Grok

Grok-1とは?314B MoEモデルの仕様・入手方法とApache 2.0の適用範囲

Grok-1(grok1 とも表記されます)は、xAIが2024年3月17日にApache 2.0ライセンスで公開した3,140億パラメータのMixture-of-Experts(MoE)モデルです。名前は同じでも、XやアプリでいまチャットできるGrokとは別物で、Grok-1は対話用の調整を加える前の素のベースモデルにあたります。現行世代のGrokを調べている方はGrok 4.5とは?V9基盤の特徴・性能と公開状況をわかりやすく解説を先にご覧ください。この記事では、Grok-1そのものの仕様・入手方法・ライセンスの範囲を、公式リポジトリとHugging Faceの実測値だけで整理します。

まとめ

Grok-1について押さえるべき点は5つです。第一に、公開されたのは2023年10月に事前学習を終えた時点のベースモデルであり、対話や指示追従にファインチューニングされていません。第二に、8つのエキスパートのうち2つをトークンごとに選ぶMoE構成で、xAIは1トークンあたり重みの25%が活性化すると説明しています。第三に、Hugging Faceのチェックポイントは770ファイル・約318GBあり、付属のサンプルコードは8デバイス構成が前提です。第四に、Apache 2.0が適用されるのはリポジトリのソースとGrok-1の重みだけで、2025年8月公開のGrok-2は商用条件が付く別ライセンスになります。第五に、コンテキスト長は8,192トークンにとどまり、依存ライブラリは2024年前半の版に固定されたままです。以降で、この5点の根拠と実務上の判断基準を順に説明します。

Grok-1の公開経緯と現在の更新状況

xAIがGrok-1の重みとコードを公開したのは2024年3月17日です。GitHubのxai-org/grok-1リポジトリの作成日時は2024年3月17日08時53分(UTC)で、Hugging Face側のリポジトリも同日に作られました。公開されたのは2023年10月に完了した事前学習フェーズのチェックポイントで、xAIはアナウンスの中で、対話のような特定用途にファインチューニングしていない旨を明記しています。XのGrokが会話できるのは、この後段に対話向けの調整が入っているためです。Grok-1の重みをそのまま読み込んでも、チャットボットにはなりません。

公開から2年以上が経ち、リポジトリは更新を止めています。2026年8月1日時点でGitHubの最終プッシュは2024年8月30日、Hugging Face側のモデルカードの最終更新は2024年3月28日です。スター数は52,087と多いものの、Issues機能はリポジトリ設定で無効化されており、未処理のプルリクエストが44件たまったまま動きがありません。直近30日のHugging Faceダウンロード数は312件で、2025年8月に公開されたGrok-2の11,833件と比べると1桁以上の差があります。つまりGrok-1は、いま実務で回っているモデルではなく、参照される機会が限られた過去のリリースです。

314BパラメータMoEの構成仕様

リポジトリのREADMEとrun.pyに書かれている構成値は次のとおりです。数値はすべて公式リポジトリの記載どおりで、推定値は含みません。

項目
総パラメータ数 3,140億(314B)
アーキテクチャ Mixture-of-Experts(エキスパート8基)
トークンごとに使うエキスパート数 2
レイヤ数 64
アテンションヘッド クエリ48 / キー・バリュー8
埋め込み次元 6,144
トークナイザ SentencePiece・語彙131,072
最大コンテキスト長 8,192トークン
位置エンコーディング RoPE(回転位置埋め込み)
公開ライセンス Apache 2.0

クエリヘッド48に対してキー・バリューヘッドが8という比率は、複数のクエリヘッドでキーとバリューを共有するGrouped Query Attentionの構成です。推論時のKVキャッシュを削る狙いがあり、314Bという規模をメモリに載せるうえで効いてきます。

8エキスパート中2つだけを使う仕組み

MoEでは、すべてのパラメータを毎回使うわけではありません。Grok-1は8基のエキスパートのうち、トークンごとに2基を選んで通します。xAIは公開時のアナウンスで、あるトークンに対して重みの25%が活性化すると説明しました。内訳の定義までは公表されていないため、この数値はxAIの公表値として受け取るのが安全です。

注意したいのは、MoEが減らすのは1トークンあたりの計算量であって、必要なメモリ量ではない点です。どのエキスパートが選ばれるかは入力次第なので、314B分の重みは常に読み込んでおく必要があります。「MoEだから軽い」という読み替えは、必要なGPU構成の見積もりを大きく外す原因です。加えてREADMEには、このリポジトリのMoE層の実装は効率的ではなく、カスタムカーネルなしでモデルの正しさを検証するためにこの実装を選んだ、と明記されています。付属コードは動作確認用のリファレンスであり、性能を出すための実装ではありません。

