マーケティング

イグノアレート(無視率)とは?計算式とSAL率・却下率との関係、CRMでの測り方

イグノアレート(無視率)とは?計算式とSAL率・却下率との関係、CRMでの測り方

イグノアレート(無視率)は、マーケティング部門が営業へ渡したリードのうち、決めた期限内に受け入れも却下も記録されず、接触の記録も無かったものの割合です。「イグノア」は英語の ignore(無視する)をカタカナにした語で、Ignore Rate を訳すと無視率になります。

この指標が見ているのは、リードの質ではなく「受け渡しの途中で誰の判断も通らずに消えたリード」の量です。本記事では計算式と期限の置き方、SAL率・却下率との関係、SalesforceとHubSpotでの測り方、数値が高いときの原因別の打ち手を順に説明します。

まとめ:イグノアレートの要点

  • イグノアレート=期限内に受入・接触・却下のどれも記録されなかったリード数 ÷ 営業へ割り当てたリード数 × 100。
  • 「却下(理由付きで差し戻す)」「失格(接触したうえで見込みなしと判断)」とは別物。無視は判断そのものが無い状態を指す。
  • 「却下」を最優先、次に「受入または接触」で分類すると、受入・却下・無視は重ならずに足して100%になる。受入率だけを見ていると、残りが却下なのか無視なのかが分からない。
  • Forrester(旧SiriusDecisions)が2012年に示した「72営業時間以内・24時間がベストプラクティス」は受入後のフォロー期限。無視とみなす判定期限は自社で決め、この数字以下に置くのが自然。
  • HubSpotの「Contact unworked?」やSalesforceの「Open – Not Contacted」と最終活動日は、いま放置されているリードの抽出に使える。月次の無視率は、割当日時と受入・初回接触・却下の各日時を残し、却下>受入または接触>無視の順で期限時点に判定する。
  • 数値が高いときは、記録漏れを除いたうえで、割当先の不在・定義のずれ・営業評価からの漏れ・処理量の超過を主な原因候補として調べる。打ち手は原因ごとに違う。

間違えやすいのは、受入(判断)と接触(行動)を同じものとして数えてしまう点です。定義の線引きから順に見ていきます。

イグノアレート(無視率)の定義と、却下・失格との線引き

「イグノア」の意味と、指標としての無視率

Cambridge Dictionary は ignore を、意図して聞かない・注意を向けないことを表す動詞と説明しています。イグノアはその読みをカタカナにしたものです。営業・マーケティングの文脈で無視率と言うときは、営業担当者の気持ちの問題ではなく、CRM上に行動の痕跡が残っていない状態を数えます。電話をかけたが記録していないリードも、数字の上では無視に入ります。

そのため、無視率を使う前提として「何をもって接触とみなすか(架電・メール送信・商談設定のどれを数えるか)」「受入と却下をどこに記録するか」「何時間たったら無視とみなすか」を、マーケティングと営業の間で先に決めておく必要があります。

受入・却下・無視の3分類と、受入と接触の違い

Forrester に統合される前の SiriusDecisions は、2012年8月2日のブログ記事「Sales Accepted Leads: The Most Important (and Most Overlooked) Step in the Demand Creation Process」で、営業がリードを受け取ったら連絡を試みる前に受け入れるか却下するかを決める段階を SAL(Sales Accepted Lead)と定義しました。却下の理由は基本的なものに絞るべきだとして、例に次の3種類を挙げています。

却下の種類(原文) 中身
procedural 割り当て先の誤り
clerical レコードの不備・誤り
definitional 対象市場・行動・リード水準の基準に未達

同じ記事は、却下(rejection)と失格(disqualification)を分けています。失格は担当者が実際に接触し、関心・ニーズ・予算などが無いと分かった後に付けるものです。また、受入は接触の前に行う判断で、受け入れた営業はその後に決まった時間内でフォローする、という順序になっています。

ただ、受入を記録せずにいきなり電話する運用もあり、その場合に受入の記録だけで数えると、対応済みのリードまで無視に入ってしまいます。そこで本記事では、期限内に却下が記録されたものを「却下」、それ以外で受入または接触が記録されたものを「受入」、どちらも無いものを「無視」とする優先順位で分類します。こうすると3つは重ならず、イグノアレートは3つ目だけを数える指標になります。受け入れたのに接触していないリードは、無視率ではなく受入後のフォロー期限の遵守率で別に追います。同記事が受入手続きの第一の目的に挙げているのも “Avoiding lead oblivion”(リードを忘れられた状態にしない)で、無視率はこの状態を数値にしたものと言えます。SALの位置づけ自体はMQLとSQLの違いとは?認定部門・SALを挟む引き渡し設計で詳しく扱っています。

