ChatGPT Atlasは、OpenAIが2025年10月21日にmacOS向けに公開した、ChatGPTを中核に組み込んだWebブラウザです。OpenAIは2026年7月9日に廃止を告知し、Atlasは2026年8月9日に動作を停止しました。Windows版・iOS版・Android版は告知されたまま公開されていません。終了日と移行手順の一次情報はOpenAI公式のAtlas終了・移行案内で確認できます。
この記事では、Atlasでできたこと(サイドバー、エージェントモード、ブラウザメモリ)と終了までの経緯を、OpenAIのリリースノートとヘルプセンターの記述で整理します。そのうえで、後継となるChatGPTデスクトップアプリの内蔵ブラウザとブラウザ拡張に、Atlasのどの機能が引き継がれたのかを対応表で示します。
まとめ:ChatGPT Atlasの現状と移行の要点
- 現在は使えません。Atlasは2026年8月9日に停止しました。OpenAIはブラウザのセキュリティ更新が止まる前提で、サポートされたブラウザ環境へ移るよう案内しています。
- 提供はmacOSだけでした。公開時の発表で「近日提供」とされたWindows・iOS・Android版は、終了まで出ていません。
- Atlas本体は無料でした。Free・Go・Plus・Proで使え、エージェントモードはPlus・Pro・Business向けのプレビューでした。
- 移行先は2つです。ブラウザ操作を任せるならChatGPTデスクトップアプリ(macOS・Windows)の内蔵ブラウザ、普段のChromeなどでページを見ながら質問するならChatGPTのブラウザ拡張です。
- 引き継がれないデータがあります。ブックマーク・開いていたタブ・閲覧履歴は自動では移らず、ChatGPTの会話履歴だけはChatGPT側に残ります。
ChatGPT Atlasの位置づけ:ChatGPTを内蔵したmacOS専用ブラウザ
Atlasは「ChatGPTを中核に据えた新しいWebブラウザ」として発表されました。公開時の対象はmacOSのFree・Plus・Pro・Goユーザーで、Businessはベータ、EnterpriseとEduは管理者が有効にした場合に使えました。Businessワークスペースでは既定で有効、Enterpriseでは既定で無効です。動作環境はApple silicon(Mシリーズ)搭載MacとmacOS 14.2以降で、Intel Macは対象外でした(公式ヘルプは「macOS 14.2 Monterey」と表記していますが、Montereyは12の名称で、14はSonomaです)。初回起動時にChatGPTへサインインし、既存ブラウザからブックマーク・保存済みパスワード・閲覧履歴を取り込む流れです。
ChatGPTアプリとAtlasの違い
ChatGPTのWeb版やデスクトップアプリは「チャットの画面にページの内容を持ち込む」使い方でした。Atlasは逆で、ブラウザそのものにChatGPTが入っており、表示中のページをコピーせずに要約・質問・フォーム入力の手伝いを頼めます。会話履歴とChatGPTのメモリはアカウント共通なので、Atlasで始めた会話はChatGPT側でも開けました。Atlas固有のデータはブックマーク、閲覧履歴、Cookie、ブラウザメモリで、終了時に問題になったのはこちらです。
Chromiumをアプリの外で動かすOWLアーキテクチャ
AtlasはChromiumベースですが、Chromiumの見た目を差し替えただけのブラウザではありません。OpenAIの技術解説によると、UIはSwiftUI・AppKit・Metalで作り直し、Chromiumのブラウザプロセスをアプリ本体の外に出して「OWL(OpenAI’s Web Layer)」という独立したサービス層として動かしていました。両者はChromium由来のIPCであるMojoで通信します。狙いは起動の速さ(Chromiumの起動を待たずに画面を描く)、タブを増やしても重くならないこと、エージェント機能の土台づくりの3点でした。
ChatGPT Atlasの提供開始・更新・終了の時系列
Atlasの公開期間は約9か月半です。公開リリースノートの最終掲載は2026年3月10日のビルド1.2026.63.7です。ただし更新自体はその後も続いており、2026年3月31日に起きたAxiosライブラリの侵害を受けたmacOSアプリの署名証明書更新の告知では、新しい証明書で署名されたAtlasの最初のビルドとして1.2026.84.2が案内されています。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年10月21日 | macOS版を公開(エージェントモードはプレビュー) |
| 2025年11月18日 | 縦型タブ、既定の検索エンジンにGoogleを選択可能に |
| 2025年12月18日 | 同一ログインで複数プロファイルを作成可能に |
