効果指標とは、施策がどれだけ成果を上げたかを数値で測る基準です。ただし実務では、同じものが成果指標とも結果指標とも測定指標とも呼ばれ、会議のたびに定義がずれます。この記事では、まず用語の対応関係を行政評価の枠組みで整理し、国の政策評価で使われている成果指標・活動指標・測定指標の書き方を確認します。そのうえでCTRやCPAといった代表指標の使い分け、SMARTの原典に沿った設定手順、GA4などでの測定と改善までを扱います。
まとめ|効果指標の定義・使い分け・設定の要点
先に結論を示します。
- 定義:効果指標は、施策の成果の達成度を測る数値基準です。KGI(最終目標)を頂点に、その分解としてKPIを置き、日々追う数値が効果指標にあたります。
- 使い分け:成果指標はアウトカム(対象に起きた変化)、活動指標はアウトプット(実施した量)を測ります。国の政策評価の様式もこの対応で書かれています。本記事では、効果指標を両方を含む総称として扱います。
- 書き方:政策評価の事前分析表は、測定指標ごとに基準値・目標値・基準年度・目標年度と、指標の選定理由を書かせます。民間のKPIシートでも、この5項目を基本に、担当者・集計定義・データ取得元・確認頻度を記載すると運用しやすくなります。
- 種類:露出はリーチとインプレッション、訴求はCTR、獲得はCVRとCPA、採算はROASとROIというように、見たい層で選びます。
- 設定:SMARTの原典(Doran, 1981)はSpecific・Measurable・Assignable・Realistic・Time-relatedです。日本で広まっているAchievable・Relevantは後年の変種で、原典は全階層での数値化を求めていません。
- 測定と改善:GA4と広告管理画面で計測し、分母と期間の定義を先に決めます。改善はA/Bテストで検証してから横展開します。
効果指標とは|定義とKPI・KGIとの関係
効果指標は、目標に対してどこまで近づいたかを測る計測基準です。まず定義と、混同されやすいKPI・KGIとの関係を整理します。
効果指標の定義と役割
効果指標とは、特定の目標の達成度を測るために使う数値です。売上向上が目標なら新規顧客の獲得数や平均購入単価、Web広告ならクリック率やコンバージョン率が効果指標にあたります。英語では、文脈に応じてperformance measure、performance indicator、metricなどと表現されます。
指標の役割は、測ることだけではありません。バランスト・スコアカードを提唱したロバート・キャプランとデビッド・ノートンは、Harvard Business Review 1992年1月・2月号の論文「The Balanced Scorecard—Measures that Drive Performance」の冒頭に「What you measure is what you get.」と書いています。何を測るかを決めた時点で、現場が何に力を注ぐかも決まるという指摘で、効果指標を選ぶ作業は組織の行動を方向づける設計でもあります。
KGI・KPI・効果指標の階層関係
効果指標はKGIとKPIの枠組みに置くと整理しやすくなります。KGI(重要目標達成指標)は「半年で売上20%増」のような最終ゴール、KPI(重要業績評価指標)はそのゴールに至る中間の重要指標です。効果指標はKPIとほぼ同義で使われますが、より広く「施策評価に使う数値全般」を指します。KPIが「重要」と限定しているのに対し、効果指標にはその限定がない、と考えると区別がつきます。
したがって、KGIから分解した指標のうち特に重視するものがKPI、日々の施策評価に使う数値の総称が効果指標、という包含関係になります。KPI自体の意味や計算はKPIとは?意味・読み方から設定・計算・具体例までわかりやすく解説で、KGIとの違いやKPIツリーの作り方はKGI・KPIとは?意味と違い・設定方法、KPIツリー・KSF・OKRとの使い分けを解説で詳しく扱っています。
効果指標と成果指標・結果指標・評価指標の使い分け
実務でもっとも混乱するのが、効果指標・成果指標・結果指標・評価指標という呼び分けです。ここは語感で決めても揃わないため、研究開発評価の分野で整理されている実績概念の枠組みを土台にします。
アウトプット・アウトカム・インパクトの3区分