イグノアレートの計算式と期限の置き方

イグノアレートの計算式と400件の算出例

計算式は次のとおりです。分母は「マーケティングが作ったリード」ではなく「営業の誰かに割り当てたリード」にします。割り当て前のリードを分母に入れると、ルーティングの遅れと営業の無視が混ざって原因を追えなくなるためです。

イグノアレート(%)= 期限内に受入・接触・却下のどれも記録されなかったリード数 ÷ 対象期間に営業へ割り当てたリード数 × 100

集計は、対象期間に割り当てたリードを固定し、全件の期限が過ぎてから各リードの期限時点の記録で判定します。月末に割り当てたリードを月末時点で数えると、期限がまだ来ていないのに無視として数えてしまうためです。たとえば9月に割り当てた400件を、10月初めに期限時点の記録で分類した結果が次のようになったとします。

期限内の結果 件数 割合
受入(受入または接触の記録あり) 300件 75%(受入率)
却下(理由付きで差し戻し) 40件 10%(却下率)
無視(記録なし) 60件 15%(イグノアレート)
合計 400件 100%

SiriusDecisions は、正式な受入手続きでの受入率を90%以上にすべきとしています。本記事の受入率は接触だけの記録も含むので同じ指標ではありませんが、目安にはなります。この例で受入にならなかった25%のうち、却下は10%、無視は15%です。却下が多いならリードの基準を、無視が多いなら引き渡しの運用を直すことになり、手を入れる場所が違います。受入率だけを追う組織が見落とすのはこの区別です。

無視判定の期限と受入後のフォロー期限

2012年の SiriusDecisions の記事が示す数字は、受入後のフォロー期限です。受け入れた営業は決まった時間内にフォローする義務を負い、その上限は72営業時間、ベストプラクティスは24時間とされています。同記事は受入の手続き自体には営業の時間を数分しか使わないはずだとしているので、割当から無視とみなすまでの判定期限は、このフォロー期限より長くする理由がありません。

運用例としては、反響型のリード(資料請求・問い合わせ)は割当から24時間、展示会の名刺のように熱量が低く件数の多いリードは72営業時間とし、流入経路ごとに分ける方法があります。期限は「割当から測るのか受入から測るのか」と、営業時間の範囲・休日の扱いまで書いておかないと、担当者ごとに数え方が分かれます。期限を含む取り決め(SLA)の書き方と差し戻しの経路はSQL(Sales Qualified Lead)とは?営業へ引き渡す条件とSLAの決め方で扱っているので、本記事では測り方に絞ります。

CRMでイグノアレートを測る方法(Salesforce・HubSpot)

HubSpot:「Contact unworked?」と初回対応の標準プロパティ

HubSpot のヘルプ「HubSpot’s default contact properties」には、未対応リードの抽出と初回対応の計測に使える標準プロパティが載っています。

プロパティ 公式の定義(要約)
Contact unworked? 担当者が未割当、または最新の割当後に営業活動の記録が無ければ true
Owner assigned date 担当者が直近に割り当てられた日時
Date of first engagement 現担当者が最初に接触した日
Lead response time 現担当者の最初の接触までにかかった時間(ミリ秒)

「Owner assigned date が24時間以上前」かつ「Contact unworked? が true」で絞ると、いま放置されている可能性が高いコンタクトの候補が出ます。Contact unworked? が見ているのは営業活動の有無なので、却下済みや受入だけを記録したリードが混ざっていないかは別に確かめます。ただし、これは現在の状態なので、期限を過ぎてから対応したリードや再割当されたリードは月次の分子から外れてしまいます。月次の無視率を出すには、受入日時・却下日時のカスタムプロパティを用意し、割当日時から期限内に却下・受入・初回接触(Date of first engagement)のどれが記録されたかをワークフローで判定して、結果を割当ごとに別のプロパティへ保存します。標準プロパティは現担当者の値しか持たないため、再割当の前の判定は保存しておかないと消えます。注意点はほかに2つあります。Date of first engagement は担当者を「No owner」に戻すと消える仕様なので、割当のやり直しが多い組織では初回対応日の履歴が残りません。また、HubSpot の Lead Status の既定値は New・Open・In Progress・Open Deal・Unqualified・Attempted to Contact・Connected・Bad Timing の8つで、「却下」に当たる値はありません。却下を区別したいなら、却下理由のプロパティを別に作る必要があります。

