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悉皆調査(しっかいちょうさ)とは?読み方・意味と全数調査・標本調査との違い、やり方と具体例

悉皆調査(しっかいちょうさ)とは?読み方・意味と全数調査・標本調査との違い、やり方と具体例

悉皆調査(しっかいちょうさ)とは、調査対象となる集団(母集団)を1件も残さず全て調べる調査です。言い換えると「全数調査」で、「全部調査」「センサス(census)」とも呼ばれ、一部だけを抜き出して全体を推し量る「標本調査」と対になります。日本で最も大きな悉皆調査が、5年ごとに行われる国勢調査です。

この記事では、読み方と語の意味、統計法の条文が実際にどの語を使っているか、標本調査との違い、メリットとデメリットを整理したうえで、国勢調査の実施方法を手本に悉皆調査のやり方を手順で示します。後半では全国学力・学習状況調査や経済センサスなどの具体例と、「悉皆性」「悉皆検査」といったビジネスでの使い方まで扱います。

まとめ:悉皆調査(しっかいちょうさ)の要点

  • 読み方と意味:「しっかいちょうさ」。「悉皆」は副詞で「残らず。すっかり。全部」(デジタル大辞泉)。母集団の全対象を調べる調査です。
  • 言い換え:全数調査・全部調査・センサス。総務省統計局の解説サイトも「全数調査(悉皆調査)」と併記しています。対義語は標本調査(抽出調査・サンプル調査)です。
  • 法令用語は「全数調査」:統計法の条文に「悉皆」の語は1か所も無く、「全数調査」が第5条に2回出てくるだけです。
  • やり方:対象名簿の確定→全件への配布→複数の回答経路と督促→未回答の扱い→検査と集計、の順。国勢調査では不在の世帯について近隣などへの聞き取りまで行います。
  • 誤差ゼロではない:標本誤差は生じませんが「不詳」は残ります。令和7年国勢調査でも、不詳を補完した「不詳補完値」が参考表として公表されました。速報と確定でも数字は動きます。
  • 代表例:国勢調査、経済センサス‐活動調査、全国学力・学習状況調査(平成26年度以降は悉皆)、デジタル庁の行政手続等の調査。

悉皆調査とは|読み方・意味と全数調査との関係

読み方は「しっかいちょうさ」、「悉皆」は「残らず・すっかり」

読み方は「しっかいちょうさ」です。「しつかい」「しかい」と読まれることもありますが、辞書の見出しは「しっ‐かい」で、促音が入ります。デジタル大辞泉は「悉皆」を副詞として立て、「残らず。すっかり。全部」「まるで」「(あとに打消しの語を伴って用いる)全然。まったく」の3つの語義を挙げています。「悉」も「皆」も「ことごとく」の意を持つ字で、同じ意味の字を重ねた熟語です。

「悉」は日常で使う機会が少ない字なので、字形の似た「采」「番」と取り違えた「采皆調査」「番皆調査」、字順を入れ替えた「皆悉調査」といった表記もよく検索されています。いずれも正しくは「悉皆調査」です。

なお「悉皆」で検索すると着物の手入れの店が出てくるのは、江戸時代に染め物・洗い張りの注文を取り次いだ「悉皆屋(しっかいや)」という別の用語があるためです(デジタル大辞泉)。

悉皆調査の言い換え|全数調査・全部調査・センサス

悉皆調査と全数調査に意味の違いはありません。コトバンクに収録されている日本大百科全書(ニッポニカ)の「悉皆調査」の項目は、語釈を持たず「→全数調査」と送り項目になっています。総務省統計局のなるほど統計学園「全数調査・標本調査」も、見出しを「全数調査(悉皆(しっかい)調査)」と併記し、「全数調査(悉皆調査)とは対象となるものを全て調べる調査の事です」と説明しています。

同じページに併載されているブリタニカ国際大百科事典 小項目事典は、「探究しようとする事象を全体にわたって漏れなく,また重複することなく調査する方法であり,全数調査法,完全列挙法とも呼ばれる大量観察法である」と定義し、「この方法の最も代表的なものは国勢調査である」と続けます。「漏れなく」だけでなく「重複することなく」まで定義に含めている点は、後で述べるやり方の章で効いてきます。

