「Java on Azure Day 2024」は、日本マイクロソフトが2024年6月5日にオンライン開催した、AzureでJavaを動かすためのイベントです。ただし当日紹介されたサービスの一部は、その後に提供終了が決まりました。この記事では、イベントで何が示されたのかを一次情報で整理したうえで、AzureでJavaアプリを動かす選択肢が2026年8月時点でどうなっているかまでを確認します。
まとめ
- Java on Azure Day 2024は2024年6月5日13時から18時にオンライン(Teams)で開催。テーマは「エンタープライズJavaアプリにAI機能を導入」。
- 当日取り上げられたAzure Spring Appsは、2025年3月17日に3年間の提供終了期間へ入り、2028年3月31日に廃止。移行先としてAzure Container AppsとAzure Kubernetes Service(AKS)が案内されている。
- 公式のデシジョンツリーでは、SpringアプリはContainer Apps、TomcatとJBoss EAPはApp Service、WebLogicはVirtual Machines、Kubernetesに投資済みならAKSかAzure Red Hat OpenShiftが推奨。
- Playwright for JavaはMaven Central公開の最新が1.62.0(2026年8月3日)。Azure Toolkit for IntelliJは3.97.7(2026年7月30日公開)。
- 同名のイベントは2025年6月17日の「Java on Azure Day 2025」まで確認でき、2026年は5月28日に「Microsoft Java Day 2026」がオンライン開催されている。
以下、イベントの内容と、その後に変わった点を順に見ていきます。
Java on Azure Day 2024の開催概要と登壇内容
2024年6月5日開催・テーマはエンタープライズJavaへのAI導入
主催は日本マイクロソフト株式会社、開催は2024年6月5日(水)13時から18時、形式はオンライン(Teams)です。イベントページに掲げられたテーマは「エンタープライズJavaアプリにAI機能を導入」でした。
技術メディアのイベントレポートによれば、日本マイクロソフトとしては4回目の開催にあたります(この回数はconnpassのイベントページには記載がありません)。同レポートでは、基調講演でマイクロソフトのJava関連の最新アップデートが示され、マツダ株式会社によるAzureを用いたコネクティッド・ビークル向けシステムの刷新と生成AIの社内利用が事例として紹介されたと伝えられています。製品・機能としては、Playwright for Java、GitHub Copilot Enterprise、GitHub Copilot Workspace、Microsoft Build of OpenJDK、Azure Spring Apps、AKSなどが取り上げられました。
2023年から2026年までの開催実績
同じ技術メディアのレポートによれば、前年の「Java on Azure Day 2023」は2023年4月26日開催で、これが3回目にあたります。2025年は6月17日(火)13時から18時にオンラインで「Java on Azure Day 2025: AI活用で革新するJavaアプリケーション開発」が開催されました。
2026年は名称が異なります。5月28日(木)13時から17時にオンラインセミナーとして「Microsoft Java Day 2026」が開かれ、テーマは「AI Driven Dev から Agentic Dev へ ~Java開発スタイルの進化と実装アプローチ~」でした。connpassのイベントページに改称や後継である旨の記載はないため、あくまで別名のイベントとして案内されている状態です。開催情報は日本マイクロソフトのconnpassページで確認できます。
Azure Spring Appsの提供終了と移行先の判断
2024年のイベントで紹介されたサービスのうち、実務判断に直結する変更があったのがAzure Spring Appsです。マイクロソフトとBroadcomは同サービスの廃止を決定し、2025年3月17日にBasic・Standard・Enterpriseの全プランが3年間の提供終了期間へ入りました。完全な廃止日は2028年3月31日です。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年1月 | 移行ガイダンス公開(ツール無) |
| 2025年3月17日 | 提供終了期間の開始・新規停止 |
| 2025年8月以降 | Tanzu 3コンポーネントがサポート外 |
| 2028年3月31日 | 全プランの提供終了 |