内閣府の総合科学技術会議に提出された参考資料「研究開発のアウトカム・インパクト評価体系」(平成17年度科学技術振興調整費報告書 第1章)は、実績の概念を次のように整理した資料です。「実績(performance)には2局面があり、成果(product)と過程(process)である」とし、さらに「『成果』はアウトプット(output)、アウトカム(outcome)、インパクト(impact)に区分されるのが一般的である」と述べています。原義については「辞書的にはアウトプットは『出力』であり、アウトカムは『結果』である」と明記されています。2026年10月21日の取得では元のURLが404を返したため、リンク先はインターネットアーカイブの保存版です。
この3区分をマーケティングに当てはめると、対応は次の表のようになります。
| 区分 | 測る対象 | Web広告での例 | 行政評価での例 |
|---|---|---|---|
| アウトプット | 実施した量 | 配信数・表示回数 | スポーツクラブの創設数 |
| アウトカム | 対象に起きた変化 | 申込数・CVR | 週1回以上のスポーツ実施率 |
| インパクト | 波及した影響 | 売上・LTV | 住民の健康状態の改善 |
同資料は、成果の3区分とは別に、成果に至る「過程」の評価が省かれがちな点にも触れ、「過程に関する部分はしばしば忘れられ、実績=成果とされることが多いが、これは初歩的な間違いである」と書いています。続けて「アウトプット以外に成果を把握出来ていない場合もしばしばみられる」とも指摘しており、これはそのまま社内のKPI運用に当てはまります。配信数と表示回数だけを追い、申込数を見ていないレビューは、アウトプットしか把握していない状態です。
効果と成果の違い|成果指標が効果指標に含まれる範囲
「効果」と「成果」は日常語では近い意味で使われますが、本記事では指標の名前として次のように区別します。成果は「何が達成されたか」という結果そのものを指し、効果は「施策によって何が変わったか」という因果を含みます。成果指標が上の区分のアウトカムを測るのに対し、効果指標という呼び方には、その変化が施策によるものかという問いが入っています。
本記事では、効果指標を、アウトプットとアウトカムの双方を測る「施策の評価に使う数値」の総称として扱います。成果指標は効果指標の一部で、対立する概念ではありません。ただし同資料は「アウトカムとインパクトの区別をしないでまとめてアウトカムとしたり、逆に成果すべてをインパクトと呼んだりする場合もある」と、用語の揺れ自体を認めています。どちらの呼び名が正しいかを突き詰めても答えは出ません。
結果指標と先行指標の対応
結果指標は、文脈によって二つの意味で使われます。ひとつはアウトプット寄りの意味で、実施した活動の直接の産物(送信したメール数、開催した商談件数)を指す使い方です。もうひとつは、最終的に出てきた数字という意味で、売上や解約率のような事後にしか分からない指標を指す使い方です。後者の意味で使うときは、遅行指標(lagging indicator)とほぼ同義になります。
この二つ目の使い方と対になるのが先行指標(leading indicator)です。売上は月末にならないと確定しませんが、商談化率や見積提出数は週次で動き、売上に先行して変化します。改善の打ち手を早く回したいなら、遅行指標だけを見ずに、それを先読みできる先行指標を並べて置きます。
用語が揺れるときの実務上の決め方
用語の正解を探すより、指標ごとに「これはアウトプットとアウトカムのどちらを測るのか」を明記するほうが早く効きます。呼び名が成果指標でも効果指標でも、この一行があれば会議で解釈が割れません。例外は「測定指標」で、国の政策評価では目標の達成度を測る指標を指す決まった用語として使われています(次の章で扱います)。「評価指標」は、機械学習では正解率や再現率のようなモデルの性能指標を指すことが多く、施策評価の文脈で使うなら対象を書き添えます。
行政評価の成果指標・活動指標・測定指標|国の政策評価での書き方
「成果指標とは」で検索すると、上位には自治体の総合計画や国の資料が並びます。行政では指標の呼び分けが評価書の様式で決まっているため、民間で揺れる用語を揃えるときの基準として使えます。ここでは総務省行政評価局の目標管理型の政策評価に関する参考資料に載っている実例で確認します。
