AppExchangeは、Salesforceの機能を外部パートナーのアプリやコンサルティングで拡張するための公式マーケットプレイスです。2026年4月のTDX 2026で、AppExchange・Slack Marketplace・Agentforceのエコシステムは「AgentExchange」という1つのカタログに統合されました。この記事では、統合後の位置づけ、管理パッケージと未管理パッケージの違い、セキュリティレビューが保証する範囲、Sandboxから本番までのインストール手順を整理します。後半では、アプリを買うか受託開発で作るかを分ける条件を、開発会社の立場から具体的に示します。
まとめ:AgentExchange統合後も変わらないアプリ選定と導入判断の軸
名前はAgentExchangeに変わりましたが、Salesforce組織にパッケージを入れて機能を足す仕組みは従来どおりです。日本語サイトのappexchangejp.salesforce.comも稼働しており、トップには「AppExchangeはAgentExchangeに新しくなりました」という告知が出ています。
導入時に押さえる順番は決まっています。まず、入れるものが管理パッケージか未管理パッケージかを確認してください。次に、セキュリティレビューの合格はSalesforceが出品者側を確認した結果であって、自社のデータが外部のどこへ送られるかは自社で確かめる必要があると理解しておきます。最後に、Sandboxで既存の自動化との衝突を確かめてから本番へ入れます。
買うか作るかの結論も先に書きます。業務が多くの会社で共通の形をしていて、利用者と連携先が限られるならアプリを買う。自社固有の業務ルールや基幹システムとの連携が要件の中心なら、アプリ探しを続けずに開発との比較へ切り替える。Salesforce全体の機能や料金から整理したい場合はSalesforceとは?CRMの機能・料金・認定資格から導入判断まで解説を先に読むと流れがつかめます。
AppExchangeの仕組み:Salesforceへ機能を足す公式マーケットプレイス
AppExchangeは、Salesforce上で動くアプリをSalesforce自身が審査して並べる流通経路です。スマートフォンのアプリストアに例えられますが、入れる先は個人の端末ではなく会社のSalesforce組織であり、管理者の判断で全社の業務に影響が出る点が大きく違います。
2026年4月のAgentExchange統合で変わった名称と変わらない仕組み
Salesforceのニュースルームが2026年4月15日に公開したTDX 2026のライブブログでは、AppExchange、Slack Marketplace、Agentforceのエコシステムを単一のカタログに統合した新しいAgentExchangeの提供開始が報じられています。Trailheadの「新しい AgentExchange を体験する」は、掲載規模を12,000件超のアプリと連携、1,000件超のエージェントとスキルと説明しています(2026年11月時点の記載)。
導入する側から見て変わったのは、入口と購買の手続きです。Salesforceのエージェント構築画面からも候補を探せるようになり、パートナーが個別条件の見積もり(プライベートオファー)をSalesforce内で送れるようになりました。同じユニットには、Salesforceが請求代行を担い、提供元が違っても請求の形がそろうと書かれています。
一方、組織にパッケージを入れる操作、設定画面の「インストール済みパッケージ」での管理、管理パッケージと未管理パッケージの区別は変わっていません。社内の資料や検索では今後もAppExchangeという呼び名が混ざるため、両方の名前で同じものを指すと理解しておけば足ります。
掲載されるアプリ・エージェント・コンポーネント・コンサルティングの4区分
SalesforceヘルプのWhat Is AgentExchange?は、掲載物を apps、agents、components、consulting services と整理しています。実務での使い分けは次のとおりです。
- アプリ:帳票出力、名刺の取り込み、電子署名、日程調整など、業務のひとまとまりをパッケージで足すもの
- エージェント:Agentforceで動くAIエージェントやスキル。2026年の統合で新たに同じカタログへ並んだ区分
- コンポーネント:レコード画面に置く部品など、画面単位で小さく機能を足すもの