使い分けの例を挙げると、この記事で扱う資料でも、統計法は「全数調査」、デジタル庁の令和6年度調査は「悉皆調査」という名称を使っています。

統計法の条文の用語|「悉皆」0件・「全数調査」2件

公的統計の根拠法である統計法(平成19年法律第53号)の条文をe-Gov法令APIから取得して全文を検索すると、「悉皆」は0件、「標本調査」も0件で、「全数調査」だけが2か所に登場します。いずれも第5条(国勢統計)の中です。2026年10月21日にe-Gov法令APIから取得した現行版(令和8年法律第46号による改正を反映、令和8年6月24日施行)で数えた結果です。

第5条第1項は「総務大臣は、本邦に居住している者として政令で定める者について、人及び世帯に関する全数調査を行い、これに基づく統計(以下この条において「国勢統計」という。)を作成しなければならない」と定めています。官公庁の文書や仕様書で厳密な表記を求められる場面では、条文と対応が取れる「全数調査」を選ぶのが無難です。

一方で、統計局の技術資料には「悉皆」が残っています。令和2年国勢調査の抽出詳細集計の説明では、30人以上の施設等の世帯を「しっ皆層世帯」と呼び、この層は全ての世帯を抽出したと書かれています(詳しくは国勢調査の標本抽出の節で扱います)。法令は「全数調査」、実務資料は「悉皆」という棲み分けです。

悉皆調査の英語|census と Population Census

英語では、人口を対象とする悉皆調査を census と呼びます。総務省統計局の英語サイトでは、国勢調査のページ名が Population Census です。統計学の文章では、全部を数え上げる手続きを指して complete enumeration という言い方もされ、前掲のブリタニカ国際大百科事典も「完全列挙法」を別称に挙げています。

悉皆調査と標本調査の違い【比較表】

対になる概念が標本調査(サンプル調査・抽出調査)です。「悉皆」の対義語を問われたら、統計の文脈では「標本」「抽出」と答えるのが通例です。母集団の一部を抜き出し、その結果から全体を推し量ります。両者の違いを、実務で判断材料になる観点で並べます。

観点 悉皆調査(全数調査) 標本調査(サンプル調査)
調査対象 母集団の全て 抽出した一部
標本誤差 生じない 生じる
非標本誤差 生じる(不詳・記入漏れ) 生じる
費用と期間 大きい 小さい
小さな区分の集計 小地域単位まで出せる 回答数不足で出せないことがある
結果の速さ 対象数・調査内容による 同条件なら短縮しやすい
向く場面 他統計の基礎・対象が少数 傾向把握・定点観測

実務でつまずきやすいのは、標本誤差と非標本誤差の混同です。標本誤差は「一部しか見ていないこと」から生じるので悉皆調査には存在しませんが、記入漏れや誤記入から生じる非標本誤差はどちらの方式でも起こります。標本誤差の大きさの計算は標準誤差の求め方とエクセルの計算式|標準偏差・標本誤差との違いで、標本調査そのものの設計は標本調査とは?母集団との関係・身近な例とメリット・デメリットを公的データで解説で扱っています。

悉皆調査のメリット|推定を挟まない実数と小地域の集計

最大の利点は、推定を挟まずに数え上げた値そのものが得られることです。標本調査の推定値には標本誤差があり、その不確実性は標準誤差や信頼区間で表します。悉皆調査の全数集計には標本誤差はありませんが、非標本誤差は残ります。統計局は国勢調査のQ&Aで、国勢調査を全数調査で行う理由を「我が国の最も基本となる統計を全国及び地域別に作成するため」と説明し、「統計は標本調査によって作成することもできますが、その場合には結果に標本誤差が含まれることは避けられません」と続けています。

2つ目は、小さな区分まで集計できることです。標本調査では、小地域や割合の小さい属性の回答数が不足し、推定精度が低くなることがあります。集計したい区分ごとに必要な標本数を確保する設計が必要です。国勢調査には町丁・字などの単位でまとめた「小地域集計」があり、この粒度の数値を出せるのは全件を調べているからです。

