ChatGPTの「高度なアカウントセキュリティ」(英語名 Advanced Account Security、略称AAS)は、OpenAIが2026年4月30日に公開した任意のセキュリティ設定です。有効にするとパスワードでのログインと、メール・SMSを使ったコード送信やアカウント復旧が止まり、パスキーかFIDO対応のセキュリティキー(YubiKeyなど)でしかサインインできなくなります。同じログインで使うCodexにも同じ保護がかかります。引き換えに、鍵とリカバリーキーをすべて失うとOpenAIのサポートでも復旧できません。この記事では、パスキーとセキュリティキーの違い、登録手順、有効化した後のPC・スマホ・Codexでのログイン、リカバリーキーの扱い、OpenAIとYubicoのYubiKeyバンドル、Daybreakでの必須条件を、OpenAIのヘルプセンター(高度なアカウントセキュリティ)の記述をもとに整理します。
まとめ:高度なアカウントセキュリティの要点
- 何が変わるか:パスワード、メールとSMSのサインインコード、メールでのアカウント復旧が無効になり、パスキーとセキュリティキーだけでログインします。セッションは短くなり、ログインのたびにメール通知が届き、会話はモデルの学習に使われなくなります。
- 使えるアカウント:対応地域にある個人向けChatGPTアカウントです。Enterprise管理対象のアカウントと、確認済みかつ申請済みのドメインに紐づくアカウントでは使えません。
- 用意するもの:サインイン方法を2つ以上(うち1つは別の端末でも使えるもの)と、登録時に表示されるリカバリーキーの保管場所です。YubiKeyは必須ではなく、FIDO対応の鍵やパスキーで足ります。
- ログイン:PCもスマホのアプリも、登録したパスキーか鍵でサインインします。Codex CLIは
codex loginがブラウザを開き、そこで同じ認証をします。 - 復旧:リカバリーキーは1回限りで、入力してから48時間後にアカウントのロックが解けます。サポートはパスワードのリセットも設定の解除もできません。
- Daybreak(旧Trusted Access for Cyber):個人で参加する場合は、対象の有料プラン、高度なアカウントセキュリティ、物理的なFIDO2キー1本以上が条件で、既存の個人利用者は2026年10月1日が期限でした。
高度なアカウントセキュリティで変わるログイン・復旧・学習の扱い
通常の設定との違い
OpenAIの発表記事は、この設定を「サインインの保護を強める」「アカウント復旧を厳しくする」「乗っ取られたセッションの影響を小さくする」「アカウントの動きを見えるようにする」という4方向の制御の束と説明しています。ヘルプセンターの記述をもとに、通常の設定との違いを並べると次のとおりです。
| 項目 | 通常の設定 | 高度なアカウントセキュリティ有効時 |
|---|---|---|
| サインイン | パスワード、メール・SMSのコードも可 | パスキーとセキュリティキーのみ |
| アカウント復旧 | メールで復旧できる | 予備の鍵かリカバリーキーのみ |
| サポートによる復旧 | 標準のメール復旧で対応 | 手順の説明のみ(解除・リセット不可) |
| ログイン通知 | 既定ではメール通知なし | ログインのたびにメール通知 |
| セッション | 通常の長さ | 短くなり、再サインインが増える |
| モデルの学習 | データコントロールの設定に従う | 自動で学習に使われない |
| Codex | 同じログインで利用 | 同じ保護が適用される |
ヘルプはセッションについて「より頻繁に再サインインが必要になる場合がある」と書くだけで、何時間で切れるかは公表していません。
防げる乗っ取りの手口
パスワードとメール復旧を同時に止めるのが、この設定の核心です。通常の設定のまま残る乗っ取りの経路と、有効化後にどうなるかを対応させると次のようになります。
- 偽のログイン画面(フィッシング):パスワードを盗まれても、パスワードでのサインイン自体が止まっているので使えません。パスキーとFIDOのセキュリティキーは登録したサイトのドメインに結びつくため、偽サイトでは認証が成立しません(仕組みはFIDO2とパスキーの解説で扱っています)。
