該非判定とは、輸出しようとする貨物や海外へ提供する技術が、外為法にもとづくリスト規制の品目に「該当」するか「非該当」かを、法令の仕様と突き合わせて確かめる作業です。結果は該非判定書として残り、通関や取引先への回答、監査のたびに引き出されます。この記事では、判定の手順と使う帳票、該非判定書に書く項目、メーカーから受け取った判定書の確かめ方を順に整理し、最後に判定結果を台帳としてどう持つか、Excelから業務システムへ移す判断までを扱います。
まとめ|該非判定は型番と判定時点の法令をひも付けて記録に残す業務
結論から並べます。
- 該非判定は「許可が要るかどうか」を決める前段の作業です。判定対象は輸出令別表第1と外為令別表の1〜15項で、非該当でもキャッチオール規制の確認は別に残ります。
- 手順は対象の抽出、項番の選定、仕様の照合の3段階です。道具はCISTECの項目別対比表とパラメータシートが標準で、2026年10月時点の最新はいずれも2026年2月版です。
- 該非判定書には型式、根拠となる政令の項番と省令の条項、判定時点の法令、判定結果と根拠を書きます。法令で決まった様式はありません。
- 法令は毎年のように改正されます。過去の判定書をそのまま使い回すのではなく、改正のたびに結果が変わらないかを確かめ、その記録を残してください。
- 型番が数百を超えたあたりから、Excelでは版違いと改正年度の管理が追いつかなくなります。判定そのものは人が持ち、台帳と承認と保管をシステムに載せるのが現実的な線引きです。
実務で効いてくるのは4番目です。判定書は作った瞬間から古くなっていきます。
該非判定の意味とリスト規制・キャッチオール規制で確かめる範囲
該非判定が何を決める作業なのかを、法令の位置から押さえます。判定の範囲を取り違えると、非該当の判定書があるのに許可が必要だった、という事態が起こります。
外為法の許可が要るかを決める前提作業としての該非判定の位置づけ
貨物の輸出は外国為替及び外国貿易法(外為法)の第48条、技術の提供は第25条が許可の根拠です。どちらも、政令で定める品目や技術に当たるものを特定の形で出すときに、経済産業大臣の許可を求めています。
該非判定は、この許可の要否を決める入口にあたります。判定の結果が「該当」なら、輸出先がどの国であっても許可申請へ進みます。「非該当」なら、リスト規制のうえでは許可は不要です。
対象は製品だけではありません。設計図面や製造ノウハウを海外拠点へメールで送る、外国籍の技術者に社内で教える、といった技術提供も判定の対象に入ります。社内でこの点が共有されていないと、出荷伝票の起票時にしか判定が行われず、技術提供の判定が抜け落ちます。
輸出令別表第1の1〜15項に照らすリスト規制と16項の扱いの違い
リスト規制の品目は、輸出貿易管理令(輸出令)別表第1と外国為替令(外為令)別表に並んでいます。ジェトロの貿易・投資相談Q&Aは、1〜15の項に該当し、貨物等省令で定める仕様に当たるものは「いずれの国であっても」事前の許可が必要だと整理しています。
政令には品目名しか書かれていません。具体的な数値や性能の閾値は貨物等省令にあり、用語の解釈は運用通達にあります。判定には政令・省令・通達の3つを並べて読む必要があり、ここが慣れない担当者の最初のつまずきどころです。
16の項はほかの項と性格が異なります。リスト規制で非該当になった品目のうち、木材や食料品などを除くほぼすべてを受け止める枠で、後述のキャッチオール規制の対象を示します。該非判定書に「16の項に該当」と書くのは、リスト規制の非該当を前提に、キャッチオール規制の確認が別途必要であることを明示するためです。
非該当でも許可が要るキャッチオール規制の用途要件と需要者要件
リスト規制で非該当と判定しても、それで手続きが終わるわけではありません。キャッチオール規制では、大量破壊兵器や通常兵器の開発に使われるおそれがあるとき、品目が何であれ許可が必要になります。
判断の材料は2種類です。ひとつは経済産業大臣から許可申請を求める通知が来ているかというインフォーム要件、もうひとつは用途と需要者を輸出者自身が確かめる客観要件です。客観要件では、契約書や引合いの内容から用途を確認し、経済産業省が公表する外国ユーザーリストに需要者が載っていないかを照合します。
実務では、品目の該非判定と取引ごとの審査を分けて設計するのが通例です。該非判定は製品マスタに紐づく一度きりに近い作業、取引審査は受注のたびに行う作業という違いがあり、システム化するときも別の画面と別の承認ルートになります。取引審査の流れと、遵守基準省令が求める社内体制(CP)の組み立て方は「輸出管理とは?輸出貿易管理令の読み方とCP・取引審査を台帳で回す実務」で扱っています。
