ミームマーケティングとは何か?インターネット文化から生まれた新たなマーケティング手法の定義と背景を解説

目次

ミームマーケティングとは何か?SNS時代の新戦略の全貌と注目される理由、成功要因まで網羅し徹底解説!

ミームマーケティングとは、一言で言えば「ネット上で流行するミーム(meme)を活用した新しいマーケティング手法」のことです。ミームとは元々1976年に生物学者リチャード・ドーキンス氏が提唱した概念で、文化的な情報が人々の間で模倣・伝播される現象を指します。インターネット時代においては、面白い画像や動画、フレーズなどが爆発的なスピードで拡散し、多くの人によって共有・改変されながら広まっていくコンテンツ全般を「ミーム」と呼びます。例えば、有名な猫の動画にユニークな字幕を付けたものや、誰もがマネするダンスチャレンジなどがミームの典型です。
このようなミームが注目される背景には、SNSの普及とユーザー行動の変化があります。従来のバイラルマーケティング(口コミやシェアによる拡散)と比べても、ミームはユーザー発信・ユーザー主導で広まる点が特徴的です。企業が仕掛けるのではなくユーザー自身が面白がって広めてくれるため、広告臭が薄く自然な形で認知拡大につながります。SNS時代では特に、若年層のユーザーほどテレビCMなどよりもネット上のノリやユーモアを好む傾向があり、ミームはそうしたユーザーの共感を得やすいのです。
さらに、テキスト・画像・動画といった形式を問わずミームは生まれるため、多様なプラットフォームで拡散可能です。Twitter(現X)のようなテキスト中心の場ではウィットに富んだフレーズミームが、Instagramでは画像ミームが、TikTokでは音源付きの動画ミームがそれぞれ人気になるなど、SNSごとにミームが文化として根付いている状況です。そのため「SNS時代の新戦略」としてミームマーケティングが登場してきたと言えます。企業や組織が人気のネットミームを自社のプロモーションに取り入れることで、ユーザーとの間に共通の話題や笑いを生み出し、結果としてブランドへの注目度や親近感を高めることが可能になるのです。
要するに、ミームマーケティングが今注目される理由は、低コストで爆発的な拡散を狙える点と、ユーザーとのエンゲージメントを自然に深められる点にあります。次章では、そんなミームマーケティングの具体的な特徴やメリットについて掘り下げていきましょう。

ミーム(Meme)の意味と起源

まず「ミーム(meme)」という言葉自体の意味と起源について解説します。ミームの概念はイギリスのリチャード・ドーキンス氏が著書『利己的な遺伝子』で提唱したもので、「遺伝子のように模倣を通じて伝播していく文化的情報」を指しました。語源は「模倣する」という意味のギリシャ語”mimema”に由来し、遺伝子(gene)になぞらえて作られた言葉です。インターネット黎明期からオンラインコミュニティではテキストのコピペ文化や流行画像が存在していましたが、「ミーム」という言葉が一般に浸透したのはネット時代になってからです。
現代のインターネットにおけるミームとは、ある面白いアイデアやコンテンツが人から人へ模倣・改変されながら広まる現象を指します。典型的には、おもしろ画像にキャッチーなテキストを載せた「画像ミーム」や、短いネタ動画が繰り返し真似される「動画ミーム」などがあります。猫のかわいい仕草を捉えた画像に皮肉なコメントを添えた「猫ミーム」や、有名人の決めゼリフをもじったフレーズなど、形式は様々です。重要なのは、それらが人々に模倣されるほどの共感や笑いを生み、コミュニティ内で共有され続けるという点です。

ミームマーケティングが登場した背景

ミームマーケティングが生まれた背景には、デジタルマーケティング環境の変化があります。SNSが生活インフラ化し、ユーザー自身が情報発信者となった現在、従来型の一方通行な広告は若者層にリーチしづらくなりました。そんな中、ユーザーが自発的に広めてくれるミームに注目が集まったのです。
企業側から見ると、「バズるネタを自分たちで作り出す」のは難易度が高いですが、既にバズっているネタ(ミーム)を上手く活用することでマーケティングに活かせる可能性が見えてきました。海外では2010年代から、Wendy’sやOld Spiceなどがネットミームやユーモアを交えたSNS運用で成功を収めており、これらがミームマーケティングの先駆けとされています。一方日本でも、Twitterやニコニコ動画、5ちゃんねるなどで培われたネット独自の文脈・流行があります。企業公式アカウントがそうしたネットスラングや流行ネタを敢えて使って親しみやすさを演出する例が徐々に現れ、ミームマーケティングが注目される下地ができました。
またテクノロジーの進化も背景の一つです。画像編集アプリや動画編集ソフトの普及で、一般ユーザーが簡単にミーム素材を作れるようになりました。TikTokなどでは独自の編集機能で次々に新しいネタ動画が生み出されています。こうしたユーザー創作ミームの爆発的増加も、企業がそれを利用しようとする動機になっています。

一般的なバイラルマーケティングとの違い

ミームマーケティングは、一見すると口コミやバズ狙いの「バイラルマーケティング」と似ています。しかしいくつか明確な違いがあります。まず、コンテンツの主導権がユーザー側にある点が大きな違いです。従来のバイラルマーケティングは企業が「いかにユーザーにシェアさせるか」を工夫してキャンペーンを設計しますが、ミームマーケティングでは元になるミーム自体は必ずしも企業発ではありません。むしろ既に流行っているネタを企業が借用する形になることも多く、「流行に便乗するマーケ」と言える側面があります。
また、一般的なバイラル施策は企業が制作した動画や特設サイトなどオリジナルコンテンツを拡散させることが多いですが、ミームマーケティングでは既存のミームフォーマットに自社要素を乗せて拡散させる手法が取られます。例えば人気の画像ミームの形式を借りて自社商品のネタ画像を作りSNSに投稿したり、流行のダンスチャレンジに自社キャラクターが参加する動画を出したりといった具合です。つまり「既存ミームの二次創作」に近い手法なのです。
さらに、ユーザー参加の度合いも異なります。バイラルマーケではキャンペーンをシェアしてもらうことが目的でしたが、ミームマーケティングではユーザー自身がさらに別のパロディを生んだり、ハッシュタグチャレンジに参加してくれたりするなど、ユーザーが創作側にも回ることがあります。このように、ユーザーと共創的に盛り上げていく要素が強い点も、ミームマーケティング独特のものです。
総じて、ミームマーケティングは「ユーザー主導の文化現象に企業が乗っかり、共に盛り上がる」というスタンスが求められるマーケ手法と言えます。従来の広告的アプローチとは異なる発想が必要になるでしょう。

SNS時代におけるミームの役割と特徴

SNS時代において、ミームは単なるネットの娯楽に留まらず、一種のコミュニケーション手段としての役割を担っています。ユーザーはミームを共有することで、お互いに笑いや価値観を共有し、連帯感を深めています。例えば、流行りのミームを知っていれば会話についていける、一緒に笑える、といった具合に、ミームがデジタル時代の共通言語となっている側面があります。
ミームの特徴として、伝播の速さと変化への適応力が挙げられます。面白いミームは数日のうちに世界中に広まり、派生作品が次々と作られていきます。元ネタがどんどん改変され、新たな意味や笑いが付加されることで、ミームは生き物のように進化し続けます。この柔軟性と生命力こそがミーム文化の核であり、同時にマーケティング活用の難しさでもあります。つまり流行についていけなくなると一気に時代遅れになるため、常に最新のネタを追いかける必要があるのです。
もう一つの特徴は、参加のハードルが低いことです。誰でもスマホ一つでミームを楽しみ、作り、拡散できます。専門知識や高額な機材がなくても、ユーモアのセンス次第でバズを起こせる世界です。この民主化された文化の中で、企業も一ユーザーとして振る舞い、ユーザー目線の笑いを提供できるかが問われます。SNS上で人気のミームを使う際には「企業アカウントが使うなんてズレてる」と思われないよう、ネット文化へのリスペクトが重要です。
要するに、SNS時代のミームは単なる面白コンテンツ以上の存在となっており、人々のコミュニケーションや文化の一部です。その文脈を理解した上でマーケティングに活かすことが成功の前提条件になります。

ミームマーケティングが注目される理由

最後に、なぜ今ミームマーケティングがこれほど注目されるのか、その理由を整理します。第一の理由は費用対効果の高さです。ミームは元々ユーザーが生み出したものを利用するケースが多く、コンテンツ制作コストを大幅に抑えられます。それでいながら、ヒットすれば爆発的な拡散力を持ちます。たとえばTwitterでバズった画像ミームを企業公式が引用リツイートするだけで何万ものいいねが付くこともあり、広告費ゼロで巨額のリーチを得られる可能性があります。
第二に、若年層へのリーチ手段として有効な点です。10〜20代の多くはテレビ離れが進み、SNSや動画サイトから情報を得ています。彼らにリーチするには、その世代で流行っているミームに乗るのが手っ取り早いのです。「自分たちと同じノリを知っている」と感じてもらえれば、企業への親近感や好感度も上がります。実際、日本でも企業公式アカウントがミーム的な投稿をして「中の人面白い」と話題になる例が増えています。
第三に、エンゲージメント向上です。ミームを使った投稿にはユーザーからの反応(いいね、コメント、シェア)が集まりやすく、SNSアルゴリズム上も露出が増える傾向があります。ミームをきっかけにユーザーとの対話が生まれ、結果としてブランドのSNSアカウント自体が活性化するメリットがあります。
以上のような理由から、ミームマーケティングは現代のマーケターにとって無視できない手法となりました。ただし、うまく活用するにはコツが必要です。次の章では、ミームマーケティングの具体的な特徴とメリットを見ていきましょう。


ミームマーケティングの特徴とメリット:爆発的拡散力や共感性、低コスト効果などその利点を徹底検証・解説

ミームマーケティングには、他のマーケ手法にはない独自の特徴と多くのメリットがあります。本章では、ユーザー視点・企業視点の両面からその利点を詳しく見ていきましょう。

ユーザー主導の拡散と共感性の高さ

ミームマーケティング最大の特徴は、ユーザー主導でコンテンツが拡散していく点です。面白いミームはユーザーが自分から進んで友人に共有したり、自分なりにアレンジして再投稿したりします。企業が「広めてください」と頼まなくても勝手に広まっていくこの性質は、まさにマーケターが喉から手が出るほど欲しい効果でしょう。
さらに、ミームには高い共感性があります。笑いや皮肉、あるあるネタを含むミームは、人々の共感を呼び起こし「わかる!」「面白い!」という感情とともに受け入れられます。共感を伴って広まった情報は記憶にも残りやすく、ブランドメッセージを押し出すよりもずっとナチュラルにブランド好意度を上げることができます。「ミームを知っている=自分たちの文化をわかっている」とユーザーに感じさせられれば、企業とユーザーの心理的距離は一気に縮まります。
たとえば海外のハンバーガーチェーンWendy’sは、SNS上で競合をネタにしたり流行のミームに便乗するユーモア戦略でフォロワーの共感を得ています。ユーザーが面白がってWendy’sの投稿を拡散し、結果としてブランドの存在感も高まる好循環を生んでいます。このように「ユーザーが思わず広めたくなる」ことこそ、ミーム活用の真骨頂と言えます。

