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PR(パブリック・リレーションズ)とは?広報との違いと定義・手法・効果測定

PR(パブリック・リレーションズ)とは?広報との違いと定義・手法・効果測定

PRはPublic Relations(パブリック・リレーションズ)の略で、組織がステークホルダーと双方向のやり取りを重ね、望ましい関係を築いて維持する経営機能を指します。よく検索される「PRと広報は何が違うのか」という問いには、日本広報学会が2023年に公表した定義がはっきり答えを出しています。学会は「広報」「パブリック・リレーションズ」「コーポレート・コミュニケーション」を同じ意味の概念として扱うと明記しました。この記事では、主要団体の定義を原文で並べたうえで、広報部門が担う5つの機能、実務で使う手法と法規制の線引き、そして国際基準が広告換算値(AVE)を無効な指標と断じている効果測定の話までを、一次資料に当たって整理します。

まとめ:PR(パブリック・リレーションズ)の要点

  • PRはPublic Relationsの略で、日本語の「広報」にあたります。日本広報学会は2023年の定義で、広報・パブリック・リレーションズ・コーポレート・コミュニケーションの3語を同義として扱うと明記しました。
  • 学会定義の全文は「組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。」です。主体には企業だけでなく行政機関や個人も含まれます。
  • 広告との違いは媒体の掲載枠を買うかどうかですが、これはPR全体ではなくパブリシティの特徴です。PRにはオウンドメディアやスポンサーシップのように費用を伴う手法も含まれます。
  • 日本パブリックリレーションズ協会は、広報・PRの機能を広聴・情報参謀・社内広聴・社内広報・対外広報の5つに整理しています。対外的な情報発信はそのうちの1つにすぎません。
  • 効果測定の国際基準であるバルセロナ原則は2025年6月にV4.0へ更新され、原則5で広告換算値(AVE)を「無効な指標」として名指しで否定しています。EMV(Earned Media Value)など別名で呼ばれる同じ指標も対象です。
  • 広報部門の生成AI導入率は、日本広報学会の調査で2024年の37.2%から2025年は77.0%へ上昇しました。用途の最上位はプレスリリース類の作成です。

PRとは何の略か:読み方と主要な定義

PRの正式名称と日本語での位置づけ

PRはPublic Relationsの頭文字です。日本語では「ピーアール」と読み、「パブリック・リレーションズ」とカタカナ表記されることもあります。直訳すれば「公衆との関係」ですが、実務では組織とステークホルダーの関係づくり全般を指す言葉として使われます。

ここで注意したいのは、日常語の「PR」がしばしば「宣伝する」「売り込む」という意味で使われている点です。就職活動の「自己PR」や、店頭の「PR価格」がその例にあたります。自己PRの「PR」は自己アピールの意味で使われますが、本記事で扱う経営機能としてのPRは、一方的に売り込む活動ではなく、相手の反応を受け取って自らを修正することまでを含む双方向の営みです。この違いを押さえておかないと、以下の定義がどれも読みにくくなります。

主要団体によるPR定義の原文比較

PRの定義は1つに収束していません。日本広報学会自身が、定義プロジェクトの背景説明で「広報の定義については、世界中で多くの実務家や研究者によって議論が行われてきたにもかかわらず、結論が出ていない」と書いています。主要な団体・文献の定義を、発表年と出典が確認できる形で並べます。

出典 年 定義(要点)
PRSA(米国パブリックリレーションズ協会) 1982年 組織とそのパブリックが相互に適応し合うことを助ける
PRSA 現行定義 2012年 組織とそのパブリックの間に相互に利益のある関係を築く戦略的なコミュニケーションのプロセス
加固三郎 1969年 公衆の理解と支持を得るため、自己の目指す方向と誠意を伝え、説得し、同時に自己匡正をはかる継続的な対話関係
日本パブリックリレーションズ協会 倫理綱領 2016年採択 ステークホルダーおよび社会との間で健全な価値観を形成し、継続的に信頼関係を築くための活動
日本広報学会「広報概念の定義」 2023年 多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能

