とすると、Enterprise Indexを1ユニット常設するだけで月額約193USDです。質問が1件も来なくてもこの費用は発生します。画像1枚0.003USD、音声1分0.006USD、動画1分0.050USDという取り込み時の加算もありました。
60日間の無料トライアルで何が試せたのかと現時点での位置づけ
1アプリケーションあたりProまたはLiteを50ユーザーまで60日間、索引1,500時間までという無料トライアルが用意されていました。100人にPro、Enterprise Indexを1ユニットという構成なら、月額は20USD×100人+193USDで約2,193USD、1USD150円換算で約33万円という水準になります。新規契約ができなくなった今、この金額は移行先の見積もりを比べるときの基準線として使ってください。
新規受付終了で何が起きたのか、既存顧客に残された時間の読み方と備え
AWS公式ドキュメントが告げている内容と日付表記をめぐる注意
2026年8月時点で、Q Businessのユーザーガイドは全ページの上部に新規受付終了の告知を掲げ、専用の説明ページを設けています。そこには、既存のお客様向けにバグ修正と安全性の更新は継続するものの、新機能の要望は今後検討しないと書かれていました。一方で、受付終了がいつからなのか、提供終了がいつなのかという日付は公式ドキュメントにも製品ページにも掲載されていません。社外の記事には特定の日付を挙げるものもありますが、稟議や契約の前提に置く日付は、AWSの担当か公式ページで都度確かめる扱いが安全です。
バグ修正と安全性の更新は続くが新機能は増えないという状態の意味
この状態は、動いているものが明日止まるという話ではありません。ただし、競合が機能を足していく間、こちらは今の機能のまま据え置かれます。3年使う前提のシステムに組み込むなら、据え置きの機能で3年戦えるかを先に見立てておく必要があります。判断としては、既存利用者は当面の運用を続けながら、次の受け皿の検証を並行で始めるのが現実的な進め方です。
Kendraにも同じ変更があり社内検索の土台が入れ替わっている
見落とされがちなのは、Q Businessの検索側として使えたAmazon Kendraにも同種の提供変更が及んでいる点です。詳細はAmazon Kendraとは?新規受付終了と移行先の判断にまとめていますが、社内検索の土台そのものが入れ替わりの時期にあると捉えたほうが、移行計画は立てやすくなります。個別サービスの乗り換えではなく、社内データをどう索引化し続けるかという設計の話です。
日本語で使えるのか|英語前提という制約が導入判断に及ぼす影響の大きさ
英語のドキュメントだけを取り込むという公式の推奨が示す設計上の制約
公式の言語ページには、Q Businessは英語での応答に合わせて調整されており、データソースを接続した場合も文書を直接アップロードした場合も英語の文書だけを索引化する、英語のコンテンツだけを索引化することを推奨する、と書かれています。日本語の質問に何も返らないという意味ではありませんが、日本語の規程や議事録を索引の中心に据える使い方は、提供元が想定していた形から外れます。
日本語の社内文書を主とする企業が現実に取り得る回避策とその限界
回避の道は、文書を英訳して索引に入れる、日本語の要約を英語で付与する、といった前処理の作り込みです。ただし翻訳のずれがそのまま回答のずれになり、原本と索引の二重管理も発生します。国内企業の社内問い合わせ用途では、この前処理の手間が導入効果を食う場面が多く、移行先を選ぶ段階で日本語の扱いを最初の足切り条件にしたほうが、後戻りが減ります。
移行先の選択肢|Amazon Quickへ移すか自前でRAGを作るか
AWSはAmazon Quickを後継と位置づけていますが、費用の形が変わるため、人数規模によっては別の答えになります。
| 選択肢 | 費用の形 | 向く場面 |
|---|---|---|
| Amazon Quickへ移行 | 固定費+人数課金 | 既存の索引を引き継ぐ |
| Bedrockで自前構築 | 従量課金が中心 | 日本語と権限を作り込む |
| SaaSの社内AIチャット | 人数課金が中心 | 短期で立ち上げたい |
Amazon Quickへ寄せる場合に増える費用と得られる機能
Quickの料金は、無料枠のFreeに加えて、Plusが1ユーザー月額20USD、Professionalが同20USD、Enterpriseが同40USD(いずれも年間払い)という構成です。ProfessionalとEnterpriseには、アカウントあたり月額250USDのインフラストラクチャ費用が別に乗ります。Q BusinessのLiteが月額3USDだったことを思えば、全社に薄く配っていた組織ほど負担の増え方が大きくなります。1,000人にLiteを配って月額3,000USDだった運用は、Professional相当に置き換えると20,250USD規模になり、およそ6.7倍です。代わりに得られるのは、ワークフロー自動化のFlowsやダッシュボード連携、Researchといった機能群になります。プラン別の単価と固定費の細部はAmazon Quickの料金を全プラン比較で扱っています。
BedrockとAWSの検索基盤で自前構築する場合の重さと自由度
自前で組む場合、費用はモデル利用料と検索基盤の維持費という従量課金が中心になり、利用者1人あたりの固定的な課金からは解放される構成です。日本語の扱いも、埋め込みモデルと検索設計を自分で選べるぶん素直に詰められます。引き換えに、検索精度の調整と権限制御の実装が自社側の責任になり、ここで品質差が出ます。検索工程をどう設計すると精度が動くのかはリトリーバルとは?RAGの検索工程の仕組みと実装・精度改善の判断基準で解説しました。
SaaS型の社内AIチャットに寄せるという第三の選択肢の現実味
