マーケティング

ROMIとは?マーケティング投資利益率の計算式とROI・ROASとの違い

ROMIとは?マーケティング投資利益率の計算式とROI・ROASとの違い

ROMI(Return on Marketing Investment/マーケティング投資利益率)でつまずくのは、ほぼ分子です。「マーケティングで増えた売上」を利益に換算せず使うと、その売上に伴う変動費を無視した数字が出ます。一次資料が定める分子は売上ではなく、増分売上に貢献利益率を掛けた金額からマーケティング費用を引いたものです。ここを取り違えると、同じ施策のROMIが50%にも400%にも見えます。

この記事では、MASB(Marketing Accountability Standards Board)の用語集が示す標準式を起点に、計算例・ROIとROASとの基準点の違い・「増分」を実際にどう推定するか・ROMIを単独のKPIにしたときに何を取りこぼすかまでを扱います。

まとめ:ROMIの要点

  • ROMI=(増分売上×貢献利益率−マーケティング費用)÷マーケティング費用×100。分子は売上ではなく利益。
  • ROMIの損益分岐は0%。売上ベースのROASは100%でも利益が出るとは限らず、広告費以外の追加固定費がない場合の損益分岐は「1÷貢献利益率×100%」となる。
  • 分子の「増分」は施策期間中の売上全体ではなく、施策がなければ立たなかった分。ベースラインを引かない限りROMIは名前だけの数字になる。
  • 増分の推定にはマーケティングミックスモデリング(MMM)、地域実験、ユーザー単位の対照実験を使う。GoogleはMMMライブラリ google-meridian 2.0.0 を2026年9月3日に公開している。
  • ROMIは単独のKPIに向かない。Ambler と Roberts は2008年の論文で、マーケティング評価にROIを単一指標として使うことへの反論を6点挙げている。

ROMIの定義とMROIとの関係

MASBが運営する Universal Marketing Dictionary は、見出し語を「Marketing Return on Investment (MROI)」とし、ROMIをその別名として併記しています。定義文は次のとおりです。

「Marketing Return on Investment (MROI) or Return on Marketing Investment (ROMI) is the contribution to profit attributable to marketing (net of marketing spending), divided by the marketing invested.」(marketing-dictionary.org「Marketing Return on Investment (MROI)」、2026年9月19日閲覧)

訳せば「マーケティングに帰属する利益への貢献(マーケティング費用を差し引いた後)を、投じたマーケティング費用で割ったもの」です。利益への貢献であって売上ではないという点が、この一文の要です。資料によってMROIとROMIのどちらの表記も使われますが、この用語集は両者を同じ指標の別名として扱っています。

同じ項目には、ROMIを他のROI系指標と同列に扱うなという注記も付いています。工場や在庫のように資金が固定される投資とは違い、マーケティング費用は賭けられる(risked)性質のものだ、という区別です。

ROMIの計算式と計算例

ROMIの標準式と貢献利益率

この用語集が計算式の典拠に掲げるのは Farris, Bendle, Pfeifer, Reibstein『Marketing Metrics: The Definitive Guide to Measuring Marketing Performance』第2版(Pearson Education, 2010)です。同書はその後も版を重ね、現行は第4版(2020年8月23日刊)で、ROMIは第12章12.5節「Marketing Return on Investment」の390ページから扱われています。式は次のとおりです。

「MROI (%) = 100 x [{Incremental revenue attributable to marketing ($) x Contribution margin (%) − Marketing spending ($)} ÷ Marketing spending ($)]」

日本語にすると「ROMI(%)=(マーケティングに帰属する増分売上×貢献利益率−マーケティング費用)÷マーケティング費用×100」です。contribution margin は売上高から変動費を差し引いた利益の比率を指し、日本語の管理会計では限界利益率とも貢献利益率とも訳され、書籍によって語の範囲が揃いません。実務では「その売上を1円増やしたときに追加で残る利益の割合」と読み替えるのが安全です。

貢献利益率の掛け忘れによるROMIの過大評価

マーケティング費用100万円で増分売上が500万円立った施策を考えます。貢献利益率を変えたときのROMIは次のように動きます。

計算の置き方 分子 ROMI 判定
貢献利益率30%(標準式) 500万×0.30−100万=50万円 50% 黒字
貢献利益率20%(標準式) 500万×0.20−100万=0円 0% 損益分岐
貢献利益率15%(標準式) 500万×0.15−100万=−25万円 −25% 赤字
売上をそのまま分子に置く誤り 500万−100万=400万円 400% 実態と無関係