PRSAは、初期の定義がプレスエージェントリー(記事の売り込み)とパブリシティを強調していたのに対し、より新しい定義は「エンゲージメント」と「関係構築」の概念を取り込んだと説明しています。1982年に採択した定義は「Public relations helps an organization and its publics adapt mutually to each other.」で、現在も有効とされる定義が「Public relations is a strategic communication process that builds mutually beneficial relationships between organizations and their publics.」です。片方向の売り込みから、相互適応、そして相互利益の関係構築へ、という重心の移り方がそのまま読み取れます。

現行定義の決め方も特徴的です。PRSAの沿革によれば、同協会は2011年に定義を現代化するための1年間のクラウドソーシング・キャンペーンを実施し、その結果として2012年に現行定義を採択しました。定義を専門家の会議室だけで決めず、公募の形で議論にかけたという経緯自体が、パブリック・リレーションズという分野の性格をよく表しています。

主要なPR定義に共通する双方向性と関係構築

年代も国も違う定義が並んでいますが、共通項は明確です。第一に、伝えるだけでなく受け取ることを含む双方向性。第二に、単発の露出ではなく関係を継続的に維持すること。第三に、その関係が組織側の一方的な利益ではなく相互の利益、あるいは社会的に望ましい状態に向かうこと。日本広報学会は双方向コミュニケーションを「コミュニケーションのループ」と表現し、その過程では広報の主体による「自己修正」も求められると解説しています。相手の反応によって自社の行動が変わりうる、という点がPRを宣伝から分ける決定的な線です。

PRと広報の違い:日本広報学会が示した「同義」という結論

日本広報学会が同義とする3つの広報概念

「PRと広報の違い」は繰り返し検索される問いですが、日本広報学会の公式定義はこの問いに正面から答えています。学会は定義の解説で「本定義では、『広報』『パブリック・リレーションズ』『コーポレート・コミュニケーション』は同じ意味を持つ概念として捉え、便宜上、日本語表現としての『広報』を用いる」と明記しました。そのうえで、3つの概念には細かいニュアンスの違いがあり、どちらかを上位概念とみなす考え方もあるが、過去の文献や議論をたどると本来の意味として示されてきた内容は基本的に同じである、と説明しています。

この定義は思いつきで出されたものではありません。学会は2021年に「新たな広報概念の定義」プロジェクトを立ち上げ、約2年をかけて定義を作成しました。目的として挙げられているのは、広報に対する共通認識の形成、隣接領域との関係の明確化、広報領域の地位向上の3点です。定義文の全文は次のとおりです。

「組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。」

要素ごとの解説も公開されています。主体に「個人」を含めたのは、オウンドメディアやSNSの普及でアスリートや芸術家が自ら事業目的で広報できるようになったためです。客体を「パブリック」ではなく「ステークホルダー」としたのは、パブリックが抽象的な概念であるのに対し、ステークホルダーのほうが主体との関係を具体的に意識しやすいという判断によります。そして「経営機能」という分類は、広報を人事機能・マーケティング機能・販売機能・財務機能と並ぶものとして位置づける宣言です。

それでも実務で呼び分けが残る理由

概念として同義でも、現場の言葉づかいには違いが残ります。社内の部署名には「広報部」「コーポレートコミュニケーション部」などが使われ、社外の専門会社は「PR会社」「PRエージェンシー」と名乗ることが多いという具合です。「広報担当を採用する」と「PR会社に依頼する」は、どちらもパブリック・リレーションズの話をしていますが、指しているのは組織の内と外です。両者の差は概念の違いというより、担い手が社内か社外かという体制の違いだと理解したほうが実態に合います。定義の違いを探して混乱するより、誰が何の責任を負うのかで整理したほうが実務は動きます。

広告とパブリシティの媒体費・編集権の違い

一方、広告との違いは概念のレベルで明確です。広告は媒体の時間や掲載枠を有料で利用し、媒体審査や契約の範囲内で広告主がメッセージを統制しやすい手法です。PRの手法のうちパブリシティは枠を買わないため、記事として取り上げられるかどうかや、どう書かれるかを自社では決められません。この統制できなさと引き換えに、第三者が選んで伝えたという事実そのものが信頼の源になります。

観点 広告 PR(パブリシティ)
媒体費 支払う 支払わない
掲載の可否 媒体審査を経て出稿できる 媒体側が決める
内容の統制 広告主が統制しやすい 媒体側が編集する
受け手の受け止め 企業からの主張 第三者による評価
主な対象 見込み客・消費者 全ステークホルダー
時間軸 出稿期間で完結しやすい 関係の継続を前提とする