日本語対応と権限連携を初めから備えたSaaSを選ぶ道もあります。数百人規模で、扱う文書が社内規程やマニュアルに限られ、独自の業務システムとの連携が薄いなら、これが最短です。逆に、基幹システムのデータを参照させたい、回答をワークフローにつなげたいという要件が出てくると、SaaSの守備範囲を超えて作り込みが必要になります。
導入と移行の段取り|BYOIで既存インデックスを引き継ぐ手順と検証
BYOIで既存インデックスを繋ぎ、並行稼働で回答を突き合わせる
既存利用者がQuickへ移る場合、AWSが推奨する入口はBring Your Own Index(BYOI)です。Quickのコンソールでナレッジベースを作成し、データソースとしてQ Businessの索引を選ぶと、既存のチャットプロファイルがQuick側に複製されます。今動いているQ Businessのアプリケーションには手を触れないので、両方を並行で動かし、同じ質問を投げて回答の質と出典の正確さを突き合わせる進め方ができます。
同一アカウントと同一リージョンという前提と2本までという上限
前提として、Q Businessの索引とQuickのインスタンスは同一のAWSアカウント・同一リージョンにある必要があります。制限もあり、1リージョンあたり接続できる索引は最大2つで、この上限は引き上げられません。いったん選んで保存した索引は後から選択解除できない点にも注意してください。さらにQ Apps、Actions、Q Business側のガードレールはBYOIの対象外なので、これらは作り直しになります。
権限設計の引き継ぎで手当てが要る箇所と文書レベルACLの落とし穴
移行で最も手が要るのは権限設計です。IAM Identity Centerで運用していた組織は素直に引き継げますが、そうでない構成では、Quick側の全ユーザーが接続済み索引へ自動的にアクセスできてしまい、Q Businessが索引レベルで持っていた利用者別・グループ別の区分が失われます。回避策は、閲覧範囲ごとにナレッジベースを分割し、共有先をグループ単位で絞り込む作りに直すことです。文書レベルのアクセス制御はS3やSharePointなどで使えますが、作成時に有効化しないと後から変えられず、しかもACLの記載が無い文書は取り込まれません。Q Businessが「記載が無ければ全員に開放」だったのと既定の挙動が逆なので、同じ設定のまま移すと文書が丸ごと落ちます。
発注前に決めておく条件|社内問い合わせ基盤を外部に頼む判断の基準
見積書で確認する項目と、利用が伸びた時の費用の扱いの取り決め
見積書では、索引の維持費が月額固定でいくら乗るのか、利用者が想定を超えたときに単価が変わるのか、この2点を先に書き出してもらってください。社内AIは使われるほど費用が伸びる構造なので、伸びたときの負担をどちらが持つかを契約時に決めておかないと、稼働後に前提の置き直しが起きます。移行案件では、これに加えて権限設計の引き継ぎ範囲と、Q Appsの作り直しが見積もりに含まれているかを確かめる必要があります。
内製と外部への委託の分かれ目になる工程と具体的な判断基準の見極め方
コネクタをつないで動かすところまでは内製でも進みます。難所はその先にある、日本語文書の検索精度を実用水準へ引き上げる調整と、部署ごとの閲覧範囲を破綻なく設計する作業であり、経験差が出やすい領域です。ここを詰めきれないまま全社公開すると、答えが的外れになるか、見えてはいけない資料が出るかのどちらかで止まります。一創のAIチャットボット開発では、社内データの棚卸しと権限設計から、日本語での回答品質の検証までが支援の対象です。移行の期限が読めない今のうちに、受け皿の設計だけでも先に固めておくと選択肢が残ります。
よくある質問
Amazon Q Businessは今から契約できますか?
できません。2026年8月時点でAWSの公式ドキュメントは、Q Businessが新規のお客様に対して提供を終了したと明記しています。これから社内AIアシスタントを導入する場合は、Amazon Quick、Amazon Bedrockでの自前構築、日本語対応のSaaSのいずれかから選ぶことになります。
既存で使っている場合、いつまで使えますか?
提供終了の予定日は公表されていません。AWSは既存のお客様に対してバグ修正と安全性の更新を継続すると案内しています。ただし新機能の追加は行われないため、機能面は現状が上限です。当面の運用は続けつつ、移行先の検証を並行で始める進め方をおすすめします。
Amazon Q Businessは日本語に対応していますか?
公式ドキュメントは、英語での応答に合わせて調整されており、索引化するのは英語の文書だけだと記載しています。日本語の社内文書を中心に扱う用途では、英訳や英語要約の付与といった前処理が必要になり、その手間が導入効果を圧迫します。日本語の文書が主なら、移行先の選定段階で日本語の扱いを条件に加えてください。
Amazon Quickへ移ると費用は上がりますか?
人数と旧プランによります。Q BusinessのLiteは1ユーザー月額3USDでしたが、Quickの有料プランは同20USDからで、ProfessionalとEnterpriseにはアカウントあたり月額250USDのインフラストラクチャ費用が加わる料金体系です。全社に薄く配っていた組織ほど増え方が大きく、一部の部署だけProで使っていた組織なら差は小さく収まります。
移行にはどれくらいの作業が必要ですか?
索引の引き継ぎ自体はBYOIで短期間に済みます。工数がかかるのはその周辺で、Q AppsのQuick Flowsへの作り直し、ガードレールとActionsの再設定、そして権限設計の再構築が主な作業です。IAM Identity Centerを使っていない構成では、閲覧範囲ごとにナレッジベースを分割する設計変更が要るため、ここを見積もりに含めてください。