- SIMスワップ:電話番号を乗っ取ってSMSのコードを受け取る手口は、SMSのサインインコードが無効になるので通りません。
- メールアカウントの乗っ取り:メールに届くコードやメールでの復旧手続きが止まるため、メールを奪われてもそこからChatGPTに入れません。
- 認証コードの中継:偽サイトに入力させたワンタイムコードを本物のサイトにその場で転送する手口も、コードを使わないので成立しません。ワンタイムコード方式の多要素認証(MFAの方式と耐フィッシング性)との差はここにあります。
逆に、ログイン済みの端末を盗まれる、マルウェアにブラウザのセッションを抜かれるといった被害は、サインイン方法を強くしても防げません。セッションを短くしてログインのたびにメールで知らせるのは、この残りのリスクを小さくするための仕組みです。
高度なアカウントセキュリティの対象アカウントと利用制限
ヘルプセンターは対象を「ChatGPTの対応地域にある、対象の個人用ChatGPTアカウント」としています。プラン名での区切りは書かれていません。一方、次のアカウントは対象外です。
- ChatGPT Enterpriseなど、Enterprise管理対象のアカウント
- 確認済みかつ申請済みのドメイン(会社が所有を証明したメールドメイン)に紐づくアカウント
ChatGPT Businessなどワークスペースに紐づくアカウントは、構成と展開状況によって使える場合と使えない場合があります。判定方法は1つで、ChatGPTのウェブ版で「設定」→「セキュリティ」に「高度なアカウントセキュリティ」が表示されるかどうかです。表示されなければ、そのアカウントでは今は使えません。個人で有効にしたアカウントが後からEnterprise管理対象になると、設定が無効になる場合があるともヘルプは注意しています。
なお、2026年9月以降に更新されたOpenAIのヘルプでは、設定の項目名が「Security and login」(セキュリティとログイン)と書かれているページもあります。手元の画面で「セキュリティ」が見当たらないときは、こちらの名前を探してください。
Enterprise管理対象のアカウントでは、組織のSSOでフィッシング耐性のある認証を必須にする運用を管理者と検討します。社内システム側のパスキー対応やSSO設計まで含めて見直す場合は、認証基盤・ID管理システムの開発支援で相談を受け付けています。
パスキーとセキュリティキーの違いと組み合わせ
パスキーとセキュリティキー(YubiKey)の違い
パスキーはセキュリティキーにも保存できます。ここでは、クラウド経由で同期するパスキーと、物理キー内に保存するパスキーを比較します。違うのは鍵がどこに保存され、なくしたときに何が起きるかです。
| 項目 | パスキー(同期型) | セキュリティキー(YubiKeyなど) |
|---|---|---|
| 鍵の保存先 | iCloudキーチェーン、Googleパスワードマネージャーなど | USBやNFCで接続する物理デバイス |
| 別の端末での利用 | 同じアカウントの端末へ同期される | 接続方式・OS・ブラウザーが対応する端末で使える |
| なくしたとき | 同期先のアカウントが無事なら残る | その1本は使えなくなる |
| 費用 | 追加費用なし | 購入が必要 |
| Daybreak個人参加の条件 | 満たさない | 対象のFIDO2物理キーなら満たす |
同期型のパスキーは手軽な反面、同期元のAppleアカウントやGoogleアカウントの安全性に依存します。物理キーは持ち歩く手間がかかりますが、鍵がその1本の外に出ません。パスキーそのものの仕組みはパスキー認証の解説を参照してください。
登録要件を満たす3つの組み合わせ
登録には、サインイン方法が2つ以上必要で、そのうち1つは「デバイス間で機能する」ものでなければなりません。ヘルプが挙げる有効な組み合わせは次の3通りです。
- パスキー1つと、対応するハードウェアセキュリティキー1つ
- パスキー2つ(少なくとも1つがデバイス間で機能する場合)
