Datadogとは何か?機能やメリット、導入の背景を詳しく解説

目次
Datadogとは何か?機能やメリット、導入の背景を詳しく解説
Datadogは、インフラストラクチャ、アプリケーション、ログ、セキュリティまでを一元的に監視・分析できるクラウドネイティブな監視プラットフォームです。多種多様なサービスとの統合を可能にし、リアルタイムでのモニタリングとアラートを実現する点が大きな特徴です。SaaS型の提供形態により、エージェントをインストールするだけで即座に利用開始できるのも魅力です。複雑な構成のマイクロサービス環境においても、高度な可観測性(Observability)を維持しながら、ボトルネックの特定や障害予兆の検知を効率的に行えます。Datadogの導入により、エンジニアだけでなく、SREチーム、オペレーションチーム、ビジネス部門に至るまで、全体での運用効率と意思決定の質が向上します。
Datadogが提供するモニタリングと可観測性の全体像
Datadogの最大の特徴は、インフラ、アプリ、ログ、トレース、セキュリティまで網羅する「フルスタックモニタリング」です。従来は別々のツールで管理していた監視領域を、Datadogならひとつのダッシュボードに統合可能です。メトリクスは時系列データとして保存・可視化され、アラート設定も柔軟に行えます。また、APM(アプリケーション・パフォーマンス・モニタリング)によりトランザクションのボトルネックを可視化し、分散トレース機能と連携して、マイクロサービス環境下でも問題の発生箇所を迅速に突き止められます。これにより、障害対応のスピードと精度が格段に向上します。
リアルタイムでのシステム監視を可能にする主な特徴
Datadogは、数秒単位でデータ収集・可視化を行うことで、リアルタイムなシステム監視を可能にします。メトリクスは15秒間隔、または1分間隔で収集され、直ちに可視化されるため、異常が発生した瞬間に気付くことができます。特にアラート機能は強力で、任意の条件でしきい値を設定し、複数の通知チャネル(Slack、PagerDuty、メールなど)と連携可能です。さらに、タグベースのフィルタリングやダイナミックなアラート設定により、ノイズの多い環境でも本質的な異常だけを捉えられるのも強みです。こうしたリアルタイム性により、プロダクション環境における即時対応が実現します。
Datadogを導入することによる具体的なビジネスメリット
Datadogを導入する最大のビジネスメリットは、IT運用コストの削減と障害による機会損失の最小化です。システム全体の可視化により、リソースの最適配置や無駄な稼働の削減が容易になり、結果としてインフラコストを削減できます。また、インシデントの早期発見と対応により、サービス停止のリスクを最小限に抑えることができます。さらに、開発サイクルの高速化やSLO/SLAの達成支援にもつながり、顧客満足度の向上にも寄与します。これらのメリットにより、Datadogは単なる監視ツールにとどまらず、経営指標の改善にもつながる戦略的なプラットフォームと位置付けられます。
クラウドネイティブ時代にDatadogが選ばれる理由とは
クラウドネイティブな開発・運用スタイルが主流となる中で、Datadogはその柔軟性とスケーラビリティで高い評価を得ています。コンテナやKubernetes、サーバーレスアーキテクチャといった最新技術との親和性が非常に高く、数クリックで統合が完了する点はエンジニアにとって大きなメリットです。加えて、マルチクラウド環境にも対応しており、AWS、Azure、GCPといった主要クラウドとの連携もスムーズに行えます。SaaS型であるためインフラ構築が不要で、スモールスタートから始められる点も導入のハードルを下げています。これらの理由により、多くの企業がDatadogを選択しています。
Datadogの料金プランと利用開始までのステップ
Datadogの料金体系は、用途ごとに細分化されたモジュール課金制を採用しており、インフラモニタリング、APM、ログ管理など、必要な機能だけを選んで導入できます。例えば、インフラ監視はホスト数に応じた課金、APMはトレース数ベース、ログ管理はログ量ベースなど、明確で予測可能な料金構造になっています。導入までのステップは非常にシンプルで、アカウント作成後、Datadogエージェントを対象サーバーにインストールし、必要なインテグレーションを追加設定するだけです。無料トライアルも用意されているため、まずは小規模な構成から始めて、徐々にスケールさせる導入が可能です。
