Dreaming V3は、ChatGPTが過去の会話を背景で読み直し、利用者についての記憶を作り直し続けるメモリ方式です。OpenAIが2026年6月4日に発表し、米国のPlus・Proから提供を始めました。従来のsaved memories(保存メモリ)も頼まれずに情報を拾うことはありましたが、Dreaming V3は複数の会話から背景処理で記憶を合成し直し、変化した文脈まで反映します。そのぶん、何が記憶されているかを確かめて直す操作が重要になります。この記事では、OpenAIの発表記事・ヘルプセンターのMemory in ChatGPT・リリースノートを2026年10月9日に確認した内容をもとに、仕組み、提供範囲、メモリ要約での修正・削除、記憶の止め方と分け方を整理します。
まとめ:Dreaming V3の要点
- 仕組み:会話の外で動く背景処理(dreaming)が複数の会話から記憶を合成し直す。予定が過ぎると「行く予定」が「行った」に書き換わる。
- 提供範囲:2026年6月4日に米国のPlus・Proで開始。他の国とFree・Goへは段階展開で、使えるようになると製品内で通知される。Plus・Proは記憶の容量が2倍。
- 確認と修正:Settings(設定)> Personalization(パーソナライズ)> Memory(メモリ)のメモリ要約で確認し、文章で修正を指示するか、該当箇所を選んで直す。
- 削除:情報の出どころ(要約・saved memories・チャット・Libraryのファイル・連携アプリ)ごとに消す。チャットを消しても、そこから作られたsaved memoryは残る。
- 記憶の停止と分離:一回限りなら一時チャット(Unpersonalized)、案件ごとに分けるならプロジェクト単位メモリ。旧方式のsaved memoriesに戻すこともできる。
- 業務利用:メモリ要約は記憶の全量ではない。機密を扱う業務は個人アカウントのメモリに載せず、管理者が制御できるワークスペースで扱う。
Dreaming V3の仕組みと従来のsaved memoriesとの違い
OpenAIの発表記事によると、Dreaming V3は「dreaming」と呼ぶ背景処理の上に作り直したメモリの土台です。dreamingは複数のチャット履歴を会話の裏側で参照し、ChatGPTのメモリ状態を合成し直します。発表記事はこの刷新の目的を、数億人の利用者と数年単位の利用期間でメモリを運用したときに出る3つの問題(記憶が古くなる・誤る・規模に耐えない)への対処と説明しています。
明示指示に頼らない記憶の作り方
2024年4月に始まったsaved memoriesは、会話の最中にしか書き込まれず、記憶するかどうかを「7月にシンガポールへ行くと覚えておいて」のような強い合図に頼って判断していました。会話から細部を拾う動作もありましたが、拾われなかった情報は残りません。OpenAIは自らこの方式を「メモは取ったが、書き留めなかったことはすべて忘れる相手と話しているよう」と表現しています。dreamingは会話に自然に出てきた文脈、たとえば撮影機材の構成や菜食主義であることも、頼まれずに記憶へ取り込みます。
時間の経過で書き換わる記憶
Dreaming V3の目立つ違いは、記憶が時間に追従することです。発表記事の例では、「7月にシンガポールへ行く」という記憶が旅行の終了後に「2026年7月にシンガポールへ行った」へ改められ、帰国後は自宅の地域と時間帯に合わせた提案に戻ります。saved memoriesでは終わった予定が残り続け、旅行が終わってもシンガポールにいる前提の回答が返ることがありました。
OpenAIは良いメモリの条件を「一度伝えた文脈を次のチャットへ引き継ぐ」「好みや制約に従う」「時間の経過を反映する」の3点に置き、2024年のsaved memories、2025年のsaved memories+Dreaming V0、2026年のDreaming V3を同じ評価で比べています。Dreaming V3はこの3点すべてで改善したと説明されていますが、評価の数値はグラフ画像でしか公開されていません。
saved memoriesからDreaming V3までの変遷
Dreaming V3は突然現れた機能ではなく、2年かけて積み上がった更新の到達点です。発表記事とリリースノートで日付を確認できる変更を並べると次のとおりです。
| 時期 | 変更 | 対象 |
|---|---|---|
| 2024年4月 | saved memories(個別の記憶項目を保存)開始 | – |
| 2025年4月 | dreaming初版。チャット履歴の参照を追加 | – |