3つ目は、他の標本調査の土台になれることです。同じQ&Aは「労働力調査、家計調査など各種の国の基本的な標本調査は、国勢調査の小地域別の統計に基づいて設計されています」と書いています。家計調査の第2段の抽出単位(単位区)も、直近の国勢調査の調査区を2つずつまとめて作られます。このように、国勢調査は家計調査などの標本設計を支える基礎情報を提供しています。

悉皆調査のデメリット|費用・期間と残る誤差

国勢調査の費用と期間|実施年度の予算と公表日程

最も分かりやすい欠点は規模です。統計局が公表した令和7年度予算案の資料では、令和7年国勢調査費に67,910,294千円(約679億円)が計上されています。国勢調査の費用を「1,000億円弱」「2,920億円超」と紹介する解説もありますが、実施年度の調査費として資料で確認できる額はこの数字です。

期間も長くかかります。令和7年国勢調査は令和7年10月1日現在で実施され、人口速報集計の公表が令和8年5月29日、人口等基本集計の公表が令和8年9月29日でした。統計局の結果ページによると、就業状態等基本集計は令和9年3月まで、抽出詳細集計は令和9年11月までに公表される予定で、全ての集計が出そろうまで2年かかります。

未回答による「不詳」と不詳補完値

悉皆調査を「誤差なく正確」と説明する解説は少なくありません。なるほど統計学園も「全数調査は、誤差なく正確な結果が得られる反面、膨大な費用や手間がかかるという欠点もあります」と書いています。ただしこれは標本誤差についての話です。全件を対象にしても、回答されない項目や記入されない世帯は残ります。

同じ統計局は、この「不詳」を補完した「不詳補完値」を別に公表しています。令和2年国勢調査では、主な項目の原数値に含まれる不詳を「あん分等によって補完した『不詳補完値』を算出し、これを表章した統計表を参考表として提供している」と説明し、年齢・続き柄・配偶関係がすべて不詳の世帯について、二人以上の世帯は条件の近い世帯の値を借りるホットデック法、単身世帯の国籍は出入国在留管理庁の在留外国人データを使うコールドデック法で補ったうえで、残る不詳を構成比に応じてあん分しています。令和7年調査でも、人口等基本集計の不詳補完値(参考表)が公表されました。人口等基本集計の結果の要約では、日本人人口・外国人人口の推移の図に「2015年以降の人口は不詳補完値による」と注記されています。

全数調査であっても、不詳をどう扱うかで集計値は動きます。数値を引用するときは、原数値と不詳補完値のどちらを見ているのかを確認してください。無回答が結果をどう歪めるかは無回答バイアスとは?無回答・未回答・不回答の違いと集計での扱い方、回収率の考え方は回収率とは?アンケート調査での計算方法・目安・上げ方を解説、記入内容そのものの歪みは回答誤差とは?標本誤差との違い・原因・Web調査での検知方法で扱っています。

速報値と確定値の差|令和7年国勢調査の実例

全件を数えた結果でも、速報の数字は確定までに変わります。令和7年国勢調査の人口は、人口速報集計で123,049,524人でしたが、人口等基本集計では122,972,528人となり、76,996人少なくなりました。人口が増加した市町村の数も、速報の161市町村(9.4%)から確定では151市町村(8.8%)へ減っています。

速報は「男女別人口及び世帯数の早期提供」を目的とした集計で、確定は調査票の入力・符号付け・検査・補足訂正を経た値です。悉皆調査の結果を資料に使うときは、どの集計区分の、いつ公表された数字かを必ず書き添えてください。

悉皆調査のやり方|国勢調査の手順と企業で全件調査を回す5段階

国勢調査の実施方法|配布・3つの回答経路・聞き取り

国勢調査では、対象の定義から配布・回答・集計までの手順が公開されています。令和7年国勢調査の概要によると、調査は「総務省統計局 – 都道府県 – 市町村 – 国勢調査指導員 – 国勢調査員の流れ」で行われ、調査員等が「担当する地域の全ての世帯を訪問し、調査書類一式を配布」しました。世帯はインターネット回答・郵送提出・調査員への直接提出のいずれかで回答します。