コンテキスト長8,192トークンという制約

run.pysequence_lenは8192で、READMEの最大シーケンス長の記載とも一致します。長文の資料をまとめて読ませる用途や、長い会話履歴を保持する用途には届かない長さです。同じ8エキスパート構成を採るGrok-2では、config.jsonmax_position_embeddingsが131,072まで伸びており、Grok-1の16倍にあたります。現行世代がどこまで扱えるかはGrok 4.1 Fastの記事で確認してください。Grok-1の8,192トークンは、2023年後半に事前学習を終えたモデルの水準だと理解しておくのが実態に合います。

重みの入手方法と実行に必要な環境

Grok-1を手元で動かすなら、確認する項目は2つだけです。約318GBのチェックポイントをどこから落とすか、そして2024年前半で固定された実行環境をどう再現するか。順に見ていきます。

チェックポイントの入手経路とサイズ

公式に案内されている入手経路は、magnetリンクによるトレント配布と、Hugging Face Hubからのダウンロードの2つです。Hugging Faceから取得する場合のコマンドは、READMEに次の形で示されています。

pip install huggingface_hub[hf_transfer]
huggingface-cli download xai-org/grok-1 --repo-type model --include ckpt-0/* --local-dir checkpoints --local-dir-use-symlinks False

このコマンドは2024年当時の記載であり、そのままでは動かない可能性があります。huggingface_hubは2026年7月30日公開の1.26.0まで進んでおり、現行版のコマンド名はhf downloadです。xAI自身も、後発のGrok-2のREADMEではhf download表記に切り替えています。うまくいかないときは新しいCLI名を試してください。

ダウンロードされるckpt-0ディレクトリの中身は、2026年8月1日時点のHugging Face APIで実測すると770ファイル・合計318,239,886,140バイトでした。約318GB(296GiB)で、これは8bit量子化された状態のサイズです。回線と保存領域の両方を先に確保しておかないと、途中で止まります。

なお、pip install grok1のようなパッケージ経由の導入方法は存在しません。PyPIにgrok1およびgrok-1というパッケージはなく(2026年8月1日時点でいずれも404)、grokという名前で登録されているのはZope 3向けのWebフレームワークで、xAIとは無関係のプロジェクトです。公式に配布されているのは、リポジトリのJAXサンプルコードとチェックポイントだけと考えてください。

固定された依存関係と8デバイス前提の実行設定

実行環境で先に確認すべきなのは、依存ライブラリのバージョンが固定されている点です。requirements.txtの中身は次の4行になります。

dm_haiku==0.0.12
jax[cuda12-pip]==0.4.25 -f https://storage.googleapis.com/jax-releases/jax_cuda_releases.html
numpy==1.26.4
sentencepiece==0.2.0

2行目の-fはCUDA版JAXのホイールを解決するための指定で、省くとインストールが意図どおり通りません。そのJAX 0.4.25は2024年2月26日公開の版です。JAX本体はその後も更新が続いて2026年7月16日に0.11.0が出ていますが、Grok-1側のピンは2024年前半のまま止まっています。新しいCUDAドライバやPythonを載せた現在の環境にそのまま入れようとすると、ここで詰まります。動かすなら、コンテナなどで当時のバージョンを再現するのが現実的でしょう。

実行時の分散設定も見落としやすい点です。run.pylocal_mesh_config(1, 8)で、8つのデバイスに分割して載せる前提になっています。1デバイスあたりのバッチサイズは0.125、重みはQuantizedWeight8bitとして読み込まれます。GPU1枚で完結する構成ではないため、8基構成のマシンを用意できるかどうかが最初の分岐点です。

Apache 2.0が及ぶ範囲とGrok-2ライセンスとの違い

Apache 2.0で発生する義務の範囲

Grok-1のライセンスはApache 2.0で、商用利用・改変・再配布が可能です。ただし「無条件」ではありません。再配布の際には著作権表示とライセンス文の保持、変更点の告知といった義務が生じます。特許ライセンスの明示的な付与がある一方、特許訴訟を起こした場合には特許ライセンスが終了する条項も含まれます。無保証条項がある点も一般的なApache 2.0のとおりです。

範囲の線引きは正確に押さえてください。READMEには、ライセンスが適用されるのはこのリポジトリのソースファイルとGrok-1のモデル重みだけである、と明記されています。xAIの他の製品やサービス、そして後続のモデルには及びません。

Grok-2に付くxAI Community Licenseの制約

この差がはっきり出るのが、2025年8月22日にHugging Faceで公開されたGrok-2です。付属のLICENSEはApache 2.0ではなく、2025年11月4日更新の「xAI Community License Agreement」でした。両者の条件を並べると次のようになります。

観点 Grok-1 Grok-2
ライセンス Apache 2.0 xAI Community License
公開日 2024-03-17 2025-08-22
非商用・研究利用
商用利用 可(表示・変更告知の義務あり) 可(AUP順守が条件)
再配布時の表示 著作権表示・変更告知 規約同梱・Powered by xAI
他のAIモデルの学習 制限なし 原則禁止(第2条b)
ライセンスの取り消し 原則不可(特許訴訟時は特許分が終了) 取り消し可能と明記