- コンサルティング:導入や開発を請け負うパートナー企業の検索窓口
コンサルティングの区分は、ソフトウェアではなく支援会社を探す入口です。支援会社の選び方はSalesforce導入支援の比較と新エディション後の費用・選び方の記事で比較軸を詳しく扱っています。なお、同じヘルプ記事にあるとおり、掲載物は誰でも閲覧でき、読み取り専用のデモ環境(テストドライブ)で動きを確かめられます。
管理パッケージと未管理パッケージの違いが組織の上限と更新に与える影響
AppExchangeから入れるものは、ほぼすべてがパッケージという単位で組織に入ります。どちらの種別かで、入れた後に誰が保守するかが決まります。
改変可否・アップグレード・組織の上限で比べる2種類のパッケージ
Trailheadの「AgentExchange パッケージをインストールする」は、2種類の違いを次の3つの観点で説明しています。
| 観点 | 管理パッケージ | 未管理パッケージ |
|---|---|---|
| コードとメタデータ | 参照も変更もできない | 必要に応じて変更できる |
| アップグレード | 提供元が自動で配布できる | アンインストールして新版を入れ直す |
| 組織の上限 | アプリ・タブ・オブジェクト数に数えない | アプリ・タブ・オブジェクト数に数える |
管理パッケージは中身に手を出せない代わりに、提供元がSalesforceの年3回のリリースに合わせて更新を届けます。未管理パッケージはコードを自由に変えられますが、その時点から更新は自社の仕事になります。未管理パッケージを入れて手を加えた時点で、それは買ったアプリではなく自社で保守するソースコードです。改修を前提にするなら、宣言的な設定とApex・LWCの線引きを扱ったSalesforce開発とは?宣言的な設定とApex・LWCの線引きとリリース管理を実装目線で解説の考え方で管理してください。
インストール前に決める3点:インストール先の組織・資料・利用者の範囲
同じTrailheadのユニットは、インストール前に答えておく質問として、インストール先が適切な組織か、ドキュメントを確認したか、誰がソリューションにアクセスするかを挙げています。熟練者は必ずDeveloper Edition組織かSandboxで先に試してから本番へ入れる、とも書かれています。
見落とされやすいのはアクセス範囲です。インストール画面ではシステム管理者のみ、すべてのユーザー、特定のプロファイルから選べます。迷ったら管理者のみで入れ、検証が済んでから権限セットで対象者を広げる。この順番なら、試験中の機能が営業現場の画面に突然出る事故を防げます。
セキュリティレビューが保証する範囲と導入企業側に残る確認作業
AppExchangeの信頼性の根拠として、Salesforceによるセキュリティレビューがよく挙げられます。中身を知っておくと、どこまで任せてよいかの線が引けます。
有料アプリは1回999ドル・審査4〜5週間という出品側の公開条件
Trailheadの「ソリューションのセキュリティレビューの申請」によると、AgentExchangeで販売する有料ソリューションは、初回の申請と以降の再提出ごとに999ドルの支払いが必要です。脆弱性が見つかって修正し再提出すれば、それも1回の申請として数えられます。審査には通常4〜5週間かかり、合格後も通常は年1回のレビューを受け、Salesforceの製品セキュリティチームはいつでも再レビューを求められます。
導入側が押さえておくべき記述がもう1つあります。新しいパッケージバージョンは、パートナーコンソールでの確認手続きだけで、セキュリティレビューを再申請せずに公開できます。つまり合格は審査時点の版とその後の年次確認に対するもので、毎回の版上げを個別に審査した結果ではありません。
審査済みアプリでも自社で確かめる外部送信先・権限セット・契約条件
レビューは出品者の作り方が安全かを見るものです。自社のデータを提供元のサーバーへ送ってよいかは、自社の情報管理規程でしか判断できません。導入前に、少なくとも次の項目を提供元の資料か問い合わせで確かめます。
- 外部サーバーと通信するか、するならどの項目をどの国のどの環境へ送るか
- インストールで作られる権限セットと、それがどのオブジェクトへの編集権を持つか
- 解約時にデータが提供元側からどう削除されるか、パッケージ削除で自社側に何が残るか
- 外部と同期するアプリが、組織のAPIリクエスト上限をどれだけ使うか