同じ売上でも、貢献利益率が30%なら50%、15%なら−25%です。そして売上をそのまま分子に置くと400%——貢献利益率30%の正しい値の8倍になります。値引きやクーポンを併用したキャンペーンほど貢献利益率が下がるため、この誤りは「一番赤字に近い施策が一番高いROMIに見える」という形で効きます。

損益分岐点は0%です。分子がすでに費用を引いた後の利益なので、ROMIが0%なら投じた費用をちょうど回収した状態を指します。ROMIは0%を超えると計算対象の費用を上回る貢献利益が生じますが、ROASは100%を超えるだけでは黒字とも成功とも判断できません。

ROMI・ROI・ROASの分子と損益分岐点の比較

指標 分子 分母 主な評価対象 損益分岐
ROMI(MROI) 増分売上×貢献利益率−費用 マーケティング費用 マーケティング施策 0%
ROI 利益 投資額 事業・設備・全社投資 0%
ROAS 売上 広告費 広告キャンペーン 1÷貢献利益率

ROIとの違い

ROIは投資額に対する利益の比率で、設備投資でもM&Aでも同じ形で使えます。ROMIはその分母をマーケティング費用に限定し、分子を「マーケティングに帰属する増分」に絞った特殊形です。特殊形にしている理由は、先のMASBの注記のとおり、マーケティング費用が資産として固定されず当期に費用計上される点にあります。ROI全般の計算式や目安はROI(投資利益率)とは?計算式・目安・改善方法をわかりやすく解説で扱っています。

ROASとの違い

売上ベースのROASは、値引き後の売上を広告費で割った比率で、売上原価は差し引きません。広告費以外の追加固定費を含めず、売上に対応する貢献利益で広告費を回収する条件では、損益分岐点ROASは「1÷貢献利益率×100%」です。貢献利益率15%なら損益分岐点ROASはおよそ667%で、ROAS500%は赤字です。先の計算例でROMIが−25%だったケースと同じ状況を、ROASは「500%」と表示します。どちらが正しいという話ではなく、売上ベースのROASは広告費に対する売上の比率を、ROMIはマーケティング費用に対する増分利益の比率を見る指標だということです。ROASの計算と目安はROASとは?計算式・目安・ROIとの違いと広告費用対効果を高める方法に、ROIとの対比はROASとROIの違いとは?広告効果測定の指標を比較にまとめています。

この分子の置き方の差は、広告プラットフォーム側の定義とも一致します。Google広告の用語集は「ROAS: Return-on-ad-spend, represented as a percentage, calculated as total conversion value divided by total spend.」「ROI: Return on investment, calculated as total profit divided by total spend.」と記載しており、ROASは設定したコンバージョン価値を、ROIは利益を分子に置くと説明しています。ただし、Google広告のコンバージョン価値には売上だけでなく利益を設定することもできます。ROMIはこのうちROI側の系列に属し、さらに分子を増分に限定したものだと捉えると整理しやすくなります。

ROMIに用いる増分売上の推定手法

標準式の分子は incremental revenue attributable to marketing です。施策期間中に立った売上の総額ではありません。広告を止めても買っていた顧客の分を引かなければ、ROMIは施策の評価ではなく単なる売上報告になります。ベースラインの推定方法によって、算出される増分売上とROMIは変わります。

ここでは増分を推定する手段として、MMMと地域実験を紹介します。ほかにユーザー単位で広告への接触を分ける実験もあります。

1つはマーケティングミックスモデリング(MMM)です。Googleが公開している Meridian は、公式ドキュメントで「Meridian is an open-source MMM built by Google that provides innovative solutions to key measurement challenges.」と説明され、推定対象については「The causal inference framework and assumptions inform the model’s estimate of incremental outcome for each treatment variable.」と、増分アウトカムの推定であることを明記しています。答えるべき問いの筆頭にも「What is the historical ROI and contribution from each of our marketing channels?」が挙げられています。PyPIの google-meridian は2026年9月3日に2.0.0が公開されました。MetaのRobynも同じMMMのオープンソース実装で、公式リポジトリは自ら「Robyn is an experimental, semi-automated and open-sourced Marketing Mix Modeling (MMM) package from Meta Marketing Science.」と experimental を名乗っています。GitHubのLatestリリースはR版 v3.12.0(2024年12月19日)、Python版 robynpy は0.3.6(2025年4月3日)が最新で、更新の間隔には差があります。どちらを選ぶにせよ、導入前にリポジトリの最終更新日を自分で確認してください。