令和7年調査の全国の回答状況は、確定した世帯数57,324,619世帯に対してインターネット回答が27,149,428世帯(47.4%)、郵送が18,905,587世帯(33.0%)でした。残る約2割は調査員への提出などそれ以外の方法です。そして全件調査の要になるのが最後の手当てで、概要は「世帯員の不在等の事由により、前述の方法による調査ができなかった世帯については、調査員等が、当該世帯について世帯員以外の者に質問することにより調査した」と書いています。集められた調査票は独立行政法人統計センターで入力・符号付けされ、欠測値や記入内容の矛盾を検査し、補足訂正を行ってから集計されます。

企業・自治体で全件調査を行う手順

全社員アンケートや取引先の全件確認も、国勢調査と同じ骨格で設計できます。悉皆調査で品質を左右するのは、回収よりも「全件とは何か」を先に決める工程です。

  1. 対象名簿を確定する:人事システムや取引先マスタから名簿を作り、基準日(例:10月1日在籍者)と除外条件(休職者・グループ会社など)を文書にします。国勢調査も「本邦内に常住している者」を3か月以上の居住で定義し、外交使節団などを除外しています。
  2. 重複と漏れを突き合わせる:ブリタニカの定義どおり、悉皆調査は「漏れなく、重複することなく」が条件です。兼務者・異動者・同一取引先の複数口座を名寄せし、別の台帳と件数を突合します。
  3. 回答経路を複数用意し、督促の段取りを決める:Webフォームだけにせず、紙や対面の経路を残します。国勢調査でもインターネットと郵送で約8割で、残りは別の経路が担いました。
  4. 未回答の扱いを事前に決める:在籍状況など第三者が確認できる事実と、満足度など本人にしか答えられない項目を分け、未回答を「不詳」とする範囲や補完の方法を調査前に決めておきます。後から決めると、都合のよい数字を選んだと疑われます。
  5. 速報と確定を分けて報告する:締切時点の速報と、検査・訂正後の確定を別の数字として出し、どちらかを明記します。

対象が数千件を超えると、転記・入力・名寄せの工程で生じるミスの絶対数も増えます。悉皆調査では、収集に加え、重複・漏れの突合や記入内容の検査にも担当者と作業時間を割り当てます。

悉皆調査の具体例|国勢調査・経済センサス・全国学力調査・行政手続の調査

国勢調査|10年ごとが本則、5年目は「簡易な方法による国勢調査」

日本で最も規模の大きい悉皆調査が国勢調査です。統計法第5条第2項は「総務大臣は、前項に規定する全数調査(以下『国勢調査』という。)を十年ごとに行い、国勢統計を作成しなければならない。ただし、当該国勢調査を行った年から五年目に当たる年には簡易な方法による国勢調査を行い、国勢統計を作成するものとする」と定めています。

統計局のQ&Aは「統計法に国勢調査を5年ごとに実施することが規定されています」と書いており、実施の間隔としては5年ごとで正しいのですが、条文上は10年ごとの調査が本則で、中間年はただし書の「簡易な方法による国勢調査」です。西暦の末尾が0の年(2020年=令和2年など)が本則の調査、末尾が5の年(2025年=令和7年など)が簡易な方法による調査にあたります。第1回は大正9年で、令和7年調査は22回目でした。

令和7年調査の人口等基本集計によると、2025年10月1日現在の人口は1億2297万3千人で、2020年から317万4千人(2.5%)減りました。一般世帯数は5718万2千世帯、1世帯当たり人員は2.10人です。全国1,719市町村のうち人口が増えたのは151市町村にとどまり、市町村単位でこうした数値が出せるのは全件を数えているからです。

国勢調査は標本抽出をしているか|全数調査と抽出詳細集計

「総務省統計局が行っている国勢調査はどのような標本抽出を行っているか」という問いへの答えは、「調査そのものは全数調査なので、標本抽出は行っていない」です。統計法第5条が国勢調査を「全数調査」と定義しているとおり、本邦に常住する全ての人と世帯が対象です。

ただし、集計の段階には抽出があります。産業・職業の小分類のように符号付けに手間のかかる項目は、全ての調査票ではなく一部を抜き出して集計する「抽出詳細集計」で作られます。令和2年国勢調査の抽出方法の説明では、母集団を一般世帯と30人未満の施設等の世帯からなる「標本層世帯」と、30人以上の施設等の世帯からなる「しっ皆層世帯」に分け(自衛隊の営舎内居住者と矯正施設の入所者は人数にかかわらず後者)、標本層は市区町村の人口規模に応じて世帯単位で無作為系統抽出を行い、しっ皆層は全ての世帯を抽出しました。全国の抽出率は10.0%で、結果は「標本によって得られた推定値であるため、標本誤差を含んでおり、全数集計における結果数値とは必ずしも一致しない」と注意書きされています。