| 2025年6月3日 | 直近の会話の参照をFreeへ展開 | Free |
| 2025年8月22日 | プロジェクト単位メモリ(project-only memory) | プロジェクト |
| 2025年10月15日 | saved memoriesの自動管理・版履歴 | Plus・Pro(Web) |
| 2026年1月15日 | 過去チャットからの詳細検索を強化 | Plus・Pro(全世界) |
| 2026年5月5日 | memory sources(回答の根拠表示) | 全個人プラン |
| 2026年6月4日 | Dreaming V3・メモリ要約 | 米国Plus・Pro先行 |
| 2026年6月12日 | 「Delete and turn off memory」追加 | 全利用者(Web) |
| 2026年8月14日 | 既存プロジェクトのメモリ設定を変更可能に | 全プラン |
発表記事は、2025年からのdreamingについて「saved memoriesを補ってきたが、単独のメモリ方式としては力不足だった」と述べています。V0とV3の差はこの点にあり、V3はsaved memoriesの補助ではなく、全利用者に共通する主たるメモリの土台として位置づけられました。
Dreaming V3の提供範囲とプラン別の違い
2026年6月4日のリリースノートでは、米国のPlus・Proに当日から提供し、Free・Goと他の国へは数週間かけて広げるとしています。新しいメモリが使えるようになったアカウントには製品内で通知が出ます。6月12日のリリースノートにも「メモリ要約を含むメモリの更新は、プランと国ごとに展開中」とあり、日本での提供開始日は公式には示されていません。
| プラン | Dreaming V3 | 補足 |
|---|---|---|
| Plus・Pro | 米国で先行、他国へ展開 | 記憶の容量が2倍 |
| Free・Go | 段階展開 | Free向けの計算量を約5分の1に削減 |
| Business・Enterprise・Edu | 2026年6月25日から展開 | Enterpriseは対象ワークスペースで既定オン(管理者が停止可) |
| Enterprise(Regulated Workspace)・ChatGPT for Healthcare | 既定でオフ | BAAの対象外。PHIを入力しない |
Freeへの提供が遅れた理由について、発表記事は「品質基準を満たし、大規模に提供できる版を用意できたのは今回が初めて」と説明しています。計算量の削減がFreeへの展開の条件でした。
自分のアカウントで有効かを確かめる手順
Settings(設定)> Personalization(パーソナライズ)> Memory(メモリ)を開き、表示される項目で見分けます。ヘルプセンターは、項目がアカウントのメモリ方式によって「Memory」「Reference saved memories」「Reference chat history」「Memory summary」「Manage」「Saved memories」のいずれかになると説明しています。
- Memory summary(メモリ要約)がある:Dreaming V3(ヘルプ上の名称はimproved memory)が有効。
- Reference saved memories と Reference chat history のスイッチだけでMemory summaryが無い:新方式がまだ届いていない可能性が高い。製品内の通知を待つ。
- Try improved memory がある:旧方式のsaved memoriesに切り替えた状態。選ぶと新方式に戻る。
チャットで「私について何を覚えている?」と尋ねても、記憶の内容を確認できます。
メモリ要約での確認・修正・削除
メモリ要約は、ChatGPTが回答の個人化に使う可能性のある情報の要点をまとめたページです。ヘルプセンターのFAQは「要約には記憶のすべてが含まれるか」という問いに「いいえ」と答えており、関連の薄い情報や要約に向かない情報、個別に表示されない出どころの情報は省かれることがあります。要約を見て安心するのではなく、気になる情報は出どころまでたどって消す必要があります。
誤った記憶の直し方
メモリ要約では次の3つの方法で記憶を直せます。
- 下部のテキスト欄に変更したい内容を書く。要約がそれに沿って更新される。
- 要約の文章を選択して、その部分だけ訂正を入力する。
- 表示される場合は「Don’t mention this again」を選ぶ。以後の回答でその話題に触れにくくなる。
