情シスの外注は、PCの設定やアカウント発行、サーバー・ネットワークの保守といった作業を外部の事業者に任せ、社内の担当者を判断業務に回すための手段です。従業員300名未満の中小企業を対象にした2024年の調査では、70.3%が情シス業務の全部または一部を外部委託していました。本記事では、情シス代行・アウトソーシングで任せられる業務の範囲、費用が決まる要素と料金体系の選び方、準委任や派遣といった契約形態の違い、外注を見送るべき場面までを、発注する側の立場で整理します。
まとめ:情シス外注は作業を外へ出し、IT投資と管理責任の判断は社内に残す
情シスの外注で成果が出るかどうかは、委託先の技術力よりも「何を任せ、何を手元に残すか」の線引きで決まります。手順書にできる定型作業と、夜間や休日を含む監視・保守は外注向きです。IT予算の配分、システム導入の可否、セキュリティ方針の決定、委託先そのものの評価は、外注せずに社内の担当者が持ちます。
料金体系は月間の問い合わせ件数で選び、件数が読めない段階ではスポット契約か従量制から入るのが安全策です。契約は準委任か派遣かで指示の出し方が変わり、準委任なのに委託先の作業者へ直接細かく指示すると偽装請負を疑われます。社内に窓口役が1人もいない全面委託は、判断が止まるため勧めません。
情シスの外注で任せられる業務の範囲と、外注・代行・派遣の呼び方の違い
中小企業の70.3%が外部委託している情シス業務の内訳と委託理由
バッファローが2024年9月に公表した情シス業務の外部委託に関する実態調査(従業員10〜300名未満の企業の情シス担当者111名)では、全てを委託している企業が24.4%、一部を委託している企業が45.9%でした。委託している業務はサーバー構築が51.3%で最多、ネットワーク構築39.7%、PCの保守・管理33.3%が続きます。ヘルプデスクは5.1%にとどまりました。
委託の理由は「専門的知識・スキルを持つ人材が社内にいない」が59.0%です。同じ調査で専任の情シス担当者が0名の企業は10.0%、1名は11.7%あり、構築のように年に数回しか発生しない専門作業から外へ出している実態が読み取れます。
外注・アウトソーシング・情シス代行・派遣で変わる指揮命令の持ち主
「外注」「アウトソーシング」「情シス代行」は、どれも業務を外部の事業者に任せる契約を指す呼び方で、法的な違いはありません。違いが生じるのは契約形態です。準委任契約や請負契約では、作業者への指示は委託先の責任者が出します。
派遣は、派遣元と雇用関係にある人材を自社の指揮命令の下で働かせる形で、指示は自社が直接出せます。サービス名に「代行」とあっても中身が準委任か派遣かで発注側の関わり方が変わるため、見積もりの段階で契約形態を必ず確認してください。
情シス業務を4つの層に分けて決める、外注してよい作業と社内に残す判断
情シスの仕事を一括りにすると、外注の範囲を決められません。次の表のように、手順化できる度合いと事業への影響で4つの層に分けると、委託する範囲を説明できるようになります。
| 層 | 主な業務 | 外注の向き不向き |
|---|---|---|
| 定型作業 | PC設定、アカウント発行・停止、一次問い合わせ | 外注向き |
| 運用・保守 | サーバー・NW監視、パッチ適用、バックアップ | 手順書があれば外注向き |
| 構築・導入 | サーバー構築、ネットワーク構築、SaaS初期設定 | スポット外注向き |
| 企画・統制 | IT予算、導入可否、セキュリティ方針、委託先評価 | 社内に残す |
実務ではまず「企画・統制」の層を社内担当者の仕事として確定させ、残り3層を委託候補として見積もりに出す順番で進めます。
PCキッティングやアカウント発行など定型作業層が外注に向く理由
定型作業は手順が決まっており、成果物を「設定済みのPCが届いた」「アカウントが期日に作られた」で検収できます。委託先が変わっても品質を比べやすいのが利点です。PC設定の手順や手作業とクローニングの使い分けは、キッティングの手順と外注判断で詳しく扱っています。
注意したいのはアカウントの停止です。退職者のSaaSアカウントを止める作業を委託しても、退職の事実を委託先へ伝えるのは人事と情シス側の役目です。この連絡経路を決めずに外注すると、停止漏れが残ります。小規模企業での管理手順は中小企業のID管理と退職時の停止手順にまとめています。
サーバー・ネットワーク保守を外注できるかは手順書の有無で決まる
運用・保守の層は、監視項目や障害時の連絡順、パッチを当てる時間帯が文書になっているかどうかで外注の難易度が変わります。手順書がない状態で委託すると、委託先は現状調査から始めるため、初月の費用が見積もりより膨らみがちです。
前任者の頭の中にしか手順がないなら、外注の前に1〜2か月かけて手順書を作るか、手順書の作成自体を最初の委託範囲に入れます。業務システムの保守まで含めて任せる場合の委託先の比べ方は、システム運用保守の会社の選び方が参考になります。
