2024年6月に公開した本記事の旧版では、海外製の生成AIツールを9つの用途に分けて60本並べていました。2年たった2026年9月に各社の公式サイトを確認し直すと、Bing ChatはMicrosoft Copilotに改称され、Copy.aiやWritesonicは「文章を書くツール」から営業支援やAI検索対策へ主軸を移していました。一覧は放っておくと古くなります。
そこで本記事は、用途ごとに今も選ぶ理由がある海外製ツールに絞り込み、公式の価格表とヘルプで確かめた条件だけを載せています。後半では、日本の企業が海外のAIツールを契約する前に確かめるべき4点(入力データの学習利用、データの保存地域、準拠法、消費税の登録番号)を一次情報でまとめました。
まとめ|海外の生成AIツールの用途別候補と契約前の確認事項
- 2024年版の60ツールのうち、改称・買収・主軸転換・大きな機能拡張が確認できたものが13本ある。ツール名で覚えず、用途と提供元の継続性で選び直す。
- 用途別の定番は、スライドならGamma・Beautiful.ai、音声生成ならElevenLabs、社外向けチャットボットならChatbase、画像ならMidjourney。英語の音声・動画編集ならDescriptも候補になる。
- 個人向けプランは入力が学習に使われる設定が残りやすく、法人向けプランは既定で学習に使わない(ChatGPT Business・Claudeの商用サービス・Google Workspace版Gemini)。
- OpenAI・Anthropic・Midjourneyの規約はいずれも米カリフォルニア州法が準拠法。データ保存地域に日本を選べるのは、ChatGPTでは新規のEnterprise・Eduに限られる。
- 国外事業者が提供し、利用者が事業者に限られない海外AIツールは消費税法上「消費者向け電気通信利用役務の提供」に当たる。仕入税額控除には原則として提供元の登録番号入りの適格請求書が要る。
以下、旧版で紹介したツールの現況、用途別の定番、契約前の確認点の順に説明します。
2024年版で紹介した海外AIツールの現況(改称・買収・主軸転換)
旧版に載せたツールを2026年9月時点の公式サイトで確認した結果です。サービス自体は大半が続いていますが、名前や狙いが変わったものが目立ちます。
| 旧版での名前 | 2026年9月時点 | 変化の種類 |
|---|---|---|
| Bing Chat | Microsoft Copilot | 改称 |
| Lyrebird | 2019年にDescriptが買収 | 買収 |
| Dialogflow | Dialogflow CX/ES | 生成モデル基盤へ |
| Copy.ai | GTM AI Platform | 営業・マーケ自動化へ |
| Writesonic | AI Search Growth Engine | AI検索対策へ |
| Clearscope/Surfer | AI検索での露出計測を追加 | 機能拡張 |
| Simplified | マーケ向けAIエージェント基盤 | 主軸転換 |
| Pencil | マーケ向けAI OS | 主軸転換 |
| Chatfuel | SNS・Web向けAIエージェント基盤 | 主軸転換 |
| Designs.ai | AIエージェント型の制作環境 | 主軸転換 |
| vidIQ | MCP提供(2026年7月) | 機能拡張 |
| Stockimg.ai | 公式API公開(2025年4月) | 機能拡張 |
とくにLyrebirdは、旧版の時点で既に独立したツールではありませんでした。Descriptの研究ページに「2019年にDescriptに買収された」と明記されています。Zapier・Mailchimp・Namecheapのように、生成AIが主力ではないサービスを同じ列に並べていたのも旧版の弱点です。
この表から言えるのは、海外のAIツールは2年で「何をする製品か」まで変わるということです。導入を決めるときは、公式の更新履歴や終了予告を確認し、用途が変わった場合に備えてデータの書き出し方法も確かめてください。
用途別に選ぶ海外製の生成AIツール(2026年9月時点)
価格は各社の公式価格ページ(表のツール名からリンク)に2026年9月27日時点で表示されていたUSD建ての値です。料金は年払い時の月額換算と月払いを区別して記載しています。契約時には支払総額も確認してください。
| ツール | 用途 | 無料で試せる範囲 | 最安の有料プラン |
|---|---|---|---|
| Gamma | スライド・資料 | 登録時400クレジット | Plus(有料はPlus・Pro・Ultra) |
| Beautiful.ai | スライド | 14日間の試用 | Pro 月12ドル(年払い) |
| Descript | 音声・動画編集 | Freeプラン | Hobbyist 月16ドル(年払い)/24ドル(月払い) |
| Chatbase | チャットボット | 月50メッセージクレジット | Hobby 月40ドル |
| Midjourney | 画像生成 | — | Basic 月8ドル(年払い)/10ドル(月払い) |