活動指標と成果指標の違い|アウトプットとアウトカム
同資料は各府省の工夫の例として文部科学省の事前分析表を挙げ、指標の欄を「主な成果指標(アウトカム)/活動指標(アウトプット)」と分けて示しています。活動指標は行政が何をどれだけ実施したか、成果指標はその結果として対象に何が起きたかを測る指標です。内閣府本府のロジックモデル・事前分析表の様式も、事業の概要(アクティビティ)、活動実績(アウトプット)、中目標(アウトカム)、施策目標(インパクト)の順に欄を並べ、アウトプットを「事業等の具体的活動によって直接産出される結果や状態」、アウトカムを「具体的活動の完了後に発生することが期待される変化」と説明しています。
生涯スポーツ社会の実現という施策では、成果指標に「週1回以上のスポーツ実施率」を置き、平成33年度の目標を「3人に2人(65%程度)」としています。活動指標は「総合型地域スポーツクラブが創設されている市区町村の割合」(平成24年度実績78.2%、平成33年度目標100%)と、拠点となるクラブの数(目標は全国300箇所程度)の2つです。クラブを100%の市区町村に作っても、住民の運動習慣が変わらなければ施策は成功していない、という構造が様式から読めます。
| 施策 | 活動指標(アウトプット) | 成果指標(アウトカム) |
|---|---|---|
| 地域スポーツの推進 | クラブ創設市区町村の割合 | 週1回以上のスポーツ実施率 |
| Web広告 | 出稿本数・配信数 | 申込数・CVR |
| 法人営業 | 訪問件数・提案書の提出数 | 受注件数・受注率 |
| 社内研修 | 実施回数・受講者数 | 受講後の業務評価・定着率 |
KPIと成果指標の違いもこの区分で説明できます。KPIは重要かどうかで選んだ指標の呼び名で、アウトプットかアウトカムかは問いません。成果指標はアウトカムを測る指標の呼び名で、重要度は問いません。そのため「アウトカムを測るKPI」も「アウトプットを測るKPI」も成り立ちます。立ち上げ期で成果がまだ出ない施策では活動指標をKPIに置き、成果が出始めたら成果指標へ切り替える、という使い分けが現実的です。
政策評価の「測定指標」|目標の達成度を測る物差し
国の目標管理型の政策評価では、2013年12月20日に政策評価各府省連絡会議で了承された「目標管理型の政策評価の実施に関するガイドライン」が、各府省共通の様式と判定区分を定めました。施策ごとに「達成すべき目標」を置き、その達成度を測る指標を「測定指標」と呼びます。ガイドラインの記入要領は「測定指標は、施策の達成状況を適切に説明することができるものとする」と定めています。総務省の参考資料は「達成すべき目標は、様々な要素を含めて設定されるため、具体的な達成水準を一義的に示すことは実際には困難」としたうえで、「関連した測定指標を用いて測定指標ごとに達成水準を示すことが必要」と書いています。目標が1つでも、達成度は複数の測定指標の組み合わせで判定する設計です。
判定結果は、各府省共通の5区分で示されます。
| 区分 | 判定の要点 |
|---|---|
| ①目標超過達成 | 全指標で達成し主要指標が大幅に上回る |
| ②目標達成 | 全指標で達成 |
| ③相当程度進展あり | 一部未達だが主要指標は目標に近い |
| ④進展が大きくない | 一部未達で主要指標も目標から遠い |
| ⑤目標に向かっていない | 主要指標が未達で進展が認められない |
③と④を分けるのは「主要な測定指標」が目標に近い実績かどうかです。判定は、指標ごとの判定と、複数の指標を束ねた目標全体の判定の2段で出します。農林水産省の平成25年度の評価書では、指標単位の判定を、目標値に対する達成度合が150%超ならA’、90%以上150%以下ならA、50%以上90%未満ならB、50%未満ならCと区切っています。林業労働安全の向上という目標には測定指標「林業労働死亡者数」を置き、基準値50人(平成19年度)から目標値35人以下(平成27年度)へ減らす計画でした。平成25年度の実績は39人で、その年度の目標値38人以下に届かず、指標単体の判定は「B(有効性の向上が必要である)」でした。一方、この指標を含む政策分野全体の判定は「③相当程度進展あり」です。民間のKPIレビューが「達成/未達」の二択で終わりがちなら、指標ごとの段階判定と、主要な指標を決めたうえでの全体判定を分けるだけで議論の質が変わります。