該非判定の手順を対象抽出・項番選定・仕様照合の3段階で進める流れ
判定の手順は、どの解説を読んでもおおむね3段階にまとまります。段階ごとに失敗の型が違うので、分けて見ていきます。
対象の貨物と技術を型番単位で洗い出す抽出工程と部分品の落とし穴
最初に、輸出する貨物と提供する技術を、パッキングリストやインボイスに載る名称と型番の単位で特定します。製品名で「〇〇シリーズ」とまとめてしまうと、仕様の違う型番が同じ判定に含まれ、後で根拠を説明できなくなります。
見落としやすいのが部分品と組込品です。CISTECの該非判定手続の基礎講座は、本体が規制対象なら専用設計の部分品も規制されうること、反対に本体が非該当でも、組み込んだ部品が単体で規制品に当たる場合があることを注意点に挙げています。補修部品や保守用の交換ユニットを単体で出荷する企業は、本体とは別に判定対象として登録しておく必要があります。
項目別対比表とパラメータシートを使い分ける項番選定と仕様照合
対象が決まったら、該当しうる項番を選び、省令の仕様と照合します。ここで使う帳票は、安全保障貿易情報センター(CISTEC)が刊行するものが事実上の標準です。
| 帳票 | 構成 | 向いている場面 | 2026年10月時点の版と一般価格 |
|---|---|---|---|
| 項目別対比表 | 別表第1と省令の対応一覧 | 全項番を網羅的に見る | 2026年2月版・8,800円 |
| パラメータシート | 仕様を質問形式で追う | コンピュータや通信の判定 | 2026年2月版・各3,300円 |
版と価格はCISTECの該非判定帳票のページによるものです。パラメータシートはコンピュータ、通信・情報セキュリティ、エレクトロニクス、音響センサー・レーダー、先端材料など分野が限られるため、対象外の項番は対比表で判定します。英文版は作られていないので、海外拠点へ渡すときは自社で訳す必要があります。項番は一つ見つけて終わりにせず、複数の項番に重ねて載っていないかまで確認してください。
技術部門が判定し輸出管理部門が確認する二段構えの社内承認ルール
判定の担い手は、製品の仕様を理解している技術部門が判定し、法令を理解している輸出管理部門が確認する、という分担が基本です。どちらか一方だけで完結させると、仕様の読み違いか法令の読み違いのどちらかが残ります。
名称だけで判定しないことも同じ講座が強調しています。一般にベアリングと呼ぶ部品は法令上は軸受、インバーターは周波数変換器と書かれているため、製品名で別表を検索しても見つかりません。判定者には「機能と特性で読む」訓練が要り、確認者はその読み方が根拠欄に書かれているかを見ます。
承認の流れを紙の回覧で回している企業では、差戻しの履歴が残らないことが監査時に問題になります。誰がどの版の法令で判定し、誰が確認したかを、判定書と一緒に記録として残せる形にしておくと、後の台帳化がそのまま進みます。
該非判定書の記載項目とメーカーから入手する場合の照合・確認事項
判定の結果は該非判定書として残します。自社で作る場合と、メーカーから受け取る場合で、気をつける箇所が違います。
根拠法令の項番と判定時点を必ず書く該非判定書の基本構成と記載項目
該非判定書には法令で決まった様式がありません。CISTECの項目別対比表やパラメータシートに記入したものをそのまま判定書として使う企業もあれば、自社の書式を持つ企業もあります。どの書式でも、次の項目が一つでも欠けると判定書として機能しません。
| 記載項目 | 書き方の要点 |
|---|---|
| 判定対象 | パッキングリストと一致する名称と型式 |
| 根拠法令 | 政令の項番と省令の条・項・号 |
| 判定時点 | どの時点の法令で判定したか |
| 判定結果 | 該当か非該当か、16の項該当の有無 |
| 判定根拠 | 省令の仕様と対比できる製品の数値 |
| 宛先と日付 | 原則として取引先、作成・発行年月日 |
取引先からは「非該当証明書」の名で求められることがよくあります。中身は同じ判定結果の書面ですが、組込品が許可申請の対象になる場合はその旨も書き添えるよう、CISTECの基礎講座は案内しています。
メーカーの判定書を受け取ったら自社で照合し直すべき4つの箇所
商社や組立メーカーは、仕入れた製品の判定をメーカーの判定書に頼ることになります。ただし判定書を受け取っただけでは、自社の判定を済ませたことにはなりません。受け取ったら次の4点を照合します。
- 型式がパッキングリストの記載と一字一句一致しているか