| 2025年12月22日 | プロンプトインジェクション対策の更新を公表 |
| 2026年1月21日 | タブグループ、ChatGPTとGoogleを自動で切り替える「Auto」検索 |
| 2026年2月 | 保存済みプロンプト、タブ検索の刷新、タブの自動整理 |
| 2026年3月10日 | 公開リリースノート上の最終ビルド |
| 2026年3月31日以降 | 署名証明書の更新でビルド1.2026.84.2を配布 |
| 2026年7月9日 | 廃止を告知、新ChatGPTデスクトップアプリを公開 |
| 2026年8月9日 | Atlasが動作を停止 |
| 2026年8月31日 | ブラウザ拡張がEdge・Brave・Opera・Vivaldiに対応 |
Windows版とスマホ版が出なかった経緯
公開時の発表には「Windows、iOS、Androidの体験は近日提供」と書かれていましたが、リリースノートにWindows版やモバイル版の公開は一度も載っていません。代わりに2026年7月9日に、ChatGPT・Codexを1本にまとめた新しいデスクトップアプリがmacOSとWindowsで同時に公開され、ブラウザ機能はそちらへ移りました。Windows版Atlasのインストーラーは提供されなかったため、Windowsではデスクトップアプリの内蔵ブラウザを使うのが公式の道筋です。
OpenAIが示した終了の理由
OpenAIの説明は「ブラウザ上のエージェント機能をChatGPTとCodexに取り込むため」の1点です。ヘルプセンターでは、Atlasで得た知見を土台に、複数タブ・ダウンロード・ナビゲーションの改善・アカウントログインに対応したブラウザ体験をChatGPTに持ち込むと説明しています。2026年3月にはCNBCやWall Street Journalが、ChatGPT・Codex・Atlasを1つのデスクトップアプリに統合する計画を報じていました。製品を絞り込んだ背景はOpenAIスーパーアプリ構想の発端となった製品分散と競合圧力の実態で整理しています。
Atlasでできたこと:サイドバー・エージェントモード・ブラウザメモリ
Atlasの機能は3つに集約されます。後継製品で同じことができるかを判断する基準になるので、仕様の境界まで押さえておきます。
Ask ChatGPTサイドバーとフォーム内の文章作成
どのページでも「Ask ChatGPT」サイドバーを開くと、表示中のページを前提に要約・分析・質問ができました。フォームの入力欄ではテキストを選んでChatGPTのアイコンを押すと、その場で書き直しを頼めます。2025年11月18日の更新でサイドバーに「Insert」ボタンが付き、提案文をそのまま入力欄へ差し込めるようになりました。アドレスバーの切り替えでサイトごとにChatGPTからの可視性を切れば、そのページはChatGPTに読まれず、メモリも作られません。
エージェントモードの対象プランと禁止事項
エージェントモードは、ChatGPTがブラウザ上でクリックや入力を行い、買い物かごへの追加や調査のまとめまで代行する機能です。公開時はPlus・Pro・Business向けのプレビューでした。公開時のリリースノートには、次の制約が明記されています。
- ブラウザ内でのコード実行、ファイルのダウンロード、拡張機能のインストールはできない
- PC上のほかのアプリやファイルシステム、ChatGPTのメモリ、保存済みパスワード、自動入力データにはアクセスしない
- エージェントが訪れたページは閲覧履歴に残らない
- 金融機関など特定の機密サイトでは、ユーザーが見ているかを確認するため一時停止する
- 「ログアウトモード」で動かすと既存のCookieを使わず、許可なく各サービスにログインしない
後継のデスクトップアプリの内蔵ブラウザはファイルのダウンロードに対応しているため、「Atlasのエージェントではできなかった作業」が後継では可能になっています。
ブラウザメモリの保存期間と学習への利用
ブラウザメモリは、閲覧したページの要点をChatGPTが覚え、「先週見ていた求人をまとめて」のような依頼に使う機能です。公開時の発表では「完全に任意」とされていましたが、後に更新された設定ヘルプでは「新規ユーザーは既定でオン」と書かれており、使っていた人は設定を確認しておく必要がありました。ヘルプセンターによると、ページの内容はOpenAIのサーバーで要約され、元の内容は要約直後に削除され、プライバシーフィルタを通した要約も7日以内に削除されます。ただし、この7日という期間はメモリ更新に使う要約の保存期間であり、作成済みのブラウザメモリ自体の保存期間ではありません。macOS 26では、要約を端末上で行いサーバーへ送らない設定も選べました。
学習への利用は別の設定です。「Include web browsing」は既定でオフで、オンにしてもGPTBotを拒否しているページは学習に使われません。ただしChatGPT本体で学習を許可していると、サイドバーに添付したページ内容とブラウザメモリを参照したチャットは学習対象になります。BusinessとEnterpriseのコンテンツは学習に使われません。