「Don’t mention this again」は触れ方を変えるだけで、元になったチャットやファイルは消えません。消したいのか、触れてほしくないだけなのかで操作を分けてください。回答の下に表示されるSources(根拠)からも、使われたsaved memoryの訂正・削除や、参照されたチャットの削除ができます。
出どころごとの削除と残るデータ
ChatGPTのメモリは、過去のチャット・saved memories・カスタム指示・Libraryのファイル・Gmailなどの連携アプリを出どころにしています。ある情報を完全に消すには、出どころをすべて消します。
| 操作 | 消えるもの | 残るもの |
|---|---|---|
| チャットを削除 | そのチャット | そこから作られたsaved memory |
| saved memoryを削除 | 以後の個人化への利用 | 過去の会話内の記述 |
| Reference chat historyをオフ | 過去チャット由来の記憶(30日以内に削除) | 元のチャット・saved memories |
| Delete and turn off memory | 要約に出ている記憶・メモリはオフ | 過去のチャット |
| Memoryをオフ | 以後の記憶の作成と利用 | 過去のチャット |
削除がメモリに反映されるまでには時間がかかり、OpenAIは削除したsaved memoriesのログを安全とデバッグのため最大30日保持することがあります。また、Memoryをオフにしたままチャット履歴を残し、後でオンに戻すと、残っているチャットから新しい記憶が作られます。記憶させたくない会話は、メモリを戻す前にチャットごと削除しておくのが確実です。
旧方式のsaved memoriesへ戻す方法
自動で記憶が作り直されるのを避けたい場合は、Settings > Personalization > Memory で「Saved memories」を選ぶと、明示的な項目リストで管理する旧方式に切り替わります。新方式に戻すときは「Try improved memory」を選びます。切り替えてもチャット履歴は消えません。
会話ごとのメモリ制御:一時チャットでの記憶停止とプロジェクト内への分離
メモリを丸ごと切るより、会話の種類で分けるほうが便利さを失いません。使い分けの目安は次のとおりです。
- 一時チャット:一回限りの相談や、記憶に残したくない内容を扱うとき。開始前に「Unpersonalized」を選ぶと、既存のメモリ・カスタム指示・プラグインを使わない。一時チャットは記憶を作らず、更新もしない。この選択は会話の途中で変えられない。
- プロジェクト単位メモリ:案件や顧客ごとに文脈を閉じたいとき。同じプロジェクト内の会話だけを参照し、プロジェクトの情報は外のチャットの記憶に持ち出されない。2026年8月14日から既存プロジェクトでもProject settingsで切り替えられる(反映まで数時間かかる場合がある)。共有プロジェクトは常にプロジェクト単位です。なお、プロジェクト単位メモリを使うプロジェクトではChatGPT Workを利用できません。
注意が要るのは、一時チャットを保存した場合です。保存すると通常のチャットに変わり、メモリがオンなら以後の個人化に使われます。
業務でDreaming V3を使うときの判断
Dreaming V3は「頼んでいないことも覚える」方式なので、業務の情報が個人の記憶に混ざりやすくなります。判断の基準は、アカウントの種類と扱う情報の機密度です。
個人アカウントで業務情報を扱わない理由
個人のChatGPTアカウントでは、「Improve the model for everyone」がオンのとき、チャットと記憶した情報がモデルの改善に使われることがあります(Data controlsでオフにできる)。一方、Business・Enterprise・Edu・ChatGPT for Healthcareのワークスペースの内容は、既定で学習に使われません。顧客名・未公開の案件・社内の数値を扱う人が個人アカウントでDreaming V3を使うと、それらが要約に出ない形で記憶に残り得ます。業務の相談は管理者がメモリ設定と権限を制御できるワークスペースに移すべきです。
Dreaming V3を避けるべき場面
次の場面では、新方式のメモリをオフにするか、一時チャットに限定します。
- 医療・個人情報を扱う規制業務。Regulated WorkspaceとChatGPT for Healthcareでは既定でオフで、オンにしてもBAAの対象外のためPHIを入力しない。