UGC発生によるさらなる波及効果

ミームマーケティングには、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を誘発するというメリットもあります。企業がミームネタを提供すると、ユーザー側でそれに乗っかったコンテンツが次々生まれることがあります。例えば企業がミーム風フォーマットの画像を投稿すると、ファンがそれを元に二次創作的な画像を作って投稿してくれる、といった現象です。
UGCが発生すると、同じミームが様々なバリエーションで作られネット上に溢れることになり、結果としてオリジナルの企業発コンテンツも含めて大きな波及効果を生みます。ユーザーが自発的に作ったコンテンツなので費用もかからず、勝手に広告塔になってもらえるようなものです。これは普通のキャンペーンではなかなか得られないメリットでしょう。
さらに、UGCの参加が多いほど「流行感」も高まり、SNSプラットフォームのトレンド欄に載ったりアルゴリズムでより拡散されたりする可能性が上がります。まさにユーザーが宣伝部隊となってくれる状況で、これはミームマーケティングならではの強みです。
ただし、この効果を得るにはユーザーが投稿したくなる工夫が必要です。単に面白いだけでなく、「自分もやってみたい」「加工して遊びたい」と思わせるフォーマットやテーマ設定が重要になります。例えば決まったテンプレートに当てはめる系のミーム(空欄を埋める大喜利系画像など)は多くの人が参加しやすく、UGCが発生しやすい傾向があります。

低コストで爆発的なリーチを獲得

ミームマーケティングの大きな魅力の一つは、費用対効果が非常に高いことです。一般的に広告で大きなリーチを得ようとすれば、それ相応の広告費や制作費がかかります。しかしミームを利用すれば、ほぼゼロ予算でも何百万ものユーザーにリーチできる可能性があります。
例えば、ある企業のTwitter公式アカウントが人気ミームのパロディ画像をツイートしたとします。それがうまくハマれば、広告費を一切かけずともリツイートによって何十万というユーザーのタイムラインに露出するでしょう。また、一度バズればネットニュースやテレビに取り上げられることすらあり得ます。実際、「バズった企業アカウント○○」のようにニュースになるケースも近年増えています。
制作面でもコストは低めです。ミームのフォーマット自体は既存のものを流用できるため、凝った映像制作などは不要です。極端に言えば、担当者のユーモアセンスと画像編集ソフト(場合によってはスマホアプリ)さえあれば十分です。大掛かりな企画書も予算も要らず、少人数で試せる点は特に中小企業やスタートアップにとって魅力でしょう。
さらに、失敗した際のダメージも比較的小さいです。テレビCMに数千万円かけてスベった場合の痛手に比べれば、ミーム投稿が滑っても「次は頑張ろう」で済みます。低コストゆえにトライアンドエラーがしやすく、ヒットが出るまで小刻みにチャレンジできる利点もあります。

若年層への強い訴求とエンゲージメント

ミームは特にZ世代・ミレニアル世代といった若年層にリーチするのに有効です。彼らは日常的にInstagramやTikTokでミーム的コンテンツに触れており、笑いや驚きを届けるミームにポジティブな印象を持っています。企業がミームを使うことで「お、この企業ノリが分かってるじゃん」と感じてもらえれば、若者文化に寄り添う親しみやすいブランドと映るでしょう。
さらに、ミームは双方向のコミュニケーションを生みやすいです。ユーザーは面白ければリプライで反応したり、自分のフォロワーにも見せたくてシェアしたりします。結果として、いいね・コメント・リツイートといったエンゲージメントが大幅に増加します。企業アカウントの投稿に普段は無関心な層も、ミーム投稿には思わず反応してしまうことが多いのです。
エンゲージメントが高まると、アルゴリズム上でも投稿が拡散しやすくなるメリットがあります。TwitterやInstagramでは反応が多い投稿ほど他人のフィードに載りやすくなりますし、TikTokでも視聴完了率や共有が多い動画はより多くのユーザーに表示されます。その意味で、ミームを使うことは自然な形でSNS上の露出を最大化する戦略と言えます。
また、ユーザーとのやり取りの中で企業側がさらにウィットに富んだ返しをしたりすると、「神対応」として好感度が上がることもあります。ミームをきっかけに生まれたユーザーとのコミュニケーションは、企業に対する愛着やファン化につながる可能性を秘めています。

ブランド認知度・親近感の向上

ミームマーケティングを上手に活用すれば、ブランド認知度の向上にも大きく貢献します。バズったミーム投稿には普段リーチできない層も多数含まれるため、「そんな企業知らなかったけど面白い投稿してるな」と初めて認知されるケースが出てきます。特に話題性の高いミーム施策はニュースサイトで取り上げられたり、まとめサイトで拡散されたりして、SNSを超えて認知が広がる場合もあります。
加えて、ミームを使うことでブランドに親近感や人間味が加わる効果も見逃せません。どうしても企業発信は堅苦しくなりがちですが、ミームというカジュアルな文脈に乗ることで「フランクでユーモアのあるブランド」というイメージを持ってもらえます。特に日本では真面目な企業ほど一度ユーモアを見せるとギャップで好印象を与えやすく、ミーム活用はそのきっかけとなります。
例えば、カネボウ化粧品のコスメブランド『ケイト』は「リップモンスター」という口紅の商品名自体をユニークなネタにし、SNS上で大きな話題を呼びました。その結果「マスク時代でも落ちにくいリップ」として若者に広く認知され、発売10ヶ月で累計出荷本数240万本を記録する大ヒットにつながりました。このケースでは、商品の特徴とネットミーム的なネーミング戦略がうまく噛み合い、ブランド認知と売上双方の向上を実現しました。
以上のように、ミームマーケティングには共感・拡散・低コスト・若者訴求・ブランド親近感といった数多くの利点があります。もっとも、これらのメリットを引き出すには適切なミーム選びと使い方が重要です。次の章では、ミームがどのようにSNS上で拡散していくのか、そのメカニズムを探ってみましょう。


SNS発ミームの拡散メカニズム:バズる仕組みとユーザー拡散の流れ、アルゴリズムの影響も含め徹底解明!

流行するミームは、どのようにしてSNS上で広がっていくのでしょうか。この章では、ミームがバズる仕組みや拡散のプロセス、そしてSNSプラットフォームのアルゴリズムとの関係について解説します。ミームマーケティングを成功させるには、まずミームの拡散メカニズムを理解することが不可欠です。

ミームが拡散するプロセスと段階

ミームが拡散していく過程にはいくつかの典型的な段階があります。まず最初に、「発生源(オリジナル投稿)」があります。これはユーザーの投稿であったり、別のコミュニティで生まれたネタであったりします。次に、「一次拡散」の段階で、そのミームを見た一部のユーザーがリツイートやシェアを行い、小規模に拡散し始めます。
一次拡散を経て転換点が訪れると、「二次拡散」のフェーズに入ります。転換点とは著名人やインフルエンサーが反応したり、大きなコミュニティ(例えば大型掲示板やまとめサイト)で取り上げられたりする瞬間です。ここで一気に拡散速度が増し、短時間で大量の人々に届くようになります。ミームがバズるかどうかは、この転換点を迎えられるかにかかっていると言っても過言ではありません。
そして最後に、「定着・変異」の段階があります。一過性の流行で終わらずに定着したミームは、派生ネタが次々作られたり、日常的なネットスラングとして使われるようになります。例えば一時期流行したフレーズが、その後もネットミームの文脈で使われ続けるケースです。また定着する過程で意味や使われ方が変化していくこともあります。これをミームの「進化」と捉えることもできるでしょう。日本のミーム文化でも、かつて流行したネタが数年後に再燃する「ミーム復活」の現象が見られます。
マーケティングで狙う場合、この拡散プロセスの一次拡散〜転換点をいかに演出するかが鍵となります。つまり、どこかのタイミングで大きなコミュニティやインフルエンサーに拾ってもらう仕掛けが重要です。そのためにはミームの面白さだけでなく、タイミングやターゲット選定も大切になります。

SNSアルゴリズムがミーム拡散に与える影響

SNS各社のアルゴリズムも、ミームの拡散に大きな影響を与えます。Twitter(X)やInstagramでは、ユーザーのエンゲージメントが高い投稿がアルゴリズムに評価され、より多くの人に表示される仕組みがあります。ミーム投稿はしばしば爆発的なエンゲージメント(いいね・リツイート・コメント)を生むため、アルゴリズムがブーストをかけてさらに拡散範囲が広がるという好循環に入ります。
特にTwitterのトレンドやInstagramの発見タブ、TikTokの「For You」フィードなどは、一定以上バズったコンテンツを多数の非フォロワーに届ける効果があります。ミームが一度バズり始めると、アルゴリズムがそれを検知し「この投稿は人気があるからもっと露出させよう」と判断します。その結果、まだミームを知らなかった人たちの目にも触れるようになり、第二・第三の波が起こるのです。
また、TikTokのアルゴリズムはユーザーの視聴行動に基づき関連する動画を次々流す性質があり、流行中のミーム動画は芋づる式に再生されます。「同じ音源を使った別の人の動画」が連続して表示されることも多く、人気のミームチャレンジはまさにこの仕組みで爆発的な視聴数を稼ぎます。例えば一人のユーザーがあるダンスミームにハマると、TikTok側が次々と他の人の同じダンス動画をおすすめしてくるため、気付けば何十分も関連動画を見続けていた…ということが起こります。これもアルゴリズムとミームの相乗効果と言えます。
こうしたアルゴリズム効果を最大化するには、いかに短時間で高エンゲージメントを達成するかがポイントです。投稿直後の反応が良ければ、一気に拡散モードに乗ります。そのためミームを投入するタイミング(ユーザーがアクティブな時間帯)や初動の見せ方(例えば関係者が先にいいねして勢いをつける等)も戦略的に考える余地があります。

ハッシュタグやトレンド機能の役割

ミーム拡散においてハッシュタグも重要な役割を果たします。TwitterやInstagramでは、ハッシュタグを付けることで関連する投稿を一箇所に集めることができます。流行中のミームには公式・非公式問わずハッシュタグが付与されていることが多く、ユーザーはそのタグで検索して同じミームの他の投稿を楽しみます。
企業がミームマーケティングを行う際も、ハッシュタグの活用は有効です。例えばキャンペーン的にミームチャレンジを行う場合、統一ハッシュタグを提示してユーザー投稿を促すことで、投稿を簡単に見つけられるようにしつつ盛り上がりを見える化できます。またTwitterではトレンドにハッシュタグが入ることでさらに知名度が上がるため、「トレンド1位に○○が!」と話題になれば大成功と言えるでしょう。
特に日本のTwitterユーザーはトレンドをよくチェックするため、ここに入るか否かで爆発力が大きく変わります。ハッシュタグがトレンドに入る条件は明確には公表されていませんが、短時間で大量のツイートがあること、特定のコミュニティに閉じず広範囲に利用されていることなどが指標とされています。そのため、できるだけ多くのユーザーに投稿してもらう仕掛けが大事です。先述のUGCを促す工夫や、インフルエンサーへの働きかけも効果的でしょう。
TikTokでもハッシュタグチャレンジが流行を生むきっかけになります。TikTokの場合は公式が「#○○チャレンジ」のような形でキャンペーンを設けたりもしますが、非公式でもユーザー間で同じタグを付けて投稿し合う文化があります。Z世代は特に「みんながやってるから自分もやってみよう」とチャレンジに参加する傾向が強く、ハッシュタグが一種のムーブメントを形成します。ミームマーケティングではこの自発的ムーブメントに企業がどれだけ乗れるかが勝負になります。