成果指標の書き方|事前分析表の記入項目
成果指標の書き方は、ガイドラインが定める事前分析表の様式がそのまま型になります。様式は測定指標ごとに「基準値」「目標値」「基準年度」「目標年度」と「年度ごとの目標値」「年度ごとの実績値」を並べ、さらに「測定指標の選定理由及び目標値(水準・目標年度)の設定の根拠」を書く欄を設けています。指標名だけを置くのではなく、どこから出発していつまでにどこへ行くのか、なぜその指標を選んだのかまでを1行に収める設計です。
数値化の扱いも決まっています。記入要領は、原則として達成すべき水準が数値化された測定指標を書くとし、数値化が困難な場合は定性的なものでも可とする一方で、達成すべき水準が具体的に特定され、事後検証が可能なものであることを求めています。数値にできない指標を認めつつ、後から達成・未達を判定できない書き方は認めない、という線引きです。
民間の施策に当てはめると、たとえば次のように書けます。
- 指標名:問い合わせフォームからの有効リード数(迷惑送信を除く)
- 区分:成果指標(アウトカム)
- 基準値と基準年度:月120件(2026年度上期の平均)
- 目標値と目標年度:月180件(2027年度下期)、中間目標は2027年度上期に月150件
- 選定理由:受注の大半がフォーム経由のため、受注件数に先行して動く指標として置く
この形で書くと、「基準値が無いので伸びたか分からない」「目標年度が無いので評価の時期が来ない」という、よくある失敗が様式の段階で防げます。
効果指標の種類|マーケティングの成功指標と計算式
下表では、マーケティングと広告で使われる代表的な効果指標を計算式とあわせて整理します。
| 指標 | 読み・意味 | 計算式 | 主に見る場面 |
|---|---|---|---|
| リーチ | 到達ユニーク数 | 重複を除く到達数 | 新規認知の広がり |
| IMP | 表示回数 | 延べ表示数 | 露出量 |
| CTR | クリック率 | クリック÷表示×100 | 広告・検索の訴求力 |
| CVR | コンバージョン率 | CV÷セッション×100(GA4の例) | LP・導線の成果 |
| CPC | クリック単価 | 広告費÷クリック | 広告の入札効率 |
| CPA | コンバージョン単価 | 広告費÷CV | 獲得コスト |
| ROAS | 広告費用対効果 | 売上÷広告費×100 | 広告の売上効率 |
| ROI | 投資利益率 | 利益÷投資×100 | 採算の判断 |
効果指標の選定基準|露出・訴求・獲得・採算の4層
指標は数が多く見えますが、選ぶ順番は決まっています。まず獲得層のCVRとCPAで成果と効率を押さえます。ここが目標に届いていれば獲得効率の改善優先度は下げられますが、獲得件数や配信量の減少がないかは上流の指標も継続して確認します。届いていない場合に、CTRが低いのか(訴求の問題)、CTRは高いのにCVRが低いのか(LPと導線の問題)を切り分けます。露出層のリーチとIMPは、新規認知を広げる施策でのみ主役になります。
採算層のROASとROIは、売上ベースか利益ベースかが違います。広告単体の効率を比べるならROAS、事業として投資を続けるかを判断するならROIです。粗利率が低い商材ではROASが高くてもROIが赤字になるため、判断はROIで行います。計算式と目安はROI(投資利益率)とは?計算式・目安・改善方法をわかりやすく解説で扱っています。
バニティメトリクスを外す基準
指標のなかには、増えても嬉しいだけで打ち手につながらないものがあります。累計ダウンロード数や累計登録者数、SNSのフォロワー総数など、施策期間の変化や成果との関係を示さない総数が例です。なお、フォロワー総数は解除やアカウント削除によって減少します。こうした虚栄の指標(バニティメトリクス)を外す基準は単純で、「この数字が10%動いたとき、翌週やることが変わるか」を問います。変わらないなら、それはレポートに載せる数字であって効果指標ではありません。
累計値でも、期間を区切れば効果指標になります。累計会員数ではなく当月の新規会員数、フォロワー総数ではなく投稿あたりのエンゲージメント率にすれば、施策の良し悪しが読めるようになります。