- ハードウェアセキュリティキー2つ
つまずきやすいのは2つ目です。1台の端末にしか保存されていないパスキーは、デバイス間の要件を満たさない場合があります。設定画面がパスキーの再設定を求めてきたら、その場でやり直してから先へ進みます。設定画面は、手持ちのサインイン方法が要件を満たすかどうかを表示してくれます。
避けたいのは、2つの方法が同じ1台に依存する状態です。パスキー2つが同じスマートフォンだけに保存されていれば、端末をなくしたときに両方を失います。迷ったら「同期型パスキー1つ+物理キー1本」を選びます。どちらか一方を失っても残りでサインインでき、のちにDaybreakを使うことになっても条件を満たします。
高度なアカウントセキュリティの登録手順(ウェブ・iOS・Android)
登録はウェブ版、Android版、iOS版のどこからでも始められます。モバイルアプリから始めた場合は、途中でウェブブラウザーに切り替わって登録を完了します。
- ChatGPTで「設定」を開く
- 「セキュリティ」を選ぶ
- 「高度なアカウントセキュリティ」を選ぶ
- 「登録」を選ぶ
- 安全な設定ページで「続行」を選ぶ
- サインイン方法を2つ以上追加する(うち1つはデバイス間で機能するもの)
- 表示されたリカバリーキーを保存し、保存したことを確認する
リカバリーキーは、登録を始める前に保管先を決めておきます。パスワードマネージャーのセキュアメモ、紙に書いて金庫に入れるなど、ChatGPTを使う端末とは別の場所が候補です。スクリーンショットを撮って同じスマートフォンに残すだけでは、端末をなくしたときにサインイン方法とリカバリーキーを同時に失います。
登録が終わると、すべての端末からサインアウトされます。作業中の会話や長いCodexのタスクがある時間帯は避け、手元にすべての端末がそろっているときに登録してください。
有効化後のログイン方法(PC・スマホ・Codex)
PC・スマホでのパスキーと物理キーによるログイン
ブラウザーでもiOS・Androidのアプリでも、ログイン画面では登録したパスキーかセキュリティキーを選びます。同期型のパスキーなら顔認証や指紋で、YubiKeyならUSB-Cポートに挿してタッチするか、NFC対応のモデルをスマートフォンにかざして認証します。メールアドレスに届くコードやパスワードの入力欄から進む経路はありません。
Codex CLI・IDE拡張・デスクトップアプリ
Codexの認証ドキュメントによると、ChatGPTのアカウントでサインインする場合、Codex CLI(codex login)、IDE拡張、ChatGPTのデスクトップアプリはいずれもブラウザーのウィンドウを開き、そこでのサインイン結果をCodexへ返します。高度なアカウントセキュリティを有効にしていれば、このブラウザー上でパスキーか鍵を使います。使っている間はトークンが自動で更新されるので、作業のたびにブラウザーでログインし直す必要は通常ありません。
SSHで入ったサーバーなど、ブラウザーを開けない環境では codex login --device-auth のデバイスコード認証(ベータ)を使います。個人アカウントでは、先にChatGPTのセキュリティ設定でデバイスコードでのログインを有効にしておく必要があります。
見落としやすいのが、Codex CLIのセッションは「アクティブなセッション」の一覧に表示されない点です(アクティブなセッションのヘルプ)。開発用のサーバーにログインしたままのCodex CLIがある場合は、その環境で codex logout を実行して資格情報を消してください。
APIキーでCodexやAPIを使う場合は、ChatGPTのサインインとは別の経路です。高度なアカウントセキュリティのヘルプはAPIキーについて何も書いていないので、APIキーは環境変数に置く、アプリに埋め込まないといったOpenAIの保護ガイドの手当てを別に行います。
セキュリティ履歴でのログイン記録の確認
