QCDは、Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)の頭文字をつないだ言葉で、製品やサービスをつくる側が管理すべき3つの要素を指します。読み方は「キューシーディー」です。JIS Z 8141:2022「生産管理用語」では、生産管理の定義の注釈にQ・C・Dが書き込まれており、日本の製造業では規格の言葉として扱われています。
この記事では、まずJISの原文でQ・C・Dが何を指すかを確かめ、業種ごとの具体例で3要素の中身をつかみます。そのうえでトレードオフと優先順位、KPIを使った目標の立て方と集計のコード例、QCDS・PQCDSMEといった派生フレームワークの違い、システム開発での使い方が、順に説明する内容です。最後に、管理をExcelから仕組みへ移す判断基準と、発注側がQCDを要求するときに法令で引かれている線も取り上げます。
まとめ:QCDの意味と具体例、優先順位とKPIで目標を立てる要点
- QCDは品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)の略。JIS Z 8141:2022の用語1215「生産管理」の注釈に、Q(quality)・C(cost)・D(due date, delivery)として定義が入っている。
- JISでのCは「原価」、Dは「数量及び納期」。売り手の原価と買い手の購入価格は同じCでも中身が違う。
- 製造業なら良品率・製造原価・納入日、システム開発なら重大障害の有無・予算・リリース日、飲食店なら味と衛生・原価率・提供時間がQCDに当たる。
- 3要素はトレードオフの関係になりやすい。まず満たすべき品質基準を決め、CとDのどちらを優先するかは案件ごとに決める。
- 目標は「不良率」「納期順守率」「リードタイム」など式が決まった指標で立てる。日本プラントメンテナンス協会(JIPM)が指標と計算式の一覧を公開しており、生産記録のCSVがあれば数行のコードで集計できる。
- QCDS・QCDSE・PQCDSMEは、安全(S)・環境(E)・生産性(P)・モラール(M)を足した拡張版。PQCDSMEはJIPMのTPM(全員参加の生産保全)で効果指標の枠組みとして使われている。
- システム開発ではQCDを品質・予算・工期として測る。JUASの調査では500人月以上のプロジェクトの回答のうち工期遅延47.8%、予算超過42.2%、品質不満29.6%だった。
- 労働安全衛生法3条3項は2025年5月14日施行の改正で「納期」を明記し、仕事を発注する側に、安全を損なう納期などの条件を付けないよう配慮を求めている。短納期を値下げと組み合わせると、取適法の買いたたきに当たるおそれもある。
QCDの意味とJIS Z 8141・JIS Q 9000による3要素の定義
QCDの3要素と、それぞれを測るときの代表的な指標は次のとおりです。
| 略号 | 英語 | 日本語 | JISでの扱い | 代表的な指標 |
|---|---|---|---|---|
| Q | Quality | 品質 | JIS Q 9000で定義 | 不良率・直行率・クレーム件数 |
| C | Cost | コスト(原価) | Z 8141では「原価」 | 製造原価・原単位・不良損失金額 |
| D | Delivery | 納期(数量を含む) | Z 8141の用語1207 | 納期順守率・リードタイム・在庫日数 |
JIS Z 8141では「C=原価」「D=数量及び納期」と定義される理由
JIS Z 8141:2022の用語1215「生産管理」は、財・サービスの生産に関する管理活動と定義され、注釈1に「所定の品質Q(quality)・原価C(cost)・数量及び納期D(due date,delivery)で生産するため」と書かれています。注釈には、Q・C・Dの全体のつり合いを図るという目的も併記されています。この規格は日本規格協会の規格ページで2022年3月22日発行・現在も有効と表示されています(2026年10月時点)。
ここで押さえておきたいのは2点です。1つはCが「原価」と訳されていること。もう1つは、Dに「数量」が含まれていることです。納期の定義(用語1207)も「要求された品質及び量の原材料又は製品を納入する期限」で、期日に間に合っても数量が足りなければDは満たしていないことになります。QCDを「品質・価格・納期」と書く解説もありますが、価格は買い手から見たCで、つくる側が管理するのは原価です。生産管理の業務範囲そのものは生産管理システムの機能とERP・MESとの違いで整理しています。
品質はJIS Q 9000の「要求事項を満たす程度」で測る考え方