- 判定時点の法令が最新の改正より後か
- 根拠の数値が自社の手元にある仕様書と矛盾していないか
- 16の項該当の記載と、組込品の扱いが書かれているか
依頼の側にも作法があります。出荷直前に依頼すると、メーカー側の判定が間に合わず船積が遅れます。輸出通関以外の目的、たとえば取引先からの調査票への回答のために求めるときは、目的を文書で伝えてください。形式的に項目別対比表の添付を毎回求めたり、組込部品すべての判定を要求したりすると、メーカーの負担が増えるだけで判定の精度は上がりません。
法令改正のたびに既存の判定結果を再確認する運用と記録の残し方
貨物等省令や運用通達は、国際的な輸出管理レジームの合意を受けて、ほぼ毎年改正されます。経済産業省の改正情報のページに施行日つきで一覧が出るので、輸出管理部門はここを定期的に確認する運用にします。
改正があったとき、判定書を全件作り直す必要はありません。改正された項番に関係する型番だけを抜き出し、結果が変わらないかを確かめれば足ります。そのとき「誰が、いつ、どの改正について確認し、結果が変わらなかったか」を記録に残すことを、CISTECの基礎講座も勧めています。
この「変わらなかった」という記録が、Excel管理でいちばん抜け落ちる部分です。判定書のファイルは残っていても、改正後に確認した事実がどこにもない、という状態が監査で指摘されます。
該非判定の台帳化で紙とExcel管理が破綻する場面と持つべきデータ項目
ここからは判定結果をどう持つかの話です。該非判定そのものは人の判断ですが、その記録を引き出せる形で持てるかどうかは、システムの設計で決まります。
型番の版違いと改正年度で判定書が増え続けるExcel管理の限界
Excelの判定一覧は、型番が100程度までならよく機能します。破綻が始まるのは、次のような条件が重なったときです。
- 同じ型番でもファームウェアや材質の違う版があり、判定が版ごとに分かれる
- 改正のたびに判定時点の列が増え、どれが最新かを人が目で探している
- メーカー判定書のPDFが共有フォルダに散らばり、一覧の行と結びついていない
- 出荷データ側から「この出荷にどの判定書が対応したか」を逆引きできない
最後の逆引きができないと、監査で特定の出荷について根拠を求められたとき、担当者の記憶に頼ることになります。型番の数より、版と改正年度の掛け算で行数が増える点が、Excelの限界を早める原因です。
該非判定台帳に持たせる項目と販売・出荷データとつなぐ連結キー
台帳を設計するときは、判定書を1行として持つのではなく、「型番の版」と「判定」を分けて持つと改正に強くなります。最低限の項目は次のとおりです。
| まとまり | 項目の例 |
|---|---|
| 品目 | 型番、版、品名、法令上の名称 |
| 判定 | 項番、省令の条項、結果、判定時点、根拠数値 |
| 承認 | 判定者、確認者、承認日、差戻し履歴 |
| 証跡 | 判定書ファイル、メーカー判定書、改正確認の記録 |
| 連結 | 品目コード(販売・出荷データとの共通キー) |
連結キーは販売管理や出荷のシステムと同じ品目コードを使います。ここが別体系だと、出荷時の照合で人手の読み替えが残ります。貿易実務の側のシステムと判定結果をどう受け渡すかは、貿易管理システムの機能範囲と販売管理との境界で整理した二系統の切り分けと合わせて設計してください。
ワークフローと文書管理を組み合わせる承認ルートと判定書の保管設計
判定から確認、承認までの流れはワークフローシステムの典型的な使いどころです。差戻しの理由と日時が自動で残るため、紙の回覧で抜けていた履歴がそのまま証跡になります。
判定書とメーカー判定書の保管は、文書管理システムの版管理と検索で受け止めます。CISTECの基礎講座も判定書を自主管理の対象書類として保管するよう案内しており、保存年数は社内規程で定める運用です。判定書が差し替えられても旧版を消さず、どの期間にどの版が有効だったかを追える保管にしておくと、過去の出荷について問われても答えられます。
AI・OCRによるスペック照合支援が使える範囲と人が判定を残す範囲
判定件数が多い企業ほど、AIで判定を自動化できないかという相談が出てきます。結論は「下ごしらえには使える、判定は人が持つ」です。
仕様書から数値を抜き出す下ごしらえにAI-OCRを使う場面と効果
該非判定でいちばん手間がかかるのは、製品仕様書やデータシートから、省令の閾値と比べるべき数値を探し出す作業です。動作周波数、精度、耐圧、暗号の鍵長といった値が、仕様書のあちこちに散らばっています。