ユーザーの模倣・リミックス文化

ミーム拡散を語る上で欠かせないのが、ユーザーの模倣(マネ)・リミックス文化です。ネットミームは、一人が生み出し100人が真似し1000人が改変し…という連鎖で広まります。この「みんなで少しずつネタをいじり倒す」文化は、インターネットならではの創造性と言えます。
例えばある画像ミームが流行すると、その画像を素材に別のネタを組み合わせた派生ミームが次々登場します。人気ミームほどパロディや変形が大量に作られる傾向があり、それがまた新たな笑いを生んでミームの寿命を延ばします。ユーザーたちは自分なりのアレンジを加えることで流行に参加し、同時に自己表現の一環として楽しんでいます。
このようなリミックス文化は企業にとっても利点となり得ます。企業が提示したミームフォーマットが二次創作されることで、企業発のメッセージがユーザーによって増幅・拡張されるからです。ただし、その際に意図せぬ方向に変容するリスクもあります。時に悪意あるパロディが出回る可能性もゼロではありません(例えば企業ロゴを改変した風刺ミームなど)。従って、懐の深さとユーモアを解する度量が企業側にも求められます。場合によっては多少のネガティブ改変には目をつぶり、面白がるくらいのスタンスが必要かもしれません。
企業が公式に提供した素材(テンプレ画像など)をユーザーが自由にリミックスできるようにするのも一案です。その際、著作権的な許諾を明示しておけばユーザーも安心して使えます。実際に海外では企業が自社キャラクターの画像をミーム素材として配布し、ユーザーに自由に加工・共有してもらうことでブランド露出を図る例も出てきています。

グローバル拡散とローカライズの実際

インターネットミームは国境を越えて広がることも珍しくありません。言語の壁を超える画像・動画ミームや、ごく短い英語フレーズのミームなどは世界中で共有される傾向があります。たとえば有名な「グランピー・キャット(不機嫌そうな猫)」のミームは海外発祥ですが、日本のSNSでも広く知られました。また逆に日本発のミームが海外で受け入れられることもあります。
もっとも、ミームの内容によっては各国での受け取られ方が異なります。日本独自の文脈や語感に依存するミームは海外では伝わらないでしょうし、その逆も然りです。そのためローカライズ(現地化)が鍵となります。グローバル展開しているブランドがミームマーケティングを行う際は、各国で流行っているネタをそれぞれ押さえ、その文化圏に合った形でミームを活用する必要があります。
一方で、Netflixのように自社コンテンツをミーム化して世界展開する手法もあります。Netflixは自社ドラマの印象的なシーンにキャプションを付けてSNSに投稿し、それがミームとしてシェアされることで作品宣伝に役立てています。ここでは文化の壁を越えるために、ユーモアやテーマがグローバルに通じやすいシーンを選ぶ、字幕を多言語に対応させるなどの工夫がなされています。
総じて、ミーム拡散のメカニズムはユーザーの自発性とプラットフォームの仕組みが組み合わさったダイナミックなものです。マーケターはその波にうまく乗り、場合によっては波を作り出すつもりでミームを活用することが求められます。次章では、実際に企業がミームマーケティングを活用した成功事例を見てみましょう。


企業が活用した最新事例紹介:国内外で成功したミームマーケティング例を徹底紹介し、その成功要因を分析!

ミームマーケティングの理論を見てきましたが、実際にどのような形で企業がそれを活用し成果を上げているのかを知ることは大変重要です。本章では、日本国内および海外の最新事例をいくつか紹介し、それぞれの成功要因を分析します。現実のケーススタディから、ミームマーケティングのヒントを学んでいきましょう。

大塚製薬『ファイブミニ』TikTok起点で若者にブームを巻き起こした成功例

事例概要: 大塚製薬の食物繊維飲料『ファイブミニ』は、元々30〜50代向けの特定保健用食品(トクホ)飲料でした。しかし、意外なことにTikTokで「美容や健康に良いドリンク」として若年層ユーザーの間で話題となり、Z世代に一気に認知が拡大しました。その結果、販売本数が大きく伸び、TikTok発のユーザー投稿をきっかけにブーム化した成功例となりました。
何が起きたか: TikTok上で一人のユーザーが「ファイブミニを飲んだら肌の調子が良くなった!」といった内容の投稿をしたのがきっかけとされています。これを皮切りに複数の若年女性ユーザーがファイブミニを試飲する動画を投稿し始め、口コミのように「美容に敏感な若者におすすめのドリンク」という印象が広まりました。単なる流行飲料として終わらせないため、大塚製薬側も公式TikTokアカウントで関連コンテンツを発信したり、キャンペーンを展開したりと積極的に動きました。その結果、一過性のブームで終わらず継続的な人気を維持することに成功しています。
成功要因分析: この事例のポイントは、ユーザー発の好意的なミーム化に企業が素早く対応した点です。もともと意図して若者向けにマーケティングしていなかった商品が、ユーザーの口コミ動画によって勝手に「美容に良いトレンドドリンク」扱いされたのは半ば幸運でした。しかしそこで終わらず、大塚製薬がTikTok公式を立ち上げて関連動画を発信したり、若年層向けプロモーションを打ったことで、偶発的バズを持続的ブームに昇華させました。ユーザー投稿を単に見守るのでなく、公式が絡むことで信頼感も増し、より多くの人が安心して試すようになったという効果も考えられます。
またTikTokというプラットフォーム選択もハマりました。Z世代にリーチする媒体としてTikTokは非常に強力で、動画で飲みやすさやリアクションを見せることで購買意欲を刺激できました。結果として「親世代の商品だったファイブミニが10代20代にも浸透する」という、新たな市場開拓に成功したのです。

カネボウ化粧品『ケイト』ユニークなネーミング戦略でSNS話題化

事例概要: カネボウ化粧品のメイクブランド『ケイト(KATE)』から発売された口紅シリーズ「リップモンスター」は、コロナ禍でマスク生活が続く中「口紅は売れない」と言われた市場にあって異例の大ヒットを記録しました。ヒットの背景には、色名にユニークなネーミング(例えば「ラスボス」「欲望の塊」といった印象的な名前)を採用し、それがSNS上でミーム的に話題を呼んだことがあります。
何が起きたか: 2021年前後、マスクで唇が隠れることから各社口紅の売上が落ちていました。ケイトは「色落ちしにくい」機能に着目して商品開発を進め、さらに各色にゲームやアニメを連想させるようなユーモラスな名前を付けました。例えば深紅の色に「ラスボス」(最終ボスの意)という名前を付与したのです。この遊び心あるネーミングがTwitterを中心に「センスが良すぎる!」と拡散され、一躍注目の商品となりました。加えてTikTokでは人気クリエイターを起用した紹介動画を流し、若者の関心を惹きつけることにも成功しました。
成功要因分析: ケイトの事例は、商品のコンセプトとミーム的要素(ネタ要素)を絶妙に融合させた点が秀逸です。色落ちしない=マスクでも使えるという機能訴求だけでなく、「ラスボス級に落ちない口紅」といったユーモラスな表現でユーザーの興味を喚起しました。このネーミングはまさにネットミーム的なセンスで、Twitterではハッシュタグ「#ラスボス口紅」などが生まれ盛り上がりました。つまり消費者自身が商品をネタにして語りたくなる状況を作り出したのです。
さらに売り方も巧みでした。在庫が追いつかず品薄状態になると、それ自体がまたSNSで話題になり、「手に入らないらしい」という口コミが広がることで希少価値と注目度が増すというブーストがかかりました。これは計画的ではないにせよ、結果的にブランド神話のようなものを醸成しました。
この事例から学べるのは、商品自体にミーム要素を組み込むことの強さです。商品名やコンセプトがユーザーにいじられて広まるよう設計できれば、広告費をかけずとも勝手に話題になってくれます。ケイトはその好例として、マーケティング関係者からも注目される存在となりました。

日清食品『カップヌードル』人気ミームを商品プロモーションに活用

事例概要: インスタント食品大手の日清食品は、従来からユニークな広告展開で知られていますが、近年はネットミームを巧みに商品プロモーションに取り入れています。特に2021年には「カップヌードル」のフタ裏に人気ミーム画像である「チベットスナギツネ」の写真を印刷して販売し、大きな話題を呼びました。また2023年〜2024年には流行ミーム「強風オールバック」を使ったCMも公開し、「日清また攻めてる」とSNSで注目されました。
何が起きたか: まず「チベットスナギツネ蓋」の件から。チベットスナギツネはネット上でシュールな表情の代名詞として人気の画像ミームです。日清はカップヌードルの蓋の裏にランダムでこの写真を印刷し、一部の商品にだけ入れるという遊び心を仕掛けました。遭遇率は6%とされ、ユーザーは蓋をめくってあの狐の顔が出てくると「当たりだ!」とSNSに投稿しました。Twitterでは「#カップニャードル」というハッシュタグで盛り上がり、美少女風にデフォルメした狐キャラのイラストなど派生ネタも出現しました。消費者が自発的に写真をアップしてくれるため、結果として大量のUGCが発生しプロモーションになったのです。
次に「強風オールバック」の件。強風オールバックとは、VOCALOID楽曲として発表されTikTok等で人気になったコミカルな曲です(歌詞は強風で髪がオールバックになる様子を歌ったもの)。この曲がネットミーム化し、VTuberなどもカバーするなどブームになっていました。日清は2023年、その曲をBGMに採用したカップヌードルのCMを制作・公開しました。CM自体も「髪がオールバックになるほど夢中で食べる」みたいなコミカル演出で、ネット民にウケてSNS上で大きな反響を得ました。「企業公式が流行曲使ってきたw」「センス良すぎ」といった声が多数上がり、広告としても成功を収めました。
成功要因分析: 日清食品のケースでは、ネットミームへの深い理解とリスペクトが成功の鍵です。チベットスナギツネにしても強風オールバックにしても、企業側が無理やりウケを狙って使った感がなく、「わかってるなー」とユーザーに思わせる絶妙なチョイスでした。これは日清のマーケ担当チームが日頃からネット文化をウォッチし、流行を的確に捉えていることの表れでしょう。
また、商品・ブランドとの親和性も考えられていました。チベットスナギツネは蓋を開けた瞬間に出てくるサプライズとして丁度良いインパクトでしたし、強風オールバックは若者に人気の曲でカップヌードルのメインターゲットと重なります。単に流行っているから使うのではなく、「自社のプロモーションに使って効果があるか」を見極めて選んでいる点が優れています。
そして何より日清ブランド自体が「ユーモアがあって革新的」というイメージを以前から築いていたことも奏功しています。ユーザー側も「日清ならこういうネタやってくれるよね」と好意的に受け止めやすい土壌があり、ミーム活用がブランドイメージとズレなかったのです。

Wendy’s(ウェンディーズ)ミームを駆使したユーモア戦略でブランド発信

事例概要: 海外事例として、アメリカのハンバーガーチェーン「ウェンディーズ(Wendy’s)」はSNSマーケティングの成功例として有名です。同社のTwitterアカウントは競合他社を軽妙にイジったり、ネットミームを活用したりするユーモアあふれる投稿で人気を博しています。ミームを駆使したユーザーとのやり取りが話題となり、フォロワーとのエンゲージメントを大きく高めた例です。
何が起きたか: ウェンディーズのTwitter運用は2017年頃から注目を集め始めました。たとえば、競合のマクドナルドがフローズンビーフ(冷凍牛肉)を使っていることをネタに「まだ冷凍肉使ってるの?冷たいねぇ(笑)」と煽るツイートをしたり、ユーザーからの挑発に対してジョークで返すなど、普通の企業アカウントなら避けるような辛辣かつウィットな返信を次々繰り出しました。こうした投稿が「煽りがキレキレすぎる」と評判になり、多くのRTやいいねを獲得しました。
また、人気ミームを自社の商品プロモに転用することも積極的に行っています。例えばスパイシーチキンナゲット再販の際には、ネットで流行した「不機嫌な猫(Grumpy Cat)」のミーム画像フォーマットに「ナゲットまだ?」という趣旨のキャプションを付けて投稿しました。この投稿はファンの笑いを誘い大きく拡散され、キャンペーン成功に貢献しました。
成功要因分析: ウェンディーズの成功要因は何と言っても一貫したキャラクター設定とユーモアです。SNS担当者(中の人)のセンスが光っているのはもちろんですが、企業として「SNSではカジュアルで攻めたキャラで行く」という明確な方針があったのでしょう。ミームを取り入れる際も、そのキャラに沿った形で違和感なく活用しており、ブランドのトーン&マナーが統一されています。
さらに、ユーザーとの対話を恐れず行った点も重要です。普通ブランド公式が顧客とやり合うのはリスキーに思えますが、ウェンディーズはむしろそれをエンタメ化しました。ネットミーム的なノリでじゃれ合うことで、消費者との距離感を縮めることに成功したのです。「高品質なハンバーガー」だけでなく「ユーモアのわかるブランド」という差別化されたイメージを構築でき、競合との差別化にも役立ちました。
この事例から学ぶべきは、ミーム活用もブランド戦略の一部として捉えることです。単発のネタではなく、全体のコミュニケーション設計の中でミームを位置付けることで、短期的バズに留まらない長期的なファンづくりにつながります。