| Surfer | SEO・AI検索 | — | Discovery 月49ドル(年払い) |
| Copy.ai | 営業・マーケ | — | Chat 月24ドル(年払い)/29ドル(5席込み) |
| Looka | ロゴ | 作成・編集は無料 | Basic Logo Package 20ドル(買い切り) |
表の「—」は、公式ページで恒久的な無料プランを確認できなかったものです。対話型AI(ChatGPT・Claude・Gemini・Copilot)は用途が広く料金体系も複雑なため、この表には入れていません。4製品の違いはChatGPT・Gemini・Claude・Copilotの比較記事で扱っています。
スライド・資料作成:GammaとBeautiful.aiの違い
「資料作成AI」を探しているなら、まずGammaを試すのが手早い選択です。無料プランでも登録時に400クレジットが付き、1回の指示で最大10枚のスライドを生成できます(Gamma Help Center)。PDF・PPTXに書き出せ、Google Slidesでは書き出したPPTXを読み込んで利用できるため、仕上げを社内のPowerPointでやる運用とも両立します。Gammaは現在、スライドだけでなく文書・Webページ・SNS投稿の生成まで範囲を広げています。
Beautiful.aiは恒久的な無料プランの代わりに14日間の試用を用意し、個人向けProは年払いで月12ドル、Teamは年払いで1人月40ドルです。レイアウトを自動で整える「Smart Slides」が強みで、社内のデザインテンプレートを崩さずに量産したいチームに向きます。一方、1枚ずつ自由に配置したい人には制約が窮屈に感じられます。
画像生成:Midjourneyを選ぶ前に知っておく公開設定
海外の画像生成AIで今も指名されるのはMidjourneyです。公式ドキュメントでは2026年9月時点でV8.2が既定モデルで、プランは月払いで月10・30・60・120ドルの4段階です(年払いは20%引き)。
業務で使う前に、2つの既定値を押さえておく必要があります。1つ目は、生成した画像が既定で公開され、他のユーザーがリミックスできることです。非公開にするStealthモードはPro(月60ドル)とMega(月120ドル)でしか使えません。2つ目は、Midjourneyが公開している学習データの概要で「ユーザーとのやり取りのデータをモデル学習に使ったか」に「Yes」と答えていることです。未発表の製品画像や顧客の写真を入力する用途には向きません。
MidjourneyとStable Diffusionの料金・商用条件の違いはMidjourneyとStable Diffusionの比較記事、著作権と規約の論点は画像生成AIの商用利用の解説にまとめています。
音声生成・編集:ElevenLabsとDescriptの役割分担
ナレーションや読み上げ音声を作るのはElevenLabs、収録済みの音声や動画を編集するのはDescriptという役割分担です。ElevenLabsのプランと無料版の商用制限はElevenLabsの料金と使い方の解説で詳しく扱っています。
Descriptは文字起こしのテキストを消すと音声・動画も切れる編集方式が特徴です。ただし公式価格ページに載っている文字起こしの対応25言語に日本語は含まれていないため、日本語の収録をテキストで編集する用途には向きません。英語の動画やポッドキャストを扱うチームなら、最安のHobbyistが年払いで月16ドル(月払いは24ドル)で、月10時間分のメディアと400 AIクレジットが付きます。旧版で別に紹介したLyrebirdの音声合成技術は、このDescriptに引き継がれています。ポッドキャストの音量や雑音を整えるだけなら、毎月2時間まで無料で処理できるAuphonicで足ります。
チャットボット:Chatbaseの無料枠とDialogflowの位置づけ
自社サイトの文書を読み込ませて問い合わせ対応のボットを作る用途では、無料枠のあるChatbaseが検証候補になります。無料プランは月50メッセージクレジットで、有料のHobbyは月40ドルです。無料プランのボットは14日間使われないと削除されるので、検証用と割り切ってください。日本語を含む多言語での応答にも対応しています。
Google CloudのDialogflowはDialogflow CXとESとして提供が続き、CXは生成モデルを土台にした会話プラットフォームと位置づけられています。既存の基幹システムやコールセンターとつなぐならこちらが候補です。費用構造に加え、必要な外部連携や応答制御の範囲も比較するため、チャットボット導入費用の相場と内訳も合わせて確認してください。
SEO・マーケティング:Surfer・Clearscope・WritesonicのAI検索露出計測
旧版でSEOツールとして紹介したSurfer・Clearscope・Writesonicは、いずれもChatGPTやGeminiの回答に自社ブランドが出ているかを計測する機能を前面に出すようになりました。Surferの最安プランDiscoveryは年払いで月49ドル、上位のStandardは年払いで月99ドル(月払いは119ドル)です。