Qの中身は、品質マネジメントの用語規格JIS Q 9000:2015の3.6.2で「対象に本来備わっている特性の集まりが,要求事項を満たす程度」と定義されています。品質は「高ければ高いほどよい」ものではなく、顧客や仕様が求める水準をどれだけ満たしたかが、測定の基準です。合意した要求を超える仕様を追加する場合は、その便益が追加費用や納期への影響に見合うかを判断します。工程で品質をつくり込む品質管理と、出荷前に保証する品質保証の役割分担は品質管理と品質保証の違い(QCとQAの役割分担)で説明しています。
QCDの具体例:製造業・システム開発・サービス業で3要素が指すもの
QCDは製造業の言葉として生まれましたが、何をつくるかが変わってもQ・C・Dの枠は同じです。業種ごとに、3要素が実務で何を指すかを並べると次のようになります。
| 業種 | Q(品質) | C(コスト) | D(納期) |
|---|---|---|---|
| 部品加工 | 寸法公差内の良品率 | 材料費・加工費・不良損失 | 指定日に指定数量を納入 |
| システム開発 | 仕様どおりの動作・重大障害0件 | 人月×単価の予算 | リリース日・工程ごとの検収日 |
| 飲食店 | 味・提供温度・衛生 | 原価率・人件費率 | 注文から提供までの時間 |
| 物流 | 誤配送・破損の件数 | 1件あたりの配送費 | 指定時間帯への到着率 |
どの業種でも、Dは「いつまでに」だけでなく「どれだけを」まで含めて決めると、JISの定義とずれません。飲食店なら「ランチ時間帯に60食を、注文から10分以内に出す」と書けば、数量と時間の両方がDになります。逆に「早く出す」とだけ書くと、測れないDになります。
QCDの読み方「キューシーディー」と会議・面接で通じる使い方の例文
QCDはアルファベットをそのまま読み、「キューシーディー」と発音します。会議や報告では、3要素のどれを動かすかを示す言葉として使われます。
- 「この案件はQCDのうちDを優先する。品質は受入基準の範囲に絞り、追加仕様は次期に回す」
- 「3社の見積はQCDの3軸で比べた。Cは最安だがDのマイルストーンが粗いため、B社を推す」
- 「前月のQCD実績は、Qの不良率1.6%、Dの納期順守率97%で、Cの不良損失は前年同月比で2割減った」
転職の面接や自己PRで「QCD改善に取り組んだ」と話すときも同じです。どの指標を、いつからいつまでに、いくつからいくつにしたかを添えると、聞き手が成果を判定できます。数字のない「QCDを意識して働いた」は、どの要素を指しているのかが伝わりません。
QCDのトレードオフと3要素のバランスを崩さない実務での調整の順番
3要素は独立していません。どれか1つを強く求めると、ほかの2つにしわ寄せが出ます。
| 求めるもの | 起こりやすい影響 | 例 |
|---|---|---|
| Qを上げる | C増・D延長 | 検査工程の追加、材料グレードの変更 |
| Cを下げる | Q低下・D遅延 | 人員削減で検査が手薄になる |
| Dを縮める | C増・Q低下 | 残業・特急輸送、テスト期間の圧縮 |
ただし、トレードオフは常に成り立つわけではありません。不良が減れば手直し費用(C)と手戻り時間(D)も減るため、工程の改善で3つが同時によくなることは珍しくありません。JIPMの指標一覧でも、Cの指標に「不良損失金額(不良廃却損失費+不良手直し費)」が入っており、品質の悪さはそのまま原価として数えられます。
バランスを取るときは、3要素のうち「動かせないもの」を先に決めます。仕様上の品質基準、契約上の納期、予算上限のうち、変えられないものを制約として固定し、残りの要素で調整します。3つすべてを「最大限」と置いた計画は、どこかで破綻するものです。
PMBOKの三重制約(スコープ・時間・コスト)とQCDの違い
プロジェクトマネジメントでは、似た考え方として「三重制約(triple constraint)」が知られています。PMIが公開している論文「The triple constraint: erroneous, useless, value?」では、プロジェクトマネージャーが競合する要求を管理するときに語る三重制約を「project scope, time and cost」と説明しており、要素はスコープ・時間・コストです。コストに加え、時間の制約もQCDのD(納期)と関係します。ただし、QCDのQ(品質)はスコープ(何をつくるかの範囲)と同じではありません。QCDは「要求をどれだけ満たしたか」という品質そのものを、管理対象の1つとして独立に置いています。