Gucci(グッチ)ネットミーム文化を取り入れ若年層に親近感を創出

事例概要: 高級ファッションブランドのグッチ(Gucci)は、ラグジュアリーブランドでありながらSNS上でミームを積極的に活用したキャンペーン「#TFWGucci(That Feeling When Gucci)」を展開し話題を呼びました。伝統的に格式高いイメージのブランドがネットミーム文化と融合するというユニークな試みで、若年層にも親しみを持ってもらうことに成功しました。
何が起きたか: 2017年頃、グッチは「#TFWGucci」というハッシュタグキャンペーンを実施しました。「TFW」とはネットスラングで「〜な時に感じるあの気持ち」(That Feeling Whenの略)を表し、ミームフォーマットとして広く使われるものです。グッチはこのフォーマットを取り入れ、クラシックな絵画や洗練された写真にユーモラスなミーム風キャプションを載せた画像をSNSで公開しました。例えば、モデルがグッチ製品を身に着けている写真に「TFW(グッチを着てドヤる時の気持ち)」的なキャプションを添える、といった具合です。
高級ブランドがカジュアルなミームフォーマットを使ったことに驚きと称賛の声が上がり、投稿は瞬く間に拡散。普段はグッチに縁がない若者たちも「グッチおもしろいじゃん」と注目するきっかけとなりました。SNS上では「高級なのにフランクで好印象」といった反応が多く見られました。
成功要因分析: グッチの成功要因は、ギャップ効果とブランド刷新にあります。格式高く近寄りがたい印象のあるブランドが敢えてミームというポップカルチャーを採用したことで、ユーザーは良い意味で裏切られ「親しみやすさ」を感じました。しかも投稿されたビジュアル自体はさすがグッチ、洗練された美しさを保っており、その上でキャプションだけが面白いというバランスでした。これによりブランドの世界観を崩さずにユーモアを発揮することに成功しています。
また、このキャンペーンは若年層におけるブランド認知とイメージ転換を狙ったものでした。実際、グッチは以降ストリート系ファッションとのコラボなど若者路線を強めており、#TFWGucciはその序章とも言えます。ミームを活用したことでインターネット世代との接点を持ち、「敷居が高いブランド」から「今風で面白いブランド」へと印象変革を果たしました。
高級ブランドがミームを使うには勇気が要りますが、グッチの例は適切な文脈で使えばブランド価値を損なうどころか高めることも可能だと示しています。伝統と革新のバランス、そしてネット文化への理解が鍵だったと言えるでしょう。
以上、国内外の事例を見てきました。共通しているのは、ミームを単なる流行ネタではなく自社戦略に組み込み、ユーザー視点で楽しませた点です。次の章では、そうした事例から導き出せるミーム活用成功のポイントを整理してみましょう。


ミーム活用の成功ポイント:バズを生むための戦略と実践の秘訣を企業が押さえるべき要点を徹底解説し、成功のカギにも迫る

ミームマーケティングの成功には、単に流行りのネタを使えば良いというものではなく、しっかりとした戦略と準備が必要です。本章では、企業がミームを活用する際に押さえておくべき重要ポイントを解説します。これらは前章の事例から抽出した成功のカギでもあります。

ターゲットオーディエンスを深く理解する

まず何より重要なのは、自社のターゲットとするオーディエンスを理解することです。ミームはそれ自体が一種のコミュニティ文化なので、ターゲット層が普段どんなミームやネットスラングに親しんでいるかを把握しないと、ズレたネタを選んでしまう危険があります。
例えば、Z世代向けの商品であればTikTokやInstagramで流行しているミームをチェックすべきでしょうし、30代前後もターゲットならTwitterやYouTube発のミームも視野に入れるべきかもしれません。それぞれの世代・嗜好により流行しているミームの種類や笑いのツボは異なるため、闇雲に一般ウケしそうなネタを選ぶのではなく、きちんとペルソナ設定を行ってミーム選定をすることが肝要です。
オーディエンス理解のためには、SNS上でのエンゲージメントデータ分析も有効です。自社アカウントのフォロワーがよく反応する投稿の傾向や、業界関連のミームネタへの反応などを調べてみましょう。また、可能なら若手社員やインターンなどターゲット層に近い人の意見を聞くのも手です。「これ今めっちゃ流行ってますよ」といった生の声は大事なヒントになります。
要するに、「誰にウケてもらいたいか」を明確にしないと、ミームのチョイスもブレてしまいます。逆に言えば、ターゲットにドンピシャなネタを選べれば、それだけで半分成功したも同然です。顧客の文化を知り、共感ポイントを捉えることが、ミーム活用の出発点となります。

流行のミームトレンドを敏感に察知する

ミームは生き物のように日々移り変わっていくため、トレンドに敏感であることが求められます。数ヶ月前には流行っていたネタも、今使えば「もう古いよ」と思われてしまうかもしれませんし、逆に昨日今日生まれたホヤホヤのネタがチャンスとなる場合もあります。マーケター自身(あるいはチームとして)が常にアンテナを張り、ネット上で何が話題になっているかをウォッチする習慣が必要です。
具体的には、TwitterのトレンドやTikTokの流行ハッシュタグ、YouTubeの再生回数急上昇中の動画などを毎日チェックすると良いでしょう。また、Redditや国内なら5ちゃんねるなどの掲示板、まとめサイトなどもミームの震源地となりやすいです。英語圏のミームも日本に輸入されることがあるため、海外のミーム紹介サイト(KnowYourMemeなど)を見ておくのも勉強になります。
大切なのは、タイミングです。流行り始めに乗れれば「さすが目の付け所が早い」となりますが、ピークを過ぎて後乗りすると「今さら感」が出てしまいます。ただし流行真っ只中すぎるとユーザーの間で消費され尽くしていて飽きられている可能性もあるので、その辺りの見極めが難しいところです。基本的には早めの行動を心掛けつつ、投稿前に社内で「このネタ、もう廃れてないか?」と確認するくらい慎重でも良いでしょう。
また、一つのミームの寿命は短いですが、次から次へと新手が現れます。そこで重要なのは、常に複数のミーム候補ストックを持っておくことです。A案のネタが投稿前に賞味期限切れになったらB案に切り替える、といった柔軟さを持てるよう準備しておきましょう。

ブランドの世界観・トーンを維持する

ミームを使うときは、自社ブランドの世界観やトーン&マナーを崩しすぎないことも大切です。ウィットに富んだジョークは歓迎されますが、行き過ぎて下品になったりブランドイメージとかけ離れたりすると逆効果になりかねません。成功事例を見ても、Wendy’sは終始Wendy’sらしいユーモア、グッチはグッチなりの高級感を保った上でのミーム活用でした。つまり、ミームとブランドらしさの両立がポイントなのです。
そのためには、社内でブランドガイドラインを再確認し、「SNS上ではここまで砕けてもOK」「ここから先はNG」という線引きを決めておくとよいでしょう。例えば「下ネタ・暴力系ミームは使わない」「競合他社を直接揶揄しない」などです。ウェンディーズのように攻めた路線もありますが、あれは相当特殊なケースであり、普通の企業はあそこまでやる必要はないでしょう。
また、ミームを使う際の言葉遣いやキャラクターも統一することが重要です。投稿ごとに中の人の人格が変わったようだとユーザーは戸惑います。普段から砕けた語り口ならミームでもそのまま、普段は丁寧口調のブランドなら少し崩す程度に留めるなど、一貫性を意識しましょう。
さらに、ミームが持つ元の意味や背景も踏まえてブランドとの相性を考える必要があります。もともと皮肉や風刺が強いミームを企業がそのまま使うと、誤解を招く恐れもあります。ミームの文脈をしっかり理解し、ブランドのトーンに合わせてアレンジする工夫も求められます。

ユーザー生成コンテンツ(UGC)を積極的に活用する

前章でも触れましたが、UGCの活用はミームマーケティング成功のカギの一つです。そこで、企業側からユーザーに参加してもらう仕掛けを用意することが重要です。具体的には、ハッシュタグチャレンジの提案や、ミーム素材の提供、コンテストの開催などが考えられます。
例えば、「自社商品を使ったミーム画像コンテスト」を企画し、優秀作を公式で表彰・リポストするような施策も面白いかもしれません。ユーザーにとっては腕試しの場となり、企業にとっては多数のUGCが集まる場になります。実際、海外ではファッションブランドが「自社アイテムを使ったミームを投稿してね」というキャンペーンを行い、参加者に割引クーポンを渡すなどの手法も取られています。
また、TikTokでよく見られるデュエット機能やステッチ機能(他人の動画を組み合わせて投稿する機能)を利用し、ユーザーが公式動画に反応を付けられるようにするのもUGC促進になります。公式がベースとなる動画(例:キャラクターが困っている様子)を出しておき、「続きはみんなの創意工夫に任せます」的に投げるわけです。こうするとクリエイティブなファンが面白動画を作ってくれて、それ自体がまた拡散されるという循環が生まれます。
UGCを活用する際のポイントは、ユーザーに過度な労力を強いないことと、参加の敷居を低くすることです。テンプレートを配布したり、例示を示したりして、「自分もできそう」と思わせる工夫をしましょう。先述の日清の蓋ネタのように、ユーザーはただ写真を撮ってアップするだけで参加できるのが理想です。そのくらいハードルを下げることが、UGC爆発の秘訣です。

適切なタイミングで参入し継続的な発信を行う

ミームマーケティングは一発芸ではなく、継続戦で捉えることも重要です。もちろんバズは狙うものの、それを単発で終わらせずブランド力向上につなげるには、長期的な視点で戦略を組み立てる必要があります。
まず、参入のタイミングですが、これは前述の通り流行を見極め早めに乗るのが基本です。しかし、早すぎると誰もミームを知らない状態で企業だけ先走る形になり失敗します。逆に遅すぎると鮮度が落ちます。トレンド曲線を読み、拡散が広がり始める直前〜拡大期に差し掛かるあたりを狙うのが理想です。そのためには普段からの観測とある程度の勘が求められます。
そして一度ミーム活用を始めたら、継続的な発信を心がけましょう。とはいえ同じネタの引き延ばしは禁物です。そうではなく、「ミームを活用したカジュアルな投稿」という路線を継続するという意味です。例えば毎週一回はちょっと笑えるネタ投稿をするとか、日常的にフォロワーとのミーム的なやり取りを交えるとか、ユーザーとの接点を常に保っておくことが重要です。バズった時だけ現れてあとは知らん顔では、ユーザーも定着しません。
継続の中で大事なのは、クオリティコントロールです。ネタ切れだからといって無理に質の低いミームを投稿すると、途端に反応が鈍くなったり最悪炎上したりする可能性があります。受けないネタは潔く引っ込め、質を担保できる範囲で継続しましょう。社内でブレストを重ね、アイデアプールを常に用意しておくと安心です。
最後に、ミームマーケティングはトライアンドエラーでもあります。全部が当たるわけではないので、失敗したら素早く切り替え、成功パターンは深掘りしつつ次のチャレンジに活かす姿勢が大切です。継続的に挑戦することで、ブランドに合ったミーム活用の「型」が見えてくるでしょう。
以上がミーム活用成功のための主なポイントです。これらを踏まえて取り組めば、バズを生み出す確率も上がり、結果としてミームマーケティングの恩恵を最大限享受できるはずです。もっとも、どれだけ注意してもリスクはゼロではありません。次章では、ミーム活用に伴う炎上リスクとその対策について触れておきます。


