人事労務

コンピテンシー面接とは?質問例とSTARの深掘り、評価基準の作り方

コンピテンシー面接とは?質問例とSTARの深掘り、評価基準の作り方

コンピテンシー面接は、応募者が過去に実際にとった行動を具体的に質問し、その行動の型から入社後の働き方を予測する面接手法です。「あなたの強みは何ですか」と自己評価を聞くのではなく、「その強みを発揮した場面で、あなたは何をしましたか」と事実を聞きます。

この記事では、面接官向けに質問の作り方とSTARでの深掘り、評価基準の決め方、構造化の手順を、人事心理学の研究と厚生労働省の資料をもとに整理します。後半では、面接で聞いてはいけない質問と、受ける側の準備も扱います。

まとめ:コンピテンシー面接の要点

  • コンピテンシー面接は、過去の具体的な行動事実を聞いて評価する行動面接です。志望動機や将来の抱負より、実際の場面で「何をしたか」を重視します。
  • 質問の型はSTARです。考案したDDI社は1974年にTargeted Selectionとともに導入したと説明しており、状況・課題(ST)、行動(A)、結果(R)の順に聞きます。
  • 過去の行動を問う質問は、仮定の状況を問う質問より業績との相関が高いというメタ分析があります(Taylor & Small 2002、アンカー付き評定尺度を使った研究で.63対.47)。
  • 精度を左右するのは面接の構造化です。全員に同じ質問、回答ごとの採点、行動で書いた採点基準、複数の面接官をそろえると、面接官の印象に頼る面接より予測力が上がります。
  • 「尊敬する人物」「家族の職業」「人生観」などは、厚生労働省が就職差別につながるおそれがあるとする14事項に当たります。価値観を聞きたいときも、職務上の行動に置き換えて質問します。

コンピテンシー面接の意味と従来の面接との違い

過去の行動事実を聞く面接

コンピテンシーは、職務で高い成果を上げる人に一貫して見られる行動特性です。定義の原典や氷山モデルはコンピテンシーの意味とスキルとの違いで解説しています。コンピテンシー面接は、この行動特性が応募者にあるかを、過去の行動から確かめる面接です。

原型とされるのは、行動事象面接(Behavioral Event Interview、BEI。日本では行動結果面接とも訳されます)です。Spencer & Spencer(1993)の第1章によると、マクレランドらは1970年代初頭に米国務省の若手外交情報官の選考研究でこの面接法を開発し、成功場面と失敗場面を具体的に語ってもらって、そのとき何を考え、何をしたかを細かく聞き取りました。採用面接で使うコンピテンシー面接は、この聞き取りを、あらかじめ決めた評価項目ごとの質問に絞り込んだものです。

従来の面接との比較

ここでいう「従来の面接」は、質問や採点基準を統一していない面接の例です。志望動機を聞く面接でも構造化は可能であり、過去の行動を聞くだけで評価が客観的になるわけではありません。

比較項目 従来の面接 コンピテンシー面接
主に聞く内容 志望動機・自己PR・将来像 過去の具体的な行動
質問の順序 面接官ごとに自由 共通の質問とSTARの深掘り
評価の根拠 受け答えの印象 話した行動事実
採点の基準 面接官の経験 行動で書いた評価基準
応募者の準備 模範解答で対応しやすい 実体験がないと答えにくい

違いの核心は、評価の材料が「応募者が自分をどう語るか」から「応募者が何をしたか」に移る点です。「リーダーシップがあります」という自己評価は採点できませんが、「意見が割れたチームで、自分が全員と個別に話して論点を3つに絞った」という行動は、基準と照らして採点できます。

コンピテンシー面接で予測精度が上がる理由

面接の予測精度は、質問をそろえて採点基準を決めたかどうかで大きく変わります。人事心理学で選考手法の妥当性(業績との相関)を再推定したSackett et al.(2022)では、構造化面接が0.42で調べた手法の中の最上位、構造化されていない面接は0.19でした。Schmidt & Hunter(1998)の推定値(構造化0.51・非構造化0.38)から、どちらも下方修正されています。

コンピテンシー面接は、質問をコンピテンシーごとに事前に決め、行動事実で採点するため、構造化面接の代表的なやり方です。ただし「コンピテンシー面接」と名付けても、質問を面接官任せにし、印象で点を付ければ非構造化面接と変わりません。精度の差を生むのは名称ではなく、次の章以降で説明する設計です。面接以外の測定手法(アセスメントセンター・360度評価など)との精度比較はコンピテンシーアセスメントの4つの測定手法にまとめています。

