データセンターのサーバがOSごと固まったとき、現地に行かずに電源を切り、BIOS画面を開き、OSを入れ直せるか。これを決めるのが、サーバの基板に載った管理専用のプロセッサです。Dell の PowerEdge ではこれを iDRAC、HPE の ProLiant では iLO と呼びます。役割は同じで、違いは世代とライセンスに出ます。この記事では、両者の違い、機種ごとの世代対応、遠隔でOSを入れ直すのに必要なライセンス、障害時のログの取り方、そして2026年に運用の書き直しを迫る2つの変化を、メーカーの一次資料に沿って整理します。
まとめ
iDRAC は Dell、iLO は HPE のサーバに内蔵された管理専用プロセッサ(BMC)です。サーバ本体のOSとは独立して動くため、待機電力が供給され、管理ネットワークと認証情報、必要なライセンスが整っていれば、OSが起動しない状態でも遠隔から電源投入・BIOS操作・OSインストールを行えます。
世代は iDRAC9 が PowerEdge 14G〜16G、iDRAC10 が 17G、iLO は 5 が Gen10、6 が Gen11、7 が Gen12 です。ただし Gen12 にも iLO 6 搭載の機種が4つあるので、機種名で確かめてください。
費用に最も効くのは、画面を遠隔操作する仮想コンソールと、手元のISOをつなぐ仮想メディアです。一般的なラック/タワー構成では、iDRAC は Enterprise 以上、iLO は Advanced が必要です。ブレード向けの標準機能やライセンス同梱の例外があるため、機種別に確認してください。
障害時は、iDRAC なら SupportAssist 収集、iLO なら AHS ログをメーカーに渡します。2026年は、Dell の OMSA 終息(17G 非対応)と iLO 7 での RIBCL・HPONCFG 削除により、既存の運用スクリプトを Redfish へ書き換える年でもあります。
iDRACとiLOの正体|サーバ本体と独立して動く管理専用プロセッサ
iDRAC の正式名称は Integrated Dell Remote Access Controller で、読み方は「アイドラック」です。iLO は Integrated Lights-Out の略で、「照明を消した無人のサーバルーム」を前提にした遠隔管理という意味が込められています。
両者の構造は同じで、マザーボード上に独立したCPU・メモリ・ネットワークインターフェイスを持つ小さなコンピュータが載っています。業界標準の呼び名は BMC(Baseboard Management Controller)です。OSが停止していても未導入でも、BMCが正常に動作し、待機電力と管理ネットワークの接続・設定が整っていれば、外部からアクセスできます。
できることは4つあります。OS上のエージェントを介さないハードウェア監視、遠隔からの電源投入と強制断、起動直後のBIOSの設定画面までブラウザで操作できる仮想コンソール、手元のISOファイルをサーバの光学ドライブとして見せる仮想メディアです。後半の2つは、ラック/タワー機では有償ライセンスの対象です。サーバという機器そのものの位置づけはサーバーの役割と種類の記事で解説しています。
メーカー別の名称対応|「DellのiLO」という製品が存在しない理由
「Dell の iLO」という言い方は成立しません。iLO は HPE の製品名で、Dell のサーバには載っていないからです。Dell の同等機能は iDRAC で、逆に HPE のサーバに iDRAC はありません。各社ともBMCによる遠隔管理機能を提供していますが、名称に加えて、対応機能・ライセンス・管理インターフェイスも異なります。
| メーカー | BMCの名称 | 代表的なサーバ製品 |
|---|---|---|
| HPE | iLO | ProLiant/Synergy |
| Dell | iDRAC | PowerEdge |
| エフサステクノロジーズ(旧・富士通) | iRMC | PRIMERGY |
| Lenovo | XClarity Controller(XCC) | ThinkSystem |
| NEC | EXPRESSSCOPE エンジン/BMC/HPE iLO | Express5800 |
富士通のサーバ事業は2024年4月にエフサステクノロジーズへ移管されましたが、PRIMERGY の管理機能は iRMC のままです。Lenovo の XClarity Controller は ThinkSystem V3 が XCC2、V4 が XCC3 です。