移行ガイダンスの公開先はAzure Container AppsとAKSの2経路で、移行ツールを伴うガイダンスは2025年3月17日から提供されています。サポート対象外となる3コンポーネントは、App Live View、App Accelerator(アプリアクセラレータ)、App Configuration Serviceです。時期の表記はドキュメント内で揺れており、本文は「2025年8月以降はサポート対象外」、FAQは「2025年9月以降にサポートが廃止される」と書かれています。提供終了期間中はAzure Spring Apps側で新機能が作られず、機能強化はContainer Apps側が優先されることも明記されています。Container Apps環境のセットアップを支援する移行ツールは、Azure CLIのspring拡張機能から利用します。Springの商用サポートやTanzuコンポーネントを使い続ける場合は、AKSへの移行が案内されています。
したがって、2024年時点の資料や登壇内容を根拠にAzure Spring Appsを新規採用する判断は、いま取るべきではありません。既存ワークロードがある場合も、廃止日から逆算した移行計画が必要です。移行先の第一候補となるサービスの特性はAzure Container Appsの料金体系とAKS・App Serviceとの違いで確認できます。
AzureでJavaを動かす選択肢とランタイムの提供範囲
アプリの種類から引く推奨サービス
マイクロソフトはJavaアプリ向けにデシジョンツリーを公開しており、最初の分岐はインフラを制御する必要があるかどうかです。制御が不要ならマネージドサービスが推奨ルートで、アプリの性質でさらに絞られます。
| アプリの種類 | 推奨サービス |
|---|---|
| Spring | Azure Container Apps |
| Tomcat / JBoss EAP | Azure App Service |
| WebLogic | Azure Virtual Machines |
| WebSphere Liberty | AKS |
| Kubernetes投資済み | AKS / Azure Red Hat OpenShift |
インフラ制御が必要な場合は、単純な移行ならVirtual Machines、Tanzuと統合するならIaaSマーケットプレースのTanzuオファーが挙げられています。なおVirtual Machinesやマネージドコンテナーサービス上のJavaワークロードでは、JVMパラメーターを自動で調整するAzure Command Launcher for Java(パブリックプレビュー)を使い、手動チューニングなしで既定値を得る選択肢もあります。
ランタイムがマネージド提供されるサービスと持ち込みが必要なサービス
次に分かれるのが、Javaランタイムをマイクロソフトが管理・提供するサービスか、利用者が自分で用意するサービスかという点です。Microsoft Learnは前者としてWindows/Linux上のAzure App Service、Azure Container Apps(コードからのデプロイ)、Azure Functions、Azure Spring Apps、Azure Service Fabric、Azure HDInsight、Azure AI Search(ドキュメント上は旧称のAzure Cognitive Search表記)、Azure Cloud Shell、Azure DevOps、Azure Managed Instance for Apache Cassandra、Azure Cosmos DB for Apache Cassandraを挙げています。
一方、Azure Virtual Machines、AKS、Azure Container Instances、Azure Container Apps、Azure Red Hat OpenShift、App ServiceのWeb App for Containersでは、ランタイムの選択は利用者側の責任です。ここでの推奨ディストリビューションはMicrosoft Build of OpenJDKとEclipse Adoptium Temurinの2つになります。かつて提供されていたZulu for Azureは2022年1月1日以降、更新もサポートも提供されていません。移行先はJDK 11がMicrosoft Build of OpenJDK、JDK 8がEclipse Temurinです。
Azure Container AppsのJava機能