試験で問われたら「国勢調査は全数調査(悉皆調査)であり標本抽出は行わない。ただし一部の詳細な集計には調査票の約1割を抜き出す抽出詳細集計がある」と答えるのが正確です。調査票の抽出の仕組みそのものは多段抽出法とは?確率比例抽出法・層化抽出との違いを労働力調査の実例で解説で扱っています。

全国学力・学習状況調査|悉皆調査と抽出調査の変遷

教育分野の代表例が、小学校第6学年と中学校第3学年を対象とする全国学力・学習状況調査です。この調査は悉皆と抽出のあいだで実際に方式が切り替わった、方式の変遷を確認できる事例で、文部科学省の調査の概要には年度ごとの方式が明記されています。

  • 平成19年度〜21年度:悉皆調査
  • 平成22年度、24年度:抽出調査及び希望利用方式(抽出率約30%。都道府県毎に平均正答率が95%の確率で誤差1%以内になるよう設定)
  • 平成25年度:きめ細かい調査(全児童生徒を対象とする本体調査に追加調査を組み合わせた方式)
  • 平成26年度〜:悉皆調査

平成23年度は抽出調査及び希望利用方式で実施予定でしたが、東日本大震災の影響等を考慮して調査としての実施が見送られました。令和8年度も「原則として全児童生徒を対象とする」悉皆調査で、文部科学省の資料によると中学校英語は日程を分散してCBTで、国語・数学は4月23日に紙(PBT)で実施されました。

平成22年度・24年度の抽出率約30%は、都道府県別の平均正答率について所定の精度を確保するために設定されたものです。それでも悉皆に戻ったのは、個々の学校や市町村が自分の結果を受け取って指導改善に使うには全件でなければ成立しないからです。悉皆か抽出かは技術の優劣ではなく、結果を誰が何に使うかで決まります。

行政手続等の調査|「悉皆調査」と「棚卸調査」の名称

行政分野では、デジタル庁が国の行政手続を対象とする全件調査を行っています。根拠は情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成14年法律第151号)第25条第2項です。

興味深いのは呼び名の揺れ方です。デジタル庁の公表ページを2026年10月21日に確認すると、見出しは「行政手続等の棚卸調査結果等」で、最新の令和7年度調査(令和7年11月1日時点)のファイル名は「行政手続等の棚卸調査結果」、令和6年度調査(令和6年3月31日時点)は「行政手続等の悉皆調査結果」、令和3年度調査は「行政手続等の棚卸結果等」です。同じ根拠法にもとづく同じ調査系列で、ファイル名だけが「悉皆調査」と「棚卸調査」の間を行き来しています。

経済センサス‐活動調査|事業所・企業側の全件調査

世帯を対象とする国勢調査に対し、事業所・企業を対象とする全件調査が経済センサスです。直近の令和8年経済センサス‐活動調査は令和8年6月1日を基準日とし、農林漁業の個人経営の事業所など一部を除く「全国全ての事業所及び企業」を対象としました。統計法に基づく基幹統計調査で、報告義務があります。

統計局は調査の目的の一つに、事業所・企業を対象とする各種統計調査に提供する「標本調査のための抽出条件、裾切り条件、母集団復元のためのベンチマーク情報等の母集団情報の整備」を挙げています。全件を押さえた結果が他の標本調査の土台になる関係が、ここでもそのまま制度になっています。なお「センサス」は census のカタカナ表記で、日本語で「センサス」とだけ言うときは、多くの場合この経済センサスか国勢調査を指します。

ビジネスでの「悉皆」の使われ方|悉皆性・悉皆検査

悉皆性・悉皆的・悉皆確認|全件を対象とする意味と用例

IT運用やコンプライアンス、監査の文脈で見かける「悉皆性」は、対象を1件残らず当たっていること、つまり網羅性を指します。「悉皆性を担保する」は「抜き取りで済ませず全件を確認したと言える状態にする」という意味です。「悉皆的に洗い出す」「悉皆確認」「悉皆点検」も同じで、サンプルで済ませず全件を当たることを指します。対義的に使われるのは「抜き取り」「サンプリング」です。

