Amazon Quick(旧Quick Suite)の料金を全プラン比較|250ドルの固定費・エージェント時間・SSOの条件

Amazon Quick(旧Amazon Quick Suite)は、BIダッシュボード・AIチャット・深いリサーチ・業務自動化を1つの画面にまとめたAWSのAIワークスペースです。料金を調べていて「ユーザー1人20ドル」だけを見て見積もると、請求額はまず合いません。Professional以上のアカウントには、ユーザー数と無関係に月額250ドルのインフラ料金が乗るからです。さらに2026年4月にAWSアカウント不要のFree・Plusが加わり、選択肢は4プランに増えました。この記事では公式料金ページの実額をもとに、4プランの違い、必ずかかる固定費、エージェント時間とインデックスストレージの従量課金、そして「SSOを使えるのはどのプランか」という誤解の多い条件までを整理します。

目次

まとめ:Amazon Quickの料金は「サブスク+固定費+従量」の三層

個人やチームが試すだけなら、aws.com/quick で作るFree/Plusアカウントに固定費はかかりません(Free 0ドル、Plus 20ドル/ユーザー/月・年払い)。新規アカウントは30日間Plusを無償で使えます(公式ドキュメントの記載)。ただしFree/PlusではQuick Sightのダッシュボードも、Quick Automateの多段階自動化も、APIも使えません。

組織で本格導入するなら、AWSマネジメントコンソールから作るProfessional(20ドル/ユーザー/月)かEnterprise(40ドル/ユーザー/月)になり、ここにアカウントあたり月額250ドルのインフラ料金が固定で加算されます。10人のProfessionalなら 20×10+250=450ドル/月が最低線です。従量課金はエージェント時間(超過分3ドル/時、リサーチ超過は6ドル/時=公式はEnterpriseについて明記)とインデックスストレージ(プール超過分5ドル/GB/月)の2つ。BI(ダッシュボード)だけが目的なら、QuickSightでできること:主要機能とビジネスへのメリットで扱うBI機能に対応するQuick Sight単体のBI専用料金(Reader 月3ドルから)のほうが安く収まります。

もう一つ、混同されやすいのが認証です。SSO(IAM Identity Center)の可否を決めるのはユーザー単位のサブスクリプション(Professional/Enterprise)ではなく、アカウント単位のエディション(Standard/Enterprise)です。ここを取り違えると、Professionalサブスクリプションを買ったのにSSOが有効化できないという事故になります。

4つのプランと価格:Free・Plus・Professional・Enterprise

Amazon Quickのアカウントには2つの入口があります。aws.com/quick から個人メールやGoogle・Apple・GitHub・Amazonの認証情報で作るFree/Plusアカウント(AWSアカウント不要)と、AWSマネジメントコンソールからプロビジョニングするProfessional/Enterpriseアカウントです。前者は2026年4月28日に追加された新しい入口で、それ以前の情報しか載っていない解説記事にはそもそも存在しません。

プラン 価格(1ユーザーあたり) アカウント Quick Sight Quick Automate API 管理機能(RBAC・SSO等)
Free 0ドル/月 AWSアカウント不要 不可 不可 不可 不可
Plus 20ドル/月(年払い) AWSアカウント不要 不可 不可 不可 不可
Professional 20ドル/月 AWSコンソール 閲覧・対話 不可
Enterprise 40ドル/月 AWSコンソール 作成・公開

※表の「管理機能」は、コンソール経由アカウントでRBACや管理者制御が使えることを指します。IAM Identity Centerによる本格的なSSOの可否は、ユーザー単位のサブスクリプションではなくアカウント単位のエディション(Standard/Enterprise)で決まります(後述)。

Free・Plusは「試す」ためのプラン(BIも自動化も入らない)

Free/Plusでも、AIアシスタントとのチャット、Quick Research、Quick Flowsによる日常業務の自動化、外部アプリのファイル参照、Slack・Microsoft 365・Google・QuickBooksとの連携、Webアプリ生成は使えます。Plusで開放されるのはカスタムチャットエージェントの作成・共有、チームの共有スペース、社内ナレッジベースの共有、デスクトップアプリ、ブラウザとMicrosoft 365の拡張機能の5つです。

一方で、公式ドキュメントのプラン比較(Amazon Quick plans and pricing)が明記するとおり、Quick Sightのダッシュボードと分析、Quick Automate、APIはAWSコンソール経由のアカウント限定です。BIや業務システム連携の検証をFreeで進めると、途中で必ず行き止まりに当たります。