NEC だけは機種で分かれます。NEC のサポート情報では、R120g-2M などが EXPRESSSCOPE エンジン3、T110j・T110k が BMC1・BMC2、R120h-2M・R120j-2M・R120k-2M・NS300Rj などの現行ラックモデルは HPE の iLO5/iLO6/iLO7 を搭載しています。NEC の手順書を探すときは機種名まで確認してください。
HPE と Dell の混在環境では、電源制御コマンドもライセンスも更新手順も別物です。共通化できる接点は後述の Redfish です。
世代とサーバ機種の対応|iLO 5/6/7 と iDRAC9/10 の見分け方
BMC の世代はサーバの世代と結びついており、後から新しい BMC に載せ替えることはできません。手元の機器がどれに当たるかを最初に確定させてください。
| BMC | 対応サーバ世代 | ライセンス階層 |
|---|---|---|
| iDRAC8 | PowerEdge 13G | Basic/Express/Enterprise |
| iDRAC9 | PowerEdge 14G/15G/16G | Basic/Express/Enterprise/Datacenter |
| iDRAC10 | PowerEdge 17G | Core/Enterprise/Datacenter |
| iLO 4 | ProLiant Gen8/Gen9 | Standard/Advanced |
| iLO 5 | ProLiant Gen10/Gen10 Plus | Standard/Advanced |
| iLO 6 | ProLiant Gen11(Gen12の一部4機種) | Standard/Advanced |
| iLO 7 | ProLiant Compute Gen12 | Standard/Advanced |
iLO 6 の行に注意してください。HPE の iLO QuickSpecs(V41・2026年9月21日)は、Gen12 のうち DL320 Gen12-SP、DL340 Gen12-SP、DL380a Gen12、DL384 Gen12 の4機種を iLO 6 搭載としています。「Gen12 だから iLO 7 の手順書」とは限らず、iLO 7 で削除された RIBCL もこの4機種では動きます。
iDRAC10 は 17G で導入された世代です。Dell のiDRAC10 のバージョン一覧(2026年7月8日更新)では機種ごとに推奨版が異なり、R470・R770・XE7740 は 1.30.30.50、XE9780・XE9785 系は 1.30.31.10(2026年6月26日公開)とされています。
ライセンスは持ち越せません。iDRAC10 と iDRAC9 のライセンスは世代に紐づいて別世代へ移せず、iLO のライセンスも適用したサーバの寿命に紐づきます。リプレース時は買い直す前提で予算を組んでください。
ライセンス階層|仮想コンソールが使えない構成を避ける判断基準
iDRAC と iLO で最も判断が要るのがライセンスです。無償の範囲と有償で解禁される範囲の境界を、機能名で押さえます。
iDRACのライセンス階層と2026年時点の価格
iDRAC9 は Basic・Express・Enterprise・Datacenter の4階層です。Basic は100〜500番台のラック/タワーに、Express は600番台以上のラック/タワーと FC640・MX740c・MX840c に標準で付きます。Basic でも Web UI、Redfish、IPMI 2.0、RACADM、ハードウェア監視、SNMP 通知、ファームウェアの遠隔更新は使えます。
Enterprise で追加されるのが、HTML5 または VNC の仮想コンソール、仮想メディアと仮想フォルダ、AD/LDAP 連携、2要素認証、システムロックダウンモードです。ブレード向けの Express for Blades だけは仮想コンソールと仮想メディアを含みます。Datacenter はテレメトリのストリーミング配信などを足す大規模向けです。
機能の割り当ては改版で動きます。電力の実時間グラフと履歴カウンタは、iDRAC9 ユーザーズガイドの Rev.A04(2024年6月・FW 7.10.50.00)では Express、Rev.A09(2025年9月・FW 7.20.60.50)では Enterprise に置かれています。見積もりには、使うファームウェア版のユーザーズガイドの機能表を当たってください。
iDRAC10 は Core・Enterprise・Datacenter の3階層です。Dell は Enterprise を「Core にエンタープライズクラスの管理機能と仮想メディア機能を加えたもの」と定義しており、仮想コンソールと仮想メディアが無償の Core に含まれない点は iDRAC9 と同じです。