ログインのたびのメール通知に加え、2026年9月25日にはウェブ版の「設定」→「セキュリティとログイン」に「セキュリティ履歴」が加わりました。サインイン、サインアウト、多要素認証やパスキーなどの設定変更が、日時・場所・端末とともに表示されます(ChatGPTのリリースノート)。見覚えのない記録があれば、「アクティブなセッション」から該当する端末をログアウトさせるか、すべてのセッションからログアウトします。全端末のログアウトが反映されるまで最大30分かかります。
リカバリーキーの扱いとアカウント復旧の流れ
リカバリーキーの使い方と置き換え
リカバリーキーは、サインイン方法をすべて失ったときにアカウントへ戻るための最後の手段です。ヘルプが定める扱いは次のとおりです。
- 各リカバリーキーは1回だけ使える
- 有効なリカバリーキーを入力すると復旧が始まり、48時間後にアカウントのロックが解除される。その後、画面の案内に従って復旧を完了する
- 紛失したとき、他人に知られたかもしれないときは置き換える。置き換えると古いキーは無効になる
ヘルプはこの48時間の待機を「セキュリティ上」の措置と説明しています。自分で復旧するときも丸2日はChatGPTとCodexを使えないということです。業務で両方に依存している人は、予備の鍵を必ず1つ持っておくべきです。
置き換えは、「設定」→「セキュリティ」→「高度なアカウントセキュリティ」→「リカバリーキー」の「管理」→「リカバリーキーを置き換える」で行い、新しいキーを保存して確認します。
鍵を1本なくしたときの登録削除と予備の補充
残っているパスキーか鍵でサインインできるなら、復旧手続きは要りません。その時点でやることは3つです。
- セキュリティ履歴とアクティブなセッションを開き、日時・場所・端末から身に覚えのないサインインやセッションがないか確かめる
- 新しいパスキーか鍵を追加してサインインできることを確認し、「設定」→「セキュリティ」の「パスキー」から紛失した鍵の登録を削除する(パスキーのヘルプ)。利用可能なサインイン方法は2つ以上維持する
- リカバリーキーも一緒に保管していたなら、リカバリーキーを置き換える
残りが1つの状態で放置すると、次にそれを失ったときはリカバリーキーしか残りません。サポートはサインイン方法を代わりに追加できないので、自分で操作できるうちに埋めてください。
OpenAIサポートができること・できないこと
OpenAIサポートができるのは、残っている復旧の選択肢を説明することだけです。この設定が有効な間、サポートはメールによる標準の復旧も、パスワードのリセットも、高度なアカウントセキュリティの解除も、サインイン方法の追加や削除もできません。すべてのサインイン方法とリカバリーキーを失えば、アカウントにはもう戻れないと考えてください。
OpenAIとYubicoのYubiKeyバンドル
OpenAI版YubiKeyバンドルの構成と価格・購入手順
OpenAIはYubicoと提携し、OpenAIのロゴ入りYubiKey 2本のセットを優待価格で提供しています。中身は、ノートPCのUSB-Cポートに挿したままにする小型の「YubiKey C Nano – OpenAI」と、PCとスマートフォンの両方で使える予備の「YubiKey C NFC – OpenAI」です。OpenAIのヘルプによれば、このセットはOTP(ワンタイムパスワード)を無効にした構成で出荷され、代わりの経路を減らしています。パスキーなど複数の認証方式に対応するため、ChatGPT以外のサービスにも登録できます。市販のYubiKeyとの違いはこの出荷時の構成とロゴ、セット価格で、AASで使う機能は同じFIDO2です。
価格は、YubicoのOpenAI向け案内ページで2本セット68ドルと示されています(2026年10月27日確認)。税・送料と国ごとの価格は、Yubicoの決済画面で確定します。
購入はOpenAIアカウントにサインインして chatgpt.com/yubikey を開き、対象かどうかの確認を経てYubicoのサイトで決済します。高度なアカウントセキュリティの登録中に「YubiKeyを注文」という案内が出ることもあります。決済・配送・返品・返金・製品の不具合はYubicoのサポートの担当で、OpenAIは受け付けません。高度なアカウントセキュリティに登録しなくても、対象ユーザーならバンドルだけを買えます。