Container AppsはSpringアプリのホスティング要件を広くカバーする作りです。マネージドのJavaコンポーネントとして、サービスレジストリのEureka Server for Spring、設定を集中管理するConfig Server for Spring、APIゲートウェイのGateway for Spring、Spring Boot Actuatorを持つアプリの管理画面となるAdmin for Spring(日本語ドキュメントでは「Spring の管理者」表記)が提供されます。監視面ではJVMのメモリ使用量・ガベージコレクション・スレッド数を扱うメトリック、診断面ではアプリを再起動せずログレベルを変更できる動的ロガーレベルが用意されています。
デプロイはソースコード、Mavenビルドの成果物、Dockerfileの3経路です。Buildpacksを使う前2者がサポートするJDKは8・11・17・21で、対象外のバージョンや依存関係が必要ならDockerfileを自作します。JARデプロイ、WARデプロイ、JVMの自動メモリ調整、ビルド環境変数はいずれもプレビュー扱いです。リソースは既定でCPU 0.5コア・メモリ1GB、指定できる範囲は0.25〜4コアとメモリ0.5〜8GiBになります。コアは0.25刻みで、メモリはコアの2倍まで割り当てられます(1.25コアなら2.5GiB)。
サポート終了日から逆算するJDKの選定
Microsoft Build of OpenJDKのLTSは、サポート終了日が早い順にOpenJDK 11とOpenJDK 17が2027年9月、OpenJDK 21が2028年9月、OpenJDK 25が2030年9月です(いずれも「最も早いサポート終了日」であり、延長される場合があります)。更新は1月・4月・7月・10月の四半期ごとです。新規構築ならOpenJDK 21以降、長期運用を前提にするならOpenJDK 25が期日の面で有利になります。
商用サポートには条件があります。対象はアクティブなAzureサポートプランを持つ顧客で、かつAzure、Azure Stack、Azure Arcクラスターにデプロイされたワークロードに限られます。Azure Arcで接続していないオンプレミス単独の利用はコミュニティサポートの範囲です。Java 8についてはMicrosoftはEclipse TemurinのビルドとMicrosoft Container Registryのコンテナーイメージに依存する形をとっています。ディストリビューションごとのライセンスとサポート範囲の違いはOpenJDKの商用利用とOracle JDKとのライセンスの違い、JDK・JRE・JVMの関係はJava SEの構成とライセンスの解説にまとめています。
イベントで紹介されたツールの2026年8月時点のバージョン
Playwright for Java 1.62.0と依存指定の落とし穴
Maven Centralのメタデータ(2026年8月3日更新)で確認できる最新版は1.62.0です。依存関係は次の形で指定します。
<dependency>
<groupId>com.microsoft.playwright</groupId>
<artifactId>playwright</artifactId>
<version>1.62.0</version>
</dependency>
この記事の旧版はplaywright-javaというartifactIdで1.13.0を指定していましたが、どちらも誤りです。artifactIdはあくまでplaywrightで、playwright-javaという成果物はMaven Central全体を検索しても1件も存在しません。バージョンについても、1.13.0のpomの公開は2021年7月21日で、イベントが開かれた2024年6月5日時点の最新は1.44.0(2024年5月17日公開)でした。つまり公開当時からすでに3年近く古い版が載っていたわけで、時間経過による陳腐化ではありません。
版の確認先にも注意が要ります。公式ドキュメントのMavenスニペットは本稿執筆時点で1.61.0(2026年6月29日公開)を示しており、Maven Centralの1.62.0より1つ前です。最新版を確定したいときはドキュメントではなくレジストリのメタデータを見てください。
Azure Toolkit for IntelliJ 3.97.7の対応IDEバージョン
JetBrains Marketplaceで公開されている最新版は3.97.7で、2026年7月30日公開のビルドがIntelliJ IDEA 2026.1系と2026.2系に対応しています。Container Appsのドキュメントでも、IntelliJからコンテナーアプリを直接デプロイする経路が案内されています。
GitHub Copilotによるモダナイゼーションの適用範囲