広告そのものの語義・語源や種類の整理はアドバタイジングとは?意味・読み方・語源と広報との違い、広告の種類を解説で詳しく扱っています。ブランドの文脈で企業全体をどう見せるかという論点はコーポレートブランディングとは何か?その意味・定義と企業価値向上につながる役割を基礎からわかりやすく解説を参照してください。

広報・PRが担う5つの機能と業務範囲

PRを「プレスリリースを出してメディアに載せてもらう仕事」と捉えると、業務範囲を大きく取り違えます。日本パブリックリレーションズ協会は、広報・PRの活動内容を5つの機能に整理しています。対外的な情報発信は、そのうちの1つにすぎません。

機能 情報の流れ 主な業務
外部情報の受信(広聴機能) 社外から社内へ 市場・社会動向の把握、報道モニタリング
外部情報の発信(情報参謀) 社外情報を社内へ 経営層への報告、全社コミュニケーション戦略の統括
社内情報の受信(社内広聴) 社内から社内へ 各部門からの情報集約、発信可否とタイミングの判断
内部情報の発信(社内広報) 社内から社内へ 社内報、インターナル・コミュニケーション戦略
社内情報の公式発表(対外広報) 社内から社外へ 報道対応、公式サイト・公式SNSでの発信

協会はこの機能整理に続けて、経営資源が「ヒト・モノ・カネ・情報」といわれるなかの「情報」に関する経営戦略を担うのが広報・PRである、と位置づけています。広報部門を「司令塔」と呼ぶのは、社外の情報を整理して社内に伝え、同時に社内で起きていることを社会に発信するという双方向の結節点にあるからです。日本広報学会が広報を経営機能に分類したことと、この整理は一致しています。

危機発生時における広報部門の取材対応

平時の発信よりも組織の存続に直結するのが、危機発生時の対応です。自然災害、事故、製品不具合、労務問題、情報漏えいなど、危機が顕在化したときに取材の受け口となるのは広報・PR部門です。正確な事態把握と情報整理を行い、被害の全貌、自社の責任、原因究明と再発防止策を迅速に発表する必要があります。

用語の使い分けにも注意が必要です。日本パブリックリレーションズ協会は、危機が発生してからの対応を「クライシスマネジメント」、危機が発生する前の対応を「リスクマネジメント」と呼び分けています。協会は、危機発生時の謝罪会見でトップが失言を重ねてバッシングを浴びることが多かったため、平時から危機を想定して模擬記者会見などのメディアトレーニングを行う企業が増えている、と説明しています。危機時の情報発信の設計についてはクライシスコミュニケーションとは何か?基本概念から企業における重要性までをわかりやすく徹底解説!で詳しく扱っています。

PRの主要手法と広告表示に関する法的境界

メディアリレーションズとプレスリリース

報道機関との関係づくりと、その中核にある情報提供がメディアリレーションズです。プレスリリースは自社の発表内容を書面にまとめて記者や編集部に届けるもので、配信すれば載るという性質のものではありません。媒体側にとってのニュース価値、つまり読者にとっての新しさや影響の大きさが判断基準になります。自社にとっての重要度と媒体にとってのニュース価値は一致しないことのほうが多く、その差を埋める作業が実務の中身です。

オウンドメディアとSNSによる直接の発信

自社サイト、公式ブログ、公式SNSアカウントなど、自社で保有し統制できるチャネルからの発信も広報・PRの手段です。日本パブリックリレーションズ協会も、対外広報の説明で公式Webサイトや公式SNSを活用した情報発信が活発になっていると触れています。媒体を介さないぶん内容を統制できますが、第三者による選別を経ていないため、報道と同じ水準の信頼を最初から得られるわけではありません。両者は代替関係ではなく補完関係にあります。SNS運用を軸にした手法の整理はSNSマーケティングとは?主要SNSの特徴・手法・始め方と外注判断【2026年版】を参照してください。

イベント、スポンサーシップ、社会的活動

体験の場をつくるイベント、権利を対価として資金や物品を提供するスポンサーシップ、社会課題に対する取り組みも、ステークホルダーとの関係構築という点で広報・PRの射程に入ります。スポンサーシップの権利構造と契約の実務はスポンサーシップとは?広告・寄付との違いと権利・費用・契約の仕組みで、企業の社会的責任という枠組みでの位置づけはCSRとは?企業の社会的責任の意味・4つの責任・活動事例をわかりやすく解説で整理しています。