なお、PMBOKガイドは第7版で知識エリア中心の構成から8つのパフォーマンス領域と原則中心の構成へ改められ、2025年11月には第8版が出ています。QCDはJIS Z 8141が生産管理の文脈で定義している言葉で、PMIの三重制約とは出どころが異なるため、両者を同じ概念として扱わないほうが混乱しません。
QCDの案件ごとの優先順位の考え方と品質基準を先に固める理由
まず満たすべき品質基準を決め、その基準を守ったうえでCとDの優先順位を案件ごとに決めます。品質基準を先に確認する理由は、不良による手戻りを避けるためです。不良が出荷後に見つかると、工程内で見つけた場合の手直し費用に、回収・交換・信用の回復の費用が上乗せされます。Qを後回しにして得たCとDの改善は、不良1件で吹き飛ぶことがあります。
そのうえで、次のような場面ではCやDを先に立てるのが合理的です。
- 品質基準がすでに満たされ、価格競争で負けている成熟品:Cを優先し、品質は基準維持に留める。
- 発売時期を逃すと売れない季節品・イベント対応:Dを優先し、品質は必須要件に絞る。
- 人命や安全に関わる製品・設備:Qと安全(S)を最優先し、CとDは調整弁にする。
現場の掲示板では安全(Safety)を先頭に置いたSQDCという並びも使われます。安全を最上位に置く考え方は、記事の後半で触れる労働安全衛生法の規定とも一致します。「3要素はすべて大切」で止めず、案件ごとに「何を犠牲にしないか」を1つ決めて関係者で共有するのが実務での使い方です。
QCDの目標設定とKPIの具体例、生産記録を使った計算式と集計コード
QCDの目標は、計算式が決まった指標で立てます。JIPMの「次世代TPM実証研究レポート」(図表9「生産の指標」)は、生産の指標をP・Q・C・D・S・M・Eの7区分で整理し、それぞれの計算式を載せています。そこからQCDに当たる主な指標を抜き出すと次のとおりです。最終目標(KGI)と途中の指標(KPI)の分け方はKGI・KPIの意味と違い・KPIツリーの作り方で解説しています。
| 区分 | 指標 | 計算式(JIPMの定義) |
|---|---|---|
| Q | 不良率(工程内不良率) | 不良発生数量÷生産数量×100 |
| Q | 直行率 | ノータッチ良品数量÷生産数量×100 |
| Q | クレーム件数 | クレームとして処理した件数(件/月) |
| C | 不良損失金額 | 不良廃却損失費+不良手直し費 |
| C | 原単位 | 製品1単位当たりの原材料・工数などの消費量 |
| D | 納期順守率 | 計画期日内に納めた数量÷受注数量×100 |
| D | リードタイム | 納期(完了時期)-着手時期 |
| D | 在庫日数 | 棚卸在庫金額÷1日あたりの使用高 |
QCD目標の指標・現状値・目標値・期限・測定方法の5点の記載例
目標は「指標・現状値・目標値・期限・測り方」の5点をそろえて書きます。次は書き方の例で、数値は説明用です。
- Q:A製品ラインの工程内不良率を、現状の1.8%から2027年3月末までに1.0%以下にする(日次の検査記録から月次で集計)。
- C:B部品の不良損失金額を、上期実績から下期に30%減らす(廃却伝票と手直し工数から算出)。
- D:受注品の納期順守率を、現状の92%から2027年3月末までに95%以上にする(受注・納品記録から月次で集計)。あわせて受注から出荷までのリードタイムの中央値を週次で記録する。
悪い例は「品質を向上させる」「コストを削減する」のように指標がない書き方です。達成したかどうかを判定できず、PDCAの評価(Check)が回りません。改善の回し方はPDCAサイクルの4ステップと回し方で詳しく説明しています。
QCD指標をPythonとExcelで集計するコード例と実行結果の読み方
上の表の計算式は、ロットごとの生産記録があればそのまま集計できます。次はロット単位の記録をCSVに書き出した例です。列は左から、ロット番号・生産数量・不良数量・ノータッチ良品数量・受注数量・計画期日内に納めた数量・着手日・完了日です。
lot,produced,defect,no_touch_ok,ordered,on_time,start,finish
A-001,1200,18,1150,1200,1200,2026-09-01,2026-09-04
A-002,800,22,760,800,720,2026-09-03,2026-09-09
A-003,1000,9,975,1000,1000,2026-09-08,2026-09-10
これを lots.csv として保存し、同じフォルダで次のスクリプトを実行します。使っているのは標準ライブラリのcsvモジュールとdatetime・statisticsだけで、追加のインストールは要りません。