OpenAI版YubiKeyバンドルの日本提供と市販キーでの代替
OpenAIのヘルプ(日本語版を含む)は、2026年10月27日時点でもバンドルを利用できる地域を「米国、英国、EEA」と書いています。一方Yubicoは2026年9月2日公開のブログ(本文は9月1日付)で、日本、オーストラリア、韓国、台湾、シンガポールなど10か国へ提供を広げたと発表しました。両社の案内には地域表記の差があるため、日本から買えるかどうかは chatgpt.com/yubikey にサインインして表示を見るのが確実です。
案内が出なくても困ることはありません。高度なアカウントセキュリティは、FIDO対応のセキュリティキーであればメーカーを問わず使えます。国内で市販のFIDO2対応キー(USB-CとNFCの両対応モデルなど)を1本買い、同期型パスキーと組み合わせれば要件を満たします。手持ちの端末にUSB-Aポートしかない場合は、そちらの形状のモデルを選びます。
Daybreak(Trusted Access for Cyber)で必須になる条件
OpenAIには、身元を確認したセキュリティ専門家に制限の緩いモデルを提供する「Trusted Access for Cyber」というプログラムがあり、現在は「Daybreak」という名前で運用されています。発表記事は、最もサイバー能力が高く許容度の高いモデルを使う個人参加者に高度なアカウントセキュリティを必須にすると予告していました。組織として参加している場合は、代わりにシングルサインオンでフィッシング耐性のある認証を使っていると申告できます。
現在のDaybreakのヘルプが定める個人での参加条件は次のとおりです。
- 対象の有料プランを契約していること
- 高度なアカウントセキュリティを有効にしていること
- 物理的なFIDO2ハードウェアキーを1本以上登録していること。同期型やソフトウェアのパスキーはこの条件を満たさない
- 既存の個人利用者は2026年10月1日までに条件を満たす必要があった
一般ユーザーならパスキー2つで登録できますが、Daybreakの個人参加者は少なくとも1つを物理キーにしなければなりません。Daybreakのトラブルシューティングは、TrustKey T110とT120を個人参加には使えない鍵として名指ししています。高度なアカウントセキュリティを無効にしたり、条件を満たす物理キーが0本になったりすると承認を失いますが、ChatGPTのアカウントや既存の会話が消えるわけではありません。
Daybreakの区分(Blue・Red)と提供モデルはOpenAI Daybreakの解説、旧モデルからの移行はGPT-5.4-Cyberの提供終了と移行先で扱っています。
Googleの高度な保護機能プログラムとの復旧ルールの違い
パスキーか鍵でのログインを必須にする設定は、Googleアカウントの「高度な保護機能プログラム」が先行しています。サインイン方法の制限はよく似ていますが、鍵をすべて失ったときの扱いが大きく違います。
| 項目 | ChatGPTの高度なアカウントセキュリティ | Googleの高度な保護機能プログラム |
|---|---|---|
| サインイン | パスキーかセキュリティキー | パスキーかセキュリティキー |
| 事前の備え | リカバリーキーを保存 | 再設定用のメールと電話番号を登録 |
| 鍵を全部失ったとき | リカバリーキー入力から48時間で解除 | 復旧を申請し、Googleが数日かけて本人確認 |
| サポートの介入 | 不可 | Googleが本人確認して復旧 |
Googleの高度な保護機能プログラムのヘルプは、鍵をなくしてサインインできない場合、復旧を申請すれば数日かけて本人確認をし、再設定用のメールアドレスへ再開できる旨を知らせると説明しています。ChatGPTにはこの申請窓口がなく、リカバリーキーが唯一の道です。Googleと同じ感覚で「最悪はサポートに頼めばよい」と考えて有効にするのは危険で、リカバリーキーを保管する場所を決められない人は、まずパスキーの追加だけにとどめるべきです。