Professionalの20ドルとEnterpriseの40ドルを分けるもの

両者の機能差は、突き詰めると作る権限があるかです。Professionalユーザーは既存のQuick Sightダッシュボード・レポート・ストーリーを閲覧して対話できますが、ダッシュボードやデータセットを新規作成できません。Quick Automateによる多段階のワークフロー自動化と、公開アセットの承認・認証(certify)もEnterpriseのみです。全社にProfessionalを配り、ダッシュボードを作る分析担当と自動化を組む開発担当にだけEnterpriseを割り当てる配分が、費用対効果の基本形です。

見落とされる固定費:アカウントあたり月額250ドルのインフラ料金

公式料金ページは「Accounts are charged a flat $250 per account per month infrastructure fee」と明記しています。これはユーザー数に比例しない固定費で、Amazon Quickを支えるAI基盤の費用にあたります。ProfessionalとEnterpriseのアカウントにのみ発生し、Free/Plusには適用されません(料金表でも「Not applicable」)。

この250ドルは小規模導入ほど重く効きます。5人のProfessionalならサブスクリプション100ドルに対し固定費250ドルで、総額350ドルの7割が固定費。50人なら 1,000+250=1,250ドルで固定費比率は2割まで下がります。少人数でBIだけ使いたい場合、Amazon Quickのサブスクリプションを買うより、後述するQuick SightのBI専用料金を選ぶほうが安くなる分岐点がここにあります。

従量課金の2本柱:エージェント時間とインデックスストレージ

エージェント時間(agent hours)は秒単位計測・超過は1時間3ドル

エージェント時間は、Quick Research、Quick Flows、Quick Automate、デスクトップアプリ、成果物生成、カスタムAIアプリでAI機能が稼働した時間です。公式FAQは「Usage is metered per second」と述べており、秒単位で計測されます。月間の付与枠は次のとおりです。

サブスクリプション エージェント枠 リサーチ枠 合計 超過単価
Professional 2時間/月 2時間/月 4時間/月 3ドル/時
Enterprise 4時間/月 4時間/月 8時間/月 3ドル/時(リサーチは6ドル/時)

超過単価の書き分けには注意が必要です。公式料金ページは「Professional and Enterprise at $3 per agent hour」と両プランに3ドルを明記する一方、リサーチの6ドル/時はEnterpriseユーザーについてのみ明記されています(Professionalのリサーチ超過単価は公式に明記なし)。

枠は硬直的ではありません。公式FAQは、エージェント時間の枠を使い切ったユーザーがリサーチ時間の枠を消費できると説明しています。ただし公式が示すのはこの方向だけで、リサーチ枠を超えた分をエージェント枠から補えるとは書かれていません。逆にリサーチを多用するユーザーは、超過単価がリサーチのほうが2倍高い(6ドル/時)点に注意が必要です。月8時間のリサーチをするEnterpriseユーザーが1人いれば、枠の4時間を超えた4時間分で24ドル、サブスクリプション40ドルの6割にあたる追加請求になります。

インデックスストレージはGB単位のプール制(旧「50MB無料」表記は現行と別物)

Quick Indexのストレージは、ユーザー単位で割り当てられ組織全体でプールされます。Professionalは1ユーザーあたり25GB、Enterpriseは50GBで、プール総量を超えた分が月額5ドル/GBです。計測基準は「GB of raw storage」、つまりSharePointやAmazon S3、Confluenceといった元の保管場所にあるファイルの元サイズであり、Quickが処理した後のサイズではありません。

日本語の解説記事には、いまも「Quick Indexは毎月50MBまで無料で、超過分は1MBあたり1ドル」と書くものが残っています。この単価は現行の公式料金ページには存在しません。MB単位の課金として読んで見積もると、実際のGB単位プール制と2〜3桁ずれます。50人のEnterpriseなら 50×50GB=2.5TBがプール総量で、数千ファイル程度の社内文書ならまず超過しません。

無料で使える範囲:Freeプランと30日間の無料トライアルは別物

Amazon Quickの無料枠は性格の異なる2つがあり、混同すると検証が空振りします。

1つ目はFreeプランaws.com/quick でメールかソーシャルアカウントで登録すれば0ドルで使い続けられ、AWSアカウントもクレジットカードも要りません。新規アカウントには30日間のPlusが無償で付きます(公式ドキュメントの記載は「New accounts receive 30 days of Plus at no cost」までで、期間後の扱いは明記されていません)。個人がAIアシスタントとリサーチを試す用途は、ここで完結します。

2つ目はEnterpriseプランの30日間無料トライアル。こちらは最大25ユーザーまでサブスクリプション料金が免除され、加えて250ドルのインフラ料金も免除されます。期間中はEnterpriseの全機能(Quick Sightのダッシュボード作成、Quick Automate、SSO、ガバナンス機能)を試せ、30日を過ぎるとAWSアカウントを持つ顧客はEnterpriseとして課金が始まります。BIや自動化を含めたPoCをやるなら、Freeで始めるのは時間の無駄で、最初からEnterpriseトライアルを取るべきです。Freeプランでは検証したい機能そのものが存在しないからです。