Datadogにおける主要なインテグレーションの種類と選び方
Datadogは、さまざまな外部サービスと連携できるインテグレーション機能を提供しており、その数は600種類以上にのぼります。これにより、クラウド、コンテナ、データベース、CI/CDパイプライン、セキュリティツールなど多岐にわたる環境をDatadog上で一元監視することが可能です。特にクラウドプロバイダー(AWS、Azure、GCP)との連携では、メトリクス、ログ、イベントの収集が自動化され、運用工数の大幅削減につながります。インテグレーションはDatadogのUIから簡単に追加できるほか、API経由やTerraform等のIaCツールとの連携も可能です。選定にあたっては、監視対象のサービスに適した種類を把握し、必要最小限から導入することで、コスト効率と監視精度の最適化が図れます。
主要なクラウド・ミドルウェア・SaaSとの統合事例
Datadogが提供するインテグレーションは、AWS、Azure、GCPなどのクラウドプロバイダーをはじめ、MongoDBやMySQLといったデータベース、Kubernetes、Dockerなどのコンテナオーケストレーションツール、またGitHub、Jenkins、CircleCIといったCI/CDツールにまで及びます。加えて、SalesforceやZendesk、SlackなどのSaaSとも統合が可能で、アプリケーションレベルのデータやビジネスKPIまでも一元的に把握できます。こうした多様な統合事例により、DatadogはIT運用だけでなく、開発、サポート、経営層までが利用できる包括的な可観測性基盤を構築可能です。現場のニーズに応じて適切な統合を行うことで、全体的なサービスの品質と運用効率を高めることができます。
Datadogのインテグレーション機能の種類と特徴を解説
Datadogのインテグレーションは、大きく分けて「クラウド連携」「データベース連携」「CI/CDツール連携」「通知ツール連携」「セキュリティ連携」に分類されます。クラウド連携では、クラウドプロバイダーのAPIを通じて、仮想マシン、ストレージ、ロードバランサーなどのメトリクスを自動的に取得できます。CI/CD連携では、ビルドやデプロイのステータスを監視し、開発パイプラインの健全性を維持可能です。通知ツール連携では、SlackやPagerDutyにアラートを飛ばすことができ、インシデント対応を迅速化します。これらの連携はUI上のガイド付き設定で簡単に導入でき、非エンジニアにも扱いやすい点が評価されています。
ユースケースに応じたインテグレーション選定のポイント
インテグレーションの選定では、まず自社のユースケースを明確にすることが重要です。例えば、Webアプリケーションの可用性を重視するならば、AWSやAzureのクラウドリソースに加えて、APMやログ管理のインテグレーションが必要です。一方、開発フローの監視が目的であれば、GitHub、Jenkins、CircleCIなどのCI/CDツールの連携が有効です。また、顧客対応の品質をモニタリングしたい場合は、ZendeskやSalesforceなどのビジネスアプリケーションとの統合も検討すべきです。選定時には「どのサービスから、どのデータを、どの頻度で取りたいか」を明確にし、必要な監視粒度とコストバランスを考慮することが重要です。
開発・運用プロセスへの統合で得られる可視化の効果
Datadogのインテグレーションを活用することで、開発から運用までのプロセス全体にわたる可視化が実現します。例えば、デプロイと同時にアプリケーションパフォーマンスをリアルタイムで確認できれば、即座にリリースの成否を判断できます。また、インフラの状態やリソース使用率、トラフィック量をモニタリングすることで、予期せぬ障害や性能劣化を未然に防ぐことが可能です。ログとトレースの統合管理により、原因の追跡も容易になります。さらに、開発チームと運用チームが共通のダッシュボードを利用することで、情報共有のスピードと精度が向上し、DevOps文化の推進にもつながります。
カスタムインテグレーションを作成するための基本手順