Grok-2側は商用利用そのものを禁じてはいませんが、xAIのAcceptable Use Policyに記載されたガードレールの順守が条件になります。再配布時には規約の同梱に加えて「Powered by xAI」の明示も求められます。

学習利用の扱いだけは、規約内で整理しきれていません。第2条bは、素材や出力を使って基盤モデル・大規模言語モデル・汎用AIモデルを学習・作成・改良することを禁じつつ、本規約の範囲内で許諾されるxAI素材の改変やファインチューニングは除外すると書いています。ところが第4条には、出力物の利用・改変・共有について本規約はいかなる制限も義務も課さない、と明記されています。合成データ生成や蒸留の可否は、この2条項のあいだで宙に浮いた状態です。該当する用途を検討しているなら、条文の読みで押し切らずxAIに直接確認してください。追加条件を課さないApache 2.0で重みまで公開されているGrok-1が、この点では扱いやすい位置にあります。

2026年にGrok-1を選ぶべきでない場面と価値が残る用途

用途によっては、Grok-1は選択肢に入りません。次の3つのケースは、はっきり別の手段を採るべきです。

  • アプリケーションにxAIのモデルを組み込みたい:必要なのは推論の提供元であって重みではないため、Grok API(xAI)を使う
  • 手元の開発環境でGrokを試したい:318GBのチェックポイントを落とすより、Grok CLIのようなクライアント側の選択肢が早い
  • オープンウェイトを自社基盤で運用したい:Grok-1より実行系の整った新しい公開モデルを探す

3つ目については補足が要ります。コンテキスト長8,192トークン、2023年10月時点の学習データ、対話向け調整なし、8デバイス前提、依存ライブラリは2024年前半で凍結。この条件が重なる以上、同じ手間をかけるならより新しい公開モデルのほうが投資対効果は上です。xAIの系譜に絞っても、Hugging Faceのxai-org配下で公開されているモデルはGrok-1とGrok-2の2件しかなく、Grok 3以降の重みは公開されていません。

逆に、Grok-1にいまも価値がある用途は明確です。ひとつは、大規模MoEの内部構造を実物で確かめたい場合。64層・8エキスパート・GQAという構成が、量子化された実際の重みとJAXの参照実装つきで手に入り、しかもApache 2.0で追加条件がありません。この条件を満たす314B級のモデルは多くありません。もうひとつは、xAIのモデル系譜を技術資料で説明するときの起点としての参照です。Grok4の主な特徴と強みと読み比べると、2年半で何が変わったのかが具体的な数値で追えます。研究や検証の題材としては、公開が止まった今でも十分に機能するでしょう。

よくある質問

Grok-1とXアプリのGrokは同じものですか?

別物です。Grok-1は2023年10月に事前学習を終えた時点のベースモデルで、対話用のファインチューニングを受けていません。XやアプリのGrokは、その後の世代のモデルに対話向けの調整を加えたうえで提供されています。2026年8月時点の最新世代はGrok 4.5です。

Grok-1は商用利用できますか?

できます。Apache 2.0ライセンスなので、商用利用・改変・再配布に追加条件は付きません。ただし再配布時には著作権表示とライセンス文の保持、変更点の告知が必要です。適用範囲は公式リポジトリのソースファイルとGrok-1のモデル重みに限られ、同じxAIでもGrok-2は別ライセンスで商用利用に条件が付きます。

Grok-1の重みはどこから入手できますか?

公式に案内されているのは、READMEに記載されたmagnetリンクによるトレント配布と、Hugging Faceのxai-org/grok-1リポジトリからのダウンロードの2経路です。ckpt-0ディレクトリは770ファイル・約318GBあるため、保存領域と回線を事前に確保してください。PyPIにgrok1というパッケージは存在しないので、pipでは導入できません。

Grok-1はGPU1枚で動かせますか?

公式のサンプルコードは8デバイス構成を前提としています。run.pylocal_mesh_config(1, 8)に設定されており、314Bパラメータを8bit量子化した状態でも約318GBあるため、1枚のGPUには収まりません。MoEは1トークンあたりの計算量を減らしますが、重みは全量をメモリに載せておく必要があります。

Grok-1とGrok-2ではどちらを選ぶべきですか?

ライセンス条件で決まります。追加条件なしで商用利用したい、あるいは出力を使って別のモデルを学習させる可能性があるなら、Apache 2.0のGrok-1が選択肢です。性能とコンテキスト長ではGrok-2が上で、config.jsonmax_position_embeddingsは131,072とGrok-1の16倍にあたりますが、xAI Community Licenseの制約を受け入れる必要があります。直近30日のHugging Faceダウンロード数はGrok-1が312件、Grok-2が11,833件で、実際に使われているのはGrok-2側です。

関連記事

資料請求

RELATED POSTS 関連記事