| iDRAC10 ライセンス | 購入区分 | 参考価格(米ドル) |
|---|---|---|
| Core | POS | 無償 |
| Enterprise バンドル | POS | 1,394 |
| Datacenter バンドル | POS | 1,785 |
| Enterprise | APOS | 1,433 |
| Datacenter | APOS | 1,911 |
POS はサーバ本体と同時購入、APOS は後日の追加購入です。POS の Enterprise と Datacenter には Secure Enterprise Key Management と Secured Component Verification のライセンスが同梱されます。Datacenter は PowerEdge XE の既定の階層です。価格は Dell のOpenManage Portfolio Software Licensing Guide(2026年7月版)の参考価格で、実際の調達価格は販社の見積もりで確認してください。
iLO StandardとAdvancedの違い
iLO のライセンスは、無償の iLO Standard と有償の iLO Advanced の2本立てです。Essentials などの中間ライセンスは iLO 5 v1.40 で販売を終えています。以下の比較と操作制限の説明は、ラック/タワー向けの iLO Standard を対象とします。Standard for BladeSystem など、仮想コンソールや仮想メディアを標準で使える構成は対象外です。
| 項目 | iLO Standard | iLO Advanced |
|---|---|---|
| ハードウェア監視・電力と温度の制御 | ○ | ○ |
| 仮想電源ボタン(電源オン・オフ・リセット) | ○ | ○ |
| リモートコンソール(OS起動前のテキスト画面) | ○ | ○ |
| リモートコンソール(OS起動後のグラフィカル画面) | × | ○ |
| 仮想メディア(ISOからの起動) | × | ○ |
| コンソールの録画と再生 | × | ○ |
| ディレクトリ連携(AD/LDAP) | × | ○ |
Standard でも、POST 中や BIOS のテキスト画面までは遠隔で見られます。ところが、OSが起動してグラフィカル画面に移った後の操作と、ISO をつないでの再インストールは Advanced でしかできません。単体で買う Advanced のライセンスは永続で、1年・3年の違いはサポート期間の長さです。サポートが切れても機能は使い続けられます。
購入が不要になる例外が2つあります。iLO Advanced は Synergy のコンピュートモジュールに自動で付き、HPE Compute Ops Management の Advanced ライセンスにも含まれます。Compute Ops Management の Advanced は1年・3年・5年の期間付きサブスクリプションなので、単体の永続ライセンスとは別物と考えてください。下位のライセンスには付かないので、契約している階層も先に確認してください。
24時間365日の可用性を求められるサーバで、仮想コンソールと仮想メディアによる遠隔復旧を必須とするなら、iDRAC10 Core や iLO Standard のまま本番に入れる設計は避けてください。例えばブートローダーやファイルシステムの破損では、復旧用メディアから起動し、コンソールで修復操作を行うことがあります。停止が許される検証機なら、無償の範囲でも監視と電源制御は成り立ちます。分かれ目は「OSが起動しない状態からの復旧を遠隔で終わらせる必要があるか」です。
初回接続と仮想メディア|現地作業ゼロでOSを入れるまでの実務
工場出荷状態からの初回ログインでつまずく箇所は決まっています。既定値の所在を押さえてください。
出荷時の既定値とログイン情報の所在
iLO の既定ユーザー名は Administrator、既定のDNS名は ILO+サーバのシリアル番号です。既定パスワードはサーバごとにランダムな文字列で、iLO Default Network Settings タグ(シリアルラベルのプルタブ)に印字されています。工場出荷時設定にリセットすると、このパスワードに戻ります。大量導入で共通の初期パスワードにしたい場合は、サーバと同時に SKU P08040-B21 を注文すると、HPE が定めた共通パスワードで出荷されます。