Datadogでは、公式インテグレーションに加えて、独自のカスタムインテグレーションを作成することも可能です。基本的にはDatadogエージェントのカスタムチェック機能を利用し、Pythonスクリプトなどで対象システムからメトリクスを取得します。取得したデータはDatadog API経由で送信され、ダッシュボードやアラートのトリガーとして活用できます。また、WebhookやAPI連携により、外部のシステムとの連動も柔軟に設計できます。カスタムインテグレーションは、オンプレミス環境やレガシーシステムの監視にも適しており、既存環境の可観測性を補完する手段として有効です。
AWSとのインテグレーション全体像と構成パターンの理解
DatadogはAWSと密接に連携できる監視プラットフォームであり、AWSアカウントに対して事前定義された統合設定を施すことで、EC2、S3、RDS、ELBなどのリソースからメトリクスやログを自動的に収集できます。AWS側ではIAMロールとポリシーの設定によりDatadogからのアクセスを許可し、DatadogではAWS Integration機能を使って接続・収集設定を行います。こうした構成により、AWSにあるすべてのリソースの健全性や利用状況を一元的に可視化できます。さらに、CloudFormationやTerraformなどのIaCツールとの連携にも対応しているため、大規模なインフラを対象とした自動化・標準化も可能です。AWSとの統合は、クラウド運用において効率的で信頼性の高い監視を実現するうえで欠かせない構成要素となっています。
DatadogとAWS間のデータ連携に必要な設定項目の整理
DatadogとAWSを連携させるには、いくつかの重要な設定項目があります。まず、AWSアカウントにDatadog専用のIAMロールを作成し、Datadogが必要とする権限(例えばCloudWatch、EC2、S3の読み取り権限)をポリシーで付与する必要があります。Datadog側では、AWS Integrationメニューから新規統合を追加し、IAMロールのARNを登録します。オプションでタグベースのフィルタリング設定を有効にすると、監視対象を絞り込んで不要なメトリクスの収集を防ぐことができます。また、Datadog AgentをAWSのEC2インスタンスにインストールすれば、より詳細なホストメトリクスやログデータの収集も可能になります。これらの設定を組み合わせることで、クラウド環境の全体像を把握し、パフォーマンスやコストの最適化が実現します。
AWSインテグレーションで収集できる代表的なメトリクス
DatadogのAWSインテグレーションでは、100を超えるAWSサービスのメトリクスを自動収集できます。代表的なものとしては、EC2インスタンスのCPU使用率、ディスクI/O、ネットワークトラフィック、RDSのクエリ数やCPU使用率、S3バケットのストレージ容量やリクエスト数などが挙げられます。これらはすべてCloudWatch経由で取得され、Datadogのダッシュボードにリアルタイムで表示されます。さらに、メトリクスにはタグ情報も付与されるため、環境別(本番、ステージング)やサービス別などの細かい単位での分析も可能です。サービスの異常兆候やスパイクを早期に検知できることにより、ダウンタイムの回避やパフォーマンスチューニングの起点として非常に有用です。
IAMロールとDatadogの役割分担の明確化と実装方法
DatadogとAWSを安全に連携させるには、IAMロールの正しい設計が不可欠です。Datadogに付与するIAMロールは、読み取り専用の最小権限を基本とし、監視対象のリソースに対してのみ必要なAPIアクセスを許可するポリシーを作成します。たとえば、EC2とRDSの監視を行う場合、`ec2:DescribeInstances` や `rds:DescribeDBInstances` などのアクションを含むポリシーを設定します。DatadogにはこのIAMロールのARNを渡すことで、クロスアカウントアクセスが実現されます。この方法により、セキュリティを損なうことなくスケーラブルな監視が可能となります。また、CloudFormationテンプレートを使えば、ロールの作成と紐付けを自動化することもでき、運用の一貫性と安全性を高めることができます。
CloudFormationを用いた自動構成のベストプラクティス