import csv
from datetime import date
from statistics import median
# lots.csv の列: lot,produced,defect,no_touch_ok,ordered,on_time,start,finish
with open("lots.csv", encoding="utf-8", newline="") as f:
rows = list(csv.DictReader(f))
def total(col):
return sum(int(r[col]) for r in rows)
produced = total("produced")
lead_days = [
(date.fromisoformat(r["finish"]) - date.fromisoformat(r["start"])).days
for r in rows
]
# 計算式は JIPM「生産の指標」の定義に合わせる
print(f"Q 不良率 {total('defect') / produced * 100:.2f}%")
print(f"Q 直行率 {total('no_touch_ok') / produced * 100:.2f}%")
print(f"D 納期順守率 {total('on_time') / total('ordered') * 100:.2f}%")
print(f"D リードタイム中央値 {median(lead_days)}日")
Python 3.14系(2026年10月時点)で実行すると、次の4行が出力されます。
Q 不良率 1.63%
Q 直行率 96.17%
D 納期順守率 97.33%
D リードタイム中央値 3日
この例では、不良率は1.63%で目標の1.0%に届いていません。ロット別に見るとA-002だけ不良22個・納期内720個で、QとDの崩れが同じロットに重なっています。前の章で触れた「Dの遅れをQの記録までさかのぼる」読み方は、このように同じ行の上で照合すると具体的になるわけです。Excelで同じ集計をする場合は、CSVをA1から貼り付け、不良率を =SUM(C2:C4)/SUM(B2:B4)、納期順守率を =SUM(F2:F4)/SUM(E2:E4) とし、セルの表示形式をパーセントにします。
QCDの分析で見るべき順番と遅れ・損失を3要素に分解する手順
実績を分析するときは、Dの遅れを見つけたらQとCの記録までさかのぼります。納期遅れの原因が段取りの長さなのか、不良の手直しなのかで打つ手が変わるためです。例えば、JIPMの指標でいえば、Cの不良損失金額の内訳である不良手直し費と手直しの作業記録、Pの段取り調整時間(段取り調整のためにライン・設備を停止した時間の合計)を、遅れた期間について並べて照合します。手直しが原因なら品質の対策が先で、段取りが原因なら工程の対策が先です。指標を3要素ばらばらに追うのではなく、1つの遅れや損失を3要素のどこから来たかで分解すると、対策の優先順位が決まります。
QCDS・QCDSE・PQCDSMEなど派生フレームワークの違いと選び方
QCDには、管理したい要素を足した派生形がいくつもあります。
| 名称 | 追加される要素 | 主な使われ方 |
|---|---|---|
| QCDS | S:Safety(安全)またはService | 製造現場では安全、営業・購買ではサービス |
| QCDE | E:Environment(環境) | 環境負荷を評価軸に入れる場合 |
| QCDSE | S:安全、E:環境 | 工場運営の総合評価 |
| QCDF | F:Flexibility(柔軟性) | 多品種少量・変種変量生産 |
| PQCDSME | P:生産性、S:安全・衛生、M:モラール、E:環境 | JIPMのTPMの効果指標 |
このうち出どころをたどれるのはPQCDSMEです。JIPMは自らが1971年にTPMを提唱したとしており、同協会の資料では生産の指標をP(生産性)・Q(品質)・C(コスト)・D(納期)・S(安全・衛生)・M(モラール)・E(環境)の7区分で示しています。JIPMの「TPM優秀賞」の受審要領でも、効果指標シートにPQCDSMEに関する主な項目を書くよう求めています。Sの指標は労働災害件数や災害度数率、Mは改善提案件数、Eは省エネルギー量や産業廃棄物の量です。
QCDS・QCDSEを使うときは、各文字が何を指すかを最初に定義します。特にQCDSのSは安全(Safety)の意味でもサービス(Service)の意味でも使われるため、定義しないまま社内に広げると、部門ごとに別の指標を追うことになります。どの派生形を選ぶかより、追加した要素ごとに計算式のある指標を1つ以上決めるほうが大切です。