広告主体を隠す表示に対する景品表示法上の規制

手法が広がるほど、情報の出どころを隠す誘惑も強くなります。日本パブリックリレーションズ協会の倫理綱領は「公正・正確・透明性の原則」の項で、公正・誠実に活動を行い、ステークホルダーに事実を正確に、適宜・適切に開示して透明性を高めるとしたうえで、「虚偽の情報や誤解を招くような情報は流布しない」と定めています。

これは業界の自主規範ですが、事業者が自らの広告であることを隠す表示は法規制の対象でもあります。景品表示法第5条第3号にもとづく「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号、2023年3月28日公布)が2023年10月1日に施行され、事業者が自己の供給する商品または役務の取引について行う表示のうち、一般消費者が事業者の表示だと判別することが困難と認められるものが不当表示に指定されています。インフルエンサーへの依頼や記事広告の表記をどう扱うべきかについては、ステルスマーケティング(ステマ)とは?定義・規制・罰則と見分け方で規制の枠組みと判断基準を扱っています。PRの成果を急いで、出どころの表示を曖昧にする施策は、信頼関係の構築という目的そのものを損ないます。

PRの効果測定:広告換算値(AVE)を「無効な指標」とする国際基準

バルセロナ原則V4.0の2025年6月改訂

広報・PRの効果測定について、国際的な基準として参照されているのがAMEC(International Association for the Measurement and Evaluation of Communication)のバルセロナ原則です。2010年の初版以降、2015年、2020年と改訂され、2025年6月に第4版であるV4.0が公表されました。AMEC理事でV4チームリードを務めたRichard Bagnall氏は、V4.0を「an evolution, not a revolution(革命ではなく進化)」と位置づけ、機能しているものの上に築き、現代化が必要な部分を洗練させる方針だったと説明しています。

原則 主題 V4.0(2025年)の要点
1 目標設定 明確で測定可能な目標が計画・測定・評価の前提
2 ステークホルダー 全ステークホルダーの定義と理解が関係構築の起点
3 チャネル 関連するすべてのチャネルに測定と評価を適用する
4 分析手法 定性分析と定量分析の両方が必要である
5 無効な指標 広告換算値(AVE)等の無効な指標を用いない
6 報告対象 アウトプット・アウトカム・インパクトを報告する
7 倫理と透明性 データ・手法・技術の倫理と透明性が信頼を築く

バルセロナ原則V4.0・原則5によるAVEの否定

広告換算値は、掲載された記事のスペースや放送尺を広告の出稿料に換算し、金額で成果を示す考え方です。金額に置き換わるため経営層に説明しやすく、広報の成果指標として紹介されることがあります。しかしバルセロナ原則の原則5は、この指標を名指しで否定しています。原文は「Invalid measures such as advertising value equivalents (AVEs) should not be used. Instead measure and evaluate the contribution of communication by its outcome and impact.」です。

否定の姿勢は初版から一貫しています。V4.0がこの原則の来歴として挙げる文言を見ると、2010年は「AVEs are not the value of PR」、2015年と2020年は「AVEs are not the value of communication」でした。V4.0では、単に否定するだけでなく代わりに取るべき積極的な行動を示す形へ改められた、とAMECは説明しています。

実務で見落とされやすいのが、呼び名を変えても同じ指標だという点です。V4.0の原則5には、AVEと同じ指標が別名で呼ばれることがあるとして、ACE(Advertising Cost Equivalent)、ASR(Advertising Space Rate)、EAV(Equivalent Advertising Value)、EMV(Earned Media Value)、EVR(Editorial Value Rate)、MAV(Media Advertising Value)、PRV(PR Value)の7つが列挙され、「これらはすべて本質的に同じ欠陥のある指標の変種であり、避けるべきである」と結ばれています。ツールのダッシュボードにEMVという列があれば、それはバルセロナ原則が退けている指標です。