DatadogのAWS統合を大規模に行う場合、CloudFormationを用いた自動構成が有効です。Datadogが提供する公式テンプレートを利用すれば、IAMロールの作成、ポリシー設定、外部IDの付与などを一括で自動化できます。この方法はヒューマンエラーの防止に加え、複数環境への横展開を迅速に行ううえでも優れた選択肢です。CloudFormationにより一貫性のあるインフラ定義が可能となるため、インフラ管理の標準化が促進され、セキュリティやコンプライアンスの要件にも対応しやすくなります。さらに、変更の履歴も追えるため、将来的な保守性にも優れています。Datadogを中心に据えたモニタリング基盤を、IaCの手法で構築・管理することは、信頼性と運用効率の両立を実現する上で重要な戦略です。
マルチアカウント環境における統合構成の設計指針
企業規模でAWSを運用する場合、複数のアカウントを使い分けていることが一般的です。Datadogでは、1つのDatadogアカウントで複数のAWSアカウントからデータを集約できるマルチアカウント統合機能を提供しています。これを実現するには、各AWSアカウントにDatadog用IAMロールを作成し、それぞれのARNをDatadogに登録する必要があります。この設計により、サービス単位、部署単位、リージョン単位でアカウントを分けながらも、Datadog上で一元的な可視化・分析が可能となります。また、タグを使ったフィルタリングにより、環境別や責任部門別のメトリクス抽出も効率的に行えます。マルチアカウント設計はセキュリティや運用責任を分離する上でも有効で、スケーラブルな監視体制の構築には欠かせません。
DatadogとAWS間のデフォルトデータ送信の仕組みを解説
DatadogとAWSを統合すると、CloudWatchを通じて自動的に主要なメトリクスが送信され、Datadog上での可視化と分析が可能になります。初期設定で連携された状態では、EC2、S3、RDS、ELB、Lambdaなど多くのAWSサービスからの標準的なパフォーマンスデータがDatadogに転送されます。この「デフォルトデータ送信」は、Datadogエージェントの導入がなくても一部の可観測性を実現できる点で、導入初期の工数を大幅に削減できます。ただし、詳細なログ収集やトレース分析を行うには追加の構成が必要となります。こうした仕組みによって、まずは簡易的な監視を構築し、段階的に拡張していく柔軟な運用が可能となります。
デフォルトで送信されるメトリクスやログの種類を把握する
DatadogとAWSの連携時、初期状態で送信されるのは主にCloudWatch経由のメトリクスです。例えばEC2インスタンスであれば、CPU使用率、ネットワークIO、ディスクIOなどが対象です。RDSでは接続数やディスク使用率、S3ではバケットサイズやリクエスト数、ELBではリクエストレイテンシやエラーレートなどが自動で送信されます。これらのメトリクスはDatadogのダッシュボード上でグラフィカルに可視化され、トレンド分析やしきい値ベースのアラートに利用できます。一方、ログやAPMトレースなどはデフォルトでは含まれず、明示的にDatadogエージェントを使った設定が必要です。デフォルト送信を把握しておくことで、監視の網羅性を保ちつつ、追加構成の優先順位も明確にできます。
CloudWatch LogsやEventBridge連携の技術的要点
より高度な監視やトラブルシューティングを行うためには、CloudWatch LogsやEventBridgeを用いたログ・イベント連携が有効です。CloudWatch Logsでは、Lambda関数のログやアプリケーションログを収集・保存できますが、Datadogと連携することでこれらのログがDatadog Log Explorerに転送され、リアルタイムでの全文検索やフィルタが可能となります。連携はDatadog Lambda Forwarderを利用する方法、もしくはKinesis Firehoseとの統合によって実現できます。また、EventBridgeを活用することで、特定のAWSリソースに関するイベント通知をリアルタイムでDatadogに送信でき、異常発生時の即時アラートにも対応可能です。これらの設定により、メトリクスだけでなくイベントやログも含めた包括的な監視体制が整います。
送信頻度とコスト最適化のための設定チューニング方法
