GPT-5.3-Codexは、OpenAIが2026年2月5日に発表したCodex向けのエージェント型コーディングモデルです。GPT-5.2-Codexのコーディング性能とGPT-5.2の推論・専門知識を1つにまとめ、Codex利用者向けには25%速く動かすと発表されました。ただし2026年10月時点では、ChatGPTでサインインしたCodexではすでに選べず、APIも2027年4月1日に停止する予定です。この記事では、発表時の性能と料金に加えて、提供面ごとの現在の状態と後継モデルへの移り方を整理します。なお、ChatGPTの会話用モデル「GPT-5.3 Instant」は名前が似ていますが別のモデルです。
まとめ:GPT-5.3-Codexの性能と提供状況(2026年10月時点)
- 発表:2026年2月5日。ChatGPT有料プランのCodex(アプリ・CLI・IDE拡張・Web)で提供開始。APIは2月24日にResponses APIで公開
- 性能:GPT-5.2-Codex比でTerminal-Bench 2.0が64.0%→77.3%、OSWorld-Verifiedが38.2%→64.7%と大きく伸びた一方、SWE-Bench Proは56.4%→56.8%でほぼ横ばい
- API料金:100万トークンあたり入力$1.75・キャッシュ入力$0.175・出力$14。コンテキスト40万トークン(入力上限27.2万)
- ChatGPTのCodex:2026年5月26日に非推奨となり、モデル選択から外れた。CLIで指定するとHTTP 400で止まる
- API:2026年10月1日に非推奨告知。2027年4月1日に停止し、推奨移行先は
gpt-6-sol - GitHub Copilot:Business・EnterpriseではLTS(長期サポート)モデルとして2027年2月4日まで利用可能
以下、発表内容、提供面ごとの期限、移行時に変わる点の順に見ていきます。
GPT-5.3-Codexの発表内容と位置づけ
GPT-5.3-Codexは「Codexの中で長時間動くエージェント」に寄せたモデルです。OpenAIの発表では、コードを書いてレビューするエージェントから、開発者がコンピューター上で行う作業のほぼすべてをこなすエージェントへ広げる、と位置づけられています。学習と推論にはNVIDIA GB200 NVL72が使われました。
GPT-5.2-CodexとGPT-5.2の能力を統合した設計
GPT-5.3-Codexは、GPT-5.2-Codexのコーディング能力とGPT-5.2の推論・専門知識の能力を1つのモデルにまとめたと説明されています。調査・ツール操作・実装が混ざる長いタスクを1つのモデルで続けられるのが狙いで、知識労働の評価GDPvalでも勝ちまたは引き分けが70.9%と、GPT-5.2と同じ水準を示しました。
作業中に指示を差し込める「ステアリング」も強化されました。モデルが途中経過を頻繁に報告し、ユーザーは完了を待たずに質問や方針修正を送れます。Codexアプリでは「Settings > General > Follow-up behavior」で有効にします。
開発途中の自分自身を使った「自己開発」の中身
OpenAIはGPT-5.3-Codexを「自身の開発に大きく関わった最初のモデル」と説明しています。モデルが自分で自分を学習させたという意味ではありません。開発チームが初期版のGPT-5.3-Codexを道具として使い、次の作業を任せたという意味です。
- 研究チーム:学習の監視とデバッグ、学習中の傾向の追跡、旧モデルとの挙動差を見るためのアプリ作成
- エンジニアリングチーム:コンテキストの描画バグの特定、キャッシュヒット率が低い原因の調査、トラフィック急増時のGPUクラスタの自動増減
- アルファテスト:1ターンあたりの進捗を測るため、確認質問の頻度や肯定・否定の反応を数える正規表現の分類器を作り、全セッションログに適用
ベンチマークで見るGPT-5.2-Codexとの差
OpenAIの発表記事「Introducing GPT-5.3-Codex」の付録に載った値を並べると、伸びた領域がはっきり分かれます。いずれも推論強度xhighでの値です(GDPvalのGPT-5.2のみhigh)。
| ベンチマーク | GPT-5.3-Codex | GPT-5.2-Codex | GPT-5.2 |
|---|---|---|---|
| SWE-Bench Pro(Public) | 56.8% | 56.4% | 55.6% |
| Terminal-Bench 2.0 | 77.3% | 64.0% | 62.2% |
| OSWorld-Verified | 64.7% | 38.2% | 37.9% |
| GDPval(勝ち+引き分け) | 70.9% | – | 70.9% |
| サイバーセキュリティCTF | 77.6% | 67.4% | 67.7% |
| SWE-Lancer IC Diamond | 81.4% | 76.0% | 74.6% |
差が大きいのはTerminal-Bench 2.0(+13.3ポイント)とOSWorld-Verified(+26.5ポイント)です。前者はターミナル操作、後者は画面を見ながらデスクトップ作業を完了させる評価で、OSWorld-Verifiedの人間のスコアは約72%とされています。一方、実際のリポジトリの課題を解くSWE-Bench Proは+0.4ポイントにとどまりました。