SSOと認証:可否を決めるのは「エディション」で、サブスクリプションではない

Amazon Quickの設定でつまずきが集中するのがここです。Quickには名前が似た2つの軸があり、片方だけ見ていると認証設計を誤ります。

  • エディション(Standard / Enterprise):AWSアカウント単位のQuickアカウント全体の設定。認証方式の選択肢を決める。
  • サブスクリプション(Professional / Enterprise):ユーザー単位の権限と価格。ダッシュボード作成やQuick Automateの可否を決める。

両方に「Enterprise」という語が出てくるため、「Enterpriseサブスクリプション(40ドル)を買えばSSOが使える」と読み違えやすいのですが、IAM Identity Centerを使えるのはEnterprise“エディション”のアカウントだけです。エディションはアカウント作成時に選ぶ設定で、ユーザーごとの課金プランとは別物です。

IAM Identity Centerはネイティブ統合が推奨(SAML設定は不要)

公式ドキュメントは、Amazon QuickがIAM Identity Center対応アプリケーションであり、ネイティブ統合が推奨経路だと述べています。AWS Prescriptive Guidanceも、ネイティブ統合ではQuickとIAM Identity Centerの間にSAMLフェデレーションを設定する必要がなく、IAM Identity Centerのグループメンバーシップでアクセスを管理できると明記しています。SAML 2.0フェデレーションも構成可能ですが、多くのユースケースでは推奨されません。外部IdP(Okta、Microsoft Entra IDなど)を使う場合も、IdPをIAM Identity Centerのアイデンティティソースとして接続する形が基本形です。

選べる認証方式とリージョン制約

認証方式 対応エディション
IAM Identity Center Enterprise エディションのみ
IAMフェデレーション Standard / Enterprise
SAMLベースSSO Standard / Enterprise
AWS Directory Service(Microsoft AD) Enterprise エディションのみ
多要素認証(MFA) Standard / Enterprise

さらにリージョンによる制約があります。公式ドキュメントは、アフリカ(ケープタウン af-south-1)、アジアパシフィック(ジャカルタ ap-southeast-3、マレーシア ap-southeast-5)、欧州(ミラノ eu-south-1、スペイン eu-south-2、チューリッヒ eu-central-2)、イスラエル(テルアビブ il-central-1)、中東(UAE me-central-1)の8リージョンでは、Quickアカウントの認証にIAM Identity Centerしか使えないと明記しています。これらのリージョンを前提に設計するなら、エディションの選択肢は実質Enterpriseに固定されます。なおaws.com/quick で作るFree/Plusアカウントには企業IdP連携そのものがなく、SSOの検討対象になりません。

QuickSightとの違いと名称の変遷(読み方)

「Quick SuiteとQuickSightは何が違うのか」という疑問の答えは、実は違うサービスではなく、同じサービスの別世代の名前だという点にあります。BIサービスのAmazon QuickSightが2025年10月にAIエージェント基盤へ拡張されてAmazon Quick Suiteとなり(AWS公式ブログで告知)、その後Amazon Quickへ名称が短縮されました。短縮の時期を明示したAWS公式の告知は見当たりませんが、2026年7月現在、公式の料金ページもドキュメント(docs.aws.amazon.com/quick/)も表記はすべてAmazon Quickです。読みはそれぞれ「クイックスイート」「クイック」です。旧BIサービスは現在Quick Sight(Quickの中のBI機能)として位置づけられています。

時期 サービス名 位置づけ
〜2025年10月 Amazon QuickSight BI(ダッシュボード)サービス単体
2025年10月〜2026年前半 Amazon Quick Suite BIにAIエージェント機能を統合
2026年前半〜現在 Amazon Quick 現行の公式表記。BIは「Quick Sight」として内包

この経緯は課金に直結します。BIだけを使う組織向けにQuick SightのBI専用料金が残っており、閲覧者(Reader)は月3ドルから、Author(データ接続とダッシュボード作成)は月24ドル、Author Proは月40ドルです。さらに公式のQuick Sight料金ページは、新しいQuick機能が提供されるリージョンでQuick Sight Authorに2026年12月31日までQuick Enterpriseの全機能へのプロモーションアクセスが付くと告知しています。既存のQuickSightユーザーがAI機能を試す最も安い経路がこれで、Amazon Quick側のサブスクリプションを新規に買うより有利になる場面があります。BI機能そのものはQuickSightでできること:主要機能とビジネスへのメリットで扱っています。