DatadogとAWSの統合においては、監視対象のリソース数やメトリクスの送信頻度によってコストが変動するため、適切なチューニングが求められます。例えば、Datadog側の「メトリクスの解像度」設定を低めにすることで、収集頻度を1分から5分に変更し、不要なデータ転送を抑制できます。また、AWS側ではCloudWatchのメトリクスを必要最小限に絞るために、Datadogの統合設定においてタグベースで収集対象を限定することが可能です。加えて、ログ送信においてはフィルタパターンを定義し、ノイズとなるログの送信をブロックすることで、データインジェスト量の削減に貢献します。これらの工夫により、監視の品質を保ちつつも、コストパフォーマンスの高い監視構成を実現できます。
フィルタリングとタグ付けによるデータ整理の実践方法
Datadogでは、タグ付けによるメトリクスやログの分類・フィルタリングが非常に強力な機能となっています。AWSのリソースには「環境」「サービス名」「担当部署」などのタグを付けることが可能で、Datadog側でもこれらを自動で読み込み、監視ビューの切り替えやアラートのスコープ指定に活用できます。例えば、「env:prod」「team:backend」といったタグを用いれば、本番環境かつ特定チームに関するメトリクスのみを抽出・表示できます。これにより、チームごとの可視化やトラブル対応がスムーズに行えるようになり、大規模システムでも混乱なく監視対象を把握できます。さらに、タグベースのアラート設定も可能で、きめ細かい運用が可能になります。
デフォルト送信におけるセキュリティとアクセス制御の注意点
DatadogとAWS間のデフォルト連携においては、セキュリティ面での配慮が欠かせません。特にIAMロールを通じたアクセス権の設計は慎重に行う必要があります。最小権限の原則を徹底し、Datadogに付与するポリシーは必要な読み取り権限のみに限定すべきです。また、Datadog側の外部IDを使ったクロスアカウントアクセスを設定することで、なりすましや不正アクセスのリスクを低減できます。加えて、送信されるデータに個人情報や機密情報が含まれないように、ログのマスキングや不要なログの除外設定も重要です。監視の利便性を高める一方で、情報漏洩のリスクを最小限に抑える構成を意識することが、継続的な運用において不可欠です。
Azureとのインテグレーション方法とネットワーク接続の詳細
DatadogはAzureとの連携にも対応しており、仮想マシン、App Services、Kubernetes Service、Function Appsなど、さまざまなAzureリソースからのメトリクスやログをDatadogに送信できます。この連携では、AzureポータルでDatadogリソースを作成し、必要な権限を持つサービスプリンシパルを設定することで、データ収集が可能になります。Azure Monitorとの統合により、ログや診断データ、プラットフォームメトリクスもDatadogに流れる構成が実現します。加えて、Azure Virtual Network(VNet)経由での安全な通信もサポートされており、企業ネットワークのポリシーに応じたセキュアな設計が可能です。これにより、ハイブリッド環境やゼロトラストネットワークにも適応した監視基盤を構築できます。
AzureモニタリングAPIとの連携によるデータ取得の流れ
DatadogがAzureのリソースと連携する際には、Azure Monitor APIを介して各種メトリクスやログを取得します。この連携では、Azure側でDatadogの管理ID(Managed Identity)またはサービスプリンシパルを使用し、必要なAPIアクセス権限を付与するのが一般的です。DatadogはこのIDを通じて、Azure Monitorに保存されたリソースのメトリクスや診断ログを取得し、Datadogのダッシュボードにリアルタイムで反映します。たとえば、App ServicesのレスポンスタイムやFunction Appsの実行回数などが即座に確認可能です。また、メトリクスだけでなく、Azure Resource Healthやアクティビティログとも連携できるため、より包括的な監視が可能になります。このAPI連携により、DatadogはAzure上の動的な変化にも即応できる柔軟な監視を提供します。