料金:Atlas本体は無料、エージェントモードは有料プラン
Atlasに独自の料金はなく、ChatGPTの無料プランでもダウンロードして使えました。料金差が出るのはエージェントモードで、公開時点ではPlus・Pro・Businessに限られていました。後継のChatGPT Workもブラウザ作業を担いますが、提供はFreeとGoを除く有料プランです。プランごとの扱いはChatGPT Workの仕組みと料金の解説にまとめています。
Atlasの安全性:プロンプトインジェクションは最後まで未解決
「ChatGPT Atlasは安全か」に対するOpenAI自身の答えは、「対策はしているが、すべての攻撃は防げない」でした。発表文の時点で、Webページやメールに隠した指示でエージェントを乗っ取り、ログイン中のサイトからデータを盗んだり意図しない操作をさせたりする危険を認めています。
2025年12月22日の技術記事では、強化学習で訓練したLLMの攻撃役に自社エージェントを攻撃させ、見つかった手口でエージェントを再訓練する仕組みを公表しました。例として、OpenAIの自動攻撃役が見つけた手口が紹介されています。受信箱に仕込んだメールに誘導され、不在通知の作成を頼まれたエージェントがCEOに退職届を送ってしまうというもので、OpenAIはこの手口を使って防御を強化したと説明しています。記事は、プロンプトインジェクションは詐欺やソーシャルエンジニアリングと同じく完全に「解決」されることはないだろうと結論づけています。
同じ記事で推奨された使い方は、後継の環境でもそのまま通用します。
- ログインが不要な作業では、ログイン済みのセッションを使わせない
- 購入やメール送信の確認画面が出たら、送信先と内容を確かめてから承認する
- 「メールを見て必要な対応を全部して」のような広い指示を避け、作業範囲を具体的に絞る
AIの記憶に悪意ある指示を残す攻撃の手口はメモリポイズニングの解説、ChatGPT側で外部への通信を絞る設定はChatGPTのロックダウンモードで扱っています。
Atlas終了後の移行先:デスクトップアプリの内蔵ブラウザとブラウザ拡張
OpenAIが案内する移行先は、ブラウザでの作業をChatGPTに任せるなら「ChatGPTデスクトップアプリ」、Chromeを使いながら質問するなら「ChatGPTのChrome拡張またはサイドバー」です。Atlasの機能がどちらに移ったかを、内蔵ブラウザの公式ヘルプとブラウザ拡張の公式ガイドの記述で対応づけると次のようになります。
| Atlasの機能 | 移行先 | 違い |
|---|---|---|
| Ask ChatGPTサイドバー | ブラウザ拡張のサイドチャット | Operaは非対応 |
| エージェントモード | Work・Codexの内蔵ブラウザ | 複数タブとダウンロードに対応 |
| ログイン済みサイトでの作業 | ブラウザ拡張(既存プロファイル) | 内蔵ブラウザは独自のCookie |
| ブラウザメモリ | 移行先は確認できず | 終了後の参照可否も未確認 |
ChatGPTデスクトップアプリの内蔵ブラウザの対応環境と機能
2026年7月9日に公開された新しいデスクトップアプリは、Chat・Work・Codexを1つにまとめたアプリで、macOSとWindowsで使えます。Linux版も2026年8月14日にUbuntu 24.04 LTS/26.04 LTS、Debian 13、Fedora 43/44向けのパブリックプレビューが始まりました。内蔵ブラウザはWorkまたはCodexのチャットからツールバーで開くか、macOSならCommand+Shift+B、WindowsならCtrl+Shift+Bで開きます。
内蔵ブラウザは独自のブラウザ状態を持ち、ログイン・自動入力・パスワード管理・拡張機能・ダウンロードに対応します。初めてのサイトでは使用前に許可を求め、許可・拒否したサイトは設定で管理します。2026年8月31日には、対応サイトが公開するツール(WebMCP)をChatGPTが直接呼べる「サイトツール」が加わりましたが、これは内蔵ブラウザ専用で、拡張経由では使えません。旧来のデスクトップアプリは「ChatGPT Classic」として残り、更新は続きますが、新しいエージェント機能は新アプリ側だけで提供される場合があります。
ChatGPTブラウザ拡張でChromeなどを使い続ける場合
普段のChromeのプロファイル、ログイン済みのセッション、開いているタブを使わせたいときはブラウザ拡張を使います。拡張は2026年8月31日からChrome・Edge・Brave・Opera・Vivaldiの5つに対応し、ページ横のサイドチャットはChrome・Edge・Brave・Vivaldiで使えます。Operaはタブの参照とブラウザ操作だけで、作業はデスクトップアプリから始めます。