Quickを構成する5つの機能と、料金への効き方

機能名は、エージェント時間を消費するのはどれか、という観点で押さえると料金と直結します。

  • Quick Sight:BI(ダッシュボード・レポート・分析)。SPICE(0.38ドル/GB/月)とPixel-Perfect Reports(1ドル/レポートユニット/月・最低500ユニット)は別課金。
  • Quick Research:社内外データを横断したリサーチとレポート生成。リサーチ枠を消費し、超過単価6ドル/時が最も高い
  • Quick Flows:日常業務の定型自動化。エージェント枠を消費(超過3ドル/時)。
  • Quick Automate:多段階の業務ワークフロー自動化。Enterpriseサブスクリプション限定。デプロイ済み自動化の稼働もエージェント時間として課金。
  • Quick Index:SharePoint・S3・Confluenceなどの社内コンテンツを索引化し回答の根拠にする。ストレージ課金(超過5ドル/GB/月)の対象。

コストが跳ねる典型は、Quick Automateの自動化を常時稼働させながらQuick Researchを日常的に回すEnterpriseユーザーです。サブスクリプション40ドルに対し、エージェント時間の超過が数十ドル規模で積み上がります。導入時は管理画面でエージェント時間の消費を必ずモニタリング対象に入れてください。秒単位計測のため、数分の実行の繰り返しでも積算します。

導入手順:どちらの入口から作るかで手順が分かれる

Free/Plusは aws.com/quick(AWS公式ドキュメントの表記。aws.amazon.com/quick/ に転送されます)でメールかGoogle・Apple・GitHub・Amazonの認証情報からサインアップするだけです。職種別ワークフローを選ぶガイド付きオンボーディングが用意されています。

Professional/Enterpriseは、AWSマネジメントコンソールからQuickをプロビジョニングします。手順の骨子は、(1) 有効化するAWSリージョンを決める、(2) アカウントのエディション(Standard/Enterprise)を選ぶ、(3) Enterpriseエディションを選ぶ場合は事前にIAM Identity Centerをセットアップしてアイデンティティソースを接続する、(4) ユーザーにProfessional/Enterpriseのサブスクリプションを割り当てる、(5) Quick Indexにデータソース(S3、SharePoint、Confluenceなど)を接続する、という流れです。エディションは後から変えると認証設計をやり直すことになるため、(2)の判断を(4)の価格判断より先に済ませるのが安全です。

Quickは既存のAWSのAIサービスと役割が違います。基盤モデルを自社アプリに組み込むならAmazon Bedrock超入門:初心者向けの完全ガイド、自律エージェントを自社環境で運用するならAmazon Bedrock AgentCoreのご紹介: AIエージェントをあらゆる環境で安全にデプロイが対応します。Quickは、それらを自前で組まずに業務ユーザーへ届ける完成品のワークスペース、という位置づけです。

よくある質問

Amazon Quickの読み方は?

「アマゾン クイック」です。2025年10月から2026年前半まで使われたAmazon Quick Suiteは「クイックスイート」、その前身のAmazon QuickSightは「クイックサイト」と読みます。現在の公式表記はAmazon Quickで、BI機能は「Quick Sight」と2語に分かれています。

ユーザー1人だけで使いたい場合、いくらかかりますか?

aws.com/quickのFreeなら0ドル、Plusなら年払いで月20ドルです。AWSコンソール経由のProfessionalを1人分だけ契約すると、20ドルに加えてアカウント固定のインフラ料金250ドルがかかり、合計270ドル/月になります。1人で継続利用し、BIも多段階自動化も不要なら、Free/Plusを選ぶのが唯一合理的です(Enterpriseの30日トライアルなら1人でも無償で全機能を試せます)。

Quick SightだけをBIとして使う場合も250ドルのインフラ料金は必要ですか?

BIだけを使う顧客向けにQuick SightのBI専用料金(Reader 月3ドルから、Author 月24ドル、Author Pro 月40ドル)が用意されています。Amazon Quickのサブスクリプション(Professional/Enterprise)を契約するアカウントには250ドルの固定費が発生するため、少人数のBI用途ではBI専用料金のほうが総額を抑えられます。

エージェント時間の枠を超えたらどうなりますか?

利用が止まるのではなく、超過分が従量課金されます。Quick FlowsとQuick Automateは1エージェント時間あたり3ドルです。Quick Researchの1リサーチエージェント時間あたり6ドルは、公式ページではEnterpriseユーザーについて明記された単価です。計測は秒単位で、エージェント枠を使い切ったユーザーはリサーチ枠を消費できます(逆方向の融通は公式に記載がありません)。

SSO(IAM Identity Center)はProfessionalプランでも使えますか?

SSOの可否はユーザー単位のサブスクリプションではなく、アカウント単位のエディションで決まります。IAM Identity Centerを利用できるのはEnterpriseエディションのアカウントのみで、Standardエディションでは利用できません。ただしSAMLベースのSSOとIAMフェデレーション、MFAはStandardエディションでも構成できます。

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