Datadog Azureアプリ登録とサービスプリンシパル設定
AzureとDatadogのインテグレーションを行うには、まずAzure Active DirectoryでDatadog専用のアプリ登録(アプリケーションIDとクライアントシークレットの生成)を行います。次に、サービスプリンシパルを作成し、Datadogが監視する対象のリソースグループやサブスクリプションに対して「読み取り権限(Reader)」など適切なロールを割り当てます。これにより、DatadogはAzure API経由でリソース情報にアクセスできるようになります。さらに、Datadog側ではAzure Integration設定にてテナントID、クライアントID、クライアントシークレットを入力することで、双方向の認証が成立し、安全なデータ連携が確立されます。この構成は複数のAzureサブスクリプションを統合する場合にも有効で、柔軟な拡張が可能です。
Azureネットワーク環境でのエージェント構成の実例
Azure仮想マシン(VM)などに対するより詳細な監視を実現するには、Datadogエージェントのインストールが必要です。LinuxやWindowsに対応しており、スクリプトやAzure Automationを使って一括展開することも可能です。たとえば、Azure VM Scale Set環境では、拡張機能を使って自動的にDatadogエージェントをインストール・構成できます。エージェントを用いれば、アプリケーションログ、システムログ、プロセスレベルのモニタリング、さらにはAPMや分散トレーシング機能も活用可能になります。また、Datadogエージェントはネットワーク設定によりプロキシ経由で通信する構成にも対応しており、企業のファイアウォール制限がある環境下でも柔軟に導入できます。これにより、Azureベースのシステムにも深い可観測性が提供されます。
仮想ネットワーク(VNet)経由での安全な接続手法
企業でAzureを利用する場合、セキュリティ上の理由から仮想ネットワーク(VNet)内に監視対象リソースを閉じ込めているケースが多くあります。Datadogはこのような環境にも対応可能で、Private LinkやVNet Integrationなどの仕組みを使って、安全なデータ送信経路を構築できます。たとえば、Datadog Agentからのトラフィックを特定のプロキシサーバーを介してインターネットに出す構成や、Azure ExpressRouteを利用して閉域網内で通信を完結させる方法も取れます。これにより、監視対象がインターネットに直接接続する必要がなくなり、セキュリティリスクが大幅に軽減されます。企業レベルのネットワークセグメンテーションを維持しながら、Datadogの強力な監視機能を導入できるのは大きな強みです。
Azure特有のログ・メトリクス管理との整合性について
Azureには「Azure Monitor」「Log Analytics」「Application Insights」など独自の監視・分析サービスが存在します。Datadogと連携する場合、これらと競合するのではなく、補完的に活用するのが理想です。たとえば、Azure Monitorが提供する豊富なメトリクスや診断ログをDatadogに取り込み、他のクラウドやオンプレミス環境のデータと統合表示すれば、ハイブリッド全体の可視化が実現します。また、Log Analyticsのクエリ機能とDatadogのアラートや可視化機能を組み合わせることで、より実践的なモニタリング体制を構築できます。このように、Azureのネイティブ機能とDatadogを連携させることで、システム全体の監視粒度と意思決定のスピードを同時に向上させることができます。
DatadogとPagerDutyを連携させたインシデント管理の最適化手法
Datadogは、監視とアラートのプラットフォームとして高機能であるだけでなく、PagerDutyと連携させることで、インシデント発生時の対応をさらに自動化・最適化できます。Datadogのモニターで検出された異常は、PagerDutyに即時通知され、あらかじめ設定されたエスカレーションポリシーに従って適切な担当者へとアラートが送信されます。この連携により、夜間や休日でも対応漏れを防ぎ、インシデントの初動を迅速に行うことが可能になります。また、インシデントのライフサイクル全体を可視化し、アフターアクション(事後分析)まで一元管理できる点も大きな利点です。信頼性の高いサービス運用を目指す企業にとって、DatadogとPagerDutyの組み合わせは極めて強力な運用基盤となります。
