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Vertex AIとは?Google CloudのAI開発プラットフォームの機能・料金とSageMaker/Azure MLとの違いを実装者目線で解説

Vertex AIは、Google CloudがML(機械学習)と生成AIの開発から本番運用までを一つの土台で扱えるようにした統合AIプラットフォームです。データの前処理からモデルの学習、精度の評価、エンドポイントとしての提供、稼働後の監視までを、個別のツールを寄せ集めずに同じ環境で回せます。本記事では、Vertex AIの正体とModel Gardenを含む主要コンポーネント、従量課金の料金体系と無料クレジットの考え方、そしてAmazon SageMakerやAzure Machine Learningとの違いから採用の判断軸までを、実装者の目線で整理します。エージェント構築に特化した機能との線引きも、本記事で扱う論点の一つです。

まとめ:Vertex AIの要点と採用判断の軸

先に結論を述べます。Vertex AIは「AIモデルそのもの」ではなく、多数のモデルを選び、育て、動かし続けるための基盤です。Geminiのような生成AIから独自の予測モデルまでを同じ土台に載せられるため、モデル開発と本番運用(MLOps)を1か所に集約したいときに効いてきます。判断の要点は次の3点です。

  • 正体は統合基盤:学習・評価・提供・監視というMLの一連の工程を単一環境で扱える。Model Gardenから200を超えるモデルを呼び出し、独自データで調整して自社のエンドポイントとして提供できる。
  • 課金は従量制:学習や推論に使ったノード時間、生成AIのトークン量、保存したデータ量などサービスごとの単位で加算される。新規のGoogle Cloud利用者には90日間で300ドル分のクレジットが付くため、小さく試してから見積もれる。
  • 向き不向き:すでにGoogle CloudやBigQueryにデータが集まっている、生成AIと従来型MLを一つの基盤で回したい、という条件なら第一候補になる。逆にAWS中心の構成や、数件の推論だけで足りる小規模用途では、SageMakerや外部APIの直接利用のほうが素直に収まる。

本番運用の考え方そのものはMLOpsとは?機械学習の本番運用と自動化の考え方で、対話・検索を担うエージェントの構築はVertex AI Agent Builderとはで補完できます。以下で定義から順に掘り下げます。

Vertex AIとは?Google CloudのAI開発プラットフォームの全体像

Vertex AIは、Google Cloudが提供するフルマネージドのAI開発プラットフォームです。もともと別々だった「AI Platform」と「AutoML」を一つのブランドに束ね、2021年に発表、2023年に生成AIの機能を取り込んで提供範囲を広げました(2026年時点)。開発者はサーバーの構築やGPUの手配を自分で抱えずに、コンソールやSDKからモデルの学習と提供の環境を呼び出せます。

ここで押さえたいのは、Vertex AIそれ自体がAIモデルではないという点です。Geminiをはじめとする多数のモデルを選び、独自データで調整し、運用するための「器」にあたります。画像認識や需要予測のような従来型の機械学習モデルも、テキスト生成のような生成AIも、同じプラットフォームの上で扱えるのが持ち味です。モデルの中身であるLLMの仕組みはLLMとは?大規模言語モデルの仕組みと種類で整理しています。

Vertexという名は「頂点」を意味し、散らばっていたAI関連ツールを一つの入口に集約するという狙いを表しています。データサイエンティストが実験に使うノートブック、機械学習エンジニアが組む学習パイプライン、アプリ開発者が呼び出す推論エンドポイントまでを、権限とプロジェクトを共有したまま同じ場所で扱える点が、個別ツールの寄せ集めとの違いになります。

Vertex AIでできること:Model Gardenなど主要コンポーネントと機能

Vertex AIは多くの機能の集合体です。すべてを一度に使う必要はなく、目的に応じて必要な部品だけを選びます。実装者がまず把握しておきたい代表的なコンポーネントは次の通りです。

コンポーネント 役割 使う場面
Model Garden 200超のモデルを一覧・呼び出し Gemini・サードパーティ製モデルの選定
AutoML コード少なめで学習を自動化 専門知識を抑えて予測モデルを作る
カスタムトレーニング 任意のフレームワークで学習 TensorFlow/PyTorchで細かく制御
Vertex AI Pipelines 学習工程を自動化・再現 前処理から評価までを定型化
Feature Store 特徴量の一元管理と共有 学習と推論で同じ特徴量を使う
Prediction(エンドポイント) モデルをAPIとして提供 アプリからオンライン推論を呼ぶ
Model Monitoring 稼働後の精度低下を検知 入力データのずれを監視する

入口になりやすいのがModel Gardenです。ここではGoogleのGeminiに加え、他社が公開する言語モデルや画像モデルなど、多様なモデルにアクセスできます。呼び出したモデルをそのまま使うだけでなく、自社のデータで追加学習させて用途に寄せることも可能です。既存モデルを自社データで育てる手法はファインチューニングとは?RAGとの違いと使い分けで整理しています。