行動質問と状況質問の使い分け

構造化された面接の質問は、大きく2つの型に分かれます。

型 聞き方の例 提唱した研究
行動質問(過去) 「〜したときのことを教えてください」 Janz(1982)
状況質問(仮定) 「〜という状況なら、どうしますか」 Latham et al.(1980)

どちらも、職務上の重要な出来事(クリティカル・インシデント)を集めて質問に変える点は同じです。行動質問はその出来事に近い応募者の過去の経験を尋ね、状況質問は同じ出来事を仮定の場面として示して、どう行動するかを尋ねます。

両者を比べたTaylor & Small(2002)のメタ分析では、回答を行動で定義した評定尺度(アンカー付き尺度)で採点した研究に限ると、業績との相関の平均は行動質問が.63、状況質問が.47でした。評価者どうしの一致度は、アンカー付き尺度を使えば行動質問.77・状況質問.79とほぼ同じで、尺度のない行動質問では.73に下がっています。なお、この.63・.47は補正の方法が違うため、前章のSackett et al.(2022)の数値とは直接比べられません。

コンピテンシー面接の主役は行動質問です。仮定の質問には「こうすべきだ」という模範解答で答えられますが、過去の行動は作り話で細部まで答え続けるのが難しいからです。状況質問は、該当する経験がまだ少ない新卒や異業種からの応募者に、補助として使います。

STARで深掘りする質問例

STARの構成と考案者の説明

STARは、行動面接で回答を聞き取る順序の型です。考案したDDI社(Development Dimensions International)は、自社の選考面接プログラムTargeted Selectionとともに1974年に導入したと公式サイトのSTAR Methodのページで説明しています。

要素 聞く内容 深掘りの質問例
ST:Situation/Task 状況と担った役割・課題 「そのとき、あなたの役割は何でしたか」
A:Action 自分がとった行動 「最初に何をしましたか」「なぜそうしましたか」
R:Result 行動の結果と振り返り 「結果はどうなりましたか」「次はどうしますか」

日本の解説ではSituationとTaskを分けた4要素で紹介されることが多いものの、DDIの説明では「ST」を状況または課題として1要素に扱い、全体を3つの構成要素としています。面接で時間をかけるべきなのはAです。STが長くなったら「その中で、あなた自身は何をしましたか」と行動の質問に戻します。

DDIは、同じ型をフィードバックにも使えるとしています。改善を促すときは、STARの後に別の行動(Alternative action)と、その行動で得られたはずの結果(Alternative Result)を加えたSTAR/ARで振り返ります。不採用の理由を社内で共有するときは、応募者の発言と採点基準の対応を記録します。STAR/ARで検討した代替行動や仮定の結果は、確認できた事実とは分けて扱います。

コンピテンシー別の質問例

次の表は、STARの考え方に沿って本記事が作成した質問例です。研究で検証された質問セットではないので、募集職種で必要な行動に合わせて言葉を調整してください。最初の質問は具体的な1場面に絞って聞き、深掘りで行動の中身と本人の関与を確かめます。

コンピテンシー 最初の質問 Aを深掘りする質問
主体性 指示がない中で自分から動いた経験は? 動こうと決めたきっかけは何でしたか
課題解決 原因が分からない問題を解決した経験は? 原因をどうやって絞り込みましたか
協調性 意見が対立した相手と仕事を進めた経験は? 相手にまず何を伝えましたか
リーダーシップ メンバーをまとめて目標を達成した経験は? 動かないメンバーにどう対応しましたか
ストレス対処 締め切りが重なったときの経験は? 何を後回しにすると決めましたか
学習力 短期間で新しい知識を身に付けた経験は? 最初の1週間で何をしましたか

深掘りで確認する本人の役割・具体的場面・行動理由

深掘りの目的は、話を盛り上げることではなく、採点に使える事実を集めることです。次の点が確認できるまで聞きます。

  • 主語が本人か:「チームで取り組みました」と聞いたら、「その中であなたが担当したことは何ですか」と分けます。
  • 一度きりの具体的な場面か:「いつも〜しています」「普段は〜」という一般論は行動事実ではありません。「直近でそうした場面を1つ教えてください」と1回の出来事に戻します。
  • 行動の理由が説明できるか:「なぜその順番にしたのですか」と聞くと、偶然うまくいったのか、意図した行動なのかが分かります。

DDIも、応募者が言ってほしそうなことや、するであろうことを語るのを防げる点をSTARの利点に挙げています。「〜するつもりでした」「〜すべきだと思います」という答えが続く場合は、採点の材料がまだ集まっていない状態です。

評価基準と評価シートの作り方

行動で書いた採点基準

採点基準は「主体性:5段階」のように項目と段階だけを書くのでは足りません。各段階に当たる行動を文章で書いておく(アンカー付き評定尺度)と、面接官によって点数が割れにくくなります。たとえば主体性なら次のように書きます。