これらは辞書の見出し語にはありませんが、もとの副詞の意味(残らず・すっかり)がそのまま生きている用法です。調査対象のうち全件を当たる層を「悉皆層」と呼ぶのも同じ系統で、前述のとおり統計局の資料にも「しっ皆層世帯」として出てきます。

悉皆検査と全数検査|品質管理での呼び方

品質管理の分野で辞書に立項されている用語は「全数検査(total inspection)」の方で、「抜取り検査と違って、全数、全部品を検査することで、その製品が狙いの品質に合致しているかをチェックして合否を明らかにするもの」と定義されています(大車林)。一方の「悉皆検査」は、辞書横断で検索しても見出し語が見つかりません。統計の悉皆/標本の対立と、検査の全数/抜取りの対立は、ちょうど同じ構図です。

悉皆調査と標本調査の選択基準|対象数・個別返却・更新頻度

実務で方式を決めるときは、次の順で確認すると迷いにくくなります。

第一に、対象の件数です。数十件から数百件程度であれば、抽出設計に頭を使うより全件を当たった方が早く、結果も説明しやすくなります。全社員アンケートや取引先の全件確認は、規模の面で悉皆が自然な選択です。

第二に、結果を個別に返す必要があるかです。部署別・拠点別の推定値は、各区分に必要な標本数を確保すれば標本調査でも作成できます。一方、全員に本人の回答に基づく個別結果を返すには、全員を調査する必要があります。

第三に、更新の頻度です。毎月・四半期ごとに調査する場合は、回答負担と運用費用を見積もり、全件調査を継続できない条件では標本調査を選びます。国の統計でも、5年ごとの国勢調査に対し、毎月の動きは家計調査の見方|結果の読み方・選ばれる人・確率までわかりやすく解説で扱う家計調査のような標本調査が担っています。

第四に、悉皆が難しいと判断した場合の抽出方法です。ここで恣意的に選ぶと、全件を諦めた意味がなくなります。抽出の具体的な手順はランダムサンプリングとは?5種類とExcel・Pythonのやり方を参照してください。

よくある質問

悉皆調査の読み方は何ですか?

「しっかいちょうさ」と読みます。辞書の見出しも「しっ‐かい」で、促音が入ります。「しつかい」「しかい」と読まれることや、「采皆」「番皆」と書き誤られることがありますが、正しい表記と読みは「悉皆(しっかい)」です。

悉皆調査と全数調査は違うものですか?

同じものです。日本大百科全書の「悉皆調査」の項目は「全数調査」への送り項目になっており、総務省統計局の解説サイトも「全数調査(悉皆調査)」と併記しています。統計法の条文が使っているのは「全数調査」の方なので、公的文書に合わせるなら「全数調査」と書くのが無難です。

悉皆調査の言い換えや対義語は何ですか?

言い換えは全数調査・全部調査・センサス(census)です。対義語は、母集団の一部を抜き出して調べる標本調査(抽出調査・サンプル調査)です。品質管理では全数検査と抜取検査が同じ関係にあたります。

国勢調査は標本抽出をしていますか?

調査そのものは統計法第5条に定める全数調査で、標本抽出は行いません。ただし産業・職業の小分類などの詳細な集計は、調査票の一部を抜き出す抽出詳細集計で作られます。令和2年調査では全国の抽出率が10.0%で、その結果には標本誤差が含まれます。

悉皆調査なら誤差はゼロになりますか?

標本誤差はゼロになりますが、誤差全体がゼロになるわけではありません。回答されない項目は「不詳」として残り、統計局は国勢調査について不詳を補完した「不詳補完値」を参考表として公表しています。令和7年国勢調査の人口も、速報の123,049,524人から確定の122,972,528人へ動きました。

悉皆検査や悉皆確認も同じ意味ですか?

「1件残らず対象にする」という意味は同じです。ただし辞書に立項されているのは「全数検査」(英語では total inspection)で、「悉皆検査」は現場で使われる言い方です。「悉皆性」も同じく、全件を確認して漏れがないこと(網羅性)を指します。

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