もう一つの軸が、学習した結果を実サービスにつなぐPredictionです。学習済みモデルをエンドポイントとしてデプロイすると、アプリから通常のAPIのように推論を呼び出せます。加えてFeature Storeで特徴量を一元管理し、Model Monitoringで入力データの傾向のずれ(ドリフト)を監視すると、作って終わりにせず運用し続ける仕組みまで一貫して組める点が持ち味です。社内文書を根拠に回答させる検索連携を組むならRAGとは?仕組みと生成AIへの外部知識の与え方も設計の参考になります。

Vertex AIの料金体系と無料クレジット・費用を抑える勘所

料金は従量課金です。定額のライセンス費用ではなく、使った分だけ加算される仕組みのため、まず「どの機能が、どの単位で課金されるか」を押さえることが見積りの出発点になります。課金の単位はコンポーネントごとに異なります。

おおまかには、学習は使ったマシンのノード時間、独自モデルの推論はエンドポイントの稼働時間、Geminiなど生成AIの利用は入出力のトークン量、そしてデータやモデルの保存は容量、という具合に分かれます(2026年時点)。同じ「AIを使う」でも、バッチ学習を回すのか、常時待ち受けの推論エンドポイントを立てるのかで費用の性質が大きく変わる点に注意します。

課金対象 おもな単位 コストが膨らむ要因
モデル学習 ノード時間(CPU/GPU/TPU) 大きなデータ・長時間の学習
推論エンドポイント 稼働時間(常時起動) 低トラフィックでも立てっぱなし
生成AI(Gemini等) 入出力トークン量 長い文脈・大量リクエスト
保存 データ量・モデル数 特徴量や成果物の蓄積

コストを抑える勘所は、常時起動の推論エンドポイントの扱いにあります。アクセスがまばらな用途で高性能なエンドポイントを立てっぱなしにすると、呼び出しがなくても稼働時間ぶんの費用が積み上がっていきます。ここで効くのが設計側の判断です。まばらな推論はバッチ予測に寄せる、生成AIはトークン量を見積もって文脈長を絞る――こうした割り切りが費用を左右します。新規のGoogle Cloud利用者には90日間で300ドル分の無料クレジットが付与されるため、本番前にこの範囲で単価と挙動を確かめておくと見積りの精度が上がります。実際の単価は機能・リージョン・時期で改定されるので、確定見積りはGoogle Cloudの公式料金ページで最新の値を確認してください。

SageMaker・Azure Machine Learningとの違いと使い分け

統合AIプラットフォームはVertex AIだけではありません。AWSのAmazon SageMaker、MicrosoftのAzure Machine Learningが直接の比較対象になります。3つとも「学習から運用までを一気通貫で扱う」という骨格は共通で、機能の粒度だけを並べても決め手にはなりにくいのが実情です。判断の起点は、機能一覧より「すでにどのクラウドにデータと基盤が寄っているか」に置くのが現実的です。

観点 Vertex AI Amazon SageMaker Azure Machine Learning
提供元 Google Cloud AWS Microsoft Azure
データ連携の強み BigQueryとの近さ S3中心のAWS群 Microsoft 365・Fabric
生成AIの入口 Gemini・Model Garden Amazon Bedrock連携 Azure OpenAI連携
向く構成 Google Cloud基盤 AWS基盤 Microsoft基盤

Vertex AIが効きやすいのは、分析基盤としてBigQueryを使っている場合です。BigQueryに蓄えたデータをそのまま学習に回し、Geminiを含む生成AIまで同じプロジェクトで扱えるため、データの移し替えにかかる手間と権限設計を抑えられます。反対に、ストレージや認証がすでにAWSで固まっている組織がVertex AIだけを持ち込むと、クラウドをまたぐデータ転送と権限管理が新たな負担になります。Azure Machine Learningは、Microsoft 365やAzure OpenAIを社内標準にしている組織なら有力な候補でしょう。プラットフォーム選定は、モデルの優劣ではなく既存資産との地続きさで決めると外しにくくなります。

Vertex AIを採用すべき場面と見送るべき場面の判断基準

ここは判断を言い切ります。Vertex AIを採用すべきなのは、次の条件が重なるときです。基盤をGoogle Cloudに寄せている、BigQueryなどにデータがすでに集まっている、従来型の予測モデルと生成AIを一つの環境で運用したい――この3条件に当てはまるなら、データの近さと機能の集約が効き、有力な第一候補になります。モデルを作って終わりにせず、監視と再学習まで含めて運用し続けたい中規模以上のプロジェクトほど、統合基盤の恩恵が大きくなります。