iDRAC の既定ユーザー名は、全バージョン共通で root です。パスワードは既定で工場出荷時にランダム生成された固有値で、前面の引き出し式サービスタグに印字されています。iDRAC9 搭載機では、購入時にレガシーパスワードを選んだ場合と PowerEdge C6420・M640・FC640 が calvin を使用します。iDRAC8 以前にも calvin が既定値の機種があります。中古機で calvin が通らないときは、固有パスワードの仕様を疑ってください。14G 以降は DHCP が既定で有効です。DHCP でアドレスを取得できない場合は、設定ユーティリティでネットワーク設定を確認し、必要に応じて DHCP を無効にして静的IPアドレスを設定してください。
既定パスワードは初回ログイン後に必ず変えてください。HPE も QuickSpecs で、共通パスワードは導入直後に変更するよう強く推奨しています。筐体のラベルに印字されている以上、ラックに触れる人には筒抜けです。
HTML5リモートコンソールと仮想メディアによるOS導入
仮想コンソールは、かつて Java アプレットや .NET アプリが必要でしたが、現行世代はブラウザだけで動く HTML5 実装です。iLO は 5 v1.20 以降で HTML5 のリモートコンソールに対応し、iLO 7 では .NET 版の統合リモートコンソールが廃止されました。iDRAC9 は HTML5 と VNC の2方式を持ちます。
OS導入は、仮想メディアで手元のISOをマウントし、起動順序を一時的に仮想光学ドライブへ変えて再起動する流れです。UEFIの起動設定を理解していれば、Secure Boot の有効・無効やブートエントリの並びも同じ画面から扱えます。
iLO 7 には、ネットワークを通らない経路もあります。iLO Virtual NIC を使うと、ホストOSから USB 経由で iLO に直接つながるので、管理LANが落ちていてもホストOSが生きていれば iLO に入れます。サーバの前に立てるなら、USB Type-C の iLO Service Port にノートPCをつなぐ方法もあります。
IPMI・Redfish・RACADMの使い分け|混在環境の電源操作の共通化
新しく書く自動化は Redfish に寄せ、IPMI は既存の監視ツールが必要とする場合だけ、RACADM と iLOREST はメーカー固有の機能に限って使います。
| 手段 | 規格の出どころ | 向いている用途 |
|---|---|---|
| Redfish | DMTF の業界標準(REST+JSON) | 電源操作・情報取得の共通化 |
| IPMI 2.0 | 旧来の業界標準 | ipmitool を使う既存監視の維持 |
| RACADM | Dell 独自 | SupportAssist 収集・属性設定 |
| iLOREST | HPE 独自(Redfish のクライアント) | AHS ログ取得・iLO 設定 |
IPMI は既定で閉じていることを前提にしてください。iDRAC9 7.x の属性ガイドでは、IPMI over LAN を有効にする iDRAC.IPMILan.Enable の既定値は 0(Disabled)です。リプレース後に ipmitool の監視が応答しなくなったら、まずこの設定を疑い、有効にするなら管理セグメントの中に閉じてください。
Redfish の電源操作は、DMTF が定めた ComputerSystem.Reset アクションに ResetType を送るだけで、iDRAC と iLO で違うのは URI のシステムIDだけです。iDRAC は System.Embedded.1、iLO 6/7 は 1 です。
# 受け付ける ResetType の一覧を先に確認する(iDRAC の例)
curl -sk -u user:pass https://<iDRAC-IP>/redfish/v1/Systems/System.Embedded.1
# OSを正常にシャットダウンさせる(iDRAC)
curl -sk -u user:pass -X POST -H "Content-Type: application/json" \
-d '{"ResetType":"GracefulShutdown"}' \
https://<iDRAC-IP>/redfish/v1/Systems/System.Embedded.1/Actions/ComputerSystem.Reset
# 同じ操作を iLO に送る(変わるのはシステムIDだけ)
curl -sk -u user:pass -X POST -H "Content-Type: application/json" \