IT予算・導入可否・セキュリティ方針を外注せず社内に残すべき理由
企画・統制の層を外注すると、委託先が自社の売上につながる提案を自ら承認する構図になります。新しい機器やSaaSの導入可否、更新のタイミング、どの業務にいくら投じるかは、事業の優先順位を知る社内の人間が決めます。
セキュリティ方針も同じです。方針の文書化や技術的な助言は外部に頼めますが、「この情報は社外のクラウドに置かない」と決めて社内に守らせる権限は委託先にありません。外部の専門家には、判断材料をそろえる役を担ってもらいます。
情シス外注の費用が決まる4つの要素と、月額固定・従量・スポットの使い分け
費用を左右する端末台数・拠点数・対応時間帯・駆けつけ対応の有無
情シス代行の料金を公開している事業者は少なく、比較サイトの掲載でも料金欄が「お問い合わせ」となっている例があります。見積もり額を決める要素は、おおむね次の4つです。
- 管理する端末台数とアカウント数(増えるほど作業量が比例して増える)
- 拠点数(拠点ごとにネットワーク機器と現地対応が発生する)
- 対応時間帯(平日日中のみか、夜間・休日の監視を含むか)
- 駆けつけ対応の有無(リモートで完結するか、訪問が要るか)
このうち費用への影響が大きいのは対応時間帯と駆けつけです。夜間・休日の監視は交代要員を確保する分だけ単価が上がるため、本当に夜間の復旧が要る業務かを先に見極めます。
月額固定・チケット従量・スポット契約を問い合わせ件数で選ぶ基準
料金体系は、月ごとの作業量が読めるかどうかで選びます。毎月の問い合わせが安定して発生し、件数を過去の記録で示せるなら月額固定が割安になる料金体系です。件数の記録がない企業は、まず3か月ほど従量制(チケット制)で実績を取り、その数字を根拠に月額固定へ切り替えると、払いすぎを防げます。
サーバー構築やオフィス移転時のネットワーク工事のように年数回しか発生しない作業は、スポット契約が向いています。先の調査で委託先の悩みの1位が「委託費用の高騰」(57.7%)だった背景には、作業量の実績を持たないまま月額固定を結んだケースが含まれていると考えられます。
情シス担当を1名採用する場合と外注を比べるときに見落とす費用
採用と外注を比べるとき、年収と委託料だけを並べると判断を誤ります。採用側で加算するのは、社会保険料、採用広告や紹介手数料、着任後の教育期間、退職時の引き継ぎ不全という費用です。外注側には、委託先への説明や検収に社内担当者が使う時間が乗ります。
専任者を1名置いても、その人が1人で全層を抱えれば属人化は解消しません。比較の軸は「1名雇うか外注か」ではなく、「社内の1名を企画・統制の層に専念させるために、どの層を外へ出すか」で考えると、内製と外注を組み合わせる結論に行き着きやすくなります。内製と外注の一般的な判断基準は内製化と外注の判断基準で整理しています。
準委任・請負・派遣の契約形態と、偽装請負を避ける情シス外注の指示の出し方
常駐型の情シス支援を準委任で契約したとき発注側が避ける直接指示
常駐型の情シス支援は、準委任契約で結ばれることが多い形態です。準委任では、作業者の勤務時間の管理や業務の割り振りは委託先が行います。発注側の社員が常駐者に「今日はこのPCを先に直して」と直接指示を重ねると、実態が派遣とみなされ、偽装請負を疑われます。
厚生労働省の37号告示関係疑義応答集のページでも、派遣か請負かは契約形式ではなく実態に即して判断されると示されています。依頼は委託先の責任者を通すか、チケットで受け付けて優先順位を委託先が決める運用にしてください。社内から直接指示を出したい事情があるなら、最初から派遣契約を選ぶほうが筋は通ります。判断基準の詳細は偽装請負の4類型と37号告示の判断基準で解説しています。
情報漏えいに備える委託先管理と、情シス外注の契約書に入れておく条項
情シスの委託先は、管理者権限や社員の個人情報に触れる立場にあります。先の調査でも委託の悩みの2位が「情報漏洩のリスク」(38.5%)でした。契約書には、取り扱える情報の範囲、再委託の可否と事前承認、管理者アカウントの発行・停止の手順、契約終了時のデータ返却と消去、事故発生時の報告期限を入れます。
個人情報を扱わせる場合、委託元には委託先を監督する義務があります。委託先の選定、契約、取扱状況の確認をどう回すかは、委託先管理の監督義務とチェックリストで手順を確認してください。
情シス外注を見送るべき場面と、全面委託で判断が止まる失敗パターン
社内の窓口役がゼロのまま情シス業務を全面委託すると判断が止まる理由
結論から言えば、社内に窓口役を1人も置かない全面委託は採用しません。委託先は「このSaaSを導入してよいか」「この端末を廃棄してよいか」を自分では決められず、確認先がない案件は止まります。総務や経理の担当者が兼務でもよいので、週に数時間を情シスの判断に充てる人を指名してから委託を始めます。
次の条件に当てはまる場合も外注は見送るか、範囲を絞ります。
- 管理する端末が10台未満で、作業が月に数時間しか発生しない