日本語サイトで使う場合の注意点があります。Surferは日本語の記事生成には対応していますが、アプリの画面は英語・ポーランド語・フランス語にしか対応していません。AI検索で引用されるための施策そのものはGEO(生成エンジン最適化)の解説で扱っています。
ロゴ・ブランド素材:Lookaの買い切り価格と商標登録の注意
ロゴ生成のLookaは、作成・編集・保存までは無料で、ダウンロードできる最安のBasic Logo Packageが一回払いの20ドルです。ただし中身は背景色付きの1000×1000ピクセルのPNGファイル1点だけなので、印刷物や透過背景が必要なら上位のパッケージが要ります。名刺やSNS用の素材まで揃えるBrand Kitは年払いの別商品になります。Brandmarkも、配色やフォントの組み合わせを提案する無料ツールを公開しています。
生成したロゴを商標登録まで考えているなら、AIの出力をそのまま使うのはおすすめしません。既存の商標との類似は生成ツール側では調べてくれないので、J-PlatPatで先行商標と指定商品・役務を調査し、必要に応じて弁理士に相談したうえで最終案を出願してください。
海外製AIツールを日本から業務で契約する前の確認点
ここからは、海外のAIツールに固有の確認点です。国内のSaaSを選ぶときの感覚で契約すると、ここで漏れが出ます。優先度の高い順に並べています。
入力データの学習利用:個人プランの既定値とオプトアウト手順
最初に確かめるのは、入力した文章やファイルがモデルの学習に使われるかどうかです。同じ製品でも、個人向けと法人向けで既定値が逆になっています。
| サービス | 個人向けプラン | 法人向けプラン |
|---|---|---|
| ChatGPT | 学習に使われる場合あり(設定でオフ) | Businessは既定で使わない |
| Claude | 登録時に利用者が選択 | 商用サービスは使わない |
| Gemini | Keep Activityオンで使われる | Workspace版は使わない |
| Midjourney | 学習に使われる | 個別の停止設定は確認できず |
ChatGPTの個人プランは、Settings(設定)のData controlsにある「Improve the model for everyone」をオフにすると、以降の会話は原則として学習対象から外れます。ただし、評価などのフィードバックを送ると、関連する会話全体が学習に使われる場合があります(OpenAIヘルプ)。Geminiの個人利用ではアクティビティの保存(Keep Activity)をオフにし、フィードバックを送信しなければ、以降のチャットはAIモデルの改善に使われません。社員が個人アカウントで業務データを入れている状態が一番危ないので、法人プランへ寄せるか、少なくとも設定のオフを社内ルールで義務づけてください。
データの保存地域と準拠法:日本リージョンと米国法の条項
データを日本国内に置けるかは、製品と契約形態でまったく違います。ChatGPTは、対象となる新規のEnterprise・Edu契約で保存先に日本を選べます(データレジデンシーの対象は日本を含む10地域)。ただし、推論(GPUでの処理)を地域内に限定する「推論レジデンシー」は2026年9月時点で欧州・米国・UAEだけで、日本は対象外です。Claudeは直販の法人プランで日本を保存先に選べるという公式記載が見当たらず、Amazon Bedrock経由なら対応モデルで日本の地域エンドポイントを選べます。
準拠法も確認しておきます。OpenAIの個人向け利用規約は米カリフォルニア州法を準拠法とし、紛争は拘束力のある仲裁で解決すると定めています。アカウント作成から30日以内なら仲裁条項から外れる手続きができます。Anthropicの個人向け規約はサンフランシスコの裁判所を専属管轄とし、法人向けの商用規約はサンフランシスコでの仲裁です。Midjourneyも2026年5月27日発効の規約でカリフォルニア州サンタクララ郡での英語による仲裁を定めています。日本の裁判所で争える前提は置けないので、機密度の高いデータは法人契約で個別条件を交渉できるサービスに限るのが現実的です。
海外AIツールの消費税:取引条件による区分と登録番号の確認
見落とされやすいのが消費税です。海外のAIツールの利用料は、消費税法上「電気通信利用役務の提供」に当たり、役務の性質や取引条件によって「事業者向け」と「消費者向け」に分かれます。国税庁の「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A」(令和8年6月改訂)は、Webサイトで申込みを受け付けるクラウドサービスについて、サイトに「事業者向け」と書いてあっても消費者からの申込みを事実上制限できないものは「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当すると整理しています。個人でもカード決済で申し込める一般的なAIツールの有料プランは、この扱いになります。