-d '{"ResetType":"GracefulShutdown"}' \
https://<iLO-IP>/redfish/v1/Systems/1/Actions/ComputerSystem.Reset
ResetType の意味は DMTF の Redfish 仕様(DSP0268)で決まっています。GracefulShutdown はOSに正常終了と電源断を要求しますが、実際の動作はOSの設定や応答状態に依存します。ForceOff はOSの終了を待たずに電源を切ります。GracefulRestart と ForceRestart も同じ関係です。自動化では、GracefulShutdown を送ったあと電源状態を見張り、運用で決めた待機時間を過ぎても電源が切れないときに限って、強制断してよい条件を満たすか確かめてから ForceOff を送ってください。-k は証明書検証を省くオプションなので、本番では BMC に正規の証明書を入れて外してください。
管理ネットワークの分離|専用ポートと共有ポートの選択
BMC のつなぎ方は2通りです。専用の管理ポートを業務ネットワークとは別のセグメントにつなぐ方式と、本番用NICの1ポートを管理機能と共有する方式です。iLO では後者を Shared Network Port と呼びます。
HPE のユーザーガイドは、専用管理ネットワークを推奨構成としています。接続できる端末を物理的に絞れること、本番ネットワークの障害時にも経路が残ることが理由です。共有ポートでも VLAN とアクセス制御で管理通信を分離できます。ただし、本番通信と物理NICや接続経路を共有するため、その障害の影響を受ける点に注意が必要です。
避けるべき構成ははっきりしています。BMC の管理画面を、インターネットから届く位置や、業務用PCと同じセグメントに置かないでください。BMC はOSより下の層を握っており、侵入されれば電源、BIOS設定、仮想メディア経由の任意OS起動まで奪われ、OS上のセキュリティ対策は効きません。管理セグメントは業務LANから分け、踏み台かVPN経由でだけ届くようにするのが最低ラインです。どのサーバの BMC がどのIPを持つかは、構成管理の対象として台帳に載せてください。台帳を IPAM で持つなら NetBox のような IPAM・DCIM ツールが使えます。管理LANを自社で引けるかどうかはハウジングとコロケーションの選択でも変わります。
障害時のログ採取|SupportAssist収集とAHSログ、BMCが応答しないときの再起動
メーカーに問い合わせると、ほぼ必ずログの提出を求められます。取り方を平時に決めておけば、障害時に現地へ行かずに済みます。
iDRACのログ(SEL・Lifecycleログ)とSupportAssist収集
iDRAC のログは2種類です。SEL(System Event Log)はハードウェアで起きたイベントの記録で、同じ内容は Lifecycle Controller ログにも入ります。Lifecycle ログのほうが範囲が広く、ストレージやネットワーク機器のイベント、ファームウェア更新、設定変更、ライセンスの記録まで含みます。「いつ誰がBIOS設定を変えたか」を追うなら Lifecycle ログを見ます。
Dell のサポートに渡すのは SupportAssist 収集(旧称 TSR=Technical Support Report)です。iDRAC9 7.x でも iDRAC10 1.30 系でも、Web 画面の[Maintenance]→[SupportAssist]→[Start a Collection]で、含めるデータと保存先を選んで[Collect]を押します。コマンドで取るなら次のとおりです。
# SEL と Lifecycle ログを画面に出す(iDRAC9 7.x/iDRAC10 共通)
racadm getsel
racadm lclog view
# iDRAC9/iDRAC10:EULAを確認し、未同意の場合は次のコマンドで同意する
racadm supportassist accepteula
# 収集してファイルに保存する(-f はホストOS上のローカル RACADM か
# 管理端末のリモート RACADM から実行。iDRAC への SSH 上では使わない)
racadm supportassist collect -f tsr.zip