この表から読み取れるのは、コードの修正精度そのものより、コマンドを打ち、結果を見て次の手を決める「作業の継続力」が伸びたモデルだということです。ただし、SWE-Bench Proの得点差だけでは、単発のパッチ生成における乗り換え効果までは判断できません。OpenAIはTerminal-Bench 2.0の結果を、従来のどのモデルより少ないトークンで出したとも説明しています。
なお、2026年3月5日のGPT-5.4の発表では、GPT-5.3-CodexのOSWorld-Verifiedが74.0%として載っています。元の画像解像度を保つAPIパラメータを新たに使った再計測値で、上の64.7%とは測定条件が異なります。
提供面ごとの提供開始日と現在の状態
GPT-5.3-Codexの扱いは、どこから使うかで期限が違います。2026年10月5日時点の状態は次のとおりです。
| 提供面 | 提供開始 | 現在の状態 | 期限・移行先 |
|---|---|---|---|
| Codex(ChatGPTサインイン) | 2026-02-05 | 2026-05-26に非推奨 | 選択不可。推奨はgpt-6.1-sol |
| Codex(APIキー認証) | 2026-02-24 | 利用可・非推奨 | APIと同じ |
| OpenAI API(Responses) | 2026-02-24 | 2026-10-01に非推奨告知 | 2027-04-01停止・gpt-6-sol |
| Copilot Business・Enterprise | LTS指定 2026-03-18 | 利用可(LTS) | 2027-02-04まで |
| Copilot Pro・Pro+ | – | 利用可 | 通常の廃止スケジュール |
ChatGPTサインインのCodexで指定したときの挙動
Codexの変更履歴によると、GPT-5.3-CodexとGPT-5.2は2026年5月26日に、ChatGPTでサインインしたユーザーが選べるモデルから外れました。APIキーで認証したCodexはこの変更の対象外です。
2026年10月5日に、ChatGPTアカウントでサインインしたcodex-cli 0.153.4でモデルを指定して実行すると、次のように止まりました。
$ codex exec -m gpt-5.3-codex --skip-git-repo-check "say ok"
warning: Model metadata for `gpt-5.3-codex` not found. Defaulting to fallback metadata; this can degrade performance and cause issues.
ERROR: {"type":"error","status":400,"error":{"type":"invalid_request_error","message":"The 'gpt-5.3-codex' model is not supported when using Codex with a ChatGPT account."}}
$ echo $?
1
別モデルへの自動切り替えは起きず、終了コード1で終わります。CIやスケジュール実行で codex exec -m gpt-5.3-codex を固定していると、その時点からジョブが失敗し続けます。設定ファイルとスクリプトからモデル名を消すのが先決です(手順は後述)。
APIの提供終了日(2027年4月1日)
OpenAIは2026年10月1日、gpt-5.3-codex を gpt-5.1・gpt-5.4-nano とともに非推奨にしました。停止日は2027年4月1日で、推奨移行先は gpt-6-sol です(OpenAI APIのDeprecationsページに掲載)。OpenAIの規定ではCodex派生モデルの告知期間は最低3か月ですが、今回は6か月前の告知になっています。
先行したGPT-5.2-Codexは2026年4月22日に告知され、7月23日にAPIから削除されました。経緯はGPT-5.2-Codexとは|2026年7月23日のAPI提供終了と移行先gpt-5.6-solにまとめています。
GitHub CopilotのLTSモデルとしての扱い
GitHubは2026年3月18日、GPT-5.3-Codexを最初のLTSモデルに指定しました。Copilot BusinessとCopilot Enterpriseでは、発表日の2026年2月5日から12か月、2027年2月4日まで使い続けられます。5月17日からは、組織が他のモデルを承認していないときに使われる基本モデルにもなりました。当時のプレミアムリクエスト倍率は1倍でしたが、2026年6月1日以降の従量課金には、この倍率は適用されません。
個人向けのCopilot Free・Pro・Pro+にはこの約束は適用されず、通常の廃止スケジュールに従います(Freeはモデルを直接選べず、自動選択経由のみ)。Copilotでのモデル選択全般はGitHub Copilot Chatとは?使い方・料金・マルチモデル対応を2026年版で解説を参照してください。
GPT-5.3-CodexのAPI仕様と料金