- 業務手順が日々変わっており、手順書に落とせる状態にない
- 社外に出せない設計情報を扱う端末が大半を占める
1つ目は外注の固定費が作業量に見合わず、2つ目は委託先が毎回確認に時間を使い、3つ目は委託先管理の負担が外注で減る負担を上回るためです。
業務システムの開発・改修まで情シス代行会社へ頼むと起きる齟齬
情シス代行の多くは、PCやネットワーク、SaaSの運用を得意とする事業者です。販売管理や勤怠管理など自社向けに作った業務システムの改修まで同じ窓口に頼むと、対応範囲外として断られるか、別の開発会社への再委託になり、費用と連絡経路が二重になります。
業務システムを抱えている企業は、インフラ運用の委託先と、システムの保守・改修の委託先を分けて考えます。システムの保守運用を任せつつ社内の担当者が判断できる体制へ移す支援は、保守運用・内製化支援として一創でも承っています。
情シス外注を始める前の棚卸しから委託開始までの手順と期間の目安
IPAの資産管理台帳サンプルで端末とアカウントを棚卸しする最初の作業
見積もりを取る前に、管理対象を数えます。IPAの中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン(第4.0版、2026年3月公開)には、付録6として資産管理台帳のExcelサンプルが用意されています。このサンプルを使って一覧にする対象は、PC・スマートフォン・ネットワーク機器・サーバー・契約中のSaaSです。
同じガイドラインの付録3「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」を回しておくと、委託先に頼みたいセキュリティ対策の優先順位も見えます。台帳と診断結果があれば、委託先ごとの見積もり条件がそろい、金額の差を比べられるようになります。
委託範囲表をつくり相見積もりを比較できる形にそろえる4つの手順
棚卸しが済んだら、次の順で委託を始めます。中小企業なら、着手から委託開始まで2〜3か月を見込んでおくと無理がありません。
- 4つの層ごとに、委託する作業と社内に残す判断を一覧表にする
- 過去3か月の問い合わせ件数と作業時間を集計し、表に添える
- 2〜3社へ同じ表を渡して見積もりを取り、契約形態と料金体系を確認する
- 委託開始後1か月は前任者と委託先の引き継ぎ期間として重ねて運用する
手順2の件数がそろわない場合は、手順3で従量制の見積もりを依頼し、実績が出てから月額固定に切り替えます。ヘルプデスクだけを先に切り出して委託する場合の範囲の決め方は、ヘルプデスクのアウトソーシングの委託範囲と料金を参照してください。
よくある質問
情シスの外注を検討する担当者から寄せられやすい質問をまとめました。
情シス代行とアウトソーシングに違いはありますか?
呼び方の違いで、法的な区別はありません。どちらも情シス業務を外部事業者に任せる契約を指します。比べるべきは名称ではなく契約形態で、準委任や請負なら作業者への指示は委託先の責任者が出し、派遣なら自社が直接指示できます。サービス資料に契約形態が書かれていなければ、見積もり時に確認してください。
ひとり情シスの会社でも外注する意味はありますか?
あります。ひとり情シスこそ、定型作業や夜間の監視を外へ出し、本人をIT予算や導入判断に専念させられるため、外注による効果が大きいのです。ただし全部を委託して本人を外すと、判断する人がいなくなります。外注する層と本人に残す層を分け、本人が休んでも委託先が動ける手順書を整えることが、ひとり情シスの属人化対策にもつながります。
情シスの外注費用はどのくらいかかりますか?
公開されている料金表は少なく、端末台数・拠点数・対応時間帯・駆けつけの有無で大きく変わります。金額を比べるには、資産の台帳と過去の問い合わせ件数を添えて、2〜3社に同じ条件で見積もりを依頼するのが近道です。件数が読めない段階では、従量制で数か月の実績を取ってから月額固定に移ると割高な契約を避けられます。
情シスを外注するデメリットは何ですか?
調査では、委託費用の高騰(57.7%)、情報漏洩のリスク(38.5%)、委託先や業務の管理の複雑化(26.9%)、社内にノウハウが蓄積されない(16.7%)が挙がっています。いずれも、委託範囲と社内に残す判断を決めずに委託した場合に強く出る問題です。手順書を委託先に作らせ、社内で保管する取り決めを入れておくと、ノウハウの流出は抑えられます。
情シスを派遣で補う場合と外注する場合はどう選べばよいですか?
社内の担当者が日々の作業を細かく指示したいなら派遣、成果や作業範囲で任せて指示を委託先に委ねたいなら準委任の外注が合います。派遣は人が替わると立ち上げ直しになり、外注は手順書と引き継ぎが委託先側に残る点も違います。準委任で契約しながら直接指示を出す運用は偽装請負を疑われるため避けてください。
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