iDRAC9 では、世代をまたいだ互換のために旧来の racadm techsupreport collect/export も残されています。ただし iDRAC9 ファームウェア 7.00.00.00 以降は、Dell へ直接送る collect --upload や register が使えません。ファイルを手元に保存してから窓口へ渡す手順にしてください。Redfish から取る場合、iDRAC9 には DellLCService.SupportAssistCollection という Dell 独自のアクションがあります。
iLOのログ(IML・IEL・AHS)とダウンロード手順
iLO には、サーバ本体のハードウェアイベントを記録する IML(Integrated Management Log)、iLO 自身の操作やログインを記録する IEL(iLO Event Log)、そして HPE のサポートが解析に使う AHS(Active Health System)ログがあります。問い合わせで提出を求められるのは、たいてい AHS ログです。
iLO 6 では、Web 画面、iLO Service Port、cURL、Intelligent Provisioning、RESTful API と iLOREST のいずれからでも AHS ログを取れます。iLO 7 の Service Port では、取得内容を書いた command.txt を USB メモリーのルートに置き、前面の Service Port に挿すと取り出せます。管理LANに届き、iLOREST を導入済みなら、コマンドで取得対象や期間を指定できます。
# 管理端末に iLOREST を導入し、対象 iLO へログインする
# ILO_ADDRESS・ILO_USER・ILO_PASSWORD は実際の値に置き換える
ilorest login ILO_ADDRESS -u ILO_USER -p ILO_PASSWORD
# AHS ログをダウンロードする
ilorest serverlogs --selectlog=AHS
# 全期間を落とす/期間を絞る
ilorest serverlogs --selectlog=AHS --downloadallahs
ilorest serverlogs --selectlog=AHS --customiseAHS "from=2026-10-01&&to=2026-10-14"
# IML(ハードウェアイベント)を見る
ilorest serverlogs --selectlog=IML
BMCが応答しないときの再起動と初期化
Web 画面が開かない、SSH も通らないなど BMC そのものが固まったときは、BMC だけを再起動します。Dell のサポート文書は、racadm racreset で再起動するのは iDRAC だけでサーバは再起動されず、動いているOSにも影響しないと明記しています。iDRAC10 では、再起動後に使えるようになるまで最大2分かかることがあります。管理LANから届かないときは、筐体の System Identification ボタン(iボタン)を16秒以上押し続けても iDRAC を再起動できます。iLO は ilorest iloreset で再起動でき、HPE は初期化まで最大3分かかるとしています。
似た名前の racadm racresetcfg は別物で、iDRAC の設定を消して工場出荷時の状態に戻すコマンドです。どこまで消えるかはオプションで変わり、ユーザーアカウントやネットワーク設定まで消すと、管理LANから接続できなくなり、現地での再設定が必要になることがあります。再起動で直らないときの最後の手段にとどめ、実行前に筐体ラベルの既定パスワードを確認してください。
世代交代で失う運用資産|OMSA終息とiLO 7の削除機能
2024年以前に書かれた手順書が追いついていないのがここです。iDRAC も iLO も、既存の運用ツールを切り捨てる方向で世代交代しました。リプレース計画には書き直しのコストを入れてください。
OMSAの終息とiDRAC+iSMへの移行期限
OpenManage Server Administrator(OMSA)は、OS上にエージェントを常駐させてハードウェアを監視する Dell のツールです。Dell のOMSA 終息の告知(2026年5月21日更新)によれば、最終リリースは2024年9月30日で、その後は2027年9月30日まで維持モードとして、業務に影響するセキュリティ脆弱性と重大なエスカレーションにだけ対応します。最終版の対応は14G・15G・16Gまでで、17G と Windows Server 2025 には対応しません。
17G を1台でも入れた時点で、その機器では OMSA 前提の監視スクリプトが動きません。Dell が示す移行先は iDRAC と iDRAC Service Module(iSM)の組み合わせで、OMSA の機能の大半は既にこの2つに取り込まれています。監視が「OS内のエージェントから取る」から「BMC から直接取る」へ移り、OSが止まっても監視が続くようになります。作業としては、omreport/omconfig を叩いていた箇所を RACADM か Redfish に置き換えます。