ミーム活用に潜む炎上リスクとその対策:ネガティブ拡散や文化的誤解を防ぎ失敗を避けるポイントを徹底解説

ミームマーケティングには魅力が多い反面、誤った使い方をすると炎上(ネガティブな拡散)につながるリスクも孕んでいます。本章では、ミーム活用時に注意すべき炎上リスクの種類と、その対策について解説します。事前にリスクを理解し、適切な手を打つことで、大きな失敗を防ぐことができます。

企業イメージを損ねるネガティブなミーム拡散のリスク

最初に考えられるリスクは、ミーム自体がネガティブな文脈で広がってしまうことです。本来意図した内容と違う方向で受け取られたり、悪意を持って改変されたりしてしまうケースです。例えば企業が投稿したミームがユーザーに揶揄される対象となり、思わぬ形でバズってしまう、といったことが起こり得ます。
これは特にユーモアが伝わらなかった場合に起こりがちです。企業としてはウケを狙ったつもりが、「寒い」「滑ってる」と否定的に捉えられると、それ自体がネタにされ拡散する恐れがあります。また、競合他社をネタにする系統の投稿は、受け手によっては「感じ悪い企業だ」と悪印象を与えてしまうかもしれません。ウェンディーズはそのリスクを逆手にとって成功しましたが、綱渡りでもありました。
対策としては、投稿前に第三者視点でチェックすることが重要です。チーム内で「これは素直に笑えるか?嫌味に見えないか?」と検証しましょう。必要なら自社社員以外の人(家族や知人など)にも見てもらうと良いでしょう。それでも判断が難しい場合、無理に攻めたネタは避けるのも一つです。ブランドイメージを守ることを優先すべき局面では、安全策を取るのも経営判断として正しいかもしれません。
また、万一ネガティブ拡散が始まったときは、迅速に軌道修正することです。投稿を削除すべきか否か、釈明すべきか静観すべきかを速やかに決めます。炎上初期段階であれば誠意ある謝罪で沈静化することも多いですし、勘違いからの批判なら誤解を解く説明を入れる手もあります。ただし下手にユーザーと言い争うようなことは避け、あくまで冷静かつ丁寧な対応を心がけましょう。

文化・社会的な誤解や炎上の可能性

ミームには時に政治的・文化的な意味合いが含まれるものもあり、扱いを誤ると社会問題に発展する炎上につながることがあります。例えば、人種や性別に関するデリケートなネタをうかつに使うと差別的と批判される可能性があります。また、特定の地域や国でしか通じないブラックジョークをグローバル企業が発信してしまい、他の地域から反発を招くケースも考えられます。
特に国際的にビジネスを展開している企業は、各国の文化的背景に注意が必要です。ある国ではユーモアとして成立するものが、別の国ではタブーだったりします。グローバルミームを扱う際は、現地スタッフや専門家の意見を仰ぐのが望ましいでしょう。また昨今はポリティカル・コレクトネス(PC)の観点で様々な表現が問題視される時代です。ジェンダー、宗教、障がい等のテーマに関わるミームは避けるのが無難です。
炎上対策としては、投稿前のリスクレビューが欠かせません。考えられるあらゆる角度から、「誰かを不快にしないか」「差別的・攻撃的に解釈されないか」をチェックします。不安が残る場合は、そのミームの使用を諦める勇気も大事です。笑いが取れても信用を失ったら元も子もありません。
また、仮に炎上してしまった場合の対応策も用意しておくべきです。関係各所と相談し、謝罪文や訂正のフローを事前に決めておけば、いざというとき迅速に動けます。炎上が長引くほど被害は大きくなるため、初動の速さが命です。

炎上を防ぐための事前チェックとモニタリング

炎上リスクを抑えるためには、事前のチェック体制と公開後のモニタリングが重要です。投稿前チェックについては前述のとおりですが、もう一つ忘れてならないのは知的財産権や契約上の問題です。ミーム素材として画像や音源を使う場合、その権利クリアランスは事前に確認しておかないと後で訴訟リスクにもなり得ます(詳細は次章で触れます)。
公開後は、SNS上での反応を注意深くモニタリングしましょう。エゴサーチやモニタリングツールを使って、自社名や関連ハッシュタグと共にネガティブワードが出ていないかチェックします。批判的コメントがちらほら見え始めた段階で対処すれば、大炎上になる前に食い止められるかもしれません。具体的には、DMで苦情が来ていれば個別に謝罪・説明したり、コメント欄で誤解を解いたりします。
また、社内で危機対応チームを決めておくことも有効です。広報・マーケ担当だけでなく法務や経営層も含め、万一の際にすぐ協議できる体制を作っておきます。近年は炎上リスクに備えた「ソーシャルリスニング」を専門に行う会社もありますので、予算が許せばそうした外部パートナーを利用するのも選択肢です。

炎上発生時の迅速な危機管理対応

どんなに気を付けても、時には炎上が起きてしまうこともあるでしょう。その際の危機管理対応のポイントを押さえておきます。
まず、炎上に気付いたら初期対応を迅速に行います。事実関係の確認、社内報告、対応方針の決定まで可能な限り速く行いましょう。SNS上では1日も放置すれば火種が大きくなりかねません。対応方針としては、大きく「謝罪する」「説明する」「敢えて何もしない」の3択があります。
• 謝罪する場合: 明らかに自社に非がある・誤解を招いたと判断したら、公式アカウントで早期に謝罪文を出します。言い訳せず、簡潔に非を認め今後の改善策に言及するのがベターです。一度で鎮火しなくとも、誠意を見せることで過激なバッシングは和らぐことが期待できます。
• 説明する場合: ユーザーの誤解が原因で炎上しているなら、事実を丁寧に説明して誤解を解きます。ただし説明がまわりくどいとさらに火に油を注ぎかねないので、こちらも簡潔さが重要です。またユーザーに理解してもらえない可能性も考え、説明+謝罪をセットにする方が無難な場合もあります。
• 何もしない場合: 炎上といっても極一部の過激な人が騒いでいるだけで多数のユーザーはさほど問題視していない、というケースもあります。その場合、下手に触れず静観した方が鎮火が早いこともあります。ただし見極めを誤ると「だんまりを決め込んでいる」と批判されるリスクもあるため、慎重な判断が必要です。
いずれの場合も、ユーザーの声に真摯に耳を傾けている姿勢を示すことが大切です。さらに再発防止策を後日でも示せれば、「ちゃんと対応してくれた」と理解されるでしょう。炎上対応後は、社内で原因分析を行い、今後のSNS運用ガイドラインに反映させることも忘れずに。

ミーム選定時に考慮すべき倫理・コンプライアンス

最後に、ミームを選ぶ段階で考慮すべき倫理面・コンプライアンス面について整理します。これは上記までの点とも重なりますが、事前チェック項目として網羅的に認識しておくべきです。
• 社会的弱者やマイノリティを揶揄する内容でないか:先述のPCの観点です。人種、宗教、性別、身体的特徴、疾病などにまつわる敏感な話題は避けましょう。
• 公序良俗に反しないか:露骨な性的表現、暴力的表現、薬物や犯罪を連想させるものなど、公序良俗に照らして問題のないミームか確認します。
• 第三者を誹謗中傷しないか:個人や団体を侮辱・攻撃するような要素がないか見ます。競合をネタにする場合も、あくまでユーモアの範囲か慎重に判断する必要があります。
• 嘘やデマを拡散する恐れはないか:ネタ系とはいえ、事実誤認を広める結果になってはNGです。情報の正確性に留意しましょう。
• 社内規定や業界ルールに抵触しないか:自社コンプライアンスや広告表現の自主規制などにも注意。薬機法など業界ごとに広告で言ってはいけない表現もあります。
• ステルスマーケティングにならないか:ユーザー投稿を利用する際などに、きちんとPRである旨を示すなど透明性を確保します。ミームマーケでも消費者庁のステマ規制対象になり得るので注意が必要です。
以上を総合すると、「笑いを取るにも節度あり」ということです。面白さと倫理性・信頼性のバランスを取ることが、長い目で見てブランドを守り育てることにつながります。
この章で挙げたリスクと対策を念頭に置きつつ実行すれば、ミームマーケティングで大失敗する可能性はぐっと低くなるでしょう。次章では、今後ミームマーケティングがどのように発展していくか、その展望について考えてみます。


2025年注目の日本発ミーム一覧:エッホエッホ現象から猫ミームまで最新トレンドとなったネットミームまとめ

最後に、2025年現在日本で注目されているネットミームをいくつか紹介します。ミームマーケティングの参考として、どのようなネタが流行しているのか把握しておくことは有益です。ここでは最近話題になった国内発のミームをピックアップし、その概要を簡単に説明します。

エッホエッホ現象 — フクロウ画像とフレーズで共感を呼んだ2025年上半期の代表ミーム

概要: 「エッホエッホ現象」は2025年上半期を代表するネットミームです。きっかけは、オランダの写真家が撮影したフクロウのヒナの画像に、日本のTwitterユーザーが「エッホエッホ」という擬音と「○○って伝えなきゃ」というフレーズを組み合わせて投稿したことでした。その投稿が爆発的に拡散され、一種のフォーマットとして定着しました。
特徴: フクロウのヒナが必死に走るような姿に「エッホエッホ」(何かを運んでいる感じの擬音)という音を当て、「(大事なこと)って伝えなきゃ」と締める構文が、多くのユーザーに「かわいい」「わかる!」と刺さりました。シンプルで親しみやすいリズム感と、相手の気持ちを代弁するようなユーモラスな言い回しが共感を呼び、次々に真似やアレンジが生まれました。TwitterだけでなくLINEスタンプになったり、まとめ記事に取り上げられたりとSNS外でも話題に。企業アカウントが自社商品に絡めて「エッホエッホ」ネタを使う例も見られました。
マーケ活用のヒント: このミームは「動物×擬音×共感フレーズ」という鉄板の組み合わせでヒットしました。可愛い動物や擬音はユーザー受けしやすいこと、そして共感できるシチュエーションを盛り込むと拡散されやすいことを示しています。企業が類似のフォーマットを使うなら、自社キャラクターなどを可愛いテイストで描き、擬音+共感コメントを付けた画像を投稿するなどが考えられます。