優先順位が最も高いのは1つ目の外部送信です。個人情報や取引条件を含むオブジェクトに触れるアプリなら、ここが不明なまま本番に入れてはいけません。4つ目のAPI上限は、既存の連携と同じ枠を分け合います。上限の考え方はSalesforceのシステム連携とは?API方式の選定とコール上限の設計を実装目線で解説で計算方法まで扱っています。
Sandbox検証から本番展開まで:AppExchangeアプリ導入の5工程
候補の絞り込みと実際のインストールは、分けて進めると手戻りが減ります。
要件整理からトライアル・テストドライブまでの候補の絞り込み方
最初に確認するのは、Salesforceの標準機能で足りないかどうかです。標準のレポート、フロー、入力規則で済む要件にアプリを足すと、ライセンス費と保守の対象だけが増えます。標準で届かないと分かったら、リスティング(掲載ページ)で提供元、最終更新日、対応エディション、価格表示、レビューを確かめます。
機能の数で比べないことも大切な点です。候補が2つ残ったら、自社の代表的な業務を1件決め、テストドライブか試用版でその業務を最後まで通せるかを見ます。機能一覧が長いアプリほど設定項目も多く、使わない機能の設定を毎回の版上げで確認し続けることになります。
Sandboxへの先行インストールから本番の権限付与までの手順
候補が1つに決まったら、次の順で入れます。
- リスティングの「今すぐ入手」から、インストール先にSandboxを選ぶ
- システム管理者のみを対象にインストールし、提供元の手順書で初期設定を行う
- 実データに近いデータで、既存の入力規則・フロー・Apexトリガーと衝突しないかを試す
- 本番にインストールし、特定のプロファイルか権限セットで利用者を限定して公開する
- 設定の「インストール済みパッケージ」で版を控え、アンインストール手順を社内手順書に残す
工程3で見つかる問題の多くは、アプリが持つ自動化と自社の自動化が同じレコードを書き換える衝突です。どの種類のSandboxで試すかは、データ量とコピー頻度で決まります。選び方はSalesforce Sandboxとは?ログインURL・4種別の選び方と作成・更新・本番リリースの手順にまとめています。
AppExchangeアプリを買うか受託開発で作るかを分ける判断基準と見送る場面
受託開発の相談では、アプリで済ませるか作るかを決めきれないまま、両方の見積もりを並べて止まっている案件をよく見ます。判断の材料は、業務の形、利用者数、改修の必要性の3つで足ります。
アプリ購入を選ぶ条件:業務が標準的で利用者と連携先が限られる場合
帳票出力や名刺の取り込み、電子署名のように、多くの会社で手順がほぼ同じ業務はアプリの導入に向いた対象です。提供元は多数の顧客から集めた要望で機能を足し、Salesforceのリリースへの追随も引き受けます。自社で同じものを作ると、その追随作業を自社が持つことになります。
利用者が少ない場合も購入が有利です。多くの有料アプリは利用者数に比例する料金のため、対象が経理や管理部門の数名なら、開発費を回収できる期間はまず来ません。
受託開発へ切り替える条件:独自の業務ルールと基幹連携が中心の場合
切り替えの合図ははっきりしています。アプリの標準設定で要件の大半が満たせず、周辺に独自のフローやApexを足す前提になった時点です。管理パッケージの中身は変えられないため、足りない部分はパッケージの外側に作り込むしかなく、提供元の版上げのたびに外側の作り込みが壊れないかを確かめることになります。
費用は年数をそろえて比べます。仮に1ユーザー月額2,000円のアプリを50人で5年使うと、ライセンス費だけで600万円です。これと並べて比較する対象は、開発費に5年分の保守費を足した額です。利用者が多く、販売管理や会計など基幹システムとの連携仕様が自社固有なら、開発のほうが総額でも運用でも見通しが立ちやすくなります。この比較を中立に試算したい場合は、一創のSalesforce導入支援サービス・Apex開発で、既存アプリの評価と開発見積もりを同じ前提で並べるところから相談できます。
見送る場面:管理パッケージを重ねて項目と自動化が衝突し始めた組織
新しいアプリを足すべきでない場面もあります。同じ商談や取引先のオブジェクトに、自前の項目と自動化を持つ管理パッケージがすでに2本以上入っている組織です。3本目を足すと、どの処理が先に動いて値を上書きしたのかを追えなくなり、不具合の原因調査に提供元を何社も巻き込むことになります。