APIのモデルIDは gpt-5.3-codex で、スナップショットはこの1つだけです。使えるのはResponses APIのみで、Chat Completions・Batch・Assistantsからは呼べません。値はOpenAIのGPT-5.3-Codexのモデルページによります。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 入力料金(100万トークン) | $1.75 |
| キャッシュ入力 | $0.175 |
| 出力料金 | $14 |
| コンテキストウィンドウ | 400,000トークン |
| 最大入力 | 272,000トークン |
| 最大出力 | 128,000トークン |
| 知識のカットオフ | 2025年8月31日 |
| 推論強度 | low・medium・high・xhigh |
| 入力形式 | テキスト・画像 |
| Tier 1のレート制限 | 500 RPM・50万 TPM |
料金はGPT-5.2-Codexと同額です。組み込みツールは関数呼び出し・Web検索・ホスト型シェル・スキルに対応し、ストリーミングと構造化出力も使えます。
gpt-6-solへの移行手順と注意点
停止日まで半年ありますが、Codexのサインイン経路ではすでに使えないため、設定の棚卸しは今のうちに済ませておくのが安全です。
gpt-5.3-codexとgpt-6-solの仕様・料金の差
| 項目 | gpt-5.3-codex | gpt-6-sol |
|---|---|---|
| 入力(100万トークン) | $1.75 | $2 |
| キャッシュ入力 | $0.175 | $0.2 |
| キャッシュ書き込み | 課金なし | $2.5 |
| 出力 | $14 | $10 |
| コンテキスト | 400,000 | 1,050,000 |
| 最大入力 | 272,000 | 922,000 |
| 推論強度 | low〜xhigh | none〜max(既定medium) |
| 知識のカットオフ | 2025-08-31 | 2026-04-20 |
単価は入力が上がり、出力が下がります。入力10万・出力2万トークンのリクエストをキャッシュなしで比べると、gpt-5.3-codexは$0.175+$0.28=$0.455、gpt-6-solは$0.2+$0.2=$0.40です。同じ入力・出力トークン数で、キャッシュ課金や長文入力の割増がない場合は、出力の比率が高いほどgpt-6-solの料金面の利点が大きくなります。
逆に、同じ長いプロンプトを何度も読ませる処理では注意が要ります。gpt-6-solはキャッシュへの書き込みが入力単価の1.25倍で課金され、入力が27.2万トークンを超えるとリクエスト全体の入力が2倍・出力が1.5倍の単価になります。gpt-5.3-codexは入力上限が27.2万なのでこの条件に当たりませんでしたが、gpt-6-solで長いコンテキストを使い始めると請求額が跳ねることがあります。
モデル名が残っている場所の洗い出し
Codexの設定は model 以外にも、/review 用の review_model、新規スレッド用の [models.new_thread]、プロファイルなどに分かれています。リポジトリのルートで、Codexの設定ディレクトリとリポジトリ全体をまとめて検索します。-F を付けると、モデル名のピリオドを任意の1文字ではなく文字どおりに扱います。
grep -rnF --exclude-dir=.git "gpt-5.3-codex" ~/.codex/ . 2>/dev/null
見つかった箇所は、ChatGPTサインインで使うなら公式ドキュメントが推奨する gpt-6.1-sol、APIキー認証ならAPIの移行先として示された gpt-6-sol に置き換えます。
# ~/.codex/config.toml
model = "gpt-6.1-sol"
model_reasoning_effort = "medium"
Codex CLIの設定項目や承認モードの詳細はCodex CLIのプロキシ設定・承認モード・オプション一覧|導入とアンインストール【2026年9月】で解説しています。
Responses APIのコードで変わる点
APIから呼んでいる場合、最小の変更はモデル名の差し替えです。以下はOpenAI Python SDKをインストールし、環境変数OPENAI_API_KEYに有効なAPIキーを設定した環境で使う呼び出し例です。推論強度はgpt-5.3-codexで使っていた値をそのまま渡せます。
from openai import OpenAI
client = OpenAI()
log = open("pytest.log", encoding="utf-8").read()
resp = client.responses.create(
model="gpt-6-sol", # 旧: "gpt-5.3-codex"(2027-04-01 停止)
reasoning={"effort": "medium"},
input="次のpytestの失敗ログから原因と修正案を示してください\n\n" + log,
)
print(resp.output_text)
gpt-6-solはChat Completionsでも呼べますが、関数呼び出しを使えるのは推論強度が none のときだけです。gpt-5.3-codexはもともとResponses API専用だったので、Responses APIのまま移すのが手戻りの少ない方法です。品質の確認は、gpt-5.3-codexで成功していたタスクを数件選び、同じ入力でgpt-6-solの出力とトークン使用量を比べるところから始めます。GPT-6世代の上位モデルについてはGPT-6 Astraとは?提供3経路の料金とデータ境界の判断【2026年9月】で扱っています。