この抽出はAI-OCRで非定型帳票を読み取る仕組みと同じ構造の問題で、仕様書PDFから候補となる数値と単位を拾い、台帳の根拠数値欄へ下書きとして入れるところまでは機械に任せられます。判定者が行うのは、白紙から探す作業ではなく、抜き出された候補を原本と見比べて確かめる作業です。メーカー判定書の受領が年間数百件ある商社では、型式と判定時点の読み取りだけでも照合の手間が目に見えて減ります。
該非判定そのものをAIに任せない理由とAI-OCRの導入を見送るべき条件
判定の最終結果をAIに出させる設計は採りません。理由ははっきりしています。法令上の名称と一般名称のずれ、運用通達にしか書かれていない解釈、複数項番への重複掲載といった、CISTECが注意点に挙げる論点は、いずれも文字面の照合では拾えません。誤って非該当とした場合の責任は輸出者に残ります。
次の条件に当てはまる企業は、AI-OCRの導入自体を見送ってよいでしょう。判定対象の型番が年に数十件程度で、仕様書の書式がメーカー数社に限られている場合です。この規模なら、項目別対比表と台帳の整備だけで手間は十分に下がり、AIの読み取り精度を検証する工数のほうが大きくなります。
パッケージより受託開発を選ぶ条件と開発相談前にそろえておく数字
該非判定の管理機能を持つパッケージ製品はありますが、自社の品目マスタや出荷システムとの連結が要件の中心にある場合は、受託開発で既存の基幹側に台帳を載せるほうが素直に収まります。判断の目安は3つです。品目コードがすでに社内で統一されていること、出荷データからの逆引きが監査上必要なこと、メーカー判定書の受領件数が年間数百件を超えていること。
相談の前には、判定対象の型番数、年間の判定書の作成件数と受領件数、承認に関わる部門の数をそろえておくと、見積りの幅が狭まります。判定台帳と判定書の保管、承認フローを一体で組む場合の進め方は、文書管理システム開発のページで紹介しています。
該非判定の担当者・該非判定書の有効期限と入手先についてよくある質問
該非判定を初めて担当する方から寄せられやすい質問をまとめました。
該非判定は誰が行う必要がありますか?
法令が判定者の資格を定めているわけではなく、輸出者が自らの責任で行います。社内では製品の仕様を理解している技術部門が判定し、法令を理解している輸出管理部門が確認する分担が基本です。メーカーから仕入れた製品であれば、メーカーの判定書を入手したうえで、型式や判定時点、根拠の数値を自社で照合し直します。判定書を受け取っただけで照合しないまま輸出すると、誤判定の責任は輸出者に残ります。
該非判定書と非該当証明書は何が違いますか?
実務上はほぼ同じ書面を指します。該当か非該当かを判定した結果をまとめたものが該非判定書で、結果が非該当のものを取引先が「非該当証明書」と呼んで求めることが多い、という関係です。どちらも法令で決まった様式はなく、CISTECの項目別対比表やパラメータシートを使う例や、自社書式で発行する例があります。名称より、型式・根拠法令・判定時点が書かれているかで中身を確かめてください。
該非判定書に有効期限はありますか?
判定書自体に期限の定めはありません。ただし判定は「その時点の法令」にもとづく結果なので、貨物等省令や運用通達が改正されると、同じ製品でも結果が変わることがあります。改正があったら、影響する項番に関係する型番について結果が変わらないかを確認し、確認した日と担当者を記録に残します。古い判定書を、改正後に確かめないまま使い続ける運用は避けてください。
国内の取引先に販売する場合でも該非判定は必要ですか?
国内での販売そのものは外為法の輸出許可の対象ではありません。ただし販売先が製品を組み込んで輸出する場合、その企業から該非判定書の提出を求められることがよくあります。求められた際の目的が輸出通関なのか、社内調査なのかで必要な記載が変わるため、依頼の目的を確認してから発行してください。経済安全保障の観点からの調達先調査については経済安全保障推進法の解説も参考になります。
該非判定の項目別対比表はどこで入手できますか?
安全保障貿易情報センター(CISTEC)が刊行しており、同センターのウェブサイトから購入できます。2026年10月時点の最新は2026年2月版で、一般価格は項目別対比表が8,800円、分野別のパラメータシートが各3,300円です。電子版は月額制のデータベース「該非判定コーナー」として提供されています。改正のたびに版が改まるため、手元の版が判定時点の法令に対応しているかを確かめてから使ってください。
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