設定はデスクトップアプリの「Settings > Computer Use」でブラウザを選び、拡張をインストールして「Manage」と表示されれば完了です。WorkかCodexのチャットで「@Chrome」のようにブラウザを指定すると、そのブラウザで作業します。macOSのサイドチャットはCommand+Shift+.(ピリオド)で開けます。
内蔵ブラウザと拡張の選び分け
判断の軸は「どのログイン状態で作業させたいか」です。社内ツールやSalesforceなど、すでにChromeでログインしているサービスを操作させるなら拡張が向きます。逆に、普段のプロファイルにエージェントを触れさせたくない作業、公開ページの調査、ファイルのダウンロードを伴う作業は内蔵ブラウザで切り分ける方が安全です。ログイン不要の作業では、内蔵ブラウザでも対象サイトからログアウトしていることを確認します。内蔵ブラウザは普段のブラウザとは別の状態を保持しますが、そこでログインした状態が自動的に消えるわけではありません。
Atlas以外のAIブラウザを選ぶ場合
Atlasの終了は、単独のAIブラウザに業務を寄せる危うさも示しました。ブラウザを丸ごと乗り換える製品は、提供元の方針転換でブックマークや履歴ごと移行を迫られます。既存のブラウザに拡張として足す方式なら、AI側が終わってもブラウザのデータは残ります。PerplexityのCometはCometブラウザ iPhone版の解説、The Browser CompanyのDiaはDiaブラウザの解説、Anthropicの拡張型はClaude in Chromeの解説、Chrome標準のGeminiはChrome(Gemini)のSkillsの解説で比較材料を載せています。
Atlasが手元に残っている場合の後始末
停止日以降、Atlasは起動・閲覧・エージェント作業ができなくなる可能性があるとOpenAIは説明しています。セキュリティ更新も前提にできないため、残っていても日常のブラウザとして使い続けるべきではありません。データを移す場合は、次の順で確認します。
- ブックマーク:Atlasのブックマークメニューからエクスポートし、HTMLファイルとして保存します。Chromeでは「その他」→「ブックマークとリスト」→「ブックマークと設定をインポート」でそのHTMLを読み込みます。取り込んだ項目は、新しく作られるインポート用フォルダか「その他のブックマーク」に入ることがあります。
- 開いていたタブと閲覧履歴:自動では移りません。Atlasが起動するなら、必要なURLをブックマークするか文書に書き出します。
- Cookieとパスワード:移行先によって扱いが分かれます。ChatGPTデスクトップアプリへは、Atlasが用意したエクスポート機能で(提供される範囲で)移せます。Chromeなど別のブラウザにはCookieやログイン中のセッションを取り込めないため、各サービスに再ログインします。Cookieやセッションのファイルはアカウントを乗っ取れる情報なので、他人に渡さないでください。
- ChatGPTの会話履歴:Atlasのブラウザデータとは別に保存されているため、プランやワークスペース設定の範囲でChatGPTから引き続き開けます。
組織で使っていた場合、OpenAIは管理者に対し、Atlas利用者の洗い出し、社内手順書からAtlasの記述を消すこと、デスクトップアプリとブラウザ拡張がワークスペースで有効かの確認を求めています。
よくある質問
ChatGPT Atlasは今でも使えますか?
使えません。Atlasは2026年8月9日に動作を停止しました。ブラウザ上の作業をChatGPTに任せる機能は、ChatGPTデスクトップアプリの内蔵ブラウザとブラウザ拡張に移っています。
ChatGPTとAtlasの違いは何ですか?
ChatGPTはチャットのサービスで、Atlasはそれを組み込んだmacOS用のWebブラウザでした。会話履歴は共通ですが、ブックマーク・閲覧履歴・Cookie・ブラウザメモリはAtlasだけのデータで、終了時に自動では引き継がれていません。
ChatGPT Atlasの料金はいくらでしたか?
Atlas本体は無料で、ChatGPTのFreeプランでも使えました。エージェントモードは公開時点でPlus・Pro・Businessに限られたプレビュー機能でした。
ChatGPT AtlasはWindowsで使えましたか?
使えませんでした。提供はmacOSだけで、予告されていたWindows版は公開されないまま終了しています。Windowsでは、2026年7月9日に公開されたChatGPTデスクトップアプリの内蔵ブラウザが代わりになります。
Atlasで使っていたChatGPTの会話は消えますか?
消えません。ChatGPTの会話履歴はAtlasのブラウザデータとは別に保存されており、プランやワークスペースの設定に従ってChatGPTで引き続き使えます。