サイバーセキュリティ「High」分類と利用制限
GPT-5.3-Codexは、OpenAIが準備態勢フレームワーク(Preparedness Framework)でサイバーセキュリティ能力を「High」に分類した最初のモデルです。ソフトウェアの脆弱性を見つけるよう直接学習させた最初のモデルでもあります。OpenAIは、攻撃を端から端まで自動化できる決定的な証拠はないとしつつ、予防的に当時最も包括的な安全対策を組み合わせて提供しました。
- サイバーリスクが高いと判定したリクエストを、GPT-5.3-CodexからGPT-5.2へ自動で振り替える仕組み
- 防御目的の研究者向けに制限を緩める試験プログラム「Trusted Access for Cyber」
- オープンソースや重要インフラの防御に向けた1,000万ドル分のAPIクレジット
- セキュリティ調査エージェントAardvarkの非公開ベータ拡大
セキュリティ診断の用途で「回答が急に浅くなった」と感じた場合は、この振り替えが働いた可能性があります。誤判定と考えるときは /feedback で報告するか、Trusted Access for Cyberに申請する流れでした。Aardvarkを源流とするCodexのセキュリティ製品はCodex Securityとは?仕組み・料金・Claude Code Securityとの違い【2026年7月版】で紹介しています。後継のGPT-5.4も同じくHigh扱いで提供されました。
GPT-5.3-Codex-Spark(Cerebras版)の仕様と廃止
2026年2月12日には、GPT-5.3-Codexの小型版「GPT-5.3-Codex-Spark」が研究プレビューとして公開されました。リアルタイムのコーディング向けに作られた最初のモデルで、Cerebrasのウェハースケールエンジン3(WSE-3)上で毎秒1,000トークン超を出します。
- 対象:ChatGPT ProユーザーのCodexアプリ・CLI・VS Code拡張。APIは一部の設計パートナーのみ
- 仕様:テキストのみ、コンテキスト12.8万トークン、通常とは別枠のレート制限
- 作業スタイル:最小限の編集にとどめ、指示がない限りテストを自動実行しない
- 安全性:サイバー・生物分野でHigh水準に達する可能性はないと評価
Spark向けに入れた通信経路の改善(常時接続のWebSocket化など)で、往復あたりのオーバーヘッドは80%、トークンあたりは30%、最初のトークンまでの時間は50%短くなったと発表されています。Spark自体は2026年9月14日に廃止され、Codexアプリ・CLI・IDE拡張のいずれでも使えません。
よくある質問
GPT-5.3-CodexとGPT-5.3 Instantは同じモデルですか?
別のモデルです。GPT-5.3-CodexはCodexでのエージェント型コーディング向け、GPT-5.3 InstantはChatGPTの日常会話向けの高速モデルです。APIのモデルIDも gpt-5.3-codex と gpt-5.3-chat-latest で分かれており、後者は2026年8月10日にAPIから外れています。
GPT-5.3-CodexとGPT-5.4はどう違いますか?
2026年3月5日公開のGPT-5.4は、GPT-5.3-Codexのコーディング能力を取り込んだ汎用モデルです。OpenAIの比較ではSWE-Bench Proが57.7%対56.8%、GDPvalが83.0%対70.9%で、GPT-5.4はコーディングを保ったまま文書・表計算などの知識労働を伸ばしています。OpenAIはこの統合でCodexのモデル選びを単純にすると説明しました。
今のCodexではどのモデルを選べばよいですか?
2026年10月時点のCodex公式ドキュメントは、複雑なコーディングとエージェント作業に gpt-6.1-sol、定型的な作業に gpt-6-luna を推奨しています。GPT-5.5も10月14日にChatGPTサインインのCodexから外れる予定です。Codex全体の仕組みと料金はCodexとは?OpenAIの自律型AIコーディングエージェントの使い方・料金・モデルを解説【2026年最新】で解説しています。
GPT-5.3-CodexはChat Completions APIで使えますか?
使えません。公開当初からResponses API(v1/responses)専用で、Chat Completions・Batch・ファインチューニングはいずれも非対応です。既存のChat Completionsベースのコードから呼ぶには、Responses APIへの書き換えが必要でした。
GPT-5.3-Codexの「25%高速化」は何が速くなったのですか?
OpenAIはインフラと推論スタックの改善により、Codex利用者向けにGPT-5.3-Codexを25%速く動かしていると説明しています。モデルの賢さとは別の、応答速度の改善です。加えて、Terminal-Bench 2.0では従来のどのモデルより少ないトークン数で高い結果を出しており、同じ作業を終えるまでの出力量も減っています。