この状態では、追加の前に棚卸しをします。使われていないパッケージを外し、残すものの自動化の順序を整理してから次を検討する。提供元の最終更新が1年以上止まっているアプリも、中身を直せない以上、早めに置き換え先を決めておくべき対象です。
自社製品をAppExchangeへ出品する企業のパートナー登録と審査準備
AppExchangeは導入する側だけでなく、自社のソフトウェアをSalesforce利用企業へ届けたい会社の販路でもあります。
AgentExchangeパートナープログラムへの参加から掲載までの流れ
出品の入口はパートナープログラムです。Trailheadの「AgentExchange パートナープログラム入門」によると、参加は無料で、承認後はパートナーコミュニティで開発・販売・配布の資料、週次のオフィスアワー、サポートケースの窓口を使えます。掲載の管理はパートナーコンソールで行い、チームメンバーにはリスティングの権限を割り当てます。
流れとしては、プログラムに参加し、管理パッケージとして製品を作り、セキュリティレビューを通してから、リスティングを公開します。無料で配る製品と有料で売る製品では審査費用の扱いが違うため、価格モデルを先に決めておくと準備の手戻りが減ります。
再提出のたびに費用がかかる準備不足:データフロー図とスキャン結果
前述のセキュリティレビューの申請ユニットは、提出物として利用ドキュメント、Salesforce組織と外部サイトやモバイルアプリの間のデータフローを示す資料、実施したスキャナーのレポートを挙げています。管理パッケージではSalesforce Code Analyzerのスキャン結果の提出が必須で、出せない場合は理由の説明が求められます。
再提出は1回ごとに999ドルかかるため、受託でパッケージを開発する場合は、開発の終盤ではなく設計段階でデータフロー図を書き、スキャンを開発の流れに組み込んでおくのが現実的です。審査に通すための作業を最後にまとめて行う進め方は、費用と期間の両方で不利になります。
よくある質問
AppExchangeの導入を検討する担当者から寄せられやすい質問をまとめました。
AppExchangeとAgentExchangeは別のサービスですか?
別のサービスではありません。2026年4月に、AppExchange、Slack Marketplace、Agentforceのエコシステムが新しいAgentExchangeとして1つのカタログに統合されました。従来のAppExchangeのアプリもAgentExchangeで探せます。日本語サイトのappexchangejp.salesforce.comも稼働を続けており、トップに統合の告知が表示されています。組織にパッケージを入れる手順や、管理パッケージと未管理パッケージの区別は以前と同じです。
AppExchangeのアプリは無料で使えますか?
無料のものと有料のものがあります。有料アプリの多くは利用者数に応じた料金で、2026年の統合後は、パートナーが個別条件の見積もりをSalesforce内で提示し、Salesforceが請求をまとめる仕組みも用意されました。無料アプリでも、外部サービスの契約が別途必要な場合があります。リスティングの価格表示に加えて、連携先のサービス料金も確認してください。
インストールしたアプリはアンインストールできますか?
設定の「インストール済みパッケージ」から削除できます。ただし、アプリの項目を参照するレポートやフローを自社で作っていると、それらを先に外さないと削除が止まる場合があります。導入の時点で、アプリの項目に依存する自社の設定を一覧にしておくと、外すときの作業量を見積もることが可能です。削除後に残るデータの扱いは提供元の資料で確かめておきます。
セキュリティレビューに合格したアプリなら安全と考えてよいですか?
出品者の作り方についてSalesforceが審査したという意味では、一定の確認は済んでいます。ただし新しいバージョンは再申請なしで公開できるため、毎回の版上げが個別に審査されているわけではありません。また、自社データを提供元のサーバーへ送ってよいかは自社の規程で判断する事柄です。外部送信の有無と送信先は、導入前に必ず確かめてください。
欲しい機能のアプリが見つからない場合はどうすればよいですか?
まず標準機能のフローやレポートで実現できないかを確かめ、それでも足りなければ開発を検討します。小さな画面部品ならLightningコンポーネント、業務ロジックならApexで作るのが一般的です。アプリを見つけても要件の大半を満たせない場合は、周辺の作り込みが膨らむ前に開発との比較へ切り替えたほうが、総額を抑えやすくなります。