MMMの出力をROMIと呼び替えるときは、用語の衝突に注意が必要です。Meridianのドキュメントは自社の主要指標を「Incremental Outcome, Return on Investment (ROI), marginal ROI (mROI) and response curves」と説明しており、ここでいうmROIは marginal ROI、つまり限界ROIであって、MASBがROMIの主表記に使うMROI(Marketing Return on Investment)ではありません。Meridianは「Your mROI is the return you’d get from some small increase in spend (for example, the next dollar).」と、次の1単位の支出から得られるリターンだと定義しています。またMeridianのROIは増分アウトカムを支出で割った比率であり、貢献利益率を掛けることもマーケティング費用を差し引くこともしません。ツールが出した数値をそのままROMIとして報告すると、分子の定義が二重にずれます。

もう1つは地域実験です。配信条件の異なる地域を比較し、地域ごとの規模や施策前の傾向の違いを考慮して、広告がなかった場合との差を推定します。Meridianのドキュメントも「Meridian GeoX is now available. Run geo experiments to calibrate your MMM.」として、地域実験でモデルを較正する運用を案内しています。広告プラットフォーム側にも同種の仕組みがあり、Google広告のConversion Liftは「Conversion Lift allows you to measure the incremental conversions driven by your Google Ads campaigns.」と説明され、増分コンバージョンの算出を「Incremental conversions = Treatment conversions − Control conversions」と定義しています。ROMIには件数差をそのまま使わず、比較可能な条件で推定した増分売上に貢献利益率を掛け、マーケティング費用を差し引いて分子を作ります。モデル単体で完結させるより、実験でモデルを補正する組み合わせのほうが増分の推定は安定します。

ユーザー単位の対照実験なども含めて検討しても増分を妥当に推定できない場合は、ROMIの確定値としての報告を見送ってください。ベースラインを引いていないROMIは、値が高いほど「もともと売れていた」だけかもしれず、予算配分の根拠にはなりません。

ROMIを単独KPIにする場合の評価上の限界

マーケティングの成果を1つの財務数値に集約すること自体に、学術的な批判があります。Tim Ambler と John Roberts の論文「Assessing marketing performance: don’t settle for a silver metric」(Journal of Marketing Management, 2008年, 24巻7-8号, pp.733-750, DOI 10.1362/026725708X345498)は、単一指標(silver metric)の候補としてROI、割引キャッシュフロー(DCF)、Return on Customer の3つを検討し、抄録で「six objections to the use of ROI, five to the use of DCF and four to Return on Customer are identified」と述べています。ROIに対しては6点の反論が立つ、という整理です。

同論文の結論は「A more satisfactory means for assessing marketing performance is net profit plus any enhancement of the marketing asset albeit that requires multiple metrics, taken together as a proxy for future cash flows.」——純利益に加えてマーケティング資産の増加分を見るべきで、それには複数の指標が要る、というものです。あわせて、予測値を評価のベンチマークに使うことの危うさ(the critical and potentially misleading role of forecasts as benchmarks for performance assessment)も指摘されています。この指摘を踏まえ、目標ROMIの達成率だけで評価せず、予測の前提、実際の利益、長期的なマーケティング資産の変化も確認してください。

実務に落とすと、ROMIの読み違いが起きやすい条件は次の3つです。

  • ブランド投資:分子はマーケティング資産の増加を拾わないため、短い評価期間では将来の効果を取りこぼし、ブランド投資を過小評価するおそれがある。短期のROMIだけで刈り取り施策と優劣を決めるべきではない。
  • 貢献利益率が施策ごとに違う:値引きで貢献利益率が下がっても、増分売上が十分に伸びればROMIは上がるため、売上と利益率の両方を反映して計算する必要がある。同じ率を全施策に当てはめた時点で比較は壊れる。
  • ベースラインが推定できない:MMMや地域実験に加え、ユーザー単位の対照実験なども実施できず、妥当な比較対象を設けられない場合、増分を十分な精度で推定できない。

この3つのいずれかに当てはまる施策をROMIだけで判断するのは避けてください。指標の選び方そのものは効果指標とは?成果指標・KPIとの違いと種類・設定方法を解説で整理しています。