- 1人で複数の顧客案件を同じアカウントで扱う運用。ある顧客の前提が別の顧客の回答に混ざる。案件ごとにプロジェクト単位メモリで分けられないなら使わない。なお、アカウントを複数人で共有すること自体をOpenAIは認めておらず、使う人ごとにアカウントを作る必要がある。
- 記憶の根拠を後から説明する必要がある業務。Sourcesは回答に影響したすべての要因を表示するとは限らないと、OpenAI自身がヘルプに書いている。
なお、外部の文書やWebページを読ませる使い方では、悪意のある指示が記憶に書き込まれる「メモリポイズニング」の危険もあります。手口と防御策はメモリポイズニングの解説で整理しています。
ClaudeとGeminiのメモリ機能との違い
3社とも「過去の会話から記憶を作る」方向にそろってきましたが、記憶の単位と、仕事用アカウントでの扱いが違います。2026年10月9日時点の公式ヘルプ(Claudeはチャット検索とメモリのヘルプ)で確認できる範囲を比べると次のとおりです。
| 観点 | ChatGPT(Dreaming V3) | Claude | Gemini |
|---|---|---|---|
| 記憶の作り方 | 背景処理で要約を作り直す | チャット中にトピック単位で保存 | 過去のチャットを参照 |
| 確認する画面 | メモリ要約 | トピック一覧 | チャットで尋ねて直接修正 |
| 個人向けの設定 | Memory設定でオン・オフ | Free・Pro・Maxは既定でオン | Memory設定でオン・オフ(アクティビティの保存も必要) |
| 仕事用アカウント | Enterpriseは対象ワークスペースで既定オン | 所有者が有効化し各自がオン | 過去チャットのメモリーは対象外 |
| 案件ごとの分離 | プロジェクト単位メモリ | プロジェクトごとに独立 | – |
違いが実務に効くのは2点です。1つ目は記憶の見え方で、Claudeはトピック単位で保存するため項目ごとに消しやすく、ChatGPTは要約を文章で直す方式です。2つ目は仕事用アカウントで、ChatGPT EnterpriseとEduでは2026年6月25日に改良メモリの展開が始まり、対象のEnterpriseワークスペースでは約2週間の早期アクセスの後、管理者が止めない限り既定でオンになります。Geminiの過去チャットのメモリーは、Geminiアプリのヘルプによると18歳以上の個人のGoogleアカウントが条件で、仕事用・学校用のアカウントでは使えません。Claudeのメモリ操作はClaudeのシークレットチャットとメモリ機能の解説、ChatGPTの記憶をGeminiへ移す手順はGeminiのインポート機能の解説で扱っています。
よくある質問
Dreaming V3は日本で使えますか?
OpenAIは米国のPlus・Proから始めて他の国へ数週間かけて広げるとしていますが、日本の開始日は公式に示していません。Settings > Personalization > Memory にMemory summaryが表示されていれば使えます。表示されない場合は製品内の通知を待ってください。
Dreaming V3は無料プランでも使えますか?
Freeにも段階的に提供されます。OpenAIはFree向けに必要な計算量を約5分の1に減らしたことで展開が可能になったと説明しています。Plus・Proは記憶の容量が2倍です。
Dreaming V3をオフにする方法はありますか?
Settings > Personalization > Memory で「Saved memories」を選ぶと旧方式に戻ります。メモリ自体を使わない場合はMemoryをオフにするか、メモリ要約の「•••」から「Delete and turn off memory」を選びます。どちらも過去のチャットは消えません。
チャットを削除すれば記憶も消えますか?
消えるとは限りません。チャットから作られたsaved memoryは別に保存されているため、saved memoryも個別に削除する必要があります。メモリ要約・Libraryのファイル・連携アプリに同じ情報があれば、それぞれから消します。
AnthropicのDreamingと同じものですか?
別の機能です。Anthropicのドリーミングは、Claude Managed Agentsで動くエージェントが過去のセッションを見直して記憶を整理する開発者向けの機能で、2026年5月に研究プレビューとして発表されました。消費者向けChatGPTのメモリであるDreaming V3とは対象も提供形態も異なります。詳しくはアンソロピックのドリーミングの解説を参照してください。