PagerDutyと連携することで可能になるアラート運用の強化
DatadogとPagerDutyを連携させることで、アラート運用は大きく強化されます。従来、Datadog単体では通知チャネルとしてSlackやメールなどを使用するのが一般的でしたが、PagerDutyを導入することでアラートを「インシデント」として扱い、発生から対応、解決までを構造化できます。これにより、対応漏れや属人的な対応を排除し、チームでの一貫した対応が可能になります。たとえば、重大なアラートは即時にオンコール担当者に通知され、応答がなければ次の担当者に自動でエスカレーションされます。さらに、モバイルアプリからの操作やアラート抑止機能も利用でき、インシデント対応の柔軟性とスピードが大きく向上します。
DatadogのモニターとPagerDutyエスカレーションルールの連携
Datadogのモニターは、メトリクス、ログ、トレースに対してしきい値を設定し、条件に応じてアラートを発出します。これをPagerDutyに連携させる際には、Datadogの通知設定にPagerDutyの「サービスキー」を追加することで簡単に統合が実現します。PagerDuty側では、サービスごとに細かくエスカレーションルールや通知ルールを設定可能で、たとえば特定の時間帯や曜日、対応可能なスキルセットに応じてアサイン先を切り替えることもできます。これにより、Datadogからのアラートが無駄なく適切な担当者に届き、初動対応までの時間を短縮することが可能となります。全体として、アラートから復旧までのプロセスが標準化され、信頼性の高い運用体制が構築されます。
インシデント発生時の通知フローと自動化の実装例
DatadogとPagerDutyの連携により、インシデント発生時の通知フローを自動化できます。たとえば、DatadogのモニターがEC2インスタンスのCPU使用率の異常を検知すると、PagerDutyにインシデントが自動生成されます。PagerDutyは事前に設定されたスケジュールに従い、オンコール担当者へSMS・電話・メールなどを通じて即時通知します。担当者はアプリ経由で対応状況を報告でき、未対応の場合は自動的に次の担当者へエスカレーションされます。この一連の流れはすべてリアルタイムでログに残り、事後のインシデントレビューにも活用されます。さらに、JiraやSlackなど他のツールとも連携可能で、通知フローをチームのワークフローに組み込むことも容易です。
連携後のモニター設定で考慮すべきアラート閾値の最適化
DatadogとPagerDutyを連携した後は、モニターのしきい値設定にも配慮が必要です。過剰にアラートを発生させるとPagerDutyでのインシデント数が増え、アラート疲れや無視される原因になります。そこで重要なのが、アラートの精度を高めるしきい値設計とノイズ抑制の工夫です。たとえば、単発のスパイクではなく、一定時間異常が継続した場合のみアラートを発出するように設定したり、平均値や移動平均を用いた条件にすることで、不要な通知を減らすことができます。タグベースで環境(prod/dev)を分けたアラートスコープの設定や、重要度別の通知ルート分岐も効果的です。PagerDutyとの連携を活かすためには、モニターの品質向上が重要な鍵となります。
複数ツールを統合したインシデント対応ワークフローの構築
DatadogとPagerDutyに加え、Jira、Slack、Opsgenie、ServiceNowなどの他ツールを統合することで、より高度なインシデント対応フローを実現できます。たとえば、DatadogがインシデントをPagerDutyに送信し、その後Slackに自動通知、さらにJiraにチケットを起票するという一連の流れを構築可能です。これにより、各ツールに手動で情報を転記する必要がなくなり、対応スピードと精度が大きく向上します。また、インシデントのステータスや対応履歴もすべて記録されるため、ポストモーテムやKPI分析にも活用できます。これらの統合をAPIやWebhookで自動化することで、複雑な運用環境においても安定した対応体制を維持できるようになります。