消費者向けに当たる場合、仕入税額控除を受けるには、原則として帳簿と、提供元の国外事業者(適格請求書発行事業者として登録を受けた者)が交付した適格請求書等の保存が必要です。例外は少額特例で、一定規模以下の事業者が令和11年9月30日までに行う税込み1万円未満の課税仕入れは、帳簿の保存だけで控除できます。一方、免税事業者など登録のない者からの仕入れに使える経過措置(80%・70%・50%・30%を仕入税額とみなして控除)は、この取引には適用されないと同じQ&Aに明記されています。少額特例の対象外(税込み1万円以上の取引や、一定規模を超える事業者の取引)で未登録の提供元に払った分は、その消費税を控除できません。App StoreやGoogle Playのアプリ内課金で契約し、それがプラットフォーム課税(令和7年4月1日以降)の対象取引に当たる場合は、特定プラットフォーム事業者が交付する適格請求書等を保存します。
一方、取引当事者間で個別に交渉して固有の契約を結ぶ法人向け契約は「事業者向け電気通信利用役務の提供」になり、受け手の国内事業者がリバースチャージ方式で申告します。ただし一般課税で課税売上割合が95%以上の課税期間と、簡易課税制度・2割特例・3割特例が適用される課税期間は、当分の間その取引は「なかったもの」とされます(同Q&A)。
実務では、契約前に請求書・領収書の見本に「T」で始まる13桁の登録番号が載るかを確かめ、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで照合します。番号が出ないツールを部門ごとにカード決済で増やすと、少額特例の範囲を超えた分の消費税が控除できないコストになります。
海外製をやめて国内提供を選ぶ条件:機密データと契約の交渉余地
判断の分かれ目は、個人情報や未公開の設計情報を日常的に入力し、かつ保存先を日本に限定する必要があるかどうかです。この場合も、海外製かどうかで一律に外す必要はありません。ChatGPTの新規Enterprise・Edu契約のように日本での保存に対応する海外サービスもあります。確かめるのは、保存地域と推論の処理地域、準拠法と紛争解決の条項が自社の要件を満たすかです。満たす契約が見つからない業務では、国内リージョンで動く基盤や国産モデルを検討してください。国産AIの位置づけはソブリンAIの解説で整理しています。
反対に、公開前提のマーケティング素材や、社外秘を含まない下書きに使うだけなら、必要な機能と利用量に対する総額を比較して、海外製ツールを候補に含められます。用途別の選び方全般はAIツールのおすすめと選び方で扱っています。
よくある質問
海外で人気の生成AIツールは日本から使えますか?
本記事で紹介したGamma・Beautiful.ai・Descript・Chatbase・Midjourney・Surfer・Looka・Copy.aiは、いずれも日本から申し込めます。支払いはUSD建てのクレジットカード決済が基本で、為替によって円での負担額が毎月変わります。注意したいのは画面の言語で、Surferのようにアプリの表示が英語などに限られるツールもあります。業務で使う前に、無料枠や試用期間で日本語の入力と出力を必ず確かめてください。
資料作成に使える海外のAIツールはどれですか?
スライド作成ならGammaとBeautiful.aiが代表的です。Gammaは無料プランでも登録時に400クレジットが付き、1回の指示で最大10枚まで生成でき、PPTXに書き出せます。Google Slidesでは、そのPPTXを読み込んで利用します。Beautiful.aiは14日間の試用のあと、個人向けProが年払いで月12ドルです。自由に配置したいならGamma、社内テンプレートを崩さず量産したいならBeautiful.aiと考えると選びやすくなります。
海外製の生成AIツールに社内データを入力しても大丈夫ですか?
個人向けプランのまま入力するのは避けてください。ChatGPTの個人プランは設定を変えない限り学習に使われる場合があり、Midjourneyはユーザーとのやり取りを学習に使ったと公表しています。一方、ChatGPT Business、Claudeの商用サービス、Google Workspace版のGeminiは、既定で入力を学習に使いません。機密情報を扱うなら法人プランを契約し、データ保存地域と準拠法も確認してから使い始めるのが安全です。
海外AIツールの利用料は消費税の仕入税額控除の対象になりますか?
提供元と金額によります。利用者を事業者に限定せずWebで申込みを受け付ける海外AIツールは、消費税法上「消費者向け電気通信利用役務の提供」に当たります。仕入税額控除を受けるには、原則として提供元が日本の適格請求書発行事業者として登録され、帳簿と適格請求書等を保存していることが条件です。一定規模以下の事業者の税込み1万円未満の取引は、少額特例により帳簿のみで控除できます。免税事業者等からの仕入れに使える80%などの経過措置は使えないので、契約前に請求書へ「T」で始まる登録番号が載るかを確認してください。
海外の生成AIツールと国産AIはどう使い分ければよいですか?
入力するデータの機密度で分けるのが現実的です。公開前提のマーケティング素材や社外秘を含まない下書きなら、海外製ツールも候補に含め、必要な機能と利用量に対する総額で比較できます。個人情報や未公開の設計情報を日常的に入れ、保存先を国内に限定する必要がある業務では、国内リージョンで動く基盤や国産モデルが候補になります。ChatGPTでも日本に保存先を指定できるのは新規のEnterprise・Edu契約に限られる点も判断材料になります。