今日ビジュいいじゃん — SNSで自己肯定感を高めたポジティブな流行フレーズ

概要: 「今日ビジュいいじゃん」はボーイズグループM!LKの楽曲「イイじゃん」の歌詞から生まれたネットミームです。楽曲のサビに含まれる「今日ビジュ(ビジュアル)いいじゃん」というフレーズがTikTokで流行し、ユーザーが自撮り写真や日常の写真にこの音源を重ねて投稿するチャレンジが広まりました。
特徴: 自分の容姿や雰囲気を「今日はイケてる!」とポジティブに表現するいわば自己肯定系ミームとして定着し、特にZ世代の間で日常的に使われるようになりました。学校や仕事に向かう朝の自撮り動画にこの音源を付け、「今日の自分イケてるじゃん」と気分を上げる内容が多く、多くの若者の共感を得ました。Twitterでも「今日ビジュいいじゃん」が決め台詞のように使われることが増え、明るく前向きなムードを作るフレーズとして人気です。
マーケ活用のヒント: このミームは、前向きな自己肯定メッセージが鍵でした。ネガティブになりがちな月曜朝でも「今日ビジュいいじゃん」と唱えることで元気が出る、というような使われ方です。企業がこのノリを活かすなら、ユーザーのポジティブな自己表現を後押しするようなキャンペーンが考えられます。例えばコスメブランドなら「#今日ビジュいいじゃんチャレンジ」を企画し、自撮り投稿を募集するといった具合です。ポジティブな流行語を絡めることで、明るく健康的なブランドイメージを演出できるでしょう。

猫ミーム — 猫の動画や画像が生む根強い人気のネットミーム

概要: 「猫ミーム」と一括りにしていますが、猫に関するミームはネット上で常に根強い人気を誇っています。2023〜2024年には特に猫が踊ったり鳴いたりする面白動画にキャッチーな音源を合わせた短尺動画がTikTokやTwitterで大流行しました。いわゆる「Nyan Cat」的なおもしろ猫動画から、可愛すぎる猫の写真に人間の気持ちを代弁させるようなテキストを載せたものまで、様々なバリエーションがあります。
特徴: 猫ミームの強さは、何と言っても猫そのものの可愛さ・面白さにあります。老若男女を問わず猫コンテンツは好まれ、シェアされやすい傾向があります。例えば月曜朝の憂鬱な気分を表すミームとして「布団から出たくない猫の写真+『月曜の朝の僕』」というミームは多くの人の気持ちを代弁し、SNSで頻繁に見かけます。猫の何気ない仕草や表情が、人間の日常の一コマとシンクロして共感を呼ぶのです。
マーケ活用のヒント: 猫ミームは王道中の王道なので、企業も取り入れやすいテーマです。ペットフード業界はもちろんですが、それ以外の業種でも「うちの公式キャラを猫化してみた」や「社内の猫好き社員の猫自慢投稿」など、猫要素を絡めると注目度が上がる可能性があります。ただしインターネット上にはすでに星の数ほど猫コンテンツがあるため、何かしら差別化の工夫をするとなお良いでしょう。ユニークな猫キャラを作る、流行の猫フォーマットに自社テイストを入れるなどが考えられます。

格付けミーム — 順位付けフォーマットで笑いを誘う画像ネタ

概要: 「格付けミーム」は、複数の対象をランク付けして比較する形式のネットミームです。例えば「A > B > C」のように優劣を付けたり、「○○ Tier List」と称してSランク〜Cランクまでに分類したりする画像が流行りました。2024年前後にTwitterでよく見られたもので、アニメキャラや有名人、日常の好物など、様々な題材で格付けがなされました。
特徴: 人々がそれぞれ自分の中のランキングを発表しあう遊びで、見る側も「わかる!」「いやこれは逆だろ」とツッコミながら楽しめるのがポイントです。いわゆるTier表(ティア表)を作成するカルチャーがゲーマー界隈などで元々あり、それが一般SNSにも波及した形です。一部にはフォーマット化された画像テンプレートも出回り、それに沿って投稿するユーザーも多く見られました。
マーケ活用のヒント: 格付けミームはユーザー参加型企画と親和性があります。企業アカウントが自社関連の何かを格付けして投稿し、ユーザーに「あなたのランキングも教えて」と呼びかければ、多くの人が便乗投稿してくれる可能性があります。ただし、自社商品を格付けするのは難しいかもしれません(特定の商品を低く評価できないため)。そこで関連する周辺ネタ、例えば飲料メーカーなら「夏の飲み物格付け」とか、ゲーム会社なら「好きな歴代ハード格付け」など、間接的に自社を絡めたテーマ設定が良いでしょう。
また、格付け結果そのものよりユーザーとのコミュニケーションを盛り上げる狙いでやるのがおすすめです。「なんで○○がAランクじゃないんだ!」といったリプライに対し、「個人的には○○も好きなんですが今回は…」などと軽くやり取りすることで、エンゲージメントが高まります。ただし炎上しないよう、公平性や冗談である旨は示しつつ行う必要があります。

きょういくばんぐみのテーマ — 教育番組風の楽曲がバズったSNSミーム

概要: 「きょういくばんぐみのテーマ」とは、あるVTuber(バーチャルYouTuber)が作成・歌唱した楽曲で、一見子供向け教育番組のような曲調でありながら中毒性のあるメロディがウケてネットミーム化したものです。2024年頃にTikTokでこの音源を使った「歌ってみた・踊ってみた」動画が続出し、関連動画が連鎖的にバズりました。
特徴: このミームのユニークな点は、ネット発VTuber文化とリアルの教育番組風ノスタルジーが融合しているところです。若年層にはVTuberという時代の先端感があり、年長者には昔懐かしい教育番組ソング調というギャップが受けました。ホロライブ所属のVTuber「儒烏風亭らでん」が歌った「まいたけダンス」(同じくバズった曲)と並んで話題になり、TikTokからTwitterへと横断的に広まりました。
マーケ活用のヒント: 企業がこのようなミームに乗る場合、音源の使用許諾などクリアすべき課題がありますが、基本的にはTikTok上で既存の流行音源を借りて動画を投稿するのは一般ユーザー同様可能です。ただ自社コンテンツとして二次利用するなら許可が必要でしょう。いずれにせよ、流行の音源やフォーマットを取り入れて自社PRするパターンは有効です。例えば社員総出でこの教育番組風ダンスを踊ってみて「我が社の親睦が深まりました」的な動画を出すなど、ユーモアと企業文化発信を両立できます。VTuberやネット音楽カルチャーに詳しいスタッフがいれば、そうした人材のアイデアを活かすと良いでしょう。

テトリス(柊マグネタイト) — 音楽ゲーム発の楽曲がTikTokでヒットしたミーム

概要: 「テトリス(柊マグネタイト)」は、音楽ゲームから人気に火がついた楽曲で、重音テトというボーカロイドキャラをフィーチャーした曲です。TikTokでダンスや映像編集に使われ、独特のリズムに合わせた投稿が多く作られました。2024年頃から「テトリスダンス」的なミームとして広まりました。
特徴: このミームは楽曲の中毒性と映像映えがポイントでした。音ゲー発祥だけあってテンポが良く、TikTokで短く切り取ってループ再生しても耳に残るサウンドです。ユーザーはこの曲に合わせて画面切り替えのトリック動画を作ったり、テンポにピッタリの振り付けを踊ったりといった楽しみ方をしていました。VTuberやアニメとの親和性も高く、オタク文化とTikTokトレンドがクロスオーバーした好例です。
マーケ活用のヒント: 音源系ミームに企業が参加する際は、公式アカウントでその音源を使った動画を出してみるのが手っ取り早いです。例えばPC・家電メーカーなら「テトリス」の曲に合わせて製品の組み立て風景を早送りで見せるとか、ファッションブランドなら店員がキレキレのテトリスダンスを踊ってみるなど、曲のリズムや雰囲気にマッチした映像を工夫します。音楽の力でユーザーの注意を引きつけられるので、メッセージを多少盛り込んでも嫌味なく見てもらえるでしょう。
注意点は、音源ミームの場合ブームの移り変わりが特に早いことです。一斉を風靡した曲も1ヶ月後には誰も使わなくなることもザラなので、出遅れないようにしましょう。

まいたけダンス — VTuber発のダンスミームが若者に拡散

概要: 「まいたけダンス」は、前述のVTuber儒烏風亭らでん(ホロライブ所属)が配信中に披露したダンスが由来のミームです。まるで舞茸を撒き散らすような奇妙な動きがウケて、ファンがそれを真似た動画を次々投稿しました。VTuber文化とTikTokダンス文化の融合として注目されました。
特徴: VTuber発ということで元々はネット内輪のネタでしたが、TikTokという拡散装置に乗ることでリアルの若者にも波及した点が特徴です。リズミカルでジワジワくる動きは言葉の壁を超えており、一部海外でもMaitake Danceとして話題になりました。バーチャルとリアルの垣根を超えたミームと言えます。
マーケ活用のヒント: 企業がこの手のミームに乗るなら、自社公式キャラクターや社員がそのダンスを踊ってみせる動画を出すのがわかりやすいです。ただし知らない人には全く意味不明な動きなので、「流行ってるのでやってみました!」と説明するなど一言添えると親切でしょう。むしろ重要なのはこの事例が示すVTuber×TikTokの組み合わせです。VTuberとコラボして商品PRするにしても、その動画をTikTokで拡散することでより広い層に届く可能性があります。VTuber関連ミームはオタク層だけでなく一般層への波及力も出てきているので、今後見逃せない領域です。

AI×ネットミーム — AI生成コンテンツが生んだ新たな笑いの潮流

概要: 2024年〜2025年には、AI技術の進展を背景にしたミームも登場しています。例えばX(Twitter)ではChatGPT同士に会話をさせたスクリーンショットがミーム化したり、TikTokでは「AIが作った奇妙な画像」にタグ付けして投稿する流行が起きました。AIと人間の共同作業(?)による新たなユーモア文化が確立しつつあります。
特徴: AIミームの特徴は、予測不能な面白さにあります。AIが作り出す文章や画像は時に人間の常識を外れたおかしなものになり、それがシュールな笑いを誘います。例えば「AIに◯◯を描かせたらとんでもない絵が出てきたw」といった投稿が多数シェアされました。また、生成AIがまだ不完全なために起こる誤答や珍回答そのものがネタにされることもありました。
マーケ活用のヒント: AIミームは新しい領域ですが、企業も実験的に取り入れてみる価値があります。例えば自社に関する質問をChatGPTに聞いてみて、面白い誤回答が出たら「AIも知らなかった当社の秘密!」的にネタにすることも可能でしょう。また、「AIに自社キャラの新デザインを考えさせてみた」など企画要素にすることも考えられます。ただしAI生成物の扱いには著作権等の課題もあるため、公開範囲は注意しましょう(次章でもAIと著作権問題は触れます)。
AIは今後も急速に進化するため、AIミームも刻一刻と変化していくでしょう。最新の技術トレンドにアンテナを張りつつ、面白い使い方がないか模索することが求められます。
以上、2025年時点で注目すべき日本発ミームを紹介しました。これらは日々TwitterやTikTokで大量に消費され、新しいものがまた生まれてきています。マーケターはこうしたトレンドをウォッチし、自社で活用できそうなものがないか嗅覚を働かせることが重要です。最後に、今後のミームマーケティングの展望についてまとめます。


TikTok・X(旧Twitter)連動事例:クロスプラットフォームでの拡散成功例と連携戦略を徹底解説

SNSプラットフォーム間の垣根が低くなった現在、TikTokとX(旧Twitter)を連動させたミームの拡散も多く見られます。本章では、TikTok発のミームがXで広がった例、逆にX発のミームがTikTokで再ブレイクした例など、クロスプラットフォームで成功した事例を紹介し、そこから得られる連携戦略のポイントを解説します。