効果指標の設定方法|KGIからの逆算とSMART
指標は思いついた順に並べるものではありません。KGIから逆算し、SMARTで具体化する、という順序で決めます。
KGIから逆算するKPIツリーの作り方
出発点はKGIです。「今期の売上を1億2000万円にする」と決めたら、売上=受注件数×平均単価、受注件数=商談数×受注率、商談数=リード数×商談化率、と掛け算に分解します。分解した各項が候補となる効果指標です。
ツリーを作る利点は、指標が動いたときに原因の場所が特定できることにあります。売上が未達なら受注件数と平均単価のどちらが下がったかを見て、受注件数なら商談数と受注率のどちらかへ降ります。広告量を増やすかどうかは、どの項が下がったかを確かめてから決められます。
SMARTの原典と日本で流通する変種のズレ
指標を具体化する枠組みとしてSMARTがよく使われます。ただし日本語の解説の多くは「具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限」と説明しており、これは原典の語ではありません。
ジョージ・T・ドーランはSMARTを、Management Review誌 第70巻第11号(1981年11月号)pp.35-36 の論文「There’s a S.M.A.R.T. way to write management’s goals and objectives」で提示しました。原典の5語と説明は次の表のとおりです。
| 頭文字 | 原典の語 | 原典の説明 | 日本で流通する変種 |
|---|---|---|---|
| S | Specific | 改善する領域を特定する | Specific(同じ) |
| M | Measurable | 定量化するか進捗の指標を示す | Measurable(同じ) |
| A | Assignable | 誰がやるかを指定する | Achievable(達成可能) |
| R | Realistic | 使える資源で達成しうる結果を示す | Relevant(関連性) |
| T | Time-related | いつ達成するかを指定する | Timely(適時性) |
実務上いちばん大きい違いはAです。原典のAssignableは「誰がやるか」を指標の要件として求めています。Achievableを採用したSMARTでは担当者の指定が頭文字に含まれないため、指標の担当者を別項目で明示します。
原典には見落とされがちな但し書きもあります。「these criteria don’t say that all objectives must be quantified on all levels of management」(すべての階層で目標を数値化しなければならないとは言っていない)という留保で、特にスタッフ部門の中間管理職では数値化が現実的でない場合があるとも述べています。SMARTを根拠に無理な数値目標を全部署へ一律に配るのは、原典の意図から外れた運用です。SMART自体の解説はSMARTの法則とは?5つの要素と目標の具体例、原典との違い・時代遅れ論まで解説にまとめています。
指標の過剰設定による形骸化の防止
設定時に起こりうる失敗の一つは、指標を置きすぎることです。ダッシュボードにチームが週次で確認できる数を超えて並べると、継続的に追われない指標が生じます。チームが週次で判断に使う指標は、各指標の担当者が継続して確認し、結果に応じて行動できる数に絞ります。原典のAssignableに従って各指標に担当を割り当てると、追えない数は自然に落ちます。
効果指標の測定方法|ツールの役割分担と計測設計
指標を決めたら、実際に数字が取れる状態を作ります。ツールの選定より先に、計測設計を決めるほうが重要です。
GA4・広告管理画面・BIの役割分担