システム開発・発注先選定でのQCDとJUAS調査に見る崩れ方
システム開発でもQCDはそのまま使われ、品質・予算・工期として測ります。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書2026」は、システム開発のQCD遵守状況をプロジェクト規模別に集計しています(図表7-1-4)。表の数値は、各規模のプロジェクトについての回答に占める割合です。
| プロジェクト規模 | 品質「不満」 | 予算「予定より超過」 | 工期「予定より遅延」 |
|---|---|---|---|
| 10人月未満 | 10.0%未満 | 10.0%未満 | 10.0%未満 |
| 500人月以上 | 29.6% | 42.2% | 47.8% |
規模が大きくなるほど3要素とも守れない割合が上がり、500人月以上では工期遅延がほぼ半数に達します。大規模案件ではDが最も崩れやすいことを前提に、工程を分割して小さな単位で検収する計画が必要です。
開発会社をQCDで比べるときに発注側が提案段階で確認する3つの項目
発注先の開発会社を比べるとき、見積金額(C)だけで選ぶとQとDの差が見えません。次の点を提案段階で確認すると、3要素を同じ土俵で比べられます。
- Q:レビューとテストの工程が見積に含まれているか。不具合密度の分母・対象工程・測定条件を示せるか。受入条件の記載例は「検収時点で未解決の重大障害0件」とし、重大障害の定義も合意する。
- C:見積が工程別・役割別の工数に分解されているか。仕様変更時の単価が決まっているか。
- D:マイルストーンごとの成果物と検収の時期が決まっているか。進捗を発注側が確認できる仕組みがあるか。
工程ごとの品質の確かめ方はシステム開発の品質管理(工程別レビュー・テスト管理とメトリクス判定)、発注側が担う役割はシステム開発のプロジェクト管理の進め方と発注側の役割で扱っています。
QCD改善の進め方と品質・原価・納期ごとの損失に応じて使える改善手法
QCDの改善は、現状を指標で測る、最も損失の大きい要素を選ぶ、原因を分析して対策を打つ、効果を同じ指標で測り直す、の順に進めます。要素ごとに使われる代表的な手法は次のとおりです。
- Q:QC七つ道具による不良の層別、なぜなぜ分析による真因の追究、QCサークルでの小集団活動。ばらつきを統計的に減らすならシックスシグマも選択肢になる。
- C:ムダの排除と原価低減。進め方はコストリダクションとコストダウン・コストコントロールの違いで解説している。
- D:段取り時間の短縮、後工程引取りによる在庫の圧縮。トヨタ生産方式の考え方はジャストインタイム(JIT)のJISの定義と起源を参照。
- QCD共通の土台:探す時間と取り違えを減らす5S。JISの定義と法令上の義務は5Sとはで整理している。
購買部門では、JIS Z 8141の用語7206「購買管理」が「外部から適正な品質の資材を必要量だけ,必要な時期までに経済的に調達するための手段の体系」と定めています。品質・数量・時期・経済性という並びは、調達側から見たQCDそのものです。取引先・品質・数量・納期・価格の5原則で整理する方法は購買管理システムと購買管理の5原則で説明しています。
QCDの実績管理をExcelから原価管理システムへ移す判断基準
QCDの指標を毎月追い始めると、集計の手間がCとDの見える速さを決めるようになります。前の章のスクリプトやExcelで回る規模なら、仕組みを入れる必要はありません。判断の分かれ目は、Cの実績原価をどの粒度で、どれだけの頻度で見たいかです。
Excelと簡単なスクリプトで足りる規模とシステム化が過剰になる場面
品目が数十程度・1拠点・1ラインで、月次の締めで足りるなら、Excelと前述のような集計スクリプトで十分です。この規模でパッケージやスクラッチの仕組みを入れると、導入と保守の費用がCの改善幅を上回ります。まずは記録の列(生産数量・不良数量・納期内数量・着手日・完了日)をそろえ、毎月同じ式で数えることが先です。
原価をロット・工程単位で日次に見たいときに仕組み化を選ぶ条件
次のうち2つ以上に当てはまるなら、原価管理を仕組みに移す検討に入ります。月次の締めでQCDの実績を出すのに3営業日以上かかっている。転記ミスによる数値の差し戻しが毎月起きている。不良損失金額を製品別・工程別に配賦したい。複数拠点の実績を同じ式でそろえたい。製造記録(Q)と受注・出荷記録(D)を、同じロット番号で突き合わせたい。いずれも、Excelのシートを人が往復するやり方では、数える速さと正確さのどちらかが落ちる場面です。