TikTok発ミームがXでバズった例

事例: 最近の例として、前述の「今日ビジュいいじゃん」はTikTokで流行した音源&ハッシュタグチャレンジでしたが、そのフレーズがXでもトレンド入りし、多くのユーザーがツイートで使うようになりました。元々TikTokで動画を見ていたユーザーがX上でも口癖的に使い始め、それをきっかけにTikTok非利用者にも広まった形です。
他にも、TikTokで人気になったダンスやコメディ動画が切り抜かれてX上で拡散されることは日常茶飯事です。例えばTikTokの有名クリエイターが作ったショートコント動画がXに転載されてバズり、「元ネタはTikTokか!」と話題になることもあります。TikTokのショートフォーム動画文化がXというテキスト中心プラットフォームにも影響を与えているのです。
分析: これらから分かるのは、プラットフォームを超えて面白いものは面白いということです。TikTokでバズる動画は短くてインパクトがあるので、Twitter民の注意も引きつけやすい傾向にあります。特に日本ではTikTokの内容をXでシェアする若者も多いので、TikTok発トレンドがXに輸入されやすい土壌があります。
連携戦略: 企業側はTikTokで流行の兆しがあるネタを見つけたら、一歩早くX上でも展開してみると良いでしょう。例えばTikTokの人気音源を使った動画をTwitterに投稿(動画はそのまま転載せず自社オリジナルで作成)し、「TikTokで話題の○○をやってみた」と紹介する。そうすると、TikTokを見ている層には馴染みがあり、見ていない層には新鮮なコンテンツとして映ります。クロスプラットフォーム投稿により、異なるユーザー層への二重露出を狙えるわけです。

X発ミームがTikTokで再ブレイクした例

事例: X(Twitter)初出のミームがTikTokで再注目を浴びるケースもあります。有名なのは「香水飲みたい5000兆円欲しい」といったフレーズ系ミームです。例えば「5000兆円欲しい!」というフレーズは元々Twitter発の文字ミームでしたが、後にTikTokで音源化され、関連動画が作られたりもしました。文字ベースのネタが音声や映像という新たな命を与えられて蘇った一例です。
また、Twitterの大喜利的トレンド(例:#突然○○が来た時の反応)が、TikTokでテキスト動画化されて再度ブームになることもあります。Xでは文字と静止画で共有されていたネタを、TikTokユーザーが動画フォーマットで表現し直すことで新鮮さが生まれるわけです。
分析: これはコンテンツのメディアミックスとも言えます。一つの面白ネタを複数の表現形式に展開することで、新しい視聴体験を提供できるということです。Twitterで見慣れたネタでも、TikTokで動画になるとまたウケることがあります。特にTikTokユーザー層(より若年)がTwitterミームを後追いで知るパターンも多いです。
連携戦略: 企業としては、自社発のTwitterミームをTikTokでも活かすことが考えられます。もしTwitterでうまくバズった自社ネタがあれば、それを元にした動画をTikTokに投稿してみましょう。たとえばTwitterで人気を博した画像ネタがあれば、それを素材に縦型動画にアレンジしてTikTokに上げる感じです。「Twitterで○○がバズったので動画にしてみた」と説明すれば、双方のプラットフォームのユーザーに楽しんでもらえます。
逆に、まだTwitterでしか出していない面白企画があるなら、最初からTikTokとセットで実施するのも良いでしょう。Twitterでハッシュタグキャンペーン+TikTokで動画チャレンジを同時展開することで、相乗効果が期待できます。

企業によるTikTok・X同時活用のプロモーション

事例: 最近増えているのが、企業がTikTokとX双方の公式アカウントを連携させたプロモーションです。例えばある食品メーカーはTikTokでユーモアCM動画を出しつつ、Twitterではそのメイキング画像や補足ネタを投稿しました。TikTokで動画を見た人がTwitterでも関連投稿を見ることで理解が深まったり、逆にTwitterで興味を持った人がTikTokで動画を見に行くという動線が生まれました。
また、キャンペーン応募をTwitterで受け付けつつ、TikTokで参加動画を募るといった組み合わせも行われています。「TikTokに動画投稿→応募はTwitterで指定ハッシュタグを付けて報告」などの仕組みにすることで、両方の盛り上がりを可視化・拡散しました。
分析: これらはクロスプロモーションの例で、現代の若者は複数SNSを併用していることを踏まえた戦略です。TikTokで一方的に動画広告を流すだけではもったいない、Twitter上のコミュニケーションにも繋げようという狙いが見えます。特にTwitterはユーザーとの対話・情報拡散に強いので、TikTokで種まき→Twitterで拡声器、という役割分担ができています。
連携戦略: 企業はキャンペーン設計時に複数SNSの連動を仕込むと効果的です。TikTokで動画視聴を促しつつ、Twitterでハッシュタグトレンドを狙う、Instagramではビジュアル面を補強する、といったマルチチャネル展開も考えられます。その際、各プラットフォームの得意分野(TikTok:バズ動画、Twitter:拡散・話題化、Instagram:ブランドイメージ構築など)を意識し、コンテンツを微調整することが成功のポイントです。
具体的には、プラットフォームごとにフォーマットを変えることです。TikTok用には全画面動画、Twitter用には字幕付きダイジェスト動画や画像、という風に適した形式で投稿します。内容が連動していることは明示しつつ、それぞれ単体でも楽しめるよう工夫すると、ユーザーの満足度が上がります。

プラットフォームごとの拡散スピードと規模の違い

TikTokとXでは、同じミームでも拡散スピードや規模に違いが見られます。一般にTikTokの方が急速にバズが広がりやすい一方、Twitter(X)の方がじわじわ長期間語られることが多いです。またTikTokは国内外関係なくアルゴリズムで広がるので国境を超えやすいのに対し、Twitterは言語圏コミュニティ内で広がりやすいという傾向もあります。
例えば、TikTokで1日で100万再生達成した動画があったとしても、Twitterでは同じ日に100万インプレッションというのは稀です。ただTwitterではリツイート等でログが残るため、1週間かけてじわじわ100万達成することもあります。TikTokはトレンドサイクルが極めて短く、翌週には忘れ去られることも多いですが、Twitterは引用RT等で後から掘り返されることもあるので、記録性が高いとも言えます。
この違いを踏まえ、企業は短期決戦と長期戦を組み合わせた戦略が考えられます。TikTokで瞬間最大風速を狙って話題を作り、Twitterで持続的な話題化とフォローアップ情報の提供を行う、といった流れです。実際、TikTokで火が付いたネタを公式Twitterで「多くの反響ありがとうございます!」とまとめたり、裏話を語ったりするブランドもあります。そうすることで両方のユーザーにリーチでき、バズの効果を底上げできます。

クロスプラットフォーム展開で得られる相乗効果

クロスプラットフォーム展開の最大のメリットは、ユーザー層の裾野を広げられることです。TikTok中心の若年層とTwitterに多い社会人層、その両方に接触できれば市場規模は単純に2倍近くなります。また、一方で見たコンテンツを他方でも目にすると、印象が強化され記憶に残りやすくなる効果もあります(単純接触効果のマルチチャネル版と言えるでしょう)。
さらに、片方のプラットフォームでの反応をもう一方で紹介することで、社会的証明にもなります。例えば「Twitterで○万人がいいねした動画」と言えばTikTokユーザーも「そんな人気なら見てみよう」となりますし、その逆もまた然りです。プラットフォーム同士がお互いのコンテンツを補完し、信頼性や話題性を高め合うのです。
ただし、相乗効果を得るには一貫したメッセージと適切な誘導が必要です。動画内や投稿文に他プラットフォームへの誘導(CTA)を入れる、プロフィールに他SNSのリンクを貼るなどして、ユーザーが行き来しやすい導線を整えましょう。また、両方で見た人にとって重複感が少ないよう、微妙に内容を変えたり追加情報を載せたりする工夫も有効です。
以上、TikTokとXの連携事例と戦略について述べました。複数SNSを組み合わせることで、ミームマーケティングの威力は倍増します。自社のリソースや得意分野に応じて、どちらか一方ではなくマルチチャネルでのミーム活用を検討してみると良いでしょう。続いて最終章では、ミームマーケティングの今後の展望についてまとめ、将来どのように発展していくかを考察します。


ミーム活用における著作権など法的・倫理的注意点:著作権・肖像権から倫理面まで遵守すべきルールとリスク回避策

ミームマーケティングを行う際には、クリエイティブ面の工夫だけでなく法的・倫理的な注意点も把握しておかねばなりません。本章では、著作権や肖像権などの法律上の問題、および社会倫理の観点から企業が留意すべきルールとリスク回避策について説明します。法律違反や不適切表現でトラブルにならないよう、しっかりと対策を講じましょう。

ミーム利用における著作権侵害のリスク

まず最も気を付けるべきは著作権の問題です。ネットミームの多くは誰かが作った画像や動画、イラスト、音楽などを素材にして生まれています。それらを企業が無断で使用すると、著作権侵害に該当する可能性があります。特に営利目的で利用する場合は個人のファン活動以上に厳しく見られるため、注意が必要です。
例えば、有名な映画のワンシーンをキャプチャして文字を入れた画像ミームがありますが、その映画画像には当然著作権があります。企業アカウントがそれを勝手に広告ツイートに使えば、本来なら許諾を取らねばなりません。同様に流行の曲の一部分を勝手にCMに流用したりすれば、作曲者・レコード会社から訴えられるリスクもあります。
では、既にSNSで多く出回っているミーム素材なら使ってもいいのか?という疑問がありますが、厳密には出回っていることと合法かは別です。単に黙認されているだけで、企業が使うとなれば権利者も黙っていない場合があります。特に海外の版権物や人気IPを絡めたミームは要注意です。
対策: 著作権リスクを避けるには、できる限り自前素材やフリー素材でミームを作ることです。例えば映画の代わりに自社キャラや社員の写真を使ってパロディする、流行曲の代わりにフリー音源を使うなどです。それでも元ネタの雰囲気は出せる場合があります。また、どうしても既存の著作物を使いたい場合は、正規の方法でライセンス許諾を取得しましょう。音楽レーベル等には企業向けに人気曲の利用を許諾するサービスもあります。
一方で、引用の範囲であれば認められるケースもあります。著作権法上、「正当な範囲内での引用」は許されます。例えば自社ブログで研究記事を書く際にミーム画像を少し載せる程度なら引用と見なされることも。ただしSNS投稿での引用はグレーゾーンなので、可能な限り避けるのが無難です。

肖像権・パブリシティ権への配慮

次に肖像権やパブリシティ権についてです。ミームには有名人や一般人の顔が使われることもあります。たとえば「あの芸能人の変顔写真に面白テキストを載せる」といったミームはよく見かけます。しかし、その芸能人の許可なく企業広告にその画像を使えば、肖像権やパブリシティ権の侵害となる可能性があります。
肖像権とは本人の許可なく写真や映像を公開されない権利、パブリシティ権とは有名人の肖像を商品や宣伝に無断で利用されない権利です。個人が勝手に作るネットミームならまだしも、企業がそれを二次利用するのはリスクが高いです。特に海外セレブのミームなども出回りますが、その本人はまさか日本企業が宣伝に使っているとは思わないでしょうから、もし知られたら訴訟に発展する恐れもあります。
対策: 有名人の顔や名前を使ったミームは基本的に使わないのが安全です。どうしてもコラボ的に使いたい場合は、正式に契約を結びましょう。例えばある俳優のミームを使ったキャンペーンをしたければ、その俳優と広告契約を結ぶ必要があります。コストはかかりますが、法的リスクには代えられません。
一般人の写真でも注意が要ります。街中の写真に偶然写り込んだ人を素材にするような場合、その人が特定できると肖像権問題になる可能性があります。モザイク処理するなどプライバシー保護を徹底しましょう。