点数 行動の基準(主体性の例)
5 問題を自分で見つけ、周囲を巻き込んで仕組みを変えた
4 問題を自分で見つけ、解決策を提案して実行した
3 任された範囲で、指示を待たずに改善した
2 指示された業務を期限どおりに終えた
1 指示があっても、必要な着手を理由なく遅らせた
判定保留 採点に必要な行動事実を確認できていない

日本の解説記事でよく紹介される「受動行動〜パラダイム転換行動」の5段階は、川上真史・齋藤亮三『コンピテンシー面接マニュアル』(弘文堂、2006年1月発行)などで知られる尺度です。この5段階と、厚生労働省の職業能力評価基準のレベル1〜4、評価期末に付ける評語の段階は物差しが違うので、混ぜずに使います。3つの違いと評価シートの記入例はコンピテンシー評価の項目例とレベル定義で詳しく扱っています。

面接シートに残す項目

面接シート(評価シート)には、点数だけでなく根拠になった発言を書く欄を設けます。最低限、次の列があれば、別の面接官が後から読んでも点数の理由を追えます。

  • 評価するコンピテンシーと、そのために使った質問
  • 応募者が話したST・A・Rの要点(発言のメモ)
  • 点数と、採点基準のどの行動に当たると判断したか
  • 確認しきれなかった点(次の面接で聞くこと)

「明るい」「熱意を感じた」などの印象語は、点数の根拠欄には書きません。ある項目の目立った印象がほかの項目の評価にまで及ぶハロー効果など、面接官が陥りやすい誤りは人事評価エラーの種類と防ぎ方を参照してください。

コンピテンシー面接の導入手順と構造化の要素

Campion, Palmer & Campion(1997)は、面接を構造化する方法を文献から15の要素に整理し、質問の内容に関わる7要素と、評価の手続きに関わる8要素に分けました。導入の手順は、この要素を順にそろえていく作業として組み立てると漏れが出ません。

  1. 職務を分析してコンピテンシーを決める:その職種で成果を上げている社員と平均的な社員を比べ、差が出る行動を洗い出します。分析の進め方はハイパフォーマーの見極め方で紹介しています。
  2. 評価するコンピテンシーを絞る:1回の面接で深掘りできる数には限りがあります。職務分析で差が大きかった項目から優先し、面接の回ごとに担当を分けます。
  3. 質問を全応募者で共通にする:最初の質問と深掘りの範囲を共通にします。追加質問は、確認する内容と基準を変えず、応募者の回答に応じて表現を調整します。
  4. アンカー付きの採点基準を作り、回答ごとに採点する:面接の最後にまとめて付けるのではなく、コンピテンシーごとに点を付けます。
  5. 面接官を訓練し、メモを詳しく取る:模擬面接で同じ回答を複数の面接官が採点し、点数のずれを話し合って基準をそろえます。
  6. 判定は点数で行う:複数の面接官が付けた点を合算し、面接官どうしで面接の合間に応募者について話し合わないようにします。

Campionらの15要素には、応募者からの質問を面接後まで受けない、履歴書などの付随情報を面接中に参照しないといった要素も含まれます。全部を一度に満たす必要はありませんが、質問の共通化と回答ごとの採点だけは最初から外さないことを勧めます。この2つが欠けると、STARで深掘りしても面接官ごとに別のものを測ることになります。

導入を見送るべき条件

次のどれかに当てはまる場合は、コンピテンシー面接を始める前に別の手当てが必要です。

  • 職務に必要な行動を定義できない:成果を上げている社員との比較ができない新設の職種でも、職務内容の記述や上司・担当業務の経験者への聞き取りから基準を作れます。それもできないまま他社の一般的なコンピテンシー一覧を借りると、自社の成果と結び付かない項目で採点することになります。
  • 面接官を訓練する時間が取れない:質問だけ配っても、深掘りと採点がそろわなければ構造化面接の精度は前提にできません。
  • 職務内容が頻繁に変わるのに、基準を見直す担当者がいない:古い基準で採点し続けることになります。

面接で聞いてはいけない質問:公正な採用選考の14事項

コンピテンシー面接は応募者の経験を深く聞くため、意図せず聞いてはいけない領域に踏み込みやすい面接です。厚生労働省は、就職差別につながるおそれがある事項として、少なくとも次の14事項を挙げています。

区分 事項
本人に責任のない事項 本籍・出生地/住宅状況/家族/生活環境・家庭環境
本来自由であるべき事項 宗教/人生観・生活信条/思想/購読新聞・雑誌・愛読書
本来自由であるべき事項 支持政党/尊敬する人物/労働組合・学生運動などの社会運動
採用選考の方法 身元調査/必要性のない健康診断/適性に関係ない事項を含む応募書類