サイト内の行動はGA4(Googleアナリティクス4)、広告の費用側であるCPCやCPAは各広告媒体の管理画面が一次情報になります。媒体内の入札調整には媒体側のCPAを使い、複数媒体への予算配分には成果の定義と帰属ルールをそろえたGA4や受注データを使うなど、判断目的ごとに参照元を決めます。BIツールを入れる前に、GA4の探索レポートで足りるかを確かめます。探索レポートの手法と上限値はGA4のデータ探索ツール|7手法の使い分けと公式の上限値で紹介しています。前後比較・A/Bテスト・リフト調査・MMMのどれで広告の効果を確かめるかは、広告効果測定とは?指標・手法の選び方とレポート項目の雛形で問い別に整理しています。計測設計を自社で組むのが難しい場合は、WebコンサルティングとGA4のアクセス解析支援で、指標の定義と計測の設定をまとめて相談できます。
分母・期間・重複に関する集計定義の決め方
計測値のずれは、集計定義のほか、帰属日、計測期間、カウント方法、無効クリックの除外などによっても起こります。「問い合わせ数」ひとつでも、フォーム送信を数えるのか、迷惑メールを除いた有効件数か、電話を含めるかで数字は変わります。特に次の3点は、レポートを作る前に決めて指標名の隣に書いておきます。
- 分母:CVRの分母をセッションにするかユーザーにするかで、数値は大きく変わります。Google広告の管理画面のコンバージョン率は、分母が広告のインタラクション数です(Google広告ヘルプ)。どちらでも構いませんが、期間をまたいで変えないことが条件です。
- 期間:Google広告の主要なコンバージョン列は、購入などが起きた日ではなく、そのきっかけになった広告クリックの日時で計上されます(Google広告ヘルプ)。GA4はイベント発生日に計上されるため、両者のCV計上日がずれることがあります。CPAの日次変動には計上の遅れも影響します。判断期間は週次に固定せず、コンバージョンまでの日数と件数を確認し、成果が十分に計上された期間で比較します。
- 重複:同一ユーザーが複数チャネルから流入した場合、どのチャネルの成果とするかを決めます。GA4のレポート用アトリビューションモデルを変えると、対象となる過去・将来のイベントスコープの帰属先も変わるため、変更した日を記録しておきます。
効果指標の改善サイクル|判断基準の事前設定と検証
PDCAで回すときに効くのは、Checkで使う判断基準をPlanの時点で決めておくことです。「CVRが2.0%を下回ったらLPを見直す」のように閾値を先に書いておくと、結果が出た後の解釈の揺れを防げます。
打ち手の効果を切り分けたいときはA/Bテストを使います。ただし、必要なサンプル数に達しないうちに勝敗を決めると、偶然の差を効果と誤認します。想定する改善幅から必要なサンプル数を先に計算し、その数に達するまで判定しないことが前提です。計算方法と、判定を誤らせる条件はABテストとは?必要サンプル数の計算コードと検証期間・判定を誤らせる条件で扱っています。A/Bテストが組めない施策で、相関と因果をどう見分けるかは因果分析とは?相関関係との違い・手法の使い分けと落とし穴を解説が参考になります。
分野別の効果指標|開発・学術・医療
効果指標はマーケティングと行政以外の分野でも使われます。分野が変わると指標の名前も定義の出どころも変わりますが、成果を数値で定義して改善に使うという構造は共通です。
| 分野 | 代表的な効果指標 | 定義の出どころ |
|---|---|---|
| マーケティング | CTR・CVR・CPA・ROAS | 各広告媒体の仕様 |
| 行政 | 成果指標・活動指標・測定指標 | 政策評価のガイドライン |
| ソフトウェア開発 | DORAの5指標 | dora.dev(Google Cloud) |
| 学術研究 | ジャーナル・インパクトファクター | Clarivate社のJCR |
| 医療・経済評価 | QALY・ICER | 中央社会保険医療協議会 |
ソフトウェア開発|DORAの5指標と従来の4指標との差分
開発現場では、DevOpsの研究プログラムであるDORAの指標が定番です。日本語では「Four Keys」の4指標で紹介されることが多いものの、公式の現行の記述は5指標です。dora.devの公式ガイド(最終更新 2026年1月5日)は「five software delivery performance metrics」として、Change lead time、Deployment frequency、Failed deployment recovery time、Change fail rate、Deployment rework rate を挙げています。