そのうえでAMECは、どうしてもアーンドメディアの推定コストや掲載スペースの指標を出さなければならない場合の条件も示しています。第一に「value」「impact」「ROI」という語をその指標の説明に使わないこと。第二に、指標の限界と算出方法を明確かつ透明に定義すること。計算に乗数を含めている場合は、それも開示の対象です。社内報告で広告換算値を使い続けている組織は、少なくともこの2条件を満たしているかを確認する価値があります。

これは海外だけの話ではありません。日本パブリックリレーションズ協会が主催するPRアワードのエントリー要項は、応募時に記述する成果について「いずれの成果イメージにおいてもパブリシティの広告換算を入れることは禁止といたします」と明記しています。国内の業界表彰でも、広告換算値は成果の証明として受け付けない運用がすでに定着しています。

AVEに代わるアウトプット・アウトカム・インパクト測定

原則6は、アウトプット・アウトカム・インパクトを組織とステークホルダーに関連づけて報告すべきだとしています。ここで最も重要な警告が「Don’t make substitution error」、つまり置き換えの誤りをするなという指摘です。AMECは具体例として、メディア掲載本数や報道の論調は、ステークホルダー・オーディエンスへの効果と等価ではないと明示しています。掲載が増えたことは、態度が変わったことの証明にはなりません。

原則6の「やってはいけないこと」には、ほかにも実務で起きがちな失敗が並びます。都合のよいデータや肯定的なデータだけに注目しないこと。意図しなかった結果を捨てないこと(企業の評判に影響し、対応が必要になる場合があるため)。時間軸を無視しないこと(短期の勝利が長期の成功や効果を示すとは限らず、PRが生む効果の多くは短期ではなく長期にわたって現れるため)。四半期ごとの報告だけで広報の成否を判定する運用は、この最後の点と正面から衝突します。

広報部門の生成AI導入率は77.0%へ(2026年3月公表の実態調査)

広報・PRの実務は、生成AIの普及によって短期間で変化しています。日本広報学会の「生成AIを活用した広報研究会」は、2025年10月から11月にかけてインターネットアンケートを実施し、国内の企業・団体の広報担当者、PR代理店スタッフ、広報研究者などから104件の有効回答を得ました。第1回調査(2024年)と同時期・同規模で、一定程度共通した対象リストを用いた定点調査として設計されています。報告書は2026年3月29日に公表されました。

項目 2024年(第1回) 2025年(第2回)
導入済み層(定着+定着を模索) 37.2% 77.0%
「認知している」にとどまる層 45.5% 13.5%
生産性への貢献度(10点満点の平均) 6.67点 7.53点
同 8点以上の比率 37.8% 62.5%
社内規定が「ある」 51.1% 68.8%

導入済み層77.0%の内訳は「定着している」18.3%と「導入し、定着を模索している」58.7%です。導入者のうち「常に」と「1日数回」を合わせたデイリーユース層は70.0%を占めています。利用場面の上位は「プレスリリース類の作成」37件(46.3%)、「コピーやリリースタイトルの案だし」35件(43.8%)、「企画の壁打ちや案だし」35件(43.8%)で、まず「書くこと」と「考えること」を支えるツールとして定着したことがうかがえます。

一方で不安は残っています。全体では「正確性への不安」56件(53.8%)、「機密性への不安」54件(51.9%)、「知財侵害への不安」44件(42.3%)が上位です。注目すべきは導入前後で不安の性質が変わる点で、導入前は機密性13件(54.2%)とコストの高さ10件(41.7%)が上位なのに対し、導入後は正確性47件(58.8%)が最も高くなります。使い始めてはじめて、出力の信頼性が最大の課題として立ち上がるという構図です。報告書はこの1年を、生成AIが関心や試行の対象から実装と運用を伴う業務基盤へ移行し始めた転換点と位置づけています。

PRの歴史と、日本への導入

PRの歴史を語るときに起点として挙げられるのが、エドワード・L・バーネイズが1923年に出版した『世論の結晶化』(Crystallizing Public Opinion、Boni and Liveright刊)です。日本広報学会は定義プロジェクトの背景説明で、この本を「広報を解説した最初の本」とし、出版から100年が経過したと述べています。パブリック・リレーションズの考え方そのものは、19世紀末から20世紀にかけてアメリカで発展しました。