BtoBでROMIを使うときの前提

技術系BtoBのマーケティングでは、受注までの期間、案件に関わる接点、案件ごとの利益率という3つの条件がROMIの前提を崩しにかかります。順に見ていきます。

第一に期間のずれです。商談から受注までが数か月から1年かかる商材では、当期のマーケティング費用と当期の増分売上を割っても、分子と分母が別の施策を指します。費用と成果の対応を確認し、施策実施時期別のコホート分析や、受注までの遅れを考慮したモデルで評価してください。費用を一律に初回接触月へ移す必要はありません。

第二に接点の多さです。展示会、ウェビナー、検索広告、インサイドセールスが同じ案件に関わるとき、ラストクリックで帰属させたROMIは増分ではなく施策間の付け替えになります。増分の評価には、ユーザー単位の対照実験、地域実験、MMMなどから、案件数と利用可能なデータに合う方法を選びます。

第三に貢献利益率のばらつきです。受託開発のように案件ごとの原価構成が違う事業では、全社平均の貢献利益率を当てると誤差が結果を支配します。案件別の限界利益を使い、平均値を使うなら必ずその旨を併記してください。顧客単位で回収を見る場合はLTVの計算方法|基本式からSaaS・サブスク(解約率)の算出までも合わせて参照してください。

よくある質問

ROMIの読み方は?

Return on Marketing Investment の頭字語で、日本語の解説では「ロミ」と読む例と、英字のまま読む例の両方が見られます。MASBの用語集を含む一次資料に公式のカタカナ読みの記載は見当たらないため、社内で表記を決めて統一するのが実務的です。

MROIとROMIは別の指標ですか?

同じ指標です。MASBの Universal Marketing Dictionary は「Marketing Return on Investment (MROI) or Return on Marketing Investment (ROMI)」と1つの項目で併記し、同じ指標の別名として扱っています。ただしGoogleのMMMライブラリMeridianが使う「mROI」は marginal ROI(限界ROI)の略で、こちらは別の指標です。ツールのレポートを読むときは綴りだけで同一視しないでください。

ROMIの目安は何%ですか?

業種横断の公的な目安値はありません。確実に言えるのは損益分岐が0%だということだけです。分子がすでにマーケティング費用を差し引いた貢献利益なので、0%で費用を回収、マイナスなら回収できていないと読みます。ROASの100%を基準に読み替えないでください。

ROMIとROASはどちらを使うべきですか?

広告の入札や日次の運用改善にはROAS、予算配分と経営への説明にはROMIです。売上ベースのROASは貢献利益率を使わず集計できますが、購入や受注までの遅れがあるため、当日の値だけでは広告効果を確定できません。一方で赤字の施策を高い数値で表示しうるため、期末に予算を正当化する用途には向きません。損益分岐点ROASの求め方はROASとは?計算式・目安・ROIとの違いと広告費用対効果を高める方法で扱っています。

貢献利益率が分からないときはどうしますか?

貢献利益率は「(売上高−変動費)÷売上高」で求めます。例えば売上100万円、変動費70万円なら30%です。粗利率を暫定的に使う場合は、売上原価に含まれる固定費と、売上原価に含まれない変動費を確認し、「粗利率を代用した参考値」と明記してください。固定費まで按分した率を使うと、売上の増減とROMIの動きが連動しなくなります。

関連記事

お気に入りに入れた記事の一覧

この記事は以下の記事からリンクされています

資料請求

今日のトレンド記事 直近 24 時間で、いつもより多く読まれている記事

  1. 2026.10.23 テックブログ Renta!不正アクセスでサービス停止:再開未定の現状と運営側の停止判断・証拠保全・段階的再開
  2. 2025.01.09 コラム アドレサブルCM(Addressable CM)とは?フジテレビで出る表示の意味・仕組みと視聴データの扱い
  3. 2026.10.21 テックブログ ふるさとチョイス不正アクセスで445万件流出:対象確認・パスワード変更と再開時期
  4. 2025.12.10 コラム 今の50代は何世代?バブル世代・団塊ジュニア・氷河期の境目と特徴
  5. 2026.07.09 テックブログ Muse Imageとは?Metaの画像生成AIの使い方・API料金(1枚0.01ドル)と日本での提供状況【2026年10月】

RELATED POSTS 関連記事

目次