# OMSA(終息)
omreport system summary
# RACADM に置き換える場合(Dell専用)
racadm getsysinfo
# Redfish に置き換える場合(HPEとの混在環境ならこちら)
curl -sk -u user:pass https://<iDRAC-IP>/redfish/v1/Systems/System.Embedded.1
iLO 7で削除されたスクリプト資産
HPE 側の変化はさらに広いものです。iLO 7 で削除された主な機能は次のとおりです。
- RIBCL と、それを使う HPONCFG・HPQLOCFG・HPLOMIG などの XML スクリプトツール
- HPLOCONS(スタンドアロンのリモートコンソール)と .NET 版の統合リモートコンソール
- iLO Federation(複数の iLO をグループとして一括操作する機能)
- SSH 経由の SMASH-CLP とテキストのリモートコンソール、WINS 設定
残った自動化の手段は Redfish(iLO RESTful API)と iLOREST です。Gen10 世代で HPQLOCFG に XML を食わせて数百台を初期設定していた運用は、Gen12 の iLO 7 機では成り立たず、/redfish/v1/ 配下への REST 呼び出しとして書き直すことになります。
型番と価格だけで更新を決めると、移行検証で既存の自動化が動かず手戻りになります。リプレース検討の最初に、運用スクリプトが RIBCL・HPONCFG・OMSA に依存していないかを棚卸しし、Redfish への書き換え工数を見積もりに入れてください。書き換えを社内で回しきれない場合は、保守運用と内製化の支援を使う手もあります。
よくある質問
iDRACの読み方は?
「アイドラック」と読みます。正式名称 Integrated Dell Remote Access Controller の頭文字で、Dell の PowerEdge サーバに内蔵された遠隔管理機能を指します。14G〜16G 向けが iDRAC9、17G 向けが iDRAC10 というように、世代の番号を付けて呼び分けます。
iDRACとiLOの違いは何ですか?
役割は同じで、メーカーが違います。iDRAC は Dell の PowerEdge、iLO は HPE の ProLiant に載った BMC です。差が出るのはライセンスで、iDRAC は iDRAC9 が4階層・iDRAC10 が3階層、iLO は Standard と Advanced の2階層です。専用コマンドも RACADM と iLOREST で異なりますが、Redfish の REST API は両社とも対応しているので、電源操作や情報取得は共通のスクリプトで扱えます。
iDRACで監視できる項目は?
OSにエージェントを入れなくても、CPU、メモリ、ファン、電源ユニット、RAIDコントローラ、NIC、ディスクの状態を取れます。ディスクは SMART による予兆検知と SSD の消耗度も対象です。iDRAC9 では温度監視が Basic から、電力しきい値のアラートと温度グラフが Express から使えます。通知は SNMPv1/v2/v3 に対応し、Zabbix のような監視基盤から SNMP や Redfish で拾う構成が一般的です。
iDRACやiLOのIPアドレスやパスワードがわからないときは?
まず筐体のラベルを見てください。iLO はシリアルラベルのプルタブ、iDRAC は前面の引き出し式サービスタグに既定のパスワードが印字されています。IPアドレスは、サーバ起動時に入る設定ユーティリティ(iLO の Configuration Utility、iDRAC Settings)で確認・変更できます。ラベルを紛失して既定パスワードが不明な場合、工場出荷時設定へのリセットだけでは解決しません。対象機種の公式手順に従い、ローカル設定画面などから管理者パスワードを再設定してください。
iLOやiDRACのライセンスは後から追加できますか?
できます。iDRAC10 は、サーバと同時購入の POS と後日追加の APOS の両方があり、後から買うほうが割高です(Enterprise で POS 1,394ドル、APOS 1,433ドル)。iLO Advanced も後から追加できます。どちらも、買ったライセンスは別世代・別のサーバへは移せません。