同書の第1章は「THE SCOPE OF THE PUBLIC RELATIONS COUNSEL」と題され、冒頭は「A new phrase has come into the language—counsel on public relations. What does it mean?(新しい言い回しが言語のなかに現れた。パブリック・リレーションズの顧問である。それは何を意味するのか)」という一文から始まります。1923年の時点では、この言葉自体が説明を要する新語だったわけです。

日本への導入時期は比較的はっきりしています。日本パブリックリレーションズ協会は、パブリックリレーションズが「日本には第二次世界大戦後の1946年以降にアメリカから導入された」と記しています。その後、1969年に加固三郎が日本語による定義を示し、2016年には協会が現行の倫理綱領を通常総会で採択、2023年に日本広報学会が学会としての定義を公表しました。

年 できごと
19世紀末〜20世紀 アメリカでパブリック・リレーションズが発展
1923年 バーネイズ『世論の結晶化』出版
1946年以降 日本に第二次世界大戦後アメリカから導入
1969年 加固三郎による日本語の定義
1982年 PRSAが定義を採択
2010年 バルセロナ原則の初版
2012年 PRSAが現行定義を採択(前年に公募キャンペーン)
2016年 日本パブリックリレーションズ協会が倫理綱領を採択
2021年 日本広報学会が「新たな広報概念の定義」プロジェクトを開始
2023年 日本広報学会が広報の定義を公表
2025年 バルセロナ原則V4.0を公表

この年表から読み取れるのは、PRが「昔からある宣伝の言い換え」ではなく、定義も測定方法も現在進行形で更新され続けている領域だということです。効果測定の国際基準が5年ごとに改訂され、日本の学会が2年をかけて定義を作り直したのは、いずれもここ数年の動きです。

よくある質問

パブリック・リレーションズとはどういう意味ですか?

組織や個人が、多様なステークホルダーとの双方向のやり取りを通じて、社会的に望ましい関係を築き維持していく経営機能を指します(日本広報学会の定義。全文は本文に掲載しています)。情報を発信するだけでなく、相手の反応を受け取って自らを修正することまでを含む点が、宣伝や売り込みとの違いです。

PRは何の略ですか?

Public Relations(パブリック・リレーションズ)の略です。Publicは「公衆」や「ステークホルダー」、Relationsは「関係」を意味し、直訳すると「公衆との関係」になります。日本語では「広報」と訳されるのが一般的です。

PRと広報の違いは何ですか?

概念としては同じものを指します。日本広報学会は2023年の定義で「広報」「パブリック・リレーションズ」「コーポレート・コミュニケーション」を同じ意味を持つ概念として捉えると明記しました。実務で呼び分けが残るのは、社内の部署が「広報部」、社外の専門会社が「PR会社」と呼ばれるという体制上の違いによるもので、活動の中身が異なるわけではありません。

就職活動の「自己PR」も同じPRですか?

自己PRの「PR」は自己アピールの意味で使われ、経営機能としてのPRとは指す内容が異なります。自己PRは自分の強みを採用担当者に伝える自己紹介であり、一方向の売り込みが中心です。本記事で扱う経営機能としてのPRは、相手の反応を受け取って自らの行動を修正することまでを含む双方向の活動を指します。同じ略語が広い意味で使われている点を押さえておくと、定義の説明が読みやすくなります。

広告換算値を成果指標として社内報告に使ってよいですか?

国際基準は使わないよう求めています。AMECのバルセロナ原則V4.0は原則5で、広告換算値(AVE)のような無効な指標を用いてはならないと定め、代わりにアウトカムとインパクトで貢献を測定・評価するよう示しています。EMV(Earned Media Value)など別名で提供されている同じ指標も対象です。どうしてもアーンドメディアの推定コストを示す必要がある場合は、その指標を「value」「impact」「ROI」という語で説明せず、算出方法と限界(乗数を使っているならその内容を含む)を透明に開示することが条件とされています。

PR会社は何をしてくれるのですか?

会社によって範囲は異なりますが、報道機関との関係づくり、プレスリリースの企画と配信、記者発表やイベントの運営、メディアトレーニング、掲載状況の分析といった業務を、社外の立場から支援します。依頼する際は、掲載件数の目標だけでなく、それがどのステークホルダーのどんな態度変化につながるのかを事前にすり合わせておくと、成果の評価で食い違いが起きにくくなります。バルセロナ原則の原則1が、明確で測定可能な目標の設定を計画の前提としているのはこのためです。

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