有効化を見送るべきケースと解除の手順
OpenAIが想定する利用者は、ジャーナリスト、公職者、政治的な反体制派、研究者など、標的型の攻撃を受けやすい人と、とにかく最も強い保護を求める人です。加えて、ChatGPTに外部サービスのコネクターをつないでいる人や、Codexで業務のリポジトリを扱っている開発者も、乗っ取られたときの被害が大きいので有効化する価値があります。
逆に、次の条件に当てはまるなら今は有効にしない方がよいと判断します。
- サインイン方法を2つ、別々の場所に保管する手段がない(スマートフォン1台しか持っていないなど)
- リカバリーキーを端末とは別に保管する場所を用意できない
- 家族や同僚と端末を共用していて、パスキーの管理者がはっきりしない
- Enterprise管理への移行を予定しており、移行後の認証方法を管理者と確認できていない
通常の設定でもパスキーと多要素認証を設定できます。多要素認証ではパスワード以外の確認が加わりますが、利用できる別のサインイン方法や復旧経路は残ります。
解除するには、「設定」→「セキュリティ」→「高度なアカウントセキュリティ」→「無効にする」を選び、求められた安全なサインインを完了します。解除すると、パスワードでのサインイン、メールとSMSのサインインコード、メールでのアカウント復旧が元に戻り、ログイン試行のメール通知は止まり、リカバリーキーは削除されます。登録したパスキーとセキュリティキーはアカウントに残りますが、サインインに必須ではなくなります。
ロックダウンモードとの守備範囲の違い
ChatGPTには、名前の似た「ロックダウンモード」という設定もあります。2026年2月に法人向けプランで始まり、6月4日に個人アカウントとセルフサービスのChatGPT Businessへ広がりました。両者は守る対象が違います。
| 項目 | 高度なアカウントセキュリティ | ロックダウンモード |
|---|---|---|
| 防ぐもの | アカウントの乗っ取り | プロンプトインジェクションによるデータ持ち出し |
| 主な変更 | ログインと復旧の方法を制限 | Web閲覧・コネクター等の機能を制限 |
| 使い勝手への影響 | 再サインインが増える | 使える機能が減る |
高度なアカウントセキュリティは「誰がログインできるか」を、ロックダウンモードは「ログイン後のChatGPTが外部とどうつながるか」を絞ります。機密情報を扱う人は両方を併用できます。ロックダウンモードで止まる機能の詳細はロックダウンモードの解説にまとめています。
よくある質問
YubiKeyを持っていないと使えませんか?
いいえ。YubiKeyは任意です。パスキー、FIDO対応のセキュリティキー、またはその組み合わせで、2つ以上のサインイン方法(うち1つはデバイス間で機能するもの)を用意できれば登録できます。物理キーが必須になるのはDaybreakの個人参加者だけです。
有効にした後もパスワードでログインできますか?
できません。パスワードでのサインインと、メールやSMSで届くサインインコードは無効になり、登録したパスキーかセキュリティキーでサインインします。登録直後は全端末からサインアウトされるので、各端末でサインインし直します。
パスキーもリカバリーキーもなくしたらどうなりますか?
アカウントにアクセスできなくなる可能性があります。OpenAIサポートは復旧の選択肢を説明できますが、パスワードのリセット、設定の解除、サインイン方法の追加はできません。未使用のリカバリーキーが残っていれば、入力から48時間後にロックが解除されます。
Codexにも適用されますか?
適用されます。OpenAIは、高度なアカウントセキュリティに登録したログインで使うChatGPTとCodexの両方に保護がかかると説明しています。
無料のアカウントでも使えますか?
ヘルプは対象を「対応地域にある対象の個人用アカウント」としており、プラン名での区切りも、設定そのものの料金も示していません。使えるかどうかは、ウェブ版の「設定」→「セキュリティ」に「高度なアカウントセキュリティ」が表示されるかで判断します。有料プランが条件になるのはDaybreakの個人参加です。