厚生労働省の公正採用選考特設サイト「採用選考時に配慮すべき事項」によると、令和6年度にハローワークが把握した854件の指摘のうち、「家族に関すること」の質問が多くを占め、面接の空気を和らげるために聞いてしまうケースが多いとされています。また、職業安定法第5条の5と同法に基づく指針(平成11年労働省告示第141号)は、思想・信条(人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書など)や労働組合への加入状況などの個人情報を、原則として収集してはならないとしています。

コンピテンシー面接で特に注意が要るのは、次の3つの場面です。

  • 価値観を聞きたいとき:「あなたが大切にしている価値観は」「尊敬する人は」は、人生観・生活信条や尊敬する人物に当たります。「納期と品質の両立が難しかった場面で、何を基準に判断し、どう行動しましたか」のように、職務上の具体的な判断と行動を尋ねます。
  • 困難の経験を深掘りするとき:「困難を乗り越えた経験」の答えに家族の病気や家庭の事情が出てきた場合は、その経験の深掘りを止めます。仕事・学業などの別の場面に切り替え、職務に関係する行動と結果を聞きます。
  • 雑談で場を和ませるとき:冒頭のアイスブレイクで出身地や家族構成を話題にしません。質問を共通化する手順の中で、雑談の話題もあらかじめ決めておくと防げます。

応募者側の準備:エピソードの選び方とNG回答

受ける側から見ると、コンピテンシー面接は模範解答の暗記が効きにくい面接です。二次面接や最終面接でも、過去の行動を「なぜ」「具体的には」と深掘りされることがあります。ただし、深掘りされるだけでコンピテンシー面接と判断できるわけではありません。準備は次の順で進めます。

  1. エピソードを棚卸しする:成功した場面と失敗した場面を、仕事・学業・アルバイトから複数書き出します。新卒の場合、学生時代の経験の整理はガクチカで企業が重視する項目も参考になります。
  2. 求人票からコンピテンシーを推測する:募集要項の「求める人物像」や職務内容から、聞かれそうな行動特性を選び、エピソードを対応させます。
  3. STARで1分程度に話せるようにする:状況と役割は短く、行動を厚く話します。深掘りに備え、行動の理由と、もう一度やるなら変える点も言えるようにしておきます。

評価を下げやすいのは、次のような答え方です。

  • 「私は協調性があります」で終わる:自己評価だけで、行動事実がありません。協調性を伝えたいなら、対立した相手と合意した場面を話します。
  • 主語がずっと「私たち」:チームの成果と自分の行動の区別がつかず、本人の点数を付けられません。
  • 結果の数字だけを話す:「売上を120%にしました」だけでは、どの行動がその結果を生んだのかが分かりません。
  • 話を盛る:経験や役割を誇張せず、自分が実際にしたことと確認できる結果を話します。

よくある質問

コンピテンシー面接とは簡単に言うと何ですか?

応募者が過去に実際にとった行動を具体的に聞き、その行動から入社後の働き方を予測する面接です。「強みは何か」ではなく「強みを発揮した場面で何をしたか」を質問し、あらかじめ決めた行動の基準に照らして採点します。

構造化面接とコンピテンシー面接の違いは?

構造化面接は、全員に同じ質問をし、決めた基準で採点する面接の進め方の総称です。コンピテンシー面接は、評価する項目をコンピテンシー(成果につながる行動特性)にし、過去の行動を質問する点に特徴がある、構造化面接の代表的なやり方です。質問や採点を面接官任せにすると、名前がコンピテンシー面接でも構造化面接にはなりません。

STARとは何の略ですか?

Situation(状況)、Task(課題)、Action(行動)、Result(結果)の頭文字です。考案したDDI社は、状況と課題をまとめた「ST」、行動の「A」、結果の「R」の3要素として説明しています。改善のフィードバックでは、別の行動と別の結果を加えたSTAR/ARを使います。

新卒採用でもコンピテンシー面接は使えますか?

使えます。職務経験がない分、学業・部活動・アルバイト・ゼミなどの場面で、自分から動いた経験や対立を解消した経験を聞きます。経験の幅が狭い応募者には、仮定の状況でどう行動するかを聞く状況質問を補助的に組み合わせます。

面接シートとは何ですか?

面接で使う質問、評価するコンピテンシー、採点基準、応募者の発言メモ、点数を記録する用紙です。点数の根拠になった発言を残しておくと、複数の面接官の評価を比べたり、不採用の理由を社内で説明したりするときに使えます。

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