オリジナル制作者へのリスペクトと許諾

ミームの中には、ある個人クリエイターが作った画像や漫画が元ネタとなって流行するものもあります。その場合、オリジナル制作者への敬意と可能なら許可を取ることが望ましいです。例え著作権法上グレーでも、筋を通すことでトラブルを防ぎファンの共感も得られます。
例えばTwitterでバズった個人のイラストミームを企業アカウントが引用してキャンペーンに使いたいなら、DMなどで「使わせていただいてよろしいですか?」と尋ね、許可をもらうのが理想です。相手の名前も明記すれば感謝されるでしょうし、万一後で不快に思われても許諾を取っていれば揉めにくいです。
また、ミームを二次創作する際は出典を示すのもマナーです。「元ネタは○○さんの投稿です」と一言添えるだけでも印象は全く違います。制作者をリスペクトしている姿勢が見えれば、ユーザーからの心象も良くなります。
さらに言えば、企業がミーム制作者に正当な報酬を払ってコラボするのも今後増えるかもしれません。有名なミームクリエイターを広告クリエイターとして起用する形です。その方が権利関係もクリアになり、オリジナリティあるコンテンツも作れます。

社会・倫理的に不適切な表現への注意

法に触れなくとも、倫理的に不適切なミーム表現は避けるべきです。例えば過度に下品・卑猥なネタ、暴力的であったり他者を嘲笑するようなネタ、差別的な含みのあるネタなどです。前章でも触れましたが、こうしたものは炎上リスクも高く、企業の社会的信用を損ないます。
また、時事問題に絡めたミームも注意です。政治的・宗教的なネタに踏み込むと、どこかで必ず反発が起きますし、災害や事件を揶揄するようなことがあれば極めて不謹慎です。笑いのためとはいえ、超えてはいけないラインはあります。
対策: 倫理面は社内規定や広告倫理コードなどを参照し、社内チェックでリスクのある表現を排除します。広告業界には「差別表現の禁止」「誇大表現の禁止」等の規範があります。ミームだからといってそれらが免除されることはありません。むしろライトに見える分、無意識にNG表現を使ってしまわないよう細心の注意が必要です。
例えば、外見に関するネタ一つとっても「太っている人」を笑いものにするような構図は避ける、「男女の役割ステレオタイプ」を助長しない等、気を配るポイントは多岐にわたります。多様性や人権への配慮は昨今特に重視されますので、その観点で投稿前にダブルチェックする仕組みを作りましょう。

各SNSプラットフォームのガイドライン遵守

SNSプラットフォームごとにコミュニティガイドラインや利用規約が定められています。ミーム関連では、暴力・ヘイト・性的コンテンツなどを禁止する規定、著作権侵害コンテンツの通報制度などがあります。企業アカウントとして活動する以上、各プラットフォームのルールは必ず守らねばなりません。
例えばTwitterではヘイトスピーチ禁止、偽情報拡散禁止等があり、違反するとアカウント凍結もあり得ます。TikTokもコミュニティガイドラインが厳しく、露骨な下ネタ動画等は削除対象になります。YouTubeでは著作権フィルターが強力で、無断使用の音楽が含まれると収益化できないどころか削除されることもあります。
対策: 担当者は主要SNSのガイドラインに目を通しておき、違反しない範囲でミームを作成することを徹底しましょう。特にユーザー生成コンテンツを募る場合、ユーザー側が規約違反コンテンツを投稿しないよう注意書きをしたり、投稿をチェックする体制を敷いたりする必要があります。
また、不注意でガイドラインに触れる投稿をしてしまった場合、早急に自主削除するなどプラットフォーム側に先手を打つことも大切です。運営から指摘される前に取り下げれば、大事に至らないこともあります。普段からSNS運営会社の発表やアップデート情報にもアンテナを張り、ルール変更にも対応できるようにしましょう。
以上、法的・倫理的な注意点を網羅しました。まとめると、「他人の権利を侵害しない」「社会常識の範囲で行う」「ルールを守る」という当たり前のことを、ミームマーケティングでもおろそかにしないことが肝心です。笑いを追求するあまり一線を越えないよう、企業としての良識を持って取り組みましょう。


今後のミームマーケティング展望:進化するSNS戦略の未来を展望し、次なるトレンドと可能性を徹底予測!

最後に、ミームマーケティングの今後について展望します。SNSやデジタル文化の変化が激しい中、ミームの形もマーケティング手法も日々進化しています。これからどのようなトレンドが生まれ、企業はどのように対応すべきか、いくつかの視点から未来予測してみましょう。

ミームマーケティングのさらなる普及と定着

まず考えられるのは、ミームマーケティング自体がより一般的な手法として定着していくことです。現在は一部先進的な企業やSNS上手な企業が取り組んでいる印象ですが、今後は中小企業や伝統的企業まで広く採用する可能性があります。理由として、SNSネイティブ世代が増えるほど、ミーム的なコミュニケーションが標準化するからです。2025年現在でも、公式アカウントが軽いネタを投稿することへの抵抗感は薄れてきています。
したがって、近い将来マーケティング担当者は誰もがミームマーケの基礎知識を持つようになるでしょう。セミナーや書籍で「ミーム活用術」が語られ、専門のコンサルティング会社が乱立するかもしれません。ミームマーケが珍しくなくなれば、ユーザー側も洗練された目で見てくるので、より質の高いミームを提供できる企業だけが注目される、という淘汰も起こるでしょう。
言い換えれば、ミームマーケティングが当たり前になると、下手なものはすぐスルーされます。企業間競争も激化する可能性があります。従って、ただ流行に乗るだけでなく、自社独自のユーモア路線やコミュニティを育てていくことが大切になるでしょう。

AI技術の進化による新たなミーム創出

AIの進歩はミームの世界にも大きな変革をもたらすはずです。既に触れたようにAI生成コンテンツ自体がミームになりつつありますが、さらに将来的にはAIが自動でバズるミームを生み出すようになるかもしれません。AIがネット上のデータを分析して「次に流行りそうなフォーマット」や「受けるネタ要素」を提案し、それを基にコンテンツを生成してくれるイメージです。
実際、マーケティング分野でもAIによるトレンド予測は進んでいます。これをミームに応用すれば、「来週あたり猫+テクノロジー系のネタが来そう」とAIが検知し、先手を打って関連ミームを投稿…なんてことも可能かもしれません。まさにアルゴリズムマーケティングの極致です。
また、AIの画像生成・動画生成がもっと高品質にリアルタイムになれば、企業はネタを思いついたその場でAIに指示しミーム素材を作成→即投稿というスピード感が出せます。クリエイティブ制作のリードタイムが飛躍的に短縮されれば、流行への対応力は格段に上がります。ただし前章で述べたような著作権問題(AI学習データ由来の権利)などには引き続き注意が必要です。
総じて、AIはミームマーケの下支えとして重要度を増すでしょう。人間のセンスとAIのデータ処理能力を掛け合わせ、より的確かつ素早いミーム戦略が可能になると考えられます。

ミームのライフサイクル短期化と適応戦略

インターネット文化のスピードは年々加速しています。ミームのライフサイクル(流行→拡散→消費→廃れるまで)はさらに短期化するでしょう。ひとつのネタにみんなが飽きるまでの時間が早くなり、新ネタへの移り変わりがますます速くなると予想されます。
これは企業にとってはチャンスと負担の両方です。チャンスなのは、新規参入の余地がどんどん出てくることです。毎週毎月違うネタが生まれるので、それだけ乗れる波も多いということです。負担なのは、それについていく労力が大きいことです。従来以上にフットワーク軽く、多作速攻でコンテンツを出し続けなければ存在感を維持できなくなるかもしれません。
適応戦略として、社内体制を機敏にすることが求められます。決裁プロセスを簡略化し、SNS担当チームにある程度自由裁量を与えて即日投稿できるようにするなど、スピード重視の運用に移行する必要があるでしょう。または、常時監視・投稿のできる外部エージェンシーと契約するのも一つの方法です。
もう一つは、ミームそのものをシリーズ化・資産化するアプローチも考えられます。例えば企業オリジナルのキャラクターミームを作り、それを息の長いコンテンツに育てることで、個々の流行に左右されにくくする方法です。自社発のミームが定番化すれば、流行の波にもまれず自前で継続的にエンゲージメントを得られます。ただこれは難易度が高いので、次に述べるコミュニティ形成と合わせた戦略が必要です。

グローバル化するミーム文化へのローカル対応

ミームはグローバル化が進むと同時に、各国ローカルな文脈との融合が起きるでしょう。日本発ミームが海外で受けたり、海外発が日本流にアレンジされたりするのは今後ますます増えると考えられます。そうなると企業も、グローバル視点とローカル視点の両立が必要になります。
例えば日本企業が海外市場向けにミームマーケをする際、その国で流行っているネタを使うのはもちろんですが、日本の会社らしさも織り交ぜるとユニークになるかもしれません。逆に海外のミームを日本キャンペーンに輸入する際も、そのままではなく日本人好みにローカライズすると効果が出るでしょう。
今後は、各国のミーム専門家のような役割も出てくるかもしれません。グローバル企業では各リージョンのSNS担当が集まり、「こちらではこのネタがウケてる」「日本ではこれに似た○○ってネタがあります」など情報共有し合う場が重要になるでしょう。国境を越えるミームをいち早くキャッチし、適切に翻訳・適応できるかが鍵となります。
テクノロジーの面では、自動翻訳や字幕生成の精度向上がミームの国際流通を後押しします。言葉の壁が低くなれば、海外の面白動画もすぐ翻訳されバズる時代です。その分、文化摩擦も起きやすいので、前章で述べたような倫理チェックはグローバル基準で行う必要が出てくるでしょう。

ブランドと消費者の関係性の変化と未来像

ミームマーケティングの広がりは、ブランドと消費者の関係にも変化をもたらしています。以前は一方的にメッセージを発信していた企業が、今やユーザーと一緒にネタで笑い合うフレンドリーな関係を築けるようになりました。今後この傾向はさらに進み、境界が曖昧になっていくかもしれません。
将来的には、ユーザーコミュニティの方が主体となってブランドのミームを作り出し、企業はそれをサポートする側に回る構図も考えられます。例えばファンが自発的にブランド関連のミームを作り、それが人気になったら企業が公式に採用して商品化したりキャンペーンで使ったりする、といった流れです。既に「ユーザーが作ったCM映像が公式採用される」ような事例も出てきていますが、ミームでも同様のことが起こるでしょう。
要するに、ブランドはより開かれた存在になるということです。消費者を笑わせ楽しませる存在であると同時に、消費者から笑わせてもらう存在にもなる。相互にコンテンツを提供しあう双方向関係が深まれば、単なる購買以上のエンゲージメント、ファンコミュニティが形成されます。これこそミームマーケティングの究極の姿かもしれません。
ただ、その未来像に至るには企業文化の変革も必要でしょう。ユーザーを信頼し、時には主役の座を譲るくらいの懐の深さが求められます。またユーザー側も、企業を単なる営利企業ではなく、一緒に遊べる存在と見るようになるかもしれません。その境地に達したブランドは、まさに愛されるブランドとして長く支持されていくことでしょう。
以上、ミームマーケティングの未来展望を述べました。まとめると、ミームマーケはこれからもSNS戦略の花形として進化し続け、AIやグローバル化の波を受けつつ、ブランドとユーザーの距離をさらに縮めていくことになりそうです。企業マーケティング担当者は常に新しい潮流に目を光らせ、柔軟かつ迅速に対応することで、この波を大いに活用していってください。


以上、ミームマーケティングの概念から事例、成功のポイント、リスク、最新トレンド、そして未来展望まで包括的に解説しました。ミームは一過性の流行ではなく、現代のコミュニケーション文化そのものです。それをマーケティングに取り入れることは、ユーザーとの共感を創出し、ブランドを身近に感じてもらう絶好の機会です。ぜひ本記事の内容を参考に、安全かつ効果的なミームマーケティングにチャレンジしてみてください。あなたのブランドにも「バズる喜び」と「ファンと笑い合える幸せ」が訪れることを願っています。

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