逆に見送りを検討すべきなのは、次のいずれかに強く当てはまる場合です。第一に、基盤がAWSやAzureで固まっており、AIのためだけにGoogle Cloudを併用する構成。クラウドをまたぐ運用の負担が、統合の利点を上回りやすくなります。第二に、生成AIのAPIを数か所で呼ぶだけで足り、学習も監視も要らない小規模用途。この場合はプラットフォーム全体を抱えず、モデルのAPIを直接使うほうが軽く収まります。第三に、社内にGoogle Cloudの運用知見がなく、学習コストを負担できない体制です。

迷いやすいのは「まず生成AIから小さく始め、いずれ独自モデルの学習まで広げたい」ケースです。この場合は、初期はModel GardenのGeminiをAPIとして呼ぶだけの構成にとどめ、独自データでの調整や監視が必要になった段階でPipelinesやModel Monitoringへ広げると、初期費用と学習負荷を抑えながら段階的に育てられます。基盤の設計や既存データとの接続まで含めて相談したい場合は、機械学習モデル開発のように、モデル構築から本番運用の設計までを支援できる体制と組むと、コンポーネント選定や運用方針まで含めた判断がしやすくなります。

実装者目線で追うVertex AIの導入ステップと監視の設計

導入の流れは、環境準備・データ接続・学習と評価・提供と監視の4段で捉えると迷いません。前提として、Google Cloudのプロジェクトを用意し、Vertex AIのAPIを有効化してから始めます。最初の一歩は、いきなり独自モデルを組むのではなく、Model Gardenで目的に近いモデルを試すところに置くと感触をつかみやすくなります。

  1. プロジェクトを作成し、Vertex AIのAPIを有効化する。権限(IAM)を設計し、扱うデータの範囲を絞る。
  2. 学習に使うデータをBigQueryやCloud Storageに接続する。前処理はPipelinesに載せて再現できる形にしておく。
  3. Model GardenのモデルやAutoML、カスタムトレーニングで学習し、精度を評価する。既存モデルを使うなら追加学習で用途に寄せる。
  4. 納得できたモデルをエンドポイントとして提供し、Model Monitoringで入力データのずれを監視する。

実運用で差が出るのは、提供後の監視まで最初から設計に含めるかどうかです。学習時点の精度が高くても、入力データの傾向が時間とともにずれると推論の質は落ちていきます。エンドポイントを立てる段階でMonitoringの監視項目とアラートを併せて決めておくと、精度低下に早く気づけます。生成AIを組み込む場合は、トークン量とレイテンシを試験段階で計測し、費用と応答速度の見通しを立ててから本番に載せると安全です。

よくある質問

Vertex AIの検討でよく挙がる疑問を、実装者の視点でまとめます。

Vertex AIとGeminiは何が違いますか?

層が異なります。GeminiはGoogleが開発したAIモデルそのもので、Vertex AIはそのGeminiを含む多数のモデルを選び、調整し、運用するための基盤です。GeminiをVertex AI経由で呼び出すと、権限管理やログ、他のGoogle Cloudサービスとの連携を保ったまま業務システムに組み込めます。単体のモデルを使うのか、運用まで含めた基盤が要るのかで選び分けます。

Vertex AIの料金はどのくらいかかりますか?

機能ごとの従量課金で、一律の金額は決まっていません。学習はノード時間、独自モデルの推論はエンドポイントの稼働時間、生成AIはトークン量に応じて加算されます。新規利用者には90日間で300ドル分のクレジットが付くため、まずその範囲で自分の用途の単価を測るのが確実です。確定見積りは公式の料金ページで最新の単価を確認してください。

プログラミングの知識がなくても使えますか?

AutoMLを使えば、コードをほとんど書かずに予測モデルを学習させられます。ただしデータの準備や精度の解釈、本番への組み込みには相応の知識が要ります。試作までは非エンジニアでも進められますが、業務システムへの実装と運用は開発体制を伴う前提で計画すると無理がありません。

Vertex AIでAIエージェントは作れますか?

作れますが、担当する機能が分かれています。対話や検索を行うエージェントの構築は、Vertex AI Agent Builderを起点とする体系(現在はGemini Enterprise Agent Platformへ統合)が担います。プラットフォーム全体としてのVertex AIはモデルの学習・運用が主軸で、エージェント構築はその上の専用機能という位置づけです。

SageMakerからVertex AIへ移行すべきですか?

基盤全体の方針しだいです。データとインフラがAWSに集まっているなら、AIだけをVertex AIへ移すとクラウドをまたぐ負担が増えます。反対にGoogle CloudやBigQueryへ寄せる計画があるなら、その流れに合わせてVertex AIへ集約する判断は理にかないます。モデル単体の比較ではなく、基盤の移行計画と一体で考えるのが失敗を避ける近道です。

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