原価管理の仕組みが持つ機能と原価計算との違いは原価管理システムの機能と選び方で整理しています。既製のパッケージに業務を合わせにくい場合、一創では工程・ロット単位の原価集計や生産記録との連携を自社の業務に合わせてつくる原価管理システム開発を受けています。
発注側がQCDを要求するときの法令上の線引きと取引条件の注意点
QCDは、発注側が受注側に一方的に押し付けてよい目標ではありません。特に納期の設定や代金の決定には、安全衛生への配慮義務や不当な取引条件の禁止が関わります。
労働安全衛生法3条3項の改正で納期も安全配慮の対象に加わった経緯
労働安全衛生法3条3項は、仕事を他人に請け負わせる者に「施工方法、作業方法、工期、納期等について、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないように配慮しなければならない」と求めています。2025年5月13日までの条文は「施工方法、工期等について」で、「作業方法」と「納期」は令和7年法律第33号による改正で加わり、2025年5月14日から施行されています。製造委託など建設工事以外の注文者にも従来から適用されていた配慮義務が、今回の改正で明確になったということです。
取適法で短納期と値下げの組み合わせが買いたたきとみなされるおそれ
2026年1月1日に下請法から改められた中小受託取引適正化法(取適法)は、5条1項5号で「通常支払われる対価に比し著しく低い製造委託等代金の額を不当に定めること」(買いたたき)を禁じています。公正取引委員会の運用基準(令和8年10月1日改正)は、「短納期発注を行う場合に、中小受託事業者に発生する費用増を考慮せずに通常の対価より低い代金の額を定めること」を買いたたきに当たるおそれのある方法に挙げ、見積時点より納期を短縮したのに代金を見直さなかった事例も載せています。品質が異なるのに海外製品の安い価格だけを引き合いに出して代金を決めた事例もあり、QとCを切り離した値下げ要求も対象です。
また、公正取引委員会と中小企業庁の「中小受託取引適正化法テキスト」(令和7年11月)に収録された受託中小企業振興法の振興基準は、やむを得ず短納期や急な仕様変更を行う場合に、委託事業者が残業代などの増加コストを負担するものとしています。発注側は、納期短縮によって生じる追加費用を受注側と確認し、その負担を代金に反映するよう協議します。QCDを社内目標として掲げるのは自由ですが、その達成を取引先の負担で賄う設計は、法令違反につながるおそれのあるものです。
QCDの意味・優先順位・目標設定と製造業以外での使い方に関するよくある質問
QCDの意味や使い方について、検索の多い質問に短く答えます。
QCDとは何の略ですか?
Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の略で、「キューシーディー」と読みます。JIS Z 8141:2022の生産管理の定義では、Cは「原価」、Dは「数量及び納期」とされています。期日に間に合っても数量が足りなければDは満たしていない、という点が日常語の「納期」との違いです。
QCDの優先順位はどう決めればよいですか?
まず満たすべき品質基準を決め、その基準を守ったうえでCとDの優先順位を案件ごとに決めます。例えば価格競争の激しい成熟品ではC、発売時期が決まった製品ではDを優先します。案件ごとに「犠牲にしない要素」を1つ決めて関係者で共有するのが実務での使い方です。
QCDの目標はどのように立てればよいですか?
不良率・納期順守率・リードタイムなど計算式の決まった指標を選び、現状値・目標値・期限・測り方をそろえて書きます。「品質を向上させる」のような指標のない目標では、達成したかどうかを判定できません。生産記録をCSVで残しておけば、表計算や短いスクリプトで毎月同じ式で集計できます。
QCDとQCDS・PQCDSMEの違いは何ですか?
QCDSは安全(Safety)またはサービス(Service)を足したもの、PQCDSMEは生産性・安全衛生・モラール・環境を足したものです。PQCDSMEはJIPMがTPMの効果指標として使っており、7区分それぞれに計算式のある指標が示されています。
QCDは製造業以外でも使えますか?
製造業以外でも利用可能です。システム開発では品質・予算・工期として測られ、JUASの調査でもQCD遵守状況として集計されています。飲食店なら味と衛生・原価率・提供時間、物流なら誤配送件数・1件あたり配送費・時間帯指定の到着率のように、提供品質・コスト・提供までの時間に置き換えて同じ考え方で管理できます。