Salesforce:リードステータスと最終活動日

Salesforce のリードステータスの選択肢は組織ごとに変更できます。以下は、Open – Not Contacted(既定値)・Working – Contacted・Closed – Converted・Closed – Not Converted の4つを使う設定を例に説明します。

割り当てから期限を過ぎてもステータスが Open – Not Contacted のままで、かつ最終活動日(LastActivityDate)が空のリードをレポートで絞ると、いま放置されているリードの候補が出ます。ただしこの項目は日付単位で、割当前の活動も含みます。24時間以内の対応を判定するには、フローで割当日時・受入日時・初回接触日時・却下日時をカスタム項目に書き込み、却下>受入または接触>無視の順で期限時点の判定結果を残しておく必要があります。オブジェクトリファレンスによると、この項目の値は「直近の行動(イベント)の期日」か「直近に完了したToDoの期日」の新しいほうです。未完了のToDoは数えられないので、架電をToDoで記録する運用なら完了にするところまでを担当者に徹底します。

もう一段手前の状態を見る項目として IsUnreadByOwner(表示ラベルは Unread By Owner)があり、オブジェクトリファレンスの説明では、true は「割り当て済みだが、まだ見られていない(not yet viewed)」リードです。true のまま期限を過ぎたリードは、担当者が割当に気づいていない可能性が高いので、通知の設定を先に疑えます。この4値には HubSpot と同じく「却下」に当たる値が無いので、却下の値を追加するか、Closed – Not Converted に理由の項目を組み合わせて区別します。

記録漏れを無視と数えないための前提

Salesforce・HubSpot のどちらでも、無視率が数えているのは「受入・接触・却下の記録の有無」です。携帯電話から架電して記録していない、個人のメールソフトから送ってCRMに連携していない、といった記録漏れはすべて無視として数えられます。導入直後に無視率が高く出たら、まず電話・メールの自動記録が担当者全員で有効になっているかを確認してください。記録の仕組みが整う前の数字を営業の評価に使うと、指標そのものが信用されなくなります。

放置のコスト:HBRの調査が示す応答速度と見込み判定率

無視率を追う意味は、ハーバード・ビジネス・レビュー2011年3月号の「The Short Life of Online Sales Leads」(Oldroyd・McElheran・Elkington)の数字から見えてきます。米国企業2,241社にWebからテスト用の問い合わせを送り、応答までの時間を測った調査です。

応答までの時間 企業の割合
1時間以内 37%
1〜24時間 16%
24時間超 24%
応答なし 23%

30日以内に応答した企業の平均応答時間は42時間でした。著者らが別の研究で分析した米国42社・125万件のリードでは、1時間以内に接触を試みた企業は、1時間後に試みた企業より見込み判定(意思決定者と意味のある会話ができた状態)に至る確率が約7倍、24時間以上待った企業の60倍超でした。

この調査は米国のオンライン問い合わせが対象で、接触の時期が違う企業を比べた観察結果です。遅れだけが判定率を下げたと証明したものではなく、BtoBの展示会リードにそのまま当てはまるわけでもありません。それでも「4社に1社弱は一度も応答しなかった」「早く接触を試みた企業ほど見込み判定に至る割合が高かった」という2点は、未応答の割合と応答までの時間を併せて確認する根拠になります。

イグノアレートが高くなる原因と打ち手

無視率が高いときは、前の章の記録漏れと集計条件を確認したうえで、次の4つを主な原因候補として調べます。複数の原因が重なることもあるので、担当者別・流入経路別・曜日時間帯別に分解し、表の兆候を手掛かりに当たりを付けます。

原因 分解したときの兆候 打ち手
割当先の不在 退職者・休暇中の担当者に集中 割当ルールの例外処理、再割当
定義のずれ 特定の流入経路に集中 MQL基準の見直し
評価からの漏れ 全担当者に薄く広く発生 無視率を営業側の指標に入れる
処理量の超過 月末・繁忙期に集中 一次対応の分業、期限の階層化