従来の4指標に加わったDeployment rework rateは、本番環境のインシデントに対応して行った、予定外のデプロイの割合です。また、日本語記事で定着している「平均復旧時間(MTTR)」は、現行ではFailed deployment recovery timeという名称に変わっています。4指標の定義と計算方法、ベンチマークの読み方はFour Keysとは|DORA 4指標の定義・計算方法とベンチマークで解説しています。
学術|インパクトファクターの評価対象と論文評価への限界
学術分野では、ジャーナル・インパクトファクターが雑誌の影響力の目安として使われます。Clarivate社のJournal Citation Reports(JCR)が公表しており、2026年版は113か国・254の研究分野から22,643誌を収録しています。
この指標が測っているのは雑誌であって個々の論文ではありません。雑誌全体の平均被引用数なので、同じ雑誌の論文でも被引用数は大きくばらつきます。個々の研究の影響力は、被引用数そのものや分野と発表年で正規化した指標で見ます。
医療|QALY・ICERを用いた費用対効果評価と価格調整
日本の費用対効果評価制度では、対象の医薬品等が既存の比較対照品目と比べて費用と効果がどれだけ増えるかを分析し、増分費用効果比(ICER)を算出して価格調整に用います。中央社会保険医療協議会の資料では、ICERは「b-a(費用がどのくらい増加するか)」を「B-A(効果がどのくらい増加するか)」で割った値と定義され、「健康な状態での1年間の生存を延長するために必要な費用」を算出するものと説明されています。この効果の単位がQALY(質調整生存年)です。
算出したICERの水準に応じて価格が調整されます。現行の取扱いでは、通常の品目は200万円・500万円・750万円・1,000万円/QALY、総合的評価で配慮が必要とされた品目(抗がん剤など)は200万円・750万円・1,125万円・1,500万円/QALYを境界として区分されます。制度の位置づけについては「費用対効果評価の結果は、保険償還の可否の判断に用いるのではなく、いったん保険収載した上で、価格」の調整に用いる、と明記されています。指標が悪いから採用しないのではなく、指標に応じて条件を動かす設計です。
効果指標に関するよくある質問
効果指標とKPIの違いは何ですか?
本記事では、効果指標を施策評価に使う数値の総称、KPIをKGI達成のために特に重視する中間指標と定義します。KPIには重要なものに絞るという限定が入っているのに対し、効果指標にはその限定がありません。実務ではほぼ同義で使われますが、KPIを名乗る以上は数を絞る必要がある、と考えると使い分けの基準になります。
効果指標と成果指標はどう違いますか?
成果指標はアウトカム、つまり施策の対象に起きた変化を測る指標を指すのが一般的で、行政ではアウトカム指標とも呼ばれます。本記事では、効果指標をアウトプット指標も含む総称と定義し、成果指標をその一部として整理しています。組織によって定義は揺れるため、社内で先に定義を固定します。
活動指標と成果指標の違いは何ですか?
活動指標は実施した量(アウトプット)、成果指標は対象に起きた変化(アウトカム)を測ります。国の政策評価では、文部科学省の事前分析表がこの対応で指標欄を分けており、スポーツ施策ではクラブを創設した市区町村の割合を活動指標、週1回以上のスポーツ実施率を成果指標に置いています。活動指標が目標に届いても成果指標が動かなければ、施策の設計を見直す合図です。
結果指標と効果指標の違いは何ですか?
結果指標は二通りに使われます。実施した活動の直接の産物(送信メール数、開催商談数)を指す場合と、事後にしか確定しない最終的な数字(売上、解約率)を指す場合です。後者は遅行指標とほぼ同義です。効果指標はどちらも含む上位の呼び方なので、対立関係ではありません。
効果検証と効果指標はどういう関係ですか?
効果指標が「何を測るか」の定義であるのに対し、効果検証は「その数値の変化が施策によるものか」を確かめる作業です。指標が改善しても、季節要因や他施策の影響かもしれません。切り分けにはA/Bテストのように比較対象を置く方法を使います。効果指標を決めただけで検証の設計を省くと、たまたま伸びた月の数字を成果として報告することになります。