Java関連でこの2年に最も動いたのがこの領域です。「GitHub Copilot app modernization for Java」は2025年5月19日にパブリックプレビューとして公開され、現在は「GitHub Copilotモダン化」としてJava・.NET・C++を対象にしています。可用性は機能ごとに異なります。IDEでの言語・フレームワーク・ツールセットのアップグレードと、.NETおよびJavaの移行シナリオが一般提供、アプリケーションの評価と計画を担うモダン化エージェント(CLI)はパブリックプレビューです。
Javaでは、Azure Migrateのアプリケーションコード評価ツール(AppCAT)で現状を分析し、OpenRewriteなどを用いてAPI置換や依存関係更新を適用し、アップグレード後にCVEをスキャンする流れになります。2024年のイベントで語られた「コード補完の支援」から、移行作業そのものを対象にする方向へ用途が移った点が要点です。
2024年のイベント情報を設計判断に使うときの注意
年次イベントのレポートは、読み物としては残りますが、設計判断の根拠には向きません。この記事の旧版を含め、当時の情報には次のずれが生じていました。
- サービスの寿命:Azure Spring Appsは2024年時点で有力な選択肢として紹介されていましたが、翌2025年3月に提供終了期間へ入りました。採用判断の前に、対象サービスの提供終了アナウンスの有無を必ず確認してください。
- バージョンの裏取り:イベント記事に載る版番号は、執筆時点ですでに古いことがあります。Playwright for Javaの1.13.0と1.44.0の例のように、依存に書く版はレジストリのメタデータで現物を確認してから使うべきです。
- 出典のない効果測定値:「開発効率が◯%向上」の類の数値は、測定条件(対象タスク・母数・期間)が示されていなければ判断材料になりません。本記事でも、一次情報で測定条件まで確認できない数値は扱っていません。
イベントレポートから拾うべきなのは、その時点の数値や製品名ではなく、ベンダーが投資している方向です。2024年の「AI機能の導入」から2026年の「Agentic Dev」へというテーマの推移は、Java on Azureの重心が実行基盤の提供からモダナイゼーション支援へ動いていることを示しています。
よくある質問
Java on Azure Dayは毎年開催されていますか?
2023年4月26日開催分が3回目、2024年6月5日開催分が4回目、2025年は6月17日に「Java on Azure Day 2025」が開催されました。2026年は5月28日に「Microsoft Java Day 2026」という名称のオンラインセミナーが開かれており、同名のイベントは確認できません。最新の開催予定は日本マイクロソフトのconnpassページで確認してください。
Azure Spring Appsはこれから新規に利用できますか?
できません。2025年3月17日以降、Basic・Standard・Enterpriseの各プランは新規顧客のサインアップを受け付けていません。公式FAQでは、同日より前にインスタンスを作成したことがない場合に加え、過去3か月インスタンスを持っていない場合も新規顧客として扱われます。既存顧客は2028年3月31日まで利用できますが、その後はサービスへのアクセスとサポートが失われます。
Azure Spring AppsからContainer Appsへの移行ツールはありますか?
Azure CLIのspring拡張機能に、Container Apps環境のセットアップを支援する移行ツールが用意されています。移行ツールを伴うガイダンスは2025年3月17日に提供が始まりました。Tanzuの商用コンポーネントを継続利用する場合は、Container AppsではなくAKSへの移行が案内されています。
AzureでJavaアプリを動かすとき、どのJDKを選べばよいですか?
マイクロソフトが推奨するのはMicrosoft Build of OpenJDKとEclipse Adoptium Temurinです。Microsoft Build of OpenJDKのLTSは、最も早いサポート終了日がOpenJDK 21で2028年9月、OpenJDK 25で2030年9月です。App ServiceやFunctionsのようにランタイムがマネージド提供されるサービスでは、利用できるJavaバージョンは各サービスのドキュメントに従います。
Playwright for Javaの最新バージョンはどれですか?
Maven Centralのメタデータ上、2026年8月3日時点の最新は1.62.0です。groupIdはcom.microsoft.playwright、artifactIdはplaywrightで、対応ブラウザはChromium・Firefox・WebKitです。公式ドキュメントのスニペットは1.61.0のままなので、版はレジストリ側で確認してください。