割当先の不在は、担当者の退職や異動のあとも割当ルールが古い担当者を指しているケースが典型です。まず割当ルールに残っている担当者の在籍を確認し、一定時間未対応のリードを回す先の担当者と、回したあとの期限まで決めておきます。キューへ回すだけで受け持つ人を決めないと、放置の場所が変わるだけです。

定義のずれは、営業が「このリードは追う価値がない」と思っているのに却下という手段を使わず、黙って放置している状態です。特定の流入経路(ウェビナー参加者だけ、など)に無視が偏っていればこれを疑います。無視を却下に置き換えてもらうだけで理由が集まり、MQL基準の見直しにつながります。基準の作り方はMQLの判定基準とは?属性・行動スコアで決めるリード選定の基準と設計手順を参照してください。

評価からの漏れは、営業の評価が受注額と商談数だけで決まり、マーケティング起点のリードに対応しても報われない状態です。担当者別の無視率を比べるときは、割当件数や流入経路の構成の違いも併せて見ます。評価項目に入れる場合は、次の章で説明する、記録だけを増やす行動にも注意します。

処理量の超過は、営業がリードに対応する時間を物理的に持てない状態です。一次対応をインサイドセールスに分ける体制の作り方はインサイドセールスとは?意味・フィールドセールスとの違いと導入手順を解説で解説しています。すぐに体制を変えられない場合は、スコアの高いリードだけを24時間期限にし、残りを72営業時間期限やナーチャリングに回すことで、限られた時間を確度の高いリードに寄せられます。

イグノアレートを指標にすべきでない場面

無視率は万能の指標ではありません。次の2つに当てはまる組織では、追っても判断が変わらないか、数字がかえって悪い行動を生みます。

1つ目は、月のリード数が数十件程度で、マーケティングと営業が同じ会議で全件を確認している組織です。1件の無視で数ポイント動くため比率の推移が読みにくく、この規模では割合より未対応の件数と個別の行方を管理するほうが確実です。

2つ目は、無視率そのものを営業の目標値(例:0%)にする運用です。無視率だけを目標にすると、中身のない「メール送信済み」の記録で期限を満たそうとする誘因が生まれ、無視率が下がっても商談化率が動かない状態になりがちです。数値の改善を成果と判断する前に、接触の中身と商談化率を確かめてください。無視率は運用の詰まりを見つける診断指標として使い、営業の目標には接触後の商談化率を置くほうが実態に合います。

逆に、月数百件以上のリードを複数の担当者に自動で割り当てている組織では、担当者ごとの確認だけでは「誰の判断も通らずに消えたリード」を見落としやすくなります。期限超過のリストで個別に救い、無視率で全体の傾向を見る、という分担で受入率・却下率と並べて月次で追う価値があります。

よくある質問

イグノアとはどういう意味ですか?

英語の ignore(無視する、意図的に注意を向けない)をカタカナで書いたものです。営業・マーケティングでは、イグノアレート(Ignore Rate)=無視率という指標名の一部として使われます。

イグノアレートの計算式は?

期限内に受入・接触・却下のどれも記録されなかったリード数を、対象期間に営業へ割り当てたリード数で割り、100を掛けます。400件中60件が該当すれば15%です。全件の期限が過ぎてから集計します。

イグノアレートとSAL率はどう違いますか?

SAL率(受入率)は営業が受け入れたリードの割合で、イグノアレートは受入も接触も却下も記録されなかったリードの割合です。却下を優先して分類すれば受入・却下・無視の3つは重ならず足して100%になるので、受入率が低いときに原因が却下か無視かを分けて見られます。

何時間対応がなければ「無視」とみなすべきですか?

公的な基準はなく、自社で決めます。参考になるのは Forrester(旧SiriusDecisions)が受入後のフォロー期限として示す72営業時間以内(ベストプラクティスは24時間)で、無視の判定期限はこれより長くしないのが自然です。資料請求などの反響型は24時間、展示会リードは72営業時間というように流入経路で分ける運用例があります。

イグノアレートの目安はありますか?

無視率単独の公的な目安は見当たりません。Forrester(旧SiriusDecisions)が示しているのは受入率を90%以上にすべきという受入側の水準で、無視率の上限を直接示したものではありません。自社の推移を月次で追い、上がった月に原因を分解する使い方が基本です。

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